説明

除去剤によるハロゲンガス又はフッ化物ガスの除去方法

【課題】 水酸化カルシウムを含有する除去剤を用いてフッ素(F)や三フッ化塩素(ClF)のようなハロゲン元素からなるフッ化物のガスであるハロゲンガスや該ハロゲンガスとの反応により生成するフッ化物ガスを除去する場合、上記のように除去剤に含有する水分を蒸発させるより、蒸発させずに除去剤と、ハロゲンガス又はフッ化物ガスとを、反応させる方法より、さらに除去剤の単位質量あたりの処理量を多くできる除去方法を提供する。
【解決手段】 ハロゲンガス又はフッ化物ガスを含有する排出ガスを、水酸化カルシウムを主成分とする除去剤に接触させて、ハロゲンガスを固定して除去する方法において、該除去剤に水分を供給することを特徴とするハロゲンガス又はフッ化物ガスの除去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、半導体製造、液晶製造、又は太陽電池製造工場において、クリーニングやエッチング時に排出されるガス中の、ハロゲンガス又は該ハロゲンガスと処理対象物との反応により生成するフッ化物ガスの除去に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハロゲンガス、例えば、フッ素(F)ガスやハロゲン元素からなるフッ化物のガスである三フッ化塩素(ClF)ガスなどは、半導体製造、液晶製造、又は太陽電池製造工場において、珪素やタングステンを除去するためのクリーニングガスやエッチングガスとして使用されている。また、400℃以下の温度において反応性が低い三フッ化窒素(NF)ガスや六フッ化硫黄(SF)ガスもプラズマ分解によりフッ素(F)ガス等を発生するため、同様の目的で使用されている。
【0003】
ハロゲンガス又はフッ化物ガスの除去は、水酸化カルシウムを主成分とする固体アルカリ除去剤を充填した除去筒により処理される。
【0004】
半導体製造、液晶製造、又は太陽電池製造工場において、クリーニングやエッチングに使用されるフッ素(F)ガスや三フッ化塩素(ClF)ガスなどのハロゲンガスは、ウエハーの大口径化や液晶サイズの大型化に伴い、これらのガスの消費量及び生成されるフッ化物ガスが増大し、これらハロゲンガス又はフッ化物ガスを含有する排出ガスも増大する。したがって、排出されるこれらハロゲンガス及びフッ化物ガスの除去を、効率よく大量に行うことが必要になってきている。排出されるガスは、通常、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスで希釈されており、これらハロゲンガス及びフッ化物ガスの濃度は1体積%以下であることがほとんどである。
【0005】
一般的に使用されている水酸化カルシウムを主成分とする固体アルカリ除去剤は、ソーダ石灰と呼ばれるものである。ソーダ石灰は、通常、生石灰を水酸化ナトリウムの濃厚溶液に浸し、加熱してつくった強い塩基性の白色粒状の固形物質である(非特許文献1)。ソーダ石灰は試薬としても日本工業規格K8603に規定されている。ソーダ石灰は、ソーダライムの名称で市販もされている。これらの市販のソーダライムは不定形の粒状や顆粒状であり、100〜200℃で遊離される水分を19質量%以下含んでいる。この水分を蒸発させて用いても良いが、弗化物ガスの浄化能力の点からみるとそのまま水分を保たせる方が好ましいことが報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3260825号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「理化学辞典」,第4版,岩波書店,1983年, 761頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
クリーニングガスやエッチングガスの使用後に排出されるガス中には、未反応のフッ素(F)又は三フッ化塩素(ClF)と、これらハロゲンガスとクリーニング又はエッチングの対象である物質との反応により生成するフッ化物ガス、例えば、クリーニング又はエッチングの対象が珪素やタングステンの場合、反応で得られる四フッ化珪素(SiF)や六フッ化タングステン(WF)、が含まれているため、排出ガスを大気に放出するにはこれらのガスを除去する必要がある。
【0009】
水酸化カルシウムを含有する除去剤を用いてフッ素(F)や三フッ化塩素(ClF)のようなハロゲン元素からなるフッ化物のガスであるハロゲンガスや該ハロゲンガスとの反応により生成するフッ化物ガスを排出ガスから除去する場合、特許文献1のように除去剤に含有する水分を蒸発させるよりも蒸発させずに除去剤と、ハロゲンガス又はフッ化物ガスとを、反応させることにより、充填される除去剤の単位質量あたりに処理できるハロゲンガス量を多くできる。
【0010】
本発明は、上記方法よりもさらに除去剤の単位質量あたりの処理量を多くできる除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、かかる問題点を克服するために鋭意検討した結果、水酸化カルシウムを含有する除去剤を用いて、不活性ガスで希釈されたハロゲンガス又はフッ化物ガスを除去する処理を継続すると、除去剤中の水分が不活性ガス中に徐々に失われていくことにより、除去剤の水分を保たせることができなくなり、除去剤の単位質量あたりの除去できるハロゲンガス量は低下することを発見し、このことから、除去剤に水分を供給することにより処理量を向上できることを見いだし、本発明に至った。
【0012】
すなわち本発明は、ハロゲンガス又はフッ化物ガスを含有する排出ガスを、水酸化カルシウムを主成分とする除去剤に接触させて、ハロゲンガス又はフッ化物ガスを固定して除去する方法において、該除去剤に水分を供給することを特徴とするハロゲンガス又はフッ化物ガスの除去方法を提供するものである。
【0013】
また、水分を含有する不活性ガスを該除去剤に接触させることにより、該除去剤に水分を供給すること、さらには、2体積%以上10体積%以下の水分を含有する不活性ガスを用いること、又は、該除去剤と接触後の排出ガスの湿度を測定し、該測定値より供給する水分量を決定すること、を特徴とする、前記のハロゲンガス又はフッ化物ガスの除去方法を提供するものである。
【0014】
すなわち、水酸化カルシウムを含有する固体アルカリを充填した除去筒で処理される場合は、下記反応式(1)〜(4)のようにフッ化カルシウム(CaF)や塩化カルシウム(CaCl)として固定される。
【0015】
2F+2Ca(OH)→2CaF+2H0+O (1)
2ClF+4Ca(OH)→3CaF+CaCl+4H0+2O (2)
SiF+2Ca(OH)→2CaF+SiO+2H0 (3)
WF+3Ca(OH)→3CaF+WO+3H0 (4)
【発明の効果】
【0016】
本発明により、水酸化カルシウムを含有する除去剤を用いてハロゲンガス又はフッ化物ガスを除去する方法において、単位質量当たりの処理量を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ハロゲンガス又はフッ化物ガスの除去処理の実験フローの概略図である。
【図2】実施例10に用いた実験フローの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明に用いる水酸化カルシウムを主成分とする除去剤は、ソーダ石灰などがあり、水酸化カルシウムを60質量%以上含有しているものであればよい。好ましくは、水酸化カルシウムを60質量%以上95質量%以下含有している。60質量%未満ではハロゲンガスとの反応成分が不足し、除去剤の単位質量当たりの処理量を高く維持できない。95質量%を超えると水分の割合が相対的に低くなり、同様に除去剤の単位質量当たりの処理量を多くすることが困難となる。
【0020】
さらに、供給する水分の量は、除去剤中の水分含有量が5質量%以上19質量%以下となる量が望ましい。5質量%未満では除去処理能力が著しく低下する虞がある。また、19質量%を超えると除去剤中で水分が保有できなくなり、水分が液体として除去剤表面に凝集し、ガスの流通を妨げる虞がある。さらには、ハロゲンガス又はフッ化物ガスが含有する排出ガスを除去剤に接触させるために除去剤を充填筒に充填する場合、該充填筒の内壁面で水分が凝集し、凝集した水分に該充填筒内を流通する排出ガス中のハロゲンガスが高濃度に吸着される虞がある。この場合、該充填筒の内壁面の腐食の原因となりうる。
【0021】
除去剤に水分を供給する方法として、除去剤が充填筒に充填されている場合、充填筒内の除去剤に水を噴霧する方法がある。この方法では、水分が充填筒の入口側の内壁面で凝集した場合、先述したようにハロゲンガスが高濃度に吸着される虞がある。したがって、水分の供給は、水分を含有した不活性ガスを、除去剤に接触させて行なうことが好ましい。
【0022】
水分を供給するための不活性ガスは、水分を2体積%以上10体積%以下含有しているものが好ましい。水分濃度が2体積%未満では、除去剤に不活性ガスから供給される水分より、除去剤から処理ガス中に失われていく水分のほうが多くなり、供給不足になる虞がある。10体積%を超えると供給過多になり、水分が液体として除去剤表面に凝集し、ガスの流通を妨げる虞がある。
【0023】
水分を不活性ガスに含有させる方法としては、不活性ガスを水中でバブリングする加湿方法が最も簡便で安価であると考えられる。また、除去剤に供給する水分量を調節して供給することが望ましい。供給する水分量は、不活性ガスの加湿時に不活性ガスを加熱することや不活性ガスの流量を変化させることにより調節できる。
【0024】
水分の供給に使用する不活性ガスは、単独に供給する方法もあるが、除去剤により除去処理された排出ガスの主成分が不活性ガスである場合、これを用いることもできる。除去処理後の排出ガスを用いるには、除去処理後の排出ガスをポンプ等で強制的に取り出し、これを、直接加湿して除去剤に供給する方法や、バッファータンクなどの密閉容器に加圧貯蔵してこれから取り出したガスを加湿して除去剤に供給する方法などがある。
【0025】
水分の供給量は、除去剤中の水分が、5質量%以上19質量%以下の範囲に入る程度にすることが好ましい。そのための最も直接的な方法として、使用前の除去剤全体の質量を計測し、除去処理時に該質量を所望の値に保つように、上記の供給方法で除去剤に水分を供給することにより行なえる。しかしながら、除去剤の質量はハロゲンガスやフッ化物ガスと除去剤成分との化学反応により変化するため、ハロゲンガスの処理量に応じて変化する。したがって、処理されたハロゲンガスの種類と量を把握しなければ供給する水分量を正確に得ることが困難である。
【0026】
一方、除去剤を通過した排出ガスの湿度と除去剤中の水分濃度には相関があり、除去剤を通過した不活性ガスの湿度を測定することにより、除去剤中の水分量を予測することが可能であることを見いだした。
【0027】
具体的には、除去剤を通過した排出ガスの湿度が室温において50〜60%であれば、除去剤中の水分濃度は10〜15質量%に維持されており、一方通過した排出ガスの湿度が室温において0〜10%であれば、除去剤中の水分濃度は5質量%以下であることを見いだした。
【0028】
除去剤中を通過した不活性ガスの湿度は、湿度計を用いて測定できる。その他、塩化コバルトを含浸させたシリカゲルの変色をモニタすることにより最も安価に測定できるが、定量的に把握することができず、また電気信号による自動化も困難である。
【0029】
以上により、除去剤を通過した排出ガスの湿度を測定し、湿度に応じて補給する不活性ガスの流量と加湿器の温度を調整し、湿度の高い状態の不活性ガスで、除去剤中に均一に水分を分散させることが、最も安全で簡便と考えられる。
【0030】
除去対象となるハロゲンガスは、フッ素ガスやハロゲン元素からなるフッ化物のガスであり、例えば、Fガス、ClFガス、BrFガス、IFガス、IFガス等が挙げられる。また、除去対象となるフッ化物ガスは、ハロゲンガスとの反応により生成するガスであり、例えば、SiFガス、WFガス、GeFガス、UFガス等が挙げられる。
【0031】
本発明で処理する排出ガス中のハロゲンガス及びフッ化物ガスの濃度は、2体積%以下が望ましい。上記反応式(1)〜(4)にあるように、フッ素(F)ガス、三フッ化塩素(ClF)ガス、四フッ化珪素(SiF)ガス、又は六フッ化タングステン(WF)ガスが水酸化カルシウムと反応した場合、反応したフッ素(F)と同量の水、反応した三フッ化塩素(ClF)の2倍の量の水、反応した四フッ化珪素(SiF)の2倍の量の水、反応した六フッ化タングステン(WF)の3倍の量の水が発生する。
【0032】
発生した水は、ハロゲンガス及びフッ化物ガスの濃度が2体積%を超えると、除去剤表面に凝集し、排出ガスの流通を妨げる虞がある。さらには、ハロゲンガス又はフッ化物ガスが含有する排出ガスを除去剤に接触させるために除去剤を充填筒に充填する場合、凝集した水分に該充填筒内を流通する排出ガス中のハロゲンガス又はフッ化物ガスが高濃度に吸着される虞がある。この場合、該充填筒の内壁面の腐食の原因となりうる。
【0033】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。図1に本例にもちいる実験フローの概略図を示す。ハロゲンガス又はフッ化物ガスを含有する処理対象ガス1は、不活性ガス希釈のフッ素(F)ガス、三フッ化塩素(ClF)ガス、四フッ化珪素(SiF)ガス、又は六フッ化タングステン(WF)ガスを使用する。この処理対象ガス1を、ハロゲンガス及びフッ化物ガスの除去剤3が充填されている充填筒2に導入し、除去剤3と接触させる。充填筒2は内径50mm、除去剤充填高さ100mmの筒状で、材質はステンレススチールである。
【0034】
処理対象ガス1は充填筒2の上方から下方に流通し、排出管12より外部に排出される。排出管12より分岐して循環ポンプ4(イワキ製型式BAN−0510H)が流量調節計5(コフロック製型式RK−1200)を介して接続されている。さらに、循環ポンプ4の下流は、水が充填されている加湿器6を介して充填筒2内の除去剤3の上部内に埋められているPTFEチューブ8に接続されている。
【0035】
PTFEチューブ8の長さは30mmで、長さ方向に6箇所の穴が等間隔に空けられている。加湿器6は、PFA製の密閉容器で内部の水分量が目視で確認できる。加湿器6は外壁からヒータ7によって加熱でき、その外壁温度は室温〜80℃に調整できる。
【0036】
また、佐藤計量器製作所製(型式SK−L200TH)の湿度計9は、排出管12より分岐して接続されている。湿度計9は、0.1〜99.9%の湿度が測定できる。
【0037】
充填筒2より排出されるガスの一部は、循環ポンプ4により加湿器6内で水中を通過することにより加湿され、PTFEチューブ8より除去剤3中へ均一に分散され、循環される。このとき、流量調節計5と循環ポンプ4により循環流量を1〜100cm/minに調節できる。また、湿度計9により測定された湿度から、循環流量及びヒータ7の加熱温度が決定され、水分の供給量を制御できる。
【0038】
さらに、フッ素(F)ガスの除去状態を確認するため、上記分岐より下流に、排出管12より分岐して吸引式ガス検知管10が接続され、フッ素(F)ガスの濃度を測定できる。吸引式ガス検知管10には、ガステック製の型番17Lの検知管を用い、1〜200体積ppmのフッ素(F)ガスの濃度測定ができる。
【0039】
また、三フッ化塩素(ClF)ガス、四フッ化珪素(SiF)ガス、六フッ化タングステン(WF)ガスの除去状態を確認するため、更にその下流の排出管12より分岐して赤外線吸光分析計11が接続され、これらのガス濃度を測定できる。赤外線吸光分析計11は、MIDAC社製(型式IGA−2000)で、三フッ化塩素(ClF)ガスは0.1〜100体積ppm、四フッ化珪素(SiF)ガスは0.2〜100ppm、六フッ化タングステン(WF)ガスは0.5〜200ppmの濃度測定ができる。
【実施例1】
【0040】
上記の実験フローにおいて、不活性ガスとして水分濃度が1体積ppm未満の窒素ガス(大陽日酸株式会社製Bグレード)を用いて、F=10000体積ppmの濃度に希釈された、処理対象ガス1を用いた。処理対象ガス1の充填筒2での空間速度は毎時100とした。充填筒2の除去剤3は、水酸化カルシウムが81.5質量%、水酸化ナトリウムが2.0質量%、水酸化カリウムが1.5質量%、水分が15.0質量%の組成で、平均粒径が3.5mmの粒状のものを160g使用した。
【0041】
充填筒2から排出されるガスの一部は循環ポンプ4で加湿器6を通過し加湿されて充填筒入口側の除去剤3中に戻される。流量調節計5は30cm/minに調節し、加湿器6の外壁温度はヒータ7で40℃に調節した。また、このとき供給される不活性ガス中の水分濃度は7体積%となった。
【0042】
充填筒2の出口ガスを吸引式ガス検知管10でフッ素(F)の濃度を測定した結果、処理開始から36時間まではフッ素(F)の濃度は検出下限の1体積ppm未満であり、それ以後は検出され、36時間で除去できた処理対象ガス1中のフッ素(F)の質量は11.0gとなった。なお、充填筒2の排出管12に接続された湿度計9の湿度は、除去処理中において50〜60%となった。
【実施例2】
【0043】
処理対象ガス1の充填筒2での空間速度を毎時200、流量調節計5は50cm/minに調節し、加湿器6の外壁温度はヒータ7で50℃に調節する以外は実施例1と同様に行った。また、このとき供給される不活性ガス中の水分濃度は9体積%となった。
【0044】
その結果、処理開始から15時間まではフッ素(F)の濃度は検出下限の1体積ppm未満であり、それ以後は検出され、15時間で除去できた処理対象ガス1中のフッ素(F)の質量は9.2gとなった。なお、充填筒2の排出管12に接続された湿度計9の湿度は、除去処理中において50〜60%となった。
【実施例3】
【0045】
の代わりにClFを用い、その他の条件は実施例1と同様に行った。除去筒2の出口ガスを赤外線吸光分析計11で三フッ化塩素(ClF)の濃度を測定した結果、処理開始から22時間までは三フッ化塩素(ClF)の濃度は検出下限の0.1体積ppm未満であり、それ以後は検出され、22時間で除去できた処理対象ガス1中の三フッ化塩素(ClF)の質量は16.4gとなった。なお、充填筒2の排出管12に接続された湿度計9の湿度は、除去処理中において50〜60%となった。
【実施例4】
【0046】
処理対象ガス1の充填筒2での空間速度を毎時200、流量調節計5は50cm/minに調節し、加湿器6の外壁温度はヒータ7で50℃に調節する以外は実施例3と同様に行った。また、このとき供給される不活性ガス中の水分濃度は9体積%となった。
【0047】
その結果、処理開始から7時間までは三フッ化塩素(ClF)の濃度は検出下限の0.1体積ppm未満であり、それ以後は検出され、7時間で除去できた処理対象ガス1中の三フッ化塩素(ClF)の質量は10.4gとなった。なお、充填筒2の排出管12に接続された湿度計9の湿度は、除去処理中において50〜60%となった。
【実施例5】
【0048】
の代わりにSiFを用い、その他の条件は実施例1と同様に行った。除去筒2の出口ガスを赤外線吸光分析計11で四フッ化珪素(SiF)の濃度を測定した結果、処理開始から46時間までは四フッ化珪素(SiF)の濃度は検出下限の0.2体積ppm未満であり、それ以後は検出され、46時間で除去できた処理対象ガス1中の四フッ化珪素(SiF)の質量は38.4gとなった。なお、充填筒2の排出管12に接続された湿度計9の湿度は、除去処理中において50〜60%となった。
【実施例6】
【0049】
処理対象ガス1の充填筒2での空間速度を毎時200、流量調節計5は50cm/minに調節し、加湿器6の外壁温度はヒータ7で50℃に調節する以外は実施例5と同様に行った。また、このとき供給される不活性ガス中の水分濃度は9体積%となった。
【0050】
その結果、処理開始から20時間までは四フッ化珪素(SiF)の濃度は検出下限の0.2体積ppm未満であり、それ以後は検出され、20時間で除去できた処理対象ガス1中の四フッ化珪素(SiF)の質量は33.4gとなった。なお、充填筒2の排出管12に接続された湿度計9の湿度は、除去処理中において50〜60%となった。
【実施例7】
【0051】
の代わりにWFを用い、その他の条件は実施例1と同様に行った。除去筒2の出口ガスを赤外線吸光分析計11で六フッ化タングステン(WF)の濃度を測定した結果、処理開始から7時間までは六フッ化タングステン(WF)の濃度は検出下限の0.5体積ppm未満であり、それ以後は検出され、7時間で除去できた処理対象ガス1中の六フッ化タングステン(WF)の質量は16.8gとなった。なお、充填筒2の排出管12に接続された湿度計9の湿度は、除去処理中において50〜60%となった。
【実施例8】
【0052】
処理対象ガス1の充填筒2での空間速度を毎時200、流量調節計5は50cm/minに調節し、加湿器6の外壁温度はヒータ7で50℃に調節する以外は実施例7と同様に行った。また、このとき供給される不活性ガス中の水分濃度は9体積%となった。
【0053】
その結果、処理開始から3時間までは六フッ化タングステン(WF)の濃度は検出下限の0.5体積ppm未満であり、それ以後は検出され、3時間で除去できた処理対象ガス1中の六フッ化タングステン(WF)の質量は14.4gとなった。なお、充填筒2の排出管12に接続された湿度計9の湿度は、除去処理中において50〜60%となった。
【実施例9】
【0054】
不活性ガスとして窒素ガスの代わりにアルゴンガス(大陽日酸株式会社製G3グレード)を使用する以外は、実施例1と同様に行った。その結果、処理開始から36時間まではフッ素(F)の濃度は検出下限の1体積ppm未満であり、それ以後は検出され、36時間で除去できた処理対象ガス1中のフッ素(F)の質量は11.0gとなり、実施例1と同様であった。なお、充填筒2の排出管12に接続された湿度計9の湿度は、除去処理中において50〜60%となった。
【実施例10】
【0055】
図2に本例にもちいる実験フローの概略図を示す。実施例1に用いた実験フロー(図1)に対して、加湿器6に充填筒2からの排出ガスの一部を循環させるための分岐を行なわず、別途不活性ガス13が流量調節計5を介して接続されている以外は同様である。該不活性ガス13は、加湿器6で加湿しされ、流量調節計5により所定の流量で充填筒2に供給される。
【0056】
不活性ガス13は窒素ガス(大陽日酸株式会社製Bグレード)を使用した。その他の条件は実施例1と同様である。また、このとき供給される不活性ガス中の水分濃度は7体積%となった。
【0057】
その結果、処理開始から36時間まではフッ素(F)の濃度は検出下限の1体積ppm未満であり、それ以後は検出され、36時間で除去できた処理対象ガス1中のフッ素(F)の質量は11.0gとなり、実施例1と同様であった。なお、充填筒2の排出管12に接続された湿度計9の湿度は、除去処理中において50〜60%となった。
【実施例11】
【0058】
加湿器6の外壁温度はヒータ7で30℃に調節する以外は実施例1と同様に行った。また、このとき供給される不活性ガス中の水分濃度は3体積%となった。
【0059】
その結果、処理開始から33時間まではフッ素(F)の濃度は検出下限の1体積ppm未満であり、それ以後は検出され、33時間で除去できた処理対象ガス1中のフッ素(F)の質量は10gとなった。なお、充填筒2の排出管12に接続された湿度計9の湿度は、除去処理開始直後は50〜60%であったが、除去処理終了直前は40〜50%であった。
【実施例12】
【0060】
加湿器6の外壁温度はヒータ7で20℃に調節する以外は実施例1と同様に行った。また、このとき供給される不活性ガス中の水分濃度は1体積%となった。
【0061】
その結果、処理開始から27時間まではフッ素(F)の濃度は検出下限の1体積ppm未満であり、それ以後は検出され、27時間で除去できた処理対象ガス1中のフッ素(F)の質量は8.2gとなった。なお、充填筒2の排出管12に接続された湿度計9の湿度は、除去処理開始直後は50〜60%であったが、除去処理終了直前は20〜30%であった。
【実施例13】
【0062】
加湿器6の外壁温度はヒータ7で55℃に調節する以外は実施例1と同様に行った。また、このとき供給される不活性ガス中の水分濃度は15体積%となった。
【0063】
その結果、処理開始から30時間まではフッ素(F)の濃度は検出下限の1体積ppm未満であったが、30時間経過後充填筒2入口の圧力が5kPaまで上昇し、ガスの流通が困難となった。30時間で除去できた処理対象ガス1中のフッ素(F)の質量は9.1gとなった。なお、充填筒2の排出管12に接続された湿度計9の湿度は、除去処理開始直後は50〜60%であったが、除去処理終了直前は90〜1000%であった。
【0064】
[比較例1]
充填筒2から排出されたガスを循環ポンプで戻さず除去剤3を加湿しない以外は実施例1と同様に行った。その結果、処理開始から24時間まではフッ素(F)の濃度は検出下限の1体積ppm未満であり、それ以後は検出され、24時間で除去できた処理対象ガス1中のフッ素(F)の質量は7.3gとなり、実施例1に比べ除去できるフッ素(F)は33%減少した。なお、充填筒2の排出管12に接続された湿度計9の湿度は、除去処理開始直後は50〜60%であったが、除去処理終了直前は0〜10%であった。
【0065】
[比較例2]
充填筒2から排出されたガスを循環ポンプで戻さず除去剤3を加湿しない以外は実施例2と同様に行った。その結果、処理開始から9時間まではフッ素(F)の濃度は検出下限の1体積ppm未満であり、それ以後は検出され、9時間で除去できた処理対象ガス1中のフッ素(F)の質量は5.5gとなり、実施例2に比べ除去できるフッ素(F)40%減少した。なお、充填筒2の排出管12に接続された湿度計9の湿度は、除去処理開始直後は50〜60%であったが、除去処理終了直前は0〜10%であった。
【0066】
[比較例3]
充填筒2から排出されたガスを循環ポンプで戻さず除去剤3を加湿しない以外は実施例3と同様に行った。その結果、処理開始から16時間までは三フッ化塩素(ClF)の濃度は検出下限の0.1体積ppm未満であり、それ以後は検出され、16時間で除去できた処理対象ガス1中の三フッ化塩素(ClF)の質量は11.9gとなり、実施例3に比べ除去できる三フッ化塩素(ClF)は27%減少した。なお、充填筒2の排出管12に接続された湿度計9の湿度は、除去処理開始直後は50〜60%であったが、除去処理終了直前は0〜10%であった。
【0067】
[比較例4]
充填筒2から排出されたガスを循環ポンプで戻さず除去剤3を加湿しない以外は実施例4と同様に行った。その結果、処理開始から4時間までは三フッ化塩素(ClF)の濃度は検出下限の0.1体積ppm未満であり、それ以後は検出され、4時間で除去できた処理対象ガス1中の三フッ化塩素(ClF)の質量は5.9gとなり、実施例4に比べ除去できる三フッ化塩素(ClF)は43%減少した。なお、充填筒2の排出管12に接続された湿度計9の湿度は、除去処理開始直後は50〜60%であったが、除去処理終了直前は0〜10%であった。
【0068】
[比較例5]
充填筒2から排出されたガスを循環ポンプで戻さず除去剤3を加湿しない以外は実施例5と同様に行った。その結果、処理開始から32時間までは四フッ化珪素(SiF)の濃度は検出下限の0.2体積ppm未満であり、それ以後は検出され、32時間で除去できた処理対象ガス1中の四フッ化珪素(SiF)の質量は26.7gとなり、実施例5に比べ除去できる四フッ化珪素(SiF)は30%減少した。なお、充填筒2の排出管12に接続された湿度計9の湿度は、除去処理開始直後は50〜60%であったが、除去処理終了直前は0〜10%であった。
【0069】
[比較例6]
充填筒2から排出されたガスを循環ポンプで戻さず除去剤3を加湿しない以外は実施例6と同様に行った。その結果、処理開始から13時間までは四フッ化珪素(SiF)の濃度は検出下限の0.2体積ppm未満であり、それ以後は検出され、13時間で除去できた処理対象ガス1中の四フッ化珪素(SiF)の質量は21.7gとなり、実施例6に比べ除去できる四フッ化珪素(SiF)は43%減少した。なお、充填筒2の排出管12に接続された湿度計9の湿度は、除去処理開始直後は50〜60%であったが、除去処理終了直前は0〜10%であった。
【0070】
[比較例7]
充填筒2から排出されたガスを循環ポンプで戻さず除去剤3を加湿しない以外は実施例7と同様に行った。その結果、処理開始から5時間までは六フッ化タングステン(WF)の濃度は検出下限の0.2体積ppm未満であり、それ以後は検出され、5時間で除去できた処理対象ガス1中の六フッ化タングステン(WF)の質量は12.0gとなり、実施例7に比べ除去できる六フッ化タングステン(WF)は29%減少した。なお、充填筒2の排出管12に接続された湿度計9の湿度は、除去処理開始直後は50〜60%であったが、除去処理終了直前は0〜10%であった。
【0071】
[比較例8]
充填筒2から排出されたガスを循環ポンプで戻さず除去剤3を加湿しない以外は実施例8と同様に行った。その結果、処理開始から2時間までは六フッ化タングステン(WF)の濃度は検出下限の0.2体積ppm未満であり、それ以後は検出され、2時間で除去できた処理対象ガス1中の六フッ化タングステン(WF)の質量は9.58gとなり、実施例8に比べ除去できる六フッ化タングステン(WF)は33%減少した。なお、充填筒2の排出管12に接続された湿度計9の湿度は、除去処理開始直後は50〜60%であったが、除去処理終了直前は0〜10%であった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、半導体製造、液晶製造、又は太陽電池製造工場において、クリーニングやエッチングとして使用されるハロゲンガスや、クリーニングやエッチングによって生成するフッ化物ガスを、除去剤中の水酸化カルシウムと反応させて排出ガスから除去する際に、除去剤の単位質量あたりの処理量を多くできる。
【符号の説明】
【0073】
1 ・・・処理対象ガス(不活性ガス希釈)
2 ・・・ 充填筒
3・・・ 除去剤
4 ・・・ 循環ポンプ
5 ・・・ 流量調節計
6 ・・・ 加湿器
7 ・・・ ヒータ
8 ・・・ PTFEチューブ
9 ・・・ 湿度計
10 ・・・吸引式ガス検知管
11・・・ 赤外線吸光分析計
12・・・排出管
13・・・不活性ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲンガス又はフッ化物ガスを含有する排出ガスを、水酸化カルシウムを主成分とする除去剤に接触させて、ハロゲンガス又はフッ化物ガスを固定して除去する方法において、該除去剤に水分を供給することを特徴とするハロゲンガス又はフッ化物ガスの除去方法。
【請求項2】
水分を含有する不活性ガスを該除去剤に接触させることにより、該除去剤に水分を供給することを特徴とする、請求項1に記載のハロゲンガス又はフッ化物ガスの除去方法。
【請求項3】
2体積%以上10体積%以下の水分を含有する不活性ガスを用いることを特徴とする、請求項2に記載のハロゲンガス又はフッ化物ガスの除去方法。
【請求項4】
該除去剤と接触後の排出ガスの湿度を測定し、該測定値より供給する水分量を決定することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲンガス又はフッ化物ガスの除去方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−106200(P2012−106200A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258094(P2010−258094)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】