説明

障害物検知装置

【課題】壁部材を振動の伝達経路とする障害物検知装置において、周囲温度の変化による壁部材の物性変化を補正して、障害物有無の検知精度を向上する。
【解決手段】樹脂製の壁部材内面に取り付けられ、壁部材を介して超音波を送信する送信手段と、壁部材内面に取り付けられ、壁部材を介して超音波を受信する受信手段を備える障害物検知装置であって、受信手段として送信手段とは異なる位置に取り付けられた第1の受信手段を含み、第1の受信手段の受信信号のうち、超音波送信にともなって生じ、壁部材を伝播される伝播振動による第1の受信信号を検出する伝播検出手段と、第1の受信信号に基づいて、周囲温度により変化する温度情報を検出する温度情報検出手段と、温度情報に応じた閾値を設定する閾値設定手段と、受信手段にて検出された障害物の反射波による第2の受信信号と閾値とを比較し、その結果に基づいて障害物の有無を判定する判定手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害物検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば車両周囲の障害物を検知する障害物検知装置として、特許文献1に示されるように、周囲温度の変化による影響を補正して、高精度に障害物の位置検知を行うようにした装置が提案されている。
【0003】
特許文献1に示される障害物検知装置では、超音波送信手段から送信された超音波のうち、直接波を超音波受信手段が受信した時刻に基づいて、超音波の音速値を算出し、この音速値と反射波の受信時刻から、障害物との距離を算出するようにしている。これによれば、周囲温度の変化による超音波の音速変化を補正して、障害物の位置検知を行うことができる。
【特許文献1】特開2002−131417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
障害物検知装置においては、近年、意匠性の点から、上記した超音波送信手段や超音波受信手段を有する超音波センサが、該超音波センサが取り付けられる壁部材から外部に露出しない構造が求められている。このような超音波センサの取り付け構造では、超音波の送受信時に、壁部材が振動の伝達経路となる。
【0005】
ところで、車両バンパなど樹脂からなる壁部材では、周囲温度によりその物性(ヤング率)が変化する。具体的には、温度が高いほどヤング率が小さくなり、温度が低いほどヤング率が大きくなる。また、次式に示すように、樹脂からなる壁部材の振動(屈曲振動)の速度Cbは、ヤング率Eの1/4乗に比例することが知られている。なお、数式1において、fは使用周波数、tは壁部材の厚さ、ρは壁部材の密度、νは壁部材のポアソン比である。
(数1)Cb=[(πE)/{3ρ(1−ν)}]1/4
このように、周囲温度が変化すると、壁部材を構成する樹脂のヤング率が変化して壁部材の振動が変化することとなる。したがって、特許文献1に示される障害物検知装置に、壁部材を超音波送受信時の振動の伝達経路とする構成を適用したとしても、周囲温度によって壁部材の振動波形が変化してしまうため、周囲温度によらず、障害物の有無を精度よく検知することが困難となる。
【0006】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたもので、壁部材を振動の伝達経路とする障害物検知装置において、周囲温度の変化による壁部材の物性変化を補正して、障害物有無の検知精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、樹脂からなる壁部材内面に取り付けられ、壁部材を振動の伝達経路として壁部材の外側へ超音波を送信する送信手段と、壁部材内面に取り付けられ、壁部材を振動の伝達経路として超音波を受信し、受信信号を出力する少なくとも1つの受信手段と、を備える障害物検知装置であって、受信手段として、壁部材内面における送信手段とは異なる位置に取り付けられた第1の受信手段を含み、第1の受信手段の受信信号のうち、送信手段の超音波送信にともなって生じ、壁部材を伝播される伝播振動による第1の受信信号を検出する伝播検出手段と、第1の受信信号に基づいて、周囲温度により変化する温度情報を検出する温度情報検出手段と、温度情報に応じた所定の閾値を設定する閾値設定手段と、受信手段にて検出された障害物の反射波による第2の受信信号と、設定された閾値とを比較し、その結果に基づいて障害物の有無を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明では、送信手段が壁部材を介して超音波を壁部材の外側へ送信し、受信手段が壁部材を介して障害物による反射波を受信するようになっている。すなわち、壁部材の外側から送信手段及び受信手段が見えないようになっている。これにより、意匠性が向上されている。
【0009】
また、壁部材内面における送信手段とは異なる位置に取り付けられた、受信手段としての第1の受信手段により、送信手段による超音波の送信にともなって生じる壁部材の伝播振動を検出することができる。この伝播振動は、壁部材における送信手段の取り付け部位を中心としてその周囲に伝播されたものである。したがって、伝播振動の受信信号である第1の受信信号には、壁部材を構成する樹脂の物性(ヤング率)、すなわち周囲温度が反映されている。本発明では、伝播検出手段により、第1の受信手段の受信信号のうち、第1の受信信号を検出することができる。
【0010】
また、温度情報検出手段により、周囲温度が反映された第1の受信信号に基づいて、周囲温度により変化する温度情報を検出し、この温度情報に応じて、閾値設定手段により、判定手段での第2の受信信号との比較に用いられる所定の閾値を設定することができる。
【0011】
このように本発明では、第1の受信手段にて周囲温度により変化する壁部材の伝播振動を検出し、伝播検出手段にて伝播振動による第1の受信信号を検出し、温度情報検出手段にて第1の受信信号に基づく温度情報を検出し、閾値設定手段にて温度情報に応じた所定の閾値を設定することができる。すなわち、障害物有無の判定に用いる閾値を、周囲の温度に応じて適宜設定することができる。したがって、壁部材を振動の伝達経路とする障害物検知装置でありながら、周囲温度の変化による壁部材の物性変化を補正して、障害物の有無を精度よく検知することができる。
【0012】
請求項1に記載の発明においては、例えば請求項2に記載のように、閾値設定手段が、温度情報とこの温度情報に対応付けられた閾値との対応表が記憶された記憶手段を備える構成としても良い。これによれば、閾値設定手段が、記憶手段に記憶された対応表により、温度情報に応じた所定の閾値を設定することができる。
【0013】
次に、請求項3に記載の発明は、樹脂からなる壁部材内面に取り付けられ、壁部材を振動の伝達経路として壁部材の外側へ超音波を送信する送信手段と、壁部材内面に取り付けられ、壁部材を振動の伝達経路として超音波を受信し、受信信号を出力する少なくとも1つの受信手段と、を備える障害物検知装置であって、受信手段として、壁部材内面における送信手段とは異なる位置に取り付けられた第1の受信手段を含み、第1の受信手段の受信信号のうち、送信手段の超音波送信にともなって生じ、壁部材を伝播される伝播振動による第1の受信信号を検出する伝播検出手段と、第1の受信信号に基づいて、周囲温度により変化する温度情報を検出する温度情報検出手段と、受信手段にて検出された、障害物の反射波による第2の受信信号を増幅する増幅手段と、増幅手段の利得を温度情報に応じて設定する利得設定手段と、増幅手段にて増幅された第2の受信信号と所定の閾値とを比較し、その結果に基づいて障害物の有無を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明でも、請求項1に記載の発明同様、壁部材が、超音波を送信又は受信する際の振動の伝達経路となっており、これにより意匠性が向上されている。また、壁部材内面における送信手段とは異なる位置に取り付けられた、受信手段としての第1の受信手段により、送信手段による超音波の送信にともなって生じる壁部材の伝播振動を検出することができる。さらに、伝播検出手段により、第1の受信手段の受信信号のうちの第1の受信信号を検出し、温度情報検出手段により、周囲温度が反映された第1の受信信号に基づいて、周囲温度により変化する温度情報を検出することができる。
【0015】
そして、本発明では、利得設定手段により、温度情報検出手段にて検出された温度情報に応じて、第2の受信信号を増幅する増幅手段の利得(ゲイン)を設定することができる。このように本発明では、第1の受信手段にて周囲温度により変化する壁部材の伝播振動を検出し、伝播検出手段にて伝播振動による第1の受信信号を検出し、温度情報検出手段にて第1の受信信号に基づく温度情報を検出し、利得設定手段にて温度情報に応じた所定の利得を設定することができる。すなわち、障害物有無の判定に用いる第2の受信信号の増幅度合いを、周囲の温度に応じて適宜設定することができる。したがって、壁部材を振動の伝達経路とする障害物検知装置でありながら、周囲温度の変化による壁部材の物性変化を補正して、障害物の有無を精度よく検知することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明においては、例えば請求項4に記載のように、利得設定手段が、温度情報とこの温度情報に対応付けられた利得との対応表が記憶された記憶手段を備える構成としても良い。これによれば、利得設定手段が、記憶手段に記憶された対応表により、温度情報に応じた所定の利得を設定することができる。
【0017】
次に、請求項5に記載の発明は、樹脂からなる壁部材内面に取り付けられ、壁部材を振動の伝達経路として壁部材の外側へ超音波を送信する送信手段と、壁部材内面に取り付けられ、壁部材を振動の伝達経路として超音波を受信し、受信信号を出力する少なくとも1つの受信手段と、を備える障害物検知装置であって、受信手段として、壁部材内面における送信手段とは異なる位置に取り付けられた第1の受信手段を含み、第1の受信手段の受信信号のうち、送信手段の超音波送信にともなって生じ、壁部材を伝播される伝播振動による第1の受信信号を検出する伝播検出手段と、送信手段により超音波を送信するための駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、駆動信号の電圧、パルス数、及び周波数の少なくとも1つを、温度情報に応じて設定する駆動信号設定手段と、受信手段にて検出された、障害物の反射波による第2の受信信号をと所定の閾値とを比較し、その結果に基づいて障害物の有無を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明でも、請求項1に記載の発明同様、壁部材が、超音波を送信又は受信する際の振動の伝達経路となっており、これにより意匠性が向上されている。また、壁部材内面における送信手段とは異なる位置に取り付けられた、受信手段としての第1の受信手段により、送信手段による超音波の送信にともなって生じる壁部材の伝播振動を検出することができる。さらに、伝播検出手段により、第1の受信手段の受信信号のうちの第1の受信信号を検出し、温度情報検出手段により、周囲温度が反映された第1の受信信号に基づいて、周囲温度により変化する温度情報を検出することができる。
【0019】
そして、本発明では、駆動信号設定手段により、温度情報検出手段にて検出された温度情報に応じて、超音波を送信すべく送信手段を駆動させるための駆動信号の電圧、パルス数、及び周波数の少なくとも1つを設定することができる。このように本発明では、第1の受信手段にて周囲温度により変化する壁部材の伝播振動を検出し、伝播検出手段にて伝播振動による第1の受信信号を検出し、温度情報検出手段にて第1の受信信号に基づく温度情報を検出し、駆動信号接地手段にて温度情報に応じた所定の駆動信号の電圧、所定のパルス数、及び所定の周波数の少なくとも1つを設定することができる。すなわち、障害物有無の判定に用いる反射波の大元である超音波(送信波)を、周囲の温度に応じて適宜設定することができる。したがって、壁部材を振動の伝達経路とする障害物検知装置でありながら、周囲温度の変化による壁部材の物性変化を補正して、障害物の有無を精度よく検知することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明においては、例えば請求項6に記載のように、駆動信号設定手段が、温度情報とこの温度情報に対応付けられた駆動信号の電圧、パルス数、及び周波数の少なくとも1つとの対応表が記憶された記憶手段を備える構成としても良い。これによれば、駆動信号設定手段が、記憶手段に記憶された対応表により、温度情報に応じた所定の駆動情報(駆動信号の電圧、パルス数、及び周波数の少なくとも1つ)を設定することができる。
【0021】
なお、請求項1〜6いずれかに記載の発明においては、例えば請求項7に記載のように、伝播検出手段が、第1の受信手段による受信信号の振幅及び到達時間の少なくとも一方に基づいて第1の受信信号を検出する構成とすれば良い。
【0022】
第1の受信手段による伝播振動と反射波の検出タイミングが異なる場合には、到達時間に基づいて、伝播振動による第1の受信信号を検出することができる。また、反射波の検出と伝播振動の検出の少なくとも一部が重なっても、伝播振動と反射波とでは第1の受信手段が受けるエネルギーが異なるので、振幅に基づいて、第1の受信信号を検出することができる。
【0023】
請求項1〜7いずれかに記載の発明においては、温度情報検出手段が、温度情報として、請求項8に記載のように第1の受信信号の振幅を検出しても良いし、請求項9に記載のように、第1の受信信号の到達時間を検出しても良い。また、請求項10に記載のように、送信手段に印加される駆動信号を基準とした第1の受信信号の位相差を検出しても良い。振幅(信号の強度)、到達時間、位相差のいずれも、周囲温度変化による壁部材のヤング率変化の影響を受けて変化するため、これらを温度情報とすることで、周囲温度の変化による壁部材の物性変化を補正して、障害物の有無を精度よく検知することができる。
【0024】
なお、請求項1〜10いずれかに記載の発明は、請求項11に記載のように、壁部材が車両のバンパである構成に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る障害物検知装置の概略構成を示すブロック図である。図2は、図1に示した障害物検知装置のうち、超音波センサのバンパへの取り付け構造の概略を示す内面視平面図である。図3は、図2に示すIII−III線に沿う断面図である。図3においては、便宜上、超音波センサを簡略化して図示している。図4は、送信素子による受信信号のタイミングチャートである。図5は、送信素子の超音波送信と受信素子の伝播振動受信のタイミングチャートである。図6は、送信素子の反射信号と閾値電圧との関係を示す図である。なお、本実施形態では、障害物検知装置として、車両のバンパに超音波センサが取り付けられてなる車両用障害物検知装置の例を示す。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係る障害物検知装置1は、センシング部として2つの超音波センサ11,12を有しており、超音波センサ11は送信手段としての送信用素子21を、超音波センサ12は第1の受信手段としての受信用素子22を有している。これら素子21,22としては、例えばPZTやチタン酸バリウムなどの圧電セラミックスを焼結体とした圧電素子を採用することができる。
【0027】
図2及び図3に示すように、超音波センサ11,12は、例えばポリプロピレンからなる樹脂製のバンパ50の内面51に、互いに離間して取り付けられている。これにより、超音波(送信波)の送信時においては、送信用素子21の駆動振動がバンパ50に伝達され、バンパ50の振動が送信波として車両外部に送信されるようになっている。また、障害物70により反射された送信波の反射波の受信時においては、反射波によりバンパ50が振動し、この振動が受信用素子22に伝達され、振動が電気信号に変換されるようになっている。すなわち、バンパ50が振動板としての機能を果たすようになっている。さらには、超音波(送信波)の送信時において、バンパ50の振動が、超音波センサ11の取り付け部位から周囲に伝播され、この伝播振動が受信用素子22に到達し、電気信号に変換されるようになっている。
【0028】
なお、超音波センサ11,12の位置関係としては、互いに離間しながらも近い位置関係、具体的には2つの超音波センサ11,12が、ともに車両前方部分、車両後方部分、同じコーナー部分のいずれかに設けられた構成とすることが好ましい。本実施形態では、2つの超音波センサ11,12が、両リアコーナー間の車両後方の部分に、地面に対する水平方向に沿って配置されている。また、本実施形態では、バンパ50の内面51における各超音波センサ11,12の取り付け部位が、該部位に隣接する環状の溝部52によって取り囲まれ、各超音波センサ11,12の取り付け部位の外周形状が、水平方向よりも垂直方向に長い平面略矩形状となっている。これにより、超音波の指向性が、垂直方向に狭く、水平方向に広いものとなっている。
【0029】
また、障害物検知装置1は、回路部として図1に示すように、駆動信号生成手段としての駆動信号生成部31、伝播検出手段としての受信信号判定部32、温度情報検出手段としての温度情報検出部33、閾値設定手段としての閾値設定部34及びメモリ35、反射信号を増幅する増幅部36、判定手段としての比較部37及び判定部38を有している。
【0030】
駆動信号生成部31は、図示しない駆動信号生成指示部からの指示信号を受けて、予め電圧、周波数、パルス数が設定された駆動信号を生成し、駆動信号を送信用素子21に印加して送信用素子21を駆動振動させる。この駆動信号生成部31は、送信用素子21とともに超音波センサ11に含まれても良いし、超音波センサ11とは別に配置されても良い。
【0031】
受信信号判定部32は、駆動信号の印加開始(超音波の送信時)から信号検出開始までの時間である到達時間、及び、検出された信号の振幅(換言すれば、ピーク値、出力電圧)の少なくとも一方に基づいて、受信用素子22の受信信号のうち、上記した伝播振動による第1の受信信号としての伝播信号を検出する。また、本実施形態では、受信用素子22の受信信号のうち、反射波による第2の受信信号である反射信号も検出する。すなわち、受信用素子22の受信信号から、伝播信号と反射信号を判定する。
【0032】
ここで、図3に示すように、伝播振動の伝播距離、すなわち送信用素子21を含む超音波センサ11と受信用素子22を含む超音波センサ12との間の間隔と、超音波センサ11から障害物70までの距離と障害物70から超音波センサ12までの距離の和、すなわち送信波と反射波との超音波の伝播距離とでは、伝播振動の伝播距離のほうが短い。
【0033】
また、バンパ50を伝播する伝播振動(屈曲振動)の速度Cbと、空気中の音速Cはそれぞれ次式で示される通りである。なお、数式2において、fは使用周波数、tはバンパ50の厚さ、Eはバンパ50のヤング率、ρはバンパ50の密度、νはバンパ50のポアソン比であり、数式3において、Tは周囲温度である。
(数2)Cb=[(πE)/{3ρ(1−ν)}]1/4
(数3)C=331.5+0.61×T
数式2に示すように、バンパ50の伝播振動の速度Cbは、バンパ50を構成する樹脂のヤング率Eの1/4乗に比例しており、ヤング率Eは温度が高いほど小さく、温度が低いほど大きくなるので、速度Cbも、温度が高いほど遅く、温度が低いほど速くなる。また、数式3に示すように、音速Cは、温度が高くなるほど速く、温度が低くなるほど遅くなる。
【0034】
さらに、伝播振動は、超音波を送信する際の、送信用素子21の駆動振動がバンパ50に伝達されて、超音波センサ11の取り付け部位から周囲に伝播されたものであり、超音波波は、送信用素子21の駆動振動がバンパ50に伝達されて、それにより車両外部の空気に密度変化が生じたものである。そして、伝播振動の、バンパ50を伝播することによるエネルギーの減衰と、超音波(送信波及び反射波)の、空気中を伝播することによるエネルギーの減衰とでは、伝播振動のほうがエネルギーの減衰量が少ない。すなわち、伝播振動と反射波とでは、伝播振動のほうが、受信用素子22が受けるエネルギーが大きい。
【0035】
したがって、受信信号判定部32は、受信用素子22による伝播振動と反射波の検出タイミングが異なる場合に、上記した到達時間にて、伝播振動による伝播信号と反射波による反射信号をそれぞれ検出することができる。また、反射波と伝播振動の少なくとも一部が重なった場合には、信号の振幅によって、伝播振動による伝播信号と反射波による反射信号をそれぞれ検出することができる。
【0036】
本実施形態に示すように、ポリプロピレンからなるバンパ50では、車両の想定使用温度範囲全域(例えば−30℃〜80℃)において、空気中の音速Cよりもバンパ50の屈曲振動速度Cbのほうが速い。このことは、本発明者によっても確認されている。これにより、受信用素子22の受信信号は、図4に示すように、反射信号よりも伝播信号のほうが必ず先となり、両信号が重なることはない。したがって、伝播信号及び反射信号をそれぞれ容易に検出することができる。本実施形態では、到達時間にて、伝播信号及び反射信号をそれぞれ検出するようにしている。なお、汎用樹脂の中でヤング率が小さい(ポリプロピレンよりもヤング率の小さい)ポリエチレンでは、80℃において屈曲振動速度Cbと空気中の音速Cがほぼ同じとなる。しかしながら、例えば、真夏の炎天下、気温(空気の温度)は最高でも40℃程度であるのに対し、バンパ50の温度は気温よりも高い温度まで上昇する。したがって、仮に汎用樹脂の中でヤング率が小さいポリエチレンを適用したとしても、車両の想定使用温度範囲全域(例えば−30℃〜80℃)において、空気中の音速Cよりもバンパ50の屈曲振動速度Cbのほうが実質的に速いため、反射信号と伝播信号が重なることはない。
【0037】
温度情報検出部33は、受信信号判定部32にて検出(判定)された伝播信号に基づいて、周囲温度により変化する、すなわちバンパ50を伝達されることで変化する温度情報を検出する。温度情報としては、例えば伝播信号の振幅(換言すれば、ピーク値、出力電圧)、駆動信号の印加開始(超音波の送信時)を基準とした伝播振動の到達時間、駆動信号の例えば印加開始を基準とした伝播信号の位相差、のいずれかを検出する。
【0038】
ここで、伝播振動は、樹脂からなるバンパ50を伝播するため、その振動が、周囲温度によって変化するバンパ50の樹脂の物性(ヤング率)の影響を受ける。伝播信号の振幅、到達時間、位相差は、いずれもバンパ50のヤング率に応じて変化するため、これらを温度情報とすると、周囲温度の変化によるバンパ50の物性変化を補正して、障害物70の有無を精度よく検知することができる。
【0039】
なお、本実施形態では、到達時間を温度情報としている。数式2に示したように、バンパ50を伝播する屈曲振動の速度Cbは、バンパ50を構成する樹脂のヤング率Eの1/4乗に比例し、温度が高いほど遅く、温度が低いほど速くなる。したがって、周囲温度が変化すると、図5に示すように、それに伴って、伝播振動の到達時間が変化する。なお、図5においては、周囲温度T1,T2,T3の関係がT1<T2<T3となっており、この温度関係に応じて到達時間t1,t2,t3の関係がt1<t2<t3となっている。すなわち、周囲温度が高いほど、到達時間が長くなっている。
【0040】
閾値設定部34は、増幅部36にて増幅された反射信号との比較に用いられる閾値を設定する部位である。この閾値設定部34は、温度情報検出部33にて検出された温度情報に応じた所定の閾値を設定する。本実施形態では、メモリ35に、温度情報としての到達時間と、到達時間ごとに対応付けられた閾値との対応表が予め記憶されている。そして、温度情報検出部33から到達時間信号が入力されると、閾値設定部34はメモリ35から該到達時間に対応する閾値を読み出し、この閾値を比較部37の閾値として設定する。
【0041】
したがって、判定手段としての比較部37は所謂コンパレータであり、閾値設定部34により設定された閾値と、増幅部36にて増幅された反射信号とを比較して、2値化信号を出力する。例えば増幅された反射信号の電圧が閾値電圧以上の場合には「1」、増幅された反射信号の電圧が閾値電圧よりも小さい場合には「0」を出力する。
【0042】
ここで、上記したように、超音波(送信波)の送信時においては、送信用素子21の駆動振動がバンパ50に伝達され、バンパ50の振動が送信波として車両外部に送信される。また、障害物70により反射された送信波の反射波の受信時においては、反射波によりバンパ50が振動し、この振動が受信用素子22に伝達され、振動が電気信号に変換される。すなわち、障害物70の検出に際しても、送信時と受信時においてバンパ50を振動の伝達経路とするため、反射信号が、周囲温度によって変化するバンパ50の樹脂の物性(ヤング率)の影響を受ける。例えば図6の上段に示すように、周囲温度T1にて、反射信号が閾値電圧V1以上であるとする。この場合2値化信号として「1」が出力される。例えば周囲温度がT1からT1よりも高いT2に変化すると、ヤング率Eが小さくなって樹脂が柔らかい状態となるため、図6の中段に示すように、反射信号の信号レベルが低下し、閾値電圧V1よりも小さくなってしまう。この場合2値化信号として「0」が出力される。これに対し、本実施形態では、到達時間、すなわち周囲温度に応じて閾値が適宜設定される。したがって、周囲温度がT2となると、閾値電圧としてV1よりも低いV2が新たに設定されるため、反射信号の信号レベルが低下しても、反射信号が閾値電圧V2以上となり、2値化信号として「1」が出力されることとなる。
【0043】
そして、比較部37とともに判定手段を構成する判定部38では、比較部37から出力された2値化信号に基づいて、障害物70の有無を判定する。具体的には、2値化信号が「1」の場合には障害物有り、2値化信号が「0」の場合には障害物なしと判定する。このようにして、障害物70の有無が判定される。そして、判定部38は、その判定結果を、図示しない表示装置などの報知部や各種アクチュエータに出力する。
【0044】
このように本実施形態に係る障害物検知装置1では、バンパ50の内面51における送信用素子21(超音波センサ11)とは異なる位置に取り付けられた受信用素子22(超音波センサ12)により、送信用素子21による超音波の送信にともなって生じ、周囲温度に応じて振動が変化するバンパ50の伝播振動を検出することができる。また、受信信号判定部32にて、受信用素子22の受信信号のうち、伝播信号と反射信号とをそれぞれ検出することができる。また、周囲温度が反映された伝播信号に基づいて、温度情報検出部33にて、周囲温度により変化する温度情報(到達時間)を検出することができる。また、この温度情報に応じて、閾値設定部34及びメモリ35により、比較部37にて増幅された反射信号との比較に用いられる閾値を設定することができる。すなわち、障害物有無の判定に用いる閾値を、周囲の温度に応じて適宜設定することができる。したがって、周囲温度に応じて物性が変化する樹脂製のバンパ50を振動の伝達経路とする障害物検知装置1でありながら、周囲温度の変化によるバンパ50の物性変化を補正して、障害物70の有無を精度よく検知することができる。
【0045】
また、本実施形態では、送信用素子21を含む超音波センサ11が、バンパ50を介して超音波を車両外部へ送信し、受信用素子22を含む超音波センサ12がバンパ50を介して障害物70による反射波を受信するようになっている。すなわち、車両外部から超音波センサ11,12が見えないようになっている。これにより、意匠性が向上されている。
【0046】
なお、本実施形態では、メモリ35に、温度情報とこの温度情報に対応付けられた閾値との対応表が記憶される例を示した。しかしながら、例えば経験的に得られた演算式がメモリ35に記憶され、閾値設定部34は、入力された温度情報と演算式から所定の閾値を算出し、比較部37に設定するようにしても良い。
【0047】
また、本実施形態では、受信用素子22の検出信号から、伝播信号だけでなく、反射信号も得る例を示した。しかしながら、受信用素子22を伝播振動用の受信素子とし、該素子22とは別に受信手段としての受信用素子を備える構成としても良い。
【0048】
例えば図7に示す例では、センサ部として、送受信兼用素子23を含む超音波センサ11と、受信用素子22を含む超音波センサ12を有している。そして、受信信号判定部32にて、受信用素子22の検出信号のうち、伝播信号のみを検出するようになっている。また、送受信兼用素子23にて、車両外部に超音波を送信するととともに、障害物70による反射波も検出するようになっている。この送受信兼用素子23は、1つの素子が送信手段と受信手段を兼ねているため、伝播振動を検出しない。したがって、受信用素子22のような受信信号判定部32を必要とせず、送受信兼用素子23の受信信号が反射信号として増幅部36にて増幅されるようになっている。
【0049】
また、図8に示す例では、図7に示した送受信兼用素子23が、送信用素子21と受信用素子24とに分かれた構成となっている。すなわち、センサ部として、送信用素子21を含む超音波センサ11、受信用素子22を含む超音波センサ12、受信用素子24を含む超音波センサ13を有している。そして、受信信号判定部32にて、受信用素子22の検出信号のうち、伝播信号のみを検出するようになっている。また、受信用素子24の検出信号のうち、受信信号判定部39にて、反射信号のみを検出するようになっている。この受信信号判定部39は、基本構成が受信信号判定部32と同じであり、到達時間や振幅により、反射信号のみを検出する。そして、検出された反射信号が増幅部36にて増幅されるようになっている。なお、図7及び図8は、変形例を示すブロック図である。
【0050】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図9に基づいて説明する。図9は、本実施形態に係る障害物検知装置の概略構成を示すブロック図である。
【0051】
第2実施形態に係る障害物検知装置は、第1実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。なお、第1実施形態に示した要素と同一の要素には、同一の符号を付与するものとする。
【0052】
第1実施形態では、温度情報検出部33にて検出された温度情報に基づいて、比較部37の閾値が適宜設定される例を示した。これに対し、本実施形態では、例えば図9に示すように、温度情報検出部33にて検出された温度情報に基づいて、増幅部36の利得(ゲイン)が適宜設定される点を特徴とする。
【0053】
上記したように、障害物70の検出に際しても、送信時と受信時においてバンパ50を振動の伝達経路とするため、反射信号の振幅は、周囲温度によって変化するバンパ50の樹脂の物性(ヤング率)の影響を受けて変化する。本実施形態では、この反射信号の振幅、すなわち周囲温度に応じて増幅部36の利得が設定されるようになっている。なお、それ以外の点は、第1実施形態に示した構成と同じである。
【0054】
図9に示す例でも、障害物検知装置1は、センサ部として送信用素子21を含む超音波センサ11と受信用素子22を含む超音波センサ12を有している。そして、受信信号判定部32にて、受信用素子22の受信信号のうち、伝播信号と受信信号がそれぞれ検出されるようになっている。また、温度情報検出部33が、伝播信号に基づき、伝播信号の振幅、到達時間、位相差など周囲温度により変化する温度情報を検出する。そして、本実施形態では、利得設定手段としての利得設定部40が、温度情報に応じた所定の利得を増幅部36に設定する。本実施形態では、メモリ35に、温度情報としての到達時間と、到達時間ごとに対応付けられた利得との対応表が予め記憶されている。温度情報検出部33から到達時間信号が入力されると、利得設定部40はメモリ35から該到達時間に対応する利得を読み出し、この利得を増幅部36の利得として設定するようになっている。そして、所定の利得が設定された増幅部36にて反射信号が増幅され、比較部37にて閾値と比較された後、その比較結果に基づいて判定部38にて障害物70の有無が判定されるようになっている。
【0055】
このように本実施形態に係る障害物検知装置1でも、バンパ50の内面51における送信用素子21(超音波センサ11)とは異なる位置に取り付けられた受信用素子22(超音波センサ12)により、送信用素子21による超音波の送信にともなって生じ、周囲温度に応じて振動が変化するバンパ50の伝播振動を検出することができる。また、受信信号判定部32にて、受信用素子22の受信信号のうち、伝播信号と反射信号とをそれぞれ検出することができる。また、周囲温度が反映された伝播信号に基づいて、温度情報検出部33にて、周囲温度により変化する温度情報(到達時間)を検出することができる。そして、この温度情報に応じて、利得設定部40及びメモリ35により、増幅部36の利得を適宜設定することができる。したがって、周囲温度に応じて物性が変化する樹脂製のバンパ50を振動の伝達経路とする障害物検知装置1でありながら、周囲温度の変化によるバンパ50の物性変化を補正して、障害物70の有無を精度よく検知することができる。
【0056】
また、本実施形態でも、送信用素子21を含む超音波センサ11が、バンパ50を介して超音波を車両外部へ送信し、受信用素子22を含む超音波センサ12がバンパ50を介して障害物70による反射波を受信するようになっている。これにより、意匠性が向上されている。
【0057】
また、本実施形態でも、メモリ35に、温度情報とこの温度情報に対応付けられた利得との対応表が記憶される例を示した。しかしながら、例えば経験的に得られた演算式がメモリ35に記憶され、利得設定部40は、入力された温度情報と演算式から所定の利得を算出し、増幅部36に設定するようにしても良い。
【0058】
また、本実施形態でも、障害物検知装置1が、センサ部として、送信用素子21を含む超音波センサ11と受信用素子22を含む超音波センサ12を有する例を示した。しかしながら、第1実施形態にて示した変形例(図7及び図8参照)についても、本実施形態に示した特徴部分を適用することができる。
【0059】
(第3実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図10に基づいて説明する。図10は、本実施形態に係る障害物検知装置の概略構成を示すブロック図である。
【0060】
第3実施形態に係る障害物検知装置は、第1実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。なお、上記各実施形態に示した要素と同一の要素には、同一の符号を付与するものとする。
【0061】
第1実施形態では、温度情報検出部33にて検出された温度情報に基づいて、比較部37の閾値が適宜設定される例を示した。また、第2実施形態では、温度情報検出部33にて検出された温度情報に基づいて、増幅部36の利得(ゲイン)が適宜設定される例を示した。すなわち、反射波の受信後において補正を行う例を示した。これに対し、本実施形態では、例えば図10に示すように、温度情報検出部33にて検出された温度情報に基づいて、駆動信号が適宜設定される点を特徴とする。すなわち、送信波の送信前において補正を行う点を特徴とする。
【0062】
図10に示す例でも、障害物検知装置1は、センサ部として送信用素子21を含む超音波センサ11と受信用素子22を含む超音波センサ12を有している。そして、受信信号判定部32にて、受信用素子22の受信信号のうち、伝播信号と受信信号がそれぞれ検出されるようになっている。また、温度情報検出部33が、伝播信号に基づき、伝播信号の振幅、到達時間、位相差など周囲温度により変化する温度情報を検出する。そして、本実施形態では、駆動信号設定手段としての駆動信号設定部41が、温度情報に応じて、駆動信号の電圧、パルス数、及び周波数の少なくとも1つを所定の値に設定する。本実施形態では、メモリ35に、温度情報としての到達時間と、到達時間ごとに対応付けられた駆動信号の電圧との対応表が予め記憶されている。温度情報検出部33から到達時間信号が入力されると、駆動信号設定部41はメモリ35から該到達時間に対応する駆動信号の電圧を読み出し、この電圧を駆動信号生成部31にて生成する駆動信号の電圧として設定する。駆動信号生成部31は、設定された電圧の駆動信号を生成し、この信号が印加された送信用素子21が駆動振動して、車両外部にバンパ50を介して超音波を送信する。そして、障害物70による反射波を受信用素子22がバンパ50を介して受信し、受信信号判定部32にて検出された反射信号が増幅部36にて増幅され、比較部37にて閾値と比較された後、その比較結果に基づいて判定部38にて障害物70の有無が判定されるようになっている。
【0063】
このように本実施形態に係る障害物検知装置1でも、バンパ50の内面51における送信用素子21(超音波センサ11)とは異なる位置に取り付けられた受信用素子22(超音波センサ12)により、送信用素子21による超音波の送信にともなって生じ、周囲温度に応じて振動が変化するバンパ50の伝播振動を検出することができる。また、受信信号判定部32にて、受信用素子22の受信信号のうち、伝播信号と反射信号とをそれぞれ検出することができる。また、周囲温度が反映された伝播信号に基づいて、温度情報検出部33にて、周囲温度により変化する温度情報(到達時間)を検出することができる。そして、この温度情報に応じて、駆動信号設定部41及びメモリ35により、駆動信号の設定を調整することができる。したがって、周囲温度に応じて物性が変化する樹脂製のバンパ50を振動の伝達経路とする障害物検知装置1でありながら、周囲温度の変化によるバンパ50の物性変化を補正して、障害物70の有無を精度よく検知することができる。
【0064】
また、本実施形態でも、送信用素子21を含む超音波センサ11が、バンパ50を介して超音波を車両外部へ送信し、受信用素子22を含む超音波センサ12がバンパ50を介して障害物70による反射波を受信するようになっている。これにより、意匠性が向上されている。
【0065】
また、本実施形態でも、メモリ35に、温度情報とこの温度情報に対応付けられた駆動信号の電圧との対応表が記憶される例を示した。しかしながら、例えば経験的に得られた演算式がメモリ35に記憶され、駆動信号設定部41は、入力された温度情報と演算式から所定の電圧を算出し、この電圧を駆動信号の電圧として駆動信号生成部31に設定するようにしても良い。
【0066】
また、本実施形態でも、障害物検知装置1が、センサ部として、送信用素子21を含む超音波センサ11と受信用素子22を含む超音波センサ12を有する例を示した。しかしながら、第1実施形態にて示した変形例(図7及び図8参照)についても、本実施形態に示した特徴部分を適用することができる。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0068】
本実施形態では、バンパ50の内面51に溝部52が設けられる例を示した。しかしながら、溝部52のない構成としても良い。また、溝部52の形状も上記例に限定されるものではない。例えば円環状や楕円環状としても良い。
【0069】
車両における樹脂製の壁部材としてバンパ50の例を示した。しかしながら、例えばバンパ50のコーナー部に設けられた樹脂製のモールなど、バンパ50以外の樹脂製の部材を壁部材として採用することもできる。また、車両に限定されるものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1実施形態に係る障害物検知装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した障害物検知装置のうち、超音波センサのバンパへの取り付け構造の概略を示す内面視平面図である。
【図3】図2に示すIII−III線に沿う断面図である。
【図4】送信素子による受信信号のタイミングチャートである。
【図5】送信素子の超音波送信と受信素子の伝播振動受信のタイミングチャートである。
【図6】送信素子の反射信号と閾値電圧との関係を示す図である。
【図7】変形例を示すブロック図である。
【図8】変形例を示すブロック図である。
【図9】第2実施形態に係る障害物検知装置の概略構成を示すブロック図である。
【図10】第3実施形態に係る障害物検知装置の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0071】
1・・・障害物検知装置
11,12・・・超音波センサ
21・・・送信用素子
22・・・受信用素子
32・・・受信信号判定部
33・・・温度情報検出部
34・・・閾値設定部
35・・・メモリ
37・・・比較部
38・・・判定部
50・・・バンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂からなる壁部材内面に取り付けられ、前記壁部材を振動の伝達経路として前記壁部材の外側へ超音波を送信する送信手段と、
前記壁部材内面に取り付けられ、前記壁部材を振動の伝達経路として超音波を受信し、受信信号を出力する少なくとも1つの受信手段と、を備える障害物検知装置であって、
前記受信手段として、前記壁部材内面における前記送信手段とは異なる位置に取り付けられた第1の受信手段を含み、
前記第1の受信手段の受信信号のうち、前記送信手段の超音波送信にともなって生じ、前記壁部材を伝播される伝播振動による第1の受信信号を検出する伝播検出手段と、
前記第1の受信信号に基づいて、周囲温度により変化する温度情報を検出する温度情報検出手段と、
前記温度情報に応じた所定の閾値を設定する閾値設定手段と、
前記受信手段にて検出された障害物の反射波による第2の受信信号と、設定された前記閾値とを比較し、その結果に基づいて障害物の有無を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする障害物検知装置。
【請求項2】
前記閾値設定手段は、前記温度情報とこの温度情報に対応付けられた閾値との対応表が記憶された記憶手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の障害物検知装置。
【請求項3】
樹脂からなる壁部材内面に取り付けられ、前記壁部材を振動の伝達経路として前記壁部材の外側へ超音波を送信する送信手段と、
前記壁部材内面に取り付けられ、前記壁部材を振動の伝達経路として超音波を受信し、受信信号を出力する少なくとも1つの受信手段と、を備える障害物検知装置であって、
前記受信手段として、前記壁部材内面における前記送信手段とは異なる位置に取り付けられた第1の受信手段を含み、
前記第1の受信手段の受信信号のうち、前記送信手段の超音波送信にともなって生じ、前記壁部材を伝播される伝播振動による第1の受信信号を検出する伝播検出手段と、
前記第1の受信信号に基づいて、周囲温度により変化する温度情報を検出する温度情報検出手段と、
前記受信手段にて検出された、障害物の反射波による第2の受信信号を増幅する増幅手段と、
前記増幅手段の利得を、前記温度情報に応じて設定する利得設定手段と、
前記増幅手段にて増幅された前記第2の受信信号と所定の閾値とを比較し、その結果に基づいて障害物の有無を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする障害物検知装置。
【請求項4】
前記利得設定手段は、前記温度情報とこの温度情報に対応付けられた利得との対応表が記憶された記憶手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の障害物検知装置。
【請求項5】
樹脂からなる壁部材内面に取り付けられ、前記壁部材を振動の伝達経路として前記壁部材の外側へ超音波を送信する送信手段と、
前記壁部材内面に取り付けられ、前記壁部材を振動の伝達経路として超音波を受信し、受信信号を出力する少なくとも1つの受信手段と、を備える障害物検知装置であって、
前記受信手段として、前記壁部材内面における前記送信手段とは異なる位置に取り付けられた第1の受信手段を含み、
前記第1の受信手段の受信信号のうち、前記送信手段の超音波送信にともなって生じ、前記壁部材を伝播される伝播振動による第1の受信信号を検出する伝播検出手段と、
前記第1の受信信号に基づいて、周囲温度により変化する温度情報を検出する温度情報検出手段と、
前記送信手段により超音波を送信するための駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、
前記駆動信号の電圧、パルス数、及び周波数の少なくとも1つを、前記温度情報に応じて設定する駆動信号設定手段と、
前記受信手段にて検出された障害物の反射波による第2の受信信号と、所定の閾値とを比較し、その結果に基づいて障害物の有無を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする障害物検知装置。
【請求項6】
前記駆動信号設定手段は、前記温度情報とこの温度情報に対応付けられた前記駆動信号の電圧、パルス数、及び周波数の少なくとも1つとの対応表が記憶された記憶手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の障害物検知装置。
【請求項7】
前記伝播検出手段は、前記第1の受信手段による受信信号の振幅及び到達時間の少なくとも一方に基づいて、前記第1の受信信号を検出することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の障害物検知装置。
【請求項8】
前記温度情報検出手段は、前記温度情報として、前記第1の受信信号の振幅を検出することを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の障害物検知装置。
【請求項9】
前記温度情報検出手段は、前記温度情報として、前記第1の受信信号の到達時間を検出することを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の障害物検知装置。
【請求項10】
前記温度情報検出手段は、前記温度情報として、前記送信手段に印加される駆動信号を基準とした前記第1の受信信号の位相差を検出することを特徴とすることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の障害物検知装置。
【請求項11】
前記壁部材は、車両のバンパであることを特徴とする請求項1〜10いずれか1項に記載の障害物検知装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−14497(P2010−14497A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173791(P2008−173791)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】