説明

電力系統の自律型分散制御システム及び制御方法

【課題】自律型分散制御システムにおいて電力系統全体の運転コストを低減化する。
【解決手段】系統電力の系統周波数(SF)が周波数逸脱許容範囲の上限値(ΔF1U)より上昇したときは、発電機1の主力をゆっくり減衰させ、発電機2の出力を早く低下させる。系統周波数(SF)が周波数逸脱許容範囲の下限値(ΔF1L)より低下したときは、発電機1の出力をいち早く多く増加させ、発電機2の出力をゆっくり上昇させる。発電機1、2を有する自立型分散制御システムでは、発電機1の稼動する割合が高く設定され、全体として運転コストが低くなり、高効率となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律分散制御方式にかかる電力系統の自律型分散制御システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
離島や開発途上国など既存の電力系統が整備されていない地域、或いは、小規模エリアでの電力供給では、独立した小規模の電力系統(マイクログリッド)から電力供給を行う場合がある。
【0003】
このような小規模電力系統であっても、効率的な運用や周波数など電力品質を一定以上に維持することが求められる。このように、効率的な運用を行ったり、電力品質を一定に維持するためには、既存の電力系統と同様に、通信回線を用いて各発電機の出力を把握し、経済的な出力分担になるよう制御を行う必要がある。また、発電機に、系統周波数が目標値(周波数逸脱許容範囲)から逸脱すると、系統周波数が制御仕上がり目標周波数範囲に収まるように、発電機の出力を調節する周波数制御装置が設けられるが、1つの電力系統において複数の周波数制御装置が存在すると、競合による制御の混乱が生じるために、通常は1つの系統に1組だけ設置される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、通信回線を用いて周波数制御を行うと、小規模電力系統では設備が小規模であるので、通信回線などが割高になる問題がある。また、小規模電力系統であっても、複数の発電機が接続されると、複数の発電機において発電効率の高低があり、系統周波数の増減に応じて全て等しく発電機を運転すると、コストが高くなるという問題がある。
【0005】
本願は、小規模電力系統システムにおいて、安価で発電機の経済的な運用ができ、電力品質の高い電力系統の自律型分散制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願の請求項1の電力系統の自律型分散制御システム及び請求項9の制御方法は、電力系統に電力を供給する複数の発電機が接続されている電力系統の自律型分散制御システム又は制御方法において、前記複数の発電機の中から制御対象とされる複数の発電機を選択し、選択された複数の制御対象の発電機のそれぞれに周波数制御装置を設け、前記制御対象の発電機につき発電効率の高い順に運転順位を設定すると共に、前記制御対象の発電機のそれぞれの周波数制御装置には、前記電力系統を流れる供給電力の周波数を検出しつつ、当該周波数が下限として設定した下限周波数より低下したときに、発電効率の高い発電機を発電効率の低い発電機より優先的に起動若しくは出力分担させ、当該周波数が上限として設定した上限周波数より高くなったときに、発電効率の低い発電機を発電効率の高い発電機の周波数制御より優先的に停止若しくは出力を抑制するように、前記運転順位に基づいた制御特性が設定されていることを特徴とする。
【0007】
本願の請求項2の電力系統の自律型分散制御システム及び請求項10の制御方法は、請求項1の電力系統の自律型分散制御システム、若しくは請求項9の電力系統の自律型分散制御方法において、前記複数の発電機は、運転効率の高低を基準として優先段階を定めたクラスによって優先順位が定められ、運転効率の高いクラスに属する発電機の周波数制御装置の制御特性は、運転効率の低いクラスに属する発電機より、優先的に起動若しくは出力を分担するように設定されていることを特徴とする。
【0008】
本願の請求項3の電力系統の自律型分散制御システム及び請求項11の制御方法は、請求項2の電力系統の自律型分散制御システム、若しくは請求項9の電力系統の自律型分散制御方法において、前記複数のクラスにおいて所定の発電機の周波数制御装置は、系統周波数の上昇時に当該発電機の出力が一定値以下になると、周波数上昇時の出力抑制の速さが優先順位が当該クラスより上位クラスの発電機の出力抑制の速さより遅くなるように、当該発電機の周波数制御を変更することを特徴とする。
【0009】
本願の請求項4の電力系統の自律型分散制御システム及び請求項12の制御方法は、請求項1乃至3の何れかの電力系統の自律型分散制御システム又は請求項9乃至11の何れかの制御方法において、前記周波数制御装置の制御特性は、当該周波数制御装置が接続される発電機について、(1)電力系統の周波数が正常範囲内にあるとして発電機の周波数制御を開始せず、範囲外に逸脱したときに周波数制御を開始するための領域を定めた周波数逸脱許容範囲か、若しくは、(2)電力系統の周波数が正常となったとして発電機の周波数制御を中止する仕上がり目標周波数範囲か、若しくは、(3)発電機の周波数制御を行うために要する発電機出力調整速度の少なくとも何れかであることを特徴とする。
【0010】
本願の請求項5の電力系統の自律型分散制御システム及び請求項13の制御方法は、請求項4の電力系統の自律型分散制御システム又は請求項12の制御方法において、前記制御特性は前記(1)の周波数逸脱許容範囲であり、発電効率の高い発電機が周波数制御を開始する周波数逸脱許容範囲の上限値が、発電効率の低い発電機の周波数逸脱許容範囲の上限値より、高く設定され、発電効率の高い発電機が周波数制御を開始する周波数逸脱許容範囲の下限値が、発電効率の低い発電機の周波数逸脱許容範囲の下限値より、高く設定されていることを特徴とする。
【0011】
本願の請求項6の電力系統の自律型分散制御システム及び請求項14の制御方法は、請求項4の電力系統の自律型分散制御システム又は請求項12の制御方法において、前記制御特性は前記(2)の仕上がり目標周波数範囲であり、発電効率の高い発電機が出力する周波数の仕上がり目標周波数範囲が、発電効率の低い発電機の仕上がり目標周波数範囲より、高めに設定されていることを特徴とする。
【0012】
本願の請求項7の電力系統の自律型分散制御システム及び請求項15の制御方法は、請求項4の電力系統の自律型分散制御システム又は請求項12の制御方法において、前記制御特性は前記(3)の発電機出力調整速度であり、発電効率が高い発電機の周波数制御装置は、系統周波数が低下したときに発電機出力を増加させる際の応答速度を早く設定し、発電効率が低い発電機の周波数制御装置は、系統周波数が低下したときに発電機出力を増加させる際の応答速度を遅く設定したことを特徴とする。
【0013】
本願の請求項8の電力系統の自律型分散制御システム及び請求項16の制御方法は、請求項4の電力系統の自律型分散制御システム又は請求項12の制御方法において、前記制御特性は前記(3)の発電機出力調整速度であり、発電効率が高い発電機の周波数制御装置は、系統周波数が増加したときに発電機出力を低下させる際の応答速度を遅く設定し、発電効率が低い発電機の周波数制御装置は、系統周波数が増加したときに発電機出力を低下させる際の応答速度を早く設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1の電力系統の自律型分散制御システム及び請求項9の制御方法によれば、電力系統の周波数が下限周波数より低くなったときに発電効率の高い発電機が優先的に起動又は出力を分担し、電力系統の周波数が上限周波数より高くなったときには、発電効率の低い発電機の運転をいち早く停止又は出力を抑制するので、発電効率の高い発電機の出力分担が大きくなり、電力系統全体としての発電機の運転コストが低くなる。また、系統周波数が周波数逸脱許容範囲に維持され、電力品質を高く維持できる。
【0015】
本願の請求項2の電力系統の自律型分散制御システム及び請求項10の制御方法によれば、請求項1の電力系統の自律型分散制御システム若しくは請求項9の制御方法において、前記複数の発電機は、運転効率の高低を基準として優先段階を定めたクラスによって優先順位が定められ、運転効率の高いクラスに属する発電機の周波数制御装置の制御特性は、運転効率の低いクラスに属する発電機より、優先的に起動若しくは出力を分担するように設定されており、複数の発電機の優先順位は、運転効率の高低を基準として優先段階を定めたクラスによって定められるので、電力系統に接続される発電機の各々を発電効率及び稼働率等に基づいてクラス分けし、各クラス毎に優先順位を定めることで、設定や管理或いは設定変更が容易であり、系統に接続される負荷の変動に容易に対処できる。各クラスにおいては、サブクラスによって分けることも可能である。
【0016】
本願の請求項3の電力系統の自律型分散制御システム及び請求項11の制御方法によれば、周波数上昇時に指定した所定の発電機の出力が一定値以下になると、周波数上昇時の出力抑制の速さが優先順位が当該クラスより上位クラスの発電機の出力抑制の速さより遅くなるように、当該発電機の周波数制御装置を設定することで、同じクラスの指定されていない所定外の発電機だけが出力を抑制していき、負荷分担が運転下限出力に低下すると当該所定外の発電機は出力を0に低下させ、周波数が一定時間以上維持できていることを確認の後、停止する。更に、周波数上昇が続くと、当該クラスの上位クラスの発電機も出力抑制を行う。当該クラスの上位クラスの発電機の出力が一定出力より低下したら、上位クラスの発電機においても、周波数上昇時の出力抑制の速さが、運転優先順位が更に高いクラスの出力抑制の速さより遅くなるように、設定変更する。このようになると、当該クラスの所定の発電機の出力が抑制されるようになり、当該クラスの所定の発電機の出力が低下する。当該クラスの所定の発電機の出力が運転下限出力に低下したら、当該所定の発電機の出力を0に低下させ、周波数が一定時間以上維持できていることを確認の後に停止する。このように設定することで、上位クラスの発電機による供給余裕を確保し、発電停止に伴う供給力不足を防止できる。
【0017】
本発明の請求項4の電力系統の自律型分散制御システム及び請求項12の制御方法によれば、周波数制御装置の制御特性は、(1)当該周波数制御装置が、電力系統の周波数が正常範囲内にあるとして発電機の周波数制御を開始せず、範囲外に逸脱したときに周波数制御を開始するための領域を定めた電力系統の周波数逸脱許容範囲、(2)当該発電機の周波数制御を中止する仕上がり目標周波数範囲、(3)当該発電機の周波数制御に要する発電機出力調整速度の少なくとも何れかであり、これら3つの制御要素の2乃至3を組み合わせることもでき、各発電機の運転順位に基づいて周波数制御装置の制御特性を設定することで、低コストで周波数変動の少ない電力品質の高い電力供給を行うことができる。
【0018】
本発明の請求項5の電力系統の自律型分散制御システム及び請求項13の制御方法によれば、発電効率の高い発電機が周波数制御を行う周波数逸脱許容範囲の上限値が、発電効率の低い発電機の周波数逸脱許容範囲の上限値より、高く設定され、発電効率の高い発電機が周波数制御を行う周波数逸脱許容範囲の下限値が、発電効率の低い発電機の周波数逸脱許容範囲の下限値より、高く設定されることによって、発電効率の高い発電機が周波数制御を行う周波数逸脱許容範囲が、発電効率の低い発電機の周波数逸脱許容範囲より、全体的に高い領域に設定されている。これによって、周波数が上昇したときは、発電効率が低い発電機の出力を早く抑制し、周波数が下降したときは、発電効率が高い発電機の出力を優先して増加させるために、周波数の変動に伴い、次第に発電効率の高い発電機の出力分担が発電効率の低い発電機より大きくなって行き、系統全体の電力供給コストを下げる効果が生ずる。
【0019】
本発明の請求項6の電力系統の自律型分散制御システム及び請求項14の制御方法によれば、発電効率の高い発電機の仕上がり目標周波数範囲が、発電効率の低い発電機の仕上がり目標周波数範囲より、高めに設定されているので、高効率の発電機が低効率の発電機よりも動作する範囲が広いこととなり、電力系統全体としての発電コストを低く抑えることができる。
【0020】
本発明の請求項7の電力系統の自律型分散制御システム及び請求項15の制御方法によれば、系統周波数が低下したとき、発電効率が高く発電コストの低い発電機の出力を早く増加させ、発電効率が低く発電コストの高い発電機の出力増加を極力遅らせることにより、電力系統全体としての発電コストを低く抑えることができる。
【0021】
本発明の請求項8の電力系統の自律型分散制御システム及び請求項16の制御方法によれば、系統周波数が増加したとき、発電効率が高く発電コストの低い発電機の出力をゆっくり下げ、発電効率が低く発電コストの高い発電機の出力を早く下げることで、発電効率の高い発電機の出力分担を大きくすることができ、電力系統全体としての発電コストを低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態にかかる電力系統の自律型分散制御システム及び制御方法を図面に基づいて説明する。
(2台の発電機の運転制御)
図3(1)(2)は小規模電力系統において2台の発電機を有し、一つの発電機1を優先的に出力分担させる場合を示す。発電機1の周波数制御装置(以下、AFCという。)は、マイクロプロセッサを制御基板に備えたコンピュータシステムで構成される。制御基板には、自端の系統電力の周波数を検出する周波数検出装置と、検出した自端の系統周波数と基準とされる周波数との偏差を検出する比較器と、マイクロプロセッサには検出された偏差に基づいて自端の発電機出力を調整する信号を出力して周波数を制御する自律分散制御プログラムが記憶されている。
【0023】
AFC1の自律分散制御プログラムには、周波数逸脱許容範囲を定める逸脱許容範囲の上限値(ΔF1U)及び下限値(ΔF1L)と、AFC1が発電機1に出力するための周波数の仕上がり目標周波数範囲を定める仕上がり目標周波数の上限値(ΔTF1U)及び下限値(ΔTF1L)と、AFC1が周波数制御のために発電機1の出力を調整する速さである発電機出力調整速度(ΔP1L、ΔP1U)とが設定できるように、設計されている。
【0024】
上述の電力系統の周波数逸脱許容範囲は、電力系統の周波数が正常範囲内にあるとして発電機の周波数制御を開始せず、範囲外に逸脱したときに周波数制御を開始するための領域を定めたものであって、電力系統の周波数が領域内にあるときには、発電機の周波数制御は開始されず、電力系統の周波数が領域外に逸脱したときには、発電機の周波数を抑制したり上昇させたりする制御が開始される範囲である。
【0025】
周波数の仕上がり目標周波数範囲は、発電機1が出力する周波数の目標値の上下を定めたものである。AFC1は、系統周波数が上記の周波数逸脱許容範囲の上限値(ΔF1U)を超えた場合に、発電機1の出力抑制を開始し、発電機1の出力が仕上がり目標周波数の上限値(ΔTF1U)に到達したときに、発電機1の出力抑制を停止し、系統周波数が上記の周波数逸脱許容範囲の下限値(ΔF1L)を超えて下がった場合に、発電機1の出力上昇を開始し、発電機1の出力が仕上がり目標周波数の下限値(ΔTF1L)に到達したときに、発電機1の出力上昇を停止する。
【0026】
発電機出力調整速度は、系統周波数が前述の逸脱許容範囲の上限値(ΔF1U)を超えたり、或いは下限値(ΔF1L)を下回ったりした場合に、AFC1が周波数制御のために発電機1の出力を正常な値に戻すために調整する速さであり、出力を抑制する場合の速度がΔP1Uであり、出力を上昇させる速度がΔP1Lである。
【0027】
制御基板には、自律分散制御プログラムを記憶させたROM及び演算処理等のためにデータ及びプログラムを一時記憶させるRAM及びメモリーカード等の外部記憶装置等が設置されている。ROMには、自律分散制御プログラム、基準となる系統電力の周波数目標値、逸脱許容範囲の上限値(ΔF1U)及び下限値(ΔF1L)、周波数の仕上がり目標周波数範囲を定める仕上がり目標周波数の上限値(ΔTF1U)及び下限値(ΔTF1L)、発電機出力調整速度(ΔP1L、ΔP1U)等の値を示すデータが記憶されている。
【0028】
図2は自律分散制御プログラムの処理の流れを示す。先ず、発電機1のAFC1の自律分散制御プログラムは、周波数制御開始の後に、発電機1が接続されている電力系統の系統周波数(SF)を監視し、系統周波数(SF)と基準周波数(例えば、50Hz若しくは60Hz)との偏差ΔFを演算する(ステップ1)。次ぎにこの偏差ΔFが逸脱許容範囲の下限値(ΔF1L)以上、上限値(ΔF1U)以下の間にあるかどうかを判別する(ステップ2)。偏差ΔFがその範囲内に位置する(yes)の場合には正常として再び系統周波数(ΔF)を監視する。偏差ΔFがその範囲内に位置しない(no)の場合には、偏差ΔFが逸脱許容範囲の上限値(ΔF1U)より大きいかどうかを判別する(ステップ3)。これは、系統周波数(SF)が逸脱許容範囲上限値ΔF1Uより上がりすぎているかどうかをチェックするものである。
【0029】
ステップ3の判別で偏差ΔFが逸脱許容範囲の上限値(ΔF1U)より大きいときには(yes)の場合には、発電機1の出力を減少させる信号を出力して仕上がり周波数上限値ΔTF1Uまで戻す(ステップ4)。このときの周波数を抑制するように制御するための出力調整速度はΔP1Uで行う。ステップ4で発電機1の仕上がり周波数上限値ΔTF1Uまで戻したら、再度周波数制御開始後であってステップ1の前に戻り、系統周波数(SF)の監視及び偏差の演算を行う。
【0030】
ステップ3の偏差ΔFの比較において、偏差ΔFが逸脱許容範囲上限値ΔF1Uより大きくなかった場合(noの場合)、偏差ΔFが逸脱許容範囲下限値ΔF1Lより小さいかどうかを判別する(ステップ5)。これは、系統周波数(SF)が逸脱許容範囲下限値ΔF1Lより下がりすぎているかどうかをチェックするものである。
【0031】
ステップ5で偏差ΔFが逸脱許容範囲下限値ΔF1Lより小さい場合(yesの場合)には、ステップ6に移行し、発電機1の出力を増加させる信号を出力して仕上がり周波数下限値ΔTF1Lまで戻す(ステップ6)。このときの周波数を上昇させるように制御するための出力調整速度はΔP1Lで行う。
【0032】
ステップ5で偏差ΔFが逸脱許容範囲下限値ΔF1Lより大きい場合(noの場合)には、矛盾が発生しているので、周波数制御を停止し(ステップ7)、再度周波数制御開始まで戻れるようにエラー処理を行う。このエラー処理は修復施設に通信等で通知し、人手によって修復しても良い。また、過熱や電圧変化によるマイクロプロセッサの誤作動もあり得るので、所定時間経過後に再度周波数制御開始を所定回数実行し、修復しない場合に修復施設に通報処理等を行っても良い。
【0033】
発電機2のAFC2も同様に構成され、AFC2の自律分散制御プログラムには、周波数逸脱許容範囲を定める逸脱許容範囲の上限値(ΔF2U)及び下限値(ΔF2L)と、AFC2が発電機2に出力するための周波数の仕上がり目標周波数範囲を定める仕上がり目標周波数の上限値(ΔTF2U)及び下限値(ΔTF2L)と、AFC2が周波数制御のために発電機2の出力を調整する速さである発電機出力調整速度(上昇させる速度=ΔP2L、抑制する速度=ΔP2U)が設定できるように、設計されており、発電機2の自律分散制御プログラム及び制御のためのデータがROMに記憶されている。
【0034】
AFC2の自律分散制御プログラムの処理の流れも、図2のAFC1におけるステップ1からステップ7までの処理の流れと同様である。AFC1とAFC2の逸脱許容範囲の上限値及び下限値、仕上がり目標周波数の上限値と下限値、発電機出力調整速度はそれぞれ異なるように設定されている。AFC1とAFC2の設定値の異なる点は、次の図3の発電機1、2の運転方法において説明する。
【0035】
図3は、電力供給系統に複数の発電機1、2がある場合の運転方法を示す。図3(1)のX軸は系統周波数の基準周波数からの逸脱量を示し、Y軸は発電機の出力を回復或いは抑制するために要する発電機出力の調整速度を示す。X軸には、発電機1の逸脱許容範囲上限値ΔF1Uと逸脱許容範囲下限値ΔF1Lが設定される。発電機2の逸脱許容範囲上限値ΔF2Uと逸脱許容範囲下限値ΔF2Lも、同様に、X軸上に設定される。第2象限及び第4象限のG1、G2は発電機1、2の周波数修復運転状態を示す。
【0036】
本発明では、電力系統に電力を供給する複数の発電機1、2が接続されている電力系統の自律型分散制御システムにおいて、複数の発電機1、2のそれぞれに周波数制御装置であるAFCを設け、運転コストの低い発電機1を運転コストの高い発電機2より優先的に運転するように、発電機1、2について発電効率の高い順に運転順位を設定する。この運転順位の設定は、各発電機1のAFCの特性の設定、即ち自律分散制御プログラムの設定によって行われる。
【0037】
即ち、発電機1、2のそれぞれのAFCの自律分散制御プログラムには、電力系統を流れる供給電力の系統周波数(SF)を検出しつつ、系統周波数(SF)が下限として設定した逸脱許容範囲下限値より低下したときに、発電効率の高い発電機1を発電効率の低い発電機2より優先的に運転し、当該周波数が上限として設定した逸脱許容範囲上限値より高くなったときに、発電効率の低い発電機2を発電効率の高い発電機1より優先的に抑制するように、運転順位に基づいた設定値が制御特性として設定されている。
【0038】
例えば、図3に基づいて説明すると、電力供給系統に発電機1と発電機2があり、発電機1の運転コストが低く、発電機2の運転コストが高い場合、発電機1を極力優先的に運転し、発電機2を極力抑制して運転するのが低コストである。
【0039】
そのため、発電機1のAFC1においては、周波数逸脱許容範囲の下限値ΔF1Lが、発電機2の周波数逸脱許容範囲の下限値ΔF2Lより高く設定され、周波数逸脱許容範囲の上限値ΔF1Uが、発電機2の周波数逸脱許容範囲の上限値ΔF2Lより高く設定されている。
【0040】
即ち、図3に示す電力系統の自律型分散制御システムにおいては、AFC1、2が発電機1、2を制御する制御特性としては、それぞれの周波数逸脱許容範囲(ΔF1U〜ΔF1L)、(ΔF2U〜ΔF2L)であり、発電効率の高い発電機1が周波数制御を行う周波数逸脱許容範囲(ΔF1U〜ΔF1L)が、発電効率の低い発電機2の周波数逸脱許容範囲(ΔF2U〜ΔF2L)より、全体的に高い領域に設定されている。
【0041】
これによって、系統周波数(SF)が基準周波数より低いときは、発電機2の周波数逸脱範囲の下限値(ΔF2L)より高い周波数にある周波数逸脱許容範囲の下限値(ΔF1L)で、発電機1の出力を増加させて系統周波数(SF)を高める制御を開始する。
【0042】
系統周波数(SF)が基準周波数より高いときは、発電機2の周波数逸脱範囲の上限値(ΔF2U)より高い周波数にある周波数逸脱許容範囲の上限値(ΔF1U)で、発電機1の出力を減少させて系統周波数(SF)を低める制御を開始する。
【0043】
他方、効率の低い発電機2は、系統周波数(SF)が基準周波数より低いときは、発電機1の周波数逸脱範囲の下限値(ΔF1L)より低い周波数にある周波数逸脱許容範囲の下限値(ΔF2L)で、発電機2の出力を増加させて系統周波数(SF)を高める制御を開始する。
【0044】
系統周波数(SF)が基準周波数より高いときは、発電機1の周波数逸脱範囲の上限値(ΔF1U)より低い周波数にある周波数逸脱許容範囲の上限値(ΔF2U)で、発電機2の出力を減少させて系統周波数(SF)を低める制御を開始する。
【0045】
図4(1)(2)のグラフは、このAFC1、2の設定による発電機1、2の運転並びに変動状態を示す。図4に示す例では、発電機2の仕上がり周波数目標上限値ΔTF2Uは発電機1の仕上がり周波数目標上限値ΔTF1Uより低く設定され、発電機2の仕上がり周波数目標下限値ΔTF2Lは発電機1の仕上がり周波数目標上限値ΔTF1Lより低く設定されている。
【0046】
図3及び図4に示されるように、発電機1は系統周波数(SF)の偏差(ΔF)が下限値ΔF1Lより下がると、すぐさま回復運転開始となり、仕上がり周波数目標範囲の下限値ΔTF1Lに達すると、正常運転になる。また、発電機1は、系統周波数(SF)の偏差(ΔF)が上限値ΔF1Uより上がったときに、ようやく抑制運転開始となり、仕上がり周波数目標範囲の上限値ΔTF1Uまで下がってから、正常運転になる。
【0047】
他方、発電機2は、系統周波数(SF)の偏差(ΔF)が下限値ΔF1Lより更に下の下限値ΔF2Lに下がって、初めて回復運転開始となり、発電機1の仕上がり周波数目標範囲の下限値ΔTF1Lより下に設定された仕上がり周波数目標範囲の下限値ΔTF2Lに達すると、回復運転から正常運転になる。この回復運転時間は短くしかも傾斜が緩い。
【0048】
また、系統周波数(SF)の偏差(ΔF)が上限値ΔF1Uより下に設定された上限値ΔF2Uより上に上がると、早速抑制運転開始となり、発電機1の仕上がり周波数目標範囲の上限値ΔTF1Uより下に設定された仕上がり周波数目標範囲の上限値ΔTF2Uに達すると、回復運転から正常運転になる。
【0049】
即ち、発電機1、2においてAFC1、2によって、運転効率の高い発電機1が極力優先的に運転され、発電機2が劣後的に運転されるように設定された自律分散制御システムとして構成されている。このため、系統周波数の偏差ΔFが逸脱許容範囲を越えるような事態が生じても、管理センター等との通信によって制御するのではなく、自律的に処理できるので、電力供給系統の周波数管理コストを低減可能となる。
【0050】
更に、図3(1)(2)の電力系統の自律型分散制御システムにおいては、発電機が2台あって、一方の発電機1が、他方の発電機2より発電効率に高く、運転コストが低い場合、発電機1を優先的に運転するのが高効率であり、運転コストが低い。
【0051】
そこで、図3の第2象限のG1、G2の線及び第4象限のG1、G2の線が示すように、発電機1のAFC1では、系統周波数(SF)が周波数逸脱許容範囲の下限値(ΔF1L)より低下したとき、発電機2のAFC2に比べて発電機1の出力を早く増加させるように、発電機出力調整速度(ΔP1L)を設定する。また、AFC1では、この系統周波数(SF)が目標値である周波数逸脱許容範囲の上限値(ΔF1U)より上昇したとき、発電機2のAFC2に比べて発電機1の出力を遅く抑制させるように、発電機出力調整速度(ΔP1U)を設定する。
【0052】
即ち、高効率の発電機1は、系統周波数(SF)が周波数逸脱許容範囲の下限値(ΔF1L)から下がったときに、周波数を上げて正常化するために出力を早く増加させ、系統周波数(SF)が周波数逸脱許容範囲の上限値(ΔF1U)よりも上がったときに、周波数を下げて正常化するために出力をゆっくりと減少させるように設定されている。
【0053】
これに対して、発電機2のAFC2も、同様に、発電機2が接続されている電力系統の系統周波数(SF)を監視している。発電機2のAFC2の自律分散制御プログラムは、この系統周波数(SF)が目標値である周波数逸脱許容範囲の下限値(ΔF2L)より低下したとき、発電機1のAFC1に比べて発電機2の出力を遅く増加させるように、発電機出力調整速度(ΔP2L)を設定する。また、この系統周波数(SF)が目標値である周波数逸脱許容範囲の上限値(ΔF2U)より上昇したとき、発電機1のAFC1に比べて発電機2の出力を早く抑制させるように、発電機出力調整速度(ΔP2U)を設定する。
【0054】
即ち、低効率の発電機2は、系統周波数(SF)が周波数逸脱許容範囲の下限値(ΔF2L)から下がったときに、周波数を上げて正常化するためにゆっくりと増加させ、系統周波数(SF)が周波数逸脱許容範囲の上限値(ΔF2U)よりも上がったときに、周波数を下げて正常化するために出力を早く減少させるように設定されている。
【0055】
このように、系統電力の系統周波数(SF)が周波数逸脱許容範囲の上限値(ΔF1U)より上昇したときは、発電機1の出力をゆっくり減少させ、発電機2の出力を早く低下させる。系統周波数(SF)が周波数逸脱許容範囲の下限値(ΔF1L)より低下したときは、発電機1の出力をいち早く多く増加させ、発電機2の出力をゆっくり上昇させる。
【0056】
従って、発電機1、2を有する自立型分散制御システムでは、発電機1の稼動する割合が高く設定され、全体として運転コストが低くなり、高効率となる。
【0057】
図5は、AFC1、2のグラフは、AFC1、2の設定による発電機1、2の運転を正常化する際の回復速度、抑制速度を周波数逸脱量の大小に応じて増大又は減少させる方法を示している。
【0058】
即ち、図5に示す例では、発電機1のAFC1は、系統周波数(SF)の周波数逸脱許容範囲の下限値ΔF1L−1から更に低い位置ΔF1L−2の間において、系統周波数(SF)が下がるに従って、正常値への回復速度が高くなるように、設定される一方、系統周波数(SF)の周波数逸脱許容範囲の上限値ΔF1U−1から更に高い位置ΔF1U−2の間において、系統周波数(SF)が上がるに従って、正常値への回復速度が高くなるように、設定されている。
【0059】
また、発電機2のAFC2においても、同様に、系統周波数(SF)の周波数逸脱許容範囲の下限値ΔF2L−1から更に低い位置ΔF2L−2の間において、系統周波数(SF)が下がるに従って、正常値への回復速度が高くなるように、設定され、系統周波数(SF)の周波数逸脱許容範囲の上限値ΔF2U−1から更に高い位置ΔF2U−2の間において、系統周波数(SF)が上がるに従って、正常値への回復速度が高くなるように、設定されている。
【0060】
このように、周波数逸脱許容範囲から外れた場合に、外れる量が大きくなるに従って、正常値に戻す速度が増大するように設定すると、正常値への回復がより一層早くなる。
【0061】
なお、発電機1のAFC1及び発電機2のAFC2は、それぞれ、系統周波数が目標値(周波数逸脱許容範囲)を逸脱すると、制御を開始し、系統周波数が仕上がり目標値(制御仕上がり目標周波数範囲)に収まるまで制御を行うように設定されており、発電機1のAFC1と発電機2のAFC2が競合しないようになっている。
【0062】
また、電力系統の周波数は負荷変動などに伴い常に変動しており、発電機1のAFC1と発電機2のAFC2が協調して系統周波数を保ちながら、自然に発電機1の出力分担が発電機2の出力分担より大きくなってゆく。発電機1の出力が上限出力に達した後は、発電機2のAFC2が主体となって系統周波数を一定に保つ制御を行う。また、発電機2の出力が下限出力に達すると、発電機1のAFC1が主体となって系統周波数を一定に保つ。
【0063】
上記の電力系統の自律型分散制御システムにおいて、AFC1、2の制御特性は、AFC1、2が接続される発電機1、2について、(1)電力系統の周波数が正常範囲内にあるとして発電機の周波数制御を開始せず、範囲外に逸脱したときに周波数制御を開始するための領域を定めた電力系統の周波数逸脱許容範囲か、若しくは、(2)電力系統の周波数が正常となったとして発電機の周波数制御を中止する仕上がり目標周波数範囲か、若しくは、(3)発電機の周波数制御を行うために要する発電機出力調整速度の少なくとも何れかである。これらの制御要素は複数個組み合わせても良い。
【0064】
従って、発電機1の出力が小さくなると、発電効率が発電機2よりも悪くなるような特性が、発電機1にある場合には、事前に与えたロードカーブから系統全体の発電機の運転状況を推測し、発電機1の出力をより効率的な出力まで増加できないことが推測できる場合には、発電機1のAFC1の設定値を発電機2のAFC2より出力調整速度が遅くなるように変更することもできる。
【0065】
発電機が3台以上ある場合も同様に、発電効率が最も高く出力分担を大きくしたい発電機のAFCほど周波数低下時の発電機出力増加速度を発電効率が低く出力分担を小さくしたい発電機のAFCよりも大きく設定し、周波数増加時の発電機出力抑制速度を小さく設定することで、同様な負荷分担特性を実現できる。
(多数台発電機の運転)
図6は、電力供給系統に3台以上の発電機を接続して自律型分散制御システムを構成する例を示す。図6に示す例では計5機の発電機1〜5が電力系統に接続され、各発電機1〜5にそれぞれAFCが接続されている。
【0066】
電力系統に電力を供給する発電機の台数が多くなると、発電機のAFCを個々に設定することが困難になってくる。そこで、このような場合には、系統の発電機1〜5を優先順位でクラス分けし、クラス毎に共通のAFC基本設定値を数値表又は特性グラフ等で与える。これによって、AFC1〜5の設定の簡便化を図ることができる。各発電機AFCは、図1、図2に示すものと同様な自律分散制御プログラムを記憶している。
【0067】
図7の表に示すように、AFC1〜nに設定される発電機出力調整速度や周波数逸脱許容範囲或いは仕上がり目標周波数等を発電機出力に応じて異なるように設定することで、同一クラス内の発電機の特定の発電機に出力分担が極端に偏ることを防止できる。また、同一クラス内の各発電機AFCは、この基本設定値を基本に、他の設定値と重複しない範囲で各発電機毎に設定値を調整したクラス内調整設定値で設定する。
【0068】
これらの各発電機毎のクラス内調整設定値の設定は、各発電機に固定した設定値を与える方法もあるが、日・週或いは月毎に順番に変える方法や、各発電機が予め備えていたクラス内設定値から乱数で選択する方法や、基本設定値に乱数を加えて微調整することなどの方法で与えることで、優先順位が同一クラスの発電機でありながら、特定の発電機に運転が集中することを防止することができる。
【0069】
このようにすることで、優先順位の高いクラスに属する発電機に多くの出力を分担させると共に、同一クラス内では公平に運転分担させることができる。
【0070】
なお、発電機1〜5の出力によって発電効率が変化する場合は、発電機の出力状況に対応した発電効率から該当するクラスを選定することもできる。また、各発電機端では系統全体の負荷状態が分からないが、予め与えたロードカーブや時刻から当該発電機を運転する場合の発電出力予想をもとに発電効率を算定し、その発電効率が属する優先順位のクラスを選定し、そのクラスの設定値でAFCを設定し、発電機を起動し並列することも可能である。
【0071】
図8は発電機の出力特性に応じて発電機出力調整速度を変化させるものであり、(1)は周波数の低下時における発電機1、2の出力調整速度を変える方法を示し、(2)は周波数の上昇時における発電機1、2の出力調整速度を変える方法を示す。
【0072】
図8(1)の系統周波数(SF)の低下時において、発電機1では周波数逸脱許容範囲の下限値ΔF1Lから逸脱した時、出力が発電機1の定格容量より少ない領域では、発電機1の出力調整速度は増大してゆくが、途中の極大値を過ぎてから減少に転じる。他方、発電機2では、出力が発電機2の定格容量に比べ十分小さい領域で出力調整速度が最も早く、逸脱量が増えてゆくに従って発電機2の出力調整速度は減少してゆく。
【0073】
図8(2)の系統周波数(SF)の上昇時において、発電機1では出力が発電機1の定格容量より少ない段階において、発電機1の出力調整(抑制)速度が最大とされ、発電機1の出力が増えてゆく途中の段階までは減少し、途中の極小値を過ぎてから出力調整(抑制)速度が増大に転じる。他方、発電機2では、出力が発電機2の定格容量より十分小さい領域では出力調整(抑制)速度が小さく、逸脱量が増えてゆくに従って発電機2の出力調整(抑制)速度は増大してゆく。
【0074】
図9(1)(2)は発電機出力特性を与えることによる出力分担の平準化する状態を示す。
【0075】
図9(1)に示すように、優先順位が同じクラスの発電機1、2において、系統周波数が減少したときに、周波数を修復するための発電機の出力調整速度を発電機の出力に拘わらず一定としておくと、発電機出力調整速度の僅かな設定誤差で調整速度の大きい方に常に大きな出力を分担することになってしまう。
【0076】
そこで、発電機出力調整速度を発電機出力が大きくなると、遅くなるように設定しておくことで、発電機1の発電機出力調整速度ΔPL1が発電機2の発電機出力調整速度ΔPL2より高い場合でも、発電機出力が増加するにつれて、ΔPL1の値が下がり、ΔPL2と同じになり、出力分担の差が広がらないため、電力系統全体における電力供給の平準化が促進され、コスト低減が促進される。
【0077】
また、図9(2)に示すように、発電機調整速度を発電機出力が小さくなると遅くなるように設定しておくことで、発電機1の発電機出力調整速度ΔPU1が発電機2の発電機出力調整速度ΔPU2より遅い場合でも、周波数が上限値を逸脱すると、発電機2の出力が早く抑制され、出力の減少に伴い、ΔPU2が遅くなり、ΔPU1と同じ値になることで出力分担の差が広がらないので、電力系統全体における電力供給の平準化が促進され、コスト低減が促進される。
(発電機の起動)
発電機出力が一定値以上に大きくなり、供給力の不足が予想される場合、次ぎの優先順位の発電機の起動を促すために、系統周波数が低下したときに発電機出力を増加させる応答速度が低下するように、AFCの設定を変更する。又は、周波数逸脱許容範囲の下限周波数や仕上がり周波数目標範囲の下限周波数を下げる。更に、これらを組み合わせて使用することもできる。また、急激な負荷変動で供給力が不足しないように、予め与えたロードカーブから予測した時刻にAFCの設定値を変更し、つぎの優先順位の発電機に起動を促すこともできる。
【0078】
停止中の発電機は、系統周波数が各発電機の起動優先順位に基づいて予め設定した目標周波数を逸脱した後、系統周波数が各発電機の起動優先順位に基づいて予め設定した一定値以内に戻る時間が、各発電機の起動優先順位に基づいて予め設定した一定値以上継続したことを検出、又は、周波数逸脱量が一定値までしか回復しないことを検出すると、起動準備を行い、一定時間後に起動し、並列する。
【0079】
また、急激な負荷変動で供給力が不足しないように予め与えたロードカーブから供給力が不足する時間帯になれば、起動条件を緩和することもできる。
【0080】
発電機の並列までに、系統周波数が各発電機の起動優先順位に基づいて予め設定した一定値以内に戻る時間が、起動優先順位に基づいて予め設定した一定値より短くなったことを検出した場合には、他の発電機が起動したことなどで起動が不要となったと判断し、起動準備を停止し、待機状態に戻る。
【0081】
また、発電機起動のために変更されたAFCの設定値は、系統周波数が一定値以上を示す時間が一定時間継続すると解除され、当該AFCは通常の設定値での運転に戻される。
【0082】
図10(1)乃至(6)は、4台の発電機がある系統で発電機を起動する場合を示す。
【0083】
系統の発電機が優先順位の高いクラス1からクラス3まであり、クラス1には発電機1が、クラス2には発電機2と3が、クラス3には発電機4が分類されていると想定する。
【0084】
発電機1が運転中であり、発電機2、3、4は停止中の状態下にあって、発電機1の出力が一定値以上になったときには、周波数が不足したときの周波数回復時間が長くなるように、或いは、周波数が一定周波数以上には回復しないように、又は、両方の特性がでるように、当該AFC1の出力を変更する。
【0085】
クラス2の発電機2、3のAFC2、3は、系統周波数(SF)の変動状態を時間経過と共に監視しており、発電機1の周波数回復時間が設定値以上になったことを検出するか、又は、系統周波数(SF)が一定周波数以上には回復しないことを検出すると、起動の準備状態に入る。発電機2がこれらの事態の検出から発電機起動・並列に至るまでの準備時間は、発電機3の当該準備時間より十分短く設定されており、発電機2は準備時間が過ぎたことを検出すると、起動し、並列する。
【0086】
なお、発電機1のAFC1の周波数回復時間又は回復した周波数の値は、クラス2に属する発電機が起動準備に移行したことを判定するために設けた判定時間よりは長く、或いは回復周波数が低いが、優先順位のより低いクラス3の条件は満たさない値になるように設定する。
【0087】
発電機2の並列後は、発電機1と発電機2のAFCの周波数逸脱許容範囲と発電機出力調整速度の設定値を組み合わせることによって、大きな周波数逸脱に対しては、発電機1が出力を増加させるが、それ以外の周波数逸脱を回復するのは発電機1、2が分担し、共に出力分担を増加してゆく。
【0088】
発電機2の出力が増加して一定量以上になったら、発電機1のAFC1と同様に、周波数が不足したときに周波数を回復させる時間が長くなるように、発電機2のAFC2の出力調整速度の設定値を変更し、AFC3は周波数の回復時間が発電機3を起動するための設定値より長くなったこと、又は周波数が一定周波数以上には回復しないことを検出すると、発電機3を起動させて電力系統に並列させる。
【0089】
同様に、発電機3の出力が一定値以上に増加したら、周波数が不足したときに周波数が回復する時間が長くなるように、又は周波数が一定周波数以上に回復しないように当該発電機3のAFC3の設定値を変更し、同様な手順で発電機4を起動させて並列させる。
【0090】
なお、発電機を起動させるために変更された当該発電機のAFCの設定値は、系統周波数(SF)が一定値以上となる状態が所定時間以上継続すると、解除され、各発電機は通常の設定値での運転に戻る。
(発電機の停止)
図11(1)〜(5)は電力系統に接続される発電機1〜3が停止する場合の運転状態を示す。これらの発電機1、2、3においては、発電機の優先順位が発電機1、2・・・と低く設定されており、電力系統の負荷が低下してくると、優先順位の低い発電機から負荷分担が小さくなるように設定されている。
【0091】
同一クラスに属する発電機が複数台ある場合には、系統周波数上昇時における発電機出力の抑制速度を、発電機出力の減少に応じて遅くするように設定する。例えば、図11(1)では、3台の発電機1、2、3が並列運転されている。
【0092】
発電機1、2、3が接続される電力系統の系統周波数(SF)が一定値以上(周波数逸脱許容範囲の上限値以上)にあるとき、発電機1、2、3の出力を抑制する。このとき、系統周波数を一定値以下に戻すための時間(出力調整速度)を、発電機1、2、3の出力の減少に応じて長くする。これによって、同じクラス内に複数の発電機2、3があっても、同じクラスの発電機の出力をほぼ揃って減少させることができる。
【0093】
各クラスにおいて別途指定された発電機2は、系統周波数の上昇時に当該発電機2の出力が一定値以下になると、周波数上昇時の出力抑制の速さが優先順位が当該クラスより上位クラスの発電機1の出力抑制の速さより遅くなるように、当該発電機2のAFCを変更する。この変更は、発電機出力に比例して、又は、段階的に遅くなるように、設定しても良い。この出力調整速度の変更は、図11(2)においてG2からG2”への変更として示されている。
【0094】
このように設定することで、周波数上昇が発生すると、当該クラスの指定されていない発電機3だけが出力を抑制していき、負荷分担が運転下限出力に低下すると当該発電機3は出力を0に低下させ、周波数が一定時間以上維持できていることを確認の後、停止する(図11(3)参照)。
【0095】
更に、周波数上昇が続くと、当該クラスの上位クラスの発電機1も出力抑制を行う。図11(4)のG1がG1’に示されるように、当該クラスの上位クラスの発電機1の出力が一定出力より低下したら、この上位クラスの発電機1においても、周波数上昇時の出力抑制の速さが、運転優先順位が更に高いクラスの出力抑制の速さより遅くなるように、設定変更する。
【0096】
このため、再び当該クラスの発電機2の出力が抑制されるようになり、当該クラスの発電機2の出力が低下する。当該クラスの発電機2の出力が運転下限出力に低下したら、当該発電機2の出力を0に低下させ、周波数が一定時間以上維持できていることを確認の後に停止する。このように設定することで、上位クラスの発電機による供給余裕を確保し、発電停止に伴う供給力不足を防止できる。
【0097】
図11の(1)乃至(5)について更に説明すると、発電機1、2、3は、優先順位の高い方(発電機1)から低い方(発電機2、3)にクラスが設定されている(図11(1))。
【0098】
負荷が小さくなって系統周波数(SF)が上昇すると、クラス2の発電機2、3の出力が低下する。発電機2の出力が一定値以下に低下すると、発電機2のAFCは出力を抑制する応答速度を発電機1の応答速度より小さく、又は、周波数逸脱許容幅の上限を大きくする(図11(2))。発電機3は周波数上昇があると出力抑制を続け、出力が運転下限出力になると、出力を0に低下させ、系統周波数に異常がなければ、停止する(図11(3))。
【0099】
発電機2は系統周波数が上昇するときの出力抑制が発電機1より遅く設定変更されたため、発電機2の出力抑制が進まなくなる。発電機1の出力が一定値以下になり、発電機2の停止後の負荷供給力を確保できるようになると、当該発電機3のAFCの出力抑制の応答速度を、出力低下に伴い変更した発電機2の応答速度より更に小さく、又は周波数逸脱許容幅の上限を大きくなるように変更する(図11(4))。
【0100】
このように設定すると、系統周波数が増加すると、再び発電機2の出力が抑制されるようになる。運転許容下限出力の出力後も出力抑制信号が一定時間継続すると、発電機2は出力を減少させ、周波数の異常がないことを確認すると、停止する(図11(5))。
【0101】
なお、発電機1、2共に、出力が一定値以上になれば、変更したAFCの設定値(発電機出力調整速度、若しくは周波数逸脱許容範囲)をもとに戻す。
【0102】
また、発電機の停止時に事前に与えたロードカーブから一定時間後に再投入の可能性を判断し、可能性がある場合は停止せずに、下限出力で運転を継続することもできる。
【0103】
以上説明したように、この実施の形態の電力系統の自律型分散制御システム及び電力系統の自律型分散制御方法によれば、電力系統の周波数が下限周波数より低くなったときに発電効率の高い発電機1が優先的に運転され、電力系統の周波数が上限周波数より高くなったときには、発電効率の低い発電機2、3の運転をいち早く停止するので、電力系統全体としての発電機の運転コストが低くなり、また、電力品質を高く維持できる。
【0104】
また、各発電機1〜3の運転順位に基づいて周波数制御装置であるAFC1〜3の制御特性を設定することで、低コストで周波数変動の少ない電力品質の高い電力供給を行うことができる。
【0105】
更に、発電効率の高い発電機1が周波数制御を行う周波数逸脱許容範囲が、発電効率の低い発電機2の周波数逸脱許容範囲より、全体的に高い領域に設定されているので、発電効率の高い発電機が、電力系統の周波数が許容下限値を逸脱していることを検出する場合が多くなり、発電効率の低い発電機2が、電力系統の周波数が許容下限値を逸脱していることを検出する場合が少なくなる。このため、周波数を制御するために発電効率が高い発電機1の動作領域が広くなる一方、発電効率の低い発電機2の動作領域が狭くなり、系統全体の電力供給コストを低コストなものとすることができる。
【0106】
また、高効率の発電機1が低効率の発電機2よりも動作する範囲が広いこととなり、電力系統全体としての発電コストを低く抑えることができる。
【0107】
更に、系統周波数が低下したとき、発電効率が高く発電コストの低い発電機1をいち早く運転開始し、発電効率が低く発電コストの高い発電機2の運転を極力遅らせることにより、電力系統全体としての発電コストを低く抑えることができ、系統周波数が増加したときには、発電効率が高く発電コストの低い発電機1の運転時間を極力長く維持し、発電効率が低く発電コストの高い発電機2の運転時間を極力短くすることにより、電力系統全体としての発電コストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の実施の形態にかかる自律型分散制御システムの発電機のAFCに搭載される周波数制御プログラムの設定値を示す概念図。
【図2】図1の自律型分散制御システムの発電機のAFCに搭載される周波数制御プログラムの処理過程を示す流れ図。
【図3】2台の発電機の出力調整速度を周波数逸脱量に応じて変化させる分担制御方法を示すグラフ。
【図4】(1)は時間経過と発電機出力の推移を示す座標、(2)は発電機の運転時の経過時間に伴う系統電力の系統周波数の変化を示すグラフ。
【図5】発電機の出力調整速度を周波数逸脱量に応じて変化させることを示すグラフ。
【図6】自律型分散制御システムの電力系統に複数個の発電機及びAFCを接続した状態を示す概念図。
【図7】図6の電力系統網に接続される複数の発電機を発電効率毎にクラス分けし、それらのAFCにつき各種設定値を定めることを示す図。
【図8】発電機の出力特性に応じてAFCの特性を設定した例を示す図であり、(1)は周波数低下時の出力増加速度の設定例を示すグラフ、(2)は周波数上昇時の出力抑制速度の設定例を示すグラフ。
【図9】発電機の出力特性に応じて発電機の出力分担歩兵純化を示す図であり、(1)は周波数低下時の出力分担例を示すグラフ、(2)は周波数上昇時の出力分担例を示すグラフ。
【図10】複数個の発電機が電力系統に接続されているときに、発電機の優先順位によって起動する順を示す図であり、(1)は出力増加時の優先順位が最も高い発電機の起動状態を示す図、(2)は次の優先順位の発電機の起動状態を示す図、(3)は発電機1、2の運転時の状態を示す図、(4)は優先順位が3番目の発電機3の起動状態を示す図、(5)は発電機1、2、3の運転時の状態を示す図、(6)は最も優先順位の低い発電機4の起動状態を示す図。
【図11】複数個の発電機が電力系統に接続されているときに、発電機の優先順位によって停止する順を示す図であり、(1)は発電機1、2、3の運転時の状態を示す図、(2)は発電機2の出力が一定値以下になったときの出力調整速度を変更した状態を示す図、(3)は優先順位が最も低い発電機3の停止状態を示す図、(4)は発電機1の出力が一定値以下になったときの出力調整速度を変更した状態を示す図、(5)は発電機2が停止し、発電機1のみが運転している状態を示す図。
【符号の説明】
【0109】
1、2、3 発電機
AFC1 発電機1のAFC
AFC2 発電機2のAFC
AFC3 発電機3のAFC
ΔF1U 発電機1の周波数逸脱許容範囲上限値
ΔF1L 発電機1の周波数逸脱許容範囲下限値
ΔTF1U 発電機1の仕上がり目標周波数範囲上限値
ΔTF1L 発電機1の仕上がり目標周波数範囲下限値
ΔP1L 発電機1の周波数出力調整速度(増大)
ΔP1U 発電機1の周波数出力調整速度(抑制)
ΔF2U 発電機2の周波数逸脱許容範囲上限値
ΔF2L 発電機2の周波数逸脱許容範囲下限値
ΔP2L 発電機2の周波数出力調整速度(増大)
ΔP2U 発電機2の周波数出力調整速度(抑制)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に電力を供給する複数の発電機が接続されている電力系統の自律型分散制御システムにおいて、
前記複数の発電機の中から制御対象とされる複数の発電機を選択し、選択された複数の制御対象の発電機のそれぞれに周波数制御装置を設け、前記制御対象の発電機につき発電効率の高い順に運転順位を設定すると共に、前記制御対象の発電機のそれぞれの周波数制御装置には、前記電力系統を流れる供給電力の周波数を検出しつつ、当該周波数が下限として設定した下限周波数より低下したときに、発電効率の高い発電機を発電効率の低い発電機より優先的に起動若しくは出力を分担させ、当該周波数が上限として設定した上限周波数より高くなったときに、発電効率の低い発電機を発電効率の高い発電機より優先的に停止若しくは出力を抑制するように、前記運転順位に基づいた制御特性が設定されていることを特徴とする電力系統の自律型分散制御システム。
【請求項2】
請求項1の電力系統の自律型分散制御システムにおいて、
前記複数の発電機の優先順位は、運転効率の高低を基準として優先段階を定めたクラスによって定められ、運転効率の高いクラスに属する発電機の周波数制御装置の制御特性は、運転効率の低いクラスに属する発電機より、優先的に起動若しくは出力を分担するように設定されていることを特徴とする電力系統の自律型分散制御システム。
【請求項3】
請求項2の電力系統の自律型分散制御システムにおいて、
前記複数のクラスにおいて所定の発電機の周波数制御装置は、系統周波数の上昇時に当該発電機の出力が一定値以下になると、周波数上昇時の出力抑制の速さが優先順位が当該クラスより上位クラスの発電機の出力抑制の速さより遅くなるように、当該発電機の周波数制御を変更することを特徴とする電力系統の自律型分散制御システム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかの電力系統の自律型分散制御システムにおいて、
前記周波数制御装置の制御特性は、当該周波数制御装置が接続される発電機について、
(1)電力系統の周波数が正常範囲内にあるとして発電機の周波数制御を開始せず、範囲外に逸脱したときに周波数制御を開始するための領域を定めた周波数逸脱許容範囲か、若しくは、(2)電力系統の周波数が正常となったとして発電機の周波数制御を中止する仕上がり目標周波数範囲か、若しくは、(3)発電機の周波数制御を行うために要する発電機出力調整速度の少なくとも何れかであることを特徴とする電力系統の自律型分散制御システム。
【請求項5】
請求項4の電力系統の自律型分散制御システムにおいて、
前記制御特性は前記(1)の周波数逸脱許容範囲であり、発電効率の高い発電機が周波数制御を開始する周波数逸脱許容範囲の上限値が、発電効率の低い発電機の周波数逸脱許容範囲の上限値より、高く設定され、発電効率の高い発電機が周波数制御を開始する周波数逸脱許容範囲の下限値が、発電効率の低い発電機の周波数逸脱許容範囲の下限値より、高く設定されていることを特徴とする電力系統の自律型分散制御システム。
【請求項6】
請求項4の電力系統の自律型分散制御システムにおいて、
前記制御特性は前記(2)の仕上がり目標周波数範囲であり、発電効率の高い発電機が出力する周波数の仕上がり目標周波数範囲が、発電効率の低い発電機の仕上がり目標周波数範囲より、高めに設定されていることを特徴とする電力系統の自律型分散制御システム。
【請求項7】
請求項4の電力系統の自律型分散制御システムにおいて、
前記制御特性は前記(3)の発電機出力調整速度であり、発電効率が高い発電機の周波数制御装置は、系統周波数が低下したときに発電機出力を増加させる際の応答速度を早く設定し、発電効率が低い発電機の周波数制御装置は、系統周波数が低下したときに発電機出力を増加させる際の応答速度を遅く設定したことを特徴とする電力系統の自律型分散制御システム。
【請求項8】
請求項4の電力系統の自律型分散制御システムにおいて、
前記制御特性は前記(3)の発電機出力調整速度であり、発電効率が高い発電機の周波数制御装置は、系統周波数が増加したときに発電機出力を低下させる際の応答速度を遅く設定し、発電効率が低い発電機の周波数制御装置は、系統周波数が増加したときに発電機出力を低下させる際の応答速度を早く設定したことを特徴とする電力系統の自律型分散制御システム。
【請求項9】
電力系統に電力を供給する複数の発電機が接続されている電力系統の自律型分散制御方法において、
前記複数の発電機の中から制御対象とされる複数の発電機を選択し、選択された複数の制御対象の発電機のそれぞれに周波数制御装置を設け、前記制御対象の発電機につき発電効率の高い順に運転順位を設定すると共に、前記制御対象の発電機のそれぞれの周波数制御装置には、前記電力系統を流れる供給電力の周波数を検出しつつ、当該周波数が下限として設定した下限周波数より低下したときに、発電効率の高い発電機を発電効率の低い発電機より優先的に起動若しくは出力を分担させ、当該周波数が上限として設定した上限周波数より高くなったときに、発電効率の低い発電機を発電効率の高い発電機より優先的に停止若しくは出力を抑制するように、前記運転順位に基づいて制御することを特徴とする電力系統の自律型分散制御方法。
【請求項10】
請求項9の電力系統の自律型分散制御方法において、
前記複数の発電機の優先順位は、運転効率の高低を基準として優先段階を定めたクラスによって定められ、運転効率の高いクラスに属する発電機の優先順位が、運転効率の低いクラスに属する発電機の優先順位より、高く設定されていることを特徴とする電力系統の自律型分散制御方法。
【請求項11】
請求項10の電力系統の自律型分散制御方法において、
前記複数のクラスにおいて所定の発電機の周波数制御装置は、系統周波数の上昇時に当該発電機の出力が一定値以下になると、周波数上昇時の出力抑制の速さが優先順位が当該クラスより上位クラスの発電機の出力抑制の速さより遅くなるように、当該発電機の周波数制御を変更することを特徴とする電力系統の自律型分散制御方法。
【請求項12】
請求項9乃至11の何れかの電力系統の自律型分散制御方法において、
前記周波数制御装置の制御特性は、当該周波数制御装置が接続される発電機について、
(1)電力系統の周波数が正常範囲内にあるとして発電機の周波数制御を開始せず、範囲外に逸脱したときに周波数制御を開始するための領域を定めた周波数逸脱許容範囲か、若しくは、(2)電力系統の周波数が正常となったとして発電機の周波数制御を中止する仕上がり目標周波数範囲か、若しくは、(3)発電機の周波数制御を行うために要する発電機出力調整速度の少なくとも何れかであることを特徴とする電力系統の自律型分散制御方法。
【請求項13】
請求項12の電力系統の自律型分散制御方法において、
前記制御特性は前記(1)の周波数逸脱許容範囲であり、発電効率の高い発電機が周波数制御を開始する周波数逸脱許容範囲の上限値が、発電効率の低い発電機の周波数逸脱許容範囲の上限値より、高く設定され、発電効率の高い発電機が周波数制御を開始する周波数逸脱許容範囲の下限値が、発電効率の低い発電機の周波数逸脱許容範囲の下限値より、高く設定されていることを特徴とする電力系統の自律型分散制御方法。
【請求項14】
請求項12の電力系統の自律型分散制御方法において、
前記制御特性は前記(2)の仕上がり目標周波数範囲であり、発電効率の高い発電機が出力する周波数の仕上がり目標周波数範囲が、発電効率の低い発電機の仕上がり目標周波数範囲より、高めに設定されていることを特徴とする電力系統の自律型分散制御方法。
【請求項15】
請求項12の電力系統の自律型分散制御方法において、
前記制御特性は前記(3)の発電機出力調整速度であり、発電効率が高い発電機の周波数制御装置は、系統周波数が低下したときに発電機出力を増加させる際の応答速度を早く設定し、発電効率が低い発電機の周波数制御装置は、系統周波数が低下したときに発電機出力を増加させる際の応答速度を遅く設定したことを特徴とする電力系統の自律型分散制御方法。
【請求項16】
請求項12の電力系統の自律型分散制御方法において、
前記制御特性は前記(3)の発電機出力調整速度であり、発電効率が高い発電機の周波数制御装置は、系統周波数が増加したときに発電機出力を低下させる際の応答速度を遅く設定し、発電効率が低い発電機の周波数制御装置は、系統周波数が増加したときに発電機出力を低下させる際の応答速度を早く設定したことを特徴とする電力系統の自律型分散制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−116805(P2007−116805A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304662(P2005−304662)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【Fターム(参考)】