説明

開閉体の開閉装置

【課題】電動モータで開閉体を開閉するときに大きな騒音が発生することがない開閉体の開閉装置とする。
【解決手段】電動モータ51で回転されるねじ杆52にねじ部材53を螺合し、このねじ部材53にアーム54を取付け、前記電動モータ51でねじ杆52を回転することでねじ部材53が移動してアーム54でリンク機構3を作動して開閉体2が開閉するようにし、前記ねじ部材53は、樹脂製の雌ねじ体60を金属製のねじ保持体70で保持したものとし、その雌ねじ体60にねじ杆52を螺合すると共に、ねじ保持体70にアーム54に取付けてねじ杆52とねじ部材53の螺合部分から金属接触音及び振動による音が発生しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動駆動機構で開閉体を開閉移動する開閉体の開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、枠体に障子を開き位置と閉じ位置とに亘って移動可能に取付けた窓が種々提案されている。
前述した窓においては、その障子を人が手で開き位置と閉じ位置に移動して開閉するのが一般的であるが、排煙窓のように人の手が届かない高い場所に設置する窓においては、電動駆動機構で障子を開き位置と閉じ位置に移動して開閉するようにしている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されたように、電動モータでねじ杆を回転し、このねじ杆に雌ねじ体を螺合し、その雌ねじ体と障子とをリンク機構で連結し、前記ねじ杆の回転によって雌ねじ体を移動してリンク機構で障子が開き位置と閉じ位置とに亘って移動するようにした窓が提案されている。
【0004】
【特許文献1】実公平6−50631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来の窓によれば、電動モータを正逆駆動することで障子を開き位置と閉じ位置に移動できるから、障子を人の手で開閉操作する必要がなく、排煙窓などのように高い場所に設置する窓として好ましい。
しかしながら、前述した従来の窓においては、ねじ杆を回転して障子を開閉する際に、電動モータから伝わるねじ杆の振動でそのねじ杆と雌ねじ体の螺合部分から大きな金属接触音が発生し、また雌ねじ体が共に振動するので、障子の開閉時に大きな騒音が発生してしまう。
【0006】
本発明の目的は、電動モータによって開閉体を開閉できると共に、その開閉体の開閉時に大きな騒音が発生することがないようにした開閉体の開閉装置とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、リンク機構3を電動駆動機構5で作動することで開閉体2を閉じ位置と開き位置とに亘って移動する開閉体の開閉装置であって、
前記電動駆動機構5は、電動モータ51と、その電動モータ51で正逆回転されるねじ杆52と、このねじ杆52が螺合したねじ部材53と、このねじ部材53に取付けたアーム54を備え、前記ねじ杆52の回転でねじ部材53が移動し、そのねじ部材53の移動で前記アーム54によってリンク機構3を作動するようにし、
前記ねじ部材53は、樹脂製で前記ねじ杆52が螺合した雌ねじ体60と、この雌ねじ体60を保持する金属製のねじ保持体70を有し、
このねじ保持体70に前記アーム54を取付けたことを特徴とする開閉体の開閉装置である。
【0008】
本発明においては、複数に分割された雌ねじ体60と、複数に分割されたねじ保持体70を、それぞれ組み合わせて雌ねじ体60をねじ保持体70で回転しないように保持したねじ部材53とすることができる。
【0009】
このようにすれば、電動モータ51自体の回転方向の振動がねじ部材53により吸収されるので、電動モータ51自体の振動により、ねじ杆52とねじ部材53の螺合部分に発生する騒音が低減する。
【0010】
本発明においては、前記雌ねじ体60の移動方向の両端面とねじ保持体70との間に緩衝部材77を設け、雌ねじ体60の両端面を緩衝部材77を介在してねじ保持体70で保持するようにできる。
【0011】
このようにすれば、電動モータ51自体の軸方向の振動がねじ部材53における緩衝部材77で吸収されるので、その電動モータ51自体の軸方向の振動によりねじ杆52とねじ部材53の螺合部分に発生する騒音が低減する。
【0012】
本発明においては、前記ねじ部材53をハウジング50内に設け、このねじ部材53のねじ保持体70を、前記ハウジング50に押しつけるブレーキ手段90を設けることができる。
【0013】
このようにすれば、開閉体2側からねじ部材53に作用する負荷が変動してねじ部材53に振動として伝わったときに、その振動によってねじ保持体70が移動することをブレーキ手段90で防止できるので、開閉体2を開閉している途中に開閉体2が強風で煽られたりして負荷が変動したときに発生する脈動音(ビビリ音)や、負荷方向に意図して設けた隙間(バックラッシュ)による音を低減できる。
【0014】
本発明においては、前記ねじ部材53のねじ保持体70にブレーキ板を取付け、このブレーキ板を弾性部材によって前記ハウジング50に押しつけてブレーキ手段90とし、
前記ねじ保持体70に、前記ハウジング50に接してねじ部材53が回転しないようにする回転止め80を設けることができる。
【0015】
このようにすれば、ブレーキ板がハウジング50に接することでねじ部材53の移動抵抗を大きくできる。
また、ねじ部材53が回転することを回転止め80で防止し、ねじ杆52の回転でねじ部材53をハウジング50に沿って移動できる。
【0016】
本発明においては、前記雌ねじ体60は、半円形の雌ねじ部61bを有した一側雌ねじ体61と、半円形の雌ねじ部62bを有した他側雌ねじ体62を備え、
前記ねじ保持体70は一側ねじ保持体71と他側ねじ保持体72を備え、その一側・他側ねじ保持体71,72は、内側面71a,72aに開口した凹陥部73と、上面71d,72dと下面71e,72eに形成した半円形孔76を有し、この半円形孔76は前記凹陥部73と連続し、かつ内側面71a,72aに開口し、
前記一側雌ねじ体61、他側雌ねじ体62は一側・他側ねじ保持体71,72の凹陥部73に回転しないように嵌め込んで取付け、
前記一側ねじ保持体71と他側ねじ保持体72を、その内側面71a,72aが接するように連結して、各半円形孔76によってねじ杆52が挿通する円形の孔を有するねじ保持体70とすると共に、各半円形の雌ねじ部61b,62bで前記ねじ杆52が螺合する円形の雌ねじ部を有する雌ねじ体60とすることができる。
【0017】
このようにすれば、雌ねじ体60をねじ保持体70で保持したねじ部材53を簡単に組み立てできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ねじ杆52が樹脂製の雌ねじ体60に螺合するので、その螺合部分から金属接触音が発生することがない。
したがって、開閉体2を電動モータ51で開閉できると共に、開閉体2の開閉時に大きな騒音が発生することがない。
また、金属製のねじ保持体70にアーム54を取付けしたので、アーム54をねじ部材53に強固に取付けできる。
また、樹脂製の雌ねじ体60は金属製のねじ保持体70で補強されているから、ねじ部材53は耐久性が優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1に示すように、枠体1に開閉体2として障子を開閉可能に設けて窓としてある。
前記枠体1は、上枠10と下枠11と左右の縦枠12を方形状に連結してある。
前記障子2は、上框20と下框21と左右の縦框22を方形状に連結し、その内部にパネル材23が装着してある。
前記枠体1と開閉体2とに亘ってリンク機構3が取付けてある。
例えば、左右の縦框22の上部寄りと左右の縦枠12とに亘って左右のリンク機構3がそれぞれ取付けてある。
前記左右のリンク機構3は連動軸4で連動され、その左右のリンク機構3は同期して作動する。
前記枠体1、例えば左右一方の縦枠12に電動駆動機構5が取付けてある。
この電動駆動機構5によって左右一方のリンク機構3を作動することで、左右他方のリンク機構3も同期して作動し、それによって開閉体2が開閉するようにして開閉体の開閉装置としてある。
図1においては、理解を容易とするために、リンク機構3と連動軸4を仮想線で図示し、電動駆動機構5を点線で図示してある。
【0020】
前記リンク機構3は、図2と図3に示すように、下枠11に上下揺動可能に取付けた下リンク30と、縦枠12の上部寄りに上下揺動可能に取付けた上リンク31と、縦枠12の上下中間に上下揺動可能に取付けた中間リンク32と、縦枠12に沿って上下動可能に取付けた連動杆33と、この連動杆33の下部と前記下リンク30を連結する連結リンク34を備えている。
前記上リンク31は縦框22の上部寄りに回動可能に連結され、前記中間リンク32は縦框22の上下中間に回動可能に連結されている。
この中間リンク32には長手方向に沿ったガイド凹部32aを有し、前記連動杆33に取付けた摺動子35が前記ガイド凹部32aに沿って摺動する。
【0021】
前記中間リンク32のガイド凹部32aはくの字形状で、そのガイド凹部32aの上部寄りに摺動子35が位置するときには、図2に示すように中間リンク32は縦枠12内に位置し、開閉体2は図2に示すように閉じ位置である。
前記ガイド凹部32aの下部寄りに摺動子35が位置するときには、図3に示すように中間リンク32は縦枠12よりも面外方向外側に張り出し、開閉体2は図3に示すように開き位置である。
【0022】
前記下リンク30を上方に揺動すると連結リンク34で連動杆33が上方に移動し、摺動子35は図2に示すように、ガイド凹部32aの上部寄りに位置する。
前記下リンク30を下方に揺動すると連結リンク34で連動杆33が下方に移動し、摺動子35は図3に示すようにガイド凹部32aの下部寄りに位置する。
このようであるから、下リンク30を上下に揺動することで開閉体2を閉じ位置と開き位置とに亘って移動することができる。
【0023】
前記下リンク30は、前述した連動軸4に固着され、左右のリンク機構3の下リンク30は連動軸4によって同期して上下に揺動する。
したがって、左右一方のリンク機構3の下リンク30を、前記電動駆動機構5で上下に揺動することで、開閉体2をスムーズに開閉できる。
【0024】
図2、図3においては、リンク機構3の構成を理解し易いように障子2は仮想線で図示してある。
本発明のリンク機構3は前述したものに限ることはなく、従来から用いられている種々の形状のリンク機構を用いることができる。
【0025】
前記電動駆動機構5は、ハウジング50内に設けた電動モータ51、ねじ杆52、ねじ部材53、アーム54を備えている。
前記電動モータ51によりねじ杆52が正逆回転され、それによってねじ部材53が回転しないで上下に移動する。
このねじ部材53にアーム54の基端部が上下揺動可能に連結され、そのアーム54の先端部はハウジング50の開口部50aから外部に突出して前記下リンク30に連結してある。
【0026】
前記電動モータ51でねじ杆52を正回転してねじ部材53を上方に移動すると、図2に示すようにアーム54が上方に移動して下リンク30を上方に揺動し、前述したように開閉体2を閉じ位置とする。
前記電動モータ51でねじ杆52を逆回転してねじ部材53を下方に移動すると、図3に示すようにアーム54が下方に移動して下リンク30を下方に揺動し、前述したように開閉体2を開き位置とする。
このようであるから、電動駆動機構5によって開閉体2を開閉できる。
【0027】
次に、電動駆動機構5の詳細を説明する。
前記ハウジング50は、図4に示すように、中空形状の本体55と、その本体55の上部に取付けた上面覆体56と、本体55の下部に取付けた下面覆体57を備えている。
前記本体55は、図5に示すように、相対向した一側板55aと他側板55b、相対向した一端板55c、他端板55dで断面ほぼ矩形状の中空長尺材で、複数のビスホール55eを長手方向に連続して有する。例えば、アルミ押出形材である。
前記上面覆体56は、図4に示すように、本体55の上部に、前記ビスホール55eに螺合したビスで固着して取付けられ、取付用穴56aを有している。
前記下面覆体57は本体55の下部に前記ビスホール55eに螺合したビスで固着して取付けられ、取付用穴57aとねじ杆支承用の孔57bを有している。
そして、本体55の他端板55dに前記開口部50aが形成してある。
【0028】
前記電動モータ51の出力軸51aはカップリング58を介してねじ杆52の上部に連結されている。
このねじ杆52の下部は、前記下面覆体57の孔57bに軸受59で回転自在に支承されている。
このねじ杆52は金属製である。
【0029】
前記ねじ部材53は、図5に示すように雌ねじ体60と、この雌ねじ体60を回転しないように保持するねじ保持体70を備えている。
前記雌ねじ体60は樹脂製である。例えば、ポリアセタールを用いて射出成形されている。
前記ねじ保持体70は金属製である。例えば、亜鉛ダイキャストによって製作されている。
前記雌ねじ体60にねじ杆52が螺合してある。
前記ねじ保持体70に、前記アーム54が上下揺動可能に取付けてある。
【0030】
このようであるから、電動モータ51でねじ杆52を正逆回転することで雌ねじ体60とともにねじ保持体70が上下に移動し、それによって、アーム54が上下に移動するので、前述したように、開閉体2を開閉できる。
また、金属製のねじ杆52は樹脂製の雌ねじ体60に螺合し、金属製のねじ保持体70には接触しないので、ねじ杆52とねじ部材53の螺合部分から金属接触音が発生することなく、開閉体2の開閉時に大きな騒音が発生することがない。
また、樹脂製の雌ねじ体60を金属製のねじ保持体70で保持し、そのねじ保持体70にアーム54が取付けてあるので、そのアーム54をねじ部材53に強固に取付けできると共に、雌ねじ体60がねじ保持体70で補強されるから、ねじ部材53は耐久性が優れたものである。
【0031】
前記雌ねじ体60とねじ保持体70は、それぞれ複数に分割され、それらを組み合わせることで雌ねじ体60をねじ保持体70で回転しないように保持したねじ部材53としてある。分割は回転方向であり、ねじ杆52を挟んで取付け可能に分割される。
このようであるから、電動モータ51自体の回転方向の振動が、複数の雌ねじ体60と複数のねじ保持体70との間で吸収され、電動モータ51自体の回転方向の振動によりねじ杆52とねじ部材53の螺合部分に発生する騒音が低減する。
【0032】
また、雌ねじ体60の上下端面(つまり、移動方向の両端面)をねじ保持体70で直接的に保持するのではなく、緩衝部材を介在して保持している。
このようであるから、電動モータ51自体の軸方向の振動を緩衝部材で吸収できるので、その電動モータ51自体の軸方向の振動によりねじ杆52とねじ部材53の螺合部分に発生する騒音が低減する。
【0033】
次に、前記雌ねじ体60、ねじ保持体70の分割について説明する。
前記雌ねじ体60は一側雌ねじ体61と他側雌ねじ体62に分割され、ねじ保持体70も一側ねじ保持体71と他側ねじ保持体72に分割されている。
前記一側雌ねじ体61は半円形で、ねじ杆52のねじ山に嵌合する溝状の雌ねじ部を有し、一側ねじ保持体71に回転しないように保持され、他側雌ねじ体62は半円形で前述と同様の溝状の雌ねじ部を有し、他側ねじ保持体72に回転しないように保持されている。
そして、一側ねじ保持体71と他側ねじ保持体72を組み合わせて連結することで、一側雌ねじ体61と他側雌ねじ体62が突き合って円形の雌ねじ部を有する雌ねじ体60を形成すると共に、ねじ杆52が挿通する円形の孔を有するねじ保持体70を形成する。
【0034】
前記ねじ保持体70は、ハウジング50(本体55の内面)に接してねじ部材53が回転しないようにする回転止め80を備えている。
例えば、一側ねじ保持体71に回転止め用の一側プレート81を取付け、他側ねじ保持体72に回転止め用の他側プレート82を取付ける。
前記一側プレート81を本体55の一側板55aとビスホール55e部分に接し、他側プレート82を本体55の他側板55bとビスホール55e部分に接してねじ保持体70を回転しないように本体55で支持する。前記ねじ杆52が図5で右回転すると、一側プレート81がハウジング50の内面に圧接して回転に耐え、左回転すると他側プレート82がハウジング50の内面に圧接して回転に耐える。
前記一側プレート81、他側プレート82(つまり、回転止め80)は、樹脂製である。
このようであるから、ねじ部材53が上下に移動するときに、一側プレート81、他側プレート82が本体55の内面に沿って摺動するが、その摺動部分から金属こすれ音が発生することがない。
【0035】
前記ねじ保持体70は、そのねじ保持体70が上下に移動するときの抵抗を大きくし、開閉体2側からアーム54を介してねじ部材53に作用する負荷で移動しないようにするブレーキ手段90を備えている。例えば、ねじ保持体70に設けたブレーキ板をハウジング50の内面に押しつけている。
具体的には、一側ねじ保持体71に一側ブレーキ板91を設け、この一側ブレーキ板91を弾性部材によってハウジング50の内面(本体55の一側板55a)に押しつける。
他側ねじ保持体72に他側ブレーキ板92を設け、この他側ブレーキ板92を弾性部材によってハウジング50の内面(本体55の他側板55b)に押しつけている。
前記一側ブレーキ板91、他側ブレーキ板92は樹脂製である。
【0036】
このようであるから、開閉体2側からねじ部材53に作用する負荷が変動してねじ部材53に振動として伝わったときに、その振動によってねじ保持体70が移動することをブレーキ手段90で防止できるので、開閉体2を開閉している途中に開閉体2が強風で煽られたりして負荷が変動したときに発生する脈動音(ビビリ音)やバックラッシュ音を低減できる。
【0037】
前記ねじ部材53の詳細を図6〜図8に基づいて説明する。なお、図6においては、ねじ部材53の理解を容易とするためにねじ杆52の図示を省略してある。
前記一側雌ねじ体61と他側雌ねじ体62は、外周面が非円形状、例えば矩形状で、略四角形を呈し、その内側面61a,62aに開口した半円形の雌ねじ部61b,62bを有している。
前記外周面の2つのコーナー部には面取り61c,62cが加工してある。
【0038】
前記一側ねじ保持体71と他側ねじ保持体72の相対向した内側面71a,72aには雌ねじ取付用の凹陥部73を相対向して有し、前記相対向した内側面71a,72aと反対側の外側面71b,72bにはブレーキ板取付用の凹部74をそれぞれ有している。
前記内側面71a,72aと外側面71b,72bを連続する一端面71c,72cには回転止め取付用の鉤形凹部75をそれぞれ有する。前記外側面71b,72bは一側板55aと他側板55bに対面する。
前記一側ねじ保持体71と他側ねじ保持体72の上面71d,72d、下面71e,72eには半円形孔76をそれぞれ有し、この半円形孔76は内側面71a,72aに開口していると共に、前記凹陥部73の上部、下部と連続している。
【0039】
前記凹陥部73は非円形、例えば矩形状で、前記一側・他側雌ねじ体61,62が回転しないように嵌まり合う。すなわち、樹脂製の雌ねじ体60は金属製のねじ保持体70に嵌まって保持されるのみであり、ねじなどによる固定をしないので、ねじ杆52の振動が雌ねじ体60に伝達した後、ねじ保持体70に伝達するまでに、その振動がかなり減衰するため、アーム54へも振動が伝わりにくくなり、結果として開閉体2の振動による騒音が発生しにくくなるのである。
前記半円形孔76は、ねじ杆52が挿通する大きさで、この半円形孔76は凹陥部73よりも小さく、その凹陥部73の上部、下部と連続して庇状の下向面73a、上向面73bを有している。
前記一側・他側雌ねじ体61,62の上下寸法は、前記下向面73aと上向面73bとの間の上下寸法よりも小さく、各雌ねじ体61,62の上端面61d,62dと下向面73aとの間、下端面61e,62eと上向面73bとの間には前述した緩衝部材77がそれぞれ設けてあり、一側・他側雌ねじ体61,62の移動方向(ねじ杆52の長手方向)の両端面は緩衝部材77を介してねじ保持体70で保持される。
この緩衝部材77は、ウレタンより成るリング、oリングなどの環状で弾性に優れたものが好ましい。
【0040】
このようであるから、一側雌ねじ体61、他側雌ねじ体62の移動方向の両端面は一側ねじ保持体71、他側ねじ保持体72で直接的に保持されることはなく、緩衝部材77を介在して保持されるので、前述のように電動モータ51自体の軸方向の振動を吸収できる。
また、ねじ杆52を正回転、逆回転したときに一側・他側雌ねじ体61,62が一側・他側ねじ保持体71,72に対して急激に上下方向に動いても衝撃が一側・他側ねじ保持体71,72に伝わることがない。
したがって、ねじ部材53をスムーズに上下に移動開始できるので、開閉体2をスムーズに開閉開始することができる。
【0041】
前記一側プレート81、他側プレート82は、一側ねじ保持体71、他側ねじ保持体72の鉤形凹部75にボルト83でそれぞれ固着して取付けられる。
前記一側ブレーキ板91、他側ブレーキ板92は、一側ねじ保持体71、他側ねじ保持体72の凹部74に出入り可能に嵌め込まれ、その裏面91a,92aと凹部74の底面74aとの間に弾性部材93、例えばスポンジ、ばねを設け、その表面91b,92bを本体55の一側板55a、他側板55bに押しつけている。
【0042】
前記一側ねじ保持体71と他側ねじ保持体72は、その内側面71a,72aが対向するようにボルト78で連結される。
そして、一側ねじ保持体71の内側面71aと他側ねじ保持体72の内側面72aが接触し、半円形孔76によってねじ杆52が挿通する円形の孔を形成する。
また、一側雌ねじ体61の内側面61aと他側雌ねじ体62の内側面62aとの間に1mm程度の隙間が生じるようにしてあると共に、半円形の雌ねじ部61b,62bによってねじ杆52が螺合する円形の雌ねじ部を形成する。
【0043】
前記一側ねじ保持体71の他端面71fにはアーム取付用溝79が形成してある。
このアーム取付用溝79にアーム54の基端部を挿入してピン54aで上下揺動自在に連結してある。
【0044】
前述の実施の形態では、窓の障子を開閉する開閉装置とし、開閉体2を障子としたが、これに限ることはない。
例えば、観音開きのように開くハッチを開閉する開閉装置や、家屋の床下収納の扉を開閉する開閉装置にも利用できる。
これらの場合には、ハッチ、扉が開閉体となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】窓の外観図である。
【図2】障子が閉じた状態の窓の縦断面図である。
【図3】障子が開いた状態の窓の縦断面図である。
【図4】電動駆動装置の拡大詳細図である。
【図5】図4のA−A拡大断面図である。
【図6】図4のB−B拡大断面図である。
【図7】図5のC−C断面図である。
【図8】ねじ部材の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1…枠体、2…開閉体、3…リンク機構、4…電動開閉装置、50…ハウジング、51…電動モータ、52…ねじ杆、53…ねじ部材、54…アーム、60…雌ねじ体、61…一側雌ねじ体、61b…半円形の雌ねじ部、61d…上端面、61e…下端面、62…他側雌ねじ体、62b…半円形の雌ねじ部、62d…上端面、62e…下端面、70…ねじ保持体、71…一側ねじ保持体、72…他側ねじ保持体、73…凹陥部、73a…下向面、73b…上向面、76…半円形の孔、77…緩衝部材、80…回転止め、90…ブレーキ手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンク機構3を電動駆動機構5で作動することで開閉体2を閉じ位置と開き位置とに亘って移動する開閉体の開閉装置であって、
前記電動駆動機構5は、電動モータ51と、その電動モータ51で正逆回転されるねじ杆52と、このねじ杆52が螺合したねじ部材53と、このねじ部材53に取付けたアーム54を備え、前記ねじ杆52の回転でねじ部材53が移動し、そのねじ部材53の移動で前記アーム54によってリンク機構3を作動するようにし、
前記ねじ部材53は、樹脂製で前記ねじ杆52が螺合した雌ねじ体60と、この雌ねじ体60を保持する金属製のねじ保持体70を有し、
このねじ保持体70に前記アーム54を取付けたことを特徴とする開閉体の開閉装置。
【請求項2】
複数に分割された雌ねじ体60と、複数に分割されたねじ保持体70を、それぞれ組み合わせて雌ねじ体60をねじ保持体70で回転しないように保持したねじ部材53とした請求項1記載の開閉体の開閉装置。
【請求項3】
前記雌ねじ体60の移動方向の両端面とねじ保持体70との間に緩衝部材77を設け、雌ねじ体60の両端面を緩衝部材77を介在してねじ保持体70で保持した請求項1又は2記載の開閉体の開閉装置。
【請求項4】
前記ねじ部材53をハウジング50内に設け、このねじ部材53のねじ保持体70を、前記ハウジング50に押しつけるブレーキ手段90を設けた請求項1〜3いずれか1項に記載の開閉体の開閉装置。
【請求項5】
前記ねじ部材53をのねじ保持体70にブレーキ板を取付け、このブレーキ板を弾性部材によって前記ハウジング50に押しつけてブレーキ手段90とし、
前記ねじ保持体70に、前記ハウジング50に接してねじ部材53が回転しないようにする回転止め80を設けた請求項3記載の開閉体の開閉装置。
【請求項6】
前記雌ねじ体60は、半円形の雌ねじ部61bを有した一側雌ねじ体61と、半円形の雌ねじ部62bを有した他側雌ねじ体62を備え、
前記ねじ保持体70は一側ねじ保持体71と他側ねじ保持体72を備え、その一側・他側ねじ保持体71,72は、内側面71a,72aに開口した凹陥部73と、上面71d,72dと下面71e,72eに形成した半円形孔76を有し、この半円形孔76は前記凹陥部73と連続し、かつ内側面71a,72aに開口し、
前記一側雌ねじ体61、他側雌ねじ体62は一側・他側ねじ保持体71,72の凹陥部73に回転しないように嵌め込んで取付け、
前記一側ねじ保持体71と他側ねじ保持体72を、その内側面71a,72aが接するように連結して、各半円形孔76によってねじ杆52が挿通する円形の孔を有するねじ保持体70とすると共に、各半円形の雌ねじ部61b,62bで前記ねじ杆52が螺合する円形の雌ねじ部を有する雌ねじ体60とした請求項1〜5いずれか1項に記載の開閉体の開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−150797(P2010−150797A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329443(P2008−329443)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】