説明

降雪強度計測方法及び降雪強度計測装置

【課題】雪の降り方の強さを表す降雪強度の計測精度及び計測の信頼性を向上することができると共に雪の降り方の強さをイメージ的に分かりやすく表現することができる。
【解決手段】演算計測手段3に一定時間内における雪片検出パルスの数の積算値と一定時間内に新たに降った雪の深さを意味する降雪深の積算値との相関に基づく換算係数に基づいて、降雪強度として、単位時間当たりの降雪深を表す降雪深強度を演算計測する降雪深強度計測手段4を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば気象観測や融雪装置の自動制御に用いられる降雪強度計測方法及び降雪強度計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の降雪強度計測装置として、検出空間に投光部から投射光を投射すると共に該投射光の雪片からの反射光を受光部で受光して雪片検出パルスを出力する雪片検出手段と、該雪片検出手段からの雪片検出パルスの数を計数する計数手段と、該計数手段による雪片検出パルスの計数値に基づいて降雪強度を演算計測する演算計測手段とを備えてなる構造のもの等が知られている。
【特許文献1】特公平4−23740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、上記雪片検出パルスの計数値に基づいて雪の降り方の強さを表す降雪強度を演算計測する場合、一般的に、予め、一定時間内、例えば雪の降り始めから降り終わりまでの一定期間内における一定時間内の雪片検出パルスの数の積算値と、雨雪量計による同じく一定時間内、例えば、雪の降り始めから降り終わりまでの一定期間内における一定時間内の単位面積当たりの水の重さに等しい水の深さとなる降雪量、実際には雪片を融解して水とした上での水分量としての換算降水量の積算値との相関に基づく換算係数を求め、上記計数手段からの計測時間内における雪片検出パルスの数の積算値から、該換算係数に基づいて、単位時間当たりの降雪量としての換算降水量を降雪強度として演算計測することが知られている。
【0004】
しかしながら、図3の如く、横軸の上記一定期間内における一定時間内、この場合、一雪シーズン内における一定時間、例えば、10分内の雪片検出パルスの数の積算値と、縦軸の一定期間内における単位面積当たりの降雪量との相関に基づく換算係数をA地域、B地域及びC地域の各地域により求めたことろ、K(mm/個)=0.00020〜0.00038となり、計測地域により約2倍の開きがあり、具体的には、換算係数=0.00020、計測時間=1時間、計測時間内における雪片検出パルスの数の積算値[個]=3765個とすると、降雪強度=約0.8[mm/時間]となり、又、換算係数=0.00038、計測時間=1時間、計測時間内における雪片検出パルスの数の積算値[個]=3765個とすると、降雪強度=約1.4[mm/時間]となり、このように各計測地域により相関に基づく換算係数が大きく異なり、ひいては降雪強度も異なることが分かり、この換算計数が地域により相異する原因としては、各地域により雪質や温度、その他の気象条件等が異なることに依るものであると考えられ、よって、地域により大きく異なる換算係数に基づいて降雪強度を計測することは計測精度や計測の信頼性を低下させることになり兼ねないという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこれらの不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の方法の発明は、検出空間に投光部から投射光を投射すると共に該投射光の雪片からの反射光を受光部で受光して雪片検出パルスを出力し、該雪片検出パルスの数を計数し、該雪片検出パルスの計数値に基づいて降雪強度を演算計測するに際し、上記降雪強度として一定時間内における雪片検出パルスの数の積算値と一定時間内に新たに降った雪の深さを意味する降雪深の積算値との相関に基づく換算係数を予め求め、計測時間内における上記雪片検出パルスの数の積算値から、該換算係数に基づいて、単位時間当たりの降雪深を表す降雪深強度を演算計測することを特徴とする降雪強度計測方法にある。
【0006】
又、請求項2記載の装置の発明は、検出空間に投光部から投射光を投射すると共に該投射光の雪片からの反射光を受光部で受光して雪片検出パルスを出力する雪片検出手段と、該雪片検出手段からの雪片検出パルスの数を計数する計数手段と、該計数手段による雪片検出パルスの計数値に基づいて降雪強度を演算計測する演算計測手段とを備えてなり、上記演算計測手段に一定時間内における雪片検出パルスの数の積算値と一定時間内に新たに降った雪の深さを意味する降雪深の積算値との相関に基づく換算係数を予め求め、上記計数手段からの計測時間内における雪片検出パルスの数の積算値から、該換算係数に基づいて、上記降雪強度として、単位時間当たりの降雪深を表す降雪深強度を演算計測する降雪深強度計測手段を備えてなることを特徴とする降雪強度計測装置にある。
【0007】
又、請求項3記載の装置の発明は、上記検出空間の外気温度を検出する温度計測手段を設け、該温度計測手段からの温度信号に基づいて一定温度以上における上記雪片検出パルスを誤信号として除去する外乱除去回路を備えてなることを特徴とするものであり、又、請求項4記載の装置の発明は、上記雪片検出手段に投光部及び受光部における結露を防止するためのヒーターを配置してなることを特徴とするものであり、又、請求項5記載の装置の発明は、上記ヒーターの温度を上記温度計測手段からの温度信号により制御するヒーター制御部を設けてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上述の如く、請求項1又は2記載の発明にあっては、検出空間に雪片検出手段の投光部から投射光を投射すると共に投射光の雪片からの反射光を受光部で受光して雪片検出パルスを出力し、計数手段により雪片検出パルスの数を計数し、演算計測手段により、雪片検出パルスの計数値に基づいて降雪強度を演算計測するに際し、上記降雪強度として、一定時間内における雪片検出パルスの数の積算値と一定時間内に新たに降った雪の深さを意味する降雪深の積算値との相関に基づく換算係数を予め求め、降雪深強度計測手段により、計測時間内における上記雪片検出パルスの数の積算値から、該換算係数に基づいて、単位時間当たりの降雪深を表す降雪深強度を演算計測するようにしているから、上記一定時間内における雪片検出パルスの数の積算値と一定時間内に新たに降った雪の深さを意味する降雪深の積算値との相関に基づく換算係数は、各地域において、ほぼ同じ値を示すことによって、雪の降り方の強さを表す降雪強度の計測精度及び計測の信頼性を向上することができると共に降雪強度として積雪の圧密や変態、変形などを含めた積雪深の増量である降雪深を用いた降雪深強度を演算計測することにより、換算降水量による従来の降雪強度の表現に比べ、雪の降り方の強さをイメージ的に分かり易い、降雪情報としてふわしい表現で降雪強度を表現することができる。
【0009】
又、請求項3記載の発明にあっては、上記検出空間の外気温度を検出する温度計測手段を設け、温度計測手段からの温度信号に基づいて一定温度以上における上記雪片検出パルスを誤信号として除去する外乱除去回路を備えてなるから、雨滴によるものと想定される雪片検出パルスを除去することができ、降雪深強度の計測精度を高めることができ、又、請求項4記載の発明にあっては、上記雪片検出手段に投光部及び受光部における結露を防止するためのヒーターを配置してなるから、投光部による投射光の投射並びに受光部による反射光の受光が確実になされ、これにより雪片検出パルスを確実に出力することができ、又、請求項5記載の発明にあっては、上記ヒーターの温度を上記温度計測手段からの温度信号により制御するヒーター制御部を設けてなるから、過熱による危険並びに投光部及び受光部の劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の実施の形態例を示し、1は雪片検出手段であって、検出空間Gに投光部1aから投射光Rを投射すると共に該投射光Rの雪片Dからの反射光Rを受光部1bで受光して雪片検出パルスを出力する構成となっている。
【0011】
なお、投射光Rは、雨滴のような表面が滑らかなものに対しては透過又は全反射し、雪片に対しては乱反射するため、雨滴のとき受光部1bに戻る頻度は極めて少なく、このような雪片と雨滴との反射構造の違いによって、降雨を降雪と誤って検出することは少ないと考えられる。
【0012】
この場合、上記投光部1aには、発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)などの発光素子が内蔵され、受光部1bにはフォトトランジスタ(PTr)やフォトダイオード(PD)などの受光素子が内蔵されている。
【0013】
2は計数手段であって、上記雪片検出手段1からの、例えば、10分、1時間、6時間、24時間等の計測時間内における雪片検出パルスの数の積算値を計数する構成となっている。
【0014】
3は演算計測手段であって、上記計数手段2による雪片検出パルスの計数値に基づいて降雪強度を演算計測する構成となっており、この場合、上記降雪強度として、一定時間内、例えば、雪の降り始めから降り終わりまでの一定期間内における一定時間内の雪片検出パルスの数の積算値[個]と、同じく一定時間内、例えば、雪の降り始めから降り終わりまでの一定期間内の一定時間内に新たに降った雪の深さを意味する降雪深の積算値との相関係数に基づく換算係数Kを予め求め、上記計数手段2からの計測時間内における雪片検出パルスの数の積算値[個]から、換算係数Kに基づいて、単位時間当たりの降雪深を表す降雪深強度を演算計測する降雪深強度計測手段4を備えている。
【0015】
すなわち、この場合、図2の如く、横軸の上記雪の降り始めから降り終わりまでの一定期間内における一定時間、例えば10分内の雪片検出パルスの数の積算値[個]と、縦軸の降雪深度計による同じく雪の降り始めから降り終わりまでの一定期間内の一定時間、例えば、10分内に新たに降った雪の深さを意味する降雪深の積算値[cm]との相関に基づく換算係数Kを予め求め、図2の如く、この換算係数K[cm/個]は、A地域、B地域及びC地域の各地域において、K=0.00056〜0.00057となり、具体的には、換算係数=0.00056、計測時間=1時間、計測時間内における雪片検出パルスの数の積算値[個]=3765個とすると、降雪深強度=約2.1[cm/時間]となり、又、換算係数=0.00057、計測時間=1時間、計測時間内における雪片検出パルスの数の積算値[個]=3765個とすると、降雪強度=約2.1[cm/時間]となり、計測地域が異なってもほぼ同じ値を示し、上記計数手段2からの例えば、10分、1時間、6時間、24時間等の計測時間内における雪片検出パルスの数の積算値N[個]から、この換算係数Kに基づいて、単位時間当たりの降雪深を表す降雪深強度を演算計測するように構成している。即ち、この演算計測される降雪深強度=換算係数K×計測時間内における雪片検出パルスの数の積算値N[個]÷計測時間を演算計測することになり、この単位時間当たりの降雪深である降雪深強度の表現方法としては、24時間降雪深強度[cm/24時間]、一時間降雪深強度[cm/時間]、一分間降雪深強度[cm/分]、或いは、一秒間降雪深強度[m/秒]などがある。この表現をなじみやすく強度の文字を省略して24時間降雪深、一時間降雪深、一分間降雪深、或いは、一秒間降雪深と表現することもあろう。
【0016】
この降雪深[cm]とは、新積雪深とも呼ばれ、積雪が全く無い状態を零基準点としてその零点から積雪表面までの深さ(鉛直高さ)[cm]をいう積雪深と異なり、一定時間内に新たに降った雪の深さをいう。
【0017】
したがって、時刻tの降雪深=HFtとは、時刻tの積雪深=HSt、時刻tより一定時間前、例えば10分前の積雪深=HS0とすると、HFt=HSt−HS0(但し、HFt≦0の場合、HFt=0とする。)となり、この時刻tの降雪深HFtの積算値が図2の縦軸の数値となっている。
【0018】
この場合、上記検出空間Kの外気温度を検出する例えばサーミスター温度計などの温度センサを含む温度計測手段5を設け、温度計測手段5からの温度信号に基づいて、一定温度以上、例えば、外気温度が3℃以上における上記雪片検出パルスを雨による誤信号として除去するための外乱除去回路6を備えて構成している。この外乱除去回路6として、例えば、コンパレータ回路を用いることができる。
【0019】
又、この場合、上記雪片検出手段1に投光部及び受光部における結露を防止するためのヒーター7を配置し、かつ、この場合、上記ヒーター7の温度を上記温度計測手段5からの温度信号により制御するヒーター制御部8を設けて構成している。
【0020】
この実施の形態例は上記構成であるから、検出空間Gに雪片検出手段1の投光部1aから投射光Rを投射すると共に該投射光Rの雪片Dからの反射光Rを受光部1bで受光して雪片検出パルスを出力し、計数手段2により雪片検出パルスの数を計数し、演算計測手段3により、雪片検出パルスの計数値に基づいて降雪強度を演算計測するに際し、上記降雪強度として、一定時間内における雪片検出パルスの数の積算値と一定時間内に新たに降った雪の深さを意味する降雪深の積算値との相関に基づく換算係数を予め求め、降雪深強度計測手段4により、計測時間内における上記雪片検出パルスの数の積算値から、該換算係数に基づいて、単位時間当たりの降雪深を表す降雪深強度を演算計測するようにしているから、上記一定時間内における雪片検出パルスの数の積算値と一定時間内に新たに降った雪の深さを意味する降雪深の積算値との相関に基づく換算係数は、各地域において、ほぼ同じ値を示すことによって、雪の降り方の強さを表す降雪強度の計測精度及び計測の信頼性を向上することができると共に降雪強度として積雪の圧密や変態、変形などを含めた積雪深の増量である降雪深を用いた降雪深強度を演算計測することにより、換算降水量による従来の降雪強度の表現に比べ、雪の降り方の強さをイメージ的に分かり易い、降雪情報としてふわしい表現で降雪強度を表現することができる。
【0021】
この場合、上記検出空間Gの外気温度を検出する温度計測手段5を設け、温度計測手段5からの温度信号に基づいて一定温度以上における上記雪片検出パルスを誤信号として除去する外乱除去回路6を備えてなるから、雨滴によるものと想定される雪片検出パルスを除去することができ、降雪深強度の計測精度を高めることができ、又、この場合、上記雪片検出手段1に投光部及び受光部における結露を防止するためのヒーター7を配置してなるから、投光部による投射光の投射並びに受光部による反射光の受光が確実になされ、これにより雪片検出パルスを確実に出力することができ、又、この場合、上記ヒーター7の温度を上記温度計測手段5からの温度信号により制御するヒーター制御部8を設けてなるから、過熱による危険並びに投光部及び受光部の劣化を防止することができる。
【0022】
尚、本発明は上記実施の形態例に限られるものではなく、投光部1a及び受光部1bの要素や雪片検出手段1の構造、計数手段2、降雪深強度計測手段4の構造等は適宜変更して設計されものである。
【0023】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態例の構成系統ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態例の換算値を求めるための相関図である。
【図3】従来構造の換算値を求めるための相関図である。
【符号の説明】
【0025】
G 検出空間
R 投射光及び反射光
D 雪片
1 雪片検出手段
1a 投光部
1b 受光部
2 計数手段
3 演算計測手段
4 降雪深強度計測手段
5 温度計測手段
6 外乱除去回路
7 ヒーター
8 ヒーター制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出空間に投光部から投射光を投射すると共に該投射光の雪片からの反射光を受光部で受光して雪片検出パルスを出力し、該雪片検出パルスの数を計数し、該雪片検出パルスの計数値に基づいて降雪強度を演算計測するに際し、上記降雪強度として、一定時間内における雪片検出パルスの数の積算値と一定時間内に新たに降った雪の深さを意味する降雪深の積算値との相関に基づく換算係数を予め求め、計測時間内における上記雪片検出パルスの数の積算値から、該換算係数に基づいて、単位時間当たりの降雪深を表す降雪深強度を演算計測することを特徴とする降雪強度計測方法。
【請求項2】
検出空間に投光部から投射光を投射すると共に該投射光の雪片からの反射光を受光部で受光して雪片検出パルスを出力する雪片検出手段と、該雪片検出手段からの雪片検出パルスの数を計数する計数手段と、該計数手段による雪片検出パルスの計数値に基づいて降雪強度を演算計測する演算計測手段とを備えてなり、上記演算計測手段に一定時間内における雪片検出パルスの数の積算値と一定時間内に新たに降った雪の深さを意味する降雪深の積算値との相関に基づく換算係数を予め求め、上記計数手段からの計測時間内における雪片検出パルスの数の積算値から、該換算係数に基づいて、上記降雪強度として、単位時間当たりの降雪深を表す降雪深強度を演算計測する降雪深強度計測手段を備えてなることを特徴とする降雪強度計測装置。
【請求項3】
上記検出空間の外気温度を検出する温度計測手段を設け、該温度計測手段からの温度信号に基づいて一定温度以上における上記雪片検出パルスを誤信号として除去する外乱除去回路を備えてなることを特徴とする請求項2記載の降雪強度計測装置。
【請求項4】
上記雪片検出手段に投光部及び受光部における結露を防止するためのヒーターを配置してなることを特徴とする請求項2又は3記載の降雪強度計測装置。
【請求項5】
上記ヒーターの温度を上記温度計測手段からの温度信号により制御するヒーター制御部を設けてなることを特徴とする請求項4記載の降雪強度計測装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−79912(P2009−79912A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247277(P2007−247277)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(591061699)新潟電機株式会社 (8)
【Fターム(参考)】