説明

鉱石の還元粉化率測定方法

【課題】鉱石の還元粉化率試験を行うに当たって、高炉内の状況をよく反映した測定ができる方法を提案することにある。
【解決手段】加熱器内に配設された回転する反応管内に、鉱石を装入すると共に還元ガスを導入して加熱することによって、該鉱石の還元粉化率を測定する際に、該反応管内に配設されたガス透過性隔壁によって画成された反応室内に、被験鉱石を充填したのち、該ガス透過性隔壁の少なくとも一方を移動させることにより、反応室内充填鉱石層を圧縮しまたは解放する操作を周期的に繰り返して該鉱石に機械的衝撃を付加する鉱石の還元粉化率測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉等で使用する鉱石の還元粉化率をより正確に測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉製鉄法は、高炉内に、炉頂より焼結鉱やペレットなどの製鉄原料(以下、単に「鉱石」という)とコ−クスなどの還元材とを装入し、下部の羽口からは熱風を送風することにより、該鉱石を加熱還元して、溶銑を得る方法である。
【0003】
高炉の操業において重要なことは、炉内における上記の還元反応を安定化させることである。高炉の操業を安定させるには、炉内に装入する鉱石類の還元、粉化特性を予め正確に把握しておくことが有効であると考えられる。そのために従来、鉱石の還元、粉化特性を正確に評価するための方法として、各種の試験方法(測定方法)が提案されている。例えば、JIS M 8713(1977)には、鉱石類の還元試験法(JIS−RI)が規定されている。この方法は、所定の粒径に整粒された鉱石を不活性ガスで加熱した後、30vol%CO−Nガス中で180分間還元処理して、このときの重量変化から還元率を測定する方法である。
【0004】
なお、前記還元試験法(JIS−RI)においてはCO/N混合ガスを用いて還元反応を起こさせているが、実際の高炉内の炉内ガスは、少なくともCO/CO/Nの混合ガスによって還元が進行することが知られている。このような違いを改善するために従来、特許文献1、2などに開示されているような提案がなされている。
【0005】
高炉操業において、鉱石の還元に必要な熱の伝達を司るのは炉内ガスの移動であり、その炉内ガスの流通が滞ることは、高炉操業にとって致命的な欠陥となる。このようなガス流を一般に“通気”と呼び、ガスを流す時に発生する抵抗(圧力損失)を“通気抵抗“と呼んでいる。その通気抵抗は、ガス流速が速いほど、また、充填層の粒径が小さいほど、大きくなることが知られている。このことから、安定した高炉操業を実現するには“通気”に影響するガス流速と鉱石充填層内の粒径管理が不可欠である。
【0006】
炉頂部から装入される鉱石は、高炉内を充填状態のまま漸進降下する運動をしている。従って、この状態の鉱石は、常に機械的な圧力(圧縮荷重)を受けており、その結果、炉内を降下している鉱石は、加熱還元されると同時に、圧縮に伴う粉化(破壊)を起すことが知られている。過去に行われた高炉の解体調査においても、こうした粉化によって炉下部になるほど装入鉱石の粒径は小さくなっていたとの報告がある。
【0007】
つまり、炉内の通気を管理するためには、鉱石充填層に加わる前記のような加圧(粉化)作用をも勘案した上で、装入鉱石の特性(性状)を評価して管理することが求められる。これまでも、装入鉱石に対して、一定条件の機械的圧力をかけ、粉化の状況を考慮した測定方法も提案されている。例えば、JIS M 8711(1977)には、シャッタ−試験法と呼ばれる試験方法がそれである。この試験では、整粒した焼結鉱を2mの高さから落下させ、低粒径分の発生割合を見ることで、強度を測定している。また、JIS M 8720(2001)には、還元後の試料を冷却して粉化させ、強度を測定する還元粉化試験方法(JIS−RDI)が規定されている。
【0008】
このようにして従来、高炉内に装入する鉱石の還元率や強度が予め測定されていた。しかし、前述の試験方法にはいくつかの問題があった。例えば、前記JIS還元粉化試験方法の場合、高温で還元したサンプルを冷却し、その後、還元粉化試験を行うこととしている点が挙げられる。しかし、還元が行われた焼結鉱というのは、一般に、温度の違いによって強度に差が生じるのが普通である。また、冷却する際に、いわゆるヒ−トショックがかかり、亀裂が発生することも考えられる。従って、冷却後に粉化させるのと、粉化させてから冷却するのとでは、還元粉化率の測定値もまた大きく異なるはずであり、この意味で、上記試験方法は高炉内雰囲気を正確に反映した測定方法と言えるものではなかった。
【0009】
この点を改善するために、従来、特許文献3に記載のような試験方法が提案されている。この試験方法は、回転するシリンダー内に攪拌羽根を取付け、熱間において還元ガスを流しながら機械的な衝撃を加えて還元粉化試験を行う方法である。しかし、この方法では、鉱石原料が高炉内雰囲気を反映する充填層となっておらず、シリンダー内を通過する還元ガスがシリンダーの下方に存在する鉱石(焼結鉱やペレットなど)の上方を通過してしまい、還元が起こりにくく、還元作用までも同時にシミュレートするまでにはなっていないのが実情である。
【0010】
従来試験方法のこのような問題点を解決する方法として、非特許文献1では、さらに別の試験方法を提案している。この提案は、特許文献1に開示の試験方法において用いられているシリンダー内に、多孔質板を取付け、その多孔質板の間に被験鉱石を充填した上で還元する方法である。即ち、この方法は、実質的に高炉内鉱石充填層に類似の状態を作り、その中に還元ガスを強制的に流すことで還元粉化の試験をするという試みである。もちろん、この試験方法では、還元後には熱間のまま機械的な衝撃を与えて粉化させる方法と室温まで冷却してから粉化させる方法との、それぞれを報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−168630号公報
【特許文献2】特開2010−168631号公報
【特許文献3】特開昭58−63851号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】照井、高橋、八木、大森 東北大学選鉱精錬研究所 彙報29(1).37〜49、1973−11−24
【非特許文献2】城本、金山、奥野、磯山 鉄と鋼、vol.10、p.1606〜1626(1971)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ただし、前記試験方法(非特許文献1)についてもまだ問題点が残っていた。それは、還元を行ってから粉化させているために還元と同時に粉化しておらず、粒径は一定のままで、高炉内雰囲気をより正確に反映したものではないからである。この点、実際の高炉においては、還元反応と機械的粉化作用とは常に同時に起こるものである。粉化が起こると粒径は低下するが、その粒径の低下こそ正に還元反応に影響するからである。ということは、粉化が起こることによって還元率が変わってしまうため、前記提案の試験方法(非特許文献1)を用いたとしても、還元率がどうしても低めになってしまい、高炉内で起こる事象を正確に反映した測定値を得るにはなお不十分な方法であった。
【0014】
そこで、本発明の目的は、鉱石の還元粉化率試験を行うに当たって、高炉内の状況をよく反映した測定ができる方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従来の還元粉化率試験方法のもつ上述した課題を解決し、前記目的を実現すべく鋭意研究した結果、発明者らは、下記要旨構成に係る本発明に想到した。即ち、本発明は、加熱器内に回転可能に保持される横形の反応管内に、被験鉱石を装入すると同時に還元ガスを導入して加熱還元して、この時の該鉱石の還元粉化率を測定する際に、
該反応管内に、軸方向への移動が可能な離隔配置された一対のガス透過性隔壁によって反応室を画成し、その反応室内に被験鉱石の充填層を形成したのち、加熱すると共に還元ガスによる還元処理を行う間、該ガス透過性隔壁のいずれか一方を軸方向に移動させることにより、反応室内鉱石充填層を圧縮したり解放する操作を周期的に繰り返し、該鉱石に機械的衝撃を付加することを特徴とする鉱石の還元粉化率測定方法である。
【0016】
なお、本発明においては、
(1)前記試験用反応管は、内周壁の半径方向に1〜複数個の攪拌羽根が突設されたものを用いること、
(2)前記ガス透過性隔壁は、還元ガス導入側とは反対側のものが反応管の軸方向に往復動するものであること、
(3)前記ガス透過性隔壁の移動による鉱石の加圧圧縮・除圧解放は、昇温段階から還元温度到達・保持までの間に、複数回行うこと、
(4)前記ガス透過性隔壁の移動による鉱石の加圧圧縮・除圧解放に当たっては、全還元時間の10〜50%の範囲内で、被検鉱石に対して0.01〜0.02MPaの圧縮力を付加するように行うこと、
(5)前記被験鉱石として、粒径:20mm±5mmの焼結鉱もしくは12mm±3mmのペレットを用いること、
(6)前記還元ガスとして、COガスやCOガス、Hガス、あるいはこれらの混合ガスを使用すること、
が、より有効な解決手段を提供できると考えられる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように構成される本発明によれば、高能率化した近代高炉操業によく対応した新しい鉱石還元粉化率の測定方法を提供できる。特に、この方法では、高炉の炉内状況をより正確に再現した環境下での鉱石の還元率と粉化率との両方をより正確に評価できる試験が可能になる。
【0018】
また、本発明によれば、回転する反応管内に2枚のガス透過性隔壁(多孔板)によって仕切られ、反応室が該ガス透過性隔壁のうちの一方を周期的に移動し、被験鉱石に対して常時、機械的な加圧力(衝撃力)を加えながら還元反応を起こさせるので、高炉等の炉内条件により近い方法によって、還元粉化率の測定が可能となり、安定した高炉操業に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明方法の実施に使用する試験装置の概略図である。
【図2】反応室部分の拡大断面図である。
【図3】加熱時間と炉温(a)およびガス組成(b)との関係を示すグラフである。
【図4】他のガス組成(b)を用いたときの加熱時間と炉温(a)およびガス組成の関係を示すグラフである。
【図5】試験に用いた鉱石、焼結の還元試験(JIS−RI)と還元粉化試験(JIS−RDI)試験の関係を示すグラフである。
【図6】試験に用いた生鉱石、焼結鉱の本発明方法による還元率・粉化率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明方法を実施する際に用いて好適な試験装置の一例を示す。この装置は、主として、予熱器1、加熱器2およびこれらを水平方向に貫通するように配置された回転可能な反応管3にて構成されている。なお、この反応管3の加熱器2に位置する部分には、離隔配置された一対の多孔板からなるガス透過性隔壁3a、3bが配設されていて、この隔壁3a、3bの相互間で形成される空間によって、被験鉱石を装入充填する反応室3cが形成される。
【0021】
この試験装置には、その他に、上記反応管3を回転させる駆動機4、この反応管3内に配設されたガス透過性隔壁3a、3bの少なくとも一方、図示例では、還元ガス導入側とは反対側、即ち、還元ガスの流れとは逆向きの向流側に当たる側の隔壁3bを管軸方向(水平方向)に往復動させる駆動装置(ピストンシリンダー)5、温度制御の可能な電源供給装置(図示せず)、還元ガス供給装置6、排ガス処理ダクト7が付属している。
【0022】
前記加熱器2は、耐火物の内張りを有し、ヒーター2aを備える箱形反応炉タイプのものであって、水平方向に回転可能に支持される前記反応管3を1000℃以上昇温させることができる。その加熱の温度は、図示を省略した電源供給装置に付属させた温度制御装置によってコントロ−ルされる。
【0023】
前記反応管3は、直径100〜200mmのステンレス製気密パイプであって、加熱器2内に位置する部分の中央拡管部に、所定の間隔で配設された移動可能な一対の多孔板からなるガス透過性隔壁3a、3bにて反応室3cが画成されている。その反応室3c内には、一方の隔壁3aを外してフランジ3fから被験鉱石8を充填装入できるようになっている。また、この反応管3の内面には半径方向に突出する1〜3個の攪拌羽根9が軸方向に亘って取付けてある。なお、この反応管3の回転速度は、0〜60rpmまで可変制御する。なお、図2に反応管3の反応室3c部分の拡大断面図を示した。
【0024】
本発明において特徴的な前記反応管3は、シリンダー試験装置と同様の構造の容器(レトルト管)によって構成されており、その構造的な特徴は上述したとおり、前記ガス透過性隔壁3a、3bのいずれか一方、例えば、還元ガス導入側とは反対側の、即ち、ピストンシリンダー5側に位置する隔壁3bの移動よって、反応室3c内に充填された被験鉱石8に対して、圧縮圧力をかけたり、除圧解放したりすることができる。この場合において、隔壁3bを移動させることによって、該被験鉱石8にかける圧縮の圧力は、0.01〜0.02Mpa程度が望ましい。なお、非特許文献2には、高炉炉内圧力の最高値を0.05Mpa程度であると推定している。一般に還元時の粉化は、比較的、高炉シャフト上部の低圧/低温の領域で起こることが知られているため、0.02Mpa程度までの圧縮範囲であれば、実際に還元粉化を起こす領域における圧力をシミュレートすることができると考えられるからである。
【0025】
試験(測定)に当たって、この反応管3内には、還元ガス供給装置6を使って、CO、CO、Nを任意の濃度に混合した還元ガスを供給する。供給する還元ガス量は、被験鉱石量(試料量)によっても変わるが、1gのサンプルに対して0.05〜0.2リットル/分の条件で供給する。なお、この反応管3の末端部には排ガス処理のための排ガス処理ダクト7が連繋させてあり、反応ガス中に含まれる有害ガスを安全に廃棄できるようにする。
【0026】
前記試験装置によって鉱石の還元粉化率を測定する時の前記反応管3内に流通させる還元ガスの組成と温度の関係を図3および図4に示した。これらの図に示したそれぞれの値は、高炉内における温度変化やガス組成の変化に対応して決定したものである。例えば、図4は、LNG、微粉炭などを多量に含む水素量の多い場合の高炉操業条件を模擬した例であり、発明を適用する上で、検討対象である高炉の操業状況によって、加熱時間、温度、ガス組成を図示した条件に従って決定することが望ましい。
【0027】
即ち、試験の開始に当たっては、まず、被験鉱石8、例えば、焼結鉱やペレットを重量測定してから、反応管3の一端、フランジ3f部分から隔壁3aを外して流し込んで装入し、その後、隔壁3aを所定の位置に装着する。その際、被験鉱石8が焼結鉱であれば、粒径:20mm±5mmに、ペレットであれば、粒径:12mm±3mmになるように篩分けたものを使用する。そして、加熱器2を予め決められた昇温プログラムにしたがって加熱すると同時に、反応管3内には所定成分の還元ガスを導入することにより、還元反応を起させる。
【0028】
昇温し還元ガスを導入して還元を開始(試験開始)したらすぐ、反応管3の回転と一方の前記ガス透過性隔壁3bの往復動を開始し、その隔壁3bによる反応室3c内の被験鉱石充填層の加圧圧縮を行うが、この加圧圧縮処理の時間は、全還元時間の10%〜50%に相当する時間、該被験鉱石8を0.01〜0.02MPaの圧力にて加圧した状態として、圧縮充填層となるようにする。このとき、加圧(押し付け)時間が長すぎると還元は進行しやすくなるが、粉化が起こりにくくなる。一方、加圧(押し付け)時間が短すぎると粉化は進行しやすくなるが、還元が起こりにくくなる。そのため、加圧時間を前述の全還元時間の10〜50%とすることが望ましい。
【0029】
この隔壁3bの移動による被験鉱石8の加圧圧縮は、昇温開始直後の還元開始から行うことが望ましく、少なくとも還元反応が行われる300℃以上では実施されなければならない。望ましい前記隔壁3bの往復動の処理は、例えば、30秒間この隔壁を押し付けることで圧縮充填層を形成し、次の30秒間は該隔壁3bを後退させて除圧解放を促し、このような操作によって被験鉱石8の粉化が行われるようにする。
【0030】
試験(加熱還元反応)終了後は、全量を前記フランジ3fから抽出して回収したものを試料として、これの重量を測定する。そして、測定重量の減少から還元率を計算する。その還元率は、以下のような式で定義される方法によって行う。
還元率(%)
=100×(初期試料重量−反応後試料重量)/(初期試料重量×鉱石中の被還元酸素濃度)
【0031】
一方、粉化率に関しては、基準粒径を焼結鉱石ならば15〜3mm、ペレットならば8〜3mmと定め、その粒径の篩で篩った篩下重量と全体重量との比率を用いて、粉化率を規定することが好ましい。
粉化率 = 反応後試料中の基準粒径以下の重量/(反応後の試料重量)
【実施例】
【0032】
本発明法の有効性を明らかにするために、本発明法を適応した還元粉化率測定試験を実施した。この試験には、図1に示す試験装置を用いた。反応管の直径は130mmφで攪拌羽根の高さは20mmで2枚使用した。被験鉱石は10種類の焼結鉱と5種類の生鉱石であり、これらを15mmと10mmの篩で篩ったものを500g反応室内に装入充填して試験した。粉化量の計測に当たっては、3mmの篩を使用した。反応中の温度とガス組成に関しては、図3に示す昇温条件とした。同時に、通常の還元試験(JIS−RI)と還元粉化試験(JIS−RDI)試験もあわせて実施した。
【0033】
各鉱石および焼結鉱の還元試験(JIS−RI)と還元粉化試験(JIS−RDI)試験と新還元率/新還元粉化率の一覧を表1に示す。この表の値をグラフに示したのが図5と図6である。
【0034】
【表1】

【0035】
図5、図6からわかるように、本発明に適合する還元粉化試験方法の値は、還元試験(JIS−RI)と還元粉化試験(JIS−RDI)試験に比べて大きくなることがわかった。特に、粉化率が高い鉱石の還元率が高いことがわかる。これは粉化によって鉱石/焼結鉱の粒径が低下し、表面積の増加などの影響から還元速度が速くなることによるものと考えられ、これまでの還元試験(JIS−RI)ではわからなかった点である。つまり、通気的に許される範囲であれば、粉化することにより還元率を上げることができることを示すものである。また、15個の試料に関する粉化率の範囲がJIS法では約15%程度のばらつきであったものが10〜12%程度のばらつきの範囲内に収まっていることがわかった。
【0036】
また、特許文献3に従う試験と同様の実験を行って比較したが、還元率が低めに出ることがわかった。これにより、反応室内被験鉱石充填層の一方の隔壁を押し付けて鉱石充填層を間欠的に加圧圧縮することにより、実高炉の炉内雰囲気に近い鉱石の還元粉化率を測定することができることが確められた。
【0037】
なお、この実施例に示す結果に明らかなように、図4に示すのような温度、水素含有ガス条件下で試験することも効果が高いことがわかった。つまり、微粉炭やLNGなどの水素系原料を使用した場合や、大量の調湿を行った場合などの水素インプットが大きい高炉においては、図4に示すようなガス組成、昇温条件のように、水素を混入する方法で実験することが有効である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る技術は、高炉用原料鉱石の還元粉化率の測定技術であるが、この考え方は、他の竪型精錬炉の原料鉱石用還元粉化率試験への適用が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 予熱器
2 加熱器
2a ヒーター
3 反応管
3a、3b ガス透過性隔壁
3c 反応室
3f フランジ
4 駆動機
5 ピストンシリンダー(駆動装置)
6 還元ガス供給装置
7 排ガス処理ダクト
8 被験鉱石
9 攪拌羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱器内に回転可能に保持される横形の反応管内に、被験鉱石を装入すると同時に還元ガスを導入して加熱還元して、この時の該鉱石の還元粉化率を測定する際に、
該反応管内に、軸方向への移動が可能な離隔配置された一対のガス透過性隔壁によって反応室を画成し、その反応室内に被験鉱石の充填層を形成したのち、加熱すると共に還元ガスによる還元処理を行う間、該ガス透過性隔壁のいずれか一方を軸方向に移動させることにより、反応室内鉱石充填層を圧縮したり解放する操作を周期的に繰り返し、該鉱石に機械的衝撃を付加することを特徴とする鉱石の還元粉化率測定方法。
【請求項2】
前記試験用反応管は、内周壁の半径方向に1〜複数個の攪拌羽根が突設されたものを用いることを特徴とする請求項1に記載の鉱石の還元粉化率測定方法。
【請求項3】
前記ガス透過性隔壁は、還元ガス導入側とは反対側のものが反応管の軸方向に往復動するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の鉱石の還元粉化率測定方法。
【請求項4】
前記ガス透過性隔壁の移動による鉱石の加圧圧縮・除圧解放は、昇温段階から還元温度到達・保持までの間に、複数回行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の鉱石の還元粉化率測定方法。
【請求項5】
前記ガス透過性隔壁の移動による鉱石の加圧圧縮・除圧解放に当たっては、全還元時間の10〜50%の範囲内で、被検鉱石に対して0.01〜0.02MPaの圧縮力を付加するように行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の鉱石の還元粉化率測定方法。
【請求項6】
前記被験鉱石として、粒径:20mm±5mmの焼結鉱もしくは12mm±3mmのペレットを用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の鉱石の還元粉化率測定方法。
【請求項7】
前記還元ガスとして、COガスやCOガス、Hガス、あるいはこれらの混合ガスを使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の鉱石の還元粉化率測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−247289(P2012−247289A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118850(P2011−118850)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「環境調和型製鉄プロセス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)」
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【Fターム(参考)】