説明

防食処理を施して支柱を固定する方法と防食処理に使用する筒状スリーブ

【課題】 ガードレールの支柱となる鋼管に生じる腐食を防いで、支柱を埋設孔内に固定する方法を提供する。そのために使用する
【解決手段】 鋼製の支柱(1)の基部(11)を、基部に防食処理を施してから地中に埋設して固定する。防食処理として、粘着シート(5)を介して基部をプラスチック製の筒状スリーブ(6)で覆い、かつ、筒状スリーブの上部に耐候性の高いゴム製でつくったキャップ(7)をかぶせる。ゴム製のキャップの内径は支柱の外径より小さく、かぶせることにより、その上端は直接支柱に密着して、支柱と筒状スリーブとの間に雨水がしみ込むことを防止するとともに、筒状スリーブの上部を抑える。埋設は、防食処理を施した支柱を、あらかじめ設けた埋設孔の中に入れ、地表面から1〜5cmを残して周囲に砂(4)を充填したのち、砂の上部にセメントモルタル(3)を充填して固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路や橋梁の側部に設けるガードレールの支柱のように、鋼管製であって、その基部を土中に埋設したり、コンクリート構造物に埋設したりしたものが、設置後の年月の経過に伴って腐食されるという問題に対処するため、防食処理を施して支柱を固定する技術に関する。本発明は、その防食処理に使用する筒状スリーブにも関する。本発明は、支柱を新規に設置する場合に限らず、既設の支柱に対して、設置後に防食を行なった上で再度固定する場合にも、適用可能である。
【背景技術】
【0002】
たとえば高速道路の両側または中央分離帯に設けたガードレールは、帯状の鋼板を成形したものを、所定の長さごとに支柱を立てて支える構造になっている。この支柱は、直径が14cm内外の円筒、または一辺が12.5cm程度の隅丸四角筒状の鋼管で製作し、頂部にキャップをかぶせたものである。支柱の長さは、使用する場所によって異なり、通常、普通の道路のように基部を土中に埋設する場合は、全長110cmであり、橋梁のように土の層がなくて基部全体をコンクリート構造物中に埋設する場合は、全長95cmである。支柱の固定には、地中に埋設する場合の代表的な態様についていえば、図1に示すように、コンクリートの舗装に設けた内径20cmほどの埋設孔(2)に支柱(1)の基部(11)を挿入し、下端部(12)の周囲にアスファルトまたはセメントモルタル(3)を置き、その上の周囲の空所には地表面(GL)近くまで砂(4)を充填し、最後に、支柱の地表付近を再びアスファルトまたはセメントモルタル(3)で覆って固定する、という手法がとられている。
【0003】
支柱を設ける場所が橋梁部のようなコンクリート構造体である場合、支柱の埋設深さを深くとることができず、25センチ程度に止まる。この場合は、上記の砂を充填する方式を採用せず、単に埋設孔内の支柱の周囲にセメントモルタルを充填する、という方式による。場合によっては、支柱を固定されるべき位置に保持し、その周囲にコンクリートを打設して、コンクリート構造体の構築と同時に支柱を固定するという工法を採用することもある。
【0004】
上記のようにして固定した支柱には、地中であれ、コンクリート構造体中であれ、数年から、早い場合は数ヶ月で錆が生じることが経験されている。錆は、地中であれば、埋設された地表面付近から下方に向かって、おおよそ20から、深い場合は40cmまでの範囲において生じ、ある範囲より深い部分では、あまり腐蝕が見られない。この腐食の機構は、雨水の滲透によりこの位置の支柱の周囲が湿った状態にあり、局部電池が形成されるマクロセル現象が生じて電流が流れたり、迷走電流が流れたりするためと理解されている。従来、その対策としては支柱に対する塗装が行なわれているものの、効果的とはいえず、抜本的な解決策が求められていた。同様な問題は、ガードレールに限らず、さまざまな目的で鋼管製のポールを設置する場合にも、共通にみられる。
【0005】
発明者らの一人は、この埋設される支柱の基部が腐食するという問題に、より効果的に対処する方策を探し、支柱を、未加硫のブチルゴムのような粘着材を塗布した粘着シートを介してプラスチック製の筒状スリーブで被覆するという防食処理を施し、その後に埋設するという固定方法を発明して、すでに提案した(特許文献1)。この提案の支柱の固定方法によるとき、支柱とプラスチック製筒状スリーブとの間に雨水がしみ込むことを防ぐには、防食処理を施した部分の上端に、建築工事用シリコーンゴムなどのコーキング材を充填するという対策をとる。しかし、コーキング材の充填は、手作業であってある程度の熟練を要する上、常に確実な効果が得られるとは限らないという問題がある。そのため、腐食条件が厳しいところでは、コーキング材の充填に代る、容易に施工できて効果が確実な雨水滲透対策が求められた。さらに、筒状スリーブの地表面より上に露出している部分は、紫外線や酸素、オゾンなどの作用で劣化するので、それをいかに防止するかという問題も残っていた。道路の傍らでは、自動車の排気に含まれるオゾンが作用して、プラスチック材料が劣化しやすいということが知られている。
【特許文献1】特許第4211870号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、さきに提案した、鋼管製の支柱によく生じる腐食を防いで支柱を固定する技術をさらに前進させ、支柱とプラスチック製筒状スリーブとの間への雨水滲透を防ぐために、コーキング材の充填に代えて実施することができ、施工が容易で効果が確実な対策をもった支柱の固定方法として、ゴム製のキャップを使用する方法を提供することにある。この目的に使用する、ゴム製のキャップを提供することも、本発明の目的に含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の支柱の固定方法は、
鋼製の支柱の基部を、基部に防食処理を施して地中に埋設することにより支柱を固定する方法において、図2に示すように、支柱(1)の基部(11)への防食処理が、粘着シート(5)を介してプラスチック製の筒状スリーブ(6)で覆い、かつ、筒状スリーブの上部にゴム製のキャップ(7)をかぶせることからなり、筒状スリーブの長さは、その上端が、支柱を埋設したとき地表面(GL)に交わる部分から上方1〜5cmの高さに位置し、下端が、下方25〜45cmの深さに位置するものであり、図5に示したゴム製のキャップが、上端部分(71)は直接支柱に密着して支柱と筒状スリーブとの間に雨水がしみ込むことを防止するとともに、本体部分(72)は筒状スリーブの上部を粘着シート(5)に密着させ、かつ、筒状スリーブの上部を覆ってその劣化を抑制するものであり、
埋設が、防食処理を施した支柱を、あらかじめ設けた埋設孔の中に入れ、下端部(12)付近をアスファルトまたはセメントモルタル(3)で固定した後、地表面から1〜5cmを残して周囲に砂(4)を充填したのち、砂の上部にアスファルトまたはセメントモルタル(3)を充填して固定するものであることを特徴とする支柱の固定方法である。
【0008】
本発明の支柱の固定方法の別の態様は、鋼製の支柱の基部を、基部に防食処理を施して、土中でなくコンクリート構造物中に埋設することにより支柱を固定する方法であって、図2に示すように、防食処理が、粘着シート(5)を介してプラスチック製の筒状スリーブ(6)で覆い、かつ、筒状スリーブの上部にゴム製のキャップ(7)をかぶせることからなり、筒状スリーブの長さが、その上端が、支柱の埋設されたとき地表面(GL)に交わる部分から上方1〜5cmの高さに位置し、下端が、支柱の下端部(12)にほぼ一致するものであり、ゴム製のキャップが、上端部分(71)は直接支柱に密着して、支柱と筒状スリーブとの間に雨水がしみ込むことを防止するとともに、本体部分(72)は筒状スリーブの上部を粘着シート(5)に密着させ、かつ、筒状スリーブの上部を覆ってその劣化を抑制する形状を有するものである、という点では上記の土中に埋設する場合と異ならないが、埋設が、
(イ)防食処理を施した支柱を、あらかじめコンクリート構造物に設けた埋設孔(2)の中に入れ、その周囲にアスファルトまたはセメントモルタル(3)を充填して固定するか、または、
(ロ)防食処理を施した支柱を、所定の位置に保持した状態でコンクリートの打設を行なってコンクリート構造物を構築することにより固定するものである、
のいずれかであることを特徴とする点で、前記の方法と異なる支柱の固定方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の固定方法により腐食を防いで支柱を固定すれば、支柱の腐食が生じやすい部分の外面がプラスチック製の筒状スリーブで覆われていて、電気的に導通不可能な状態に保たれているから、局部電池の形成による電流の発生はなく、電気化学的な腐食はほぼ完全に防止できる。一方、支柱と筒状スリーブとの間に滲透するおそれのある雨水は、ゴム製のキャップにより滲透が防止され、周囲に流れ下るから、防食は完璧である。プラスチック製の筒状スリーブは、上部がゴム製のキャップにより覆われていて、紫外線や大気中の酸素、オゾンなどの作用が及ばないから、劣化が防止できる。プラスチックの劣化を防止するために、種々の添加剤が開発され使用されているが、耐候性に関しては、プラスチックよりもゴムを選択する方が有利である。支柱のそれ以外の部分の腐食は、亜鉛メッキや塗装などの通常の防食手段で間に合うので、全体として鋼管製の支柱の腐食は、実質上ゼロといえるほど低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の支柱の固定方法は、支柱の基部を土中に埋設するにせよ、コンクリート構造物中に埋設するにせよ、あらたに固定する場合に限らず、すでに埋設されている支柱を対象に、腐食を防いで再度固定する場合にも適用できる。たとえば、基部が土中に埋設されている場合について説明すれば、地面に掘った埋設孔の中で支柱の基部を固定しているコンクリートまたはアスファルトを撤去し、ついで、支柱の基部の周囲に充填されている砂に、水を注いでスラリーにした状態で吸引して砂をいったん除去することにより支柱を取り出し、前記した粘着シートを介してプラスチック製の筒状スリーブをかぶせる防食処理を施し、再度埋設孔の中に入れ、砂を入れたのち、コンクリートまたはアスファルトを充填して固定する、という作業を行なう。
【0011】
支柱の基部が直接コンクリート構造物中に埋設されている場合は、砂の洗い出しにより支柱をフリーにするというわけにいかないから、油圧ジャッキなどを用いて、強引に支柱を引き抜くほかないが、この引き抜きは、本発明者らの経験によれば、それほど困難な作業ではない。支柱の周囲のコンクリートは一部破壊され、支柱基部に付着してくるが、それを取り除いてから、前記した防食処理を施し、元の位置に配置して、周囲をモルタルで固定するという手順に従えばよい。このような作業は、何らかの補修を行なう機会に、または補修の必要がない場合でも腐食防止処理として実施して、上述の機構による腐食防止の実を挙げることができる。支柱とガードレールとの結合をいったん外すことが可能であれば、支柱が支えていたガードレールなどに影響を及ぼすことなく、もともとの位置に存在させたままで、支柱1本ごとに、順次の防食処理を行なうことができる。
【0012】
図3は、上記した固定方法において、支柱の基部が、橋梁などのコンクリート構造物中に埋設されている場合の態様を示すものであって、支柱(1)の埋設される部分全体をプラスチック製の筒状スリーブ(6)で覆って、埋設孔(2)の中に入れるところまでは、図2に示した態様と原理的には同じである。続いて、基部の周囲にセメントモルタルを充填して、固定する。コンクリート構造物の構築と同時に支柱を固定する場合は、支柱を何らかの手段により固定されるべき位置に保持した状態で、コンクリートの打設を行なえばよい。
【0013】
本発明の固定方法によったときは、ゴム製のキャップにより、支柱とプラスチック製の筒状スリーブとの間に雨水が滲透することが防止されるが、基部の埋設を行なったのち、図2に示したように、ゴム製のキャップの周囲にセメントモルタルで円錐台形の余盛り(8)を施すことにより、傾斜面を形成することが好ましくい。この工程を付加することにより、雨水は支柱基部の周囲に滲透することなく除去され、防食環境がいっそう改善される。余盛り(8)を施す(図2)にせよ施さない(図3)にせよ、ゴム製のキャップの下端は地表面(GL)にほぼ合致した高さとして、プラスチック製の筒状スリーブが日光と大気に触れないようにすることが好ましい。
【0014】
プラスチック製の筒状スリーブの諸態様を示せば、支柱の断面が円筒状である場合において、円筒に縦に走る1本の切断線を設けて環状の断面を開放し、切断端を突き合わせて円筒を完成する構造としたものが、まず挙げられる。このような製品は、スリーブを形成するプラスチックの、たとえば射出成形による一挙の成形、または押出し成形による円筒の製造とそれに続く切断加工により、製造することができる。この筒状スリーブにおいては、図4に示すように、プラスチック製の筒状スリーブ(6)の突き合わせる切断端(61,62)が斜めに削がれていて、突き合わせたときに重なり合う形状を有するものが好適である。
【0015】
プラスチック製の筒状スリーブの別の態様としては、円筒を縦に走る2本の切断線で切断し、半円筒型にしたものを組み合わせたものもあり得る。このような製品もまた、上記した円筒に1本の切断線を設けた製品と同様に、プラスチックの射出成形により、または押出し成形と切断加工の組み合わせにより、製造することができる。
【0016】
支柱の断面が角筒状である場合においても、それを被覆するためのプラスチック製の筒状スリーブは、円筒状の場合について上記したところが、すべてあてはまる。すなわち、筒状スリーブとして、角筒を縦に走る1本の切断線を設けて環状の断面を開放し、切断端を突き合わせて角筒を完成する構造にすることもできるし、角筒を縦に二分割して半角筒状のものをつくり、それらを突き合わせて角筒を完成する構造にすることもできる。
【0017】
プラスチック製の筒状スリーブを製造する別の途として、板状体から出発する方法がある。たとえばポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン樹脂は、熱可塑性であって、加熱により湾曲させ、筒状にすることが可能である。より能率の高い方法として、ポリオレフィン樹脂の板状体を、一対のロールにかませる加工法がある。このとき、一方のロールは平ロールであるが、他方のロールは軸に平行な突条が所定間隔で表面に多数存在する歯形ロールとしたロールの対を使用して、板の一方の面だけに平行な浅い溝を多数形成すると、板状体はこの溝のある面を外側にして湾曲し、自然に筒状体が形成される。形成される筒状体の径は、形成する溝の間隔や深さを調節することにより、ある範囲内でコントロールすることができる。
【0018】
上記の方法は筒状スリーブが円筒状である場合に好適であるが、角筒状のスリーブを製造するには、他方のロールとして、軸に平行な突条の群が、角筒の寸法に応じた間隔をおいて存在するものを使用すればよいことが容易に理解されるであろう。しかし、より有利なのは、平行な突条が適宜の数だけ並んだ型を有するプレスを利用する製造方法である。このようなプレスを使用するときは、プレスする間隔を角筒の寸法に応じて変更することにより、ある程度の寸法の変更に対しても、同じ設備で対応することができる。板状体からの出発は、長い筒状スリーブを製造するとき、一挙に所望の長さのものを形成することができるという点で、射出成形に対して有利である。プラスチックの板状体は、種々の厚さのものが、たとえば1m×2mといった定尺の製品として市販されていて、入手が容易であるから、それを材料とする筒状スリーブの製造は、コストのかからない製造方法として推奨される。
【0019】
プラスチック製の筒状スリーブ(6)の材料は、耐候性のあるプラスチックであれば任意のものを選択することができるが、とくに好適なものは、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィンである。これらのプラスチックは、たとえば上記の縦に1本の切断線を設けた筒状スリーブを製造したとき、粘着シートを巻いた支柱の基部にかぶせる作業に当たって、材料がもつ適度の弾性を利用することができる。
【0020】
粘着シートの材料としては、未加硫のブチルゴムが最適である。粘着性を有するシートの表面に離型紙をはったものが市販されており、それが好都合に使用できる。
【0021】
ゴム製のキャップ(7)の材料は、耐候性にすぐれていることが要求される。耐候性ゴムとしては、ニトリルゴムを始めとして数種類のものが知られているが、発明者らの経験では、EPTゴム(エチレン・プロピレン・ターポリマーゴム)が最適であった。その形状・寸法は、上端部分(71)の内径が、施工時に支柱の外径に密着するよう、若干(代表的には、後記する実施例に見るように10%程度)小さくし、本体部分(72)の内径が、支柱の外径に粘着テープの厚さと筒状スリーブの厚さとの合計をプラスした直径になるよう、これも若干小さく製造する。成形方法は任意であって、射出成形が最適であるが、プレス成形によることもできる。
【0022】
本発明の支柱の固定方法を実施するに当たっては、支柱の防食処理をするために使用するプラスチック製の筒状スリーブ(6)の内側に、両面粘着シートの一方の面を貼り付け、他方の面に離型紙を適用したものを、あらかじめ用意しておくと好都合である。この筒状スリーブは、プラスチックとして弾性のあるもの、代表的にはポリオレフィンを使用して製造することにより、1本の線で切断した構造のものでも、前記したように押し広げて支柱の基部を被覆することができるから、防食処理がきわめて能率よく実施できる。
【実施例】
【0023】
[実施例1]
図5に示す形状を有し、円筒状の鋼管支柱に対して使用するゴム製キャップを、EPTゴムを材料として、射出成形により製造した。このゴム製キャップの上部の内径は、支柱に常用する円柱状鋼管の外径143mmに対して約10%小さく、支柱基部にかぶせることによって引き延ばされて、支柱に密着するように設計されている。高さは、70mmである。上部を除いた本体の内径は、上部より約5mm大きく、粘着シートおよびスリーブを受け入れるようになっている。
【0024】
一方、ポリプロピレンの射出成形により、図4に示したような形状の、プラスチック製のスリーブを製造した。すなわち、円筒に縦に走る1本の切断線を入れ、突き合わせ端をそれぞれ削いだ形状であって、支柱にかぶせたとき、その削いだ部分が重なり合って、円筒状の被覆を形成するように設計したものである。このスリーブの寸法は、円筒を完成したときの寸法が、内径143mm(肉厚2.0mm)×長さ200mmである。このプラスチック製の筒状スリーブの内側に、未加硫ブチルゴムで粘着性を与えた両面粘着シートであって、片面に離型紙を貼った。
【0025】
鋼管製のガードレール支柱であって、外径139.8mm(肉厚4.5mm)×長さ1100mmの円柱で、一方の端(頂部となる)に円い蓋を溶接して全体に塗装を施してあるものを対象に、上記したゴム製キャップと筒状スリーブとを用いて、防食処理を施した。支柱基部の端から、50mm上方の位置を下端として、長さ200mmの筒状スリーブを2本、間をおかずに、離型紙を剥がして貼り付けた。つづいて、支柱に貼り付けた筒状スリーブの上端にゴム製のキャップをかぶせて、防食処理上部を止水し、筒状スリーブの上部を固定するとともに、紫外線の照射および大気との接触による劣化を防いだ。
【0026】
道路面には、コンクリートの打設に先だち、外径200mmの円筒の外面に、プラスチックの押し出し加工により用意した、断面ほぼ正方形の中空管をスパイラル状に巻き付けた型枠を、支柱を埋設すべき位置に配置しておき、コンクリートの打設・硬化ののちにそのスパイラルの中空管を引き出して型枠とコンクリート凝固体との間に間隙を生じさせる、という手法により、内径約200mm×深さ400mmの支柱埋設孔を設けておいた。
【0027】
防食処理を施した支柱を上記の埋設孔に挿入し、支柱の周囲にできている、幅が約30mmの間隙に山砂を流し込み、小型のバイブレータで振動を与えることにより、まんべんなく砂を行き渡らせた。砂の上面は、埋設孔の入り口から50mmまでとした。この埋設孔の砂の存在しない部分に、セメントモルタルを充填し、さらに、セメントモルタルのコテ作業により、円錐形の余盛りを施した。余盛りは、ゴム製のキャップの外側ほぼ10cmの広がりに対して、勾配がおおよそ1/10となるように行なった。したがって、ゴム製のキャップは、その下端ほぼ1cmがコンクリートに埋没して、図2に示した断面構造となった。
[実施例2]
【0028】
橋梁部におけるガードレールの新設に際して、その支柱を固定する作業を行なった。支柱としては、一辺が12.5cmの隅丸四角筒(肉厚6.0mm)で長さ95cmの鋼管を使用し、一方の端(頂部となる)に、角筒の断面に対応する形状の四角い蓋を溶接して、全体に塗装を施してあるものを使用した。ゴム製のキャップは、支柱の外径に応じた形状を有し、ただし寸法はそれより10%小さくしてある。高さは、実施例1で用意した円筒形支柱に用いるものと同じ、70mmである。スリーブは、一辺が13.2cm(肉厚2.0mm)の隅丸四角筒であって、長さ100mmおよび200mmの2種の角筒を、縦に走る2本の線で切断して、それぞれ2個のコ字型断面の部品にしたものである。
【0029】
実施例1と同様にして、ただし、鋼管製の支柱基部を下端から、上記2種の長さの角筒状スリーブを並べて被覆し、上記のゴム製のキャップをかぶせた。支柱を埋設孔に入れ、その周囲に、モルタルを充填して基部を固定し、実施例1と同様に、周囲に余盛りを行なった。地表面より下に埋設された深さは25cmであり、ゴム製のキャップの下部1cmもコンクリートに隠れた。
[実施例3]
【0030】
実施例1で使用したものと同じ鋼管製のガードレール支柱であって、そのまま埋設固定されているものに対して、腐食防止の対策を実施した上で、再度固定する作業を行なった。埋設孔の上部にあって支柱の地表面付近を覆っているアスファルトを除去し、砂を露出させた。そこへ水を注ぎながら、生じたスラリーを小型のスラリーポンプで吸引し、孔から除去した。このようにして支柱基部の、埋設孔の中でアスファルトと砂に囲まれていた部分の周囲を自由にし、清浄にした上で乾燥させた。スラリーは固液分離し、乾燥して再使用した。以下は、実施例1と同様にして、防食処理を施した支柱を埋設し、基部を固定した。
[実施例4]
【0031】
実施例2で行なったガードレール支柱の固定を、橋梁のコンクリートの打設による構築と同時に行なった。実施例2の防食処理を施した支柱を、コンクリート打設の型枠から伸びる仮設の固定治具により吊り下げることにより、固定されるべき位置に保持した状態で、コンクリートの打設を行ない、橋梁が構築されるとともに、支柱が固定されるようにはかった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来のガードレール支柱の基部を埋設して固定する手法を示す、埋設部分の断面図。
【図2】本発明の一つの実施例であって、腐食を防いでガードレール支柱を固定したときの、支柱基部の構造を示す縦断面図。
【図3】本発明の別の実施例であって、腐食を防いでガードレール支柱を固定したときの支柱基部の構造を示す、図2と同様な縦断面図。
【図4】本発明の方法に使用するプラスチック製のスリーブについて、代表的な態様を示す斜視図。
【図5】本発明の方法に使用するゴム製のキャップの一例を示す図であって、Aは平面図、Bは縦断面図。
【符号の説明】
【0033】
1 支柱
11 支柱の基部 12 支柱の下端部
2 埋設孔
3 アスファルトまたはセメントモルタル
4 砂
5 粘着シート
6 プラスチック製の筒状スリーブ
61,62 突き合わせ部
7 ゴム製のキャップ
71 上端部分 72 本体部分
8 余盛り
GL 地表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製の支柱(1)の基部(11)を、基部に防食処理を施して地中に埋設することにより支柱を固定する方法において、
防食処理が、粘着シート(5)を介してプラスチック製の筒状スリーブ(6)で覆い、かつ、筒状スリーブの上部にゴム製のキャップ(7)をかぶせることからなり、筒状スリーブの長さが、その上端が、支柱の埋設されたとき地表面(GL)に交わる部分から上方1〜5cmの高さに位置し、下端が、下方25〜45cmの深さに位置するものであり、ゴム製のキャップが、上端部分(71)は直接支柱に密着して支柱と筒状スリーブとの間に雨水がしみ込むことを防止するとともに、本体部分(72)は筒状スリーブの上部を粘着シート(5)に密着させ、かつ、筒状スリーブの上部を覆ってその劣化を抑制するものであり、
埋設が、防食処理を施した支柱を、あらかじめ設けた埋設孔の中に入れ、下端部(12)付近をアスファルトまたはセメントモルタル(3)で固定した後、地表面から1〜5cmを残して周囲に砂(4)を充填したのち、砂の上部にアスファルトまたはセメントモルタル(3)を充填して固定するものである、
ことを特徴とする支柱の固定方法。
【請求項2】
鋼製の支柱(1)の基部(11)を、基部に防食処理を施してコンクリート構造物中に埋設することにより支柱を固定する方法において、
防食処理が、粘着シート(5)を介してプラスチック製の筒状スリーブ(6)で覆い、かつ、筒状スリーブの上部にゴム製のキャップ(7)をかぶせることからなり、筒状スリーブの長さが、その上端が、支柱の埋設されたとき地表面(GL)に交わる部分から上方1〜5cmの高さに位置し、下端が、支柱の下端部(12)にほぼ一致するものであり、ゴム製のキャップが、上端部分(71)は直接支柱に密着して、支柱と筒状スリーブとの間に雨水がしみ込むことを防止するとともに、本体部分(72)は筒状スリーブの上部を粘着シート(5)に密着させ、かつ、筒状スリーブの上部を覆ってその劣化を抑制する形状を有するものであり、
埋設が、
(イ)防食処理を施した支柱を、あらかじめコンクリート構造物に設けた埋設孔(2)の中に入れ、その周囲にアスファルトまたはセメントモルタル(3)を充填して固定するか、または
(ロ)防食処理を施した支柱を、所定の位置に保持した状態でコンクリートの打設を行なってコンクリート構造物を構築することにより固定するものである、
ことを特徴とする支柱の固定方法。
【請求項3】
埋設を行なった後、ゴム製のキャップの周囲にアスファルトまたはセメントモルタルで円錐台形の余盛り(8)を施すことにより、傾斜面を形成する工程を付加した請求項1または2の支柱の固定方法。
【請求項4】
支柱(1)の断面が円筒状である場合において、プラスチック製の筒状スリーブ(6)として、円筒に縦に走る1本の切断線を設けて環状の断面を開放し、切断端を突き合わせて円筒を完成する構造を有し、突き合わせ部(61,62)が斜めに削がれていて突き合わせたときに重なり合う形状を有するものを使用して実施する請求項1または2の支柱の固定方法。
【請求項5】
粘着シート(5)として、未加硫のブチルゴム両面粘着シートを使用して実施する請求項1または2の支柱の固定方法。
【請求項6】
プラスチック製の筒状スリーブ(6)が、ポリオレフィン樹脂の射出成形により製造され、円筒状または角筒状であって縦に走る1本の切断線を有し、切断端の突き合わせ部分が斜めに削がれていて突き合わせたときに重なり合う形状であるものを使用する請求項1または2の支柱の固定方法。
【請求項7】
プラスチック製の筒状スリーブ(6)が、ポリオレフィン樹脂の押出し成形により製造され、円筒状または角筒状であって縦に走る1本の切断線を有するものを使用する請求項1または2の支柱の固定方法。
【請求項8】
プラスチック製の筒状スリーブ(6)が、ポリオレフィン樹脂の板状体のプレス成形により製造され、板状体を円筒状または角筒状に加工し、板の両端が突き合わされて縦に走る1本の切断線を形成したものを使用する請求項1または2の支柱の固定方法。
【請求項9】
ゴム製のキャップ(7)が、EPTゴム製である請求項1または2の支柱の固定方法。
【請求項10】
円筒状の支柱の固定に当たり、支柱の防食処理をするために使用するプラスチック製の円筒状スリーブであって、その内側に、両面粘着シートの一方の面を貼り付け、他方の面に離型紙を適用してなる、請求項1または2の支柱の固定方法に使用するプラスチック製の筒状スリーブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−106649(P2010−106649A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3000(P2009−3000)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(506218701)
【出願人】(507159256)
【Fターム(参考)】