説明

離隔攻撃判定装置

【課題】
相手の身体に触れないで有効範囲に打拳が来る競技では、近接センサーを用いたとしても、所定の範囲に物体があるとそれを検出するので、相手の打撃なのか、単にリングコーナーに選手が近づいただけなのか、自分の拳でガードしているのか判定がつかない。
【解決手段】 本発明は、頭部保護具および胴部保護具にもうけられた受信機と、グローブに内蔵された発信機と、その発信機の電波を受信した受信機の信号を送信するデータ送信機と、そのデータ送信機のデータを受信して有効打を計数し表示する制御手段とを有している。そして発信機と受信機はお互いに対であることを判断できる信号を授受し、受信機は送信機が一定方向に近接したときに受信する指向性アンテナを持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手の身体に直接打撃を与えないルールを適用したマスボクシングや寸止めを適用した空手のような打撃型格闘技の有効打の判定するために好適な離隔攻撃判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より空手、テコンドー、カンフー、キックボクシング、ボクシング、剣道、フェンシング等の打撃型格闘技では相手の体の決められた部位を決められた方法で打撃したことが有効打となるが、これらのルールのもとで行われる試合では、突き、蹴りの攻撃に際し、攻撃者の打込みの有無と相手側競技者の反応動作による、すなわち有効打の有無を審判員が目視によって確認することにより判断しているのが現状である。
【0003】
そして、実際の練習では、突き、蹴り、打撃の攻撃をシミュレーションとして相手の身体に直接打撃を与えないルールを適用したマスボクシングや寸止め形式で行っているが、スピードが速いため、経験豊富な審判員であっても有効打であるかを目で確認するのは困難である。
【0004】
そこで特開2000−42162号公報(特許文献1)には、ボディープロテクター等の胴部保護防具又はメンホー等の頭部保護防具等の打撃対象体に2つの異なる電極を適当な間隔を空けて配設して有効打検出用センサーとし、競技用グローブ、拳サポーター、競技用足袋又は足サポーター等の打撃用具の表面に導電性の素材からなる導電体を装備し、その打撃用具が打撃対象体に接触したときに、その打撃対象体に配設された2つの電極間を短絡してその打撃対象体に加えられた打撃力を検出し、この検出信号を情報伝送装置に送信して、打撃力に応じた有効打を判定し、この有効打の判定信号を電波で中央装置に送信し、その中央装置において有効打を判定表示する有効打判定装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−42162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
然しながら、このような有効打判定装置は、あくまで相手の身体に接触することを前提としており、マスボクシングや寸止め形式などのように、相手の身体に触れないで有効範囲に打拳が来る競技には用いることが出来ない。さらに乗用車のような安全対策では近接センサーを用いるものがあるが、近接センサーでは所定の範囲に物体があるとそれを検出するので、相手の打撃なのか、単にリングコーナーに選手が近づいただけなのか、自分の拳でガードしているのか判定がつかない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたもので、頭部保護具および胴部保護具にもうけられた受信機と、グローブに内蔵された発信機と、その発信機の電波を受信した受信機の信号を送信するデータ送信機と、そのデータ送信機のデータを受信して有効打を計数し表示する制御手段とを有し、発信機と受信機はお互いに対であることを判断できる信号を授受し、受信機は送信機が一定方向に近接したときに受信する指向性アンテナを持つもので、好ましくはその発信機は一つのグローブの中に複数個が内蔵されており、複数の発信機のうち特定の発信機の電波を受信機で受信した場合のみ有効打と判定するものであり、あるいはまたその受信機は、発信機の近接と近接の時間を検出するものである。また指向性アンテナのうち、頭部保護具に設けられたものは、額からあごにかけてリング状をなしていると好ましい。
【発明の効果】
【0008】
このように本発明においては、保護具の受信機と、グローブの発信機がお互いに対であることを判断できるので、一定の範囲の相手側競技者の打拳が来たこと判定することが出来、一つのグローブの中に複数個の発信機を内蔵し特定の発信機の電波を受信することで、ブロックされた攻撃を有効打から除外することが出来る。そして発信機の近接と近接の時間を検出することで、連続打なのか、単に存在しているだけなのかを判断できる。そして顔面への打撃に対しては、額からあごにかけてリング状にアンテナを構成することで、競技者の視界をさえぎったり、有効打を受信しそこなうことはない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明実施例の頭部保護具、胴部保護具、受信機およびデータ送信機の説明図である。
【図2】本発明実施例の受信機の説明図である。
【図3】本発明実施例のグローブおよび発信機の説明図である。
【図4】本発明による離隔攻撃判定装置を用いた競技の状態を説明する図である。
【図5】本発明実施例における制御手段のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は頭部保護具および胴部保護具に受信機を設ける一方、グローブに好ましくは複数の発信機を内蔵し、発信機と受信機はお互いに対であることを判断できる信号を授受させ、その発信機の電波を受信した受信機の信号を送信するデータ送信機のデータを受信して有効打を計数し表示する制御手段とで、競技者の動作を制約することなく有効打を検出表示するものである。
【実施例】
【0011】
図1ないし図2は本発明の実施例を説明する図である。これらの図において、図2に記載されている1は、頭部保護具2および胴部保護具3にもうけられた受信機で、発信機4が一定方向に近接したときに受信する指向性アンテナ11と、その指向性アンテナ11の受信電波をID判定するとともに発信機4に誘導電力を指向性アンテナ11から放出する受信処理部12からなる。指向性アンテナ11は、例えばフレキシブル基板に印刷された2重ループパターンからなり、頭部保護具2に設けられたものは、額からあごにかけてリング状をなしていることによって競技者の視界をさえぎることなく顔面全体を覆う指向性を得ている。
4はグローブ5に内蔵された発信機で、例えばプラスチックベースにICが埋め込まれており、グローブ5の先端平坦部、ちょうど拳の上に相当する位置に埋め込まれている。そして受信機1から放出された誘導電力を至近距離で受信して駆動電力とし、ID信号をRF発信するものである。誘導電力を用いないで電池駆動とすることも出来るが、誘導電力を用いる方が指向性向上に寄与するので好ましい。
【0012】
6は、発信機4の電波を受信した受信機1の有効打に関する信号を送信するデータ送信機で、受信処理部12と一体に構成してもよい。
7は、データ送信機6のデータを受信して、有効打を計数し表示する制御手段である。この制御手段7はコーナー別に設けられたデータ受信機71と、有効打集計部72と、集計結果を表示する液晶表示装置などからなる表示手段73からなり、先行技術に挙げた「有効打判定装置」の如くに、パーソナルコンピュータを中心とするシステムで構成できる。
【0013】
このような構成において、受信機1と発信機4はお互いに対であることを判断できるようにID信号を授受し、ID信号としては例えば16桁の2進数デジタルコードからなるがこれに限られるものではない。そして赤コーナーのそれぞれのグローブ5の発信機1と青コーナーの保護具2,3の受信機1とがID確認し、青コーナーのグローブ5の発信機4と青コーナーの保護具2,3の受信機1がID確認できるようにそれぞれ構成されている。発信機4は上述の例で言えば予め設定されたID信号を送信するだけなので、指向性アンテナ11で受信されその信号を受ける受信処理部12が自分が対に指定されているID信号かどうかを判定すればよい。なお、発信機4からの受信電波が弱い場合、例えば有効打範囲を厳格にとるために出力を弱めているような場合には、受信処理部12は受信信号から雑音除去をするだけで、ID判定はデータ送信機6で行ってもよい。
【0014】
そしてグローブ5には一つのグローブの中に複数個の発信機4、41を内蔵し、複数の発信機のうち特定の発信機の電波を受信機で受信した場合のみ有効打と判定することで、いわゆるブロックしたことで有効判定とすべきでない打撃をカウント排除できる。例えば図23に示すように、グローブ5の手の甲部分と手首の腕側部分に同様の無効の発信機41,41を埋め込んで、有効打判定のID信号を持つ発信機4のIDとは異なるIDもしくはIDなしのRF発信するとなった場合、相手側グローブが攻撃のために有効打範囲に入った場合に自分のグローブでガードすると、自己のグローブの無効の発信機41のRF発信により相手のグローブの有効ID発信機4のRF信号が受信機1にて受信されない。これによりいわゆるブロックしたことで有効判定とすべきでない打撃をカウント排除できる。
【0015】
一方、発信機4が一定方向に近接したときに受信する指向性アンテナ11は、上述したようにフレキシブル基板に印刷された2重ループパターンからなるが、ワイヤーアンテナを所定範囲にまきつけてもよい。しかし、ワイヤーアンテナは場所がずれたり、本来あってはならない不所望の打撃により、場所がずれたり断線する恐れがあるので、基板パターンを使う方が望ましい。その場合にはフレキシブル基板の基板中央を切り取り、そこから顔が覗くよう、頭部保護具2に設けられたものは、額からあごにかけてリング状をなしていることによって競技者の視界をさえぎることなく顔面全体を覆う指向性を得ることが出来る。さらに、単なるループアンテナでもいいが、2重にすることによって指向性と感度を高めることが出来る。例えばこめかみ部分に対する打撃と、こめかみをかすって後頭部におよぶ打撃においては、単ループではどちらも判定が不安定であったが、2重ループにすると前者は有効打、後者は無効打と判定することが出来た。
【0016】
このような構成において、更に本発明では、受信機1が、発信機4の近接と近接の時間を検出することで、距離間と静止時と連続打時が判定できる。これを説明すると、図5において、横軸が時間、縦軸が事象を表している。(a)において、時間(イ)では相手の拳が連続的に有効打圏内にある場合を示し、時間(ロ)(ハ)は高速連打状態を示す。(b)はこのような(a)の状態を近接センサーで確認した場合の出力図で、(イ)時間では拳が向かってきていることに感知し出力が立ち上がり飽和状態となるが、やがてなだらかに出力が下がる。さらに(ロ)時間では拳が瞬間的に向かってきていると感知し立ち上がりかけるが、すぐ拳が逃げるので下に下がりかける。しかし(ハ)時間では再度拳を感知し出力される。この場合、(イ)時間では攻撃を受けてはないが1打と判断し、(ロ)時間では検出不能の可能性がある。
本発明は(c)で、一定の時間間隔で拳の有無だけみるもので、上段は検出タイミング、下段は検出結果である。検出タイミングにおいて拳があれば「1」拳がなければ「0」とする。(イ)時間では見に行くたびに「1」、(ロ)〜(ハ)時間では「1、0、1」検出となる。そこで「0に囲まれた1があれば攻撃、しかし1が連続4つ以上並ぶと攻撃ではない」とすると、拳をつき合わせて競り合っているときは攻撃でなく、高速連打は検出となる。
このように受信機1が発信機4の近接と近接の時間を検出しておけば、有効打判定は、受信処理部12で行ってもよく、また受信処理部は単に「1」「0」の信号を送るだけで、データ送信機6で判定してもよく、またデータ送信機6も単にデータ送信として制御手段7で判定処理を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明によれば、相手の身体に直接打撃を与えないルールを適応したマスボクシングや寸止め形式で行う競技においても、審判員の目視に頼るだけではなく有効打の確認が得られる。
【符号の説明】
【0018】
1 受信機
11 指向性アンテナ
12 受信処理部
2 頭部保護具
3 胴部保護具
4 発信機
41 無効の発信機
5 グローブ
6 データ送信機
7 制御手段
71 データ受信機
72 有効打集計部
73 表示手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部保護具および胴部保護具にもうけられた受信機と、グローブに内蔵された発信機と、該発信機の電波を受信した前記受信機の信号を送信するデータ送信機と、該データ送信機のデータを受信して有効打撃を計数し表示する制御手段とを有した離隔攻撃判定装置において、
前記発信機と前記受信機はお互いに対であることを判断できる信号を授受し、前記受信機は前記送信機が一定方向に近接したときに受信する指向性アンテナを持つことを特徴とする離隔攻撃判定装置。
【請求項2】
前記発信機は一つの前記グローブの中に複数個が内蔵されており、複数の発信機のうち特定の発信機の電波を受信機で受信した場合のみ有効打と判定することを特徴とする前記請求項1記載の離隔攻撃判定装置。
【請求項3】
前記受信機は、前記発信機の近接と近接の時間を検出することを特徴とし、距離間と静止時と連続打時が判定できる前記請求項1記載の離隔攻撃判定装置。
【請求項4】
前記指向性アンテナのうち、前記頭部保護具に設けられたものは、額からあごにかけてリング状をなしていることを特徴とする前記請求項1記載の離隔攻撃判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−104192(P2011−104192A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263777(P2009−263777)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(598117366)株式会社日本マイクロシステム (5)
【出願人】(509320209)株式会社クリエイティブサポート (1)