説明

防水ケース

【課題】高圧水が水抜き穴から吹き上げられても確実に内部への侵入を防止することができる防水ケースを提供する。
【解決手段】防水ケースのロアカバーに一対の水抜き構造9を設ける。一対の水抜き構造9はそれぞれ、防水ケースの内外を貫通する水抜き穴91と、水抜き穴91の周縁から内側に向かって立設する周壁部92と、周壁部92の内側の縁部に連なり水抜き穴91を覆う天井壁部93と、水抜き穴91に連なるように周壁部92を貫通する開口94と、から構成される。この一対の水抜き構造9は、互いの開口94が対向するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のエンジンルームなどに取り付けられ、ヒューズやリレー等の電気部品を収容する電気接続箱に好適な防水ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車には多種多様な電気機器が搭載されている。これら多種多様な電気機器に電力を供給するために、前記自動車には、電源と前記電子機器との間の適宜箇所に、電気接続箱が配置されている。この電気接続箱は、前記自動車などのエンジンルームなどに取り付けられていて、ワイヤハーネスのコネクタ、リレー、ヒューズ等の複数の電気部品と、これら電気部品を収容した防水ケースと、で構成されている(特許文献1及び2を参照。)。
【0003】
上述した防水ケースは、洗車の際や雨天走行中などに外部の水が内部に浸入しないようにするために防水が図られている。しかしながら、防水ケースを完全に密閉した構造にすると、防水ケース内外の温度差により結露が生じたときに、防水ケース内に溜まった水を外へ排出することができず、電気部品等に不具合が生じたり、リーク電流が流れる恐れがある。
【0004】
そこで、従来より、図6及び図7に示すように、防水ケースの鉛直下側に配置されたロアカバー5の内外を貫通する水抜き穴91を設けて、防水ケース内部に溜まった水が水抜き穴91を通じて外部に排出されるようになっている。また、ロアカバー5には、この水抜き穴91の周縁から内側に向かって立設する周壁部92と、周壁部92の内側の縁部に連なり水抜き穴91を覆う天井壁部93と、水抜き穴91に連なるように周壁部92を貫通する開口94と、を設けている。
【0005】
このように、ロアカバーに周壁部92、天井壁部93及び開口94を設けることにより、内部に溜まった水が開口94、水抜き穴91を通って外部に排出できると共に、外部の水が水抜き穴91を通過してしまっても周壁部92や天井壁部93により遮られて防水ケース内部に侵入しないように防水を図ることができる。
【0006】
ところで、近年、洗車の際に非常に高圧な水が用いられている。しかしながら、従来の防水ケースにおいては、このような非常に高圧な水が吹き付けられて、水抜き穴91から内部に向かって吹き上げられると、周壁部92や天井壁部93では十分に遮ることができず、図7中の矢印で示すように開口94を通過して防水ケース内に侵入してしまう、という問題があった。
【0007】
このような問題を解決するために、例えば特許文献3に記載された電気接続箱の排水構造が提案されている。この電気接続箱の排水構造は、ロアカバーに設けた水抜き穴91に加えて、この水抜き穴91の周縁から防水ケース外側の下方に向かって立設された筒状の連結部と、連結部の下部に連通され、水平方向に沿って配置された両端が開口された筒状の排水部と、を備えている。
【0008】
この電気接続箱によれば、外部から上向きに侵入しようとする水は、排水部の外壁によって遮断される。また、外部から水平方向に侵入しようとする水は、排水部の一方の開口から他方の開口に排出されるので、高圧な水が吹き付けられても防水ケース内に浸入することがない。しかしながら、上述した電気接続箱の排水構造では、防水ケース外に連結部や排水部が突出してしまうため、エンジンルーム内の他の部品と干渉してしまう恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−354630号公報
【特許文献2】特開2005−185031号公報
【特許文献3】特開2006−254517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、高圧水が水抜き穴から吹き上げられても確実に内部への侵入を防止することができる防水ケースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するための請求項1記載の発明は、電子部品を収容する防水ケースにおいて、前記防水ケースの内外を貫通する水抜き穴と、前記水抜き穴の周縁から内側に向かって立設する周壁部と、前記周壁部の内側の縁部に連なり前記水抜き穴を覆う天井壁部と、前記水抜き穴に連なるように前記周壁部を貫通する開口と、から構成される水抜き構造が、一対設けられ、互いの前記開口が対向するように前記一対の水抜き構造が設けられていることを特徴とする防水ケースに存する。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記一対の水抜き構造にはそれぞれ、前記周壁部の前記開口に対向する部分に、内側に向かうに従って前記開口に近づくテーパが設けられていることを特徴とする防水ケースに存する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、一対の水抜き構造の一方の水抜き穴から内部に向かって吹き上げられた高圧水は、周壁部や天井壁部に沿って進み一方の水抜き構造の開口からその開口の貫通方向に沿って吹き出される。即ち、他方の水抜き構造の開口に向かって吹き出される。一方の水抜き構造の開口から他方の水抜き構造の開口に向かって吹き出された高圧水は、そのまま他方の水抜き構造の開口から周壁部及び天井壁部に囲まれる空間内に進入した後、水抜き穴から外部に排出されるため、高圧水が水抜き穴から吹き上げられても確実に外部へ排出して内部への侵入を防止することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、周壁部の開口と対向する部分にテーパを設けることにより、一方の水抜き構造の水抜き穴から吹き上げられた水が周壁部のテーパに沿って進み開口の貫通方向に沿った流れ、即ち他方の水抜き構造の開口に向かう流れに案内されるため、一方の水抜き構造の開口から吹き出された水をより確実に他方の水抜き構造の開口から周壁部及び天井壁部に囲まれる空間内に侵入させて外部に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る防水ケースにより構成される電気接続箱を示す斜視図である。
【図2】図1に示された防水ケースのケース本体からアッパーカバーが外された状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示された防水ケースのロアカバーを示す斜視図である。
【図4】図3に示された防水構造の部分拡大斜視図である。
【図5】図4中のA−A線に沿った断面図である。
【図6】従来の防水ケースを構成するロアカバーの一例を示す部分斜視図である。
【図7】図6のB−B線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態にかかる防水ケースを、図1ないし図5に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る防水ケースにより構成される電気接続箱を示す斜視図である。図2は、図1に示された防水ケースのケース本体からアッパーカバーが外された状態を示す斜視図である。図3は、図1に示された防水ケースのロアカバーを示す斜視図である。図4は、図3に示された防水構造の部分拡大斜視図である。図5は、図4中のA−A線に沿った断面図である。
【0017】
本実施形態にかかる防水ケース1は、図1ないし図5に示す電気接続箱10を構成する。この電気接続箱10は、自動車のエンジンルームなどに取り付けられ、ワイヤハーネスのコネクタやリレー、ヒューズ、電源分配ユニットとしてのパワーインテグレーション(以下P/I)8などの複数の電気部品を収容するとともに、これら電気部品とこの自動車に搭載された多種多様な電気機器とを予め定められたパターンにしたがって電気的に接続するものである。
【0018】
このような電気接続箱10は、当該電気接続箱10の外郭を形成する防水ケース1(図1)と、この防水ケース1内に収容される前述した複数の電気部品と、前述した複数の電気部品を保持する防水ケース1内に収容されるカセットブロック2(図2)と、を備えている。即ち、本発明の防水ケース1は、複数の電気部品を収容するとともに、これら電気部品に水などの液体が付着することを防止するためのケースである。
【0019】
また、本発明で言う「防水」とは、水の浸入を阻止することに限らず、水、油、アルコール、等を含む液体全体に有効に作用することを意味するが、ここでは一般的に名称として広く用いられている「防水」を用いて説明する。
【0020】
前述したカセットブロック2は、絶縁性の合成樹脂で構成され、周知の射出成型により形成されている。このカセットブロック2には、図2に示すように、ヒューズを装着するヒューズボックス21や、P/I8を装着する装着部22などが設けられている。上記P/I8には、ヒューズやリレーが実装され、これらヒューズやリレーの配線パターンが形成された図示しない基板が内蔵されている。
【0021】
上記防水ケース1は、図1に示すように、前述した電気部品が収容されるケース本体3と、このケース本体3の上方に着脱可能に設けられたアッパーカバー4と、このケース本体3の下方にケース本体3に着脱可能に設けられたロアカバー5と、を有している。また、これらケース本体3と、アッパーカバー4と、ロアカバー5と、は、絶縁性の合成樹脂で構成され、周知の射出成型により形成されている。
【0022】
また、本明細書で言う防水ケース1の鉛直方向は、図1ないし図5中の矢印Y方向に沿った方向を言う。また、この矢印Y方向は、アッパーカバー4のケース本体3への取付方向を示している。さらに、図1ないし図5中の矢印X及び矢印Zは、鉛直方向Yと直交する直交方向を示している。
【0023】
上記ケース本体3は、図2に示すように、鉛直方向Yに沿って伸び互いに連なる複数の周壁31により鉛直方向Yの両側に開口が設けられた略四角筒状に設けられている。上記アッパーカバー4は、図1に示すように、ケース本体3の鉛直方向Y上側の開口と相対する天井壁41と、この天井壁41の外縁から鉛直方向Y下側に向かって立設した周壁42と、により鉛直方向Y下側に向かって開口した箱状に形成されており、ケース本体3の鉛直方向Y上側の開口を覆うようにケース本体3の上方に取り付けられている。
【0024】
また、図1に示すように、ケース本体3の周壁31とアッパーカバー4の周壁42と、には、ケース本体3とアッパーカバー4とを互いに固定するロック部6が複数設けられている。このロック部6は、ケース本体3の周壁31から外側に向かって突起する断面コ字状の係止受け部61と、アッパーカバー4の周壁42から鉛直方向Y下側に向かって突起して設けられ、ケース本体3の周壁31と係止受け部61との間に形成される係止穴に挿入されると係止受け部61に係止するように設けられたロックアーム62と、で構成されている。
【0025】
上記ロアカバー5は、図3などに示すように、ケース本体3の鉛直方向Y下側の開口と相対する底壁51と、この底壁51の外縁から鉛直方向Y上側に向かって立設した周壁52と、により鉛直方向Y上側に向かって開口した箱状に形成されており、ケース本体3の鉛直方向Y下側の開口を覆うようにケース本体3の下方に取り付けられている。
【0026】
また、ケース本体3の周壁31とロアカバー5の周壁52と、には、図1に示すように、ケース本体3とロアカバー5とを互いに固定するロック部7が複数設けられている。このロック部7は、ケース本体3の周壁31から外部に向かって突出する断面コ字状の係止受け部71と、ロアカバー5の周壁52から鉛直方向Y上側に向かって突起して設けられ、ケース本体31の周壁31と係止受け部61との間に形成される係止穴に挿入されると係止受け部61に係止するように設けられたロックアーム72と、で構成されている。
【0027】
また、前述したロアカバー5の底壁51には、図3ないし図5に示すように、一対の水抜き構造9が複数対設けられている。この一対の水抜き構造9は、互いに同じ大きさ、同一形状に設けられている。この水抜き構造9はそれぞれ、ロアカバー5の底壁51を貫通する水抜き穴91と、水抜き穴91の周縁から内側(即ち鉛直方向Y上側)に向かって立設する周壁部92と、この周壁部92の内側の縁部に連なり水抜き穴91を覆う天井壁部93と、水抜き穴91に連なるように周壁部92を貫通する開口94と、から構成されている。
【0028】
これら一対の水抜き構造9は、開口93の貫通方向に沿って互いに離間して並べられ、さらに、互いの開口93が対向するようにロアカバー5の底壁51に設けられている。より詳しく説明すると、貫通方向の一方側の水抜き構造9は、その開口94が貫通方向の他方側に向けられて配置され、貫通方向の他方側の水抜き構造9は、その開口94が貫通方向の一方に向けられて配置されている。
【0029】
上記水抜き穴91は、防水ケース1の内外を鉛直方向Yに貫通する貫通穴であり、略四角形状に設けられている。上記周壁部92は、略四角形状の水抜き穴91の周縁を構成する4辺のうち3辺から立設している。即ち、周壁部92は、略四角形状の水抜き穴91の周縁を構成する4辺のうち残りの一辺が開口94となるように上側からみてコ字状に立設している。
【0030】
また、上記周壁部92のうち開口94の両側の部分は、ロアカバー5の底壁51に対して略垂直に立設して、互いに平行に設けられている。これに対して、この互いに平行な部分に挟まれた周壁部92の開口94に対向する部分は、上側に向かうに従って開口94に近づくテーパが設けられている。
【0031】
上記開口94は、鉛直方向Y下側が水抜き穴91に連なって設けられている。本実施形態では、上記開口94は、ロアカバー51の底壁51と天井壁部93との間の全ての周壁部92を取り除いて大きく設けられている。
【0032】
上述したように防水ケース1に一対の水抜き構造9を設けることにより、結露などにより防水ケース1内に発生した水は、重力によって鉛直方向Y下側のロアカバー5に溜まり、このロアカバー5の底壁51に設けられた一対の水抜き構造9の開口94、水抜き穴91を通って外部に排出される。また、外部の水が水抜き穴91を通過して内部に浸入しようとしてもその水の圧力が弱い場合は、周壁部92や天井壁部93により跳ね返され遮られるため、防水ケース1内部に侵入することがない。
【0033】
水の圧力が強く、図5中の矢印に示すように、一対の水抜き構造9の一方(図5の例では図面右側の水抜き構造9)の水抜き穴91から内部に向かって水が吹き上げられた場合、吹き上げられた高圧水は、周壁部92や天井壁部93に沿って進み一方の水抜き構造9の開口94からその開口94の貫通方向に沿って吹き出される。即ち、他方の水抜き構造9の開口94に向かって吹き出される。
【0034】
一方の水抜き構造9の開口94から他方の水抜き構造9の開口94に向かって吹き出された高圧水は、そのまま他方の水抜き構造9の開口94から周壁部92及び天井壁部93に囲まれる空間内に進入した後、周壁部92や天井壁部93に沿って進み水抜き穴91から外部に排出される。このため、高圧水が水抜き穴91から吹き上げられても確実に外部への排出して内部への侵入を防止することができる。なお、ここで言う「高圧水」、「高圧な水」とは、例えば洗車時に高圧ポンプから勢いよく噴出される水や洗車液である。
【0035】
また、上述した実施形態によれば、周壁部92の開口94と対向する部分にテーパを設けることにより、一方の水抜き構造9の水抜き穴91から吹き上げられた水が周壁部92のテーパに沿って進み開口94の貫通方向に沿った流れ、即ち他方の水抜き構造9の開口94に向かう流れに案内されるため、一方の水抜き構造9の開口94から吹き出された水をより確実に他方の水抜き構造9の開口94から周壁部92及び天井壁部93に囲まれる空間内に侵入させて外部に排出することができる。
【0036】
また、上述した実施形態によれば、水抜き構造9は、防水ケース1外に突出することなく、防水ケース1内部に収容されるため、エンジンルーム内の他の部品と干渉する恐れもなくなる。
【0037】
なお、上述した実施形態によれば、周壁部92の開口94と対向する部分にテーパに設けていたが、本発明はこれに限ったものではない。周壁部92にテーパに設けなくてもよい。
【0038】
また、上述した実施形態によれば、一対の水抜き構造9を防水ケース1の鉛直方向Y下側に設けたがロアカバー5に設けていたが、本発明はこれに限ったものではない。一対の水抜き構造9は防水ケース1に設けていればよく、例えばケース本体3の周壁31に設けてもよい。
【0039】
また、上述した実施形態によれば、防水ケース1は、ケース本体3、アッパーカバー4、ロアカバー5の3つから構成されていたが、本発明はこれに限ったものではない。防水ケース1としては、電気部品が収容できるような箱型の形状であればよく、例えば、ケース本体3を有底筒状にして、ロアカバー5を設けずに防水ケース1をケース本体3とアッパーカバー4とから構成してもよいし、アッパーカバー4を設けずに防水ケース1をケース本体3とロアカバー5とから構成してもよい。
【0040】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 防水ケース
9 水抜き構造
91 水抜き穴
92 周壁部
93 天井壁部
94 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収容する防水ケースにおいて、
前記防水ケースの内外を貫通する水抜き穴と、前記水抜き穴の周縁から内側に向かって立設する周壁部と、前記周壁部の内側の縁部に連なり前記水抜き穴を覆う天井壁部と、前記水抜き穴に連なるように前記周壁部を貫通する開口と、から構成される水抜き構造が、一対設けられ、
互いの前記開口が対向するように前記一対の水抜き構造が設けられている
ことを特徴とする防水ケース。
【請求項2】
前記一対の水抜き構造にはそれぞれ、前記周壁部の前記開口に対向する部分に、内側に向かうに従って前記開口に近づくテーパが設けられている
ことを特徴とする防水ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−16219(P2012−16219A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152121(P2010−152121)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】