説明

防虫ネット

【課題】破れた箇所の早期発見や自己修復を可能とする防虫ネットを提供する。
【解決手段】防虫ネット10は、複数の孔が設けられた平板材料であるネット部材13を備え、ネット部材13は、空気又は水と接触して変質する変質層14と、変質層14を覆う保護層15とを有する。防虫ネット10が破れて変質層14が空気又は水と接触すると、変質層14は変色又は膨張するため、防虫ネット10の破れた箇所の早期発見や、破れた箇所の自己修復が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫の侵入を防止できる農業分野で用いられる防虫ネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業分野で使用される防虫ネットは、縦糸と横糸とを略同一の間隔でネット状に織って形成したネットとなっている。この防虫ネットは、縦糸および横糸を織ることにより形成された多数の孔を含む。
【0003】
防虫ネットを構成する糸が切れて孔が広がるとその箇所から害虫が侵入するため、防虫ネットの破れた箇所を早急に発見して修復することが求められる。しかし、防虫ネットは広い面積に設けられることが多く、破れた箇所の発見は困難であった。また、手の届かない箇所の防虫ネットが破れた場合は、孔をふさぐ修復作業が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−204250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、破れた箇所の早期発見や自己修復を可能とする防虫ネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による防虫ネットは、複数の孔が設けられた平板材料であるネット部材を備え、前記ネット部材は、空気又は水と接触して変質する変質層と、前記変質層を覆う保護層と、を有し、前記変質層は、空気又は水と接触して変色又は膨張するものである。
【0007】
本発明の一態様による防虫ネットにおいては、前記変質層の内側に、フィルム基材を有することが好ましい。
【0008】
本発明の一態様による防虫ネットにおいては、前記変質層は、空気又は水と接触して変質する変質剤を含む前記平板材料であることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様による防虫ネットにおいては、前記変質層は水分を吸収して膨張する膨張剤を含み、膨張時に孔の少なくとも一部を埋めることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様による防虫ネットにおいては、前記変質層は、空気又は水と接触して変色する変色剤を含み、前記保護層は透明性を有することが好ましい。
【0011】
本発明の一態様による防虫ネットは、縦糸と横糸とが編み込まれてなる複数の孔を含む防虫ネットであって、少なくとも前記縦糸又は前記横糸は、空気又は水と接触して変質する変質層と、前記変質層を覆う保護層とを備え、前記変質層は、空気又は水と接触して変色又は膨張するものである。
【0012】
本発明の一態様による防虫ネットにおいては、少なくとも前記縦糸又は前記横糸は、前記変質層の内側に樹脂材料層を有することが好ましい。
【0013】
本発明の一態様による防虫ネットにおいては、前記変質層は水分を吸収して膨張する膨張剤を含み、膨張時に孔の少なくとも一部を埋めることが好ましい。
【0014】
本発明の一態様による防虫ネットにおいては、前記変質層は、空気又は水と接触して変色する変色剤を含み、前記保護層は透明性を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、防虫ネットに含まれる変質層が空気又は水と接触して変色又は膨張することで、破れた箇所の早期発見や自己修復を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)は防虫ネットの実施の形態を示す図であり、図1(b)は防虫ネットの断面を示す図。
【図2】図2(a)は防虫ネットが破損した状態を示す図であり、図2(b)は破損箇所が変色した状態を示す図であり、図2(c)は破損箇所が膨張した状態を示す図。
【図3】図3(a)は防虫ネットの変形例を示す図であり、図3(b)(c)は防虫ネットの断面を示す図。
【図4】図4は、ネットハウスを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態
図1(a)(b)および図4により本発明の実施の形態について説明する。図1(a)は防虫ネットの概略を示す図であり、図1(b)は図1(a)におけるA−A線での断面を示す図である。また図4はネットハウスを示す図である。
【0018】
図1(a)(b)および図4に示すように、防虫ネット10は、例えば野菜や果物等の農作物を栽培するネットハウス100を構成するものであり、フレーム101にこの防虫ネット10を取付けることにより、農作物栽培用のネットハウス100が得られる。
【0019】
図1(a)(b)に示すように、このような防虫ネット10は、平板材料11に対して多数の孔12を形成してなるネット部材13を備える。このネット部材13を形成するための平板材料11は、平板材料用コア材11aと、平板材料用コア材11aを覆い、空気又は水と接触して変質する変質層14と、変質層14を覆う保護層15とを有している。変質層14は、空気又は水と接触して変色又は膨張する性質を有している。
【0020】
また、平板材料11を準備し、この平板材料11に対してパンチング加工、打ち抜き加工、エッチング加工を施すことによって、多数の孔12を開孔することができる。
【0021】
なお、平板材料11を構成する平板材料用コア材11aとしては、樹脂製の樹脂フィルムまたは樹脂薄板(以下、「樹脂フィルム」と言う)や金属フィルムまたは金属薄板(以下、「金属フィルム」と言う)等のフィルム基材を用いることができる。
【0022】
また、変質層14は、変質剤として変色剤又は膨張剤を含んでおり、空気又は水と接触して変色又は膨張する。このような変質層14は、保護層15に覆われているため、通常は、空気又は水と接触することはない。変質層14が空気又は水と接触するのは、防虫ネット10が破れて、ネット部材13の切断面が露出される場合である。この時、変色剤を含む変質層14が変色することで、防虫ネット10の破れた箇所を発見し易くなる。あるいはまた、膨張剤を含む変質層14が膨張すると、防虫ネット10が破れて広がった孔をふさぐ、すなわち孔を埋めることができる。
【0023】
(平板材料用コア材11aの材料)
次に平板材料11を構成する平板材料用コア材11aの材料について説明する。平板材料用コア材11aとしては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ビニロン、ナイロン、ポリオレフィンなどの樹脂フィルムを用いることができる。
【0024】
このような樹脂フィルムは、透光性があり植物成育のための採光を妨げることはない。また、透光性を絞ってネットハウス100内部の温度上昇を防ぐ場合は、酸化チタンなどを混ぜた樹脂フィルムを用いることができる。この場合、酸化チタン等を混ぜる割合を自由に調整し、透光性を制御できる。
【0025】
また樹脂フィルムを発泡させ、平板材料用コア材11aに保温性能を付与するなどの機能付加を施してもよい。
【0026】
なお、樹脂フィルムは複数材料を積層した多層フィルムからなっていてもよく、引っ張りに強いポリエチレンと突き刺しに強いナイロンを積層したフィルムを利用し、引っ張り、突き刺し共に強いフィルムを利用することができる。
【0027】
さらに平板材料用コア材11aとして金属フィルムを用いてもよい。この場合、金属フィルムとしてアルミ板、ステンレス板、銅板などを利用することができる。金属フィルムの表面は金属光沢があるため、虫に対する忌避効果が期待できる。また金属フィルムは数年間の経年変化による伸びや縮みも樹脂フィルムより少ない。
【0028】
(変色剤の材料)
次に、変質層14に含まれる変色剤の材料について説明する。
【0029】
変色剤としては、空気に触れて変色する、いわゆる酸素インジケータとして利用される材料を用いることができる。このような材料として、例えば、アジン系(サフラニンT1モーベインなど)、オキサジン系(ガロシアニン、メルドラブルーなど)、チアジン系(メチレンブルーなど)、フタレイン系(フエノールフタレイ、チモールフタレインなど)の塩基性染料を用いることができる。また、インジゴ系の建染染料や、ブルー系硫化染料(Al.athiOsOlBlueS−RC.sS−BCなど)を用いてもよい。また、チアジン系染料、インジゴイド染料、チオインジゴイド染料、硫化染料からなる群の少なくとも一種と還元性糖類とアルカリ性物質とを樹脂溶液中に溶解もしくは分散させた酸素インジケーターインキ組成物を用いることもできる。また、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸およびこれらのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムとの塩からなる群から選択した少なくとも1種の有機酸或いは有機酸塩と有機色素、還元剤およびアルカリ性物質を必須成分として混合した複合体からなる低温用酸素検知剤組成物を用いることもできる。さらには、シクロデキストリン類、可逆変色性有機色素および還元剤を含む酸素検知剤組成物を用いることもできる。
【0030】
あるいはまた、変色剤としては、湿度変化、すなわち水との接触により変色する、いわゆる湿度インジケータとして利用される材料を用いることができる。このような材料としては、例えば、塩化コバルト(吸湿により青から桃色に変色)、臭化コバルト(吸湿により緑から赤紫色に変色)、塩化ニッケル(吸湿により黄色から淡緑色に変色)、臭化ニッケル(吸湿により黄褐色から緑色に変色)などを挙げることができる。また、シリカゲルに塩化コバルトを含浸して乾燥させたものや、潮解性物質を含浸、乾燥して担持した吸湿性シートと色素を担持したシート或いはpH指示薬を担持したシートとを積層したものや、この色素を担持したシート上に更に吸液性の不透明シートを積層したもの等を用いることもできる。さらには、ポルフィリン錯体と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Al、およびFeの中から選ばれる少なくとも1種の無機酸塩とを有効成分として含有し、2つの軸配位子がヒドロキシ基またはハロゲン(塩素)となったリンポルフィリン錯体とCaCl2とを有効成分とする水検出用組成物を用いることもできる。
【0031】
変質層14が上述のような変色剤を含むことで、図2(a)に示すように防虫ネット10のネット部材13が破れた場合、図2(b)に示すようにネット部材13の破れた箇所13Aに位置する変質層14が空気又は水と接触して変色する。このような防虫ネット10のネット部材13の色の変化により、防虫ネット10のネット部材13が破れたことに気付き易くなり、ネット部材13の破れた箇所13Aを早期に発見することができる。
【0032】
また、変質層14の変色剤が水との接触により変色する材料を用いている場合、防虫ネット10のネット部材13が破れた後に雨が降ると変色部分が広がる。そのため、ネットハウス100のように広い面積に防虫ネットが設けられている場合でも、変色部分を容易に発見することができ、防虫ネット10のネット部材13の破れを早い段階で気付くことができる。
【0033】
(膨張剤の材料)
次に、変質層14に含まれる膨張剤の材料について説明する。
【0034】
膨張剤には、水分を吸収して膨張する高分子材料、例えばポリアクリル酸ナトリウム、を利用することが出来る。膨張率は、50〜200倍程度が好ましい。
【0035】
例えば、防虫ネット10の孔12の開口率が50%、ネット部材13のうち5%が膨張剤成分、50%が平板材料11である場合を考える。この時、膨張剤成分は防虫ネット10の2.5%に相当する。このような防虫ネット10のネット部材13が破れた場合、膨張剤の膨張率が80倍程度あれば、ネット部材13の破れた箇所13Aに隣接する孔12をふさぐことができる。膨張率が80倍より小さい場合であっても、防虫ネット10の切断方向に膨張剤が膨張すれば、防虫ネット10が修復された状態になる。また、膨張率が80培より大きい場合は、正常な孔12までふさぐ可能性が増えるが、防虫効果を高めることができる。
【0036】
膨張剤としては他に、セルロース・アクリロニトリル重合体、デンプン・アクリロニトリル重合体、アクリル酸・ビニルアルコール共重合体、アクリル酸ソーダ重合体、アクリル酸ソーダ・アクリルアミド重合体、ポリエチレンオキサイド変性体、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体などを使用することができる。熱に対する安定性と、吸水膨張倍率の点から、ポリアクリル酸共重合体やビニルアルコール共重合体などの合成吸水性高分子樹脂系を使用することが好ましい。また、これらの樹脂を複数組み合わせて使用することもできる。
【0037】
変質層14が上述のような膨張剤を含むことで、図2(a)に示すように防虫ネット10のネット部材13が破れた場合、図2(c)に示すようにネット部材13の破れた箇所13Aに位置する変質層14が水(例えば大気中の水蒸気や雨水)と接触して膨張する。このような防虫ネット10のネット部材13の膨張により、防虫ネット10のネット部材13の破れた箇所13Aの孔12A、12Bをふさいで、自己修復することができる。
【0038】
また、変質層14に膨張剤を多く含有させたり、膨張率が高い膨張剤を使用したりすることで、防虫ネット10の破れた箇所をふさぐ効果を高めることができる。
【0039】
あるいは、変質層14に含有させる膨張剤を少なくしたり、膨張率が低い膨張剤を使用したりすることで、膨張した変質層14が孔12全体を2分する柱状に形成され、孔を埋めるのではなく、破けた孔を分割して径を狭め、防虫効果の低下を防止することができる。
【0040】
(保護層15の材料)
次に、保護層15の材料について説明する。保護層15は、防虫ネット10のネット部材13が破けていない状態で変質層14が変質することを防止するためのものである。従って、保護層15に求められる機能は、変質層14に含まれる変質剤に依存する。例えば、変質層14に含まれる変質剤が、上述したような空気に触れて変色する変色剤である場合は、保護層15には酸素バリア性を有する材料が使用される。また、変質層14に含まれる変質剤が、上述したような水に触れて変色する変色剤であったり、水に触れて膨張する膨張剤であったりする場合は、保護層15には水蒸気バリア性を有する材料が使用される。
【0041】
保護層15に用いられる酸素バリア性や水蒸気バリア性を有する材料としては、アルミニウムに代表される各種金属類が挙げられる。特に、変質層14に含まれる変質剤が変色剤である場合は、変色が確認し易いように、保護層15には、透明材料であるアルミナ(酸化アルミニウム)やシリカ(酸化ケイ素)などを使用することが好ましい。
【0042】
(防虫ネット10の製造方法)
次に、防虫ネット10の製造方法について説明する。
【0043】
まず、平板材料11を構成する平板材料用コア材11aを準備し、この平板材料用コア材11aに対してパンチング加工、打ち抜き加工、エッチング加工を施すことによって、開孔する。続いて、多数の孔が形成された平板材料用コア材11aに変色剤又は膨張剤を塗布して変質層14を形成する。
【0044】
続いて、アルミナ等を蒸着によりコーティングして保護層15を形成する。これにより、図1(a)(b)に示すようなネット部材13を備えた防虫ネット10を製造することができる。この場合、平板材料用コア材11aと、変質層14と、保護層15とにより平板材料11が構成される。
【0045】
図1(a)(b)において、防虫ネット10のネット部材13を構成する平板材料11は、平板材料用コア材11aと、変質層14と、保護層15とを有し、平板材料用コア材11aを覆う変質層14は、変色剤又は膨張剤を含むとともに、保護層15に覆われて設けられている。このため、防虫ネット10のネット部材13が破れて変質層14が外部に露出し、空気又は水に接触すると、変質層14が変色又は膨張する。変質層14が変色する場合は、防虫ネット10のネット部材13が破損したことに気付きやすく、また破損箇所を早期に発見できる。また、発見した破損箇所を修復することで、防虫ネット10の防虫効果の低下を防止できる。さらに、変質層14が膨張する場合は、破れた箇所の孔12をふさいで自己修復するため、防虫効果の低下を防止することができる。
【0046】
このように、本実施形態によれば、防虫ネット10のネット部材13は、平板材料用コア材11aと、変質層14と、保護層15とを有する平板材料11からなり、ネット部材13の変質層14が空気又は水と接触して変色・膨張することで、ネット部材13の破れた箇所13Aの早期発見や自己修復を行うことができる。
【0047】
第1の変形例
上記実施形態では、平板材料11を構成する変質層14の内側にフィルム基材からなる平板材料用コア材11aが設けられる構成について説明したが、平板材料用コア材11aは必ずしも設ける必要はない。すなわち、ネット部材13を、空気又は水と接触すると変色又は膨張する変質層14と、この変質層14を覆う保護層15とからなる平板材料11を開孔することにより作製してもよい。
【0048】
このような構成の防虫ネット10を作製する場合、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ビニロン、ナイロン、ポリオレフィンなどの樹脂に変色剤又は膨張剤を混錬して変質層14を製造し、その後、コーティングにより変質層14を覆う保護層15を設けて平板材料11を作製する。次に、平板材料11を開孔することにより、孔12を含むネット部材13からなる防虫ネット10を作製することができる。
【0049】
第2の変形例
上記実施形態に係る防虫ネット10は、平板材料11に対して多数の孔12を形成してなるネット部材13を備えた構成となっていたが、図3(a)に示すように、縦糸21と横糸22とが編み込まれてなる多数の孔23を含む防虫ネット20としてもよい。
【0050】
図3(a)のB−B線に沿った縦糸21の断面を図3(b)に示す。なお、横糸22の断面は縦糸21の断面と同様の構成となっているため、説明を省略する。図3(b)に示すように、縦糸21は、樹脂材料層31と、樹脂材料層31を覆う変質層32と、変質層32を覆う保護層33とを備える。
【0051】
樹脂材料層31は、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ビニロン、ナイロン、ポリオレフィンなどの樹脂で構成される。
【0052】
変質層32は、上記実施形態における変質層14と同様のものであり、空気又は水と接触して変色又は膨張する。保護層33は、上記実施形態における保護層15と同様のものであり、変質層32を空気又は水との接触から保護する。
【0053】
このような防虫ネット20の縦糸21又は横糸22が破断した場合、破断箇所に位置する変質層32が外部に露出され、変色又は膨張する。変質層32が変色する場合は、防虫ネット20の縦糸21又は横糸22が破損したことに気付きやすく、また縦糸21又は横糸22の破損箇所を早期に発見できる。発見した縦糸21又は横糸22の破損箇所を修復することで、防虫ネット20の防虫効果の低下を防止できる。変質層32が膨張する場合は、膨張した変質層32が、縦糸21又は横糸22が破れた箇所の孔をふさいで自己修復するため、防虫効果の低下を防止することができる。
【0054】
このような防虫ネット20は、樹脂材料からなる縦糸21及び横糸22を編み込んで多数の孔23を含むネットを形成した後に、樹脂材料の表面に変色剤又は膨張剤を塗布して変質層32を形成し、続いて、変質層32を覆うように、アルミナ等を蒸着によりコーティングして保護層33を形成することで作製することができる。
【0055】
また、樹脂材料からなる糸に変色剤又は膨張剤を塗布して変質層32を形成し、続いて、変質層32を覆うように、アルミナ等を蒸着によりコーティングして保護層33を形成し、図3(b)に示すような断面構造を有する糸を作製した後に、この糸を縦糸21、横糸22として編み込むことでも、防虫ネット20を製造することができる。
【0056】
防虫ネット20は、全ての縦糸21、横糸22に、樹脂材料層31と、樹脂材料層31を覆う変質層32と、変質層32を覆う保護層33とを有する糸を用いることが好ましいが、このような糸と、樹脂材料層31のみからなる糸とを交互に編み込んで防虫ネット20を作製してもよい。
【0057】
防虫ネット20の縦糸21、横糸22の構成は、図3(b)に示すような、変質層32の内側に樹脂材料層31が設けられた構成に限定されない。例えば、図3(c)に示すような、樹脂に変色剤又は膨張剤を混錬した材料からなる変質層34と、この変質層34を覆う保護層33とからなる構成にしてもよい。縦糸21及び横糸22が図3(c)に示すような断面構成を有する防虫ネット20は、樹脂に変色剤又は膨張剤を混錬した材料を糸状に加工して変質層34を形成し、この変質層34の表面にコーティングにより保護層33を形成して得られる糸を縦糸21、横糸22として編み込むことで作製することができる。
【0058】
なお、上記実施形態及び変形例では、変質層14、32、34に変質剤として変色剤又は膨張剤が含まれる構成について説明したが、変質層14、32、34に変色剤と膨張剤との混合物が含まれる構成にしてもよい。変質層14、32、34に変色剤及び膨張剤が含まれることで、防虫ネット10のネット部材13、防虫ネット20の縦糸21、横糸22の破れた箇所に位置する変質層14、32、34が、空気及び/又は水に接触して、膨張すると共に変色する。このため、防虫ネット10、20の破損箇所の孔12、23を自己修復させることができるとともに、防虫ネット10、20の自己修復箇所を容易に発見することができ、修復状態を早期に確認することができる。
【0059】
また、上記実施形態では、防虫ネット10の孔12の形状は矩形であったが、円形など他の形状にしてもよい。
【0060】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10、20 防虫ネット
11 平板材料
11a 平板材料用コア材
12、12A、12B 孔
13 ネット部材
13A 破損箇所
14、32、34 変質層
15、33 保護層
21 縦糸
22 横糸
31 樹脂材料層
100 ネットハウス
101 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の孔が設けられた平板材料であるネット部材を備え、
前記ネット部材は、
空気又は水と接触して変質する変質層と、
前記変質層を覆う保護層と、
を有し、
前記変質層は、空気又は水と接触して変色又は膨張することを特徴とする防虫ネット。
【請求項2】
前記変質層の内側に、フィルム基材を有することを特徴とする請求項1に記載の防虫ネット。
【請求項3】
前記変質層は、空気又は水と接触して変質する変質剤を含む前記平板材料であることを特徴とする請求項1に記載の防虫ネット。
【請求項4】
前記変質層は水分を吸収して膨張する膨張剤を含み、膨張時に孔の少なくとも一部を埋めることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の防虫ネット。
【請求項5】
前記変質層は、空気又は水と接触して変色する変色剤を含み、前記保護層は透明性を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の防虫ネット。
【請求項6】
縦糸と横糸とが編み込まれてなる複数の孔を含む防虫ネットであって、
少なくとも前記縦糸又は前記横糸は、
空気又は水と接触して変質する変質層と、
前記変質層を覆う保護層と
を備え、
前記変質層は、空気又は水と接触して変色又は膨張することを特徴とする防虫ネット。
【請求項7】
少なくとも前記縦糸又は前記横糸は、前記変質層の内側に樹脂材料層を有することを特徴とする請求項6に記載の防虫ネット。
【請求項8】
前記変質層は水分を吸収して膨張する膨張剤を含み、膨張時に孔の少なくとも一部を埋めることを特徴とする請求項6又は7に記載の防虫ネット。
【請求項9】
前記変質層は、空気又は水と接触して変色する変色剤を含み、前記保護層は透明性を有することを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の防虫ネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−143166(P2012−143166A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1982(P2011−1982)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】