説明

防水耐油コネクター用オス端子金具

【課題】オス端子金具とメス端子金具とをハウジング内において電気的に接続するコネクターは防水性や耐油性を持たせることがむずかしかった。
【解決手段】前方側に位置し、軸芯に沿って両側から内側へ向かって側板が折り曲げられた棒状をしたオス端子接点部5と、後方側に位置し、電線2の被覆20と芯線3とをそれぞれをかしめて圧着するバレル部21,22と、筒形をなし、前記オス端子接点部5とバレル部21,22との間に位置するボックス部19とからなる、オス端子金具16において、オス端子接点部5の後端とボックス部19の前端との間に、断面がU形になった樋状部26を一体的に形成し、この樋状部26を隔壁の透孔から突き出させ、隔壁の前面側に耐油性を有するシール剤を充填して透孔と樋状部との間を隙間を埋めて気密性を持たせる様にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防水耐油コネクター用オス端子金具、詳しくは、防水性及び耐油性にすぐれ、オイルや水が飛散する過酷な環境下においても、オイルや水がメス端子金具側に滲み出すことを防ぐことが出来るオス端子金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1はこのオス端子金具を有するコネクターの代表例の分解斜視図であり、後部に電線2が圧着されているオス端子金具1は、コネクターハウジング13内において複数のオス端子金具1の位置を保持する為のリアホルダー8に装着され、円筒状をなしたコネクターハウジング13内にその後方から挿入され、図4に示す様に、コネクターハウジング13内に設けられている隔壁14の透孔15からオス端子接点部5が前方側に向かって突き出した状態で、コネクターハウジング13に取付けられる様になっており、コネクターハウジング13の前方開口部29から挿入されるメス端子金具(図示省略)とコネクターハウジング13内において接続される様になっている。
【0003】
この様に、オス端子金具1とメス端子金具(図示省略)とをコネクターハウジング13内において電気的に接続するコネクターは、電気/電子回路が形成されている各種機器類において多く用いられている。そして、このコネクターは、エンジンオイルや自動変速機作動油(ATFオイル)などのオイル類が飛散する環境下において使用されることも多い。
【0004】
図3は、オイル類が飛散する環境下におけるコネクターの使用例を示したものであり、図中、A−A線より、下の部分はエンジンユニット内などにおいてオイルに漬かった状態、上の部分は大気中、つまりオイルに浸かっていない状態にあり、何らかの対策を施さないと、オイルに漬かっているA−A線より下の部分から本来ドライな状態にあるべき上の部分へオス端子金具を伝ってオイルが滲み出してしまい、接触不良や腐蝕などの不都合な状態が惹起されるおそれがあった。
【0005】
この為、図2に示す様に、電線2の末端3が圧着されているオス端子金具1の後部にジャバラ状をなしたシリコンゴム製のゴム栓4をかぶせることにより、オイルや水がコネクターハウジング13の前方開口部29側に滲み出さな
い様にしたり、図5及び図6に示す、隔壁14の前面側に耐油性を有するシール剤11を充填し、透孔15とオス端子接点部5との間の隙間を埋めることによって、気密性を持たせ、オイルや水がコネクターハウジング13の前方開口部29側に滲み出すことを阻止する試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】なし
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図2に示す対策において用いるシリコンゴム製のゴム栓4は、オイルが付着すると溶けやすく、耐油性において問題があった、又、図5に示す対策において用いるシール11は、RTVゴムとも言われ、耐油性にすぐれ、使用前は液状をなし、常温下に一定時間放置しておくと、硬化し、硬化後も弾力を保つものであるが、水に比べ粘度が高いので、小さな隙間には入り込めない性質を有しており、オス端子金具1のオス端子接点部5は、図2における矢視X−X線断面図である図7に示す様に、長手方向側面側から軸芯に沿って内側に折り返された構造となっており、プレス金型で密着曲げ加工をしても、ミクロの隙間12が発生することは避けられないので、シール材11はこのミクロの隙間12を埋められず、この隙間12を通って水や油がコネクターハウジング13の前方開口部29側へ滲み出すことを阻止するのは極めてむずかしかった。
【0009】
本発明者は、コネクターにおけるオス端子金具側の防水耐油処理に関する上記問題点を解決すべく研究を行った結果、オス端子金具の形状に工夫を凝らすことにより、コネクターハウジングの前方開口部側に水やオイルが滲み出すことを効果的に阻止することに成功し、本発明としてここに提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前方側に位置し、軸芯に沿って両側から内側へ向かって側板が折り曲げられた棒状をしたオス端子接点部と、後方側に位置し、電線の被覆と芯線とをそれぞれをかしめて圧着するバレル部と、筒形をなし、前記オス端子接点部とバレル部との間に位置するボックス部とからなり、筒状をなしたコネクターハウジング内に設けられている隔壁に形成されている透孔から、前方側に向かってオス端子接点部を突き出す様にしてコネクターハウジングに装着されるオス端子金具において、オス端子接点部の後端とボックス部の前端との間に、断面がU形になった樋状部を一体的に形成し、この樋状部を隔壁の透孔から突き出させ、隔壁の前面側に耐油性を有するシール剤を充填して透孔と樋状部との間の隙間を埋めて気密性を持たせる様にして、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0011】
従来のオス端子金具と同様、リアホルダーに装着された状態で、円筒状をなしたコネクターハウジングにその後方から挿入し、コネクターハウジング内に設けられている隔壁の透孔からオス端子接点部及び樋状部が前方側に向かって突き出す様にして、コネクターハウジング内に取付け、隔壁の前面側にRTVゴムなどの耐油性を有するシール剤を充填してシール層を形成し、これによって透孔と樋状部との間の隙間を埋め、気密性を持たせ、この隙間から前方側への水やオイルの滲み出しを阻止するのである。
【0012】
この発明に係るオス端子金具においては、オス端子接点部とボックス部との間に介在している 樋状部には、折り重ねられた部分は一切ないので、樋状部にはミクロの隙間はなく、隔壁の前後をシール剤によって確実に遮閉することが可能で、このオス端子金具を装着したコネクターの後部を、エンジンオイルや自動変速機作動油などのオイル類が飛散する環境下や水が飛散する環境下に設置したとしても、水やオイルが隔壁の前方側、即ち、メス端子金具側に滲み出すことはなく、水やオイルの滲み出しによる故障を効果的に防ぐことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】オス端子金具を装着するコネクターの代表例の各部を分解して描いた斜視図。
【図2】ゴム栓によって脱水耐油対策を施したオス端子金具の従来例の拡大斜視図。
【図3】コネクターを自動車エンジンなどに装着した状態の一例の正面図。
【図4】同じく、その状態の縦断面図。
【図5】同じく、防水耐油対策を施した状態の縦断面図。
【図6】図4に示す状態の前面開口部側から見た斜視図。
【図7】図2における矢視X−X線拡大断面図。
【図8】この発明に係るオス端子金具の実施例1の拡大斜視図。
【図9】図8における矢視Y−Y線拡大断面図。
【図10】本発明に係るオス端子金具をコネクターハウジングに装着して防水耐油対策を施した状態の前方開口部側から見た斜視図。
【図11】同じく、その縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
オス端子金具の前方側に位置するオス端子接点部とその後方に位置するボックス部との間に、折り重ね箇所が一切ないU型断面をなした樋状部を一体的に形成し、この部分をコネクターハウジング内の隔壁を貫通させ、隔壁の前方側に耐油性にすぐれたシール剤を充填して、隔壁の前方側への水やオイルの滲み出しを防ぐ様にした点に最大の特徴がある。
【実施例1】
【0015】
図8はこの発明に係る防水耐油コネクター用オス端子金具の実施例1の拡大斜視図、図10はコネクターハウジングにオス端子金具が装着され、シール層が形成された状態の前方開口部側から見た斜視図、図11は同じくコネクターハウジングにオス端子金具を装着した状態の拡大断面図。
【0016】
図中16は、この発明に係るオス端子金具であり、このオス端子金具16は、前方側に位置したオス端子接点部5、後方側に位置したバレル部17、オス端子接点部5の後方に位置した樋状部26、樋状部26とバレル部17との間に位置したボックス部19からなり、これらは従来のオス端子金具1と同様、0.32mm厚の銅合金を素材とし、プレス金型により一体形成されたものである。
オス端子接点部5は、その軸芯に沿って両側から内側に向かって側板が折り曲げられてなる棒状を呈した部材であり、メス端子金具(図示省略)に挿入される様になっており、従来のオス端子金具のものと同じ構造である。
【0017】
一方、バレル部17は、後端側に位置し、電線2の被覆20をかしめて圧着するインスレーションバレル21、先端側に位置し、電線2の芯線3をかしめて圧着するワイヤーバレル22、インスレーションバレル21とワイヤーバレル22との間に位置し、両バレルを繋ぐトランジション23とからなっており、このバレル部17も従来のオス端子金具のものと同じ構造である。
【0018】
又、ボックス部19は、前記ワイヤーバレル22の前端側に、これを連続して設けられている部材であり、断面が口字形をなした筒状を呈しており、その前端部24は裁頭角錐状に径が絞られており、その上面25からは、以下に述べる樋状部26の底面に向かって、下向きに傾斜した閉塞板27が一体的に延設されている。
【0019】
更に、前記オス端子接点部5の後端には、断面がU字形になった樋状部26が形成されており、この樋状部26は前記ボックス部19の先端部24に接続されている。この樋状部26は、本発明においては防水性及び耐油性を保持する為の中心的役割を果たす部材であり、その断面は図9に示す様にゆるく円弧状に形成されており、折り重ねられた箇所は全く存在していない。
【0020】
この発明に係るオス端子金具16は上記の通りの構成を有するものであり、図11に示す様に、コネクターハウジング13内において複数のオス端子金具16の位置を保持する為のリアホルダー8に装着し、円筒状をなしたコネクターハウジング13内にその後方から挿入し、コネクターハウジング13内に設けられている隔壁14の透孔15からオス端子接点部5及び樋状部26が前方側に向かって突き出す様にして、コネクターハウジング13に取付ける。なお、リアルホルダー8及び隔壁14は、従来のコネクターハウジングにも設けられている部材である。
【0021】
そして、この状態において、隔壁14の前面側にRTVゴムなどの耐油性を有するシール剤11を充填し、シール層28を形成し、これによって透孔15と樋状部26との間の隙間を埋め、気密性を持たせ、この隙間から前方開口部29側への水やオイルの滲み出しを阻止するのである。この際、ボックス部19の前端部24は裁頭角錐状に径が絞られており、その上面からは閉塞板27が樋状部26の底面に向かって傾斜して延設されているので、シール剤11がボックス部19の内部に流れ込む事はなく、シール剤11は隔壁14の前方側に滞留し、より確実に気密性を保持する。
【0022】
この様に、この発明に係るオス端子金具においては、オス端子接点部5とボックス部10との間に介在している 樋状部26には折り重ねられた部分は一切ないので、樋状部26にはミクロの隙間はなく、隔壁14の前後をシール剤11によって確実に遮閉することが可能で、このオス端子金具を装着したコネクターを、エンジンオイルや自動変速機作動油が飛散する環境下や水が飛散する環境下に設置したとしても、水やオイルが隔壁の前方側、即ち、メス端子側に滲み出すことはなく、水やオイルの滲み出しによる故障を防ぐことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0023】
水やオイルが飛散する環境下に設置されている電装品、特に、自動車エンジンに装着されている電装品に用いられるコネクター用として大いに利用価値がある。
【符号の説明】
【0024】
1.オス端子金具
2.電線
3.芯線
4.ゴム栓
5.オス端子接点部
8.リアホルダー
9.透孔
10.ボックス部
11.シール剤
12.隙間
13.コネクターハウジング
14.隔壁
15.透孔
16.オス端子金具
17.バレル部
19.ボックス部
20.被覆
21.インスレーションバレル
22.ワイヤーバレル
23.トランジション
24.前端部
25.上面
26.樋状部
27.閉塞板
28.シール層
29.前方開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方側に位置し、軸芯に沿って両側から内側へ向かって側板が折り曲げられた棒状をしたオス端子接点部と、後方側に位置し、電線の被覆と芯線とをそれぞれをかしめて圧着するバレル部と、筒形をなし、前記オス端子接点部とバレル部との間に位置するボックス部とからなり、筒状をなしたコネクターハウジング内に設けられている隔壁に形成されている透孔から、前方側に向かってオス端子接点部を突き出す様にしてコネクターハウジングに装着されるオス端子金具において、オス端子接点部の後端とボックス部の前端との間に、断面がU形になった樋状部を一体的に形成し、この樋状部を隔壁の透孔から突き出させ、隔壁の前面側に耐油性を有するシール剤を充填して透孔と樋状部との間の隙間を埋めて気密性を持たせる様にしたことを特徴とする防水耐油コネクター用オス端子金具。
【請求項2】
シール剤がRTVゴムであることを特徴とする請求項1記載の防水耐油コネクター用オス端子金具。
【請求項3】
ボックス部の前端部から樋状部の底面に向かって閉塞板が下向きに傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1記載の防水耐油コネクター用オス端子金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−212625(P2012−212625A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78521(P2011−78521)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000115142)ユニオンマシナリ株式会社 (38)
【Fターム(参考)】