説明

電力制御装置

【課題】複数台の車両のバッテリを充電する際の充電時間を短縮でき、一の車両の電気エネルギを有効に利用して他の車両のバッテリを充電できる電力制御装置を提供する。
【解決手段】電力制御装置1は、バッテリ51に蓄電された電気エネルギを走行に用いる電気自動車などの車両5に接続されバッテリ51の充電および放電を行う電力変換部として機能するDC/DCコンバータ24,25を複数備えている。コントローラ3は、通信により複数のDC/DCコンバータ24,25の動作を制御する。これら複数のDC/DCコンバータ24,25は直流電力線L1を介して互いに接続されている。コントローラ3は、DC/DCコンバータ24に車両501が接続され、DC/DCコンバータ25に車両502が接続されている状態で、車両501と車両502との間でバッテリ51の電気エネルギが融通されるようにDC/DCコンバータ24,25を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリに蓄電された電気エネルギを用いて走行する車両のバッテリの充放電に用いられる電力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)など、電気エネルギを蓄電するバッテリと、このバッテリに蓄電された電気エネルギを用いて走行時の駆動力を発生する電動機とを具備した車両が開発、市販されている。この種の車両に搭載されているバッテリの充電方法として、住宅等に設置されたコンセントに車両を接続し、コンセントからの供給電力によりバッテリを充電する方法が実用化されている。
【0003】
また、この種の車両(電気自動車)に搭載されているバッテリを放電させて、住宅内にある電気機器に電力供給を行うことも検討されている(たとえば特許文献1参照)。特許文献1記載のシステムでは、制御装置は、電力供給量と使用電力量とに基づいてバッテリを充電するか放電させるかを切り替える切替信号を発生し、双方向給電装置は、切替信号に基づいてバッテリの充電あるいはバッテリから電気機器への給電を行う。このシステムは、太陽光発電設備と、燃料電池と、蓄電池と、商用交流電源をAC/DCコンバータにより直流に変換して得られた直流電源とのうちいずれかの直流電源を用いて、車両のバッテリを充電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−130647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載のシステムでは、双方向給電装置に対して同時に複数台の車両を接続することは想定されておらず、双方向給電装置に対して同時に1台の車両しか接続することができない。そのため、特許文献1記載のシステムでは、複数台の車両のバッテリを効率的に充電することができない。たとえば電気自動車を2台所有しているような世帯においては、一方の電気自動車のバッテリの充電が完了してから他方の電気自動車のバッテリの充電を開始する必要があり、1台の場合に比べて約2倍の充電時間を要する。
【0006】
また、特許文献1記載のシステムでは、複数台の車両のうち1台に余分な電気エネルギがある場合でも、この電気エネルギを有効に利用して他の車両のバッテリを充電するようなことはできない。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みて為されており、複数台の車両のバッテリを充電する際の充電時間を短縮でき、また、一の車両の電気エネルギを有効に利用して他の車両のバッテリを充電できる電力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電力制御装置は、電気エネルギを蓄電するバッテリを具備し当該バッテリに蓄電された電気エネルギを走行に用いる車両が個別に接続され、双方向に電力変換を行うことにより接続された前記車両の前記バッテリの充電および放電を行う複数の電力変換部と、前記複数の前記電力変換部の動作を制御するコントローラとを備え、前記複数の前記電力変換部は、前記バッテリの充電時に電力の入力端となる給電端子同士が互いに接続されており、前記コントローラは、前記複数の前記電力変換部に前記車両が複数台接続されている状態において、一の前記電力変換部に接続されている前記車両の前記バッテリの放電出力にて、他の前記電力変換部に接続されている前記車両の前記バッテリの充電を行うように、前記電力変換部を制御する機能を有することを特徴とする。
【0009】
この電力制御装置において、前記複数の前記電力変換部は、前記給電端子が外部電源に接続されており、前記コントローラは、一の前記電力変換部に接続されている前記車両の前記バッテリの放電出力にて、他の前記電力変換部に接続されている前記車両の前記バッテリを充電するように前記電力変換部を制御する融通モードと、前記外部電源からの供給電力にて前記車両の前記バッテリを充電するように前記電力変換部を制御する外部電源モードとを有することが望ましい。
【0010】
この電力制御装置において、前記コントローラは、前記車両との間で通信を行い少なくとも前記バッテリの残容量を含む車両情報を前記車両から取得し、当該車両情報に基づいて前記複数の前記電力変換部を制御することがより望ましい。
【0011】
この電力制御装置において、前記コントローラは、ユーザによる操作入力を受け付ける操作入力部を有し、前記操作入力に基づいて前記複数の前記電力変換部を制御することがより望ましい。
【0012】
この電力制御装置において、前記複数の前記電力変換部のうち少なくとも1つは、接続先として前記車両と据置型蓄電池とを択一的に選択可能な兼用電力変換部であって、接続先として前記据置型蓄電池が選択された状態では前記バッテリに代えて当該据置型蓄電池の充電および放電を行い、前記コントローラは、前記兼用電力変換部の接続先の属性に応じて、前記兼用電力変換部による充電および放電のための電圧および電流を制御することがより望ましい。
【0013】
この電力制御装置において、前記兼用電力変換部の接続先を前記車両と前記据置型蓄電池との間で切り替える経路切替部をさらに備え、前記コントローラは、前記経路切替部に選択信号を送信することによって前記兼用電力変換部の接続先を指定することがより望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、複数台の車両のバッテリを充電する際の充電時間を短縮でき、また、一の車両の電気エネルギを有効に利用して他の車両のバッテリを充電できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1に係る電力制御装置を用いたシステム全体を示す概略構成図である。
【図2】実施形態2に係る電力制御装置を用いたシステム全体を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
本実施形態の電力制御装置は、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)など、電気エネルギを蓄電するバッテリと、バッテリに蓄電された電気エネルギを用いて走行時の駆動力を発生する電動機とを具備した車両の充電用に用いられる。なお、車両は、バッテリに蓄電された電気エネルギを走行に用いる電動車両であればよく、四輪自動車に限らず電動二輪車などであってもよい。
【0017】
この電力制御装置は、住宅等に設置され、住宅等に設置されているコンセントから車両に電力供給して車両のバッテリを充電し、また、車両のバッテリを放電させて住宅等に電力供給を行う。なお、本実施形態では、電力制御装置が戸建て住宅に用いられる場合について説明するが、戸建て住宅に限らず、集合住宅や事業所などに電力制御装置が用いられていてもよい。
【0018】
本実施形態の電力制御装置1は、図1に示すように、後述する複数の直流電源を協調させて住宅に設けられている負荷に電力供給するパワーコンディショナ2と、パワーコンディショナ2の動作を制御するコントローラ3とを備えている。パワーコンディショナ2は、交流分電盤41および直流分電盤42に接続され、これらの分電盤を経由して負荷回路(図示せず)に対して電力を供給する。ここでいう負荷回路は、照明器具、空調装置、給湯器等の機器のほか、コンセント、壁スイッチ等の配線器具も含んでいる。
【0019】
ここで、交流分電盤41は商用交流電源(商用電力系統)40にも接続されており、直流電源と商用交流電源40との連系運転により、直流電源だけでなく商用交流電源40からも負荷回路に電力供給される。さらに、パワーコンディショナ2には特定の負荷回路が交流分電盤41を介さずに接続されており、これら特定の負荷回路については、商用交流電源40の停電時においてもパワーコンディショナ2が自立運転することにより電力供給可能である。
【0020】
パワーコンディショナ2は、複数の直流電源からの直流電力を所望の電圧、電流の直流電力に変換するDC/DCコンバータ21〜25を直流電源ごとに備えている。これらDC/DCコンバータ21〜25は、直流電源からの入力を既定の電圧の直流電力に変換し、パワーコンディショナ2内の直流電力線L1に出力する。
【0021】
ここでは、パワーコンディショナ2に接続される直流電源としては、車両5に搭載されているバッテリ51のほか、太陽電池6と、燃料電池7と、据置型蓄電池8とがある。つまり、パワーコンディショナ2は、太陽電池6用のDC/DCコンバータ21と、燃料電池7用のDC/DCコンバータ22と、据置型蓄電池8用のDC/DCコンバータ23と、車両5用のDC/DCコンバータ24,25とを備えている。さらに、パワーコンディショナ2は、交流分電盤41に接続されている商用交流電源40からの交流電力を直流電力に変換し、直流電力線L1に出力するAC/DCコンバータ26も直流電源として備えている。
【0022】
DC/DCコンバータ21〜25のうち、据置型蓄電池8用のDC/DCコンバータ23および車両5用のDC/DCコンバータ24,25は、充放電が可能なように双方向に電力変換が可能な双方向型コンバータからなる。車両5用のDC/DCコンバータ24,25はそれぞれ個別に車両5が接続されバッテリ51の充電および放電を行う電力変換部を構成している。なお、電力制御装置1は、個別に車両5が接続される電力変換部を複数備えていればよく、車両5用のDC/DCコンバータを3台以上備えていてもよい。
【0023】
また、パワーコンディショナ2は、各直流電源から得られる直流電力を、交流電力に変換する出力用DC/ACコンバータ27,28と、所望の電圧、電流の直流電力に変換する出力用DC/DCコンバータ29とを備えている。出力用DC/ACコンバータ27,28、出力用DC/DCコンバータ29は、それぞれパワーコンディショナ2内の直流電力線L1に接続されている。ここで、出力用DC/ACコンバータ27は交流分電盤41経由で負荷回路へ交流電力を出力し、出力用DC/ACコンバータ28は特定の負荷回路に対して交流電力を出力し、出力用DC/DCコンバータ29は直流分電盤42経由で負荷回路へ直流電力を出力する。出力用DC/ACコンバータ28はパワーコンディショナ2の自立運転時にも特定の負荷回路に電力供給可能である。なお、パワーコンディショナ2から負荷回路への電力供給時に過電流や漏電が検知された場合には、図示しないブレーカが給電路を遮断する。
【0024】
コントローラ3は、通信線(図1では破線で示す)L2にてパワーコンディショナ2と接続されており、宅内においてユーザ(住宅の家人)が操作し易い場所に設置されている。コントローラ3は、ユーザによる操作入力を受け付ける操作入力部31と、液晶モニタ等からなる表示部32と、演算処理を行う演算処理部33と、演算処理部33にて実行されるプログラム等が格納されたメモリ34と、通信部35とを備えている。本実施形態ではコントローラ3はマイコン(マイクロコンピュータ)を主構成として構成されている。コントローラ3は、通信部35にてパワーコンディショナ2の各部(DC/DCコンバータ21〜25、AC/DCコンバータ26、出力用DC/ACコンバータ27,28、出力用DC/DCコンバータ29)と通信を行い、制御信号で各部の動作を個別に制御する。操作入力部31および表示部32は、タッチパネルディスプレイにて実現されていてもよい。
【0025】
車両5は、図1に示すように、パワーコンディショナ2に接続されているケーブル(図示せず)に着脱自在に接続されるコネクタ52と、コントローラ3との通信を行う通信回路53と、バッテリ51の充放電を行う充放電回路54とを具備している。充放電回路54は、車両5内においてバッテリ51の充放電経路の切り替えを行い、パワーコンディショナ2が接続されていない状態では、回生電流によってバッテリ51を充電したり、バッテリ51の電気エネルギを電動機に与えたりする。バッテリ51は、たとえばリチウムイオン電池からなる。ここで、コネクタ52に接続されるケーブルは、車両5用のDC/DCコンバータ24,25に接続されている電力線L3に加えて通信線L2を含んでおり、通信回路53は通信線L2を介してコントローラ3の通信部35との間で通信を行う。なお、図1では、車両5において電動機(モータ)等の電力制御装置1の動作と直接関係のない構成については、図示を省略している。
【0026】
この構成により、車両5は、通信回路53がコントローラ3から充電の指示を受けると、コネクタ52経由でパワーコンディショナ2から供給される電力によって充放電回路54がバッテリ51を充電する。一方、車両5は、通信回路53がコントローラ3から放電の指示を受けると、充放電回路54がバッテリ51に蓄電されている電力をコネクタ52経由でパワーコンディショナ2に放電する。
【0027】
具体的には、コントローラ3は、通信部35から車両5の通信回路53に対して切替信号を送信し、充放電回路54の動作状態を切替信号に基づいて充電、放電、あるいは停止(充放電のいずれも行わない)のいずれかに切り替える。なお、コントローラ3は、車両5との間の通信をケーブルに含まれる通信線L2を介して行う構成に限らず、電力線L3を伝送路に用いる電力線搬送通信や、無線通信によって行ってもよい。
【0028】
次に、上述した構成の電力制御装置1による車両5のバッテリ51の充放電に係る基本的な動作について簡単に説明する。
【0029】
コントローラ3は、パワーコンディショナ2に車両5が接続されると、車両5との間で通信を行い少なくともバッテリ51の残容量を含む車両情報を車両5から取得する。コントローラ3は、車両情報に基づき、バッテリ51の残容量と所定の充電閾値とを比較し、充電閾値に残容量が達するまでは、バッテリ51の充電を行う。なお、コントローラ3は、バッテリ51が満充電となるようにバッテリ51の仕様に応じた充電閾値を用いてもよいし、操作入力部31を用いてユーザが車両5ごとに任意に設定した充電閾値を用いてもよい。
【0030】
すなわち、バッテリ51の残容量が充電閾値を下回っていると、コントローラ3は、車両5の充放電回路54の動作状態を充電に切り替え、且つ車両5への給電を行うように車両5が接続されたDC/DCコンバータ24,25を充電モードで動作させる。このとき、コントローラ3は、太陽電池6、燃料電池7、据置型蓄電池8による電力供給量と負荷回路での使用電力量とを比較し、電力供給量が使用電力量を上回っている場合には、DC/DCコンバータ21〜23からの電気エネルギを車両5へ供給する。電力供給量が使用電力量以下である場合には、コントローラ3は、AC/DCコンバータ26からの電気エネルギを車両5へ供給するように、DC/DCコンバータ21〜25、AC/DCコンバータ26を制御する。
【0031】
このようにコントローラ3は、給電端子に接続された外部電源(太陽電池6、燃料電池7、据置型蓄電池8、商用交流電源40)からの供給電力にて車両5のバッテリ51を充電するようにDC/DCコンバータ24,25を制御する外部電源モードを有している。ここでいう給電端子は、DC/DCコンバータ24,25においてバッテリ51の充電時に電力の入力端となる端子、つまり車両5とは反対側の端子である。
【0032】
一方、バッテリ51の残容量が充電閾値を超えていると、コントローラ3は、車両5の充放電回路54の動作状態を放電または停止に切り替える。このとき、コントローラ3は、たとえばバッテリ51の残容量に余裕がある場合や、商用交流電源40の停電時などに、車両5のバッテリ51から負荷回路へ給電するようにDC/DCコンバータ24,25を放電モードで動作させる。これにより、電力制御装置1は、太陽電池6、燃料電池7、据置型蓄電池8による電力供給量が負荷回路での使用電力量に比べて不足している場合に、その不足分をバッテリ51の放電出力によって賄うことができる。
【0033】
ところで、本実施形態では、電力制御装置1は、パワーコンディショナ2に電力変換部としての車両5用のDC/DCコンバータ24,25を複数(2つ)備えているので、同時に複数台(ここでは2台)の車両5をパワーコンディショナ2に接続可能である。以下、各車両5を区別する場合には、一方のDC/DCコンバータ24に接続された車両5を「車両501」といい、他方のDC/DCコンバータ25に接続された車両5を「車両502」という。なお、車両5のコネクタ52に接続されるケーブル側のコネクタを共通の仕様としておけば、DC/DCコンバータ25に車両501を接続し、DC/DCコンバータ24に車両502を接続することも可能である。
【0034】
これにより、電力制御装置1は、2台の車両5を同時に充電できるので、2台の車両5を1台ずつ順に充電する場合に比べて、約半分の充電時間で充電が完了する。したがって、電気自動車を複数台所有しているような世帯において、複数台の車両5のバッテリ51を効率的に充電可能となる。
【0035】
また、複数のDC/DCコンバータ24,25は、バッテリ51の充電時に電力の入力端となる給電端子同士が直流電力線L1を介して互いに接続されている。さらに、コントローラ3は、車両501と車両502との間でバッテリ51の電気エネルギが融通されるようにDC/DCコンバータ24,25を制御する機能を有している。すなわち、コントローラ3は、DC/DCコンバータ24,25にそれぞれ車両501,502が接続されている状態において、DC/DCコンバータ24,25の一方を充電モード、他方を放電モードで動作させる制御が可能に構成されている。言い換えれば、コントローラ3は、DC/DCコンバータ24,25の一方に接続されている車両5のバッテリ51の放電出力にて、他方に接続されている車両5のバッテリ51の充電を行うようにDC/DCコンバータ24,25を制御する融通モードを有する。
【0036】
本実施形態では、コントローラ3は、各車両501,502から取得した車両情報に基づいて、車両501,502間で電気エネルギの融通が可能か否かを判断し、融通可能と判断すると融通が行われるようにDC/DCコンバータ24,25を自動的に制御する。具体的に説明すると、コントローラ3は、車両5から取得した車両情報に基づき、バッテリ51の残容量と充電閾値とを比較し、残容量が充電閾値を下回っている場合には、この車両5が充電可能な状態にあると判断する。さらに、コントローラ3は、車両5から取得した車両情報に基づき、バッテリ51の残容量と所定の放電閾値とを比較し、残容量が放電閾値を超えている場合は、この車両5が放電可能な状態にあると判断する。
【0037】
本実施形態では一例として、放電閾値は充電閾値よりも大きな値であって、操作入力部31を用いてユーザが車両5ごとに任意に設定した値である場合を想定している。ここで、ユーザが操作入力部31を用いて翌日の走行予定距離を車両5ごとに入力できるようにコントローラ3が構成されている場合、コントローラ3は、入力された走行予定距離に応じて充電閾値を決定する。つまり、コントローラ3は、走行予定距離として入力された距離を車両5が走行をするのに必要なバッテリ51の残容量に所定のマージンを加算した値を充電閾値とし、さらに充電閾値に所定のマージンを加算した値を放電閾値とする。コントローラ3は、このようにして充電閾値および放電閾値を車両5ごとに設定し、車両5別にメモリ34に格納する。なお、コントローラ3は、設定した充電閾値および放電閾値を、対応する車両5に送信して車両5のメモリ(図示せず)に書き込み、車両情報として車両5から残容量と共に取得してもよい。
【0038】
コントローラ3は、一方の車両5が充電可能であり、且つ他方の車両5が放電可能であると判断した場合、車両501,502間で電気エネルギの融通が可能と判断し、融通モードで動作する。たとえば、車両501のバッテリ51の残容量が放電閾値を超え、且つ車両502のバッテリ51の残容量が充電閾値を下回っている場合、コントローラ3は、車両501の電気エネルギが車両502に融通されるようにDC/DCコンバータ24,25を制御する。この場合、コントローラ3は、車両501の充放電回路54の動作状態を放電に切り替えてDC/DCコンバータ24を放電モードで動作させ、車両502の充放電回路54の動作状態を充電に切り替えてDC/DCコンバータ25を充電モードで動作させる。
【0039】
電力制御装置1は、このように車両501,502間で電気エネルギを融通させている状態においても、太陽電池6、燃料電池7、据置型蓄電池8から負荷回路に対して給電を継続する。そのため、直流電力線L1には、車両5用のDC/DCコンバータ24,25からの出力の他に、DC/DCコンバータ21〜23からの出力も印加されることになる。そこで、コントローラ3は、DC/DCコンバータ24が直流電力線L1に出力する電力と、DC/DCコンバータ25が車両502に出力する電力とが同じ大きさになるように、DC/DCコンバータ24,25を制御する。これにより、見かけ上、車両501,502間で電気エネルギが融通されることになる。
【0040】
車両501,502間での電気エネルギの融通中に、給電元である車両501のバッテリ51の残容量が放電閾値を下回るか、給電先である車両502のバッテリ51の残容量が充電閾値に達すると、電力制御装置1は電気エネルギの融通を中止する。このとき、給電先である車両502のバッテリ51の残容量が充電閾値に達していなければ、電力制御装置1は、不足分については太陽電池6等からの出力で補うことにより車両502のバッテリ51の充電を完了させる。コントローラ3は、車両501,502間での電気エネルギの融通中に、定期的に車両情報を取得して残容量と放電閾値、充電閾値との比較を行ってもよいし、電気エネルギの融通を開始する時点で融通する電気エネルギ(電力量)を決定しておいてもよい。
【0041】
これに対し、両方の車両501,502で残容量が充電閾値を超えている場合、あるいは両方の車両501,502で残容量が放電閾値を下回っている場合には、コントローラ3は、車両501,502間で電気エネルギの融通ができないと判断する。また、本実施形態では放電閾値が充電閾値よりも大きいので、車両501,502の一方でもバッテリ51の残容量が放電閾値と充電閾値との間にあれば、コントローラ3は、車両501,502間で電気エネルギの融通ができないと判断する。
【0042】
車両501,502間での電気エネルギの融通ができないとコントローラ3が判断した場合、電力制御装置1は、1台の車両5のみが接続されている場合と同様に動作する。要するに、コントローラ3は、外部電源(太陽電池6、燃料電池7、据置型蓄電池8、商用交流電源40)からの供給電力にて車両5のバッテリ51を充電するようにDC/DCコンバータ24,25を制御する外部電源モードで動作する。あるいは、コントローラ3は、必要に応じてDC/DCコンバータ24,25を放電モードで動作させて車両501,502から負荷回路へ給電する。
【0043】
また、電力制御装置1は、電力変換部としての車両5用のDC/DCコンバータを3台以上備えている場合、DC/DCコンバータの数に応じて3台以上の車両5を同時に接続することができる。この場合において、コントローラ3は、3台以上の車両5間で電気エネルギを融通させるように、複数のDC/DCコンバータの動作を制御する。この場合、電力制御装置1は、1台の車両5から複数台の車両5へ電気エネルギを融通してもよいし、複数台の車両5から1台の車両5へ電気エネルギを融通してもよいし、複数台の車両5から複数台の車両5へ電気エネルギを融通してもよい。
【0044】
なお、放電閾値は充電閾値よりも大きな値に限らず、放電閾値と同値、あるいは充電閾値より小さな値であってもよい。放電閾値が充電閾値より小さい場合、ある車両5のバッテリ51の残容量が放電閾値と充電閾値との間にあれば、コントローラ3は、この車両5について充電可能であり且つ放電可能であると判断する。コントローラ3は、両方の車両501,502で残容量が放電閾値と充電閾値との間にある場合、車両501,502間で電気エネルギを融通させるか否か、並びに融通させる場合には融通させる向きを適宜決定する。
【0045】
以上説明した本実施形態の電力制御装置1によれば、電力変換部としての車両5用のDC/DCコンバータ24,25を複数備えているので、同時に複数台の車両5をパワーコンディショナ2に接続可能である。これにより、電力制御装置1は、複数台の車両5を同時に充電できるので、複数台の車両5を1台ずつ充電する場合に比べて、充電時間の短縮を図ることができ、複数台の車両5のバッテリ51を効率的に充電可能となる。
【0046】
さらに、電力制御装置1は、複数台の車両5のバッテリ51に蓄電された電気エネルギを同時に放電することができるので、商用交流電源40の停電時などに、車両5のバッテリ51から負荷回路へ供給可能な電力容量が大きくなる。
【0047】
また、複数のDC/DCコンバータ24,25は直流電力線L1を介して互いに接続され、コントローラ3は、複数台の車両5間でバッテリ51の電気エネルギが融通されるようにDC/DCコンバータ24,25を制御可能である(融通モード)。そのため、たとえば2台の車両5のうち一方においてはバッテリ51の残容量が十分で、他方はバッテリ51の充電を必要とする場合に、電力制御装置1は、車両5以外から給電を受けることなく車両5間で電気エネルギを融通させるバッテリ51を充電できる。
【0048】
したがって、たとえば夜間などで太陽電池6からの出力がなく、燃料電池7や据置型蓄電池8の出力だけではバッテリ51の充電用の電力を賄えないときでも、電力制御装置1は、商用交流電源40から電力供給を受けずにバッテリ51を充電できる。すなわち、電力制御装置1は、ある車両5に余分な電気エネルギがあれば、この電気エネルギを有効に利用して他の車両5のバッテリ51を充電することができるため、商用交流電源40からの電力需要のピークカットの効果を奏する。
【0049】
しかも、一般に、電気自動車やプラグインハイブリッド車の車両5は比較的大容量のバッテリ51を備えており、電力制御装置1は、このバッテリ51の放電出力を用いて他のバッテリ51を充電することにより急速充電が可能である。つまり、電力制御装置1は、太陽電池6や燃料電池7や据置型蓄電池8等の出力を用いてバッテリ51を充電する場合に比較して、複数台の車両5間で電気エネルギを融通することにより、バッテリ51の充電時間の短縮を図ることができる。
【0050】
さらにまた、本実施形態では、コントローラ3は、車両5との間で通信を行い少なくともバッテリ51の残容量を含む車両情報を車両5から取得し、この車両情報に基づいて複数のDC/DCコンバータ24,25を制御する。これにより、コントローラ3は、バッテリ51の残容量に応じて車両501,502間で電気エネルギの融通が可能か否かを判断し、融通可能と判断すると融通が行われるようにDC/DCコンバータ24,25を自動的に制御することができる。しかも、コントローラ3は、走行予定距離に応じて決定される充電閾値、放電閾値をバッテリ51の残容量と比較することで電気エネルギの融通が可能か否かを判断するので、車両501,502の走行予定距離に応じた適切な電気エネルギの融通が可能になる。
【0051】
ところで、コントローラ3は、車両5から取得した車両情報に加えて、あるいは車両情報にかかわらず、操作入力部31に対するユーザの操作入力に基づいて、複数のDC/DCコンバータ24,25を制御するように構成されていてもよい。この場合、たとえば図1の例において両方の車両501,502で残容量が充電閾値を超えている場合や、両方の車両501,502で残容量が放電閾値を下回っている場合でも、電力制御装置1は必要に応じ車両501,502間で電気エネルギを融通できる。その結果、ユーザは、自らの意思により複数の車両5間で電気エネルギを融通させることができ、バッテリ51の残容量にかかわらず、いずれかの車両5のバッテリ51に優先的に電気エネルギを集めることが可能となる。
【0052】
なお、電力制御装置1は、複数の車両5間で電気エネルギを融通できる構成であればよく、太陽電池6、燃料電池7、据置型蓄電池8等の直流電源を接続できることは必須の構成ではなく、DC/DCコンバータ21〜23は省略されていてもよい。さらに、電力制御装置1は、車両5のバッテリ51から住宅に設けられている負荷に電力供給する機能についても必須ではなく、出力用DC/ACコンバータ27,28、出力用DC/DCコンバータ29は省略されていてもよい。
【0053】
また、コントローラ3はパワーコンディショナ2と別体に限らず、パワーコンディショナ2内に組み込まれていてもよい。この場合、コントローラ3は、車両5から取得される車両情報に基づいて、電力変換部としてのDC/DCコンバータ24,25を通信によらずに直接制御できる。
【0054】
(実施形態2)
本実施形態の電力制御装置1は、図2に示すように少なくとも1つの電力変換部(ここではDC/DCコンバータ24)が、接続先として車両5と据置型蓄電池8とを択一的に選択可能な兼用電力変換部である点で実施形態1の電力制御装置1と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0055】
兼用電力変換部としてのDC/DCコンバータ24は、接続先として据置型蓄電池8が選択された状態では、車両5のバッテリ51に代えて据置型蓄電池8の充電および放電を行う。
【0056】
コントローラ3は、このDC/DCコンバータ24の接続先の属性に応じて、DC/DCコンバータ24による充電および放電のための電圧および電流を制御する。ここでいう接続先の属性は、少なくとも車両5と据置型蓄電池8との別を含み、さらにバッテリ51あるいは据置型蓄電池8の容量、適切な充電電圧および充電電流、並びに適切な放電電圧および放電電流などを含んでいてもよい。すなわち、コントローラ3は、通信線L2を介してDC/DCコンバータ24との間で通信を行い、DC/DCコンバータ24の接続先の属性を取得して、接続先に合わせた適切な充放電のための電圧、電流にてDC/DCコンバータ24を動作させる。
【0057】
また、本実施形態では、電力制御装置1は兼用電力変換部としてのDC/DCコンバータ24の接続先を車両5と据置型蓄電池8との間で切り替える経路切替部20をパワーコンディショナ2内に備えている。経路切替部20は、DC/DCコンバータ24と、据置型蓄電池8および車両(コネクタ52に接続されるケーブル)5との間に挿入されており、DC/DCコンバータ24の接続先を車両5と据置型蓄電池8とで切り替える。ここで、経路切替部20は、コントローラ3に接続された通信線L2の接続先についても、車両5と据置型蓄電池8との間で切り替えている。なお、経路切替部20と据置型蓄電池8との間は固定的に接続されていてもよい。
【0058】
コントローラ3は、経路切替部20に通信線L2を通して選択信号を送信し、この選択信号によって経路切替部20を切替制御する。つまり、コントローラ3は、経路切替部20に選択信号を送信することによってDC/DCコンバータ24の接続先および通信線L2の接続先を指定する。ここで、経路切替部20は車両5が接続されているか否かを検知する機能を有し、コントローラ3は、経路切替部20から車両5が接続されているとの検知結果を受信すると、自動的にDC/DCコンバータ24の接続先として車両5を選択する選択信号を送信する。なお、コントローラ3は、操作入力部31に対するユーザの操作入力に基づいてDC/DCコンバータ24の接続先を選択するように構成されていてもよい。
【0059】
以上説明した構成によれば、電力制御装置1は、1つのDC/DCコンバータ24を車両5のバッテリ51と据置型蓄電池8とに兼用することができるので、DC/DCコンバータの必要数が少なく抑えられるという利点がある。しかも、コントローラ3は、DC/DCコンバータ24の接続先に合わせた適切な充放電のための電圧、電流にてDC/DCコンバータ24を動作させるので、ユーザにおいては接続先に応じてDC/DCコンバータ24の設定を変更する手間が掛からない。
【0060】
また、本実施形態の電力制御装置1は経路切替部20を備え、コントローラ3からの選択信号によってDC/DCコンバータ24の接続先を選択可能に構成されているので、ユーザにおいては、DC/DCコンバータ24の接続先を切り替える手間も掛からない。
【0061】
ところで、本実施形態の他の構成として、電力制御装置1は、経路切替部20が省略され、ユーザがDC/DCコンバータ24の接続先を手動で切り替えるように構成されていてもよい。この場合、DC/DCコンバータ24に接続されているケーブルが、車両5のコネクタ52と据置型蓄電池8とのいずれにも接続可能であって、車両5のコネクタ52および据置型蓄電池8に対して着脱可能に構成されていればよい。この構成では、電力制御装置1は、経路切替部が不要な分だけ構成の簡略化を図ることができる。
【0062】
なお、その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【符号の説明】
【0063】
1 電力制御装置
3 コントローラ
5,501,502 車両
6 太陽電池(外部電源)
7 燃料電池(外部電源)
8 据置型蓄電池(外部電源)
20 経路切替部
24,25 DC/DCコンバータ(電力変換部)
40 商用交流電源(外部電源)
51 バッテリ
L1 直流電力線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギを蓄電するバッテリを具備し当該バッテリに蓄電された電気エネルギを走行に用いる車両が個別に接続され、双方向に電力変換を行うことにより接続された前記車両の前記バッテリの充電および放電を行う複数の電力変換部と、前記複数の前記電力変換部の動作を制御するコントローラとを備え、
前記複数の前記電力変換部は、前記バッテリの充電時に電力の入力端となる給電端子同士が互いに接続されており、
前記コントローラは、前記複数の前記電力変換部に前記車両が複数台接続されている状態において、一の前記電力変換部に接続されている前記車両の前記バッテリの放電出力にて、他の前記電力変換部に接続されている前記車両の前記バッテリの充電を行うように、前記電力変換部を制御する機能を有することを特徴とする電力制御装置。
【請求項2】
前記複数の前記電力変換部は、前記給電端子が外部電源に接続されており、
前記コントローラは、一の前記電力変換部に接続されている前記車両の前記バッテリの放電出力にて、他の前記電力変換部に接続されている前記車両の前記バッテリを充電するように前記電力変換部を制御する融通モードと、前記外部電源からの供給電力にて前記車両の前記バッテリを充電するように前記電力変換部を制御する外部電源モードとを有することを特徴とする請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記車両との間で通信を行い少なくとも前記バッテリの残容量を含む車両情報を前記車両から取得し、当該車両情報に基づいて前記複数の前記電力変換部を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、ユーザによる操作入力を受け付ける操作入力部を有し、前記操作入力に基づいて前記複数の前記電力変換部を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電力制御装置。
【請求項5】
前記複数の前記電力変換部のうち少なくとも1つは、接続先として前記車両と据置型蓄電池とを択一的に選択可能な兼用電力変換部であって、接続先として前記据置型蓄電池が選択された状態では前記バッテリに代えて当該据置型蓄電池の充電および放電を行い、
前記コントローラは、前記兼用電力変換部の接続先の属性に応じて、前記兼用電力変換部による充電および放電のための電圧および電流を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電力制御装置。
【請求項6】
前記兼用電力変換部の接続先を前記車両と前記据置型蓄電池との間で切り替える経路切替部をさらに備え、
前記コントローラは、前記経路切替部に選択信号を送信することによって前記兼用電力変換部の接続先を指定することを特徴とする請求項5に記載の電力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−81289(P2013−81289A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219401(P2011−219401)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】