説明

防水シート接合部の欠陥部検知方法に用いる溶着剤、接着剤、シール剤及び欠陥部検知方法

【課題】熱可塑性樹脂又は合成ゴムからなる防水シートを用いて防水処理する際に、接合作業中及び作業後に接合部の接合不良を簡単且つ確実に検出できる接合欠陥部検出方法を可能にする部材を提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂又は合成ゴムからなる透明の上貼防水シートと下貼防水シートとを用いて防水処理する際に使用する溶着剤であって、光を照射すると可視光を発光する物質(以下、発光物質と略す)を含有することを特徴とする溶着剤、接着剤、及びシール剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂又は合成ゴムからなる防水シートを用いて防水処理する際に、これらの防水シートの接合部の欠陥部の検知が容易である防水処理部材及び欠陥部検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から熱可塑性樹脂又は合成ゴムを用いる防水工事において、熱融着工法或いは接着剤による工法が多用されている。これらの工法としては、下貼防水シートの上に別の防水シート、増し貼り防水シート或いは成形役物等を配し、両者の間を熱風溶接機で加熱して接合するか、両者の間に接着剤にて接着する方法が使用されている。
この作業には高度な熟練や技能が要求され、特に防水シートが3枚重ねに接合される部分や、入隅や出隅等の防水処理の如く、複雑に防水シートが重なる部分には更に高度な技術が要求される。又、これらの作業には熟練を要するので作業のバラツキも生じ易い。
【0003】
このように難しい接合作業であるが、通常の防水シートは着色されているために接合状態の良否を外部から目視で判断することが困難で、通常チェック棒と称されるマイナスドライバ状のものを接合箇所に押し当て、チェック棒の進入具合で接合状態を判断することが行われている。
しかしながら、この方法ではピンホール等の微小な欠陥部や、所謂、水路と呼ばれる防水シートの厚みによる段差部分の接合不良は検知できない。又、施工が終了してから不良部を検出するため、接合不良の箇所が発見されてもその周囲は接合されているために接合用の器具を入れることが難しく、補修が困難である場合が多い。そしてこれらの接合不良は水漏れという防水工事における欠陥につながる。
【0004】
これらの接合不良を検知する方法には、減圧器を用いて空気の漏れで接合の良否を確認する方法や防水シートに電圧をかけ、放電流により欠陥部を確認する方法が知られている。しかしながら、減圧器を用いる方法では1回で検出できる接合部の面積が減圧容器の大きさに左右され、又、出入隅角等の複雑な形状の接合部位ではそれに合わせた専用の減圧器が必要なことから、施工現場全体の接合良否の検査には非常な労力及び時間を要した。又、放電流を用いる方法では下地が導電体であることが条件となり、又、ピンホールについては比較的容易に検知できるものの、接合部においては防水シートが絶縁破壊を起こすような高電圧が必要となるために実用的な検査手段とならなかった。
【0005】
特許文献1には、防水シート自体を半透明とすることが示されており、この半透明防水シート同士を接合すると、接着部と非接着部で明るさのトーンに差が生じ、これを利用して接合状態を目視で判別することが記載されている。しかしながら、この方法における接合は半透明防水シート同士の場合に限られており、上記特許文献1には3枚重ね部或いは出隅、入隅或いは出入隅角等の複雑な形状への対応や、増し張り防水シートや成形役物等への応用は示唆されていない。
【0006】
更に、防水シート自体の破壊を目視で確認する方法も考案されており、例えば、特許文献2には、不透水防水シートの表面に光の反射体又は蛍光体を含むシグナル層を積層し、防水シートが破壊された場合、可視光又は紫外光に対するその部分の輝度の差を利用して検出することが示されている。しかしながら、防水シートの欠陥部を検出する方法は記載されていない。
【0007】
防水シート工事においては接合部の端部をシール剤でシールする工法も多く用いられている。このシール部の接合状態は通常目視検査で確認されるが、目視検査では亀裂等の細かな欠陥部の検出は難しい。
ところで、シール剤の塗着状態の検査方法としては、特許文献3に自動車のボディ製造工程への応用として、シール剤に蛍光材を分散混合して紫外線を照射してシール剤の塗布切れと飛散箇所の検知を行うシステムが示されているが、この特許文献3には防水シート工事でシール部の欠陥を検出する方法は示唆されていない。
【特許文献1】特開平1−299947号公報
【特許文献2】特開平6−280499号公報
【特許文献3】特開平7−24391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の目的は、熱可塑性樹脂又は合成ゴムからなる防水シートを用いて防水処理する際に、接合作業中及び作業後に接合部の接合不良を簡単且つ確実に検出できる接合欠陥部検出方法を可能にする部材及び欠陥部検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、熱可塑性樹脂又は合成ゴムからなる透明の上貼防水シートと下貼防水シートとを用いて防水処理する際に使用する溶着剤であって、発光物質を含有することを特徴とする溶着剤、熱可塑性樹脂又は合成ゴムからなる透明の上貼防水シートと下貼防水シートとを用いて防水処理する際に使用する接着剤であって、発光物質を含む透明材料からなることを特徴とする接着剤、熱可塑性樹脂又は合成ゴムからなる透明の上貼防水シートと下貼防水シートを用いて防水処理する際に使用するシール剤であって、発光物質を含有することを特徴とするシール剤及びこれらの溶着剤、接着剤またはシール剤を用いる欠陥部検知方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱可塑性樹脂又は合成ゴムからなる防水シートを用いて防水処理する際に、上貼防水シートを透明にすることにより、下貼防水シートとの接合面の良否を反射光の明度比で判断することができる。即ち、透明或いは不透明な下貼防水シートの上に透明な上貼防水シートを熱融着或いは接着剤、溶着剤又はシール剤により接合すれば、接合部分と非接合部分の明度が異なって観察され、接合作業中に逐次接合状態を確認することができる。そのために作業中に接合部の修正が可能であり、不良部分のない接合を行うことができる。勿論、作業後に接合状態を確認することも容易である。この本発明の方法は手軽であり且つ接合作業中に接合状態を逐次判断することができるので、実際の施工における利用のほかに、接合技術の習得練習等にも利用することができる。
【0011】
尚、本明細書でいう「光」には可視光、赤外光及び紫外光を含むものとし、透明とは、完全な透明だけでなく、有色透明及び半透明も含み、外部から接合面の目視観察が可能な透明度のことをいう。又、下貼防水シートとは、躯体面に敷設した防水シートのことをいい、上貼防水シートとは、シート同士の接合部の防水処理を補完するために、下貼防水シートの上に接合する増張り防水シートや成形役物のことをいう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳しく説明する。本発明において、上貼防水シートと下貼防水シートとの接合の良否は、接合面の状態を観察することで判断することができ、これは上貼防水シートを透明にすることで達成できるが、接合の良否をより確実に判断するためには、接合面の接合部と非接合部とで観察される状態を更に顕著に相違させることが好ましい。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態では、透明な上貼防水シートに発光物質を配合すること、下貼防水シート表面に発光物質を塗布すること、下貼防水シート表面又は全層に発光物質を配合すること、接着剤に発光物質を添加すること、溶着剤に発光物質を添加すること又はシール剤に発光物質を添加することで接合部に光を照射した場合、接合部と非接合部とで観察される状態が顕著に異なるようにすることができる。
【0014】
例えば、下貼防水シートに発光物質を配合又は塗布した場合には、下貼防水シートと上貼防水シートとの接合面に光を照射した時に、周囲光から区別される可視光を発生させることが可能となる。発生した可視光は接合面を通過或いは反射して肉眼観察される。この際、接合面の状態が異なると発生した可視光の反射率や反射方向も異なるために作業者に観察される可視光の輝度も異なることになる。具体的には非接合部に比べて接合部の反射輝度が大きくなり両者の明度比をより顕著に観察することができる。又、上貼防水シート自体に亀裂やピンホール等が存在した場合も、その部分の輝度が大きくなり、その存在を知ることができる。更に接合部に光を照射させ、その反射輝度で接合状態を判断するので、暗い場所でも容易に作業を行える利点も有する。
【0015】
又、上貼防水シートに発光物質を配合した場合は、光を照射しながら下貼防水シートの上に上貼防水シートを熱融着或いは接着剤接合していくと接合部分が明に、非接合部分が暗にと、その反射輝度が異なって観察されるので、作業者は接合状態を確認しながら接合を行うことができる。又、作業後に光を照射して接合状態を確認することも容易である。
【0016】
発光物質を配合した上貼防水シートとしては、熱可塑性樹脂又は合成ゴムコンパウンドに発光物質を添加しシート化したものが使用できる。発光物質の配合量はコンパウンド100重量部に対し0.001〜10重量部、より好ましくは0.01〜1重量部の割合である。0.001重量部未満の配合量でも接合の良否判別はできるが、発光効果を出して、良否判別をより容易に且つ確実にするには0.001重量部以上の配合が好ましい。しかし、10重量部までの配合量で発光効果は十分であり、それを越える量の配合量はコストアップにつながるので好ましくない。その他の添加剤、着色剤、充填剤等も成形体にしたときに上貼防水シートを通して下地を目視できる透明性が維持できる範囲で添加することができる。そしてこれらの条件を備え、熱可塑性樹脂又は合成ゴム製防水シートと接合可能なものであれば、原理的にはどのようなものでも使用できるが、現実的には防水シートの組成に近いものが接合強度等の面から好ましい。
【0017】
上記上貼防水シートの形状は特に限定されず、下貼防水シートの形状に倣った形状のものを使用する。例えば、平場においては防水シート状、出入隅角においては出隅用成形役物形状又は入隅用成形役物形状、パイプ等の部品取付部においては増張り防水シート形状、その他の不定形下貼防水シートにおいてはそれらに倣った形状のものを使用する。又、上貼防水シートの厚さについても特に制限はないが、下貼防水シートとの接合面を観察できる透明性と充分な強度を有するものであることが必要である。
【0018】
透明な上貼防水シートは、熱可塑性樹脂製又は合成ゴム製であり、防水シートや成形役物等、その目的の製品に応じて適宜選択できる。熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、エチレンとアクリルとの共重合体、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマー(オレフィン系、ポリエステル系、ウレタン系等)等が挙げられる。合成ゴムとしてはSBR、NBR、塩素化ポリエチレン、クロルスルフォン化ポリエチレン、EPR、EPDM、クロロプレン、ネオプレン、ブタジエン系等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂や合成ゴムは、カレンダー成形、押出成形、射出成形、プレス成形等の通常の成形方法により適当な形状及び厚さの上貼防水シートに加工することができる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、下貼防水シートの表面に発光物質を塗布することができる。この場合には発光物質を適当な溶剤に分散させ、この分散液を刷毛、タンポ、スプレー等で下貼防水シート表面に塗布するかコーター等で機械的に塗布できる。分散用の溶剤としてはアルコール、アセトン、石油エーテル等の如く揮発性で且つ防水シートを溶解しない溶剤を選択する必要がある。これら溶剤100重量部に対し発光物質を0.001〜10重量部、より好ましくは0.01〜1重量部の割合で添加する。0.001重量部未満の添加でも接合の良否判別はできるが、発光効果を出して、接合の良否判別をより容易に且つ確実にするには0.001重量部以上の添加が好ましい。
【0020】
しかし、発光効果は10重量部までの添加で十分であり、それを越える量の添加はコストアップにつながるので好ましくない。この分散液を塗布乾燥後、透明な上貼防水シートを光を照射しながら熱融着或いは接着剤又は溶着剤接合していくと、接合部分と非接合部分との反射輝度が異なって観察されるので、作業者は接合状態を確認しながら接合を行うことができる。又、作業後に光を照射して接合状態を確認することも容易である。
【0021】
下貼防水シートに発光物質を配合する場合は、光を照射して発光が得られる量の発光物質を添加することが必要である。この場合、下貼防水シートは透明であることを要せず、必要な発光が得られれば着色を施してもよい。この場合も透明な上貼防水シートを光を照射しながら熱融着或いは接着剤接合していくと、接合部分と非接合部分との反射輝度が異なって観察されるので、作業者は接合状態を確認しながら接合を行うことができ、又、作業後に光を照射して接合状態を確認することも容易である。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、上貼防水シートと同様に、接合に使用する接着剤、溶着剤又はシール剤を透明とし、この接着剤、溶着剤又はシール剤に発光物質を添加することができる。
接着剤で接合する場合、透明な接着剤に発光物質を添加し、光を照射しながら、該接着剤で透明な上貼防水シートと通常の下貼防水シートとを接合していくと接合部分と非接合部分との反射輝度が異なって観察されるので、作業者は接合状態を確認しながら接合を行うことができ、又、作業後に光を照射して接合状態を確認することも容易である。使用する接着剤の組成としては酢酸ビニル系、エポキシ系、ウレタン系、ゴム(SBR、クロロプレン等)系等が好ましい。
【0023】
溶着剤で接合する場合、溶着剤に発光物質を添加し、接着剤の時と同様に接合すれば接着剤の時と同様の効果が得られる。但し、溶着剤の場合、防水シートを溶解する溶剤を選定する必要がある。例えば、防水シートが塩化ビニル系樹脂製の場合は、該樹脂を溶解する溶剤であり、具体的には、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン等があり、テトラヒドロフラン単体及びテトラヒドロフランを主成分とした混合溶剤が好ましい。テトラヒドロフランに混合溶剤として加える溶剤はメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン等があり、1種類以上で混合できる。混合する溶剤はテトラヒドロフランに対して30重量%以下が好ましい。
【0024】
接合にシール剤を使用する場合、シール剤を透明とし、このシール剤に発光物質を添加することができる。このシール剤を用いて下貼防水シートと上貼防水シートとを接合施工後に光を照射した場合には、接合不良部分、ピンホール部、シール剤切れ部分及び亀裂部において輝度が高くなり、接合部における接合不良を検出することができる。
【0025】
該シール剤は合成樹脂コンパウンドに溶剤及び発光物質を添加し、ゲル状としたものが使用できる。その他の添加剤、着色剤、充填剤等もシール剤にしたときに、シール剤を通して下地を目視できる透明性が維持できる範囲で添加することができる。シール剤も上記の条件を備え且つ防水シートと接合可能なものであれば、原理的にはどのようなものでも使用することができるが、防水シートが塩化ビニル系樹脂の場合、塩化ビニル系樹脂やアクリル系樹脂を中心としたものが接着性や強度の面で有利である。
【0026】
上記接着剤、溶着剤及びシール剤に添加する発光物質の量は接着剤、溶着剤又はシール剤のそれぞれ100重量部に対し0.001〜10重量部、より好ましくは0.01〜1重量部の割合である。0.001重量部未満でも接合の良否判別はできるが、発光効果を出して接合の良否判別をより容易に且つ確実にするには0.001重量部以上の添加が好ましい。しかし、発光効果は10重量部までの添加で十分であり、それを越える量の添加はコストアップにつながるので好ましくない。
【0027】
本発明において、上貼防水シート、下貼防水シート、下貼防水シートに塗布する分散液、接着剤、溶着剤又はシール剤に適用する発光物質としては、蛍光増白剤、蛍光物質、蓄光物質等がある。蛍光増白剤としてはジアミノスチルベンジルスルホン酸誘導体、ビススチリルビフェニル誘導体、クマリン誘導体、ピラゾロン誘導体、ビスベンザオキサゾール誘導体、ナフタルイミド誘導体等が挙げられる。蛍光物質としては蛍光染料をアクリル樹脂やメラミン樹脂等に均一に溶解させた蛍光顔料が挙げられる。蓄光物質としては、硫化カルシウム系、硫化亜鉛系、硫化亜鉛カドミウム系等が挙げられる。
【0028】
上記発光物質は単独でも同じ種類同士又は他の種類の組み合わせで2種以上使用してもよく、光を照射したときに可視光を発光させることが可能になる。蛍光増白剤を単独で使用した場合は、ブラックライト等の紫外光を照射すると青紫色の可視光を発する。蛍光物質を単独で使用した場合はブラックライト等の紫外光を照射すると蛍光物質特有の可視光を発する。蓄光物質を単独で使用した場合も蛍光物質と同様に蓄光物質特有の可視光を発する。発光物質を複数で使用すると、それぞれの相乗効果の可視光を発する。本発明の接合方法によれば、何れの場合も接合部分と非接合部分では明度の差が確認でき、両者を明確に判別することができる。
【実施例】
【0029】
次に参考例及び実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
図1に上貼防水シートとして透明な増張りシートを平場の防水シート上に接合施工した例を示す。
図2に上貼防水シートとして成形役物を用いて出入隅に施工した例を示す。
図3に接合部の端部をシール剤で接合した例を示す。
【0030】
参考例1〜4
表1に示す上貼防水シートと通常使用される下貼防水シートとをブラックライトを照射しながら熱融着にて接合した。その評価を表1に示す。但し、発光物質を配合しない透明な上貼防水シートを使用する場合(参考例1)は、ブラックライトは照射しない。
【0031】

発光物質の量は透明上貼防水シートコンパウンド100重量部に対する重量部である。
発光物質1:蛍光増白剤(チバガイギー社製ユビテックスOB)
発光物質2:蛍光物質(シンロイヒ社製ルミライトカラー)
発光物質3:蓄光物質(シンロイヒ社製LCGIA−N)
【0032】
評価基準(他の参考例及び実施例も同様である)
◎:接合部と非接合部との輝度比が大きく、目視で明確に判別できる。
○:接合部と非接合部との明度比が有り、目視で判別できる。
×:接合部と非接合部とが目視で判別できない。
【0033】
参考例5〜9
表2に示す下貼防水シートと透明な上貼防水シートとをブラックライトを照射しながら熱融着にて接合した(参考例5〜7)。又、通常使用される下貼防水シートに表2に示す分散液を塗布し、乾燥後熱融着にて透明な上貼防水シートを接合した(参考例8及び9)。それぞれの評価を表2に示す。
【0034】

発光物質の添加量は下貼防水シートコンパウンド又は分散液100重量部に対しての重量部である。
【0035】
実施例1〜5
表3に示す接着剤を使用して、透明な上貼防水シートと通常の下貼防水シートとを接合する。その評価を表3に示す。

発光物質の添加量は接着剤100重量部に対しての重量部である。
【0036】
実施例6〜10
表4に示す溶着剤を使用して、透明な上貼防水シートと通常用いられる下貼防水シートを接合した。その評価を表4に示す。

各溶剤量は重量%であり、発光物質の量は溶剤100重量部に対する重量部である。
【0037】
実施例11〜15
表5に示すシール剤を使用して、通常の上貼防水シートと下貼防水シートとを接合した。その評価を表5に示す。

発光物質の量は接着剤100重量部に対する重量部である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、熱可塑性樹脂又は合成ゴムからなる防水シートを用いて防水処理する際に、上貼防水シートを透明とすることで、上貼防水シートと下貼防水シートとの接合状態を目視で観察することが可能となり、作業者が接合作業中及び接合作業後に接合不良個所を容易に発見できる。又、上貼防水シートを発光物質含有透明材料とするか、或いは下貼防水シートに発光物質を塗布又は配合するか、更には透明な接着剤、溶着剤又はシール剤に発光物質を添加することで、光照射により上貼防水シートと下貼防水シートとの接合状態を反射明度比で観察することが可能となり、暗所においても接合作業中及び接合作業後に接合不良個所を容易に発見することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】上貼防水シートとして透明な増張りシートを平場の防水シート上に接合施工した例を示す図。
【図2】上貼防水シートとして成形役物を用いて出入隅に施工した例を示す図。
【図3】接合部の端部をシール剤で接合した例を示す図。
【符号の説明】
【0040】
11,21,31:下貼防水シート
12,22,32:上貼防水シート
13,23:溶着部
14,24:非溶着部
33:シール剤
34:亀裂、シール剤切れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂又は合成ゴムからなる透明の上貼防水シートと下貼防水シートとを用いて防水処理する際に使用する溶着剤であって、光を照射すると可視光を発光する物質(以下、発光物質と略す)を含有することを特徴とする溶着剤。
【請求項2】
溶着剤が、塩化ビニル系樹脂を溶解する溶剤である請求項1に記載の溶着剤。
【請求項3】
熱可塑性樹脂又は合成ゴムからなる上貼防水シートと下貼防水シートとを用い、両者を請求項1に記載の溶着剤により接合して防水処理する際に、これらの防水シートの接合部の欠陥部を検知する方法において、上記上貼防水シートを透明とし、上貼防水シートと下貼防水シートとの接合又は非接合の状態を反射光の明度比で観察することを特徴とする防水シート接合部の欠陥部検知方法。
【請求項4】
熱可塑性樹脂又は合成ゴムからなる透明の上貼防水シートと下貼防水シートとを用いて防水処理する際に使用する接着剤であって、発光物質を含む透明材料からなることを特徴とする接着剤。
【請求項5】
熱可塑性樹脂又は合成ゴムからなる上貼防水シートと下貼防水シートとを用い、両者を請求項4に記載の接着剤により接合して防水処理する際に、これらの防水シートの接合部の欠陥部を検知する方法において、上記上貼防水シートを透明とし、上貼防水シートと下貼防水シートとの接合又は非接合の状態を反射光の明度比で観察することを特徴とする防水シート接合部の欠陥部検知方法。
【請求項6】
熱可塑性樹脂又は合成ゴムからなる透明の上貼防水シートと下貼防水シートを用いて防水処理する際に使用するシール剤であって、発光物質を含有することを特徴とするシール剤。
【請求項7】
熱可塑性樹脂又は合成ゴムからなる上貼防水シートと下貼防水シートとを用い、両者を請求項6に記載のシール剤により接合して防水処理する際に、これらの防水シートの接合部の欠陥部を検知する方法において、上記上貼防水シートを透明とし、上貼防水シートと下貼防水シートとの接合又は非接合の状態を反射光の明度比で観察することを特徴とする防水シート接合部の欠陥部検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−95100(P2008−95100A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261842(P2007−261842)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【分割の表示】特願平10−258861の分割
【原出願日】平成10年9月11日(1998.9.11)
【出願人】(000010010)ロンシール工業株式会社 (84)
【Fターム(参考)】