説明

集積化プローブカードの修復方法及び修復装置

【課題】不良プローブが発生した場合、プローブ単位での修復を可能とし、トータルコストを安価にすることができる集積化プローブカードの修復技術を提供する。
【解決手段】この出願の発明は、半導体集積回路に接続するプローブを複数本基板上に備え、半導体集積回路の動作を検査する集積化プローブカードの修復するための方法であり、中央に尖った先端が突出した高融点材製の導電性放電プローブが取り付けられるとともにその周囲に配置された作動ガスの吹き付け手段を持つトーチ型電極を用い、放電により不良プローブを溶切断して撤去し、撤去した不良プローブの溶切断位置において交換用プローブの少なくとも一部を重ね合わせ、溶接合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、集積化プローブカードの修復方法及び修復装置に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、半導体集積回路に接続するプローブを複数本基板上に備え、半導体集積回路の動作を検査する集積化プローブカードを修復する新規な方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化の趨勢は目覚しく、電子機器に搭載される半導体集積回路も小型化の要求が高まっている。このため、半導体集積回路中に作り込まれるパッド電極数の増加にくわえてパッド電極ピッチの狭窄化が進んでいる。半導体集積回路は、その製造段階において何度か電気的特性を測定する必要がある。
【0003】
上記の半導体集積回路の小型化の要求に伴い、半導体集積回路を半導体ウェハから切り出したままの状態(ベアチップ)で動作検査を実施するためのプローブカードも、従来のタングステン等を用いたニードル型プローブカードでは集積化及び価格の点から対応できなくなってきている。
【0004】
そこで、微細化かつ高密度化等に適応させるためリソグラフィ技術やエッチング技術等の半導体製造プロセスを駆使して作製される集積化プローブカードが提案されている。たとえば、シリコン基板上に半導体製造プロセスで用いられるリソグラフィ技術等により作製した微細化かつ高密度化されたプローブカードの製造方法はすでに開示されている(特許文献1、2)。
【0005】
しかしながら、上記従来の集積化プローブカードは、一括して大量に生産できるなどの特長があるものの、その生産方式が故に集積化プローブカードに1本でも不良プローブが発生すると、その集積化プローブカード全体が不良品となり、交換せざるを得ないというのが実情であった。
【0006】
また、プローブカードを製造する上でプローブ部とカード外郭部との配線域にコネクタを設けることにより、プローブカードの組み立てや動作検査用プローブの交換を可能とした技術も開示されている(特許文献3)。
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載の技術は、プローブ部への配線作業の簡略化を目指したもので、不良プローブが発生したときには、プローブと回路を有するコンタクターとその周辺部を交換するものであり、不良プローブそのものを交換するものではなかった。
【特許文献1】特開平5−198636号公報
【特許文献2】特開平5−218156号公報
【特許文献3】特開平11−190748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたもので、不良プローブが発生した場合、プローブ単位での修復を可能とし、トータルコストを安価にすることができる集積化プローブカードの修復方法及び修復装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この出願の発明は、上記課題を解決するものとして、第1には、半導体集積回路に接続
するプローブを複数本基板上に備え、半導体集積回路の動作を検査する集積化プローブカードを修復するための方法であって、集積化プローブカード上の不良プローブを視認する観察機構を用いてその位置を確定する工程と、中央に尖った先端が突出した高融点材製の導電性放電プローブが取り付けられるとともにその周囲に配置された作動ガスの吹き付け手段を持つトーチ型電極を用い、放電により不良プローブを溶切断する工程と、溶切断した不良プローブを、導電性放電プローブの先端に電圧を印加して得られる静電気力で吸着するか、又は導電性放電プローブの先端に溶融付着させ、集積化プローブカードから撤去する工程と、交換用プローブを、導電性放電プローブの先端に電圧を印加して得られる静電気力で吸着するか、又は導電性放電プローブの先端に溶融付着させ、不良プローブを溶切断した位置まで搬送する工程と、撤去した不良プローブの溶切断位置において交換用プローブの少なくとも一部を重ね合わせ、トーチ型電極を用い、放電により交換用プローブを集積化プローブカードに溶接合させる工程を備えることを特徴とする集積化プローブカードの修復方法を提供する。
【0010】
また、第2には、上記第1の発明において、導電性放電プローブ側を陽極、集積化プローブカードの配線パッド側を陰極(接地電極)としてパルス状の放電を発生させ、不良プローブの溶切断又は交換用プローブの溶接合を行うことを特徴とする集積化プローブカードの修復方法を提供する。
【0011】
また、第3には、上記第1又は第2の発明において、作動ガスとして、不活性ガスと還元性ガスとの混合ガスを不良プローブの溶切断部位又は交換用プローブの溶接合部位に吹き付けながら溶切断又は溶接合を行うことを特徴とする集積化プローブカードの修復方法を提供する。
【0012】
また、第4には、上記第1から第3のいずれかの発明において、不良プローブを溶切断する際又は交換用プローブを溶接合する際に発生する微小な溶融金属飛沫を吸入しながら回収することを特徴とする集積化プローブカードの修復方法を提供する。
【0013】
また、第5には、半導体集積回路に接続するプローブを複数本基板上に備え、半導体集積回路の動作を検査する集積化プローブカードを修復するための装置であって、少なくとも修復すべき集積化プローブカードを載置するステージと、中央に尖った先端が突出した高融点材製の導電性放電プローブが取り付けられるとともにその周囲に配置された作動ガスの吹き付け手段を持つトーチ型電極と、トーチ型電極を支持するトーチ型電極支持機構と、不良プローブの溶切断又は交換用プローブの溶接合のための高電圧を印加する直流高電圧電源と、トーチ型電極の吹き付け機構を介して作動ガスを溶切断部位又は溶接合部位に供給するための作動ガス供給機構と、集積化プローブカード上の不良プローブを視認するための観察機構を備え、放電により不良プローブの溶切断又は交換用プローブの溶接合を行うことを特徴とする集積化プローブカードの修復装置を提供する。
【0014】
また、第6には、上記第5の発明において、ステージをX方向、Y方向、Z方向、周方向に移動・傾斜させるステージ移動機構を備えていることを特徴とする集積化プローブカードの修復装置を提供する。
【0015】
また、第7には、上記第5又は第6の発明において、トーチ型電極の導電性放電プローブを、導電性放電プローブの先端に電圧を印加して得られる静電気力により吸着するか、又は導電性放電プローブの先端に溶融付着させ、ステージとトーチ型電極支持機構の相対的な移動により搬送可能に構成されていることを特徴とする集積化プローブカードの修復装置を提供する。
【0016】
また、第8には、上記第5から第7のいずれかの発明において、不良プローブを溶切断
する際又は交換用プローブを溶接合する際に発生する微小な溶融金属飛沫を吸入しながら回収する機構を備えていることを特徴とする集積化プローブカードの修復装置を提供する。
【0017】
さらに、第9には、上記第5から第8のいずれかの発明において、作動ガス供給機構が、不活性ガスと還元性ガスとの混合ガスを供給することを特徴とする集積化プローブカードの修復装置を提供する。
【0018】
さらに、第10には、上記第5から第9のいずれかの発明において、直流高電圧電源が、パルス状の直流高電圧を印加し、放電を間欠的に繰り返し行わせるものであることを特徴とする集積化プローブカードの修復装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
この出願の発明によれば、放電により局所及び急速加熱ができるため、高密度化及び微細化にもかかわらず、不良プローブが発生した場合、プローブ単位での修復を可能とし、トータルコストを安価にすることができる集積化プローブカードの修復技術が実現できる。
【0020】
また、作動ガスとして、不活性ガス、あるいは不活性ガスと還元性ガスとの混合ガスを用いることにより、溶切断又は溶接合部位の酸化を防止しながら集積化プローブカードの修復が行える。
【0021】
さらに、溶切断又は溶接合の際に発生する微小な溶融金属飛沫を吸入しながら回収することにより、集積化プローブカードの汚染・劣化がより効果的に防止され、高品質な集積化プローブカードが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0023】
この出願の発明は、半導体集積回路に接続するプローブを複数本基板上に備え、半導体集積回路の動作を検査する集積化プローブカードを修復するための技術に係るものであり、その修復方法においては、基本的に、少なくとも次の各工程を備えるものである。
【0024】
(A)集積化プローブカード上の不良プローブを視認する観察機構を用いてその位置を確定する工程
(B)中央に尖った先端が突出した高融点材製の導電性放電プローブが取り付けられるとともにその周囲に配置された作動ガスの吹き付け手段を持つトーチ型電極を用い、放電により不良プローブを溶切断する工程
(C)溶切断した不良プローブを、導電性放電プローブの先端に電圧を印加して得られる静電気力で吸着するか、又は導電性放電プローブの先端に溶融付着させ、集積化プローブカードから撤去する工程
(D)交換用プローブを、導電性放電プローブの先端に電圧を印加して得られる静電気力で吸着するか、又は導電性放電プローブの先端に溶融付着させ、不良プローブを溶切断した位置まで搬送する工程
(E)撤去した不良プローブの溶切断位置において交換用プローブの少なくとも一部を重ね合わせ、トーチ型電極を用い、放電により交換用プローブを集積化プローブカードに溶接合させる工程
この出願の発明の実施形態では、ステージの上に、修復すべき集積化プローブカードを載置して修復作業を行う。ステージは、X方向、Y方向、Z方向、周方向に移動・傾斜可
能となっていることが望ましい。
【0025】
集積化プローブカードのプローブのうち、不良プローブは観察機構を用いて視認する。観察機構は、不良プローブの視認の他、修復作業中に集積化プローブカードの修復位置及びその近傍が観察できるものであれば公知の各種手段を用いることができるが、たとえば顕微鏡と、顕微鏡の像を映し出すモニターを利用することができる。
【0026】
集積化プローブカードの修復には放電を利用する。そのために、中央に尖った先端が突出した高融点材製の導電性放電プローブが取り付けられるとともにその周囲に配置された作動ガスの吹き付け手段を持つトーチ型電極を用いる。
【0027】
トーチ型電極の導電性放電プローブとしては、高融点(たとえば融点2200〜3400℃程度)を有し、高剛性かつ耐熱性を備えている材料で構成されていることが望ましく、たとえばW、WC、WSi、MoSi、TiB2、ZrB2、CrB2等を用いることが
できる。導電性放電プローブの先端は細く尖った形状であることが望ましい。
【0028】
トーチ型電極は、作動ガスの吹き付け機構を備え、この吹き付け機構から作動ガスを溶切断あるいは溶接合する部位に吹き付けるようになっている。作動ガスは、溶切断あるいは溶接合する部位に吹き付けることにより、溶切断あるいは溶接合する部位の酸化等の化学変化防止を行う。作動ガスとしては、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスと、H2、C
O等の還元性ガスとの混合ガスを用いることができる。作動ガスの吹き付け機構としては、導電性放電プローブと同軸の1本のパイプ状のものであってもよいし、複数本(たとえば3本や4本等)の吹き付け管を導電性放電プローブの周りに一定間隔で配置したものであってもよい。
【0029】
溶切断時の放電条件は、たとえば高電圧(500V〜1kV程度)、低電流(1〜100mA程度)のパルス状のものを使用することができる。そして、パルス状高電圧の波高値、パルス幅及びデューティ比(パルスの休止と供給時の比)を制御して放電を行う。放電時間は、10秒以下である。不良プローブの溶切断は、放電により発生したエネルギーを利用して、不良プローブの局所域を急速に加熱することにより行う。放電の際、導電性放電プローブ側を陽極とし、不良プローブの配線パッド側を陰極(接地電極)とする。
【0030】
不良プローブを溶切断すると、不良プローブを導電性放電プローブの先端に電圧を印加して得られる静電気力で吸着するか、又は導電性放電プローブの先端に溶融付着させ、集積化プローブカードから撤去する。
【0031】
撤去後、交換用プローブを、導電性放電プローブの先端に電圧を印加して得られる静電気力で吸着するか、又は導電性放電プローブの先端に溶融付着させ、集積化プローブカード上の不良プローブの溶切断部位まで搬送する。上記の撤去・搬送はステージの移動により行う。不良プローブ又は交換用プローブを吸着させる場合の印加電圧は数十V程度である。
【0032】
次に、交換用プローブの継ぎ足し接合処理あるいは交換用プローブ全体の接合処理を行うことでプローブの修復を行う。溶接合時の放電条件は、たとえば高電圧(4〜10kV程度)、低電流(1〜100mA程度)のパルス状のものを使用することができる。そして、パルス状高電圧の波高値、パルス幅及びデューティ比(パルスの休止と供給時の比)を制御して放電を行う。放電時間は、1秒以下である。交換用プローブの接合処理は、溶切断と同様、放電により発生したエネルギーを利用して、不良プローブの局所域を急速に加熱することにより行う。この放電の際も、導電性放電プローブ側を陽極とし、不良プローブの配線パッド側を陰極(接地電極)とする。
【0033】
上記不良プローブを溶切断する際又は交換用プローブを溶接合する際に発生する微小な溶融金属飛沫を吸入しながら回収することが好ましい。このようにすると、集積化プローブカードの汚染・劣化がより効果的に防止され、高品質の集積化プローブカードを提供することができる。
【0034】
上述した個々の処理工程を拡大した映像をみることができる観察機構の下で実施し、数十ミクロンとなったプローブのうち不良プローブを個別に交換処理することにより、集積化プローブカードの再生が可能となる。この手法は、半導体検査用プローブカード分野において従来にない新しい技術である。
【0035】
以下、実施例によりこの出願の発明ついてさらに詳しく説明する。もちろん、この出願の発明は上記の実施形態及び以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【実施例】
【0036】
以下の実施例は、リソグラフィ技術を用いて作製された集積化プローブカードに含まれる不良プローブを撤去し、その後、交換プローブの移植処理により集積化プローブカードの修復を行うものである。
【0037】
図1はこの出願の発明による集積化プローブカード修復装置の構造を模式的に示す図、図2はトーチ型電極周辺の様子を模式的に示す図である。
【0038】
この集積化プローブカード修復装置は、先端を細く尖らせた高融点材からなる導電性放電プローブ(2)とガス吹き付け機構(3)を含むトーチ型電極(1)、トーチ型電極(1)の支持機構(4)、トーチ型電極(1)の先端付近と溶切断及び溶接合部位を作動ガス雰囲気とするためのガス供給機構(5)、溶切断及び溶接合部位で発生する溶融金属飛沫を回収するための吸気機構(6)、修復対象とする集積化プローブカード(7)と交換用プローブ(8)を供給するための基板(9)と不良プローブ(10)を廃棄するための基板(11)を載置したステージ(12)、ステージ(12)をX方向、Y方向、Z方向、周方向に移動・傾斜可能なステージ移動機構(13)、トーチ型電極(1)先端とステージ(12)上面との位置関係を視認するための顕微鏡(15)とその映像を表示するためのモニター(16)を含む観察機構(14)、単極型直流パルス電圧が出力可能な高電圧電源(17)を基本構成とした。
【0039】
図2に示すように、修復対象とする集積化プローブカード(7)と交換用プローブ(8)を供給するための基板(9)と不良プローブ(10)を廃棄するための基板(11)はステージ(12)に載置されている。ステージ移動機構(13)の直進・回転移動により導電性放電プローブ(2)直下に不良プローブ(10)及び交換用プローブ(8)を移動させる。不良プローブ(10)の交換・移植時はトーチ型電極(1)中のガス吹き付け機構(3)から作動ガスを送出し、吸気機構(6)から溶融金属飛沫を回収する。
【0040】
図3は、不良プローブ(10)の撤去と交換用プローブ(8)の移植処理を示す模式図である。図3の(a)〜(c)は不良プローブ(10)の撤去手順を示し、(a)は不良プローブ(10)の選択、(b)は放電による不良プローブ(10)の撤去、(c)は撤去した不良プローブ(10)を所定の廃棄位置まで搬送して不良プローブ廃棄用基板(11)に接合・廃棄する様子を示す。さらに、図3の(d)〜(f)は交換用プローブ(8)を集積化プローブカード(7)に移植する手順を示し、(d)は交換用プローブ(8)の選択、(e)は導電性放電プローブ(2)先端に交換用プローブ(8)の捕捉、(f)は交換用プローブ(8)を移植する様子を示す。
【0041】
先ず、実施例の集積化プローブカード修復装置のステージ移動機構(13)を用いて、導電性放電プローブ(2)の先端を集積化プローブカード(7)表面の集積化プローブ群(18)中の不良プローブ(10)の直上数十ミクロンに配置させる(図3(a))。導電性放電プローブ(2)と接地電極(19)間に高電圧電源(17)から高電圧を印加して放電させると、導電性放電プローブ(2)直下の不良プローブ(10)の一部が溶切断し、自由端を有する不良プローブ(10)が強電界の作用による静電気力を受けて、導電性放電プローブ(2)に引き寄せられ、その不良プローブ(10)の自由端は導電性プローブ(10)の先端に接触した瞬間に溶融付着する(図3(b))。そして導電性放電プローブ(2)に付着した不良プローブ(10)を廃棄するため、ステージ移動機構(13)を用いて不良プローブ廃棄用基板(11)まで搬送させる。そこで、不良プローブ廃棄用基板(11)と不良プローブ(10)を接触させ、高電圧電源(17)により高電圧を印加して不良プローブ(10)と不良プローブ廃棄用基板(11)を溶接合する(図3(c))。導電性放電プローブ(2)を引き上げると、不良プローブ(10)が不良プローブ廃棄用基板(11)に固着して残る。
【0042】
また、不良プローブ(10)を撤去した位置に交換用プローブ(8)を取り付けるため、導電性放電プローブ(2)を交換用プローブ供給用基板(9)上の交換用プローブ群(20)の中の1本の交換用プローブ(8)に接触させる(図3(d))。導電性放電プローブ(2)と接地電極(19)間に高電圧電源(17)から高電圧を印加して放電させると、導電性放電プローブ(2)直下の交換用プローブ(8)の一部は溶融し、導電性放電プローブ(2)の先端に付着する(図3(e))。導電性放電プローブ(2)に付着した交換用プローブ(8)をステージ移動機構(13)を用いて、図3(b)で撤去した集積化プローブカード(7)まで搬送し、導電性放電プローブ(2)に付着した交換用プローブ(8)と接地電極(19)を高電圧放電により溶接合して、交換用プローブ(8)の移植を完了する(図3(f))。
【0043】
図4はリソグラフィ技術で一括形成された集積化プローブカードの一部を示す写真を印刷出力した図である。プローブ1本の幅は15ミクロン以下で、図面の右方向にプローブの自由端を有している。図中に示すように一部のプローブが規則正しく配列せず、不良品であることを示している。
【0044】
図5は1本の不良プローブを集積化プローブカードから撤去して、廃棄位置まで搬送後、不良プローブ廃棄用基板表面に接合するまでの一連の結果を示す写真を印刷出力した図である。図5(a)はステージ移動機構により、導電性放電プローブを不良プローブ直上約2.0ミクロンの位置に配置した様子を示す。図5(b)は導電性放電プローブと接地電極間に高電圧電源より1kVを印加して、不良プローブを集積化プローブカードから撤去している様子を示す。放電を続けると、不良プローブが上下に振動する。導電性放電プローブ直下の不良プローブが切断されると、図5(c)に示すように、不良プローブは強電界の作用による静電気力を受けて、導電性放電プローブに引き寄せられ、その不良プローブの切断部は導電性プローブの先端に接触した瞬間に溶融付着する。図5(d)は導電性放電プローブに付着した不良プローブを不良プローブ廃棄用基板まで搬送して、そこに固着させて廃棄する様子を示す。不良プローブを廃棄するため、除去位置まで搬送後、不良プローブと廃棄用基板を接触させてから10kVの高電圧により不良プローブと基板を放電接合する。接合後、この図のように導電性放電プローブは不良プローブと離れ、不良プローブは不良プローブ廃棄用基板に接合固着する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この出願の発明による集積化プローブカード修復装置の構造を模式的に示す図である。
【図2】トーチ型電極周辺の様子を模式的に示す図である。
【図3】不良プローブの撤去と交換プローブの移植処理の様子を模式的に示す図である。
【図4】リソグラフィ技術で一括形成された集積化プローブカードの一部を示す写真を印刷出力した図である。
【図5】1本の不良プローブの撤去及び廃棄処理の様子を示す写真を印刷出力した図である。
【符号の説明】
【0046】
1 トーチ型電極
2 導電性放電プローブ
3 ガス吹き付け機構
4 トーチ型電極の支持機構
5 ガス供給機構
6 金属飛沫回収用吸気機構
7 集積化プローブカード
8 交換用プローブ
9 交換用プローブ供給用基板
10 不良プローブ
11 不良プローブ廃棄用基板
12 ステージ
13 ステージ移動機構
14 観察機構
15 顕微鏡
16 モニター
17 高電圧電源
18 集積化プローブ群
19 接地電極
20 交換用プローブ群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体集積回路に接続するプローブを複数本基板上に備え、半導体集積回路の動作を検査する集積化プローブカードを修復するための方法であって、
集積化プローブカード上の不良プローブを視認する観察機構を用いてその位置を確定する工程と、
中央に尖った先端が突出した高融点材製の導電性放電プローブが取り付けられるとともにその周囲に配置された作動ガスの吹き付け手段を持つトーチ型電極を用い、放電により不良プローブを溶切断する工程と、
溶切断した不良プローブを、導電性放電プローブの先端に電圧を印加して得られる静電気力で吸着するか、又は導電性放電プローブの先端に溶融付着させ、集積化プローブカードから撤去する工程と、
交換用プローブを、導電性放電プローブの先端に電圧を印加して得られる静電気力で吸着するか、又は導電性放電プローブの先端に溶融付着させ、不良プローブを溶切断した位置まで搬送する工程と、
撤去した不良プローブの溶切断位置において交換用プローブの少なくとも一部を重ね合わせ、トーチ型電極を用い、放電により交換用プローブを集積化プローブカードに溶接合させる工程を備えることを特徴とする集積化プローブカードの修復方法。
【請求項2】
導電性放電プローブ側を陽極、集積化プローブカードの配線パッド側を陰極(接地電極)としてパルス状の放電を発生させ、不良プローブの溶切断又は交換用プローブの溶接合を行うことを特徴とする請求項1記載の集積化プローブカードの修復方法。
【請求項3】
作動ガスとして、不活性ガスと還元性ガスとの混合ガスを不良プローブの溶切断部位又は交換用プローブの溶接合部位に吹き付けながら溶切断又は溶接合を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の集積化プローブカードの修復方法。
【請求項4】
不良プローブを溶切断する際又は交換用プローブを溶接合する際に発生する微小な溶融金属飛沫を吸入しながら回収することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の集積化プローブカードの修復方法。
【請求項5】
半導体集積回路に接続するプローブを複数本基板上に備え、半導体集積回路の動作を検査する集積化プローブカードを修復するための装置であって、
少なくとも修復すべき集積化プローブカードを載置するステージと、
中央に尖った先端が突出した高融点材製の導電性放電プローブが取り付けられるとともにその周囲に配置された作動ガスの吹き付け手段を持つトーチ型電極と、
トーチ型電極を支持するトーチ型電極支持機構と、
不良プローブの溶切断又は交換用プローブの溶接合のための高電圧を印加する直流高電圧電源と、
トーチ型電極の吹き付け機構を介して作動ガスを溶切断部位又は溶接合部位に供給するための作動ガス供給機構と、
集積化プローブカード上の不良プローブを視認するための観察機構を備え、
放電により不良プローブの溶切断又は交換用プローブの溶接合を行うことを特徴とする集積化プローブカードの修復装置。
【請求項6】
ステージをX方向、Y方向、Z方向、周方向に移動・傾斜させるステージ移動機構を備えていることを特徴とする請求項5記載の集積化プローブカードの修復装置。
【請求項7】
トーチ型電極の導電性放電プローブを、導電性放電プローブの先端に電圧を印加して得られる静電気力により吸着するか、又は導電性放電プローブの先端に溶融付着させ、ステ
ージとトーチ型電極支持機構の相対的な移動により搬送可能に構成されていることを特徴とする請求項5又は6記載の集積化プローブカードの修復装置。
【請求項8】
不良プローブを溶切断する際又は交換用プローブを溶接合する際に発生する微小な溶融金属飛沫を吸入しながら回収する機構を備えていることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の集積化プローブカードの修復装置。
【請求項9】
作動ガス供給機構が、不活性ガスと還元性ガスとの混合ガスを供給することを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載の集積化プローブカードの修復装置。
【請求項10】
直流高電圧電源が、パルス状の直流高電圧を印加し、放電を間欠的に繰り返し行わせるものであることを特徴とする請求項5から9のいずれかに記載の集積化プローブカードの修復装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−234691(P2006−234691A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51888(P2005−51888)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】