説明

開口部装置

【課題】開閉体の室内側面に生じた水が室内側に流れ込まないようにしつつ、排水される前の水や排水口を見えにくくして意匠性の向上を図った開口部装置を提供する。
【解決手段】建物開口部に設けられる枠体1内に開閉体2を室内外方向に開閉自在に納めてなり、枠体1を構成する下枠11は、開閉体2の室内面下端部と対向する位置に下枠11から開閉体2の室内面に渡って上面が延びる気密材17aを取付ける気密材取付部17を有すると共に、気密材取付部17よりも上方に突出する突出部18を有し、突出部18の開閉体2の室内面と対向する面と気密材17aの上面及び開閉体2の室内面とで水受け溝19を形成し、水受け溝19を構成する突出部18の面には排水口18aを設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突き出し窓、辷り出し窓、外倒し窓等を構成するように枠体に障子を開閉自在に取付けたサッシや枠体にドア体を開閉自在に取付けてなり勝手口等に用いられるドアなどの開口部装置に関し、特に室内側で生じた結露水等の水を排水するための排水口を下枠に設けた開口部装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物開口部に枠体を取付け、その内部に開閉体を室内外方向に開閉自在となるように納めた開口部装置が知られている。開口部装置としては、突き出し窓、辷り出し窓、外倒し窓などを構成するように枠体に障子を開閉自在に取付けたサッシや、枠体内部に障子の代わりにドア体を取付けたドアなどがある。このような開口部装置において、障子やドアである開閉体には、室内面に結露等を生じることにより、水を室外側に排水する必要を生じる場合がある。このため、枠体を構成する下枠の上面に排水口を設けて、この排水口から下枠内部に水を導いて排水するようにしていた。このような開口部装置としては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【特許文献1】特開2001−280006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の開口部装置は、排水口が下枠上面にあったため、排水される前の下枠上面に溜まった水が室内側から見えると共に、排水口も室内側から見えやすいため、意匠性を損ねることとなっていた。
【0004】
本発明は、前記課題を解決すべくなされたものであり、開閉体の室内側面に生じた水が室内側に流れ込まないようにしつつ、排水される前の水や排水口を見えにくくして意匠性の向上を図った開口部装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明に係る開口部装置は、建物開口部に設けられる枠体内に開閉体を室内外方向に開閉自在に納めてなる開口部装置において、
前記枠体を構成する下枠は、前記開閉体の室内面下端部と対向する位置に、上面が前記下枠から前記開閉体の室内面に渡る気密材を取付ける気密材取付部を有すると共に、該気密材取付部よりも上方に突出する突出部を有し、該突出部の前記開閉体の室内面と対向する面と前記気密材の上面及び前記開閉体の室内面とで水受け溝を形成し、該水受け溝を構成する前記突出部の面には排水口を設けてなることを特徴として構成されている。
【0006】
また、本発明に係る開口部装置は、前記下枠は金属材からなり、前記突出部は樹脂材により形成され前記下枠に取付けられる下枠アタッチ材によって形成されることを特徴として構成されている。
【0007】
さらに、本発明に係る開口部装置は、前記開閉体の室内面は樹脂製の部材が配置されると共に、前記気密材も樹脂材により形成されてなり、前記水受け溝は全面が樹脂材により構成されることを特徴として構成されている。
【0008】
さらにまた、本発明に係る開口部装置は、前記突出部には内部に中空部が形成され、前記排水口は前記中空部と連通することを特徴として構成されている。
【0009】
そして、本発明に係る開口部装置は、前記下枠は前記突出部の中空部と連通する下枠中空部を備え、該下枠中空部は室外側に水を排出する下枠排水口を有してなることを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る開口部装置によれば、枠体を構成する下枠は、開閉体の室内面下端部と対向する位置に、上面が下枠から開閉体の室内面に渡る気密材を取付ける気密材取付部を有すると共に、気密材取付部よりも上方に突出する突出部を有し、突出部の開閉体の室内面と対向する面と気密材の上面及び開閉体の室内面とで水受け溝を形成し、水受け溝を構成する突出部の面には排水口を設けてなることにより、開閉体の室内面に生じた結露水等を水受け溝に導くので、水が室内側に流れ込まないようにすると共に、導かれた水を室内側から視認しにくいようにすることができ、開口部装置の意匠性を損ねないようにすることができる。また、水受け溝からの排水は、突出部の室外側面に形成される排水口によってなされるので、排水口を室内側から見えないようにすることができ、意匠性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る開口部装置によれば、下枠は金属材からなり、突出部は樹脂材により形成され下枠に取付けられる下枠アタッチ材によって形成されることにより、室内側に露出する部分を樹脂材で構成することとなり、断熱性及び意匠性を向上させることができる。
【0012】
さらに、本発明に係る開口部装置によれば、開閉体の室内面は樹脂製の部材が配置されると共に、気密材も樹脂材により形成されてなり、水受け溝は全面が樹脂材により構成されることにより、さらなる断熱性の向上及び意匠性の向上を図ることができる。
【0013】
さらにまた、本発明に係る開口部装置によれば、突出部には内部に中空部が形成され、排水口は中空部と連通することにより、水受け溝からの水を一旦下枠内に導いて排水を行うことができる。
【0014】
そして、本発明に係る開口部装置によれば、下枠は突出部の中空部と連通する下枠中空部を備え、下枠中空部は室外側に水を排出する下枠排水口を有してなることにより、下枠上面に浸入した水と共に水受け溝からの水を排水することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。本実施形態では、枠体内に開閉体を開閉自在に納めてなる開口部装置の一種として、建物の出入口として用いられるドアを示す。図1には本実施形態におけるドアの正面図を示している。この図に示すように、本実施形態のドアは、建物の開口部に取付けられるドア枠体1に対し、開閉体であるドア本体2が開閉自在に納められて構成される。ドア本体2は、方形状に框組みされてなる框体3内に複層ガラスからなるパネル体4が納められてなり、框体3には一側部に手で持って開閉するための把手部5及びロック部6が取付けられ、吊元側には蝶番7が設けられてドア枠体1に対して開閉自在とされている。
【0016】
図2にはドアの縦断面図を、図3にはドアの横断面図を、それぞれ示している。これら各図に示すように、ドア枠体1は上枠10と下枠11及び左右の縦枠12、12を方形状に枠組みして構成されている。各枠はそれぞれ建物躯体に対してビス止め固定されている。また、各枠はそれぞれ金属材の室内側に樹脂材を配設してなる複合材により構成されている。なお、下枠11の室内側には、床材9が配置されている。
【0017】
ドア本体2を構成する框体3は、上框20と下框21及び左右の縦框22、22を方形状に框組みして構成されている。各框は、金属框23の室内側に樹脂框24を配設し、框体3の室内側面は樹脂框24で構成されるようにしている。ドア枠体1とドア本体2が、いずれも室内側には樹脂材のみが露出するようにされていることで、断熱性及び意匠性の向上が図られている。パネル体4は、框体3にグレチャン25を介して保持固定されている。
【0018】
次に、ドア枠体1を構成する下枠11の排水構造について説明する。図4には、図2の下枠11付近拡大図を示している。下枠11は、金属材からなる金属下枠13によって主に構成されている。金属下枠13は、断面中空状に形成されており、内部に下枠中空部13aを有している。金属下枠13の室外面には下枠排水口13bが形成されており、下枠11の上面からの水を下枠中空部13a内に導いた上でこの下枠排水口13bから外部に排水するようにしている。また、金属下枠13の下枠中空部13aは、複数の領域に仕切られており、その仕切には内部連通孔13cが形成されて、各領域間を水が流れて最終的には下枠排水口13bから外部に排水できるようにしている。
【0019】
金属下枠13においてドア本体2を構成する下框21の下端部に対向する位置には、気密材取付部17が形成されており、この気密材取付部17に気密材17aが取付けられる。気密材17aは軟質の樹脂材からなり、その上面は金属下枠13から下框21の室内面に渡るように形成されている。
【0020】
金属下枠13の気密材取付部17に隣接する上面には、アタッチ材取付部13dが形成され、このアタッチ材取付部13dには樹脂材からなる下枠アタッチ材14が設けられる。下枠アタッチ材14は、金属下枠13に取付けられることで、下枠11に気密材取付部17より上方に突出する突出部18を形成する。下枠アタッチ材14は、上面が平坦状に形成され、室外側面は下框21の下端部と対向する。また、下枠アタッチ材14の内部と金属下枠13とで中空部14aが形成される。
【0021】
このように設けられた下枠アタッチ材14の室外側面と気密材17aの上面、及び下框21の下端部室内面によって、凹状の水受け溝19が形成される。水受け溝19は、ドア本体2の室内側面と連続状であるため、ドア本体2の室内側面において生じた結露水等が流れ込む。そして、水受け溝19を構成する下枠アタッチ材14の室外側面には、排水口18aが形成されており、水受け溝19に流れ込んだ水を中空部14a内に導くようにしている。前述のように、金属下枠13には内部連通孔13cが形成されているので、中空部14aに導かれた水は、さらに内部連通孔13cを介して金属下枠13の下枠排水口13bに導かれ、外部に排水される。排水口18aは下枠アタッチ材14の長手方向に1箇所あるいは複数箇所設けることができる。なお、金属下枠13の下枠排水口13bや内部連通孔13cについても、長手方向に1箇所あるいは複数箇所設けることができる。
【0022】
水受け溝19を構成する突出部18の室外側面と気密材17a及び下框21の下端部室内面は、いずれも樹脂材によって構成されており、しかもドア本体2の室内面で生じた水を凹状の水受け溝19に導くようにしたので、導かれた水を室内側から視認しにくいようにすることができ、ドアの意匠性を損ねないようにすることができる。また、水受け溝19からの排水は、突出部18を形成する下枠アタッチ材14の室外側面に形成される排水口18aによってなされるので、排水口18aを室内側から見えないようにすることができ、意匠性を向上させることができる。
【0023】
下枠11上面において下枠アタッチ材14の室内側には、室内側材15が設けられる。室内側材15は樹脂材によって形成され、金属下枠13に固定される固定部材16に対して取付固定される。固定部材16は、金属下枠13の室内側端部付近の上面に対してネジ止めされることで固定される。固定部材16には上方に向かって開口する嵌合凹部16aが形成されており、一方で室内側材15には下面に嵌合突起15aが形成されていて、室内側材15の嵌合突起15aを固定部材16の嵌合凹部16aに挿入することで、両者が嵌合し固定がなされる。
【0024】
室内側材15は、上面が下枠アタッチ材14の室内端部から床材9に渡るように形成されている。これによって、下枠アタッチ材14から床材9までの間において金属下枠13が露出しないようにすることができ、また床材9から下枠アタッチ材14に渡る上面に大きな段差を生じないようにすることができる。
【0025】
本実施形態では、金属下枠13に樹脂材からなる下枠アタッチ材14を取付けて突出部18を形成しているが、突出部18を含めて金属材で構成するようにしてもよい。図5には、突出部18を金属下枠13に形成した場合の下枠11付近の拡大図を示している。この図に示すように、水受け溝19を構成する突出部18を金属下枠13に一体的に形成している。
【0026】
突出部18は、図4に示すものと同様に、気密材取付部17より上方に突出するように形成され、その室外側面は下框21の下端部と対向し、気密材17aとで水受け溝19を構成する。また、突出部18の内部には下枠中空部13aが形成されると共に、下框21の下端部と対向する突出部18の室外側面には排水口18aが形成される。これにより、ドア本体2の室内面に生じた水が水受け溝19に導かれ、排水口18aから金属下枠13の下枠中空部13aに導かれ、さらに下枠排水口13bから外部に排水される。
【0027】
また、本実施形態では、下枠11の室内側に板材からなる床材9を配置しているが、それ以外の床材であってもよい。図6には下枠11の室内側にカーペットを有する床材9を配置したものを示しており、また図7には下枠11の室内側にデッキ材を有する床材9を配置したものを示している。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用はこれら実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。例えば、本実施形態では枠体内に開閉体を納めた構造としてドアを示したが、室内外方向に開閉自在な障子を枠体内に納めたサッシであってもよく、突き出し窓、辷り出し窓、外倒し窓等のサッシに本発明を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態におけるドアの正面図である。
【図2】ドアの縦断面図である。
【図3】ドアの横断面図である。
【図4】図2の下枠付近拡大図である。
【図5】突出部を金属下枠に形成した場合の下枠付近の拡大図である。
【図6】下枠の室内側にカーペットを有する床材を配置したドアにおける下枠付近の拡大図である。
【図7】下枠の室内側にデッキ材を有する床材を配置したドアにおける下枠付近の拡大図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ドア枠体
2 ドア本体
9 床材
10 上枠
11 下枠
12 縦枠
13 金属下枠
13a 下枠中空部
13b 下枠排水口
13c 内部連通孔
13d アタッチ材取付部
14 下枠アタッチ材
14a 中空部
15 室内側材
15a 嵌合突起
16 固定部材
17 気密材取付部
17a 気密材
18 突出部
18a 排水口
19 水受け溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物開口部に設けられる枠体内に開閉体を室内外方向に開閉自在に納めてなる開口部装置において、
前記枠体を構成する下枠は、前記開閉体の室内面下端部と対向する位置に、上面が前記下枠から前記開閉体の室内面に渡る気密材を取付ける気密材取付部を有すると共に、該気密材取付部よりも上方に突出する突出部を有し、該突出部の前記開閉体の室内面と対向する面と前記気密材の上面及び前記開閉体の室内面とで水受け溝を形成し、該水受け溝を構成する前記突出部の面には排水口を設けてなることを特徴とする開口部装置。
【請求項2】
前記下枠は金属材からなり、前記突出部は樹脂材により形成され前記下枠に取付けられる下枠アタッチ材によって形成されることを特徴とする請求項1記載の開口部装置。
【請求項3】
前記開閉体の室内面は樹脂製の部材が配置されると共に、前記気密材も樹脂材により形成されてなり、前記水受け溝は全面が樹脂材により構成されることを特徴とする請求項2記載の開口部装置。
【請求項4】
前記突出部には内部に中空部が形成され、前記排水口は前記中空部と連通することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の開口部装置。
【請求項5】
前記下枠は前記突出部の中空部と連通する下枠中空部を備え、該下枠中空部は室外側に水を排出する下枠排水口を有してなることを特徴とする請求項4記載の開口部装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−185555(P2009−185555A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28312(P2008−28312)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【Fターム(参考)】