説明

電動機の固定子の巻線方法と、その電動機の固定子

【課題】 電動機の固定子の歯部に巻かれる巻線の巻き太りをなくし、電動機の小型化、高性能化する巻線方法と、その固定子を提供する。
【解決手段】 電動機の固定子の歯部の絶縁用ボビンにN(Nは1以上の整数)本の巻線が同時に集中巻きされる電動機において、前記巻線の巻線方法が、第1の工程では前記絶縁用ボビンに集中巻きされた巻線部分の少なくとも一部分が巻線の線径の略N倍のピッチで整列巻きされており、第2の工程以降は前記絶縁用ボビンに集中巻きされた巻線部分の少なくとも一部分において巻線がN段の俵積みにすることにより、巻線の巻き太りが減り、安定した品質を得ることができ、電動機を小型化、高性能化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子歯部に絶縁用ボビンを装着し、直接巻線を巻き付けた集中巻き方式による電動機の固定子の巻線方法とその電動機の固定子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題等によって低電圧で駆動される電動機を搭載した電動車両が増えてきている。このような電動機の固定子は車両搭載スペースから小型化や、省エネルギーの観点から高効率が要求されている。これらの要求に対して固定子に巻き付けられる巻線は、線径が太く、巻き回数の少ない仕様となっている。具体的には、電圧が60V以下の場合で駆動運転領域が15000r/min以下の電動機であり、特に電動車両に搭載される電動圧縮機等は、インバータ等の駆動装置により制御される電動機が多い。
【0003】
このような電動機の固定子に巻き付けられる巻線仕様は、巻き回数が少なく、線径を太くした巻線仕様や、平角線、U字型コイルを使用し製作されている。巻線の線径を単純に太くした仕様は、従来の細線を太くしたものであり何等従来の巻線方法と変わらない。
【0004】
平角線の仕様は特開2003−9480号公報(特許文献1参照)に記載されているように、平角線の巻き始めが邪魔にならないように平角線を案内する軌道部を絶縁用ボビンに形成し斜めに巻き付けている。図3には固定子1cの歯部2cに絶縁用ボビン4cを装着し平角線3cを巻き付けている。図3は固定子1cの歯部2cのほぼ中央部を径方向側面から解るように軸方向に縦断面した図である。絶縁用ボビン4cには平角線3cを巻くために固定子1cの上端部から下端部にかけて斜めに張り出した軌道部5a、5bを確保している。
【0005】
また、U字型コイルの仕様は特開2002−153002号公報(特許文献2参照)に記載されているように、U字型に成形したU字コイルの端部を積層した固定子の歯部を挟んでスロットに挿入し、U字コイルの端部を接続したものである。図4には固定子1dの歯部2dに絶縁用ボビン4dを装着し、固定子1dの歯部2dを挟んでU字型コイル3dが装着され、コイル端部6a、6bを溶接等で接続している。図4は固定子1dの歯部2dのほぼ中央部を内径方向側面から解るように軸方向に縦断面した図である。
【0006】
【特許文献1】特開2003−9480号公報
【特許文献2】特開2002−153002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、このような低電圧の電動機に太い線径の巻線を絶縁用ボビンに巻き付ける際、巻き太りが発生する。特に固定子の歯部に直接巻線を巻き付ける集中巻き方式では、隣同士が異極であるためスロット内での巻き太りは巻線同士が接触し絶縁不良になる。また、絶縁用ボビンの角部では、巻線を絶縁用ボビンの角部に沿うように最小半径で曲げることができずにコイルエンドが大きくなってしまっている。これにより、固定子のスロット内に巻線を多く巻くことができず、コイルエンドの高さも高くなり電動機の小型化、高性能を達成することが難しくなっている。
【0008】
また、巻線の線径が太いために可とう性が悪く、巻線を引っ張って巻く力(以降、巻線テンションと呼ぶ)を強くしなければならないが、あまり強くなりすぎると巻線を傷つけたり、破損したりして絶縁不良となる。また、巻線テンションを強くすることにより絶縁用ボビン自体が破損したり、引いては積層コアの変形にもつながる。従って、巻線スピードを遅くして巻線及び絶縁用ボビン、積層コアへの影響を極力低減している。
【0009】
また、図3に示したように平角線3cの巻線を使用した場合は、線径の太い巻線を使用した場合と同様の問題が生じ、更に、平角線3cの巻き始めが邪魔にならないように絶縁用ボビン4cに樹脂の張り出しを設け平角線3cを案内する軌道部5a、5bを斜めに形成している。これにより巻線が全体的に斜めに巻き付けられるため本来なら巻線を巻くことができる部分にもかかわらず、巻線を巻くことができない個所が発生している。従って、固定子1cのスロットには思ったほど平角線3cを巻くことができない。
【0010】
また、図4に示したようにU字型コイル3dを使用した場合は、線径が太い巻線や平角線等3cで発生する巻き太りや巻線テンションによる巻線及び絶縁用ボビン4d、積層コア等への影響はほとんどないが、スロットに挿入する前に、コイルを事前にU字型に成形したり、積層した固定子1dの歯部2dを挟んで隣り合うスロットに挿入した後は、U字型コイル3dの端部6a、6bを溶接等で接続しなければならず、作業効率が悪くコストアップとなっている。
【0011】
また、車両用の電動機と使用される場合、固定子の巻線に大電流を流すため巻線が発熱し電動機性能を悪化している。
【0012】
本発明は、これに鑑みて、特に低電圧の電動機の固定子に用いる巻線を固定子のスロットに少しでも多く巻き込み高占積率化(スロットに占める巻線の割合)し電動機の小型化、高性能化を達成する。また、巻線の発熱に伴う損失や巻線への傷、破損を低減し、絶縁用ボビン及び積層コア等の破損、変形を低減して品質を向上することを目的とした、電動機の固定子の巻線方法と、その電動機の固定子であります。
【課題を解決するための手段】
【0013】
電動機の固定子の歯部には絶縁用のボビンが装着され、前記絶縁用ボビンにはN(Nは1以上の整数)本の巻線が同時に集中巻きされた電動機であり、前記巻線が前記絶縁用ボビンに巻き付ける巻き付け方法において、第1の工程では前記絶縁用ボビンに集中巻きされた巻線部分の少なくとも一部分が巻線の線径の略N倍のピッチで整列巻きされており、第2の工程以降は前記絶縁用ボビンに集中巻きされた巻線部分の少なくとも一部分において巻線がN段の俵積みとした電動機の固定子の巻線方法と、その電動機の固定子とする。
【0014】
また、前記第2の工程の巻線の巻き付け進み方向は、前記第1の工程の巻線の巻き付け進み方向とは逆方向に巻線を巻き進み、以降の工程において巻線の巻き進み方向は交互に入れ替わり行われた電動機の固定子の巻線方法と、その電動機の固定子とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、特に、低電圧の電動機の固定子に用いる巻線方法において線径の太い巻線や平角線、U字型コイル等を使用することなく固定子のスロットに少しでも多くの巻線を巻き高占積率化すると伴にコイルエンドを小さくすることができる。これにより電動機の小型化、高性能化を達成することができる。また、巻線の発熱に伴う損失や巻線への傷、破損を低減し、絶縁用ボビン及び積層コア等の破損、変形を低減して品質を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施例について図面を用いて説明する。図1の電動機の固定子1aの歯部2aに絶縁用ボビン4aが装着され、絶縁用ボビン4aの上から巻線3aが直接巻き付けられた集中巻き方式における歯部2aの部分横断面図である。絶縁用ボビン4aの上から直接巻き付けられる巻線3aは巻線機の1本のノズルからN(Nは1以上の整数)本同時に引出され固定子1aの歯部2aに直接巻き付けられている。本実施形態における巻線機の1本のノズルからは、2本の巻線3aが引出されており固定子1aの歯部2aに装着した絶縁用ボビン4aに2本の巻線が同時に巻き付けられている。
【0017】
このような低電圧の仕様での電動機の固定子の巻線方法は、線径の太い巻線や図3の平角線3c等のように巻線の断面積がかなり大きいものは、巻線の可とう性が悪く巻き太りし易く、隣り合う歯部2cに巻かれた巻線同士がスロット内で接触し絶縁不良となったり、コイルエンドの仕上がり高さが高くなったりしたが、図1に示したように線径が細い巻線3a、具体的にはφ1.5以下の多本持ちの巻線3aにすることにより取り扱いも容易となり可とう性も向上する。
【0018】
また、絶縁用ボビン4aの角部にも巻線3aが馴染み固定子1aの隣り合う歯部2aに巻かれた巻線3a同士がスロット内で接触することがなくなる。またコイルエンドの仕上がり高さも低くすることができる。
【0019】
また、細い線径であるため巻線3aの引っ張る力、巻線テンションは線径の太い巻線や平角線3c等に比べて弱くすることができ、巻線テンションによる巻線3aや絶縁用ボビン4aの傷、破損を低減でき、積層コアへの破損、変形も無くすことができる。また、図4のU字型コイル3d等のようにスロットに挿入する前に、コイルを事前にU字型に成形したり、積層した固定子1dの歯部2dを挟んで隣り合うスロットに挿入した後、U字型コイル3dの端部6a、6bを接続するような作業も必要としない。
【0020】
尚、巻線機の1本のノズルから引出されたN本の巻線が、規則性のない状態で絶縁用ボビン4aに巻かれた場合、先の線径の太い巻線や平角線3c等と同様の問題が発生する。本発明の図1の実施形態では、2本の巻線3aに規則性を持たせて絶縁用ボビン4aに巻き付けている。
【0021】
図1の2本の巻線3aは例えば、φ0.9〜φ1.5の2本持ちの場合であり、2本の巻線3aが絶縁用ボビン4aの1段目に隙間無く納まる巻線方法である。
固定子1aの歯部2aに装着した絶縁用ボビン4aの1段目は、第1の工程として2本を平行にして整列に巻き付けている。従って、巻線3aは2本同時に巻き付けており巻き付けピッチは線径の略2倍の間隔をおいて巻き付けている。
【0022】
具体的に図1で説明すると、第1の工程として1ターン目の巻線(1、1')から4ターン目の巻線(4、4')まで巻き付けピッチが線径の略2倍の間隔をおいて巻線3aが整列に巻き付けられている。絶縁用ボビン4aで囲まれたスロットの固定子1aの外径側から内径側に向い1段目として初回の1ターン目の巻線(1、1')から順次整列に巻き付け4ターン目の巻線(4、4')まで巻き付けている。
【0023】
次に1段目の上に第2の工程として、第1の工程の巻線(1〜4、1'〜4')の巻き付け進み方向とは逆方向に2段目、3段目の巻線(5〜11、5'〜11'、12)を巻き進む。第2の工程では2本持ちの内の1本の巻線(5〜11)を1段目に整列巻きされた巻線(1〜4、1'〜4')の上に順次配置し、1段目の巻線と巻線との間の隙間に位置するように巻き付けられている。2本持ちの内の他の1本の巻線(5'〜11'、12)は3段目として巻き付けられ、2段目の巻線と巻線との間の隙間に位置するように2段目に巻き付けた巻線(5〜11)と同時に3段目が巻き付けられている。従って、3段目の巻線(5'〜11'、12)は2段目の巻線(5〜11)と同時に巻き付けられ2段目の巻線(5〜11)とは若干の角度を持って斜めに俵積みされ巻き付けられている。
【0024】
また、巻き付け進み方向は、2段目の1ターン目の巻線(5)と3段目の1ターン目の巻線(5')は若干の角度を持たせ斜めに俵積みとなるように絶縁用ボビン4aの固定子1aの内径側から外径側に向い巻き付けている。2本持ちの内の1本の巻線(5〜11)は、2段目の1ターン目の巻線(5)から7ターン目の巻線(11)まで、2本持ちの内の他の1本の巻線(5'〜11')は、3段目の1ターン目の巻線(5')から7ターン目の巻線(11')まで巻き付けられている。尚、3段目の7ターン目の隣には2段目の巻線の続きである巻線(12)が巻き付けられている。
【0025】
更に4段目も5段目は、2段目、3段目に巻き付けられた巻線(5〜11)、(5'〜11'、12)の巻き付け進み方向とは逆方向に4段目、5段目の巻線(12'〜18')、(13〜19、19')を巻き進む。(1段目の巻線(1〜4、1'〜4')の巻き付け進み方向と同じ)。但し、4段目、5段目の巻き始めの1ターン目の巻線(12、12')は、2本持ちの内の1本の巻線(12)が、3段目の最終ターンである7ターン目の巻線(11')の隣の隙間に巻き込まれている。従って、4段目の最初の1ターン目は巻線(12')となり以降巻線(18')まで巻かれ、3段目に巻かれた巻線(12)の次のターンの巻線(13)は5段目の最初の1ターン目の巻線(13)として巻かれる。
【0026】
これにより、2段目、3段目に巻かれた巻線(5〜11)、(5'〜11'、12)と同様に、巻線と巻線との間の隙間に位置するように4段目の巻線(12'〜18')が巻き付けられ、同時に5段目の巻線(13〜19、19')が巻き付けられている。尚、2段目、3段目に巻き付けた巻線の斜めに俵積みされた巻線(5〜11)、(5'〜11'、12)とは、俵積みされる2本の巻線間の距離が若干広く積まれることになるが見かけ上は同じに見える。その後は、5段目の最終ターンの巻線(19、19')には2本が同時に巻き込まれることになり以降6段目からは2段目〜5段目の巻線方法が繰り返されることになる。
【0027】
また、図2に示す巻線方法は、2本の巻線3bが絶縁用ボビン4bの1段目に隙間無く納まるが、最終ターンにおいて2本持ちの内の1本の巻線3bが上段に巻かれる場合の巻線方法を示している。
固定子1bの歯部2bに装着した絶縁用ボビン4bの1段目は、第1の工程として2本を平行にして整列に巻き付けている。巻線3bは2本同時に巻き付けているため、巻線3bの巻き付けピッチは線径の略2倍の間隔をおいて巻き付けている。
【0028】
具体的に図2で説明する。第1の工程として1ターン目の巻線(1、1')から4ターン目の巻線(4、4')まで巻き付けピッチが線径の略2倍の間隔をおいて巻線3bが整列に巻き付けられている。絶縁用ボビン4bで囲まれたスロットの固定子1bの外径側から内径側に向い1段目として初回の1ターン目の巻線(1、1')から順次整列に巻き付け5ターン目の巻線(5、5')まで巻き付けている。但し、5ターン目の巻線(5)は、絶縁用ボビン4bの1段目に納めることができないため上段に移行している。
【0029】
次に1段目の上に第2の工程として、第1の工程の巻線(1〜5、1'〜5')の巻き付け進み方向とは逆方向に2段目、3段目の巻線(5〜12、6'〜13'、13)を巻き進む。第2の工程では2本持ちの内の1本の巻線(5〜12)を1段目に整列巻きされた巻線の上に順次配置し、1段目の巻線と巻線との間の隙間に位置するように巻き付けられている。2本持ちの内の他の1本の巻線(6'〜13'、13)は3段目として巻き付けられ、2段目の巻線と巻線との間の隙間に位置するように2段目に巻き付けた巻線(5〜12)と同時に3段目が巻き付けられている。従って、3段目の巻線(6'〜13'、13)は2段目の巻線(5〜12)と同時に巻き付けられるが、2段目の巻線とは若干の角度を持って斜めに俵積し巻き付けることになる。尚、図1は絶縁用ボビンに隙間無く巻線を配置することができたが、図2では2本持ちの内の1本の巻線(5)は絶縁用ボビン4bの1段目に納めることができないため上段に移行している。
【0030】
図2では2段目の1ターン目の巻線(5)は、先の上段に移行した巻線であり、この1ターン目の巻線(5)の隣の隙間に2本持ちの内の1本の巻線(5)の2ターン目以降の巻線(6)〜8ターン目の巻線(12)まで巻き付けられ、3段目の1ターン目の巻線(6')〜8ターン目の巻線(13、13')まで2段目と3段目とは若干の角度を持たせ斜めに俵積みとなるように絶縁用ボビン4bの内径から外径に向い巻き付けている。尚、3段目の最終ターンには2本の巻線(13、13')が同時に巻き込まれることになる。
【0031】
更に4段目、5段目は、2段目、3段目に巻き付けられた巻線(5〜12、6'〜13'、13)の巻き付け進み方向とは逆方向に4段目、5段目の巻線(14、14'〜20'、15〜21、21'、22')を巻き進む(1段目の巻線(1〜4、1'〜5')の巻き付け進み方向と同じ)。但し、4段目の巻き始めの1ターン目の巻線(14)は、2本持ちの内の他方の巻き始めの巻線(14')も同時に巻き込むことになり、4段目の1ターン目に巻線(14)、(14')が巻き込まれることになる。4段目、5段目が同時に巻かれるのは4段目の2ターン目の巻線(15')と5段目の1ターン目の巻線(15)からである。4段目は7ターン目の巻線(20')まで巻かれる。5段目の7ターン目は巻線(21)と巻線(21')とが同時に巻き込まれる。また、巻線(21')の隣の隙間に8ターン目の巻線(22')を巻き込んでいるが、2本持ちの内の他方の巻線(22)は絶縁用ボビン4bの5段目に納めることができないため上段に移行している。
【0032】
従って、4段目の最初の1ターン目の巻線は(14)、(14')が同時に巻き込まれ、5段目に巻かれた巻線(20)の次のターン(21)及び(21')も5段目に巻かれ、更に、2本持ちの内の1本の巻線(22')も5段目の最終ターンの8ターン目に巻かれる。2本持ちの内の他の1本の巻線(22)は6段目に巻かれる。尚、2段目、3段目の斜めに俵積みされた巻線(5〜12、6'〜13'、13)とは、2本の巻線間の俵積みされる距離が若干広く積まれることになるが、見かけ上は同じに見える。
【0033】
これにより、5段目の最終ターンは巻線(22')と6段目の最初のターンの巻線(22)となり巻き込まれることになる。以降、6段目の2ターン目からは2段目〜5段目の巻線方法が繰り返されることになる。
【0034】
本実施例では、巻線機の1本のノズルから引出される巻線の持ち数が2本持ちであるが、更に多本持ちの場合にも同様に、第1の工程の1段目において絶縁用ボビンに巻かれた集中巻きの巻線部分の少なくとも一部分が巻線の線径の略N倍のピッチで整列巻きとし、第2の工程以降は絶縁用ボビンに集中巻きされた巻線部分の少なくとも一部分において巻線がN段の俵積みとすることにより、低電圧の電動機の固定子に用いる巻線方法において線径が太い線径の巻線や平角線、U字型コイル等を使用することなく固定子のスロットに少しでも多くの巻線を巻き高占積率化すると伴にコイルエンドを小さくすることができる。電動機の小型化、高性能化を達成することができる。また、巻線の発熱に伴う損失や巻線への傷、破損を低減し、絶縁用ボビン及び積層コア等の破損、変形を低減し品質を向上することができる。
【0035】
また、低電圧の電動機の固定子として製作される電動機の多くは、巻線の巻き回数が少なく、太い線径の巻線や平角線、U字型コイル等で製作された電動機においては、要求特性に対してターン数や巻線の線径を細かく変更して対応することが難しい。本発明のように細い線径の巻線を複数本、同時に巻き付けている巻線方法では、ターン数や巻線の線径を細かく調整することが可能であるため容易に電動機の要求性能を満たすことができる。尚、本実施例では、巻線機のノズルを1本としたが、複数本のノズルを用いても良い。特に、巻線機のノズルを1本にする場合は、巻線機の難しい制御を必要とせず容易に巻線を巻くことができる。また、巻線機の部品点数も低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明による電動機の固定子の巻線方法によるスロットの部分横断面図。
【図2】本発明による電動機の固定子の別の巻線方法によるスロットの部分横断面図。
【図3】従来における平角線の巻線方法によるスロットの部分縦断面図。
【図4】従来におけるU字型コイルの巻線方法によるスロットの部分縦断面図。
【符号の説明】
【0037】
1a,1b,1c,1d・・・固定子、2a,2b,2c,2d・・・歯部、3a,3b,1〜30,1'〜30'・・・巻線、3c・・・平角線、3d・・・U字型コイル、4a,4b,4c,4d…絶縁用ボビン、5a,5b・・・軌道部の張り出し、6a,6b・・・端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の固定子の歯部には絶縁用のボビンが装着され、前記絶縁用ボビンにはN(Nは1以上の整数)本の巻線が同時に集中巻きされた電動機であり、前記巻線を前記絶縁用ボビンに巻き付ける巻き付け方法において、第1の工程では前記絶縁用ボビンに集中巻きされた巻線部分の少なくとも一部分が巻線の線径の略N倍のピッチで整列巻きされており、第2の工程以降は前記絶縁用ボビンに集中巻きされた巻線部分の少なくとも一部分において巻線がN段の俵積みとしたことを特徴とする電動機の固定子の巻線方法。
【請求項2】
前記第2の工程の巻線の巻き付け進み方向は、前記第1の工程の巻線の巻き付け進み方向とは逆方向に巻線を巻き進み、以降の工程において巻線の巻き進み方向は交互に入れ替わり行われることを特徴とする請求項1項記載の電動機の固定子の巻線方法。
【請求項3】
電動機の固定子の歯部には絶縁用のボビンが装着され、前記絶縁用ボビンにはN(Nは1以上の整数)本の巻線が同時に集中巻きされた電動機であり、前記巻線を前記絶縁用ボビンに巻き付ける巻き付け方法において、第1の工程では前記絶縁用ボビンに集中巻きされた巻線部分の少なくとも一部分が巻線の線径の略N倍のピッチで整列巻きされており、第2の工程以降は前記絶縁用ボビンに集中巻きされた巻線部分の少なくとも一部分において巻線がN段の俵積みとしたことを特徴とする電動機の固定子。
【請求項4】
前記第2の工程の巻線の巻き付け進み方向は、前記第1の工程の巻線の巻き付け進み方向とは逆方向に巻線を巻き進み、以降の工程において巻線の巻き進み方向は交互に入れ替わり行われることを特徴とする請求項3項記載の電動機の固定子。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−254524(P2006−254524A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63652(P2005−63652)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000100872)アイチエレック株式会社 (58)
【Fターム(参考)】