説明

雨水排水構造

【課題】設置スペースを極力削減し、且つ、満水時にさらに雨水を受ける場合でも、当該雨水の流入に伴って常に貯えられている雨水を入れ替えることができる雨水排水構造を提供する。
【解決手段】建物1に降水される雨水を排水する雨水排水構造5であって、建物2に降水される雨水を一次的に集める集水部21a、21bと、敷地外に敷設される公共排水系統90に接続される排水部23と、を備え、集水部21a、21bの下流部から排水部23の上流部までの排水経路22を全体に亘って貯水部Aとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等に敷設される雨水排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、都市部の増大化等とともに、水道利用量が増大し、水不足が深刻化し、また、地下水の不浸透域が増大して、地表温の上昇による都市のヒートアイランド化等も問題となっている。一方、洗車や庭園への灌水等には、上水を使用せずとも雨水を利用すれば充分であり、そうすることで上水使用量の節約にもなる。以上のようなことから、住宅内において、雨水を有効利用できるように貯水する構造を採り入れる試みがなされており、例えば、容量の大きい雨水タンクを住宅の適宜箇所に設ける構成が知られている。
【0003】
ところで、当該雨水タンクは大きくなればなるほど高価となるばかりでなく、その雨水タンクを設置するためのスペースとコストも掛かってしまうという問題があった。
かかる問題を解決すべく、特許文献1には、複数のパイプを横引きとした状態で並列状に連結して水平タンクを形成し、当該水平タンクに集水・排水管、通気管、ドレン管等を連通して地下貯水タンクを形成した構成が開示されている。当該地下貯水タンクによれば、市販されているパイプを所望する容量や敷地に合わせて切断して、水平タンクを構成することができ、また、敷地の大きさに合わせて水平タンクを形成するパイプの本数を増減させて水平タンクの容量を調整することができ、スペースとコストの問題を解決できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−137479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の地下貯水タンクにおいても、水平タンクを設置するためのスペース別途設けることを要し、依然として一定のスペースを水平タンクの設置スペースとして確保する必要があり、設置スペース削減には更なる改良の余地がある。また、水平タンク内に貯えられた雨水は、ドレン管のコックを開閉させることで排水溝に排水される構成であり、雨水の貯まり具合や流入する雨水の量に応じてコックを開閉させなければタンク内の雨水の量を適正に保てない。また、雨水を受ける竪樋に連結されるパイプとタンクとが直列に連結され、これらの間から分岐して水平タンクが設けられる構成であるため、水平タンク内に満杯に雨水が貯えられると、当該水平タンク内に雨水を流入させることなく直流でパイプからの雨水がポンプに流入することとなり、当該水平タンク内の雨水が一向に入れ替えられないものとなり、水質を低下させてしまうという問題もある。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、設置スペースを極力削減し、且つ、満水時にさらに雨水を受ける場合でも、当該雨水の流入に伴って常に貯えられている雨水を入れ替えることができる雨水排水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題解決のための具体的手段として、本願発明は、
建物と該建物が建設されている敷地に降水される雨水のいずれか一方又は両方を排水する雨水排水構造において、
前記建物と敷地に降水される雨水のいずれか一方又は両方を一次的に集める集水部と、
前記敷地外に敷設される公共排水系統に接続される排水部と、
を備え、
該集水部の下流部から排水部の上流部までの排水経路を全体に亘って貯水部とした
ことを特徴としている。
【0008】
これによれば、排水経路自体が貯水部として形成されているため、雨水を貯えるために別途タンク等を設ける必要がなく、スペースの著しい削減を図ることができる。また、集水部の雨水を排水部に向けて流通させる排水経路として設けられているため、当該貯水部中の雨水は集水部からの雨水の流入によって適宜流下することとなり、これによって、貯水部に貯えられる雨水を常に入れ替えることができる。同時に、集水部からの雨水の流入の度に貯水部たる排水経路の上流側から下流側に亘って雨水が流れるため、当該雨水の流れに伴って排水経路の内壁が洗浄されることとなり、これによって排水経路の汚れを低減させることができる。
【0009】
(2)また、前記貯水部は、
水勾配を有して形成され、上流端部が前記集水部の下流部に接続されて下流端部に向けて雨水を流す1又は複数の横樋部と、
該1又は複数の横樋部の下流端部に接続される受水槽と、を備え、
前記排水部は、1又は複数の横樋部の下流端部のうち、最も低く位置づけられる下流部の底縁部よりも上方あって、且つ、1又は複数の横樋部の上流端部のうち、最も高く位置づけられる上流端部の上縁部よりも下方となる位置で前記受水槽に接続されている
ことを特徴としている。
【0010】
これによれば、雨水が流下することとなる横樋部及び受水槽自体に雨水を貯えることができる。当該横樋部は、そもそも雨水を受水槽(排水溝)に向けて流すものであるので、雨水を貯めるためのスペースは、当該排水のためのスペースと一致するため、別途貯水のためのスペースを設けることを要せず、著しいスペース削減を図ることができる。
また、この様に雨水を送り出す横樋部に雨水を貯留するため、当該横樋部に充分な雨水が貯まっている場合であっても、当該横樋部の上端部に雨水が流れ込むと、受水槽に貯まっている雨水のうち、横樋部に流れ込んできた雨水に相当する量の雨水が排水管から排水溝に流れ込み、排出される。したがって、雨水の流入により常に貯えられる雨水が入れ替えられることとなり、貯えられている雨水の質の劣化を防止することができる。
【0011】
(3)かかる点に鑑みれば、敷地または該敷地に建設されている建物に降水される雨水を排水する雨水排水構造において、
前記雨水を集めて導水する集水部が、直接に、又は受水枡を介して横引きされた横樋部に接続され、該横樋部を経由して受水槽に連結され、且つ、該受水槽から横引きされた排水部を経由して公共排水系統に接続される配管構造を有し、
該公共排水系統に接続する排水部の管底よりも下方に位置する前記横樋部及び受水槽、又は、前記受水桝、横樋部及び受水槽を一次的に雨水を貯め得る貯水部としたことを特徴とすることも好ましい。
【0012】
(4)また、前記横樋部は、配管状に形成されて地中に埋設されていることが好ましい。これによれば、貯水部が地上に露出することがなく、当該貯水部に貯えられている雨水にごみ等が入り込むことを防止することができる。また、排水経路の上方を植栽スペースや駐車スペース等として有効活用することができる。
(5)また、前記横樋部は、200φ〜300φの内径を有して形成されていることが好ましい。これにより、充分な雨水を横樋部中に貯えることができる。一方、横樋部の径をたとえば300φ以上の著しく径大に形成すると、設置が困難となったり、受水槽との連結が困難となったりするのみならず、隣地境界線や建物の基礎との関係から横樋部を敷地内に適切に配置することが困難となるという問題を生じかねない。かかる観点からも、上述の如き内径を有する横樋部とすることが好ましい。
【0013】
(6)かかる点に鑑みれば、前記建物は中低層規模の集合住宅又は戸建て住宅であって、前記横樋部は、当該住宅に使用される排水処理配管の2〜3倍の内径を有して形成されていることが好ましい。
(7)さらに、前記集水部は、前記建物の屋根に降水される雨水を受ける竪樋であることが好ましい。
これによれば、建物の屋根等に降った雨水のみを貯水部に貯えることができ、貯水される水の清浄度を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の雨水排水構造によれば、設置スペースを極力削減し、且つ、満杯時にさらに雨水を受ける場合でも、当該雨水の流入に伴って常に貯えられている雨水を入れ替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の雨水排水構造を備えた建物の側面図である。
【図2】本実施形態の雨水排水構造を備えた建物の平面図である。
【図3】本実施形態の雨水排水構造の貯水状態を示す側面図である。
【図4】本実施形態の雨水排水構造の貯水状態を示す他の側面図である。
【図5】他の実施形態の雨水排水構造の側面図である。
【図6】他の実施形態の雨水排水構造の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る雨水排水構造5を備えた建物1の実施形態について詳細に説明する。
図1に示す如く、本実施形態の建物1は、建物躯体2と、該建物躯体2に上水を供給する上水道系統3と、該建物躯体2に降りかかる雨水を排水処理する雨水排水構造5とを備えている。当該雨水排水構造5は、建物1の敷地外にU字溝として配設される公共排水系統90に接続されている。
なお、本実施形態において、雨水とは、雨水はもちろん、一旦建物2に積雪し、溶け出して雨水排水構造を介して処理される水等も含む。
建物躯体2は、基礎上に組み上げられる構造躯体と、該構造躯体に支持される外壁10とを備えて形成される地上2階の組立住宅である。また、建物躯体2には、水勾配を有して形成される陸屋根部11が形成されている。
【0017】
また、該建物躯体2内に形成される居室には、台所や洗面所、浴室の水道等の上水利用設備が設けられており、上水道系統3は、公共水道本管91に接続される配水管12を備え、居室内の各上水利用設備に連結されている。
雨水排水構造5は、建物1の陸屋根部11に接続されて当該陸屋根部11に降りかかる雨水を一時的に集める集水部21と、該集水部21に流れ込んだ雨水を公共排水系統90に向けて送り込む排水経路22と、該排水経路22と公共排水系統90とを接続する排水部23とを備えている。
建物2は、2階の屋根を形成する第1陸屋根部11aと、1階の屋根を形成する第2陸屋根部11bを備え、当該第1陸屋根部11aに第1集水部21aが接続されると共に、第2陸屋根部11bに第2集水部21bが接続されている。
【0018】
各集水部21a、21bは、陸屋根部11a、11bの水勾配の下流部に接続される接続部25a、25bと、該接続部25a、25bに接続されると共に建物躯体2の外壁10に沿って鉛直に延伸されて当該接続部25a、25bで受けた雨水を排水経路22に向けて流下させる竪樋部26a、26bと、該竪樋部26a、26bの下流部に接続されて流れ込んでくる雨水を浄化する浄化セパレータ27a、27bとを備えている。
なお、本実施例においては、各陸屋根部11a、11bに1本の集水部21a、21bがそれぞれ設けられているが、集水部の処理能力や陸屋根部の大きさに応じ、配設すべき集水部の本数は適宜変更可能である。
排水経路22は、集水部21のセパレータ27に接続される一対の受水桝31a、31bと、該受水桝31a、31bから横方向に延伸して形成される横樋部32a、32bと、該横樋部32a、32bの下流端部に接続される受水槽33とを備えている。
【0019】
本実施形態においては、受水槽33からみて遠い位置に第1受水桝31aを備えると共に、当該第1受水桝31aよりも受水槽33からみて近い位置に第2受水桝31bを備えている。各受水桝31a、31bは、コンクリート又は樹脂を上部開放状の箱状に形成されて地中に埋設される桝本体34a、34bと、該桝本体34a、34bの上部を覆う桝蓋35a、35bとを備え、各桝本体34a、34bの側部には、貫通孔36a、36bがそれぞれ形成されている。
各横樋部32a、32bは、樹脂を円筒状に形成して地中に埋設されており、受水槽33からみて遠い位置ある第1受水桝31aと、受水槽33からみて近い位置にある第2受水桝31bとを接続する第1横樋部32aと、該第2受水桝31bと受水槽33とを接続する第2横樋部32bとを備えている。
【0020】
第1横樋部32aは、第1受水桝31aから第2受水桝31bに向けて下り傾斜状に傾けて配設されており、第2横樋部32bは第2受水桝31bから受水槽33に向けて下り傾斜状に形成され、第1横樋部32a、第2横樋部32bの管底は、第1受水桝31aから第2受水桝31b及び受水槽33方向に向かって徐々に低くいものとなっている。また、これら各横樋部32a、32bの中心軸は一致しており、これらの下り勾配の傾斜角度は同一である。
また、各横樋部32a、32bは、少なくとも200φ〜300φの内径を有して形成されており、これは、例えば排水部23として使用される配管の内径(100φ)の2〜3倍の内径を有していることとなる。或いは、通常の低層戸建て住宅の排水管として用いられる管の内径(100φ)の2〜3倍の内径を有していることとなる。
【0021】
受水槽33は、コンクリート又は樹脂製であって、各受水桝31a、31bよりも大きい上部開放の箱状に形成されて地中に埋設される水槽本体41と、該水槽本体41の上部を覆う水槽蓋42とを備えている。
該水槽本体41は、一側部に貫通孔43が形成されて第2横樋部32bに接続されており、他側部にも貫通孔44が形成されて排水部23に接続されている。
排水部23は、樹脂を円筒の管状に形成して地中に埋設されている。また、受水槽33に接続される排水部23は、受水槽側の端部の管底を第1横樋部32aの上流端部の上縁部よりも僅か下方となる位置とした状態で当該受水槽33に接続されており、当該位置から下り傾斜状に延伸されて公共排水系統90に接続されている。
【0022】
これによって、各集水部21a、21bを通過して雨水が排水経路22に浸入すると、まず、各受水桝31a、31b及び横樋部32a、32bを通過して適宜受水槽33に当該雨水が貯えられることとなる。そして、さらに雨水が排水経路22に流れ込むこととなると、適宜受水槽33にさらに雨水が貯えられることとなるが、該受水槽33に貯えられた雨水を排水する排水部23は第1横樋部32aの最上縁部の僅か下方、すなわち、少なくとも第2横樋部32bの下流端部の上縁部よりも高い位置にて受水槽33に接続されているため、当該雨水により水位は上昇して第2横樋部32bに入り込み、該第2横樋部32bにも雨水が貯えられることとなる。
【0023】
その後、さらに雨水が貯えられていくと、排水経路22内の水位はさらに上昇することとなり、図3に示す如く、第2受水桝31b、第1横樋部32aにも雨水が貯えられることとなる。その後、さらに雨水が貯えられて排水経路22内の水位が上昇すると、図4に示す如く、最終的には第1受水桝31aにも雨水が貯えられることとなり、当該水位が遂には受水槽33に接続される排水部23の管底の高さに到達し、当該排水部23から適宜雨水が排水されることとなる。
【0024】
この結果、排水経路22は、集水部21の下流部から排水部23の上流部に至る全体が貯水部Aとして形成されるのである。当該排水経路22それ自体を貯水部Aとし、雨水を貯える構成とするため、通常は単に雨水を受水槽33に向けて流し送るための横引きの地中埋設排水配管を各横樋部32a、32bに置き換え、その内径を通常の排水配管の内径よりも著しく大とし、これによって、当該横樋部32a、32bに充分な雨水を貯えることが可能となっているのである。
【0025】
このようにして排水経路22に貯えられた雨水を利用すべく、受水槽33は、図1に示す如く、中水道系統50に接続されている。該中水道系統50は、フィルタを備えた一端を受水槽33の底部に挿入させた中水吸込み配管51と、該中水吸込み配管51の他端に接続された中水用ポンプ52と、該中水用ポンプ52の吐出側に接続される中水吐出配管53と、該中水吐出配管53に介装される逆止弁54と、圧力タンク及び中水用ポンプ52の制御手段である圧力スイッチ55とを備えている。
【0026】
また、中水吸込み配管51には、建物1内の各居室に向けて配設される中水道用配管56が接続されており、該中水道用配管56の端部にはトイレ等や散水設備等の中水利用設備57が連結されている。
また、受水槽33には、上水道系統3の水道本管から配水管12が延伸され、該配水管12にボールタップ62が接続されており、該ボールタップ62は受水槽33に蓄えられている貯水に浮かべられている。
【0027】
本実施形態は以上の構成からなるものであって、本実施形態においては、雨水が建物1の陸屋根部11a、11bに降水されると、当該雨水は陸屋根部11a、11bの水勾配に沿って流下し、集水部21a、21bを経由して排水経路22に流れ込む。当該排水経路22は貯水部Aとして機能するものであって、当該貯水部Aに流れ込んだ雨水は、排水部23を介して公共排水系統90に排水されることはなく、先ず貯水部Aに貯えられることとなる。そして、貯えられた雨水は、中水道系統50を介して中水利用設備57に供給される。当該中水道系統50にあっては、中水利用設備57にて中水が使用されると、圧力タンク内から中水の給水が始まるが、中水の使用により中水道用配管56の圧力が低下して圧力スイッチ55が閉じ、その信号に基づき中水用ポンプ52が起動する。そして、中水利用設備57による中水の使用が停止すると、圧力タンクの圧力が上昇し、中水道用配管56及び中水吐出配管57の圧力も上昇して圧力スイッチ55が開き、その信号に基づき中水用ポンプ52が停止する。
【0028】
上述の如く中水利用設備57を介して貯水部Aに貯えられる雨水は使用され、これによって貯水部A内の雨水は減少することとなるが、そのタイミングで再び降水等があれば、適宜貯水部Aに貯えられる雨水が適宜集水部21を通じて供給されることとなる。一方、このようにタイミングよく雨水が供給されない場合には、受水槽33内の水位の低下に伴ってボールタップ62が作動し、上水道系統3から配水管12を介して上水が受水槽33に補給される。
これにより、貯水部Aには常時一定の水が貯えられることとなり、中水利用設備57が使用不能となる虞はない。
【0029】
本実施形態の雨水排水構造5によれば、排水経路22自体が貯水部Aとして形成されているため、雨水を貯えるために別途タンク等を設ける必要がなく、スペースの著しい削減が図られる。また、集水部21a、21bから排水部23に向けて下り傾斜状に排水経路22が形成され、当該集水部21a、21bから排水経路22に流入した雨水は、適宜排水部23に向けて流れることとなる。このため、排水経路22は雨水の流れによって適宜洗浄され、清浄な状態を維持することが可能となっている。また、集水部21a、21bが排水経路22の上流側、排水部23が排水経路22の下流側に設けられているため、貯水部Aが満杯又はそれに近い状態で集水部21から雨水が流れ込むと、その分だけ排水部23からそれまで貯えられていた雨水が排水されることとなり、これによって、貯水部Aに貯えられる水が常に入れ替えられることとなり、貯水部Aに貯えられる水質の劣化が抑制されるものとなっている。
【0030】
また、雨水を排水部23に向けて送り出す横樋部32a、32b及び受水桝31a、31bそれ自体に雨水を貯えられるため、雨水を貯めるためのスペースと当該排水のためのスペースとが一致し、別途貯水のためのスペースを確保することがなく、著しいスペースの削減が図られているのである。
また、排水経路22は敷地に埋設されているので、貯水部Aが地上に露出することがなく、敷地の見栄えの向上及び貯水部A上方を有効活用することが可能となっている。
また、集水部21が陸屋根部11に降水される雨水を受ける竪樋として形成されているため、建物1の屋根等に降った雨水のみを貯水部Aに貯えることができ、貯水される水の清浄度は高められ、また、従来は排水されるのみであった雨水を中水として有効活用することができるのである。
【0031】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、図5に示す如く、複数の横樋部を一の受水槽33に接続して形成される排水経路22であっても、本発明と同様の作用効果を奏する。この場合、排水部23の受水槽側の管底が、複数の横樋部の下流端部のうち、最も低く位置づけられる下流部の底縁部よりも上方あって、且つ、該複数の横樋部の上流端部のうち、最も高く位置づけられる上流端部の上縁部よりも下方となる位置で前記受水槽33に接続されていれば、排水経路22の少なくとも一部を貯水部Aとすることが可能となる。
もちろん、排水経路22を一本で形成する場合には、少なくとも該排水経路22を形成する横樋部の下流端部の底縁部よりも上方に排水部23の受水槽側の管底を位置づけて受水槽33に接続されてさえいれば、当該排水経路22の少なくとも一部を貯水部Aとして機能させることができる。
【0032】
一方、横樋部の上流端部よりも高い位置に排水部23を設けてしまうと、当該排水部23から排水する前に横樋部の上流端部側から貯水していた雨水が溢れてしまうこととなるため、当該横樋部の上流端部よりも下方に排水部23を設けることとしている。
また、横樋部が受ける集水部21の数は、本実施形態においては2本であったが、3本以上であっても構わない。また、横樋部として上部開放状の排水溝を採用することができ、当該排水溝であっても、本実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0033】
また、受水桝を不存在として集水部21たる竪樋及び浄化セパレータと横樋部とを連結する構成を採用しても、本実施形態と同様の作用効果を奏する。
また、集水部21は、建物1の敷地内に降水される雨水を集水する構成を採用することも可能である。この場合、当該雨水が降水される領域をコンクリート面等の雨水を流下可能な構成のものを採用する場合には、上述の如きセパレータ27を採用することが可能であるが、該領域を地面等として降水された雨水を泥水として流下可能なものを採用する場合には、上記セパレータ27の前に沈殿槽を設け、当該沈殿槽とセパレータ27とを接続することで、雨水を浄化して排水経路22に導くことが可能とすることができる。
【0034】
また、上水道系統3に接続されるボールタップ62は、図6に示す如く、排水経路22の上流端部となる受水桝31a、31bに設ける構成を採用することも可能である。この場合、当該上水道系統から供給される上水をも排水経路22を上流から下流に向けて流すことができ、当該排水経路22を上水によって洗浄することができるものとなる。
【符号の説明】
【0035】
1 建物
2 建物躯体
3 上水道系統
5 雨水排水構造
21a 第1集水部
21b 第2集水部
22 排水経路
23 排水部
31a 第1受水桝
31b 第2受水桝
32a 第1横樋部
32b 第2横樋部
33 受水槽
50 中水道系統
57 中水利用設備
62 ボールタップ
91 公共排水系統
92 公共上水道配管
A 貯水部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物と該建物が建設されている敷地に降水される雨水のいずれか一方又は両方を排水する雨水排水構造において、
前記建物と敷地に降水される雨水のいずれか一方又は両方を一次的に集める集水部と、
前記敷地外に敷設される公共排水系統に接続される排水部と、
を備え、
該集水部の下流部から排水部の上流部までの排水経路を全体に亘って貯水部とした
ことを特徴とする雨水排水構造。
【請求項2】
前記貯水部は、
水勾配を有して形成され、上流端部が前記集水部の下流部に接続されて下流端部に向けて雨水を流す1又は複数の横樋部と、
該1又は複数の横樋部の下流端部に接続される受水槽と、を備え、
該受水槽に接続される前記排水部は、1又は複数の横樋部の下流端部のうち、最も低く位置づけられる下流部の底縁部よりも上方あって、且つ、1又は複数の横樋部の上流端部のうち、最も高く位置づけられる上流端部の上縁部よりも下方となる位置で前記受水槽に接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の雨水排水構造。
【請求項3】
敷地または該敷地に建設されている建物に降水される雨水を排水する雨水排水構造において、
前記雨水を集めて導水する集水部が、直接に、又は受水枡を介して横引きされた横樋部に接続され、該横樋部を経由して受水槽に連結され、且つ、該受水槽から横引きされた排水部を経由して公共排水系統に接続される配管構造を有し、
該公共排水系統に接続する排水部の管底よりも下方に位置する前記横樋部及び受水槽、又は、前記受水桝、横樋部及び受水槽を一次的に雨水を貯め得る貯水部としたことを特徴とする排水構造。
【請求項4】
前記横樋部は、配管状に形成されて地中に埋設されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の雨水排水構造。
【請求項5】
前記横樋部は、200φ〜300φの内径を有して形成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の雨水排水構造。
【請求項6】
前記建物は中低層規模の集合住宅又は戸建て住宅であって、
前記横樋部は、当該住宅に使用される排水処理配管の2〜3倍の内径を有して形成されている
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の雨水排水構造。
【請求項7】
前記集水部は、前記建物の屋根に降水される雨水を受ける竪樋である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の雨水排水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−38295(P2011−38295A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186011(P2009−186011)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】