説明

鉱山機械の情報収集システム

【課題】建設機械の稼働情報を無線通信によって収集する際に、通信の中断を低減して、稼働情報をより確実に収集すること。
【解決手段】鉱山機械の情報収集システム1が有する情報収集装置10は、ダンプトラック20からその稼働情報を収集する。情報収集装置10は、第2無線通信装置18を介して所定のタイミングでダンプトラック20の位置情報の送信を要求する位置情報要求命令を送信する。位置情報要求命令に対する応答が第2無線通信装置18に受信されたダンプトラック20が、自身の稼働情報の通信が終了するまで車載無線通信装置の通信可能範囲に滞在できる場合、情報収集装置10は、第2無線通信装置18が応答を受信したダンプトラック20の稼働情報を収集する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱山機械の稼働情報を収集する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
土木現場又は鉱山の採石現場では、油圧ショベル、ダンプトラック等、様々な建設機械が稼働する。近年においては、無線通信によって建設機械の稼働情報を取得し、建設機械の動態管理を行うことが行われつつある。例えば、特許文献1には、車両に関するデータを管理センターに無線送信する技術が記載されている。この技術は、複数の地点における無線通信回線の回線状態が記録された回線状態マップと、この回線状態マップから車両の現在位置における回線状態を取得して、送信手段による車両のデータの無線送信を行うか否かを判断するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−11039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各建設機械の記憶装置に稼働情報を収集して記憶し、サービスマン等が各建設機械にアクセスして稼働情報をダウンロードする作業を行うならば、複数の建設機械に対するダウンロード作業は煩雑であり、稼働情報を管理する側にとってはリアルタイム性に乏しい。したがって、無線通信手段を用いて各建設機械の稼働情報を取得するのである。建設機械の稼働現場として鉱山を想定すると、一般に鉱山は広大であるため、ダンプトラック等の建設機械(鉱山機械)が保持する稼働情報を無線通信により受信するための複数の中継器が、管理装置が設置されている管理施設とは別個の場所に複数設置される必要がある。しかし、複数の中継器を用いても、鉱山のすべての範囲で鉱山機械と中継器との相互通信を良好に確保することはできないため、鉱山機械と中継器との間においては、通信可能な範囲と通信不可能な範囲とが生じる。
【0005】
鉱山機械の走行中に鉱山機械から管理装置が配置されている管理施設へ稼働情報を送信する場合、通信開始時においては鉱山機械が通信可能な範囲であったが通信の途中で通信可能な範囲を逸脱してしまい、稼働情報の送受信が不可能になることがある。稼働情報の送受信が中断した鉱山機械は、稼働情報を再度送信する必要があるので、管理装置が稼働情報を収集する際の効率が低下する。このような鉱山に特有の問題は、特許文献1には言及されておらず、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、鉱山機械の稼働情報を無線通信によって収集する際に、通信の中断を抑止して、稼働情報をより確実に収集することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、鉱山機械に搭載されて、前記鉱山機械の稼働状態に関する稼働情報を収集する車載情報収集装置と、前記鉱山機械に搭載されて、前記鉱山機械の位置に関する位置情報を検出する位置情報検出装置と、前記鉱山機械に搭載されて通信を行う第1無線通信装置と、前記第1無線通信装置と通信する第2無線通信装置を介して前記稼働情報を収集する情報収集装置と、を含み、前記情報収集装置は、前記第2無線通信装置を介して所定のタイミングで前記鉱山機械の位置情報の送信を要求する位置情報要求命令を送信し、前記位置情報要求命令に対する応答が前記第2無線通信装置に受信された鉱山機械が、自身の稼働情報の通信が終了するまで前記第1無線通信装置の通信可能範囲に滞在できる場合には、前記応答が受信された鉱山機械の稼働情報を収集することを特徴とする鉱山機械の情報収集システムである。
【0008】
本発明において、前記情報収集装置は、前記応答が受信された鉱山機械の位置情報、速さ、進行方向、稼働情報通信時間及び前記通信可能範囲の位置情報に基づいて、前記応答が受信された鉱山機械が、自身の稼働情報の通信が終了するまで前記通信可能範囲に滞在可能か否かの判定を行うことが好ましい。
【0009】
本発明において、前記情報収集装置は、前記車載情報収集装置から、前記通信可能範囲かつ前記稼働情報を受け取るための無線通信設備が用意された場所で前記鉱山機械が停止しているという情報を受け取った場合、前記判定を行わずに、前記無線通信設備が用意された場所で停止している鉱山機械の稼働情報を収集することが好ましい。
【0010】
本発明は、鉱山機械に搭載されて通信を行う車載無線通信装置と、前記車載無線通信装置の通信可能範囲を記憶する車載記憶装置と、前記鉱山機械に搭載されて、前記鉱山機械の位置に関する位置情報を検出する位置情報検出装置と、前記鉱山機械に搭載されて、前記鉱山機械の稼働状態に関する稼働情報を取得する車載情報収集装置と、前記稼働情報を収集する情報収集装置と、を含み、前記車載情報収集装置は、前記稼働情報の通信が終了するまで前記車載無線通信装置の通信可能範囲に滞在できる場合には、前記情報収集装置に前記車載無線通信装置を介して前記稼働情報を送信することを特徴とする鉱山機械の情報収集システムである。
【0011】
本発明において、前記車載情報収集装置は、前記鉱山機械の位置情報、速さ、進行方向、稼働情報通信時間及び前記通信可能範囲の位置情報に基づいて、稼働情報の通信が終了するまで前記通信可能範囲に滞在可能か否かの判定を行うことが好ましい。
【0012】
本発明において、前記車載記憶装置は、前記稼働情報を送信したときにおける前記鉱山機械の移動経路を稼働情報送信可能経路とし、前記通信可能範囲に滞在可能な時間と対応付けて記憶し、前記車載情報収集装置は、前記鉱山機械が前記稼働情報送信可能経路を移動中に前記通信可能範囲に入った場合には、前記滞在可能な時間及び稼働情報通信時間に基づいて、稼働情報の通信が終了するまで前記通信可能範囲に滞在可能か否かの判定を行うことが好ましい。
【0013】
本発明において、前記車載情報収集装置は、前記通信可能範囲かつ前記稼働情報を受け取るための無線通信設備が用意された場所で前記鉱山機械が停止している場合、前記判定を行わずに前記稼働情報を送信することが好ましい。
【0014】
本発明において、前記鉱山機械が、前記無線通信設備が用意された場所で停止していることの判断は、前記鉱山機械の車速の状態と前記鉱山機械に積まれる積荷の積載量の変化との少なくとも一方の条件を用いて行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、鉱山機械の稼働情報を無線通信によって収集する際に、通信の中断を抑止して、稼働情報をより確実に収集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施形態1に係る鉱山機械の情報収集システムが適用される現場を示す図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る鉱山機械の情報収集システムが有する情報収集装置の機能ブロック図である。
【図3】図3は、ダンプトラックの構成を示す図である。
【図4】図4は、車載情報収集装置及びその周辺機器を示す機能ブロック図である。
【図5】図5は、実施形態1に係る稼働情報収集制御の手順を示すフローチャートである。
【図6】図6は、ダンプトラックの状態とその判断手法との対応を示す図表である。
【図7】図7は、稼働情報の通信が終了するまで通信可能範囲にダンプトラックが滞在可能か否かを判定する手法の一例を示す図である。
【図8】図8は、実施形態2に係る稼働情報収集制御の手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、実施形態3に係る稼働情報の収集に関する処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、移動経路の履歴を示す移動経路情報と、その移動経路の履歴に対応する通信可能範囲に滞在可能な時間とを対応付けたデータテーブルの一例を示す図である。
【図11】図11は、ダンプトラックの移動経路と通信可能範囲とを示す図である。
【図12】図12は、ダンプトラックの移動経路と通信可能範囲とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0018】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る鉱山機械の情報収集システムが適用される現場を示す図である。鉱山機械とは、鉱山において各種作業に用いる機械類の総称である。本実施形態において、鉱山機械の一種の運搬車両として、砕石又は砕石の掘削時に発生した土砂若しくは岩石等を運搬する運搬車両としてのダンプトラック20を例とするが、これに限定されるものではない。例えば、本実施形態に係る鉱山機械とは、砕石等を掘削する掘削機械として機能する油圧ショベル又は電気ショベル、ホイールローダであってもよい。
【0019】
<鉱山機械の情報収集システムの概要>
鉱山機械の情報収集システム(以下、必要に応じて情報収集システムという)1は、情報収集装置10が、無線通信によって鉱山機械としてのダンプトラック20の稼働情報を、ダンプトラック20から収集するものである。情報収集装置10は、移動体であるダンプトラック20とは異なり、例えば、鉱山の管理施設に設置されて鉱山機械及び鉱山の運営等を管理する管理装置の一種である。このように、情報収集装置10は、原則として移動を考慮していないものである。情報収集装置10が収集したダンプトラック20の稼働情報は、ダンプトラック20の稼働状態に関する情報であり、例えば、走行時間、走行距離、エンジン水温、異常の有無、異常の箇所、燃料消費率又は積載量等である。稼働情報は、主としてダンプトラック20の予防保全又は異常診断等に用いられる。したがって、稼働情報は、鉱山の生産性向上又は鉱山のオペレーションの改善といったニーズに応えるために有用である。
【0020】
情報収集装置10が鉱山で稼働するダンプトラック20の稼働情報を収集するために、情報収集装置10は、アンテナ18Aを有する第2無線通信装置18に接続されている。ダンプトラック20は、稼働情報を送信したり、情報収集装置10と相互通信したりするためのアンテナ28Aを有している。この他に、ダンプトラック20は、GPS(Global Positioning System:全方位測位システム)衛星5A、5B、5Cからの電波をGPS用アンテナ28Bで受信し、自己位置を測位することができる。
【0021】
ダンプトラック20がアンテナ28Aから送信する電波の出力は、鉱山全域をカバーできるほどの通信可能範囲のものではない。また、アンテナ28Aから送信する電波は、波長の関係から高い山などの障害物を越えて遠方まで送信することができない。もちろん、高出力の電波を出すことができる通信装置を用いれば、通信可能範囲は広がり通信不可能な場所をなくすことはできるが、鉱山は広大であるため、中継器や通信装置のコストを抑える必要があることや、鉱山がある地域によっては整備された通信インフラを確保することが期待できないといった状況に対応するために、無線LAN(Local Area Network)などの限られた範囲内で情報通信網を形成できる無線システムを用いる。無線LANなどによれば、低コストで鉱山機械と管理施設(情報収集装置10)との相互通信を整えることは可能ではあるものの通信障害の問題を解決する必要がある。ダンプトラック20がアンテナ28Aから送信する電波の到達範囲は限られている。したがって、ダンプトラック20と情報収集装置10との距離が離れていたり、両者間に山が存在していたりすると、第2無線通信装置18は、ダンプトラック20からの電波を受信することができない。このため、情報収集システム1は、ダンプトラック20がアンテナ28Aから送信する電波を中継して、第2無線通信装置18に中継する中継器3を有している。中継器3により、情報収集装置10は、自身から離れた位置で稼働しているダンプトラック20から、無線通信により稼働情報を収集することができる。
【0022】
中継器3の配置場所を中心とする周囲の所定領域(図1に円形で示す領域)は、ダンプトラック20が有する車載無線通信装置27(第1無線通信装置)が中継器3との間で無線通信できる範囲、すなわち、通信可能範囲7である。この例では、中継器3を中心とした半径Rの円が通信可能範囲7であるが、他の中継器3との関係又は地形等により、通信可能範囲7の形状は必ずしも円とはならない。ダンプトラック20cは、図1中の矢印で示す方向(通信可能範囲7の外側から内側へ向かう方向)に走行している。通信可能範囲7内のダンプトラック20aは、中継器3を介して第2無線通信装置18と通信が可能である。なお、通信可能範囲7内のダンプトラック20aであっても、送信すべき稼働情報のデータの量と車速(速さ)との関係によっては、第2無線通信装置18との通信ができないこともある。例えば、データの量が多く、かつダンプトラック20aの車速が大きい場合には、データの通信が終了する前にダンプトラック20aが通信可能範囲7の外に出てしまい、第2無線通信装置18との通信ができないことがあり得る。
【0023】
通信可能範囲7の外を走行中のダンプトラック20bは、車載無線通信装置27の通信可能範囲外を走行しているので、中継器3を介した第2無線通信装置18との通信はできない。同じく通信可能範囲7の外を走行中のダンプトラック20cは、通信可能範囲7に向かって走行しているので、現在は第2無線通信装置18と通信できないが、そのまま通信可能範囲7に向かって走行を続ければ通信できるようになる。情報収集システム1は、電波強度、車速及びデータ量等を考慮して、ダンプトラック20の車載無線通信装置27と第2無線通信装置18との間で、安定かつ確実な無線通信を実現して、確実かつ効率的にダンプトラック20の稼働情報を収集するものである。次に、情報収集装置10について、より詳細に説明する。
【0024】
<情報収集装置>
図2は、実施形態1に係る鉱山機械の情報収集システムが有する情報収集装置10の機能ブロック図である。情報収集装置10は、処理装置12と、記憶装置13と、入出力部(I/O)15とを含む。情報収集装置10は、入出力部15に、表示装置16と、入力装置17と、第2無線通信装置18とが接続されている。情報収集装置10は、例えば、コンピュータである。処理装置12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。記憶装置13は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ若しくはハードディスクドライブ等又はこれらを組み合わせて構成されている。入出力部15は、処理装置12と、処理装置12の外部に接続する表示装置16、入力装置17及び第2無線通信装置18との情報の入出力(インターフェース)に用いられる。
【0025】
記憶装置13は、ダンプトラック20の稼働情報を収集するための稼働情報収集用コンピュータプログラム及びダンプトラック20が有する車載無線通信装置27(第1無線通信装置)と各中継器3との通信可能範囲7が格納された通信可能範囲データベース(DB)14等を記憶している。通信可能範囲データベース14は、ダンプトラック20が有する車載無線通信装置27が中継器3と通信可能な範囲の位置情報であり、例えば、中継器3毎に複数の座標の集合で記述されている。
【0026】
例えば、図1に示す中継器3を中心とした半径Rの円の内側が通信可能範囲7であるとする。中継器3の位置を原点としたX−Y座標系を考えると、通信可能範囲7は、X+Y≦Rの範囲となる。通信可能範囲7は、電波強度を計測可能な計測器等を用いた実測によって求めることができる。また、通信可能範囲7は、中継器3及び車載無線通信装置27の仕様から求めることもできる。さらに、実測と車載無線通信装置27等の仕様とを併用して求めることもできる。なお、中継器3の設置場所は、予めGPSセンサ等で計測しておき、その設置場所を示すデータを通信可能範囲データベース14に記憶しておく。
【0027】
情報収集装置10がダンプトラック20の稼働情報を収集する場合、処理装置12は、例えば、次のような処理を実行する。まず、第2無線通信装置18を介して所定のタイミング(一定周期)でダンプトラック20の位置情報の送信を要求する位置情報要求命令(必要に応じてブロードキャストという)を送信する。鉱山で稼働する複数のダンプトラック20のうち、ブロードキャストを受信したダンプトラック20は、応答を近くの中継器3に送信する。この応答に含まれる情報は、少なくともダンプトラック20自身の位置情報、車速(速さ)及び進行方向を含む。前記応答は、さらに、複数のダンプトラック20を識別するための識別子及び応答の時刻情報の少なくとも一つを含んでいてもよい。中継器3を介して第2無線通信装置18が応答を受信し、かつ処理装置12が稼働情報を取得できたダンプトラック20は、少なくとも第2無線通信装置18が応答を受信した時点(ダンプトラック20が応答を送信した時点)においては通信可能範囲7内に存在すると判断することができる。処理装置12は、そのようなダンプトラック20に対して、ブロードキャストに対する応答を第2無線通信装置18に送信したダンプトラック20が、自身の送信すべき稼働情報の通信が終了するまで通信可能範囲7に滞在できるか否かを判定する。処理装置12は、例えば、ダンプトラック20の位置情報、速さ、進行方向、送信すべき稼働情報の通信に要する時間(稼働情報通信時間)及び通信可能範囲7の位置情報に基づいて、ダンプトラック20が、自身の送信すべき稼働情報の通信が終了するまで通信可能範囲7に滞在できるか否かを判定する。判定対象のダンプトラック20が、自身の送信すべき稼働情報の通信が終了するまで通信可能範囲7に滞在できる場合、処理装置12は、応答が受信されたダンプトラック20、すなわち、判定対象のダンプトラック20の稼働情報を収集する。
【0028】
稼働情報収集用コンピュータプログラムは、例えば、上述したような処理を実現するための命令が記述されている。情報収集装置10がダンプトラック20の稼働情報を収集する場合、処理装置12は、稼働情報収集用コンピュータプログラム及び通信可能範囲データベース14を記憶装置13から読み込み、稼働情報収集用コンピュータプログラムに記述された命令を実行することにより、ダンプトラック20の稼働情報を収集して、記憶装置13に記憶させる。
【0029】
表示装置16は、例えば、液晶ディスプレイ等であり、ダンプトラック20の稼働情報を収集する際に必要な情報を表示する。入力装置17は、例えば、キーボード、タッチパネル又はマウス等であり、ダンプトラック20の稼働情報を収集する際に必要な情報を入力する。第2無線通信装置18は、アンテナ18Aを有しており、中継器3を介してダンプトラック20の車載無線通信装置27との間で相互の無線通信を実行し、情報のやり取りをする。次に、ダンプトラック20について、より詳細に説明する。
【0030】
<ダンプトラック>
図3は、ダンプトラックの構成を示す図である。ダンプトラック20は、積荷を積載して走行し、所望の場所でその積荷を排出する。ダンプトラック20は、車両本体21と、ベッセル22と、車輪23と、サスペンションシリンダ24と、回転センサ25と、サスペンション圧力センサ(圧力センサ)26と、アンテナ28Aが接続された車載無線通信装置(第1無線通信装置)27と、GPS用アンテナ28Bが接続された位置情報検出装置(本実施形態ではGPS受信機)29と、車載情報収集装置30と、を有する。なお、ダンプトラック20は、上記構成以外にも一般的な運搬機が備えている各種の機構及び機能を備えている。なお、本実施形態1では、前輪(車輪23)で操舵するタイプのダンプトラック20を用いて説明するが、車体を前部と後部に分割しそれらを自由関節で結合したアーティキュレート式ダンプトラックにも適用可能である。
【0031】
ダンプトラック20は、ディーゼルエンジン等の内燃機関が発電機を駆動することによって発生した電力で電動機を駆動し、電動機の出力軸に機械的に連結された車輪23を駆動する。このように、ダンプトラック20は、いわゆる電気駆動方式であるが、ダンプトラック20の駆動方式はこれに限定されるものではない。ベッセル22は、積荷を積載する荷台として機能するものであり、車両本体21の上部に配置されている。ベッセル22には、積荷として、砕石又は土砂等が油圧ショベル等の積込機によって積載される。車輪23は、タイヤとホイールとで構成され、車両本体21に装着されており、上述したように車両本体21から動力が伝達されることで駆動される。サスペンションシリンダ24は、車輪23と車両本体21との間に配置されている。車両本体21及びベッセル22、さらに積荷が積載された時の積荷の重量に応じた負荷が、サスペンションシリンダ24を介して車輪23に作用する。
【0032】
回転センサ25は、車輪23の回転速度を検出することで車速を計測する。サスペンション圧力センサ(必要に応じて圧力センサともいう)26は、サスペンションシリンダ24に作用する負荷を検出する。すなわち、サスペンションシリンダ24は、内部に作動油が封入されており、積荷の重量に応じて伸縮動作する。なお、圧力センサ26は、ダンプトラック20の各サスペンションシリンダ24に設置されており、その作動油の圧力を検出することで積荷の重量(積載量)を計測することができる。GPS用アンテナ28Bは、GPS(Global Positioning System)を構成する複数のGPS衛星5A、5B、5C(図1参照)から出力される電波を受信する。GPS用アンテナ28Bは、受信した電波を位置情報検出装置29に出力する。位置情報検出装置29は、GPS用アンテナが受信した電波を電気信号に変換し、自身の位置情報、すなわちダンプトラック20の位置情報を算出(測位)する。車載無線通信装置27は、アンテナ28Aを介して図1に示す中継器3又は管理施設のアンテナ18Aとの間で無線通信を行う。車載無線通信装置27は、車載情報収集装置30に接続されている。このような構造により、車載情報収集装置30は、アンテナ28Aを介して各情報を送受信する。次に、車載情報収集装置30及びその周辺機器について説明する。
【0033】
<車載情報収集装置及びその周辺機器>
図4は、車載情報収集装置30及びその周辺機器を示す機能ブロック図である。ダンプトラック20が有する車載情報収集装置30は、車載記憶装置31と、車載無線通信装置27と、位置情報検出装置29と、鉱山機械情報取得装置32とが接続されている。車載情報収集装置30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)とメモリとを組み合わせたコンピュータである。車載情報収集装置30は、鉱山機械情報取得装置32から、ダンプトラック20の稼働状態に関する稼働情報を収集する。
【0034】
車載記憶装置31は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ若しくはハードディスクドライブ等又はこれらを組み合わせて構成されている。車載記憶装置31は、車載情報収集装置30が稼働情報を収集するための命令が記述されたコンピュータプログラムを記憶している。車載情報収集装置30は、前記コンピュータプログラムを読み出し、所定のタイミングで鉱山機械情報取得装置32から稼働情報を取得して、車載記憶装置31へ一時的に記憶させる。ここで、所定のタイミングとは、エンジン水温等のように定常的に監視するものは所定の周期を意味し、異常を示す状態(例えば作動油温度の過昇温異常)が発生した場合は、その発生時を意味する。このとき、車載情報収集装置30は、同一項目の情報について平均値、最頻値又は標準偏差等を求める統計処理を施したりしてもよい。
【0035】
車載情報収集装置30は、図2に示す情報収集装置10からの要求を受けて、車載無線通信装置27を介して、収集した稼働情報を情報収集装置10へ送信する。また、車載情報収集装置30は、位置情報検出装置29からダンプトラック20の位置情報を取得し、この位置情報の場所における車速及び進行方向の情報とともに車載無線通信装置27を介して図2に示す情報収集装置10へ送信する。なお、車速は、位置情報検出装置29で検出しても、ダンプトラック20に搭載されている車速センサによって検出してもよい。進行方向は、例えば、所定時間における位置情報の変化から求めてもよいし、加速度センサを備えて、加速度センサで検出した加速度の向きを進行方向としてもよいし、両者を組み合わせて進行方向を求めてもよい。
【0036】
鉱山機械情報取得装置32は、回転センサ25、圧力センサ26、ベッセル22を昇降させるホイストシリンダーの作動油の圧力変化を検出する油圧センサ33A、ベッセル22を昇降させるためにオペレータが操作するダンプレバーの動作を検知するセンサ33B、燃料センサ33C等の各種センサ類で構成される。また、鉱山機械情報取得装置32には、各種センサ類の他に、各種センサ類の出力信号又は運転者のアクセル操作等により生成される指令信号等の情報を取得してダンプトラック20のエンジンを制御するエンジン制御装置35A、電動機制御装置35B及び油圧制御装置35C等の各種制御装置が含まれる。車載情報収集装置30は、これらの各種センサ類及び各種制御装置から得られた情報を、ダンプトラック20の稼働情報として収集する。次に、本実施形態において、鉱山機械の情報収集システム1がダンプトラック20の稼働情報を収集する制御(稼働情報収集制御)の一例を説明する。
【0037】
<稼働情報収集制御>
図5は、実施形態1に係る稼働情報収集制御の手順を示すフローチャートである。図6は、ダンプトラック20の状態とその判断手法との対応を示す図表である。図7は、稼働情報の通信が終了するまで通信可能範囲7にダンプトラック20が滞在可能か否かを判定する手法の一例を示す図である。本実施形態に係る稼働情報収集制御は、鉱山の管理施設に設置された情報収集装置10が、無線通信を介して、移動体であるダンプトラック20の稼働情報を収集するものである。稼働情報の収集は、管理施設の情報収集装置10にスケジューリングされている。情報収集装置10は、例えば、毎日の定時時刻又は一定の周期で各ダンプトラック20に対して稼働情報の送信を指示する。ステップS101において、情報収集装置10は、ブロードキャストを送信する。ブロードキャストは、比較的短い周期(例えば、1秒に1回)で発信される。鉱山で稼働しているすべてのダンプトラック20がブロードキャストを受信することができる訳ではなく、通信状態が悪い場所に位置しているダンプトラック20がある場合、ブロードキャストを受信できないダンプトラック20も存在する。
【0038】
車載無線通信装置27がブロードキャストを受信したダンプトラック20は、応答を情報収集装置10に対して送信する。車載無線通信装置27がブロードキャストを受信しなかったダンプトラック20は、応答を送信しない。ステップS102において、車載無線通信装置27から送信された応答は、中継器3を介して情報収集装置10に接続されている第2無線通信装置18が受信して、情報収集装置10が取得する。次に、ステップS103に進み、情報収集装置10は、応答に含まれるダンプトラック20の位置情報と、記憶装置14から読み出した通信可能範囲データベース14に格納されている位置情報とを比較する。その結果、第2無線通信装置18に応答を送信したダンプトラック20(第2無線通信装置18が応答を受信したダンプトラック20)が、通信可能範囲7内に存在する場合(ステップS103、Yes)、情報収集装置10は処理をステップS104に進める。第2無線通信装置18が応答を受信したダンプトラック20が、通信可能範囲7内に存在しない場合(ステップS103、No)、稼働情報収集制御の1周期は終了し、次の周期における稼働情報収集制御が開始する。
【0039】
ステップS104において、情報収集装置10は、通信可能範囲7内に存在するダンプトラック20が、特定の状態にあるという情報を受信している場合(ステップS104、Yes)、処理をステップS108に進め、特定の状態にあるという情報を受信していない場合(ステップS104、No)、処理をステップS105に進める。特定の状態とは、ダンプトラック20の稼働情報を受け取るための無線通信設備が設置された場所でダンプトラック20が停止(停車)している状態である。無線通信設備が設置された場所とは、例えば、ダンプトラック20などの鉱山機械へ燃料を供給するための給油所、ダンプトラック20のベッセル22に積載された積荷を降ろすための排土場又は油圧ショベル等が掘削した砕石をダンプトラック20のベッセル22に積み込むための積込場等といった、ダンプトラック20がある程度の時間、停車している蓋然性が高い場所である。このような場所に、稼働情報を収集するための無線通信設備(例えば中継器3)を設けていれば、稼働情報のデータを管理施設に送信できる時間として、給油中の時間、積込中の時間又は排土中の時間を充てることができるので、確実にデータを送信できる。
【0040】
このため、ダンプトラック20が通信可能範囲7内に存在し、かつ特定の状態にある場合(ステップS103でYesかつステップS104でYes)、ステップS108において、情報収集装置10は、ダンプトラック20の車載情報収集装置30を介して車載記憶装置31から無線通信によって稼働情報を収集する。ダンプトラック20が特定の状態にあるか否かを識別するため、ダンプトラック20の車載情報収集装置30は、ブロードキャストに対する応答に、応答の送信時におけるダンプトラック20の状態を示すための情報を含ませて送信する。ダンプトラック20の状態を示すための情報(ダンプ状態情報)としては、例えば、ダンプトラック20の車速情報、ベッセル22の積載量に関する情報又は燃料量の情報等がある。それらのダンプ状態情報に基づき、情報収集装置10は、ダンプトラック20が特定の状態にあることを識別する。
【0041】
例えば、ダンプトラック20の車速が0かつ積載量計測装置として機能する圧力センサ26の圧力が上昇中、すなわち積載量増加中を検知している場合は、ベッセル22に荷物が積載されている最中であるので、ダンプトラック20は積込場で積荷の積載作業中であると判断できる(図6の積込参照)。また、ダンプトラック20の車速が0かつ圧力センサ26の圧力が下降中、すなわち積載量減少中を検知している場合は、ベッセル22の積荷が排出されている最中であるので、ダンプトラック20は排土場で積荷を降ろしていると判断できる(図6の排土参照)。さらに、ダンプトラック20の車速が0かつ燃料センサ33Cが所定の信号として燃料の増加を示す信号を発信しているとき、さらに、ブロードキャストの応答に含まれるダンプトラック20の位置情報が、予め既知である給油所に位置する場合は、ダンプトラック20は給油所で給油を受けていると判断できる(図6の給油参照)。また、中継器3も稼働情報を収集するための無線通信設備に相当するので、通信可能範囲7内で停止しているダンプトラック20も、特定の状態、すなわち、ダンプトラック20が、稼働情報を受け取るための無線通信設備が用意された場所で停止している状態であるとしてもよい。したがって、通信可能範囲7内で車速が0を示している場合も(図6の停止参照)、ダンプトラック20が特定の状態にある。このように、本実施形態において、無線通信設備が用意された場所でダンプトラック20が停止していることの判断は、ダンプトラック20の車速の状態とダンプトラック20に積まれる積荷の積載量の変化との少なくとも一方の条件を用いて行われる。車載情報収集装置30は、ブロードキャストに対する応答にこのような情報を有するダンプ状態情報を含ませて送信し、情報収集装置10は、受信したダンプ状態情報に基づいて、ダンプトラック20の状態を識別する。
【0042】
ダンプトラック20が特定の状態にない場合(ステップS104、No)、ステップS105において、情報収集装置10は、稼働情報通信時間を計算する。稼働情報通信時間は、送信すべき稼働情報の通信を開始してから終了するまでの時間である。稼働情報通信時間は、送信すべき稼働情報の情報量を通信速度で除することにより求めることができる(稼働情報通信時間=標準情報量/通信速度)。送信すべき稼働情報の情報量は、車載情報収集装置30が収集する稼働情報によって変化するが、本実施形態では、予め定められた情報量(標準情報量という)を用いる。通信速度は、車載無線通信装置27、第2無線通信装置18及び中継器3の仕様によって決定される(以下の実施形態も同様)。標準情報量及び通信速度は、情報収集装置10の記憶装置13に記憶されている。情報収集装置10は、稼働情報通信時間を計算するにあたって、記憶装置13から標準情報量及び通信速度の値を読み出して、稼働情報通信時間を求める。なお、標準情報量及び通信速度は既知なので、稼働情報通信時間を予め求めて記憶装置13に記憶させておき、ステップS105においては、情報収集装置10がこれを読み出すようにしてもよい。
【0043】
次に、ステップS106に進み、情報収集装置10は、ダンプトラック20と情報収集装置10との間、より具体的には、車載情報収集装置30と情報収集装置10との間における稼働情報の通信が終了した時点におけるダンプトラック20の位置(通信終了時位置という)を計算する。通信終了時位置は、現時点におけるダンプトラック20の車速及び進行方向が以後も持続するとして求められる。
【0044】
図7に示すように、通信可能範囲7内に存在するダンプトラック20が車速Vcで、進行方向Vce(図7において、車速Vcを示す矢印の延長方向)に向かって進行するものとする。ダンプトラック20の車速Vc及び進行方向Vceの情報は、上述した応答に含まれている。ステップS105で求められた稼働情報通信時間をTとすると、通信開始から終了までは稼働情報通信時間Tだけ要することになる。ダンプトラック20は車速Vcで進行しているので、ダンプトラック20が稼働情報通信時間Tに進む距離Lは、T×Vcとなる。稼働情報の通信が開始される位置(通信開始位置)P(X1、Y1)とすると、位置P(X1、Y1)から進行方向Vceに向かってT×Vc進行した位置E(X2、Y2)が、通信終了位置と予想されることになる。
【0045】
例えば、中継器3の設置位置を原点とするX−Y座標系において、ダンプトラック20の進行方向VceがY軸に対して角度θだけ傾いているとする。通信開始位置P(X1、Y1)と通信終了位置E(X2、Y2)との距離はLである。通信開始位置P(X1、Y1)は、情報収集装置10が応答を受信した位置と同一と見なせるので、座標の値は既知である。したがって、通信終了位置E(X2、Y2)は、E(X1−L×sinθ、Y2+L×cosθ)と表すことができる。このように、通信終了位置E(X2、Y2)は、ダンプトラック20の位置情報、車速(速さ)、進行方向及び稼働情報通信時間に基づいて求めることができる。
【0046】
通信終了位置E(X2、Y2)が求められたら、ステップS107に進み、情報収集装置10は、送信すべき稼働情報の通信が終了するまでダンプトラック20が通信可能範囲7内に滞在可能か否かを判定する。本実施形態において、図7に示すように、通信可能範囲7は、中継器3の位置を中心C(X0、Y0)とした半径Rの円の内側である。したがって、ステップS106で求めた通信終了位置E(X2、Y2)が通信可能範囲7内にあれば、稼働情報の通信が終了するまでダンプトラック20が通信可能範囲7内に滞在可能である。
【0047】
例えば、中心C(X0、Y0)と通信終了位置E(X2、Y2)との距離LeがRよりも小さい場合には、通信終了位置E(X2、Y2)が通信可能範囲7内にあることになる。例えば、情報収集装置10は、距離Leを求めてRと比較し、R>Leであれば、稼働情報の通信が終了するまでダンプトラック20が通信可能範囲7内に滞在可能であると判定する(ステップS107、Yes)。この場合、ステップS108において、情報収集装置10は、ダンプトラック20の車載情報収集装置30を介して車載記憶装置31から無線通信によって稼働情報を収集する。R≦Leであれば、情報収集装置10は、稼働情報の通信が終了するまでダンプトラック20が通信可能範囲7内に滞在可能でないと判定する(ステップS107、No)。この場合、稼働情報収集制御の1周期は終了し、次の周期における稼働情報収集制御が開始する。
【0048】
本実施形態は、移動体であるダンプトラック20の稼働情報を収集するにあたり、ブロードキャストに対して応答があり、かつ送信すべき稼働情報の通信が終了するまで通信可能範囲7に滞在可能なダンプトラック20から稼働情報を収集する。このようにするため、ブロードキャストに対する応答の情報には、位置情報に加え、車速(速さ)及び進行方向を含ませる。そして、情報収集装置10は、取得した位置情報、車速、進行方向と、稼働情報通信時間及び通信可能範囲7の位置情報とに基づいて、ブロードキャストに対する応答が受信されたダンプトラック20が、自身の送信すべき稼働情報の通信が終了するまで通信可能範囲7に滞在可能か否かの判定を行う。このようにすることで、稼働情報の通信が終了するまで通信可能範囲7に滞在可能なダンプトラック20が選択されることになるので、安定かつ確実な無線通信を実現して、確実かつ効率的にダンプトラック20の稼働情報を収集することができる。すなわち、情報収集装置10は、ダンプトラック20の稼働情報を無線通信によって収集する際に、情報通信の中断現象を抑止して、稼働情報をより確実に収集することができる。
【0049】
本実施形態においては、ダンプトラック20が通信可能範囲7かつ稼働情報を受け取るための無線通信設備が用意された場所でダンプトラック20が停車している場合、情報収集装置10は、「稼働情報の通信が終了するまでダンプトラック20が通信可能範囲7に滞在可能か否かの判定」を行わない。そして、情報収集装置10は、無線通信設備が用意された場所で停車しているダンプトラック20の稼働情報を収集する。このようにすることで、ダンプトラック20が通信可能範囲7において特定の状態にある場合には、送信すべき稼働情報の通信が終了するまで通信可能範囲7に滞在可能か否かの判定を行う必要がなくなるので、処理を迅速に進めることができる。なお、本実施形態において、ダンプトラック20が特定の状態にあるか否かの判定、すなわち、上述したステップS104は実行しなくてもよい(以下の実施形態でも同様)。この場合、ステップS103の判定で肯定(Yes)である場合に、ステップS105が実行される。
【0050】
本実施形態は、ブロードキャストに対する応答が受信されたダンプトラック20が、自身の稼働情報の通信が終了するまで通信可能範囲7に滞在可能か否かについての判定を、情報収集装置10が行う。このため、ダンプトラック20の車載情報収集装置10は、ブロードキャストに対する応答を送信するのみである。したがって、例えば、中継器3の位置が変更されて通信可能範囲7が変化した場合であっても、情報収集装置10側で通信可能範囲データベース14を書き換えるだけでよい。その結果、本実施形態は、鉱山のレイアウトが変更されて中継器3の位置が変わった場合及び情報収集システム1の構成が変更された場合等でも、比較的容易に対応することができる。なお、各ダンプトラック20が、ステップS103からステップS107までの処理を実行する場合は、情報収集装置10側で書き換えられた通信可能範囲データベース14の情報を管理施設から各ダンプトラック20に送信することで対応することができる。
【0051】
(実施形態2)
実施形態2は、実施形態1の情報収集システム1と同様のシステム構成で実現できる。実施形態1は、鉱山の管理施設に設置された情報収集装置10がブロードキャストの送信及び稼働情報の通信が終了するまで通信可能範囲7に滞在可能か否かの判定を行った。本実施形態は、図4に示す車載情報収集装置30が、自身を搭載するダンプトラック20が通信可能範囲7に存在するか否か及び稼働情報の通信が終了するまで通信可能範囲7に滞在可能か否か等を判定し、稼働情報を情報収集装置10へ送信する。
【0052】
このため、実施形態1において情報収集装置10が有していた機能は、ブロードキャストの送信を除き、車載情報収集装置30が有している。車載情報収集装置30は、送信すべき稼働情報の通信が終了するまで車載無線通信装置27の通信可能範囲7に滞在できる場合には、情報収集装置10に車載無線通信装置27を介して稼働情報を送信する。そして、車載情報収集装置30は、自身が搭載されるダンプトラック20の位置情報、速さ、進行方向、稼働情報通信時間及び通信可能範囲7の位置情報に基づいて、送信すべき稼働情報の通信が終了するまでダンプトラック20が通信可能範囲7に滞在可能か否かの判定を行う。次に、本実施形態における稼働情報収集制御の一例を説明する。
【0053】
<稼働情報収集制御>
図8は、実施形態2に係る稼働情報収集制御の手順を示すフローチャートである。本実施形態は、ダンプトラック20側、すなわち、車載情報収集装置30が稼働情報を情報収集装置10へ送信するタイミングを判定し、稼働情報を送信する。本実施形態に係る稼働情報収集制御の各手順における処理は、処理主体が車載情報収集装置30となるが、処理の内容は実施形態1に係る稼働情報収集制御の対応する手順と略同様である。処理の主体が車載情報収集装置30になるため、車載記憶装置31は、処理に必要な通信可能範囲7についての情報として、上述した通信可能範囲データベース14を記憶している。
【0054】
ステップS201において、車載情報収集装置30は、自身が搭載されているダンプトラック20の位置情報を、位置情報検出装置29を用いて取得する。本実施形態において、位置情報は、図4に示す位置情報検出装置29から取得する緯度及び経度(必要に応じて高度)である。次に、ステップS202へ進み、車載情報収集装置30は、ステップS201で求めたダンプトラック20の位置情報と、車載記憶装置31から読み出した通信可能範囲データベース14に格納されている位置情報とを比較する。ダンプトラック20が通信可能範囲7内に存在する場合(ステップS202、Yes)、情報収集装置10は処理をステップS203に進める。ダンプトラック20が通信可能範囲7内に存在しない場合(ステップS202、No)、稼働情報収集制御の1周期は終了し、次の周期における稼働情報収集制御が開始する。
【0055】
ステップS203の処理の内容は、実施形態1のステップS104における処理の内容と同様であるが、処理の主体は車載情報収集装置30である。ダンプトラック20が通信可能範囲7内に存在し、かつ特定の状態にある場合(ステップS202でYesかつステップS203でYes)、ステップS207において、車載情報収集装置30は、情報収集装置10へ、車載記憶装置31から無線通信によって送信すべき稼働情報を送信する。ダンプトラック20が特定の状態にあるか否かは、車載情報収集装置30が、ダンプトラック20の状態を示すための情報に基づいて判定する。
【0056】
ダンプトラック20が特定の状態にない場合(ステップS203、No)、ステップS204において、車載情報収集装置30は、稼働情報通信時間を計算する。本実施形態において、稼働情報通信時間は、車載情報収集装置30が実際に送信する稼働情報の実情報量を、通信速度で除することにより求めることができる(稼働情報通信時間=実情報量/通信速度)。このようにすることで、送信すべき稼働情報の情報量が変化しても、稼働情報通信時間を正確に求めることができる。次に、ステップS205に進み、車載情報収集装置30は、通信終了位置を計算する。通信終了時位置及びその求め方は、実施形態1で説明した通りである。
【0057】
通信終了位置が求められたら、ステップS206に進み、車載情報収集装置30は、送信すべき稼働情報の通信が終了するまでダンプトラック20が通信可能範囲7内に滞在可能か否かを判定する。この判定の方法については実施形態1で説明した通りである。車載情報収集装置30が、送信すべき稼働情報の通信が終了するまでダンプトラック20が通信可能範囲7内に滞在可能である(図7で示したように、R>Le)と判定したら(ステップS206、Yes)、ステップS207において、車載情報収集装置30は、車載記憶装置31から無線通信によって稼働情報を情報収集装置10に対して送信する。一方、図7で示したように、R≦Leであれば、車載情報収集装置30は、送信すべき稼働情報の通信が終了するまでダンプトラック20が通信可能範囲7内に滞在可能でないと判定する(ステップS206、No)。この場合、稼働情報収集制御の1周期は終了し、次の周期における稼働情報収集制御が開始する。
【0058】
本実施形態は、移動体であるダンプトラック20の稼働情報を収集するにあたり、稼働情報の通信が終了するまで通信可能範囲7に滞在することができるダンプトラック20が、情報収集装置10に対して稼働情報を送信する。このようにすることで、安定かつ確実な無線通信を実現して、確実かつ効率的にダンプトラック20の稼働情報を収集することができる。また、本実施形態は、情報収集装置10からのブロードキャストの送信が不要になるので、その分、無線通信回線の負担が低減するとともに、情報収集装置10の負担も低減するという利点もある。
【0059】
(実施形態3)
実施形態3は、実施形態2と同様に、図4に示す車載情報収集装置30が、自身を搭載するダンプトラック20が通信可能範囲7に存在するか否か及び送信すべき稼働情報の通信が終了するまで通信可能範囲7に滞在可能か否か等を判定し、稼働情報を情報収集装置10へ送信する。実施形態3は、さらに、稼働情報を送信したときにおけるダンプトラック20の移動経路を稼働情報送信可能経路として、通信可能範囲7に滞在可能な時間と対応付けて車載記憶装置31が記憶する。そして、車載情報収集装置30は、自身を搭載するダンプトラック20が稼働情報送信可能経路を移動中に通信可能範囲7に入った場合には、滞在可能な時間及び稼働情報通信時間に基づいて、送信すべき稼働情報の通信が終了するまで通信可能範囲7に滞在可能か否かの判定を行う。このようにすることで、稼働情報送信可能経路を通過する際には、過去の履歴から、通信可能範囲7に滞在可能な時間が分かっているので、これを利用することにより処理時間を短縮することができる。次に、本実施形態における稼働情報収集制御の一例を説明する。
【0060】
図9は、実施形態3に係る稼働情報の収集に関する処理の手順を示すフローチャートである。図10は、移動経路の履歴を示す移動経路情報と、その移動経路の履歴に対応する通信可能範囲7に滞在可能な時間とを対応付けたデータテーブル36の一例を示す図である。図11、図12は、ダンプトラックの移動経路と通信可能範囲7とを示す図である。
【0061】
ステップS301において、車載情報収集装置30は、自身が搭載されているダンプトラック20の位置情報を少なくとも取得する。ステップS301は、実施形態2のステップS202と同様である。次に、ステップS302に進み、車載情報収集装置30は、ステップS301で取得したダンプトラック20の位置情報を稼働情報送信可能経路と比較する。稼働情報送信可能経路とは、過去の移動経路を示す情報であって、特に通信可能範囲7を走行した際の滞在時間と対応付けられたダンプトラック20の移動経路である。次に、データテーブル36について説明する。
【0062】
図10に示すデータテーブル36は、本実施形態に係る稼働情報収集制御において、ダンプトラック20が稼働情報送信可能経路を移動しているか否かの判定に用いられる。データテーブル36は、車載記憶装置31に記憶されている。データテーブル36は、移動経路情報と、滞在可能時間(通信可能範囲7にダンプトラック20が滞在可能な時間)とが対応付けられて記述されている。ケース番号は、説明の便宜上付したものであり、実際のデータテーブル36には付されていない。
【0063】
移動経路情報は、ダンプトラック20が走行した走行路を示す位置情報(緯度・経度)の集合である。
【0064】
データテーブル36中のA、B、Cは、移動経路の種類を示す。1〜fは、移動経路情報を所定の時間周期で取得したタイミングを示す。X、Yは、X−Y座標系における座標値である。なお、Xは緯度、Yは経度に相当する。例えば、A(X、Y)1は、移動経路Aにおいて、1番目に取得した位置情報であることを示す。ケース2のように、ダンプトラック20が2までしか走行したことがないのであれば、過去の移動経路情報は、B(X、Y)1、B(X、Y)2までしか位置情報の蓄積がない。ダンプトラック20が通信可能範囲7に入ったことがなければ、ケース2及びケース5のように滞在可能時間の情報もない。
【0065】
各ケースについて、図10、図11を参照して詳細に説明する。
(1)ケース1は、Aという走行路でPfの地点まで走行して、通信可能範囲に時間TAfの間滞在していた場合である。
(2)ケース2は、Bという走行路でP2の地点まで走行して得られた走行路の位置情報である。通信可能範囲に滞在しなかった場合である。
(3)ケース3は、Cという走行路でP2の地点まで走行して、通信可能範囲に時間TC1の間滞在していた場合である。
(4)ケース4は、Aという走行路でPfの地点まで走行したが、通信可能範囲に滞在しなかった場合である。
(5)ケース5は、Aという走行路でP2の地点まで走行して得られた走行路の位置情報である。通信可能範囲に滞在しなかった場合である。
(6)ケース6は、Aという走行路でPnの地点まで走行して、通信可能範囲に時間TAn間滞在していた場合である。
【0066】
ケース1とケース6とは、ダンプトラック20が、図11のPnまで進んだかPfまで進んだかが異なる。滞在可能時間は、TAn<TAfとなる。また、ケース4とケース5とは、ダンプトラック20が、Pfまで進んだかP2まで進んだかが異なる。ケース5のダンプトラック20の走行が進んでPfまで至れば、ケース4と同じ移動経路情報となる。
【0067】
本実施形態において、ダンプトラック20の車載情報収集装置30は、所定の時間周期で移動経路情報、すなわち過去の移動経路の履歴を車載記憶装置31に記憶している。そして、車載情報収集装置30は、移動経路情報とともに滞在可能時間をデータテーブル36に記述する。
【0068】
車載情報収集装置30がダンプトラック20の位置情報と稼働情報送信可能経路の位置情報とを比較した結果、両者が一致した場合には(ステップS303、Yes)ステップS304に進み、両者が一致しなかった場合には(ステップS303、No)ステップS305に進む。なお、両者の一致の判断は、完全一致の他、所定の範囲内での一致も含む。
【0069】
図11に符号Aで示す実線及び破線上のP1、P2、P3、Pp1、Pfは、稼働情報送信可能経路Aが有する位置情報に相当するが、ダンプトラック20がP1、P2、P3を走行してPp1に至る場合、ダンプトラック20の位置情報と稼働情報送信可能経路Aの位置情報とは一致する。過去の移動経路情報とダンプトラック20の移動経路とが一致するからである。一方、P1を走行したダンプトラック20がその後Pp2に至る場合、ダンプトラック20の位置情報と稼働情報送信可能経路Aの位置情報とは一致しない。過去の移動経路情報もなく、かつ過去の移動経路の履歴もないからである。
【0070】
ダンプトラック20の位置情報と稼働情報送信可能経路の位置情報とが一致したら、ステップS304において、カウンタをインクリメントする(カウント数Nc=1)。ダンプトラック20の位置情報と稼働情報送信可能経路の位置情報とが一致しない場合、ステップS305において、カウンタをクリアする(カウント数Nc=0)。次に、ステップS306に進み、車載情報収集装置30は、ダンプトラック20が通信可能範囲7に入ったか否かを判定する。この判定は、実施形態2のステップS202と同様である。
【0071】
ダンプトラック20が通信可能範囲7に入った場合(ステップS306、Yes)、ステップS307に進む。ステップS307の処理の内容は、実施形態1のステップS104における処理の内容と同様であるが、処理の主体は車載情報収集装置30である。
【0072】
ダンプトラック20が通信可能範囲7内に存在し、かつ特定の状態にある場合(ステップS306でYesかつステップS307でYes)、ステップS308において、車載情報収集装置30は、情報収集装置10へ、車載記憶装置31から無線通信によって送信すべき稼働情報を送信する。
【0073】
ダンプトラック20が通信可能範囲7に入っていない場合(ステップS306、No)、車載情報収集装置30は、ステップS301に戻り、ダンプトラック20が通信可能範囲7に入るまで(ステップS306、Yes)、ステップS301からステップS305を繰り返す。このように、本実施形態において、ステップS301からステップS305は、ダンプトラック20が通信可能範囲7に入るまで、所定の時間周期で繰り返される。ダンプトラック20が稼働情報送信可能経路と同一の移動経路を走行すれば、ステップS303においてダンプトラック20の位置情報と稼働情報送信可能経路の位置情報とが一致する。このため、ダンプトラック20が同一の稼働情報送信可能経路を走行するほど、ステップS304でカウンタがインクリメントされてカウント数Ncが増加する。
【0074】
例えば、図11に示す稼働情報送信可能経路Aにおいて、ダンプトラック20がP1、P2、P3を走行すると、ダンプトラック20の位置情報と稼働情報送信可能経路Aの位置情報とが3回一致することになる。この場合、カウンタがP1、P2、P3のそれぞれでインクリメントされるため、ダンプトラック20がP3を通過した時点でカウント数Ncは3になる。
【0075】
ダンプトラック20が同一の稼働情報送信可能経路を走行しないと、ステップS303においてダンプトラック20の位置情報と稼働情報送信可能経路の位置情報とが一致しない。例えば、図11に示す稼働情報送信可能経路Aにおいて、ダンプトラック20がP1、P2を走行すると、ダンプトラック20の位置情報と稼働情報送信可能経路Aの位置情報とが2回一致することになるので、カウント数Ncは2になる。その後、ダンプトラック20が図11の点線で示す移動経路A’を通り、Pdを走行すると、ダンプトラック20の位置情報Pdと稼働情報送信可能経路Aの位置情報とは一致しなくなる。この場合、ステップS305でカウンタがリセットされるので、カウント数Ncは0になる。この場合、ダンプトラック20の移動経路が、Pnで稼働情報送信可能経路Aに復帰すれば、カウント数Ncは1になるが、稼働情報送信可能経路Aを逸脱しない場合と比較して、カウント数Ncは小さくなる。
【0076】
ダンプトラック20の走行中において、ダンプトラック20の位置情報と稼働情報送信可能経路とが一致するほどカウント数Ncは増加する。カウント数Ncが大きいほど、ダンプトラック20の移動経路と稼働情報送信可能経路との一致度が高くなり、ダンプトラック20は、忠実に稼働情報送信可能経路を走行していることになる。すなわち、カウント数Ncは、ダンプトラック20が稼働情報送信可能経路を走行していることの尺度となる。次に、ステップS307で否定(No)とされた場合について説明する。
【0077】
ダンプトラック20が特定の状態にない場合(ステップS307でNo)、ステップS309に進む。ステップS309において、車載情報収集装置30は、稼働情報通信時間を計算する。稼働情報通信時間及びその計算については実施形態2のステップS204と同様である。次に、ステップS310に進み、車載情報収集装置30は、カウンタの値、すなわちカウント数Ncが所定の閾値以上である場合には(ステップS310、Yes)、ステップS311に進む。すなわち、カウント数Ncが所定の閾値以上である場合はダンプトラック20が稼働情報送信可能経路を走行しているとして、車載情報収集装置30は、その稼働情報送信可能経路に対応した、データテーブル36に記憶されている滞在可能時間に基づいて、送信すべき稼働情報の通信が終了するまでダンプトラック20が通信可能範囲7に滞在可能か否かの判定を行う。
【0078】
ステップS311において、車載情報収集装置30は、車載記憶装置31のデータテーブル36から、ダンプトラック20が走行している稼働情報送信可能経路(図11に示す例では稼働情報送信可能経路A)に対応する滞在可能時間TAfを読み出す。そして、ステップS312において、車載情報収集装置30は、ステップS309で計算した稼働情報通信時間と滞在可能時間TAfとを比較し、前者が後者よりも小さい場合には、稼働情報を情報収集装置10に送信可能であるとして(ステップS312、Yes)、ステップS308に進む。そして、ステップS308において、車載情報収集装置30は、情報収集装置10へ、車載記憶装置31から無線通信によって稼働情報を送信する。稼働情報通信時間が滞在可能時間TAf以上である場合には、稼働情報を情報収集装置10に送信不可能であるとして(ステップS312、No)、稼働情報収集制御の1周期は終了し、次の周期における稼働情報収集制御が開始する。次に、ステップS310に戻って説明する。
【0079】
ステップS310において、車載情報収集装置30は、カウンタの値、すなわちカウント数Ncが所定の閾値よりも小さい場合には(ステップS310、No)、ステップS313に進む。ステップS313において、車載情報収集装置30は、現在のダンプトラック20の状態が継続するとして、ダンプトラック20が通信可能範囲7に滞在可能な時間を計算する。カウント数Ncが所定の閾値よりも小さい場合、ダンプトラック20の移動経路は、稼働情報送信可能経路と一致していない度合いが大きいと考えられる。例えば、図12に示す例の移動経路Eは、データテーブル36に存在しないとする。ダンプトラック20が移動経路E上を走行して移動経路E上のPp3を通過した後、通信可能範囲7に進入した場合に、ダンプトラック20が稼働情報送信可能経路と一致していない移動経路で通信可能範囲7に進入したとして、ステップS313が実行されることになる。
【0080】
ダンプトラック20がPp4の位置に到達したときにステップS313が実行されるとした場合、Pp4におけるダンプトラック20の車速と、Pp4の位置情報(Xp、Yp)と、Pp4における進行方向と、通信可能範囲7とから距離Laを求める。距離Laは、ダンプトラック20がPp4における車速Vsで、Pp4における進行方向に走行した場合における、Pp4から通信可能範囲7の外縁と交差する位置PE(Xe、Ye)までの距離である。PE(Xe、Ye)は、Pp4におけるダンプトラック20の進行方向と、Pp4の位置情報(Xp、Yp)とから求めることができる。このため、Laは、√{(Xe−Xp)+(Ye−Yp)}で求めることができる。
【0081】
距離LaをPp4におけるダンプトラック20の車速で除することにより、ダンプトラック20が通信可能範囲7に滞在可能な時間Tpを求めることができる。時間TpとステップS309で求めた稼働情報通信時間とを比較し、時間Tpが稼働情報通信時間よりも大きい場合、稼働情報を情報収集装置10に送信可能であるとして(ステップS312、Yes)、ステップS308に進む。ステップS308において、車載情報収集装置30は、情報収集装置10へ、車載記憶装置31から無線通信によって稼働情報を送信する。時間Tpが稼働情報通信時間以下である場合には、稼働情報を情報収集装置10に送信不可能であるとして(ステップS312、No)、稼働情報収集制御の1周期は終了し、次の周期における稼働情報収集制御が開始する。
【0082】
上記例では、ダンプトラック20の位置情報に基づいて、ダンプトラック20の移動経路と稼働情報送信可能経路との一致を判定したが、さらに、走行中におけるダンプトラック20の車速と進行方向との少なくとも一方を用いて両者の一致を判定してもよい。この場合、データテーブル36は、移動経路情報にダンプトラック20の車速の履歴と進行方向の履歴との少なくとも一方が、位置情報に対応付けて記述される。
【0083】
本実施形態は、実施形態2の処理に加え、ダンプトラック20の過去の移動経路を稼働情報送信可能経路とした上で、通信可能範囲に滞在可能な時間と対応付けておく。移動体であるダンプトラック20の稼働情報を収集するにあたり、稼働情報送信可能経路を通過する場合には、過去の実績として得られている、通信可能範囲7に滞在可能な時間を利用することができるので、送信すべき稼働情報の情報量に対する必要な通信時間を予測することができるため通信可能範囲7に滞在可能な時間を計算で求める必要はない。その結果、本実施形態は、実施形態2と同様に、安定かつ確実な無線通信を実現して、確実かつ効率的にダンプトラック20の稼働情報を収集することができ、さらに、稼働情報を収集する際の処理時間を短縮することができる。
【0084】
特に、鉱山で稼働するダンプトラック20は、ある所定の期間においては、積載場と排土場との間で異なる移動経路を走行することは少なく、同じ移動経路を走行することが多い。このため、ダンプトラック20が稼働情報送信可能経路を走行する可能性は高いので、本実施形態は鉱山機械に対して有用である。
【符号の説明】
【0085】
1 鉱山機械の情報収集システム(情報収集システム)
3 中継器
5A、5B、5C GPS衛星
7 通信可能範囲
10 情報収集装置
12 処理装置
13 記憶装置
14 通信可能範囲データベース
15 入出力部
16 表示装置
17 入力装置
18 第2無線通信装置
18A アンテナ
20、20a、20b、20c ダンプトラック
21 車両本体
22 ベッセル
23 車輪
24 サスペンションシリンダ
25 回転センサ
26 圧力センサ
27 車載無線通信装置(第1無線通信装置)
28A アンテナ
28B GPS用アンテナ
29 位置情報検出装置
30 車載情報収集装置
31 車載記憶装置
32 鉱山機械情報取得装置
36 データテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱山機械に搭載されて、前記鉱山機械の稼働状態に関する稼働情報を収集する車載情報収集装置と、
前記鉱山機械に搭載されて、前記鉱山機械の位置に関する位置情報を検出する位置情報検出装置と、
前記鉱山機械に搭載されて通信を行う第1無線通信装置と、
前記第1無線通信装置と通信する第2無線通信装置を介して前記稼働情報を収集する情報収集装置と、を含み、
前記情報収集装置は、
前記第2無線通信装置を介して所定のタイミングで前記鉱山機械の位置情報の送信を要求する位置情報要求命令を送信し、
前記位置情報要求命令に対する応答が前記第2無線通信装置に受信された鉱山機械が、自身の稼働情報の通信が終了するまで前記第1無線通信装置の通信可能範囲に滞在できる場合には、前記応答が受信された鉱山機械の稼働情報を収集することを特徴とする鉱山機械の情報収集システム。
【請求項2】
前記情報収集装置は、
前記応答が受信された鉱山機械の位置情報、速さ、進行方向、稼働情報通信時間及び前記通信可能範囲の位置情報に基づいて、前記応答が受信された鉱山機械が、自身の稼働情報の通信が終了するまで前記通信可能範囲に滞在可能か否かの判定を行う、請求項1に記載の鉱山機械の情報収集システム。
【請求項3】
前記情報収集装置は、
前記車載情報収集装置から、前記通信可能範囲かつ前記稼働情報を受け取るための無線通信設備が用意された場所で前記鉱山機械が停止しているという情報を受け取った場合、前記判定を行わずに、前記無線通信設備が用意された場所で停止している鉱山機械の稼働情報を収集する、請求項2に記載の鉱山機械の情報収集システム。
【請求項4】
鉱山機械に搭載されて通信を行う車載無線通信装置と、
前記車載無線通信装置の通信可能範囲を記憶する車載記憶装置と、
前記鉱山機械に搭載されて、前記鉱山機械の位置に関する位置情報を検出する位置情報検出装置と、
前記鉱山機械に搭載されて、前記鉱山機械の稼働状態に関する稼働情報を取得する車載情報収集装置と、
前記稼働情報を収集する情報収集装置と、を含み、
前記車載情報収集装置は、
前記稼働情報の通信が終了するまで前記車載無線通信装置の通信可能範囲に滞在できる場合には、前記情報収集装置に前記車載無線通信装置を介して前記稼働情報を送信することを特徴とする鉱山機械の情報収集システム。
【請求項5】
前記車載情報収集装置は、
前記鉱山機械の位置情報、速さ、進行方向、稼働情報通信時間及び前記通信可能範囲の位置情報に基づいて、稼働情報の通信が終了するまで前記通信可能範囲に滞在可能か否かの判定を行う、請求項4に記載の鉱山機械の情報収集システム。
【請求項6】
前記車載記憶装置は、
前記稼働情報を送信したときにおける前記鉱山機械の移動経路を稼働情報送信可能経路とし、前記通信可能範囲に滞在可能な時間と対応付けて記憶し、
前記車載情報収集装置は、
前記鉱山機械が前記稼働情報送信可能経路を移動中に前記通信可能範囲に入った場合には、前記滞在可能な時間及び稼働情報通信時間に基づいて、稼働情報の通信が終了するまで前記通信可能範囲に滞在可能か否かの判定を行う、請求項4に記載の鉱山機械の情報収集システム。
【請求項7】
前記車載情報収集装置は、
前記通信可能範囲かつ前記稼働情報を受け取るための無線通信設備が用意された場所で前記鉱山機械が停止している場合、前記判定を行わずに前記稼働情報を送信する、請求項5又は6に記載の鉱山機械の情報収集システム。
【請求項8】
前記鉱山機械が、前記無線通信設備が用意された場所で停止していることの判断は、前記鉱山機械の車速の状態と前記鉱山機械に積まれる積荷の積載量の変化との少なくとも一方の条件を用いて行われる、請求項3又は7に記載の鉱山機械の情報収集システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−98940(P2013−98940A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242844(P2011−242844)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】