説明

開閉弁

【課題】従来の開閉弁は、弁体カバーを弁体側に付勢するためにゴム部材を用いている。そして、2次室内の圧力が所定の圧力になるまで弁体カバーが移動しないようにある程度圧縮した状態で取り付けている。ゴム部材は圧縮変形されると、弾性係数が急激に増加する特性を備えており、ある程度弾性変形すると、それ以上変形させるには大きな力を必要とする。そのため、2次室内の水の凍結度合いが大きくなり、弁体カバーの移動量が増加すると、ゴム部材が弾性変形せずに、ゴム部材を保持している押さえ板等の他の部品が塑性変形してしまう。
【解決手段】弁体カバー6が所定距離d移動すると、2次室5を外部に開放して2次室5内の圧力を逃がす圧力逃がし手段であるスリット溝12を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば元止め式給湯器に用いられる止水弁のようなダイヤフラム状の弁体を備えた開閉弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の開閉弁として、ダイヤフラム式の弁体を備え、この弁体で開閉される流出口を囲繞する1次室と、弁体を挟んで1次室に対して反対側に、弁体と弁体カバーとで囲まれた2次室とを有し、1次室内の水圧を2次室に導入し、導入された2次室内の圧力で弁体を流出口に押接させて流出口を閉弁する開閉弁の一種である止水弁が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この止水弁では流出口を閉弁している状態では2次室内に水が充満しているので、冬期などの気温が低い状態で2次室内の水が凍結するおそれが生じる。2次室は閉塞されているので、2次室内の水が凍結し出すと圧力が上昇し、2次室を構成する弁体や弁体カバーが破損する。
【0004】
そのため、上記特許文献1に記載されたものでは、弁体カバーを弁体から離れる方向に移動自在に保持すると共に、弁体カバーを弁体に向かう方向に付勢するゴム部材を設け、2次室内の圧力が所定の圧力を超えるとゴム部材を圧縮変形させながら弁体カバーが弁体から離れる方向に移動して、2次室内の圧力上昇を緩和するように構成されている。
【特許文献1】特許3807908号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の止水弁は、弁体カバーを弁体側に付勢するためにゴム部材を用いている。そして、2次室内の圧力が所定の圧力になるまで弁体カバーが移動しないようにある程度圧縮した状態で取り付けている。
【0006】
ゴム部材は圧縮変形されると、弾性係数が急激に増加する特性を備えており、ある程度弾性変形すると、それ以上変形させるには大きな力を必要とする。そのため、2次室内の水の凍結度合いが大きくなり、弁体カバーの移動量が増加すると、ゴム部材が弾性変形せずに、ゴム部材を保持している押さえ板等の他の部品が塑性変形してしまうという不具合が生じる。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、2次室内の水が凍結した場合に塑性変形する部分が生じない開閉弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明による開閉弁は、ダイヤフラム式の弁体を備え、この弁体で開閉される流出口を囲繞する1次室と、弁体を挟んで1次室に対して反対側に、弁体と弁体カバーとで囲まれた2次室とを有し、1次室内の水圧を2次室に導入し、導入された2次室内の圧力で弁体を流出口に押接させて流出口を閉弁する開閉弁において、弁体カバーを弁体から離れる方向に移動自在に保持すると共に、弁体カバーを弁体に向かう方向に付勢する付勢手段を設け、2次室内の圧力が所定の圧力を超えることにより付勢手段の付勢力に抗して弁体から離れる方向に所定距離移動すると、2次室を外部に開放して2次室内の圧力を逃がす圧力逃がし手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
上記構成では、2次室内の圧力が上昇すると弁体カバーが弁体から離れる方向に移動するが、弁体カバーの移動だけで2次室内の圧力上昇を緩和するのではなく、弁体カバーが所定距離移動した時点で2次室を外部に開放することにより2次室内の圧力上昇を緩和するようにした。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明は、2次室内の水が凍結し圧力が上昇すると、その圧力上昇を弁体カバーの移動だけで緩和するのではなく、弁体カバーが所定距離移動した時点で2次室を外部に開放することにより2次室の圧力上昇を緩和するので、各部材に大きな応力が作用せず、その結果いずれの部材も塑性変形することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
1は元止め式給湯器に内蔵されている水系バルブユニットの一部である止水弁部である。この止水弁部1の本体11は中空であり、中空部には流出管2が設けられている。そして、この流出管2の入口である流出口21を囲繞するように1次室3が形成されている。この流出口21はダイヤフラム式の弁体4で開閉される。図示の状態では弁体4によって流出口21は閉弁されているが、弁体4が図において右方向に移動すると流出口21が開弁され1次室3内の水が流出管2へと流れる。
【0012】
弁体4には1次室3に臨むパイロット孔41が設けられ、1次室3内の水圧がこのパイロット孔41を介して2次室5に作用する。すなわち、このパイロット孔41を通って1次室3内の水が2次室5内に侵入し、1次室3内の水圧と2次室5内の水圧とが等しくなる。両水圧の受圧面積は2次室5側の方が広いので弁体4を2次室5側から左側に押す力の方が大きくなり、弁体4は流出口21に押接され、閉弁状態が維持される。
【0013】
弁体4には中央部に流出管2に臨む連通孔42が設けられており、この連通孔42は閉止弁51により閉鎖されている。この閉止弁51はバネ52によって常に連通孔42を閉鎖する方向に付勢されている。また弁軸53が連結されており、弁軸53の先端は弁体カバー6を貫通して外部に突出している。そして弁軸53の露出部分にはコマ54が取り付けられている。
【0014】
このコマ54には開弁用のレバーLが係合されており、レバーLがコマ54を右方向に移動させ弁軸53を引き出す方向に移動させると、閉止弁51が連通孔42から離れる。すると、2次室5は流出管2に連通し、2次室5内の圧力が急速に低下する。1次室3には水圧が高いままであるので、1次室3内の水圧によって弁体4が右方向に押されて流出口21が開弁される。
【0015】
上述のように2次室5内には使用中は常に水が充満しているので、冬期のように外気温が低い状態では2次室5内の水が凍結する場合が生じる。そこで、弁体カバー6を弁体4から離れる方向、すなわち2次室5の容積が増加する方向に移動自在に構成すると共に、ウォータハンマの発生時や最大水圧によっては弁体カバー6が不用意に移動しないように、押さえゴム61で弁体カバー6を弁体4側に付勢した。なお、この押さえゴム61は押さえ板62に接着されている。
【0016】
弁体カバー6と本体11との間はリング状のシール60でシールされている。また、このシール60の摺動面に図示のようなスリット溝12を形成した。そして、弁体カバー6が所定距離である距離d移動すると、シール60がスリット溝12の端部を超えるようにした。シール60がスリット溝12の端部を超えると、スリット溝12を介して2次室5が外部に連通する。すると、2次室5内の水がスリット溝12を通って外部に流出し、2次室5内の圧力が低下する。なお、流出した水は排水孔13から排水されるようにした。また、図示のものではスリット溝12を1ヶ所のみに設けたが、必要に応じて複数本形成してもよい。
【0017】
上述の実施の形態ではスリット溝12で圧力逃がし手段を構成したが、例えば弁体カバー6の端面6aとレバーLとの間隔を距離dに設定しておいてもよい。弁体カバー6が距離d移動すると、端面6aがレバーLに当接し、さらに弁体カバー6が移動すると、弁軸53と共に閉止弁51を図において右方向に移動させることになる。すると、連通孔42が開放され、2次室5内の水が流出管2に流出して2次室5内の圧力が低下する。このように、端面6aとレバーLとの間隔を距離dに設定することにより圧力逃がし手段を構成してもよい。
【0018】
さらには、図2に示すように、弁体カバー6に水抜き孔64を設け、この水抜き孔64を栓部73で閉塞するようにしてもよい。この栓部73は軸部材7の一端に形成されており、軸部材7の他端は押さえ板62に設けた貫通孔63に通した状態でフランジ71,72で軸線方向に移動しないように保持させた。この構成では、弁体カバー6が図において右方向に距離d移動すると、栓部73が水抜き孔64から外れるように構成した。栓部73が水抜き孔64から外れると、水抜き孔64を介して2次室5が外部に連通し、水抜き孔64を通って2次室5内の水が外部へ流出する。
【0019】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】他の実施の形態の構成を示す図
【符号の説明】
【0021】
1 止水弁部
2 流出管
3 1次室
4 弁体
5 2次室
6 弁体カバー
7 軸部材
11 本体
12 スリット溝
21 流出口
41 パイロット孔
42 連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤフラム式の弁体を備え、この弁体で開閉される流出口を囲繞する1次室と、弁体を挟んで1次室に対して反対側に、弁体と弁体カバーとで囲まれた2次室とを有し、1次室内の水圧を2次室に導入し、導入された2次室内の圧力で弁体を流出口に押接させて流出口を閉弁する開閉弁において、弁体カバーを弁体から離れる方向に移動自在に保持すると共に、弁体カバーを弁体に向かう方向に付勢する付勢手段を設け、2次室内の圧力が所定の圧力を超えることにより付勢手段の付勢力に抗して弁体から離れる方向に所定距離移動すると、2次室を外部に開放して2次室内の圧力を逃がす圧力逃がし手段を設けたことを特徴とする開閉弁。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−216211(P2009−216211A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62389(P2008−62389)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】