説明

電動二輪車用モータ制御装置

【課題】コーナリング時に意図的にドリフト走行を行うことを許容しつつ、車体の転倒を防止するための制御を的確に行うことを可能にする電動二輪車用制御装置を提供する。
【解決手段】車体1の傾斜角が、直線走行時にとり得る第1の傾斜角範囲、ドリフト走行が可能な第2の傾斜角範囲及び第2の傾斜角範囲を超える第3の傾斜角範囲のうちのいずれの範囲にあるかを判定する傾斜角範囲判定部11と、モータ2の出力トルクを決定する制御パラメータの目標値を、アクセル操作量と判定された傾斜角範囲とに対して演算する制御パラメータ目標値演算部13と、制御パラメータを演算された目標値に等しくしてモータを駆動するモータ駆動部14とを設けて、アクセル操作量とモータの出力トルクとの間の関係を車体の傾斜角に適合した関係とすることにより、車体の転倒を招くことなく、ドリフト走行を可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動二輪車のモータの出力トルクをアクセル操作量に応じて制御する電動二輪車用モータ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動二輪車の運転者は、コーナリング走行を行う際に、素早くコーナを走り抜けるためにドリフト走行を行うことがある。ドリフト走行は、車体を傾斜させた状態で、駆動輪である後輪を意図的に滑らせながらカーブを走り抜ける方法である。
【0003】
自動二輪車の後輪のグリップ力は、車体の傾斜角により変化し、車体の傾斜角が大きくなるに従って弱くなっていく。また後輪のグリップ力は路面の状況によっても変化する。自動二輪車をカーブの手前で減速し、その車体を傾斜させた状態でカーブに進入した後、加速操作を行って後輪(駆動輪)に与えるトルクを増大させると、後輪を意図的にスリップさせてドリフト走行を行わせることができる。
【0004】
ドリフト走行を行うためには、走行速度、車体の傾斜角、路面の状況等に応じて微妙なスロットル操作を行う必要がある。自動二輪車をドリフト走行させる際に過度なスロットル操作を行うと、後輪がトラクションを喪失して大きくスリップし、車体が転倒する危険がある。
【0005】
電動二輪車がスリップするの防止するため、特許文献1に示されているように、モータの回転速度の上昇割合から後輪のスリップを検出して、スリップが検出されたときにモータの回転数を下げる制御を行うようにした電動二輪車用コントローラが提案されている。
【0006】
また特許文献2ないし4には、電動二輪車の車速と、電動二輪車に作用する横方向加速度、ローリング速度及び(または)ヨーイング速度とに基づいて、後輪がグリップ力を失いつつあるか否かを判定して、後輪がグリップ力を失いつつあると判定されたときに、モータの出力トルクを低下させる制御を行わせるようにした電動二輪車の制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−166873号公報
【特許文献2】特開2006−151289号公報
【特許文献3】特開2006−151290号公報
【特許文献4】特開2006−151291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示された制御装置では、後輪のスリップが検出されたときにモータの回転数を低下させる制御を行ってグリップ力を回復させるため、後輪を意図的にスリップさせるドリップ走行を円滑に行わせることができないという問題があった。
【0009】
また特許文献2ないし4に示された電動二輪車用制御装置でも、後輪がグリップ力を失いつつある状態が検出されたときに、モータの出力トルクを低下させることによりグリップ力を回復させる制御を行うため、後輪を意図的に滑らせながらコーナリングを行うドリフト走行を行わせることはできない。
【0010】
本発明の目的は、コーナリング時に運転者が意図的にドリフト走行を行うことを可能としつつ、車体の転倒を防止するためのトラクション制御を的確に行うことができるようにした電動二輪車用モータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、駆動輪である後輪と従動輪である前輪とを備えた車体と、後輪を駆動する電気モータとを備えた電動二輪車のモータの出力トルクをアクセル操作量に対して制御する電動二輪車用モータ制御装置に係わるものである。
【0012】
本発明においては、アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出部と、車体の傾斜角を車体傾斜角として検出する車体傾斜角検出部と、モータの出力トルクを決定する制御パラメータの目標値を検出されたアクセル操作量と車体傾斜角とに対して演算する制御パラメータ目標値演算部と、制御パラメータを演算された目標値に等しくしてモータに駆動電流を流すモータ駆動部とが設けられて、上記制御パラメータ目標値演算部が、車体傾斜角が直線走行と見なし得る第1の傾斜角範囲にあるときに、アクセル操作量と出力トルクとの間の関係を、前輪をリフトさせることなく直線走行を行わせるのに適した関係とし、車体傾斜角が第1の傾斜角範囲を超える範囲であって後輪を意図的にスリップさせながらコーナリングを行うドリフト走行が可能な車体傾斜角の範囲である第2の傾斜角範囲にあるときに、アクセル操作量と後輪の回転速度とモータの出力トルクとの間の関係をドリフト走行時に適合した関係とし、車体傾斜角が第2の傾斜角範囲を超える第3の傾斜角範囲にあるときに、アクセル操作量と出力トルクとの間の関係を後輪のグリップ力を維持するのに適した関係とするべく、アクセル操作量に対して制御パラメータの目標値を演算するように構成されている。
【0013】
上記のように構成すると、車体の傾斜角が第1の傾斜角範囲にあるときには、前輪をリフトさせるような過剰なトルクを発生させることなく、直線走行を安全に行わせ、車体の傾斜角が第2の傾斜角範囲にあるときには、アクセル操作量とモータの出力トルクとの関係をドリフト走行を行うのに適した関係に設定して、意のままに後輪を滑らせてドリフト走行を行わせることができる。また車体の傾斜角が第2の傾斜角範囲を越えて第3の傾斜角範囲に入ったときには、アクセル操作量とモータの出力トルクとの間の関係をグリップ力を維持するのに適した関係として転倒を防止するためのトラクション制御を行わせることができるため、安全性を高めることができる。
【0014】
本発明の好ましい態様においては、直線走行とみなし得る走行状態における車体傾斜角の範囲を第1の傾斜角範囲とし、この第1の傾斜角範囲を超える範囲であって後輪を意図的にスリップさせながらコーナリングを行うドリフト走行が可能な車体傾斜角の範囲を第2の傾斜角範囲とし、この第2の傾斜角範囲を超える車体傾斜角の範囲を第3の傾斜角範囲として、車体傾斜角検出部により検出された車体傾斜角が第1ないし第3の傾斜角範囲のいずれにあるかを判定する傾斜角範囲判定部が設けられる。この場合、制御パラメータ目標値演算部は、傾斜角範囲判定部により判定された傾斜角範囲に応じて、アクセル操作量とモータの出力トルクとの関係を、それぞれの傾斜角範囲に適合した関係とするようにアクセル操作量に対して制御パラメータの目標値を演算するように構成される。
【0015】
本発明の他の好ましい態様では、上記第1ないし第3の傾斜角範囲のそれぞれに対して、アクセル操作量と制御パラメータの目標値との間の関係を与える第1ないし第3の目標値演算用テーブルが設けられる。第1ないし第3の目標値演算用テーブルはそれぞれ、車体傾斜角が第1の傾斜角範囲にあるとき、第2の傾斜角範囲にあるとき及び第3の傾斜角範囲にあるときに同じアクセル操作量に対して演算される目標値をD1,D2及びD3としたときに、D2≧D1>D3の関係が成立するように作成される。この場合、制御パラメータ目標値演算部は、第1ないし第3の目標値演算用テーブルのうち、前記傾斜角範囲判定部により判定された傾斜角範囲に対応した目標値演算用テーブルを用いて前記制御パラメータの目標値を演算するように構成される。
【0016】
上記のように、車体の傾斜角に対して第1ないし第3の傾斜角範囲を設定して、各瞬時において車体の傾斜角がいずれの傾斜角範囲にあるかを判定し、判定された傾斜角範囲に対応する目標値演算用テーブルを用いて、アクセル操作量とモータの出力トルクとの間の関係を求めるようにすると、制御パラメータの目標値を求めるための演算処理を簡単にして、演算を迅速に行わせることができるため、トラクション制御や、車体の傾斜角が過剰になった際のトラクション制御を、遅れを伴うことなく、的確に行わせることができる。
【0017】
本発明に係わる電動二輪車用制御装置はまた、アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出部と、モータの出力トルクを決定する制御パラメータの基準目標値をアクセル操作量に対して演算する基準目標値演算部と、車体の傾斜角を車体傾斜角として検出する車体傾斜角検出部と、後輪の回転速度を検出する回転速度検出部と、制御パラメータの基準目標値を補正して前記制御パラメータの実目標値を求める際の補正演算に用いる補正変数を、前記車体傾斜角検出部により検出された傾斜角と前記アクセル操作量検出部により検出されたアクセル操作量と前記回転速度検出部により検出された回転速度とに対して決定する補正変数決定部と、補正変数決定部により決定された補正変数を用いて制御パラメータの基準目標値に補正演算を施して制御パラメータの実際の目標値を求める制御パラメータ目標値演算部と、制御パラメータを制御パラメータ目標値演算部により演算された目標値に等しくしてモータを駆動するモータ駆動部とを備えた構成とすることもできる。
【0018】
この場合、補正変数決定部は、車体傾斜角が直線走行と見なし得る第1の傾斜角範囲にあるときに、アクセル操作量と後輪の回転速度とモータの出力トルクとの間の関係を直線走行時に適合した関係とし、車体傾斜角が第1の傾斜角範囲を超える範囲であって後輪を意図的にスリップさせながらコーナリングを行うドリフト走行が可能な車体傾斜角の範囲である第2の傾斜角範囲にあるときに、アクセル操作量と後輪の回転速度とモータの出力トルクとの間の関係をドリフト走行時に適合した関係とし、車体傾斜角が第2の傾斜角範囲を超える第3の傾斜角範囲にあるときに、アクセル操作量と後輪の回転速度とモータの出力トルクとの間の関係を後輪のグリップ力を維持するのに適した関係とするように、車体傾斜角の傾斜角範囲とアクセル操作量と後輪の回転速度とに対して補正変数を決定する。
【0019】
このように構成すると、アクセル操作量及び車体の傾斜角だけでなく、後輪の回転速度(走行速度)をも制御条件としてトラクション制御を行うことができるため、電動二輪車のトラクション制御を的確に行わせることができる。
【0020】
本発明の好ましい態様では、直線走行と見なし得る走行状態における車体傾斜角の範囲を第1の傾斜角範囲とし、この第1の傾斜角範囲を超える範囲であって後輪を意図的にスリップさせながらコーナリングを行うドリフト走行が可能な車体傾斜角の範囲を第2の傾斜角範囲とし、第2の傾斜角範囲を超える車体傾斜角の範囲を第3の傾斜角範囲として、車体傾斜角検出部により検出された車体傾斜角が第1ないし第3の傾斜角範囲のいずれにあるかを判定する傾斜角範囲判定部が設けられる。この場合、補正変数決定部は、傾斜角範囲判定部により判定された傾斜角範囲に応じて、アクセル操作量と後輪の回転速度とモータの出力トルクとの間の関係を、それぞれの傾斜角範囲に適合した関係とするべく、アクセル操作量検出部により検出されたアクセル操作量と回転速度検出部により検出された回転速度とに対して補正変数を決定するように構成される。
【0021】
上記補正変数決定部は、制御パラメータの基準目標値を補正して制御パラメータの実目標値を求める際の補正演算に用いる補正変数の基本値である基本補正変数をアクセル操作量検出部により検出されたアクセル操作量と回転速度検出部により検出された回転速度とに対して決定する基本補正変数決定部と、基本補正変数を補正して実補正変数を決定する際の補正演算に用いる傾斜補正変数を傾斜角範囲判定部により判定された傾斜角範囲に応じて決定する傾斜補正変数決定部と、傾斜補正変数を用いて基本補正変数を補正することにより制御パラメータの基準目標値の補正演算に実際に用いる補正変数を決定する実補正変数決定部とにより構成することができる。
【0022】
上記の各態様において、モータ駆動部は、モータに供給する電圧及び電流をPWM制御することによりモータの出力トルクを制御するように構成するのが好ましい。この場合、PWM制御のデューティ比を制御パラメータとするのが好ましい。
【0023】
制御パラメータの基準目標値を補正して制御パラメータの実目標値を求める際の補正演算は、基準目標値に補正量を加減算することにより行ってもよく、基準目標値に補正係数を乗じる(または基準目標値を補正係数で除する)ことにより行ってもよい。基本補正変数を補正して実補正変数を決定する際の補正演算についても同様である。本明細書では、補正量と補正係数との双方を包含する意味で「補正変数」の語を用いている。当然のことながら、補正変数は補正演算のしかたに応じて異なる値をとる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、車体の傾斜角が直線走行時にとりうる傾斜角の範囲である第1の傾斜角範囲にあるときには、前輪をリフトさせるような過剰なトルクを発生させることなく、直線走行を安全に行わせ、車体の傾斜角がドリフト走行が可能な第2の傾斜角範囲にあるときには、アクセル操作量とモータの出力トルクとの関係をドリフト走行を行うのに適した関係に設定して運転者の意のままに後輪を滑らせながら、車体の転倒を招くことなく、ドリフト走行を行わせることを可能にし、また車体の傾斜角が過剰になって第3の傾斜角範囲に入ったときには、アクセル操作量とモータの出力トルクとの間の関係をグリップ力を維持するのに適した関係とするように制御することができるため、コーナリング時に運転者が意図的にドリフト走行を行うことを可能としつつ、車体の転倒を防止するためのトラクション制御を的確に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わる電動二輪車用制御装置のハードウェアの構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係わる電動二輪車用制御装置のマイクロプロセッサにより構成される部分を含む全体の構成を示したブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態において、アクセル操作量に対して制御パラメータの目標値を演算する際に用いる演算用テーブルの構成を示すグラフである。
【図4】本発明の第1の実施形態において、傾斜角範囲判定部及び制御パラメータ目標値演算部を構成するためにマイクロプロセッサに実行させるプログラムのアルゴリズムを示したフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態に係わる電動二輪車用制御装置の構成を示したブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施形態において、制御パラメータの基準目標値を補正して実目標値を演算する際に用いる傾斜補正変数と車体傾斜角との関係の一例を示したグラフである。
【図7】本発明の第2の実施形態において、補正変数決定部と制御パラメータ目標値演算部とを構成するためにマイクロプロセッサに実行させるプログラムのアルゴリズムを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の第1の実施形態の構成を示したもので、同図において、1は駆動輪である後輪1aと、従動輪である前輪1bとを備えた電動二輪車の車体、2は後輪1aを駆動する電気モータである。モータ2としては、DCモータ、DCブラシレスモータ、インダクションモータ等を用いることができるが、本実施形態ではモータ2としてDCブラシレスモータを用いるものとする。DCブラシレスモータは、永久磁石をロータヨークに取り付けてロータ界磁を構成したロータと、ロータの磁極に対向する磁極部を有する電機子鉄心に多相の電機子コイルを巻回したステータと、ステータの各相の電機子コイルに対してロータの回転角度位置を検出する位置センサとを備えた周知のものである。位置センサは例えば、各相の電機子コイルに対して設定された所定の検出位置に取り付けられて、ロータの磁極の極性を検出することによりロータの回転角度位置の情報を含む矩形波信号を出力するホールICからなっている。DCブラシレスモータにおいては、位置センサにより検出されたロータの回転角度位置に応じてステータの各相の電機子コイルに電流を流すタイミングを制御することにより、ロータを所定の方向に回転させる。
【0027】
3はバッテリ4の出力電圧をモータ2を駆動するのに適した電圧に変換してモータ2に供給するインバータである。インバータ3は、例えば、スイッチ素子と該スイッチ素子に逆並列接続された帰還用ダイオードとにより各アームを構成したフルブリッジ回路からなっている。インバータ3は、後記するモータ駆動部から供給されるモータ駆動信号により制御されて、ロータを所定の方向に回転させるべく、駆動電流を流す電機子コイルの相を切り換える。インバータ3はまた、モータ2に供給する駆動電圧をPWM制御することにより、モータの駆動電流をPWM制御して、モータの出力トルクを調節する。
【0028】
5はアクセル操作量を検出するアクセル操作量検出部である。アクセル操作量検出部5は、電動二輪車のハンドルに取り付けられたアクセルグリップ等のアクセルの操作量を検出して、検出した操作量を表す電気信号を出力するポテンショメータ等の変位量センサからなっている。
【0029】
6は車体傾斜角検出部で、車体の傾斜角(車体傾斜角)を検出して、検出した傾斜角を表す電気信号を発生する。本実施形態では、電動二輪車の後輪の車軸の中心軸線と直交する平面が鉛直面に対してなす角度(後輪が鉛直面に対してなす角度)を車体傾斜角として検出する。車体傾斜角検出部6は例えば、車体1に取り付けられた加速度センサと、この加速度センサの出力から傾斜角を演算する演算部とにより構成される。
【0030】
図1において、7は、CPU7A、不揮発性メモリ(ROMまたはEEPROM)7B、一時記憶メモリ(RAM)7C、入力インターフェース7D、出力インターフェース7E等からなるマイクロプロセッサを備えた電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。ECU7Aは、ROM(またはEEPROM)7Bに格納された所定のプログラムを実行することにより、アクセル操作量と車体傾斜角とに対してモータ2を制御する制御部を構成する。図示されていないが、ECU7には、DCブラシレスモータ2を制御するために、モータ2内に設けられた位置センサ(例えばホールIC)の出力が入力されている。
【0031】
本発明に係わる電動二輪車用制御装置は、駆動輪である後輪1aと従動輪である前輪1bとを備えた車体1と、後輪を駆動する電気モータ2とを備えた電動二輪車のモータ2の出力トルクをアクセル操作量に対して制御する。電動二輪車のモータ2の出力トルクをアクセル操作量に応じて制御する場合には、大きさや位相を変化させることによりモータ2の出力トルクを変化させることができるパラメータを制御パラメータとして、アクセル操作量に対して制御パラメータの目標値(モータの出力トルクを目標値に等しくするために制御パラメータがとるべき値)を演算し、制御パラメータを演算した目標値に等しくしてモータ2を駆動することにより、アクセルが指示した通りの出力トルクをモータから発生させる。本実施形態では、インバータ3がモータに供給する電圧及び電流をPWM制御することによりモータの出力トルクを制御する。そのため、PWM制御のデューティ比(オンデューティ比)Pwを制御パラメータとして用いる。モータに駆動電圧を印加する(駆動電流を流す)時間をTon、駆動電圧(駆動電流)を零にする時間をToffとすると、デューティ比は、Ton/(Ton+Toff)で与えられる
【0032】
本実施形態においては、図2に示されているように、傾斜角範囲判定部11と、目標値演算用テーブル記憶部12と、制御パラメータ目標値演算部13と、モータ駆動部14とをECU7により構成する。
【0033】
本実施形態においては、車体傾斜角に対して複数の範囲を設定して、傾斜角範囲判定部11により、車体傾斜角検出部6が検出した車体傾斜角がいずれの範囲にあるかを判定する。そして、インバータ3からモータ2に供給する電圧及び電流をPWM制御する際のデューティ比を制御パラメータとして、アクセル操作量に適合するデューティ比(制御パラメータ)の目標値を制御パラメータ目標値演算部13により演算し、バッテリ4からインバータ3を通してモータ2に供給される電圧及び電流のデューティ比を演算された目標値とするように、モータ駆動部14からインバータ3に制御信号(インバータのスイッチ素子を所定のタイミングでオンオフ制御する信号)を供給する。これにより、モータ2に供給される駆動電流をアクセル操作量に適合した大きさとし、アクセル操作により指示されたトルクをモータ2から出力させる。モータ2を所定の方向に回転させるようにインバータを制御する方法、及びバッテリ4からインバータ3を通してモータに供給される電圧、電流をPWM制御する手法は公知であるので、その詳細な説明は省略する。
【0034】
本実施形態で用いる傾斜角範囲判定部11は、直線走行とみなし得る電動二輪車の走行状態における車体傾斜角の範囲を第1の傾斜角範囲とし、この第1の傾斜角範囲を超える範囲であって、車体を傾斜させてコーナに進入して後輪を意図的にスリップさせながらコーナリングを行うドリフト走行が可能な車体傾斜角の範囲を第2の傾斜角範囲とし、更に第2の傾斜角範囲を超える車体傾斜角の範囲(車体の傾斜角が大きすぎるため後輪のグリップ力が喪失して車体が転倒するおそれがある傾斜角範囲)を第3の傾斜角範囲として設定して、車体傾斜角検出部6により検出された車体傾斜角が第1ないし第3の傾斜角範囲のいずれにあるかを判定する。
【0035】
本実施形態では、車体傾斜角θに対して第1の判定角度θ1と第2の判定角度θ2とを設定して、車体傾斜角θが第1の判定角度θ1未満(θ<θ1)であるとき、第1の判定角度以上で第2の判定角度θ2以下(θ1≦θ≦θ2)であるとき及び第2の判定角度θ2よりも大きい(θ2<θ)であるときにそれぞれ車体傾斜角θが第1の傾斜角範囲、第2の傾斜角範囲及び第3の傾斜角範囲にあると判定する。第1の判定角度θ1及び第2の判定角度θ2の値は、ライダーの体重を含む車体重量、車体の重心位置、タイヤのグリップ力及び路面の状況等を考慮して適宜に設定する。
【0036】
本発明を実施するに当たっては、種々の条件を設定して予め実験を行うことにより、ドリフト走行が可能な傾斜角範囲の下限と上限とを与える第1の判定角度θ1及び第2の判定角度θ2のそれぞれがとり得る値の範囲を求めておいて、実際に用いる第1の判定角度θ1及び第2の判定角度θ2の値を適宜に選択し得るようにしておくことが好ましい。
【0037】
目標値演算用テーブル記憶部12は、検出されたアクセル操作量と各アクセル操作量に適合する制御パラメータの目標値との関係をテーブルの形で記憶する部分で、ECU内の不揮発性メモリ(ROMまたはEEPROM)7Bにより構成される。目標値演算用テーブル記憶部12は、車体の傾斜角が第1の傾斜角範囲にあるときに用いる第1の目標値演算用テーブルと、車体の傾斜角が第2の傾斜角範囲にあるときに用いる第2の目標値演算用テーブルと、車体の傾斜角が第3の傾斜角範囲にあるときに用いる第3の目標値演算用テーブルとを記憶している。
【0038】
第1の目標値演算用テーブルないし第3の目標値演算用テーブルはそれぞれ、アクセル操作量と制御パラメータとの間に、図3に示された曲線aないしcのような関係を持たせるように作成される。図3に見られるように、第1の目標値演算用テーブルないし第3の目標値演算用テーブルは、いずれも,アクセル操作量が大きくなるにつれてモータの出力トルクを大きくしていくように作成される。第1ないし第3の目標値演算用テーブルはまた、車体傾斜角が第1の傾斜角範囲にあるとき、第2の傾斜角範囲にあるとき及び第3の傾斜角範囲にあるときにそれぞれ同じアクセル操作量に対して得られるモータの出力トルクをτ1ないしτ3としたときに、τ2≧τ1>τ3の関係を成立させるように作成される。
【0039】
本実施形態では、制御パラメータとしてモータに供給する電圧及び電流のデューティ比Pwを制御パラメータとしているため、制御パラメータを増大させることによりモータの出力トルクを増大させることができ、制御パラメータを減少させることによりモータの出力トルクを低下させることができる。従って、第1ないし第3の目標値演算用テーブルは、アクセル操作量が大きくなるにつれて制御パラメータの目標値を大きくしていくように、かつ車体傾斜角が第1ないし第3の傾斜角範囲にあるときにそれぞれ同じアクセル操作量に対して演算される制御パラメータ(PWM制御のデューティ比)の目標値をD1,D2及びD3としたときに、D2≧D1>D3の関係が成立するように作成される。
【0040】
本実施形態では、傾斜角範囲判定部11が車体の傾斜角範囲を判定したときに、制御パラメータ目標値演算部13が、目標値演算用テーブル12に記憶された第1ないし第3の目標値演算用テーブルの中から、傾斜角範囲判定部11により判定された傾斜角範囲に適合する目標値演算用テーブルを選択して、選択したテーブルを検索して補間演算を行うことにより、アクセル操作量検出部5により検出されたアクセル操作量と傾斜角範囲判定部11により判定された傾斜角範囲とに対して、モータの出力トルクを決定する制御パラメータの目標値を演算する。
【0041】
本実施形態においては、制御パラメータ目標値演算部13が、アクセル操作量検出部5により検出されたアクセル操作量と、車体傾斜角判定部11により判定された傾斜角範囲とに対して、以下に示す(a)ないし(c)の関係を持たせて制御パラメータの目標値を演算することができるように、第1ないし第3の目標値演算用テーブルが作成されている。
(a)車体傾斜角が第1の傾斜角範囲にあると判定されているときに、アクセル操作量と出力トルクとの間の関係を、前輪をリフトさせることなく(前輪が持ち上がる状態を生じさせることなく)直線走行を行わせるのに適した関係(例えば図3の曲線aの関係)とする。
(b)車体傾斜角が第2の傾斜角範囲にあると判定されているときに、アクセル操作量と出力トルクとの間の関係を、ドリフト走行時に適合した関係(例えば図3の曲線bの関係)とする。
(c)車体傾斜角が第3の傾斜角範囲にあると判定されているときに、アクセル操作量と出力トルクとの間の関係を後輪のグリップ力を維持するのに適した関係(例えば図3の曲線cの関係)とする。
【0042】
モータ駆動部14は、モータ2に供給される電圧及び電流をPWM制御する際のデューティ比(制御パラメータ)を制御パラメータ目標値演算部により演算された目標値に等しくするようにインバータ3のスイッチ素子に制御信号を与えることにより、モータ2内に設けられた位置センサにより検出されたロータの回転角度位置に応じて、車体を前進させる方向にモータ2を回転させるべくモータ2の電機子コイルの励磁相を切り替えるとともに、モータ2の駆動電流を所定のデューティ比でPWM制御して、モータ2からアクセル操作により指示された出力トルクを発生させるようにモータ2を駆動する。
【0043】
各傾斜角範囲においてアクセル操作量と出力トルクとの間に持たせる最適の関係は、車体重量、車体の重心位置、タイヤのグリップ力及び路面の状況等の諸条件により異なる。従って、予め諸条件を設定して行った実験の結果に基づいて、アクセル操作量と出力トルクとの間に持たせる最適の関係(目標値演算用テーブルの最適の構成)を決定するのが好ましい。
【0044】
ライダーの技量により、判定角度θ1,θ2及びドリフト走行時に持たせるアクセル操作量と出力トルクとの間の関係が異なる場合には、判定角度θ1,θ2の値及び第2の目標値演算用マップを複数用意しておいて、その中の一つを選択し得るようにしておくのが好ましい。ECU7に、不揮発性メモリ7Bとして、書き換えが可能なEEPROMを設ける場合には、走行に先立って、θ1,θ2や、各傾斜角範囲において用いる目標値演算用テーブルを構成するデータの最適値をEEPROMに書き込んで、書き込んだデータを用いてモータの制御を行わせるようにすることができる。
【0045】
図4を参照すると、傾斜角範囲判定部11、制御パラメータ演算部13及びモータ駆動部14を構成するためにECU7のマイクロプロセッサに実行させる処理のアルゴリズムを示すフローチャートが示されている。図4に示した処理は、一連のタスクを所定の順序で繰り返し実行するタスク処理の中に組み込まれて、所定のタイミングが到来する毎に実行される。
【0046】
図4に示した処理が立ち上がると、先ずステップS101で、車体傾斜角検出部6により検出されている車体傾斜角を読み込んで、検出された車体傾斜角が第1の判定角度θ1未満であるか否かを判定する。その結果、検出された車体傾斜角が第1の判定角度θ1未満である場合には、ステップS102に進んで、目標値演算用テーブル記憶部12に記憶されている演算用テーブルの中から第1の目標値演算用テーブルを選択し、ステップS103でアクセル操作量検出部5により検出されているアクセル操作量を読み込む。次いでステップS104に進んで、読み込んだアクセル操作量に対して、ステップS102で選択されたテーブルを検索して補間演算を行うことにより、制御パラメータの目標値PWfを演算する。次いでステップS105に進んで、モータ駆動信号をインバータ3に与えて、モータの駆動電圧及び駆動電流のPWM制御のデューティ比を目標値PWfに等しくするようにインバータ3を制御する。これにより、バッテリ4からインバータ3を通してモータ2に、アクセル操作量に見合った大きさ(平均値)の駆動電流を流して、モータ2からアクセル操作により指示された通りの出力トルクを発生させる。
【0047】
ステップS101で、検出されている車体傾斜角が第1の判定角度θ1未満でないと判定されたときには、ステップS106に進んで、検出されている車体傾斜角が第1の判定角度θ1以上、第2の判定角度θ2以下の範囲(θ1≦θ≦θ2の範囲)にあるか否かを判定する。その結果、車体傾斜角が第1の判定角度θ1以上、第2の判定角度θ2以下の範囲にあると判定されたときには、ステップS107に進んで目標値演算用テーブル記憶部12に記憶されている演算用テーブルの中から第2の目標値演算用テーブルを選択し、ステップS103に移行する。ステップS103では、アクセル操作量検出部5により検出されているアクセル操作量を読み込み、次いでステップS104で、読み込んだアクセル操作量に対して、ステップS107で選択された第2の目標値演算用テーブルを検索して補間演算を行うことにより、制御パラメータの目標値PWfを演算する。次いでステップS105に進んで、モータ駆動信号をインバータ3に与えて、モータの駆動電圧及び駆動電流のPWM制御のデューティ比を目標値PWfに等しくするようにインバータ3を制御する。
【0048】
ステップS106で検出されている車体傾斜角が第1の判定角度θ1以上、第2の判定角度θ2以下の範囲(θ1≦θ≦θ2の範囲)にないと判定されたとき(車体傾斜角が第3の傾斜角範囲にあると判定されたとき)には、ステップS108に進んで、目標値演算用テーブル記憶部12に記憶されている演算用テーブルの中から第3の目標値演算用テーブルを選択する。次いで、ステップS103に移行して、アクセル操作量検出部5により検出されているアクセル操作量を読み込み、ステップS104で、読み込んだアクセル操作量に対して、ステップS108で選択された第3の目標値演算用テーブルを検索して補間演算を行うことにより、制御パラメータの目標値PWfを演算する。その後ステップS105で、モータ駆動信号をインバータ3に与えて、モータの駆動電圧及び駆動電流のPWM制御のデューティ比を目標値PWfに等しくするようにインバータ3を制御する。
【0049】
図4に示したアルゴリズムによる場合には、図4のステップS101とS106とにより傾斜角範囲判定部11が構成され、ステップS102,S103,S104,S107及びS108により、制御パラメータ目標値演算部13が構成される。また図4のステップS105によりモータ駆動部14が構成される。
【0050】
上記のように制御装置を構成すると、車体1の傾斜角が第1の傾斜角範囲にあるときには、前輪をリフトさせるような過剰なトルクを発生させることなく、直線走行を安全に行わせ、車体1の傾斜角が第2の傾斜角範囲にあるときには、アクセル操作量とモータの出力トルクとの関係をドリフト走行を行うのに適した関係に設定して、意のままに後輪を滑らせてドリフト走行を行わせることができる。また車体1の傾斜角が第2の傾斜角範囲を越えて第3の傾斜角範囲に入ったときには、アクセル操作量とモータの出力トルクとの間の関係をグリップ力を維持するのに適した関係として転倒を防止するためのトラクション制御を行わせて安全性を高めることができる。
【0051】
なお本発明は上記第1の実施形態のように構成する場合に限定されるものではなく、車体傾斜角範囲を判定することなく、アクセル操作量と車体傾斜角と制御パラメータの目標値との間の関係を与える三次元の制御パラメータ演算用テーブルを用いて、このテーブルをアクセル操作量と車体傾斜角とに対して検索して補間演算を行うことにより、第1ないし第3の傾斜角範囲にそれぞれ適合した制御パラメータの目標値をアクセル操作量に対して演算するようにしてもよい。
【0052】
上記の実施形態では、車体傾斜角判定部により判定された傾斜角範囲に適合した目標値演算用テーブルを用意しておいて、検出されたアクセル操作量に対して、傾斜角範囲に見合った目標値演算用テーブルを検索することにより、制御パラメータの目標値を演算するようにしたが、後輪のトラクションは、走行速度の影響をも受ける。従って、アクセル操作量及び車体傾斜角だけでなく、走行速度をも考慮して制御パラメータの目標値を求めるようにするのが好ましい。
【0053】
本発明の第2の実施形態では、アクセル操作量と、車体傾斜角と、走行速度に比例している後輪の回転速度とに対して制御パラメータの目標値を求めて、更に最適な制御を行う。第2の実施形態においては、次の(i)ないし(iV)の手順で制御パラメータの目標値を演算する。
(i)アクセル操作量に対して基準目標値を演算する。
(ii)この基準目標値を補正して実際の目標値を求める際に行う補正演算に用いる補正変数の基本値を基本補正変数として、この基本補正変数を、アクセル操作量と後輪の回転速度とに対して決定する。
(iii)この基本補正変数を補正して実際に用いる補正変数(実補正変数)を求める補正演算に用いる補正係数を傾斜補正変数として、この傾斜補正変数を、傾斜角判定部11により判定された車体傾斜角範囲に対して決定する。
(iV)基準目標値と実補正変数とを用いて基準目標値を補正することにより、制御パラメータの目標値を演算する。
【0054】
図5を参照すると、上記の手順でアクセル操作量と車体の傾斜角範囲と後輪の回転速度とに対して制御パラメータの目標値を求めるようにした本発明の第2の実施形態に係わる制御装置の構成が示されている。図5において、1は駆動輪である後輪1aと、従動輪である前輪1bとを備えた電動二輪車の車体、2は後輪1aを駆動する電気モータである。本実施形態でもモータ2としてDCブラシレスモータを用いている。3はバッテリ4の出力電圧をモータ2を駆動するのに適した電圧に変換してモータ2に供給するインバータで、モータ2に供給する駆動電圧をPWM制御することにより、モータの駆動電流をPWM制御して、モータの出力トルクを調節する。
【0055】
5はアクセル操作量を検出して、検出したアクセル操作量を表す電気信号を出力するアクセル操作量検出部、6は車体の傾斜角(車体傾斜角)を検出して、検出した傾斜角を表す電気信号を発生する車体傾斜角検出部で、これらは第1の実施形態で用いたものと同様に構成されている。
【0056】
20は駆動輪である後輪1aの回転速度を検出する回転速度センサで、この回転速度センサとしては、駆動輪の車軸に取り付けられて車軸が一定角度回転する毎にパルスを発生するエンコーダ、車軸に取付けられた速度発電機、モータ2内に設けられて定位置でモータ2のロータの磁極の極性を検出する磁気センサ等を用いることができる。本実施形態では、モータ2としてDCブラシレスモータを用いているため、電機子コイルの励磁相の切替えタイミングを検出するためにモータ2内に設けられている位置センサ(ホールIC)を回転速度センサとして用いる。DCブラシレスモータ内に設けられた位置センサは、ロータが一定角度回転する毎に極性が変化する矩形波信号を発生する。従って、この矩形波信号の零クロス点が検出される周期からモータの回転速度を検出することができ、このモータの回転速度に、モータの出力軸と後輪の車軸との間に設けられた動力伝達機構の変速比(モータの出力軸と後輪の車軸とが直結される場合には変速比=1)を乗じることにより、後輪の回転速度を求めることができる。回転速度センサ20の出力は入力インターフェースを通してECU7内のマイクロプロセッサに入力される。
【0057】
ECU7は、マイクロプロセッサに所定のプログラムを実行させることにより、回転速度検出部21と、傾斜角範囲判定部11と、基準目標値演算部22と、基本補正変数決定部23と、傾斜補正変数決定部24と、実補正変数決定部25と、制御パラメータ目標値演算部13′と、モータ駆動部14とを構成する。
【0058】
傾斜角範囲判定部11は、第1の実施形態と同様に、直線走行と見なし得る走行状態における車体傾斜角の範囲(第1の判定角度θ1未満の範囲)を第1の傾斜角範囲とし、第1の傾斜角範囲を超える範囲であって後輪を意図的にスリップさせながらコーナリングを行うドリフト走行が可能な車体傾斜角の範囲(第1の判定角度θ1と第2の判定角度θ2との間の範囲)を第2の傾斜角範囲とし、第2の傾斜角範囲を超える車体傾斜角の範囲を第3の傾斜角範囲として、車体傾斜角検出部により検出された車体傾斜角が第1ないし第3の傾斜角範囲のいずれにあるかを判定する。
【0059】
回転速度検出部21は、回転速度センサ20から与えられる矩形波信号の零クロス点を検出して、各零クロス点が検出されてから次の零クロス点が検出されるまでの時間からモータの回転速度を演算し、演算した回転速度に、モータの出力軸と後輪の車軸との間に設けられた動力伝達機構の変速比を乗じることにより、後輪の回転速度を求める。
【0060】
基準目標値演算部22は、モータ2の出力トルクを決定する制御パラメータの基準目標値Pwをアクセル操作量に対して演算する。本実施形態においても、モータ2の電圧、電流をPWM制御する際のデューティ比を制御パラメータとして用いる。本実施形態では、アクセル操作量が大きくなるにつれて制御パラメータの基準目標値が大きくなるように、基準目標値を演算する。アクセル操作量に対する制御パラメータの基準目標値の演算は演算式を用いて行ってもよく、アクセル操作量と制御パラメータの基準目標値との間の関係を与える基準目標値演算用テーブルを検索して補間演算を行うことにより行ってもよい。
【0061】
基本補正変数決定部23は、制御パラメータの基準目標値を補正して制御パラメータの実目標値を求める際の補正演算に用いる補正変数の基本値である基本補正変数Aをアクセル操作量検出部により検出されたアクセル操作量と回転速度検出部20の出力から検出される後輪の回転速度とに対して決定する。
【0062】
基本補正変数は、アクセル操作量が大きくなるにつれて制御パラメータの基準目標値を大きくするように、かつ後輪の回転速度が大きくなるにつれてアクセル操作量の増大に伴う制御パラメータの基準目標値の増加割合を小さく抑えるように演算される。本実施形態では、制御パラメータの基準目標値を補正して実目標値を求める際に、基準目標値に加算する補正量として、基本補正変数を演算する。
【0063】
傾斜補正変数決定部24は、基本補正変数決定部23が決定した基本補正変数を補正して実補正変数を決定する際の補正演算に用いる傾斜補正変数Bを傾斜角範囲判定部により判定された傾斜角範囲に応じて決定する。本実施形態では、傾斜補正変数Bを補正係数として、基本補正変数Aに傾斜補正変数Bを乗じることにより、実補正係数Cを求めるものとする。この場合、傾斜補正変数Bは、車体の傾斜角範囲に対して図6に示すように演算される。
【0064】
即ち、車体傾斜角θが0〜θ1の区間にあるとき(車体傾斜角が第1の傾斜角範囲にあるとき)には傾斜補正変数Bを0とし、車体傾斜角θが第2の傾斜角範囲のθ1〜θa(θa>θ1)の区間にあるときに車体傾斜角θの増大に伴って傾斜補正変数Bを+1に向けて直線的に増大させ、車体傾斜角が第2の傾斜角範囲の設定角度θa〜θbの区間にあるときに傾斜補正変数Bを+1に保持し、車体傾斜角θが第2の傾斜角範囲のθb〜θ2の区間にあるときに傾斜補正変数Bを車体傾斜角の増大に伴って零まで直線的に減少させ、車体傾斜角が第3の傾斜角範囲のθ2〜θcの区間にあるときに車体傾斜角の増大に伴って傾斜補正変数を−1に向けて直線的に減少させ、車体傾斜角が第3の傾斜角範囲の設定角度θcを超える区間では傾斜補正係数Bを−1に保つように、車体傾斜角に対して傾斜補正変数を演算する。ここで、第1の判定角度θ1及び第2の判定角度θ2は、第1の実施形態において、傾斜角範囲を判定するために用いた第1及び第2の判定角度と同じものである。車体傾斜角が第2の傾斜角範囲及び第3の傾斜角範囲にあるときの傾斜補正変数は、第2の傾斜角範囲及び第3の傾斜角範囲に対してそれぞれ用意した傾斜補正係数演算用テーブルまたは演算式を用いて演算することができる。
【0065】
実補正変数決定部25は、傾斜補正変数決定部24により決定された傾斜補正変数を、基本補正変数決定部23により決定された基本補正変数に乗じることにより、制御パラメータの基準目標値の補正演算に実際に用いる補正変数(実補正変数)を決定する。
【0066】
本実施形態では、傾斜補正変数を、補正演算を乗算により行う場合に用いる補正係数としているが、傾斜補正変数を補正量として、基本補正変数に傾斜補正変数(補正量)を加減算することにより実補正変数を求めるようにしてもよい。
【0067】
本実施形態では、基本補正変数決定部23と、傾斜補正変数決定部24と、実補正変数決定部25とにより、制御パラメータの基準目標値を補正して制御パラメータの実目標値を求める際の補正演算に用いる実補正変数を、傾斜角範囲判定部11により判定された傾斜角範囲とアクセル操作量検出部5により検出されたアクセル操作量と回転速度検出部21により検出された回転速度とに対して決定する補正変数決定部26が構成されている。
【0068】
制御パラメータ目標値演算部13′は、補正変数決定部26により決定された実補正変数を用いて制御パラメータの基準目標値に補正演算を施して制御パラメータの実際の目標値を求める。本実施形態では、実補正変数を補正量として、制御パラメータの基準目標値に実補正変数を加算することにより制御パラメータの実目標値を求めるようにしている。
【0069】
なお実補正変数を補正係数として、制御パラメータの基準目標値に実補正変数(補正係数)を乗算するか、または制御パラメータの基準目標値を実補正変数で除算することにより、制御パラメータの実目標値を求めるようにすることもできる。
【0070】
モータ駆動部14は、後輪を前進方向に回転させるようにモータ2の電機子コイルの励磁相を切り替えるタイミングを制御するとともに、バッテリ4からインバータ3を通してモータ2に与えられる電圧及び電流をPWM制御する際のデューティ比(制御パラメータ)を制御パラメータ目標値演算部13′により演算された目標値に等しくするようにインバータ3のスイッチ素子に制御信号を与えることにより、モータ2の出力トルクを制御して、モータからアクセル操作により指示された出力トルクを発生させるようにモータを駆動する。
【0071】
アクセル操作量及び後輪の回転速度と基本補正変数との間の関係、及び車体の傾斜角と傾斜補正変数との間の関係は、車体重量、車体の重心位置、タイヤのグリップ力及び路面の状況等の諸条件を考慮して行った実験の結果に基づいて、アクセル操作量と出力トルクとの間に最適の関係を持たせるように決定する。
【0072】
図7を参照すると、第2の実施形態においてECU7のマイクロプロセッサに実行させる処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。図7に示した処理は、一連のタスクを所定の順序で繰り返し実行するタスク処理の中に組み込まれて、所定のタイミングが到来する毎に実行される。
【0073】
図7の処理が開始されると、先ずステップS201で制御パラメータの基準目標値Pwをアクセル操作量に対して演算する。次いでステップS202でアクセル操作量及び後輪の回転速度に対して基本補正変数Aを演算し、ステップS203で傾斜角範囲に応じて傾斜補正変数Bを演算する。傾斜補正変数Bを演算した後、ステップS204で傾斜補正変数Bを基準補正変数Aに乗算して実補正変数Cを演算する。次いでステップS205で制御パラメータ(PWM制御のデューティ比)の基準目標値Pwに実補正変数C(正負の符号をとる)を乗算した値をPwに加算して、制御パラメータの実目標値Pwf(=Pw+C・Pw)を演算し、ステップS206でバッテリ4からインバータ3を通してモータ2に供給する駆動電流のデューティ比を実目標値Pwf等しくするモータ駆動信号を出力して、この駆動信号をインバータ3に与える。
【0074】
図7に示したアルゴリズムによる場合、ステップS201により基準目標値演算部21が構成され、ステップS202により基本補正変数決定部22が構成される。更にステップS203により傾斜補正変数決定部23が、ステップS204により実補正変数決定部24が、ステップS205により制御パラメータ目標値演算部13′が、またステップS206によりモータ駆動部14がそれぞれ構成される。
【0075】
上記第2の実施形態のように構成すると、アクセル操作量及び車体の傾斜角だけでなく、後輪の回転速度(走行速度)をも制御条件に入れてトラクション制御を行うことができるため、電動二輪車のトラクション制御をより的確に行わせることができる。
【0076】
上記第2の実施形態においては、アクセル操作量と後輪の回転速度とに対して基本補正係数を求めると共に、傾斜角範囲の判定結果に基づいて傾斜補正変数を求めて、この傾斜補正変数を基本補正変数に乗じることによりして実補正変数を求めるように補正変数決定部を構成したが、補正変数決定部は、制御パラメータの基準目標値を補正して制御パラメータの実目標値を求める際の補正演算に用いる補正変数を、車体傾斜角検出部により検出された傾斜角とアクセル操作量検出部により検出されたアクセル操作量と回転速度検出部により検出された後輪の回転速度とに対して決定するように構成すればよく、上記の実施形態に示したように構成する場合に限定されるものではない。例えば、車体傾斜角検出部6により検出された車体傾斜角と傾斜補正変数との間の関係を与える傾斜補正変数演算用テーブルを用意して、車体傾斜角検出部6により検出された車体傾斜角に対してこのテーブルを検索して補間演算を行うことにより傾斜補正変数を求めるようにしてもよい。このように構成する場合には、傾斜角範囲判定部11を省略することができる。
【0077】
またアクセル操作量に対して基本補正変数を決定するとともに、車体傾斜角と後輪の回転速度とに対して傾斜・回転速度補正係数を求めて、この傾斜・回転速度補正係数を基本補正係数に乗じることにより、実補正変数を求めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 車体
1a 後輪
1b 前輪
2 電気モータ
3 インバータ
4 バッテリ
5 アクセル操作量検出部
6 車体傾斜角検出部
7 ECU
11 傾斜角範囲判定部
11′傾斜角範囲判定部
12 目標値演算用テーブル記憶部
13 制御パラメータ目標値演算部
13′制御パラメータ目標値演算部
14 モータ駆動部
20 回転速度検出部
21 基準目標値演算部
22 基本補正変数決定部
23 傾斜補正変数決定部
24 実補正変数決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪である後輪と従動輪である前輪とを備えた車体と、前記後輪を駆動する電気モータとを備えた電動二輪車の前記モータの出力トルクをアクセル操作量に対して制御する電動二輪車用モータ制御装置であって、
前記アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出部と、
前記車体の傾斜角を車体傾斜角として検出する車体傾斜角検出部と、
前記モータの出力トルクを決定する制御パラメータの目標値を検出されたアクセル操作量と車体傾斜角とに対して演算する制御パラメータ目標値演算部と、
前記制御パラメータを演算された目標値に等しくして前記モータに駆動電流を流すモータ駆動部と、
を具備し、
前記制御パラメータ目標値演算部が、前記車体傾斜角が直線走行と見なし得る第1の傾斜角範囲にあるときに、前記アクセル操作量と前記出力トルクとの間の関係を、前輪をリフトさせることなく直線走行を行わせるのに適した関係とし、前記車体傾斜角が前記第1の傾斜角範囲を超える範囲であって前記後輪を意図的にスリップさせながらコーナリングを行うドリフト走行が可能な車体傾斜角の範囲である第2の傾斜角範囲にあるときに、前記アクセル操作量と前記後輪の回転速度とモータの出力トルクとの間の関係をドリフト走行時に適合した関係とし、前記車体傾斜角が前記第2の傾斜角範囲を超える第3の傾斜角範囲にあるときに、前記アクセル操作量と前記出力トルクとの間の関係を前記後輪のグリップ力を維持するのに適した関係とするべく、前記アクセル操作量に対して前記制御パラメータの目標値を演算するように構成されていること、
を特徴とする電動二輪車用モータ制御装置。
【請求項2】
直線走行とみなし得る走行状態における車体傾斜角の範囲を第1の傾斜角範囲とし、前記第1の傾斜角範囲を超える範囲であって前記後輪を意図的にスリップさせながらコーナリングを行うドリフト走行が可能な車体傾斜角の範囲を第2の傾斜角範囲とし、前記第2の傾斜角範囲を超える車体傾斜角の範囲を第3の傾斜角範囲として、前記車体傾斜角検出部により検出された車体傾斜角が前記第1ないし第3の傾斜角範囲のいずれにあるかを判定する傾斜角範囲判定部が設けられ、
前記制御パラメータ目標値演算部は、前記傾斜角範囲判定部により判定された傾斜角範囲に応じて、前記アクセル操作量と前記モータの出力トルクとの関係を、それぞれの傾斜角範囲に適合した関係とするように前記アクセル操作量に対して前記制御パラメータの目標値を演算すること、
を特徴とする請求項1に記載の電動二輪車用モータ制御装置。
【請求項3】
前記第1ないし第3の傾斜角範囲のそれぞれに対して、アクセル操作量と制御パラメータの目標値との間の関係を与える第1ないし第3の目標値演算用テーブルが設けられ、
前記第1ないし第3の目標値演算用テーブルはそれぞれ、前記車体傾斜角が第1の傾斜角範囲にあるとき、第2の傾斜角範囲にあるとき及び第3の傾斜角範囲にあるときに同じアクセル操作量に対して演算される目標値をD1,D2及びD3としたときに、D2≧D1>D3の関係が成立するように作成され、
前記制御パラメータ目標値演算部は、前記第1ないし第3の目標値演算用テーブルのうち、前記傾斜角範囲判定部により判定された傾斜角範囲に対応した目標値演算用テーブルを用いて前記制御パラメータの目標値を演算するように構成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の電動二輪車用モータ制御装置。
【請求項4】
駆動輪である後輪と従動輪である前輪とを備えた車体と、前記後輪を駆動する電気モータとを備えた電動二輪車の前記モータの出力トルクをアクセル操作量に対して制御する電動二輪車用モータ制御装置であって、
前記アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出部と、
前記モータの出力トルクを決定する制御パラメータの基準目標値を前記アクセル操作量に対して演算する基準目標値演算部と、
前記車体の傾斜角を車体傾斜角として検出する車体傾斜角検出部と、
前記後輪の回転速度を検出する回転速度検出部と、
前記制御パラメータの基準目標値を補正して前記制御パラメータの実目標値を求める際の補正演算に用いる補正変数を、前記車体傾斜角検出部により検出された傾斜角と前記アクセル操作量検出部により検出されたアクセル操作量と前記回転速度検出部により検出された回転速度とに対して決定する補正変数決定部と、
前記補正変数決定部により決定された補正変数を用いて前記制御パラメータの基準目標値に補正演算を施して前記制御パラメータの実際の目標値を求める制御パラメータ目標値演算部と、
前記制御パラメータを前記制御パラメータ目標値演算部により演算された目標値に等しくして前記モータを駆動するモータ駆動部と、
を具備し、
前記補正変数決定部は、前記車体傾斜角が直線走行と見なし得る第1の傾斜角範囲にあるときに、前記アクセル操作量と前記後輪の回転速度とモータの出力トルクとの間の関係を直線走行時に適合した関係とし、前記車体傾斜角が前記第1の傾斜角範囲を超える範囲であって前記後輪を意図的にスリップさせながらコーナリングを行うドリフト走行が可能な車体傾斜角の範囲である第2の傾斜角範囲にあるときに、前記アクセル操作量と前記後輪の回転速度とモータの出力トルクとの間の関係をドリフト走行時に適合した関係とし、前記車体傾斜角が前記第2の傾斜角範囲を超える第3の傾斜角範囲にあるときに、前記アクセル操作量と前記後輪の回転速度とモータの出力トルクとの間の関係を前記後輪のグリップ力を維持するのに適した関係とするように、前記車体傾斜角の傾斜角範囲と前記アクセル操作量と前記後輪の回転速度とに対して前記補正変数を決定すること、
を特徴とする電動二輪車用モータ制御装置。
【請求項5】
直線走行と見なし得る走行状態における車体傾斜角の範囲を第1の傾斜角範囲とし、前記第1の傾斜角範囲を超える範囲であって前記後輪を意図的にスリップさせながらコーナリングを行うドリフト走行が可能な車体傾斜角の範囲を第2の傾斜角範囲とし、前記第2の傾斜角範囲を超える車体傾斜角の範囲を第3の傾斜角範囲として、前記車体傾斜角検出部により検出された車体傾斜角が前記第1ないし第3の傾斜角範囲のいずれにあるかを判定する傾斜角範囲判定部が設けられ、
前記補正変数決定部は、前記傾斜角範囲判定部により判定された傾斜角範囲に応じて、前記アクセル操作量と前記後輪の回転速度とモータの出力トルクとの間の関係を、それぞれの傾斜角範囲に適合した関係とするべく、前記アクセル操作量検出部により検出されたアクセル操作量と前記回転速度検出部により検出された回転速度とに対して前記補正変数を決定するように構成されていること、
を特徴とする請求項4に記載の電動二輪車用モータ制御装置。
【請求項6】
前記補正変数決定部は、
前記制御パラメータの基準目標値を補正して制御パラメータの実目標値を求める際の補正演算に用いる補正変数の基本値である基本補正変数を前記アクセル操作量検出部により検出されたアクセル操作量と前記回転速度検出部により検出された回転速度とに対して決定する基本補正変数決定部と、
前記基本補正変数を補正して実補正変数を決定する際の補正演算に用いる傾斜補正変数を前記傾斜角範囲判定部により判定された傾斜角範囲に応じて決定する傾斜補正変数決定部と、
前記傾斜補正変数を用いて前記基本補正変数を補正することにより前記制御パラメータの基準目標値の補正演算に実際に用いる補正変数を決定する実補正変数決定部と、
により構成されている請求項5に記載の電動二輪車用モータ制御装置。
【請求項7】
前記モータ駆動部は、前記モータに供給する電圧及び電流をPWM制御することにより前記モータの出力トルクを制御するように構成され、前記制御パラメータは前記PWM制御のデューティ比である請求項1ないし6の何れか一つに記載の電動二輪車用モータ制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−75238(P2012−75238A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217431(P2010−217431)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】