説明

開閉機構、及び機器

【課題】操作性を高め、利便性の高い開閉機構の提供、該開閉機構を用いた機器の提供、開閉機構又は機器にある開閉機構のユニット化の容易化、組立・分解容易な開閉機構の提供にある。
【解決手段】第一の部材(計測器本体4)と、第一の部材に支持軸(12)を介して回動可能に支持され、第一の部材との相対回動により開閉可能な第二の部材(操作盤6)と、第一の部材と前記第二の部材の相対回動を拘束する回動拘束手段(ギア機構50、52、及び凸部40、及び凹部36a、36b、36c)と、回動拘束手段による拘束を維持する拘束維持手段(バネ16等)と、回動拘束手段による拘束を解除する拘束解除手段(操作部42)とを備え、拘束解除手段は、第二の部材に開方向の外力を受けた際に、該外力に応じて拘束維持手段による拘束の維持を解き、回動拘束手段の拘束を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉可能な部材を備える構造物、機器にヒンジ止めされて開閉可能な操作盤、所定角度の開位置や閉位置で維持される蓋や扉等、部材間の開閉に利用される開閉機構、及び開閉機構を備える機器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の開閉機構を用いた機器として例えば、生産現場や試験現場で使われる計測器や生産装置が挙げられるが、これらは近年、コンピュータ技術の採用によって知能化、高度化されている。このようにコンピュータが組み込まれた計測器や装置等、各種機器では、作業者(ユーザ)との間をとりもつ所謂マンマシーンインターフェイス(以下単に「操作盤」という)が用いられ、この操作盤で作業者が機器のパラメータ設定やデータ処理を行っている。この操作盤には通常、命令を与えるキーボードと、現在の命令状態をリアルタイムで表示する表示部とが備えられるが、キーボードを廃止して画面の要所に触るだけで必要な命令を機器に与える、所謂タッチパネル方式も見受けられる。タッチパネル操作では、作業者による操作力は比較的少ないのに対し、キーボード操作では、操作盤に対しかなり強い操作力が垂直方向に加えられる。
【0003】
このような操作盤について、操作盤は非常に脆弱であり、未使用時には不用意に大きな外力にさらされないよう、できるだけ機器の近い位置に収納することが望ましい。また、使用時には操作盤は作業者の操作し易い位置や角度に移動させることが望まれる。これらの計測器や装置は作業現場で常設場所が決められ、作業者は起立姿勢で扱う場合が多い。作業者の身長はまちまちであり、操作盤は、作業者の視線が直角のほうが見易いし、扱い易い。このため、操作盤は、容易に操作可能な角度調節機構を備えることが望ましい。また、タクトタイムに追われる等、多忙な生産現場では角度調整に複雑な動作は極力回避すべきであり、一動作(ワンアクション)が望まれる。
【0004】
また、操作盤の操作に作業者の両手を強いることは作業能率に問題があり、操作が片手で行えることも望まれる。
【0005】
更に、レイアウト変更や、据付け場所の変更がかなりの頻度で起きる生産現場では、その変更の都度、計測機器が床上を移動するが、その移動が、床面の段差や装置や計測機に取り付けられたキャスタ車輪によって衝撃を伴う。レイアウト変更時には操作盤を作業終業時の状態位置に格納しても、その衝撃で、操作盤を操業状態の位置に移動させ、操作盤を傷つけるおそれがある。このため、操作盤は、作業終業時に所定位置に収められ、作業者(又は管理者)の意思や動作がなければ開かない状態に維持されることが要請される。
【0006】
操作上、操作盤には作業者の操作力が加わるが、その操作力で操作盤の設定角度が容易に変わってしまうようでは使い勝手が悪い。通常の操作力と、操作盤の角度変更に要する力とを異ならせ、操作盤の角度が不用意に変更できないようにすることが望まれる。
【0007】
操作盤の角度変更等、また、操作盤を終業位置に戻す場合、操作盤と計測機器本体との間に作業者の手や指が挟まれて痛い思いをするといった事象は極力回避されなければならない。
【0008】
ところで、係る機器や操作盤等の機構に関し、内側アームとこの内側アームが摺動自在に嵌合された外側アームとを含むステー本体と、ステー本体の内外のアームを所定の契合位置で固定する固定手段を備え、固定手段の構造にはプッシュボタン式(特許文献1)、持ち上げ式(特許文献2)等があり、ボタン又は摘みの操作で固定又は解除を行うことが知られている。比較的軽量の扉では、フリクションを応用した任意位置固定のフリクションダンパー装置が扉や蓋の開閉装置として用いられることが知られている(特許文献3)。重量が重い上開き扉付きケースでは、ガススプリングを用いて重量を相殺すると共に、フックやストッパによって扉体の開放状態を維持することが知られている(特許文献4)。また、扉を全開全閉や途中開度で何段階かに保持するために、係止突起と係合穴の組み合わせによって保持することが知られている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実公昭44−15610公報
【特許文献2】特開2006−2370公報
【特許文献3】特開平07−158665公報
【特許文献4】特開2001−149187公報
【特許文献5】特開平07−317413公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
伸縮ステーによる上開き扉の固定又はその解除の操作では、一方の手で扉を持ち、他方の手で固定手段を操作する必要があり、両手を使わないと扉の固定操作ができない問題点がある。更に、伸縮ステーでは、扉の閉状態に於ける固定には、別の固定装置を付けないと、衝撃等により開状態になる等、扉の固定が不十分である。
【0011】
また、操作盤の開閉時に適当なフリクションを与えるヒンジダンパー付きの開閉装置では、操作盤の自重は保持するが、キーボードを操作する様な荷重を加えると位置を保持することができなくなり操作盤が動いてしまい、片手で保持しないと操作できない。
【0012】
ガススプリングをフックやストッパによって固定することによって上開き扉の固定を行う場合も同様に、一方の手で扉を持ち、他方の手で固定手段を操作する必要があり、両手を使わないと扉の固定操作ができない。
【0013】
また、係止突起と係合穴の組み合わせによって扉を何段階かに保持する場合は、契合を解除する一定以上の開閉力によって開閉が行われ、閉じる方向の力に対して固定されるものではないため、キーボードを操作する様な荷重を加えると位置を保持することができなくなり操作盤が動いてしまう。そのため、片手で保持しないと操作ができない。
【0014】
ノート型パーソナルコンピュータや折りたたみ型携帯電話機等の表示部には開閉機構が用いられている。ノート型パーソナルコンピュータの表示部は自由な開度に開閉され、開閉操作をやめれば適度なフリクションを持って固定されるようになっている。しかし、操作盤には、操作ボタン等のように押下力を作用させる操作部が存在し、ノート型パーソナルコンピュータの表示部のようにロックされないような開閉機構は使用できない。
【0015】
また、折りたたみ型携帯電話機の表示部等の開度は一定であり、自由な開度で固定できないので、係る開閉機構は操作盤に適用できるものではない。
【0016】
そこで、本発明の第1の目的は、上記課題に鑑み、操作性を高め、利便性の高い開閉機構を提供することにある。
【0017】
また、本発明の第2の目的は、上記課題に鑑み、上記開閉機構を用いた機器を提供することにある。
【0018】
また、本発明の第3の目的は、開閉機構又は機器にある開閉機構のユニット化を容易にし、組立・分解容易な開閉機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明の構成は、以下の通りである。
【0020】
本発明の第1の側面である開閉機構は、第一の部材と、該第一の部材に支持軸を介して回動可能に支持され、前記第一の部材との相対回動により開閉可能な第二の部材と、前記第一の部材と前記第二の部材の相対回動を拘束する回動拘束手段と、前記回動拘束手段による拘束を維持する拘束維持手段と、前記回動拘束手段による拘束を解除する拘束解除手段とを備え、前記拘束解除手段は、前記第二の部材に開方向の外力を受けた際に、該外力に応じて前記拘束維持手段による前記拘束の維持を解き、前記回動拘束手段の拘束を解除することを特徴とする。
【0021】
斯かる構成によれば、第一の部材及び第二の部材が支持軸を介して回動可能に支持され、第一の部材と第二の部材とは支持軸を回動中心にして相対回動が可能である。この相対回動は、回動拘束手段により拘束され、その拘束状態は拘束維持手段によって維持され、またその拘束は拘束解除手段によって解除される。この解除について、拘束解除手段は、第二の部材に開方向の外力を受けた際に、該外力に応じて拘束維持手段による前記拘束の維持を解き、回動拘束手段の拘束を解除する。その解除により、第一の部材と第二の部材とが支持軸を回動中心にして相対回動が可能となる。
【0022】
本発明の第2の側面である開閉機構は、第一の部材と、該第一の部材に支持軸を介して回動可能に支持され、前記第一の部材との相対回動により開閉可能な第二の部材と、前記第一の部材と前記第二の部材の相対回動を拘束する回動拘束手段と、前記回動拘束手段による拘束を維持する拘束維持手段と、前記回動拘束手段による拘束を解除する拘束解除手段と、前記第二の部材に取り付けられ、前記第二の部材を開く際に、外力による圧力が加えられる受圧操作部とを備え、拘束解除手段は、前記受圧操作部に加えられる前記圧力を受け、該圧力に応じて前記拘束維持手段による前記拘束の維持を解き、前記回動拘束手段の拘束を解除することを特徴とする。
【0023】
斯かる構成によれば、回動拘束手段によって回動が拘束される第一の部材と第二の部材との拘束状態において、この開閉機構では、第二の部材を開く際に、圧力が加えられる受圧操作部とを備えている。そこで、拘束解除手段は、受圧操作部に加えられる前記圧力を受け、該圧力に応じて拘束維持手段による拘束の維持を解き、回動拘束手段の拘束を解除する。その解除により、第一の部材と第二の部材とが支持軸を回動中心にして相対回動が可能となる。
【0024】
上記開閉機構において、前記回動拘束手段は、前記第一の部材側と前記第二の部材側との間を結合する凸部と凹部とを備える結合機構であり、前記拘束維持手段は、前記結合機構の結合状態を付勢して維持する付勢機構であることを特徴とする。
【0025】
上記開閉機構において、前記拘束解除手段は、前記外力を受け、前記凸部と前記凹部との結合状態を前記付勢機構の付勢力に打ち勝つ該外力に応じて前記結合状態が解除される構成であることを特徴とする。
【0026】
上記開閉機構において、前記拘束解除手段は、前記外力を受ける第一の外力作用部を含み、該第一の外力作用部に該外力が作用するとき、前記第二の部材に対する開閉方向による相対回動に応じて前記回動拘束手段による拘束が解除される構成であることを特徴とする。
【0027】
上記開閉機構において、前記拘束解除手段は、前記第一の外力作用部とは別に第二の外力作用部を含み、該第二の外力作用部に作用する開閉方向の外力のうち、開位置に回動させる外力を受けた際に前記拘束が解除され、閉位置に回動させる外力を受けた際に前記拘束が解除されない構成であることを特徴とする。
【0028】
上記開閉機構において、前記拘束解除手段は、前記第二の部材に作用する操作力に対し、前記拘束が解除されない構成であることを特徴とする。
【0029】
上記開閉機構において、前記回動拘束手段は、前記外力を受ける第一の外力作用部を含み、前記外力が前記第一の外力作用部に作用しない場合、前記拘束を解除できない前記相対回動の第一の回動角度を少なくとも一つを前記相対回動角度の範囲内に持つことを特徴とする。
【0030】
上記開閉機構において、前記回動拘束手段は、前記外力を受ける第一の外力作用部と、前記第一の外力作用部とは別に第二の外力作用部を含み、前記第一及び第二の外力作用部に作用する外力によって前記第二の部材が開位置にあるとき、該開位置に前記第二の部材を保持させる前記相対回動の第二の回動角度を少なくとも一つを前記相対回動角度の範囲内に持つことを特徴とする。
【0031】
上記開閉機構において、前記回動拘束手段は、前記第一の外力作用部に働く外力に対して開方向の運動のみを許すが、前記第二の外力作用部に作用する操作力では開閉運動を行わない第三の回転角度を少なくとも一つ前記相対回動角度の範囲内に持つことを特徴とする。
【0032】
上記開閉機構において、前記第一の部材が機器本体、前記第二の部材が操作盤であることを特徴とする。
【0033】
本発明の第3の側面は、開閉機構を備える機器であって、前記開閉機構が、第一の部材と、該第一の部材と支持軸を介して相対回転可能に設置され、前記第一の部材との相対回転によって開閉可能な第二の部材と、前記第一の部材と前記第二の部材の相対回転を拘束する回動拘束手段と、前記回動拘束手段による拘束を維持する拘束維持手段と、前記回動拘束手段による拘束を解除する拘束解除手段とを備え、前記拘束解除手段は、前記第二の部材に開方向の外力を受けた際に、該外力に応じて前記拘束維持手段による前記拘束の維持を解き、前記回動拘束手段の拘束を解除することを特徴とする。
【0034】
本発明の第4の側面は、開閉機構を備える機器であって、前記開閉機構が、第一の部材と、該第一の部材に支持軸を介して回動可能に支持され、前記第一の部材との相対回動により開閉可能な第二の部材と、前記第一の部材と前記第二の部材の相対回動を拘束する回動拘束手段と、前記拘束手段による拘束を維持する拘束維持手段と、前記拘束手段による拘束を解除する拘束解除手段と、前記第二の部材に取り付けられ、前記第二の部材を開く際に、外力による圧力が加えられる受圧操作部とを備え、前記拘束解除手段は、前記受圧操作部に加えられる前記圧力を受け、該圧力に応じて前記拘束維持手段による前記拘束の維持を解き、前記回動拘束手段の拘束を解除することを特徴とする。
【0035】
上記機器が、本発明の第3又は第4の側面以外の機器であって、既述の第3又は第4の側面に記載の開閉機構以外の開閉機構を備えてもよい。
【0036】
本発明の第5の側面は、開閉機構を備える機器であって、前記開閉機構が、第一の部材と、該第一の部材に支持軸を介して相対回転可能に配置され、前記第一の部材との相対回転により開閉可能な第二の部材と、前記第一の部材と前記第二の部材の相対回転を拘束する回動拘束手段であって前記第一の部材側と前記第二の部材側とに分かれて配置される凸部と凹部の組み合わせからなる回動拘束手段と、前記回動拘束手段による拘束を維持する拘束維持手段と、前記回動拘束手段による拘束を解除する拘束解除手段とを備え、及び前記拘束解除手段に働きかけて拘束を解除できる外力を受ける外力作用部とを備えており、これらの構成要素のうち、少なくとも前記回動拘束手段の凸部と凹部のうちの一方と、前記拘束維持手段と、前記拘束解除手段と、前記外力作用部とが前記第二の部材側に組みつけられ、前記回動拘束手段の前記凸部と前記凹部の他方が前記第一の部材側に組みつけられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、次のような効果が得られる。
【0038】
(1) ユーザの片手操作で開閉できる等、ワンアクション等の単純な操作で簡単に部材間を開閉し、開かれた部材の開角度を変えることができ、また、部材間を閉じた際には振動や衝撃を受けてもその閉状態を維持することができ、開状態が生じるのを防止できる。
【0039】
(2) 構成を小型化できるとともに軽量化でき、開閉が必要な各種の部材間の開閉に利用でき、機械的な磨耗部分を少なくできるので、耐久性を高め、しかも信頼性の高い開状態又は閉状態が得られる。
【0040】
(3) 斯かる開閉機構ではユニット化が可能であり、その取扱いに優れ、開閉機構を備える機器では、その製造時、ユニット化された開閉機構のみを別ライン又は協力工場で独立して性能保証された部品として流通、納入を可能にし、また、機器のメンテナンスではユニット化された開閉機構の交換を可能にし、修理作業の容易化や迅速化に寄与する。また、機器の組立てや分解時にはユニット化された開閉機構の着脱が容易であり、その着脱を短時間で行うことができる。
【0041】
(4) 第1及び第2の部材の開閉が回動拘束手段により拘束され、その拘束が拘束維持手段により維持され、拘束解除手段による拘束解除は、開閉に必要な外力を受けて開閉条件の成立に限定されているので、不用意な開閉の防止とともに、その開閉がユーザ作業を妨害することなく、閉じる動作のときに手を挟まれて痛い思いをすることもない。

【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】計測器を示す正面図である。
【図2】操作盤を開いた状態の計測器を示す側面図である。
【図3】開閉機構を示す断面図である。
【図4】図3の矢視IVに係る図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】図3のVI−VI線断面図である。
【図7】操作盤の最大開口位置にある操作盤の開状態を示す図である。
【図8】第2の実施例に係る操作盤の開閉機構を示す図である。
【図9】第2の実施例に係る操作盤の開閉機構を示す図である。
【図10】第2の実施例に係る操作盤の開閉機構を示す図である。
【図11】第2の実施例に係る操作盤の開閉機構を示す図である。
【図12】第2の実施例に係る操作盤の開閉機構を示す図である。
【図13】ギア機構の変形例を示す図である。
【図14】ギア機構の変形例を示す図である。
【図15】ギア機構の変形例を示す図である。
【図16】第3の実施例に係る操作盤の開閉機構を示す図である。
【図17】第3の実施例に係る操作盤の開閉機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の開閉機構又は該開閉機構に関し、各実施の形態は以下の通りである。
【0044】
〔第1の実施の形態〕
【0045】
第1の実施の形態に係る開閉機構では例えば、図3に示すように、機器(計測器2)と、該機器2に支持軸12を介して結合されて開閉する操作盤6と、該操作盤6側に設けられて例えば、人の手で該操作盤6に開閉運動を加える引き手部(操作部42、62等)とを備える。引き手部に設けられたレバー38は操作盤6と相対回転できるように支点を成す第二の支持軸18で軸受けされ、該支点を挟んでレバー38と一体のアーム部132が設けられ、これらには少なくとも一対の凸部40と凹部36a、36b、36cによる噛合い機構(ギア機構50、52)の一方が設けられるとともに、機器側にはその他方が設けられる。噛合い機構の凸部及び凹部は、レバー38に操作盤6を開く方向の力が加えられるとき、噛合い機構の凸部及び凹部は非契合状態になるように構成される。斯かる構成によれば、片手で引き手部に手をかけて開方向に引けば操作盤6を開くことができる。
【0046】
〔第2の実施の形態〕
【0047】
上記実施の形態において、操作盤側に親指のかかる力点を設けることで、その力点に親指を、レバーに親指以外の指をかけて握り動作を行えば、レバーだけを単独に引いたのと同じ効果が得られ、既述の非契合状態が起きるように構成してもよい。これでユーザが握り動作をしたまま操作盤6を開閉いずれの方向にも動かすことができ、片手で簡単に操作することができる。
【0048】
〔第3の実施の形態〕
【0049】
上記実施の形態において、既述の契合状態を作り出す具体的且つ簡単な構成として、凸部と、これと協調してかみ合う凹部との組み合わせ、及びバネに代表される付勢手段により当該組み合わせが契合状態へ付勢される付勢手段を構成してもよい。凸部及び凹部のプロフィルを適切に選ぶことで、外力に対して契合状態を維持することもでき、特定方向の外力に対してのみ契合状態を解除するように構成してもよい。
【0050】
〔第4の実施の形態〕
【0051】
上記実施の形態において、既述の凸部又は凹部のいずれか一方をレバーに機械的に結合し、レバーに親指以外の他の指から力が加えられたとき、既述の非契合状態となるように構成してもよい。
【0052】
〔第5の実施の形態〕
【0053】
上記実施の形態において、既述のレバーと親指がかけられる部品要素との組み合わせを以て第一の外力作用部と総括し、該第一の外力作用部に例えば、人力を作用させれば、操作盤6を開閉いずれの方向にも移動できる構成としてもよい。
【0054】
〔第6の実施の形態〕
【0055】
上記実施の形態において、既述の凸部及び凹部のプロフィルをラチェット機能が得られるものとし、開方向にはラチェットを機能させ、逆方向には機能しないように構成してもよい。斯かる構成とすれば、開方向に作用する力が必ずしも既述の第一の外力作用部に限定されることがなく、どこに作用しても操作盤を開方向に動かすことができる。
【0056】
〔第7の実施の形態〕
【0057】
上記実施の形態において、既述の操作盤に対する操作力の方向を操作盤の閉方向と一致させてもよく、斯かる構成とすれば、操作盤に強力な力が作用しても、操作盤は変位しないように構成することができる。一度作業者が最適な角度を選定すれば、その角度を維持することができる。
【0058】
〔第8の実施の形態〕
【0059】
上記実施の形態において、既述の凸部及び凹部のうち特定のものについてプロフィルを適切に選べば、第一の外力作用部以外の部位に加えられる開閉のいずれの方向の力に対しても既述の契合状態を解除できない構成としてもよい。このような特定の凸部及び凹部の組み合わせでは、操作盤が閉じられた位置に対応する凸部及び凹部の組み合わせが得られる。しかしながら、本発明は複数の組み合わせを包含するものであり、斯かる組合せを排除するものではない。
【0060】
〔第9の実施の形態〕
【0061】
上記実施の形態において、第二の外力作用部に作用する力により開位置に移動可能な凸部及び凹部の組み合わせを機器と操作盤との相対回動範囲内に少なくとも1ケ所設けた構成としてもよい。第二の外力作用部は、既述の操作盤6において、第一の外力作用部以外の部分である。凸部及び凹部の組み合わせが多い程、開閉機構やその開閉機構を用いた機器の利便性が高められ、ユーザにとって最適な角度に設定することができる。なお、第二の外力につて、操作盤6に対する開閉力だけではなく、図17に示すように、操作盤6を横方向に移動させる力の付与も包含し、開閉力に限定されない。
【0062】
〔第10の実施の形態〕
【0063】
上記実施形態では、開閉機構について述べたが、斯かる開閉機構を備えた機器を構成してもよい。
【0064】
以上述べた実施の形態によれば、次のような効果が得られる。
【0065】
(1) 片手による一動作(ワンアクション)で簡単に操作盤の角度を変えることができる。また、終業時に収まる角度では、所定の部位に手をかけない限り、振動や衝撃によって、操作盤が勝手に開くことが防止できる。これらの機能を実現するに当たり、その構成は、極めて簡潔でかつ小型軽量であるから、殆ど全ての機器・装置に適用することができて、耐久性、信頼性も容易に確保できる。
【0066】
(2) 操作盤内に全ての構造をまとめてユニット化することができ、取扱いが極めて優れており、機器の製造時には別ライン又は協力企業で性能保証されたユニットの形で流通することを可能にするし、機器の補修市場では、このユニット化した操作部を梱包から取り出してそのまま交換すれば、修理ができるようになる。その組み立てや分解時においても、ネジまわし一本で簡単に短時間で作業が行える。
【0067】
(3) 機器と操作盤とは強力なバネや磁石等の力で閉位置に付勢されているわけではないし、かつ操作盤と機器との合わせ面付近に作業者の手が行く必然性もないので、閉じる動作のときに手を挟まれて痛い思いをすることもない。
【0068】
(4) 片手による一動作で操作盤の開閉・角度の調節・固定が特別な訓練を行わずとも自然に行え、操作するときの操作力では上記の調節角度が影響を受けることが無く、かつ収納位置では固定力が強固で、簡単には開位置に移行しない、構造簡潔にして作り易い、実用性の高い操作盤の開閉機構、及び該開閉機構を備えた機器を提供することができる。
【0069】
(5) 操作盤の開閉操作と固定操作を片手操作で行うことができ、所定の開度位置では操作盤に閉方向に荷重を加え、又は操作盤に付けた操作ボタンやキーボタン等を押しても操作盤の位置を保持することができ、且つ、操作盤の閉状態における固定も可能な開閉機構、及び該開閉機構を備えた機器を提供することができる。この場合、別の所定の開度位置では、開度の拡大方向には操作盤のどこを拡大方向に押しても移動できる、人間工学的に扱い易い開閉機構及び機器を提供することができる。
【実施例】
【0070】
本発明の開閉機構又は該開閉機構に関し、各実施例は以下の通りである。
【0071】
〔第1の実施例〕
【0072】
第1の実施例について、図1及び図2を参照する。図1は、計測器を示す正面図、図2は、操作盤を開いた状態の計測器を示す側面図である。
【0073】
計測器2は、本発明に係る機器の一例である。この計測器2は、第1の部材である機器本体として計測器本体4が設けられ、この計測器本体4の前面部に第2の部材として操作盤6が開閉可能に取り付けられている。計測器2は、計測器本体4の底面部にキャスタ8及びストッパ10が取り付けられており、所定位置に可搬でき、ストッパ10によって所定位置に維持、固定される。計測器本体4の前面部には、複数の空気取入口11が形成されている。
【0074】
次に、この計測器2について、図3、図4、図5及び図6を参照する。図3は、開閉機構を示す断面図、図4は、図3の矢視IVに係る図、図5は、図3のV−V線断面図、図6は、図3のVI−VI線断面図を示す。図3〜図6に示す構成は一例であって、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。
【0075】
操作盤6は支持軸12を介して、計測器本体4に回動可能に支持されている。この支持軸12にはヒンジ14が用いられ、計測器本体4側に設けられた取り付け面部34に取り付け部材である板状部材15を介在して固定されている。取り付け面部34側の固定手段の一例であるネジ35を挿入するための穴37は完全な円形穴である必要はなく、矢印IVの矢視図(図4)に示すように、一部を切り欠いた穴でよい。
【0076】
斯かる構造により、ネジ35を緩めるだけで、操作盤6は計測器本体4と容易に組立て又は分解できる。ネジ35を緩めるだけで組立てや分解ができれば、作業時間の短縮だけでなく、ネジ35を不注意に落下させる煩雑さも解消できる。
【0077】
操作盤6には支持手段の一例としてステー17が取り付けられ、このステー17には第二の支持軸18が設けられ、この支持軸18に回転可能にレバー38が取り付けられている。このレバー38の下側には人の手で操作される操作部42が形成され、この操作部42と反対側には、回動拘束手段の一部を形成する凸部40が設けられている。この凸部40はレバー38に対して回転できるローラであってもよいが、この実施例では機械的に固定された円柱形状の部材である。レバー38は、バネ16によって支持軸18の回りに反時計方向の回転力を与えられ、後述するように、操作盤6の角度を規制する回動拘束手段の契合力を維持する拘束維持手段を構成する。
【0078】
計測器本体4側には複数の凹部36a、36b、36cを持つ係合部材32が設置されている。係合部材32は、回動拘束手段の一例であって、その一方の部材を構成している。これら凹部36a、36b、36cの形状は、その機能に応じて異なり、一様ではない。これらの凹部36a、36b、36cは位置決め部材36上に一体に刻設されて、計測器本体4にネジ等の係止手段で図示位置に固定される。
【0079】
操作盤6の下部には、作業者の手が挿入可能な開口部22が設けられている。レバー38は図5及び図6に示すように構成される。
【0080】
次に、操作盤の操作について、図7を参照する。図7は、操作盤の最大開口位置にある操作盤の開状態を示す図である。図7において、図3と同一部分には同一符号を付してある。
【0081】
操作盤6を最大開口位置に開いた状態の位置では、凸部40は凹部36cと噛み合う位置に移動し、噛み合い状態となる。凸部40と凹部36cとは隙間を生じることなく、噛み合い形状に形成されているので、支持軸12を中心に操作盤6にその時計方向の回転力が作用しても、凸部40が凹部36cから脱することがない。
【0082】
図中、右下に延びる凹部36cの稜線は長く、操作部42が引かれても、凸部40がその稜線を乗り越えることができない形状である。凹部36cの反対側の稜線はその高さが低く、操作部42をある程度引けば、凸部40を凹部36cから離脱させることができ、操作盤6を反時計方向(即ち、閉方向)に回転できる。この場合、操作部42を引かなければ、閉方向の力が加えられても、凸部40は凹部36cに食い込む形状であるので、動かない。図3に示す位置では、凹部36aが凸部40と合致し、かつ時計方向、反時計方向のいずれの方向の回転力に対しても凸部40と凹部36aとは互いに離脱しない形状であるから、操作盤6はいずれの方向の力が作用しても、開閉回動を生じることがない。
【0083】
また、凸部40が凹部36bと噛み合うときは、凹部36bの形状がラチェット形状に刻設されているので、操作盤6を時計方向(即ち、開方向)に押せば、その開度が増すが、反時計方向の力に対しては、動かない。
【0084】
この実施例に開示された凹部36a、36b、36cや凸部40の形状は一例であって、両者を相互に交換できる構成としてもよい。例えば、凹部36aの形状はその用途に応じて凹部36bの形状と同じにしてもよい。
【0085】
バネ16の役割は、契合手段である凸部40と凹部36a、36b、36cとを契合状態に付勢して、契合状態の維持に役立っている。このバネ16は本発明の必須の構成要素ではなく、仮にバネ16がなくても、レバー38を手で反時計方向に回せば契合状態を実現できる。この契合状態を維持するには、バネ力に代えて、支持軸18の部分に適度な摩擦力が発生するように、ゴム板等の摩擦部材を介在させてもよい。図示のバネ16は、摩擦部材よりも操作感覚を良好なものにし、契合状態が維持できる等の優れた効果が得られる。
【0086】
また、支持軸12としてヒンジ14を用いれば、図7に示す状態で、ネジ35を緩めるのに、ドライバが下側から斜め右上に容易に挿入してネジ35を緩め、緩んだ状態のまま操作盤6を図中、左上に引き上げれば、電気配線のカプラーを外すだけで、操作盤6を取り外すことができる等の利点がある。
【0087】
以上、第1の実施例について詳述したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、契合手段の位置決めの段数は、図示の3段に限らず4段でも5段でも構わない。
【0088】
契合手段の形状も、凸部と凹部の組み合わせが実現されれば、既述の形状に限定されるものではなく、後述するように多くの変形実施例を挙げることができる。
【0089】
レバー38の下部にある操作部42も、操作盤6の回転方向と同じ方向に回転させる構造を開示したが、これに限定されるものではない。例えば、操作盤6の操作面上に第三の操作部を設けて、ここに押す力を作用させれば、その押力をテコを介してレバー38に伝達し、そのレバー38を時計方向に回す回転力に変換するリンク機構を追加した構成としてもよい。このようなリンク機構を追加すれば、操作盤6を格納位置に戻す操作のときは、操作盤6上の第三の操作部に力を加えるだけで操作盤6を収納位置に戻すことができる。このようなリンク機構を用いれば、操作盤6の収納位置に戻す運動方向と操作力の方向とが一致するので、操作上、理に叶っており、更に扱い易くなる。
【0090】
〔第2の実施例〕
【0091】
第2の実施例について、図8、図9、図10、図11及び図12を参照する。図8、図9、図10、図11及び図12は、第2の実施例に係る操作盤の開閉機構を示す図である。図8〜図12において、図3と同一部分には同一符号を付してある。
【0092】
この計測器2では、図8に示すように、操作盤6には回動拘束手段として左右にギア機構50、52が備えられ、これらギア機構50、52は、ギアシャフト54、56を介して計測器2の計測器本体4に回転可能に取り付けられている。ギア機構50、52の一方のギア50A、52Aは操作盤6に固定され、他方のギア50B、52Bは、回転方向に対しては計測器本体4に固定されているが、ギアシャフト54、56の軸方向に対しては移動可能である。ギアシャフト54、56は、三角板58を介してリンク機構を構成し、三角板58は支点60を介して回転可能である。
【0093】
そこで、操作部62に力が加えられていない状態では、図8に示すように、付勢手段であるバネ64から三角板58に矢印で示すように反時計回りにそのバネ力(付勢力)が加えられており、操作シャフト66には下方向に力が加えられている。また、ギア機構50、52には、ギアシャフト54、56を介してギア50A、50B間、ギア52A、52B間に対し、噛み合う方向に力が加えられ、操作盤6の角度を規制する回動拘束手段としてのギア機構50、52の回動拘束力が維持されている。
【0094】
操作部62に握る力が加わると、図9に示すように、操作盤6は矢印方向に作動する。即ち、操作シャフト66に押上げ方向に力が加わると、三角板58には、図8に示すように、時計回り方向の力がかかり、ギアシャフト54、56を介してギア機構50、52を引外し方向に力が加わり、ギア機構50、52の噛み合いが解除される。
【0095】
即ち、操作部62に握り力が加われば、その力が操作盤6の角度を規制するギア機構50、52の噛み合い力の解除作用として機能し、操作盤6が開閉可能となる。
【0096】
図8及び図9では、操作部62に握る力が加われば、操作シャフト66が押上げ方向に力が加わる例を示しているが、操作シャフト66が押上げ方向に力が加わることに限定されるものではなく、操作部62に引き下げる力が加われば、操作シャフト66に引下げ方向に力がかかる構成としてもよい。この場合、図10に示すように、三角板58やバネ64の構造及び配置とすれば、図8及び図9の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0097】
なお、図8〜図10では、操作盤6の中央下部に操作部62を設けた例を示したが、操作部62の場所は任意である。例えば、操作盤6の右下部に操作部62を設けることもできる。左利きの人への配慮を行う場合や、操作盤6が重い等によって開閉に力が必要な場合には、操作盤6の左右下部に操作部62を設けることもできる。
【0098】
この実施例において、図11は、操作部62と一体となった操作シャフト66を押し上げることによって、ギアシャフト54、56をバネ64の付勢力と反対方向に各々移動させ、ギア機構50、52の噛み合いを解除する構成例である。また、図12は、操作部62と一体となった操作シャフト66を引下げることによって、ギアシャフト54、56をバネ64の付勢力と反対方向に各々移動させ、ギア機構50、52の噛み合いを解除する構成例を示している。図11及び図12において、(A)はギアシャフト54、56を上面から見た図、(B)は閉じられた操作盤6を正面から見た図を示している。図11及び図12では操作部62の操作でギア機構50、52の噛み合いを解除する構成を例示しているが、操作部62に任意の握る力が加われば、操作シャフト66が作動してギア機構50、52の噛み合いを解除する構成としてもよい。
【0099】
図8ないし図12に示す構成例では、ギア機構50、52を簡略化して示したが、ギア機構50、52には、図13ないし図15に示すように、種々の変形が可能であって、自由に選択すればよく、所望の操作性が得られる。
【0100】
図13には、ギア機構50、52の変形例を示している。ギア機構50、52には、(A)に示すように、外周部にのみ歯68を設けた一対のギア70、(B)に示すように、対向面全体に歯72を設けた一対のギア74、これらの中間的な構造を採用してもよい。また、(C)に示すように、ギア直径を小さくしたり、対向面積を増やした傘歯状ギア76、78を用いてもよい。(B)及び(C)では、直線状の歯を例示しているが、曲線状の歯や、はすば歯車、やまば歯車等を用いてもよい。また、(D)に示すように、ギア機構50、52には例えば、円盤80にピン82、円盤84に穴86を形成し、両者を嵌合させる構成としてもよい。ピン82の先端形状、ピン82側の穴86の開口形状、ピン82や穴86の径、ピン82や穴86の傾斜方向等によって、契合可能な角度範囲や契合時の操作性を調整することができる。
【0101】
また、図14には、ギア機構50、52に用いるギアの歯形の変形例を示している。図8ないし図12に示す実施例では、二等辺三角状で頂角を鈍角とした歯形状のギアを例示している。そこで、図14において、(A)に示すように、方形歯88を備えたギア90、92を用いてもよい。このギア90、92では、契合力が最も強力である。(B)に示すように、台形歯94を備えたギア96、98を用いてもよい。台形歯94では、斜辺の傾きによって、契合力と契合角度の最適点を選択することができる。(C)に示すように、鋸状歯100を備えたギア102、104を用いてもよい。鋸状歯100では、開方向に対する契合力を弱くできる反面、閉方向の契合力を強力にできる。また、(B)と(C)の中間的な歯形にすれば、開方向契合力=中、閉方向契合力=強というような特性が得られる。なお、図14では、歯面として直面の歯形状を例示したが、曲線状の歯形状にしたり、凸歯の先端のみを丸めたような歯形状を用いてもよく、歯形形状によって、操作感を向上させ又は異ならせることができる。
【0102】
また、ギア機構50、52には既述のギア同士の噛合に対し、図15に示すように、ギア106と爪108との係合構造を用いてもよい。図15の(A)において、ギア106は支軸107を介して操作盤6に固定されており、爪108の支点110は計測器本体4側に固定されている。この状態では、爪108がギア106の方向にバネ112によって引きつけられて契合状態が維持され、操作盤6が固定されている。操作部62に操作力が加えられると、爪108がギア106から引き外され、操作盤6が回動可能となる。この構造は任意である。図15の(A)に示す状態では、操作盤6は全開状態である。この操作盤6が開かれるに伴い、ギヤ106は、矢印方向に回動する。操作盤6が全開の場合{図15の(A)では約90度開}とすれば、ストッパ114が爪108に当たるので、それ以上に操作盤6を開くことができない。
【0103】
図15の(B)では、同様にギア106は操作盤6に固定され、爪108の支点110は計測器本体4に固定されている。爪108は矢印方向に押し付けられているが、操作盤6を開方向に対するギア106に対する契合力は弱く、操作盤6が閉方向に対しては契合力は強くなっている。操作盤6が全開{図15の(B)では約45度開}とすれば、ストッパ114が爪108の先端部に当たり、それ以上に操作盤6を開くことができない。図15の(A)、(B)に示す構造を用いれば、ギア106は全周に設ける必要はなく、操作盤6の回動相当部分だけでよい。また、ギア106の形状による契合力等への影響は、図14に示すギア構造とほとんど同様である。
【0104】
〔第3の実施例〕
【0105】
次に、第3の実施例について、図16及び図17を参照する。図16及び図17は、第3の実施例に係る操作盤の開閉機構を示す図である。図16及び図17において、図3と同一部分には同一符号を付してある。
【0106】
図16に示すように、操作盤6が計測器本体4に回転可能に接続され、操作盤6の一方の側面部には契合手段としてのギア機構116が備えられている。ギア機構116の一対のギア118、120の一方のギア118は操作盤6に固定され、他方のギア120は、操作盤6の回転方向に対して計測器本体4に固定され、支持軸122の軸方向に移動可能である。操作盤6に対してその左右方向の力が加わっていない状態では、操作盤6がギア118、120の噛合方向(図16では右方向)に、バネ124によって付勢され(即ち、引き付けられ)ている。操作盤6がギア噛合を引外し方向(図16中の矢印方向、即ち、図16では左方向)の力が加わると、ギア118、120の噛合が解除され、操作盤6が開閉可能となる。即ち、図16に示す状態では、操作盤6の左方向に力を加えられると、操作盤6の角度を規制する契合手段又は回動拘束手段としてのギア118、120の契合力が解除され、操作盤6が開閉可能となる。
【0107】
ところで、機器全体に衝撃力が作用した場合を想定する。操作盤6の開閉方向の衝撃力を受けた場合には、ギア機構116の契合力により、操作盤6の開閉が阻止される。即ち、操作盤6の誤開閉は生じない。これに対し、ギア噛合の引外し方向の衝撃力が作用した場合には、操作盤6が開閉可能となるおそれがある。即ち、操作盤6が開いている場合には、その自重で操作盤6が閉じてしまうおそれがある。このような衝撃力による動作に対しては、(1) 少々の衝撃力ではギア噛合が外れないようなバネを用いればよいし、(2) 一瞬の衝撃では操作盤6の開閉を阻止するフリクションを備えればよいし、(3) 自重による閉止力と釣り合う開く力を操作盤6に加える等の対策を取ればよい。
【0108】
また、図17に示すように、操作盤6が計測器本体4に回転可能に接続され、その一方の側面には契合手段、回動拘束手段としてギア機構126が備えられている。対を成すギア128、130の一方のギア128は操作盤6にアーム部132を介して固定され、他方のギア130は、回転方向に対しては計測器本体4に固定されており、支持軸方向に対しては移動可能となっている。アーム部132は既述のレバー38の一例であって、支持軸134によって回動可能に操作盤6にギア機構126及び支持軸127を以て支持、固定されている。この図17に示す構造では、操作盤6の側面部には操作部として押しボタン136がアーム部132の中途部に備えられている。操作部である押しボタン136に力が加えられていない状態では、ギア機構126は噛合方向にバネ138によって引き付けられている。このように、バネ138で引き付けられた噛合維持状態において、押しボタン136に押込み方向の力が作用すると、アーム部132を介してギア噛合を引外し方向の力が加わり、ギア128、130の噛合が解除され、操作盤6の開閉が可能となる。即ち、図17では、押しボタン136を押し込むと、操作盤6の角度を規制する契合手段、回動拘束手段であるギア128、130の契合力を解除するように作用し、操作盤6が開閉可能となる。
【0109】
以上述べたように、各実施例によれば、機器として計測器2又は計測器本体4にヒンジ14を介して取り付けられた操作盤6に代表される蓋等、種々の上開き操作盤の開閉操作と固定操作とを片手操作で行うことができ、所定の開度位置で操作盤6に閉方向に荷重を加え、又は操作盤6に付けた操作ボタンやキーボタン等を押しても固定位置を保持することができ、且つ、操作盤6の閉状態における固定も可能である。
【0110】
斯かる構成を備えたことにより、操作盤6の操作部42、62の中心部に、引き手方向に回転するレバー38等が取り付けられており、レバー38と機械的に結合された契合機構が常時バネによって契合状態を維持しているので、操作部42、62に片手を挿入して、片手の指操作で操作盤6の開閉と同時にレバー38を引き、契合状態を開放状態にし、レバー38を放しても操作盤6を一定位置に固定、維持することができる。
【0111】
操作盤6の開方向、或いは、閉方向の固定はローラ、又は爪等の凸部40の平面と凸部40と噛み合う凹部36a、36b、36cの平面が契合して固定するので、操作盤6に開方向、或いは、閉方向に力が作用しても操作盤6が動くことはない。
【0112】
また、操作盤6を終業位置に収納するとき、作業者の手の位置が操作盤6と計測器2との合せ面近くに置く必要性がなく、閉じる動作のときに挟まれて痛い思いをすることもない。操作盤6を組み付けるとき、又は分解するとき、操作盤6を開位置において簡易な工具として例えば、ドライバで作業ができ、極めて生産性が高く、メンテナンス性に優れている。
【0113】
既述の実施の形態や実施例から抽出される特徴事項を請求項の記載に準えて以下に列挙する。
【0114】
(1) 機器と、それにヒンジ止めされて開閉する扉と、該扉側に設けられて人の手で該扉に開閉運動を加える引き手部とからなり、該引き手部の一部に設けられたレバーは該扉と相対回転できるように回転軸で軸受けされており、該回転軸を挟んで該レバーと一体のアームに少なくとも一対の爪又は溝によるラッチ機構の一方が設けられると同時に前記機器側にはこれら爪又は溝によるラッチ機構の他方が設けられ、該ラッチ機構の爪と溝とはバネにより契合する位置に付勢される一方で該レバーに該扉を開く方向の力が加えられるとき該ラッチ機構の爪と溝とが非契合状態になるように構成され、引き手部に手をかけて開方向に引くことで扉が開くことを特徴とする、扉の開閉機構。
【0115】
(2) (1) の扉の開閉機構において、開度位置におけるラッチ機構は少なくとも1個設け、その位置でレバーを指から離すとラッチ機構は契合し扉は閉じる方向にロックすることを特徴とする、扉の開閉機構。
【0116】
(3) (1) の扉の開閉機構において、レバーと一体のアームに二つの契合面を有する1個の係合溝を設けて、ラッチ爪との契合は何れか一方の平面と契合する溝形状としたことを特徴とする、扉の開閉機構。
【0117】
(4) (1) の扉の開閉機構において、既述のレバー巾寸法は、引き手部の巾寸法よりも小さいことを特徴とする、扉の開閉機構。
【0118】
(5) (1) の扉の開閉機構において、引き手部の形状は、前記レバーを引いた時の斜め位置の形状と略同じ斜め形状としたことを特徴とする、扉の開閉機構。
【0119】
(6) 機器とそれにヒンジと結合されて開閉する操作盤と、該操作盤側に設けられて人の手で該操作盤に開閉運動を加える引き手部とからなり、該引き手部の一部に設けられたレバーは該操作盤と相対回転できるように支点で軸受けされており、該支点を挟んで該レバーと一体のアームに少なくとも一対のローラ、又は溝による噛合い機構の一方が設けられると同時に前記機器側にはこれら凹み溝、又は爪による噛合い機構の他方が設けられ、該噛合い機構のローラ、又は溝とはバネにより契合する位置に付勢される一方で該レバーに該操作盤を開く方向の力が加えられるとき該噛合い機構のローラ、又は溝とが非契合状態になるように構成され、引き手部に手をかけて開方向に引くことで操作盤が開くことを特徴とする、操作盤等の開閉機構。
【0120】
(7) (6) の操作盤等の開閉機構において、前記ヒンジは、前記操作盤の長手方向に設け該ヒンジの回転中心を該操作盤の厚さ方向の略中央部に配置して、ヒンジ構成部材の一方を該操作盤に固定し、他方のヒンジ構成部材を筐体フレームに設けたホールダに固定して、操作盤等と匿体の間に額縁フレームを配置したことを特徴とする、操作盤等の開閉機構。
【0121】
(8) (7) の操作盤等の開閉機構において、前記筐体フレームに設けたホールダのヒンジ取付け面は、フレーム上面に対して操作盤を開いた状態で、ヒンジが取付け易い方向に適度の角度を付けてあり、前記ヒンジ構成部材との結合を容易にするU形状の溝、或いは、ボルトねじ穴を設け、ヒンジ構成部材側はホールダと結合するねじ穴付きボルト、或いはU形状の溝としたことを特徴とする、操作盤等の開閉機構。
【0122】
(9) (7) の操作盤等の開閉機構において、前記額縁フレームの上部巾寸法は、操作盤厚みに対してのヒンジ回転中心位置と操作盤の回転角度と最適隙間から決まることを特徴とする、操作盤等の開閉機構。
【0123】
(10)(7) の操作盤等の開閉機構において、前記額縁フレームは、前記操作盤の下側に空気取入れ口を設け内側にフィルターを配置し、ワンタッチ取付け構造にしたことを特徴とする、操作盤等の開閉機構。
【0124】
以上の実施例で述べた操作盤の開閉を拘束する契合手段や、回動拘束手段や、拘束力を維持する拘束維持手段や、拘束維持の解除手段には種々の変形構造を用いてもよく、本発明が上記実施の形態や実施例に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、開閉構造を備えた計測器等の各種機器に広く利用できるものである。
【符号の説明】
【0126】
2 計測器
4 計測器本体
6 操作盤
16 バネ
32 係合部材
36a、36b、36c 凹部
38 レバー
40 凸部





【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の部材と、
該第一の部材に支持軸を介して回動可能に支持され、前記第一の部材との相対回動により開閉可能な第二の部材と、
前記第一の部材と前記第二の部材の相対回動を拘束する回動拘束手段と、
前記回動拘束手段による拘束を維持する拘束維持手段と、
前記回動拘束手段による拘束を解除する拘束解除手段と、
を備え、前記拘束解除手段は、前記第二の部材に開方向の外力を受けた際に、該外力に応じて前記拘束維持手段による前記拘束の維持を解き、前記回動拘束手段の拘束を解除することを特徴とする、開閉機構。
【請求項2】
第一の部材と、
該第一の部材に支持軸を介して回動可能に支持され、前記第一の部材との相対回動により開閉可能な第二の部材と、
前記第一の部材と前記第二の部材の相対回動を拘束する回動拘束手段と、
前記回動拘束手段による拘束を維持する拘束維持手段と、
前記回動拘束手段による拘束を解除する拘束解除手段と、
前記第二の部材に取り付けられ、前記第二の部材を開く際に、外力による圧力が加えられる受圧操作部と、
を備え、前記拘束解除手段は、前記受圧操作部に加えられる前記圧力を受け、該圧力に応じて前記拘束維持手段による前記拘束の維持を解き、前記回動拘束手段の拘束を解除することを特徴とする、開閉機構。
【請求項3】
前記回動拘束手段は、前記第一の部材側と前記第二の部材側との間を結合する凸部と凹部とを備える結合機構であり、前記拘束維持手段は、前記結合機構の結合状態を付勢して維持する付勢機構であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の開閉機構。
【請求項4】
前記拘束解除手段は、前記外力を受け、前記凸部と前記凹部との結合状態を前記付勢機構の付勢力に打ち勝つ該外力に応じて前記結合状態が解除される構成であることを特徴とする、請求項3に記載の開閉機構。
【請求項5】
前記拘束解除手段は、前記外力を受ける第一の外力作用部を含み、該第一の外力作用部に該外力が作用するとき、前記第二の部材に対する開閉方向による相対回動に応じて前記回動拘束手段による拘束が解除される構成であることを特徴とする、請求項1ないし4に記載の開閉機構。
【請求項6】
前記拘束解除手段は、前記第一の外力作用部とは別に第二の外力作用部を含み、該第二の外力作用部に作用する開閉方向の外力のうち、開位置に回動させる外力を受けた際に前記拘束が解除され、閉位置に回動させる外力を受けた際に前記拘束が解除されない構成であることを特徴とする、請求項5に記載の開閉機構。
【請求項7】
前記拘束解除手段は、前記第二の部材に作用する操作力に対し、前記拘束が解除されない構成であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の開閉機構。
【請求項8】
前記回動拘束手段は、前記外力を受ける第一の外力作用部を含み、前記外力が前記第一の外力作用部に作用しない場合、前記拘束を解除できない前記相対回動の第一の回動角度を少なくとも一つを前記相対回動角度の範囲内に持つことを特徴とする、請求項1又は2に記載の開閉機構。
【請求項9】
前記回動拘束手段は、前記外力を受ける第一の外力作用部と、前記第一の外力作用部とは別に第二の外力作用部を含み、前記第一及び第二の外力作用部に作用する外力によって前記第二の部材が開位置にあるとき、該開位置に前記第二の部材を保持させる前記相対回動の第二の回動角度を少なくとも一つを前記相対回動角度の範囲内に持つことを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の開閉機構。
【請求項10】
上記開閉機構において、前記回動拘束手段は、前記第一の外力作用部に働く外力に対して開方向の運動のみを許すが、前記第二の外力作用部に作用する操作力では開閉運動を行わない第三の回転角度を少なくとも一つ前記相対回動角度の範囲内に持つことを特徴とする、請求項6に記載の開閉機構。
【請求項11】
前記第一の部材が機器本体、前記第二の部材が操作盤であることを特徴とする、請求項1ないし10記載の開閉機構。
【請求項12】
開閉機構を備える機器であって、
前記開閉機構が、
第一の部材と、
該第一の部材と支持軸を介して相対回転可能に設置され、前記第一の部材との相対回転によって開閉可能な第二の部材と、
前記第一の部材と前記第二の部材の相対回転を拘束する回動拘束手段と、
前記回動拘束手段による拘束を維持する拘束維持手段と、
前記回動拘束手段による拘束を解除する拘束解除手段とを備え、
前記拘束解除手段は、前記第二の部材に開方向の外力を受けた際に、該外力に応じて前記拘束維持手段による前記拘束の維持を解き、前記回動拘束手段の拘束を解除することを特徴とする、機器。
【請求項13】
開閉機構を備える機器であって、
前記開閉機構が、
第一の部材と、
該第一の部材に支持軸を介して回動可能に支持され、前記第一の部材との相対回動により開閉可能な第二の部材と、
前記第一の部材と前記第二の部材の相対回動を拘束する回動拘束手段と、
前記回動拘束手段による拘束を維持する拘束維持手段と、
前記回動拘束手段による拘束を解除する拘束解除手段と、
前記第二の部材に取り付けられ、前記第二の部材を開く際に、外力による圧力が加えられる受圧操作部とを備え、前記拘束解除手段は、前記受圧操作部に加えられる前記圧力を受け、該圧力に応じて前記拘束維持手段による前記拘束の維持を解き、前記回動拘束手段の拘束を解除することを特徴とする、機器。
【請求項14】
前記開閉機構が請求項3ないし請求項11に記載の開閉機構であることを特徴とする、請求項12又は13記載の機器。
【請求項15】
開閉機構を備える機器であって、
前記開閉機構が、
第一の部材と、
該第一の部材に支持軸を介して相対回転可能に配置され、前記第一の部材との相対回転により開閉可能な第二の部材と、
前記第一の部材と前記第二の部材の相対回転を拘束する回動拘束手段であって前記第一の部材側と前記第二の部材側とに分かれて配置される凸部と凹部の組み合わせからなる回動拘束手段と、
前記回動拘束手段による拘束を維持する拘束維持手段と、
前記回動拘束手段による拘束を解除する拘束解除手段とを備え、
及び前記拘束解除手段に働きかけて拘束を解除できる外力を受ける外力作用部とを備えており、
これらの構成要素のうち、少なくとも前記回動拘束手段の凸部と凹部のうちの一方と、前記拘束維持手段と、前記拘束解除手段と、前記外力作用部とが前記第二の部材側に組みつけられ、前記回動拘束手段の前記凸部と前記凹部の他方が前記第一の部材側に組みつけられたことを特徴とする、機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−26843(P2011−26843A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173711(P2009−173711)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000128094)株式会社エヌエフ回路設計ブロック (24)
【Fターム(参考)】