説明

鉛蓄電池用負極板及びこの負極板を用いた鉛蓄電池

【課題】 鉛蓄電池の負極板の放電性能を更に向上させた、鉛蓄電池用負極板及びこの負極板を用いた鉛蓄電池を提供する。
【解決手段】 負極活物質に、硫酸バリウム、リグニン、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩、ビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物を、必須成分として含有する。好ましくは、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩が、負極活物質ペースト調製時の鉛粉量を100質量部として、0.05質量部以上添加され、リグニンとビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物の質量混合比が、8:2〜2:8であり、リグニンとビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物とを、負極活物質ペースト調製時の鉛粉量を100質量部として、合計質量で0.05質量部以上添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池用負極板及びこの負極板を用いた鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池の負極活物質には、従来から数種類の添加剤が負極活物質ペースト錬合時に添加されている。このうち、有機エキスパンダとして通常添加されているリグニンは、充電状態の負極活物質(海綿状鉛)を微細化するため、負極板の性能に大きく寄与している。リグニンには、その官能基の種類や量、分子量、立体構造により放電性能に優れた様々なものが報告されている。
【0003】
また、近年では、環境意識の高まりから、蓄電池への期待が高まっており、鉛蓄電池も更なる高容量化が望まれているが、リグニンの種類や量を調整するだけでは、満足できる放電性能を得ることは困難になりつつある。
【0004】
そこで、特許文献1では、スルホン酸基を有する芳香族化合物、具体的には、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩、さらに具体的には、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩やナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物カルシウム塩使用することが記載されている。
また、特許文献2、特許文献3では、ビスフェノール類ホルムアルデヒド縮合物を添加することで性能向上を図ることが記載されている。具体的には、特許文献2には、ビスフェノールA・スルホン酸ナトリウム・ホルムアルデヒド縮合物(化1)やビスフェノールA・グルタミン酸ナトリウム・ホルムアルデヒド縮合物(化2)が、特許文献3には、ビスフェノールA・アミノベンゼンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物(化3)が、それぞれ開示されている。
【0005】
【化1】

【0006】
【化2】

【0007】
【化3】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−65062号公報
【特許文献2】特開平11−121008号公報
【特許文献3】特開平11−250913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1、2及び3に記載される、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩を添加したもの、ビスフェノール類ホルムアルデヒド縮合物を添加したものは、それぞれ、リグニンだけを添加したものに比べ、放電性能に優れた電池が得られる。
しかしながら、このような電池でも、その特性は十分とは言えず、更なる高性能化が求められている。
【0010】
本発明は、鉛蓄電池の負極板の放電性能を更に向上させた、鉛蓄電池用負極板及びこの負極板を用いた鉛蓄電池を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下のものに関する。
(1)負極活物質に、硫酸バリウム、リグニン、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩、ビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物を、必須成分として含有する鉛蓄電池用負極板。
(2)項(1)において、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩が、負極活物質ペースト調製時の鉛粉量を100質量部として、0.05質量部以上添加される鉛蓄電池用負極板。
(3)項(2)において、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩が、0.2質量部以上添加される鉛蓄電池用負極板。
(4)項(1)乃至(3)の何れかにおいて、リグニンとビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物の質量混合比が、8:2〜2:8である鉛蓄電池用負極板。
(5)項(1)乃至(4)の何れかにおいて、リグニンとビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物とが、負極活物質ペースト調製時の鉛粉量を100質量部として、合計質量を0.05質量部以上となるように添加する鉛蓄電池用負極板。
(6)項(5)において、リグニンとビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物の合計質量を0.1量部以上となるように添加する鉛蓄電池用負極板。
(7)項(1)乃至(6)の何れかに記載される鉛蓄電池用負極板を用いた、鉛蓄電池。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、鉛粉に対し、硫酸バリウム、リグニン、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩、ビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物を添加することで優れた放電性能が得ることができる。
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩が、負極活物質ペースト調製時の鉛粉量を100質量部として、0.05質量部以上、好ましくは、0.2質量部以上添加される場合は、この負極板を用いた鉛蓄電池の放電性能が、より一層向上する。
リグニンとビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物の質量混合比が、8:2〜2:8である場合は、この負極板を用いた鉛蓄電池の放電性能の向上が、より一層大きい。
リグニンとビスフェノール類・ホルムアルデヒド縮合物とが、負極活物質ペースト調製の鉛粉量を100質量部として、合計質量を0.05質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上となるように添加される場合は、この負極板を用いた鉛蓄電池の放電性能の向上が、より一層大きい。
【0013】
本発明の鉛蓄電池は、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩、リグニン、ビスフェノール類・ホルムアルデヒド縮合物を混合することで、単体あるいはこれ等の中の2つの組み合わせよりも、より大きな放電性能の向上が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩の添加量に関し、放電容量試験結果を示す図である。
【図2】リグニンとビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物の質量混合比に関し、放電容量試験結果を示す図である。
【図3】リグニンとビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物の合計質量の添加量に関し、放電容量試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<負極活物質>
(鉛粉)
本発明にて述べる鉛粉は、ボールミル式又はバートンポット式の何れかの鉛粉製造機を用いて製造したものを、好適に用いることができる。
ボールミル式は、空気を供給しながら回転しているドラム内に多数の鉛塊を投入し、鉛塊表面を剥離しながら鉛粉の生成と鉛粉の酸化とを同時に行うものであり、バートンポット式は、溶融鉛を撹拌翼によって激しく撹拌し飛散させて、その飛沫を酸化する方法である。
【0016】
上記鉛粉は、その製法の違いから、ボールミル式にて製造された鉛粉の方が、粒径が小さなものとなる。活物質に用いる鉛粉は、この粒径の小さなものを用いることで、活物質の比表面積が向上し、充放電特性が向上することから、ボールミル式にて製造されたものが好ましい。
尚、鉛粉の粒径は、特に制限されるものではないが、平均粒子径を0.4〜1μmとするものが好ましい。
また、本明細書にて述べる平均粒子径は、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めた際に、体積50%に相当する点の粒子径(D50)のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0017】
(硫酸バリウム)
本発明にて述べる硫酸バリウムは、化学反応で製造した沈降性硫酸バリウムを、好適に用いることができる。これは、沈降性硫酸バリウムが、合成時の条件により粒子の大きさを制御することができることによる。
硫酸バリウムの1次粒子径は、特に制限されるものではないが、0.01〜1.5μm程度のものが、充放電性能のバランスがよく、好ましい。硫酸バリウムは、主に放電時に生成する硫酸鉛結晶を微細化させることを目的として添加される。
【0018】
(リグニン)
本発明にて述べるリグニンは、木化した植物体の主成分の一つで、木材中の20〜30質量%を占めるものである。リグニンは、活物質を微細化させることを目的として添加される。
リグニンは、工業的には化学パルプ製造工程における残渣として得られる。リグニンの抽出方法としてはサルファイト法とクラフト法がよく知られている。
【0019】
本発明にて述べるサルファイト法とは、リグニンをスルホン化して,リグニンスルホン酸塩として溶出させる方法である。サルファイト法で得られるリグニンとしてはバニレックスN(日本製紙ケミカル株式会社製、商品名)、バニレックスHW(日本製紙ケミカル株式会社製、商品名)等がある。
本発明にて述べるクラフト法とは、リグニンをアルカリチオリグニンとして溶出させる方法である。クラフト法で得られるリグニンとしては、インジュリンAT(Westvaco製、商品名)、クラフトプレックス(Westvaco製、商品名)等がある。
【0020】
(ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩)
本発明にて述べるナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩は、界面活性剤として用いられており、より詳細には、β−ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩を用いることができる。
より具体的には、デモールN、デモールNL、デモールRN、デモールRN−L、デモールT、デモールT−45(全て、花王株式会製、商品名)等を用いることができる。
【0021】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩の添加量は、特に制限されるものではないが、負極活物質ペースト調製時の鉛粉量を100質量部として、0.05質量部以上とすることが好ましく、さらに好ましくは、0.2質量部以上である。0.05質量部未満では、徐々に放電容量の伸びが小さくなる。また、0.2質量部以上とすることにより、充分な放電容量を確保することができる。
【0022】
(ビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物)
本発明にて述べるビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物は、リグニンと同様に、負極活物質の粗大化を抑制する作用をする上に、鉛蓄電池の充放電に際して酸化又は還元されやすい部分を有しないため、同縮合物を負極活物質に添加しておくと、充放電により負極活物質が粗大化するのを抑える効果を持続させることができる。ビスフェノール類は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等である。
【0023】
また、リグニンは、充電の際に硫酸鉛からイオン化した鉛イオンに吸着して鉛イオンの反応性を低下させてしまうため、負極活物質の充電反応を阻害し、充電受け入れ性の向上を抑制するという副作用があるが、上記ビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物は、リグニンに比べて、鉛イオンに吸着する量が少ないため、充電反応を阻害する副作用が少ない。従って、負極活物質にビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物を添加すると、負極活物質の改善された充電受入性を維持するとともに、充放電の繰り返しにより充放電の反応性が低下するのを抑制して、負極板の充電受け入れ性及び寿命性能を向上させることができる。この場合、炭素質導電材を添加しても良い。
ビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物としては、(化1)に示したビスフェノールA・スルホン酸ナトリウム・ホルムアルデヒド縮合物、具体的には、ビスパーズP125(日本製紙ケミカル株式会社製、商品名)、(化3)に示したビスフェノールA・アミノベンゼンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物、具体的には、ビスパーズP215(日本製紙ケミカル株式会社製、商品名)等がある。
【0024】
前述したリグニンと、ビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物の質量混合比は、特に制限されるものではないが、8:2〜2:8であることが好ましく、この数値を超えた範囲では、徐々に容量が低下する。
また、リグニンと、ビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物の合計質量は、特に制限されるものではないが、負極活物質ペースト調製時の鉛粉量を100質量部として、0.05質量部以上とすることが好ましく、さらに好ましくは、0.1質量部以上である。0.05質量部未満では、徐々に放電容量の伸びが小さくなる。また、0.1質量部以上とすることにより、充分な放電容量を確保することができる。
【0025】
(炭素質導電材)
本発明にて述べる炭素質導電材は、工業的に品質制御して製造される、平均粒子径:3〜500nm程度の炭素の微粒子を、好適に用いることができる。炭素質導電材は、主に活物質の導電性を向上させ、充電性能の向上を目的として添加される。
【0026】
尚、炭素質導電材を添加する場合は、負極活物質ペースト調製時の鉛粉量を100質量部として、0.05〜5質量部添加することが好ましく、0.05質量部未満では、充電性能向上の効果が現れず、5質量部を超えると、充電性能向上の効果が徐々に小さくなるばかりでなく、ペーストが硬くなり格子基板にペーストを充填し難くなる。
【0027】
<鉛蓄電池>
本発明にて述べる鉛蓄電池は、特に制限されるものではないが、鉛又は鉛合金製の格子基板に活物質を担持させた正負極板を、セパレータを介して組み立て極板群とし、この極板群を電槽に収容し、電槽に電解液を注入したものを用いることができる。
極板は、クラッド式、ペースト式又はチュードル式のもの等を用いることができるが、製造性が良く、容易に極板面積を増やすことができるペースト式のものが好ましい。ペースト式極板は、格子基板に活物質ペーストを充填し担持させたものである。
【0028】
格子基板の製造方法は、重力鋳造方式(GDC:Gravity Die Casting)、連続鋳造方式、エキスパンド方式、打ち抜き方式等があるが、重力鋳造方式を用いることが好ましい。これは、鋳造可能な格子骨の太さに理論上限界がなく、集電特性及び耐食性に優れているためである。
【0029】
重力鋳造方式について、より詳細に述べると、格子基板の原材料金属(合金)を溶融し、この溶融金属(合金)に耐えうる金型へ、溶融金属(合金)を重力により流し込み、鋳造するもので、高速に、格子基板を形成することができる。
格子基板の材質は、主原料を鉛とするもので、これに合金材質として、スズ、カルシウム、アンチモン等を用いることができる。
【0030】
電解液は、特に限定されるものでないが、希硫酸を精製水で希釈し、質量パーセント濃度で約30質量%前後に調合したものを、電池容量・寿命等を考慮した適正な濃度に調整(特性に合わせて硫酸マグネシウム、シリカゲル等の添加剤を加える場合もある)して、注液するのが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0032】
<負極板の作製>
(実施例1)
リグニンとして、クラフト法で製造されるクラフトリグニン(Westvaco製、商品名:インジュリンAT)と、化3で示す構造式のビスフェノールA・アミノベンゼンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物(日本製紙ケミカル株式会社製、商品名:ビスパーズP215)とを、8:2の質量混合比で混合し、この混合物を、一酸化鉛を主成分とする鉛粉100質量部に対して0.2質量部配合し、β−ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製、商品名:デモールN):0.05質量部、硫酸バリウム:0.3質量部、ポリエステル繊維(SAEHAN製、商品名:M−203、繊維長:3.0mm、繊維径:2.0tex):0.03質量部を加えて混合する。次に、水:10質量部を加えて混練をした後、更に比重1.26(20℃換算)の希硫酸を10質量部加えて再び混練した活物質ペーストを作製した。
【0033】
作製した活物質ペーストを、鉛−アンチモン合金(アンチモン含有量:3質量%)を溶融し、重力鋳造方式によって作製した、縦:67mm、横:44mm、厚み:2.1mmの格子基板に充填した。充填後は、温度:40℃、湿度:98%、時間:40時間にて熟成させ、更に温度:60℃、時間:24時間にて乾燥させ、負極板とした。
【0034】
(実施例2〜9)
β−ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の添加量を、負極活物質ペースト調製時の鉛粉量を100質量部として、0.1質量部(実施例2)、0.2質量部(実施例3)、0.4質量部(実施例4)、0.6質量部(実施例5)、0.8質量部(実施例6)、1.0質量部(実施例7)、1.2質量部(実施例8)、1.4質量部(実施例9)のそれぞれに変更する以外は、実施例1と同様にして負極板とした。
【0035】
(実施例10〜12)
クラフトリグニンと、ビスフェノールA・アミノベンゼンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物の質量混合比を、6:4(実施例10)、4:6(実施例11)、2:8(実施例12)のそれぞれに変更する以外は、実施例1と同様にして負極板とした。
【0036】
(実施例13〜18)
クラフトリグニンと、ビスフェノールA・アミノベンゼンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物の混合物を、合計質量が0.05質量部(実施例13)、0.1質量部(実施例14)、0.3質量部(実施例15)、0.4質量部(実施例16)、0.5質量部(実施例17)、0.6質量部(実施例18)となるように変更する以外は、実施例1と同様にして負極板とした。
【0037】
(比較例1)
β−ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして負極板とした。
【0038】
(比較例2)
ビスフェノールA・アミノベンゼンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物を添加しない(クラフトリグニンを0.2質量部配合する)こと以外は、実施例1と同様にして負極板とした。
【0039】
(比較例3)
クラフトリグニンを添加しない(ビスフェノールA・アミノベンゼンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物を0.2質量部配合する)こと以外は、実施例1と同様にして負極板とした。
【0040】
前述した実施例、比較例について、β−ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の添加量、クラフトリグニンとビスフェノールA・アミノベンゼンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物の質量混合比、及び、クラフトリグニンとビスフェノールA・アミノベンゼンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物の合計質量を、下記表1に纏めて記載する。
【0041】
【表1】

【0042】
<正極板の作製>
(実施例、比較例の全てに共通)
鉛−アンチモン合金(アンチモン含有量:4質量%)を溶融し、重力鋳造方式によって、縦:67mm、横:44mm、厚み:3.7mmの格子基板を作製した。
この格子基板に、一酸化鉛を主成分とする鉛粉100質量部に対して、ポリエステル繊維(SAEHAN製、商品名:M−203、繊維長:3.0mm、繊維径:2.0tex)を0.1質量部加えて混合し、次に水を10質量部、希硫酸を10質量部加えて再び混練して製作した活物質ペーストを充填した。
充填後は、温度:40℃、湿度:98%、時間:40時間にて熟成させ、更に温度:60℃、時間:24時間にて乾燥させ、正極板とした。
【0043】
<鉛蓄電池の作製>
(実施例、比較例の全てに共通)
ポリエチレン製のセパレータを介して、2枚の未化成正極板を実施例1〜18及び比較例1〜3にて作製した各々の未化成負極板3枚で挟持し、極板群を組立てた。
【0044】
この極板群を電槽の中に入れ、比重1.05(20℃換算)の希硫酸電解液を注入して化成した後、電解液を排出した。そして、ポリエチレン製セパレータを介して、1枚の化成済の負極板と2枚の化成済の正極板とではさみこんだ構成の極板群を組立て、比重1.28(20℃換算)の希硫酸電解液を注入して、2V単板電池を作製した。
【0045】
<放電試験方法>
作製した鉛蓄電池を満充電し雰囲気温度:25℃中に24時間静置した後、5時間率放電(0.2CA、終止電圧1.7V)を行った。
【0046】
<放電試験結果>
図1、2、3に25℃で5時間率放電を行ったときの放電容量を示す。
実施例1〜9にて作製した負極板を用いた鉛蓄電池は、図1に示されるように、従来の比較例1、に対し、5時間率放電容量が大きくなり、放電特性が向上した。特に、β−ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の添加量が、0.05質量部以上、更に好ましくは、0.2質量部以上で効果が大きくなった。1質量部を超えて添加しても、効果の著しい変化は見られないので1質量部までが適当である。
【0047】
実施例1及び10〜12にて作製した負極板を用いた鉛蓄電池は、図2に示されるように、従来の比較例2、3に対し、5時間率放電容量が大きくなり、放電特性が向上した。特にリグニンとビスフェノールA・アミノベンゼンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物の質量混合比が、8:2〜2:8で効果が大きくなった。
【0048】
実施例1及び13〜18にて作製した負極板を用いた鉛蓄電池は、図3に示されるように、リグニンとビスフェノールA・アミノベンゼンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物の合計質量が大きくなるほど5時間率放電容量が大きくなり、放電特性が向上した。特に、リグニンとビスフェノールA・アミノベンゼンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物の合計質量が、0.05質量部以上、更に好ましくは、0.1質量部以上で効果が大きくなった。0.5質量部を超えて添加しても、効果の著しい変化は見られないので0.5質量部までが適当である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質に、硫酸バリウム、リグニン、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩、ビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物を、必須成分として含有する鉛蓄電池用負極板。
【請求項2】
請求項1において、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩が、負極活物質ペースト調製時の鉛粉量を100質量部として、0.05質量部以上添加される鉛蓄電池用負極板。
【請求項3】
請求項2において、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩が、0.2質量部以上添加される鉛蓄電池用負極板。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかにおいて、リグニンとビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物の質量混合比が、8:2〜2:8である鉛蓄電池用負極板。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかにおいて、リグニンとビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物とが、負極活物質ペースト調製時の鉛粉量を100質量部として、合計質量を0.05質量部以上となるように添加する鉛蓄電池用負極板。
【請求項6】
請求項5において、リグニンとビスフェノール類・スルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物の合計質量を0.1量部以上となるように添加する鉛蓄電池用負極板。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載される鉛蓄電池用負極板を用いた、鉛蓄電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−43594(P2012−43594A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182754(P2010−182754)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】