説明

長尺ウレタン引き離し装置

【課題】切れ目が入れられたウレタンシートから個々の長尺ウレタン材料に引き離すときに、作業者による煩雑な作業を省くことが可能な長尺ウレタン引き離し装置を提供する。
【解決手段】先頭側の第1長尺ウレタンA2の両端部A1をチャックする第1チャック手段3と、これに隣接する第2長尺ウレタン材料A3の両端部A1をチャックする第2チャック手段A4と、第1チャック手段A3を上方に持ち上げる引き離しシリンダー5と、引き離しシリンダー5を上方に持ち上げて、次工程に移動するための上昇シリンダー9及び移送シリンダー10と、第2チャック手段4により第2長尺ウレタン材料A3の両端部A1をチャックした状態で、第1チャック手段3により第1長尺ウレタン材料A2の両端部A1を所定の高さ持ち上げ、さらに、この持ち上げ状態のまま上昇シリンダー9及び移送シリンダー10により第1長尺ウレタン材料A2を上方に持ち上げて次工程に移送させる制御手段20と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断方向に切れ目が入れられて複数の長尺ウレタン材料の集合体として製作されたウレタンシートから、個々の長尺ウレタン材料を引き離して次工程へ移送するための長尺ウレタン引き離し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かかる長尺ウレタン材料から得られるウレタン製品の一例として、普通紙複写機、普通紙ファクシミリ、レーザービームプリンター等の静電方式の画像形成装置において、感光体や転写ベルト等のトナーを担持し或いはトナー担持面と接触する部材表面の残存トナーを除去するクリーニングブレードがあげられる(例えば、下記特許文献1,2を参照)。
【0003】
かかるウレタン製品の製作手順を図9により簡単に説明する。まず(a)に示すような矩形のウレタンシートUSに対して、(b)に示すように切断方向に切れ目Cを入れる。切れ目Cを入れた状態で、個々の長尺ウレタン材料Aの集合体の形態になるが、まだ個々の長尺ウレタン材料Aに引き離された状態にはなっていない。次に、(c)に示すように、個々の長尺ウレタン材料Aに分離し、最終的に(d)に示すように更に幅方向に切断して、最終製品としての長尺ウレタン製品Bが得られる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−345633号公報
【特許文献2】特開平8−262950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、ウレタンシートUSに切れ目Cが入れられてから、直ちに個別に長尺ウレタン材料Aに引き離されるのではなく、切れ目Cを入れた後、引き離し工程位置に移送してから引き離すようにしている。このように切れ目を入れているだけであるから、引き離し工程位置へ移送されるまでの間に、切れ目にズレが生じるなどの原因により、切れ目が再粘着する場合がある。このような再粘着により引き離しがスムーズに行かない場合が生じる。そのため、引き離し工程においては、作業者が両端部A1を手で持って、図10に示すように両端部A1を持ち上げることで、引き離しを行ないやすいようにしている。従って、作業者の工数が余分にかかっており煩雑となっていた。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、切れ目が入れられたウレタンシートから個々の長尺ウレタン材料に引き離すときに、作業者による煩雑な作業を省くことが可能な長尺ウレタン引き離し装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係る長尺ウレタン引き離し装置は、
切断方向に切れ目が入れられて複数の長尺ウレタン材料の集合体として製作されたウレタンシートから、個々の長尺ウレタン材料を引き離して次工程へ移送するための長尺ウレタン引き離し装置であって、
先頭側に位置する第1長尺ウレタン材料の両端部をチャックする第1チャック手段と、
第1長尺ウレタン材料に隣接する第2長尺ウレタン材料の両端部をチャックする第2チャック手段と、
第1チャック手段を上方に持ち上げる端部引き離し手段と、
端部引き離し手段を上方に持ち上げて、前記次工程に移動するための移送手段と、
第2チャック手段により第2長尺ウレタン材料の両端部をチャックした状態で、第1チャック手段により第1長尺ウレタン材料の両端部を所定の高さ持ち上げ、さらに、この持ち上げ状態のまま移送手段により第1長尺ウレタン材料を上方に持ち上げて次工程に移送できるように各部の制御を行う制御手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
かかる構成による長尺ウレタン引き離し装置の作用・効果を説明する。まず、切れ目が入れられたウレタンシートの一番先頭側に位置する第1長尺ウレタン材料の両端部を第1チャック手段によりチャックする。また、この第1長尺ウレタン材料に隣接する第2長尺ウレタン材料の両端部を第2チャック手段によりチャックする。この状態で、第1チャック手段を端部引き離し手段により上方に持ち上げる。これにより、第1チャック手段により第1長尺ウレタン材料をチャックした状態で両端部が持ち上げられる。隣接した第2長尺ウレタン材料の両端部は、チャックしたままであるから、端面同士が再粘着していたとしても確実に引き離すことができる。ついで、移送手段により、端部引き離し手段を更に上方に持ち上げて、第1チャック手段によりチャックしたまま第1長尺ウレタン材料が次工程に移送される。このような構成によれば、作業者による手作業は不要になり、確実に引き離しを行なうことができる。その結果、切れ目が入れられたウレタンシートから個々の長尺ウレタン材料に引き離すときに、作業者による煩雑な作業を省くことが可能な長尺ウレタン引き離し装置を提供することができる。
【0009】
本発明において、第2長尺ウレタン材料の両端部以外の領域を押圧する押圧手段を備えていることが好ましい。
【0010】
第1長尺ウレタン材料に隣接する第2長尺ウレタン材料の両端部は、第2チャック手段によりチャックされ、両端部以外の領域は、押圧手段により押さえつけられている。これにより、確実に第1長尺ウレタン材料を引き離すことができる。
【0011】
本発明において、前記端部引き離し手段による持ち上げ方向は、長尺ウレタン材料の中央側に向かう斜め上方であることが好ましい。
【0012】
第1長尺ウレタン材料の両端部を持ち上げる場合、その両端部が斜め上方でかつ中央側に向かうようにすることで、長尺ウレタン材料に対して無理な力を作用させることなく、確実に引き離すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る長尺ウレタン引き離し装置の好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、長尺ウレタン引き離し装置の平面図を示し、図2は、長尺ウレタン引き離し装置の側面図を示す。図3は、長尺ウレタン引き離し装置の正面図を示す。
【0014】
長尺ウレタン材料を切断して得られる長尺ウレタン製品として、普通紙複写機、普通紙ファクシミリ、レーザービームプリンター等の静電方式の画像形成装置において、感光体や転写ベルト等のトナーを担持し或いはトナー担持面と接触する部材表面の残存トナーを除去するクリーニングブレードが例としてあげられる。
【0015】
<長尺ウレタン引き離し装置の構成>
ウレタンシートUSから長尺ウレタン製品Bを製作するときの概略については、図9において説明した通りである。図9(c)に示すように各長尺ウレタン材料Aに引き離しを行なうことができる装置を提供するものである。ウレタンシートUSは、コンベア1に搭載された状態で、図1の右側から左側へと移送される。左側にはストッパー2が設けられており、移送されてきたウレタンシートUSは、この位置で停止する。ウレタンシートUCには、前工程で入れられた切れ目Cが形成されており、長尺ウレタン材料Aの集合体として構成される。
【0016】
図1(b)は、図1(a)における要部を拡大した図である。ウレタンシートUSの一番先頭側に位置する第1長尺ウレタン材料A2の長手方向両端部には、第1チャック手段3が設けられている。図3にも示すように、第1長尺ウレタン材料A2の両端部A1をチャックできる位置に配置されている。チャック手段3の具体的な構成については、両端部A1を挟持可能な構成であれば、どのようなものでもよい。例えば、シリンダー機構を用いて、両端部A1を着脱自在にすることができる。そのほか、公知の機構を採用することができる。
【0017】
第1長尺ウレタン材料A2に隣接する第2長尺ウレタン材料A3についても、その両端部A1が第2チャック手段4によりチャックされる。第2チャック手段4は、第1チャック手段3と同じものを使用することができる。
【0018】
第1チャック手段3は、引き離しシリンダー5(端部引き離し手段に相当)により中央側斜め上方(図3の矢印参照)に持ち上げられるように構成されている。ただし、第2チャック手段4は、第1チャック手段3のように斜め上方に持ち上げられることはない。
【0019】
押圧シリンダー6(押圧手段に相当)は、押圧プレート7を上下動させるものであり、図1(b)に示すように、第2長尺ウレタン材料A3及びこれに隣接する長尺ウレタン材料A4の中央領域(両端部A1以外の領域)を押え付ける機能を有する。なお、押え付けるのは、第2長尺ウレタン材料A3のみであってもよい。
【0020】
図3に示すように、2つの引き離しシリンダー5は、支持フレーム8に取り付けられており、この支持フレーム8は更に上昇シリンダー9により、上方に持ち上げ可能に構成される。すなわち、上昇シリンダー9により、引き離しシリンダー5及び第1チャック手段3を上方に持ち上げることができる。
【0021】
さらに、この上昇シリンダー9は、図2に示すように移動シリンダー10により図の左側へ移動可能に支持されている。上昇シリンダー9及び移動シリンダー10は、第1長尺ウレタン材料Aを上方に持ち上げて、次工程に移送するための移送手段として機能する。次工程では、図9(d)に示すように、長尺ウレタン材料Aから長尺ウレタン製品Bを得るための処理工程が行われる。
【0022】
<制御機構に関して>
図4は、長尺ウレタン引き離し装置の各部の制御機能を示すブロック図である。制御手段20は、CPU、プログラム、メモリなどにより構成され、所定の動作ができるように、各部、各アクチュエータに対する制御を行う。
【0023】
シート位置検出手段21は、ウレタンシートUSの位置を検出する。すなわち、ウレタンシートUSがストッパー2の位置にまで移送されてきたか否か、などをセンサーからの出力に基づいて検出する。チャック検出手段22は、第1チャック手段3及び第2チャック手段4bによるチャック動作が正常に完了したか否かを検出する。
【0024】
押さえ検出手段23は、押圧プレート7による押圧動作が完了したか否かを検出する。引き離し動作検出手段24は、引き離しシリンダー5による引き離し動作が完了したか否かを検出する。上昇量検出手段25は、上昇シリンダー9により所定量の上昇動作が完了したか否かを検出する。移動シリンダー10は、長尺ウレタン材料Aを次工程へと移動できたか否かを検出する。これら各検出手段の出力結果に基づいて、制御手段20により各アクチュエータに対する制御が行われる。これら各検出手段も適宜のセンサーにより構成することができる。
【0025】
<長尺ウレタン引き離し装置による引き離し動作>
次に、以上説明してきた長尺ウレタン引き離し装置の動作について説明する。図5は、引き離し動作に関する処理手順を示すフローチャートである。
【0026】
まず、前工程においてウレタンシートUSに切れ目Cが入れられて、ウレタンシートUSが移送されてくる(S1)。切れ目Cについては、ギロチンカッターや円板カッターなどの適宜の切断機構を用いて形成することができる。ウレタンシートUSの先頭側がストッパー2に当接したことが検出されると、ウレタンシートUSが停止する(S2)。
【0027】
次に、第1チャック手段3を駆動して、第1長尺ウレタン材料A2の両端部A1をチャックする。これと同時、もしくはほぼ同時に第2長尺ウレタン材料A3の両端部A1もチャックする(S3)。次に、押圧シリンダー6を駆動して、押圧プレート7を下降させて、第2長尺ウレタン材料A3及びこれに隣接する長尺ウレタン材料A4の中央領域を押圧する(S4)。この押圧動作については、チャック動作と同時に行なってもよい。チャック及び押圧した状態は、図6に示される。
【0028】
次に、引き離しシリンダー5を動作させて、第1チャック手段3を長尺ウレタン材料Aの中央側であって斜め上方に両端部A1を持ち上げる。このとき、第1長尺ウレタン材料A2に隣接する第2長尺ウレタン材料A3は、コンベア1の載置面から持ち上げられないように、押圧プレート7及び第2チャック手段4により押え付けられている。これにより、一番先頭側の長尺ウレタン材料A2の両端部A1を持ち上げて引き離すことができる(S5)(図7参照)。
【0029】
次に、上昇シリンダー9を駆動して、引き離しシリンダー5を含むユニット上昇させる。このときの状態を図8に示す。これにより、第1チャック手段3により長尺ウレタン材料A2をチャックしたまま、全体的に上方に持ち上げられる(S6)。この状態で、更に移動シリンダー10を駆動し、引き上げた長尺ウレタン材料Aを次工程へと移送させる(S7)。
【0030】
次工程において、長尺ウレタン材料A2が引き渡される(S8)。このとき、第1チャック手段3によるチャック解除が行なわれることで、長尺ウレタン材料A2が引き渡され、移送機構は元の場所に復帰させられる(S9)。
【0031】
この復帰動作が行なわれる前の適宜のタイミングで押圧プレート7による押圧状態が解除される(S10)。ついで、ウレタンシートUSが1ピッチ分(長尺ウレタン材料Aの幅寸法分)だけ移送されて、同様の動作が繰り返される。
【0032】
<別実施形態>
本発明に係る長尺ウレタン材料の具体的な材料については、例えば、特開2005−345633号公報に開示されるポリウレタン弾性体があげられるが、これに限定されるものではない。また、長尺ウレタン材料は、クリーニングブレードを製作するものだけでなく、例えば、電子写真複写機のマグネットローラーにトナーを摩擦帯電させトナーを薄層形成させるトナーブレードについても適用できるものである。
【0033】
本発明に係る長尺ウレタン引き離し装置は、本実施形態において説明した構造に限定されるものではなく、種々の変形例が可能である。例えば、押圧プレート7の形状・長さ・プレートの個数などは適宜設定できる。また、プレート以外のもので押圧してもよい。アクチュエータとして、シリンダーを主として使用しているが、これ以外のアクチュエータ(モーターなど)を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】長尺ウレタン引き離し装置の平面図
【図2】長尺ウレタン引き離し装置の側面図
【図3】長尺ウレタン引き離し装置の正面図
【図4】制御機能を示すブロック図
【図5】引き離し動作に関する処理手順を示すフローチャート
【図6】チャック及び押圧した状態を示す図
【図7】長尺ウレタン材料の両端部を引き離した状態を示す図
【図8】長尺ウレタン材料の全体を持ち上げた状態を示す図
【図9】ウレタンシートから長尺ウレタン製品を製作するまでの手順を示す図
【図10】長尺ウレタン材料を引き離すときの状態を示す図
【符号の説明】
【0035】
1 コンベア
3 第1チャック手段
4 第2チャック手段
5 引き離しシリンダー
6 押圧シリンダー
7 押圧プレート
9 上昇シリンダー
10 移送シリンダー
20 制御手段
A 長尺ウレタン材料
B 長尺ウレタン製品
C 切れ目
A1 両端部
A2 第1長尺ウレタン材料
A3 第2長尺ウレタン材料
US ウレタンシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断方向に切れ目が入れられて複数の長尺ウレタン材料の集合体として製作されたウレタンシートから、個々の長尺ウレタン材料を引き離して次工程へ移送するための長尺ウレタン引き離し装置であって、
先頭側に位置する第1長尺ウレタン材料の両端部をチャックする第1チャック手段と、
第1長尺ウレタン材料に隣接する第2長尺ウレタン材料の両端部をチャックする第2チャック手段と、
第1チャック手段を上方に持ち上げる端部引き離し手段と、
端部引き離し手段を上方に持ち上げて、前記次工程に移動するための移送手段と、
第2チャック手段により第2長尺ウレタン材料の両端部をチャックした状態で、第1チャック手段により第1長尺ウレタン材料の両端部を所定の高さ持ち上げ、さらに、この持ち上げ状態のまま移送手段により第1長尺ウレタン材料を上方に持ち上げて次工程に移送できるように各部の制御を行う制御手段と、を備えたことを特徴とする長尺ウレタン引き離し装置。
【請求項2】
第2長尺ウレタン材料の両端部以外の領域を押圧する押圧手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の長尺ウレタン引き離し装置。
【請求項3】
前記端部引き離し手段による持ち上げ方向は、長尺ウレタン材料の中央側に向かう斜め上方であることを特徴とする請求項1又は2に記載の長尺ウレタン引き離し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−213128(P2008−213128A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57664(P2007−57664)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】