電動機
【課題】
固定子の継鉄から放射状に伸びる複数の磁極歯に樹脂絶縁を介して巻線が巻装した電動機の樹脂絶縁による絶縁不良を低減した電動機を提供する。
【解決手段】
固定子は継鉄から放射状に伸びる複数の磁極歯を有し、隣り合う磁極歯と磁極歯により固定子軸方向に貫通するスロットが形成され、前記磁極歯には樹脂絶縁を介して巻線が巻装した電動機であって、前記樹脂絶縁は巻線が巻装される巻線胴部、巻線胴部の固定子外周側において固定子軸方向に伸びる外側鍔部、巻線胴部の固定子内周側において固定子軸方向に伸びる内側鍔部、スロット内側壁に沿うようなスロット絶縁部を有した形状であり、前記磁極歯の固定子軸方向の端面側に面する前記樹脂絶縁の磁極歯コーナ部分において少なくともいずれか一箇所にコーナ逃がし部を設ける。
固定子の継鉄から放射状に伸びる複数の磁極歯に樹脂絶縁を介して巻線が巻装した電動機の樹脂絶縁による絶縁不良を低減した電動機を提供する。
【解決手段】
固定子は継鉄から放射状に伸びる複数の磁極歯を有し、隣り合う磁極歯と磁極歯により固定子軸方向に貫通するスロットが形成され、前記磁極歯には樹脂絶縁を介して巻線が巻装した電動機であって、前記樹脂絶縁は巻線が巻装される巻線胴部、巻線胴部の固定子外周側において固定子軸方向に伸びる外側鍔部、巻線胴部の固定子内周側において固定子軸方向に伸びる内側鍔部、スロット内側壁に沿うようなスロット絶縁部を有した形状であり、前記磁極歯の固定子軸方向の端面側に面する前記樹脂絶縁の磁極歯コーナ部分において少なくともいずれか一箇所にコーナ逃がし部を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電磁鋼板を固定子軸方向に積層して構成した固定子であって、この固定子の継鉄から放射状に伸びる複数の磁極歯を有し、この磁極歯に樹脂絶縁を介して巻線を巻装した電動機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような電動機は汎用電動機、或いは空調装置・冷凍装置の圧縮機用電動機や車両用搭載機器を駆動する電動機として用いられている。固定子の継鉄(バックヨーク部)から放射状に伸びる複数の磁極歯に、樹脂絶縁を介して直接巻線を巻き付けた集中巻き方式による電動機が用いられている。この集中巻き方式による電動機は、複数の磁極歯を跨ぎ巻線が巻き付けられた分布巻方式の電動機の場合に比べて巻線の銅量を低減でき性能を向上することができる。また、固定子端部から軸方向に飛び出ているコイルエンド部の高さも小さくすることができ電動機を小型化することができる。
【0003】
また、この様な電動機の回転子の構造には、回転子鉄心の表面に永久磁石を張り付けた回転子(SPM)や、回転子鉄心の内部に永久磁石を埋め込んだ回転子(IPM)等の永久磁石形回転子を用いることにより電動機の性能を向上させることができる。この永久磁石にはフェライト磁石やフェライト磁石よりも磁力の強い希土類磁石等が用いられている。
【0004】
また、固定子の磁極歯に樹脂絶縁を介して直接巻線を巻き付けた集中巻き方式の樹脂絶縁の構造には、例えば、特許文献1(特開2003−259591号公報)のような構造がある。特許文献1には、永久磁石を備えた回転子を外部の着磁ヨークで着磁してケース等に組み込む際に塵、埃等の付着や、ケース等にぶつけて破損しないように、回転子をケース等に組み込んだ後に固定子を着磁ヨークとして回転子を着磁(磁化)した永久磁石電動機が示されている。
【0005】
この場合、固定子の巻線を着磁巻線として使用している関係上、強力な着磁磁界により磁性材である回転子側に巻線が引き付けられるため、巻線を巻き付けている樹脂絶縁の巻線胴部と、巻線胴部の固定子内周側から固定子軸方向に伸びる内側鍔部の根元部のコーナに亀裂(破損)が生じ易いため、この根元部のコーナに巻線の半径以上の丸み半径を設けている。
【0006】
また、特許文献2(特開2005−328700号公報)には、固定子の磁極歯に樹脂絶縁を介して巻線が巻き付けられ、巻線が巻き付けられた巻線胴部、巻線胴部の固定子外周側において固定子軸方向に伸びる外側鍔部、巻線胴部の固定子内周側において固定子軸方向に伸びる内側鍔部、スロット内側壁に沿うようなスロット絶縁部を有した電動機が示されている。
【0007】
この場合も特許文献1と同様に、固定子を着磁ヨークとして回転子を着磁(磁化)する場合、隣り合う磁極歯に巻き付けられた巻線間で引き付け合う力が発生し、外側鍔部、内側鍔部の根元部に亀裂(破損)が生じ易いため、樹脂絶縁の巻線胴部及び外側鍔部、内側鍔部の厚さを、スロット絶縁部の厚さよりも厚くしている。
【0008】
【特許文献1】特開2003−259591号公報
【特許文献2】特開2005−328700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これらの方法においても樹脂絶縁の亀裂(破壊)等による絶縁不良を確実に低減することができていない。以下図10及至図13を用いて説明する。
図10の電動機は固定子10の継鉄10aから放射状に伸びる複数の磁極歯10bに、樹脂絶縁50を介して直接巻線30(点線部分)が巻き付けられた集中巻き方式の電動機である。隣り合う磁極歯10bにより固定子10の軸方向に貫通するスロット90を形成し、磁極歯10bには樹脂絶縁50を介して巻線30が巻装されている。
【0010】
図11は、図10に示した電動機の樹脂絶縁50を介して直接巻線30を巻き付けた状態を示した磁極歯10bのE−E’断面図である。図10及び図11で示した樹脂絶縁50は巻線30が巻装される巻線胴部50b、巻線胴部50bの固定子外周側において固定子10の軸方向に伸びる外側鍔部50a、巻線胴部50bの固定子内周側において固定子10の軸方向に伸びる内側鍔部50c、スロット内側壁に沿うようなスロット絶縁部50dを有している。また、この電動機の回転子100には、内部に永久磁石110を埋め込んだ永久磁石形回転子を用いた電動機である。図10の電動機ではスロット数が6スロットであり、隣り合う永久磁石110が異極となるように着磁(磁化)され4極を形成している。
【0011】
このような電動機では、図10及び図12の固定子10の磁極歯10bのC−C’断面図に示すように電磁鋼板20を打ち抜いてスロット90を形成する際にスロットコナー部分に打ち抜きによるエッジ部やバリ、カエリ等が発生している。このエッジ部やバリ、カエリ等がある磁極歯10bの上から樹脂絶縁50を装着して巻線30を巻き付けた場合、巻線30の巻回する巻回張力F1により磁極歯10bに樹脂絶縁50が強く押さえ付けられ磁極歯10bの固定子10の軸方向の両端面と対向する巻線胴部50bとスロット内側壁に沿って装着したスロット絶縁部50dのコーナ部分において亀裂(破損)60a等が生じ易くなっている。
【0012】
また、図13に示すように固定子10を着磁ヨークとして、回転子100に備えた永久磁石110を着磁する際、特許文献1で述べたように巻線30が回転子100側へ引き付けられる力の他に、特許文献2で述べたように隣り合う磁極歯10bに巻き付けられた巻線30間で引き付け合う力F2が発生し、前記同様に磁極歯10bに装着した固定子10の軸方向の両端面と対向する巻線胴部50bとスロット内側壁に沿って装着したスロット絶縁部50dのコーナ部分において亀裂(破損)60a等が発生し易い。
【0013】
特に、前述した電磁鋼板20を打ち抜いてスロット90を形成する際に発生するエッジ部やバリ、カエリ等があるところに、後述した固定子10を着磁ヨークとして回転子100を着磁する場合、相互の作用が重なり合い磁極歯10bに装着した固定子10の軸方向の両端面と対向する巻線胴部50bとスロット内側壁に沿って装着したスロット絶縁部50dのコーナ部分に亀裂(破損)60a等が発生し易い。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明はこの様な問題点に鑑みてなされたものであり、複数の電磁鋼板を固定子軸方向に積層して構成した固定子であって、固定子は継鉄から放射状に伸びる複数の磁極歯を有し、隣り合う磁極歯と磁極歯により固定子軸方向に貫通するスロットが形成され、磁極歯には樹脂絶縁を介して巻線が巻装した電動機において、
前記樹脂絶縁は、巻線が巻装される巻線胴部、巻線胴部の固定子外周側において固定子軸方向(固定子端面側と反対方向)に伸びる外側鍔部、巻線胴部の固定子内周側において固定子軸方向(固定子端面側と反対方向)に伸びる内側鍔部、スロット内側壁に沿うようなスロット絶縁部を有した形状とし、
前記磁極歯の固定子軸方向の端面側に面する前記樹脂絶縁の磁極歯コーナ部分において少なくともいずれか一箇所にコーナ逃がし部を設けた電動機としている。
【0015】
また、前記樹脂絶縁の磁極歯コーナ部分におけるコーナ逃がし部の深さが電磁鋼板の板厚以下の深さとした電動機としている。
【0016】
また、これらの樹脂絶縁の巻線が巻装される、巻き付け面側の巻線胴部とスロット絶縁部とで構成する外側コーナ部分を円弧面(R面)形状、あるいは面取り形状、あるいは段付き形状のいずれかにした電動機としている。
【0017】
また、固定子の巻線に直流電流を流し着磁ヨークとして永久磁石を備えた回転子に着磁を施した電動機に用いることにより特に好適である。
【0018】
尚、この電動機を圧縮機構部を駆動する駆動源の電動機に用いた圧縮装置や車両用途に用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電動機は、複数の電磁鋼板を打ち抜いて固定子軸方向に積層して構成した固定子のスロットコナー部分において打ち抜きによるエッジ部やバリ、カエリ等が発生し、このエッジ部やバリ、カエリ等がある磁極歯に樹脂絶縁を装着して巻線が直接巻き付けられた集中巻き方式の固定子において、巻線の巻回する巻回張力により磁極歯側に樹脂絶縁が強く押さえ付けられても磁極歯の固定子軸方向端部と対向(対峙)する樹脂絶縁の磁極歯コーナ部分において、亀裂(破損)等が発生しないように樹脂絶縁の内側コーナ部分に電磁鋼板の打ち抜きによるエッジ部やバリ、カエリ等に影響されないようなコーナ逃がし部分が設けられている。
【0020】
また、固定子を着磁ヨークとして巻き付けられた巻線に直流電流を流し永久磁石を備えた回転子を着磁(磁化)する際、隣り合う磁極歯に巻き付けられた巻線間で引き付け合う力により、前記同様に磁極歯に装着した樹脂絶縁の磁極歯コーナ部分に亀裂(破損)等が発生しないように樹脂絶縁の内側コーナ部分にコーナ逃がし部分を設けている。
【0021】
尚、樹脂絶縁の内側コーナ部分のコーナ逃がし部の深さは、実質的には電磁鋼板を打ち抜いた時に発生するエッジ部やバリ、カエリ等の高さや幅が問題となるため電磁鋼板の板厚以下としている。これにより巻線の巻回する巻回張力により磁極歯側に樹脂絶縁を強く押さえ付けたとしても磁極歯の固定子軸方向端部と対向する樹脂絶縁のコーナ部分において亀裂(破損)等が発生するのを低減することができる。
【0022】
また、固定子を着磁ヨークとして、固定子に巻き付けられた巻線に直流電流を流し、永久磁石を備えた回転子を着磁(磁化)する際に発生する、隣り合う磁極歯に巻き付けられた巻線間の引き付け合う力による樹脂絶縁のコーナ部分における亀裂(破損)等も低減することができる。
【0023】
更に、これらの樹脂絶縁の巻線が巻装される、巻き付け面側の巻線胴部とスロット絶縁部とで構成する外側コーナ部分に円弧面(R面)形状、あるいは面取り形状、あるいは段付き形状のいずれかとすることにより、巻線30が巻き付く外側コーナ部分に加わる力を分散することができる。
【0024】
これにより、樹脂絶縁の内側コーナ部分の亀裂(破損)等による絶縁不良を低減でき品質的に優れ、生産性のよい電動機とすることができる。また、このように品質的に向上した生産性の高い電動機を圧縮機構部を駆動する駆動源の電動機に用いた圧縮装置や車両用途に用いることにより好適である。
【0025】
尚、この樹脂絶縁の内側コーナ部分のコーナ逃がし部は、複数に積層された電磁鋼板の固定子軸方向両端部、片側端部、或いは、複数の磁極歯の少なくともいずれか一箇所と対向する、巻線が巻き付けられる巻線胴部と巻線胴部からスロット内側壁に沿うように固定子軸方向に伸びたスロット絶縁部とで構成する内側コーナ部分に設けている。この内側コーナ部分のコーナ逃がし部は、磁極歯の固定子軸方向の端面側に設けてもよく、スロット内側壁のスロット絶縁部にコーナ逃がし部を設けてもよく、この両方に設けてもよい。また、固定子軸方向に貫通するスロット開口部の全周またはその一部に設けてもよい。また、コーナ逃がし部の形状は、凹状の溝等、固定子のスロットコナー部分の電磁鋼板の打ち抜きによるエッジ部やバリ、カエリ等に影響されないような形状とすることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を図面を用いて説明する。尚、本発明の構成上支障がない部分には共通の符号を用いて説明する。図1の電動機は固定子10の継鉄10aから放射状に伸びる複数の磁極歯10bに、樹脂絶縁51を介して直接巻線30(点線部分)が巻き付けられた集中巻き方式による電動機である。隣り合う磁極歯10bにより固定子10の軸方向に貫通するスロット90が形成され磁極歯10bには樹脂絶縁51を介して巻線30が巻装されている。尚、この継鉄10a(バックヨーク部)は、環状に繋がった環状鉄心でもよく、また分割された鉄心を環状に繋いだ鉄心としてもよい。
【0027】
図2には、図1に示した電動機の磁極歯10bに樹脂絶縁51を介して直接巻線30が巻き付けている状態を示したF−F’断面図である。樹脂絶縁51は巻線30が巻装される巻線胴部51b、巻線胴部51bの固定子外周側において固定子10の軸方向(固定子端面側と反対方向)に伸びる外側鍔部51a、巻線胴部51bの固定子内周側において固定子10の軸方向(固定子端面側と反対方向)に伸びる内側鍔部51c、スロット内側壁に沿うようなスロット絶縁部51dを有している。また、この電動機の回転子100の内部に永久磁石110を埋め込んだ永久磁石形回転子を用いている。図1の電動機はスロット数が6スロットであり、隣り合う永久磁石110が異極となるように着磁(磁化)され4極を形成している。
【0028】
本実施形態では内側鍔部51cより外側鍔部51aの方が固定子の軸方向の高さが高くなっている。これは永久磁石110を備えた回転子100を着磁(磁化)する際、磁性体である回転子100に内側鍔部51c近傍に巻き付けられた巻線30を引き付ける力、言い換えれば、回転子100に巻線が倒れ込もうとする力を軽減するために外側鍔部51aの高さを高くして巻線30を極力固定子10の外周側(外側鍔部51a側)に配置するように巻き付けるためである。また、外側鍔部51aを内側鍔51cより高くすることにより接続点やリード線等を取り付ける係り止め40や、接続点やリード線等が外部に飛び出すのを防ぐ絶縁カバー(図示していない)を取り付ける係り止め40として設けることもできる。
【0029】
また、図3には本実施形態の電動機の固定子10の磁極歯10bに装着された樹脂絶縁51のG−G’断面図を示している。図3に示したように固定子10の磁極歯10bに装着された樹脂絶縁51は、固定子10の軸方向から磁極歯10bのスロット内側壁に沿うようにスロット絶縁部51dが挿入されている。この樹脂絶縁51は固定子10の軸方向上部からスロット内側壁に沿うように挿入される上部樹脂絶縁41aと固定子10の軸方向下部からスロット内側壁に沿うように挿入される下部樹脂絶縁41bで構成されている。上部樹脂絶縁41aと下部樹脂絶縁41bはスロット内の略中央で上部樹脂絶縁41aと下部樹脂絶縁41bの先端部分の一部が重なり合うようになっており上下に2分割されている。
【0030】
この磁極歯10bへの樹脂絶縁51の装着形態は、巻線30が巻装される巻線胴部51bと磁極歯10bのスロット内側壁に沿うようにスロット絶縁部51dが、磁極歯10bに凹状に覆い被さっている。この磁極歯10bは電磁鋼板20を打ち抜きスロット90を形成する際に発生するエッジ部やバリ、カエリ80等のコーナ逃がし部71を磁極歯10bの固定子10の軸方向の端面と対向(対峙)する樹脂絶縁51の巻線胴部51bとスロット内側壁に沿って装着したスロット絶縁部51dの内側コーナ部分に設けている。
【0031】
このコーナ逃がし部71があることにより、電磁鋼板20を打ち抜きスロット90を形成する際にスロット90のコーナ部分に打ち抜きによるエッジ部やバリ、カエリ80等が発生した固定子10(磁極歯10b)の上から、樹脂絶縁51を介して巻線30を巻き付ける巻回張力F1や永久磁石110を備えた回転子100を着磁する際に発生する磁極歯10bに巻き付けた巻線30間の引き付け合う力F2が加わっても、樹脂絶縁51の固定子10の軸方向の端面と対向する巻線胴部51bとスロット内側壁に沿って装着したスロット絶縁部51dのコーナ部分に亀裂(破損)60a等が生じるのを低減することができる。
【0032】
図4には、図3で説明した樹脂絶縁51のコーナ逃がし部71のd部分詳細図を示している。複数の電磁鋼板20が打ち抜かれ固定子の軸方向に積層し磁極歯10bで構成されるスロット90のコーナ部分にエッジ部やバリ、カエリ80等が発生している。仮に、このエッジ部やバリ、カエリ80等の上から図10及び図11で説明した、コーナ逃がし部71がない樹脂絶縁50を配置させた場合、このコーナ部分において樹脂絶縁50の上から巻き付けられる巻線30の巻回張力F1や永久磁石110を備えた回転子100を着磁する際に発生する磁極歯10bに巻き付けた巻線30間の引き付け合う力F2によって巻線胴部50bとスロット絶縁部50dとで構成した樹脂絶縁50の内側コーナ部分に亀裂(破損)60a等が生じ易くなる。
【0033】
このエッジ部やバリ、カエリ80等を逃がすコーナ逃がし部71の深さa1は、電磁鋼板20の打ち抜き時に発生するエッジ部やバリ、カエリ80等の高さや幅に依存するため電磁鋼板20の板厚b1以下であればよい。電磁鋼板20の板厚はt0.25〜t0.5を用いられる場合が多い。尚、このコーナ逃がし部71の深さa1が深すぎると樹脂厚さが薄くなり品質、強度等を維持することができなくなる。
また、スロット絶縁部51dの樹脂厚さは、巻線胴部51bの樹脂厚さより薄くしている。これはスロット90に巻線30を多く巻き付け電動機の効率を向上させるために薄くしている。このことからもわかるように巻線胴部51bとスロット絶縁部51dとで構成した樹脂絶縁51のコーナ部分の強度が弱いため、コーナ逃がし部71を設けることによりエッジ部やバリ、カエリ80等に影響されることがなく強度を維持することができる。
【0034】
図5は別の実施形態を示している。図5は図4同様に樹脂絶縁52のコーナ逃がし部72の部分詳細図を示している。コーナ逃がし部72は巻線胴部52bとスロット絶縁部52dとで構成した樹脂絶縁52の内側コーナ部分に設けられている。図4と同様に電磁鋼板20にはエッジ部やバリ、カエリ80等に影響されないように磁極歯10bの固定子10の軸方向端面側にコーナ逃がし部と、磁極歯10bのスロット側面のスロット絶縁部分52d側にコーナ逃がし部を設けている。これにより打ち抜き型の刃先(上刃、下刃の先端)で発生する電磁鋼板20の打ち抜かれる板面側からせん断面にかけてのダレ込みによる膨らみを逃がすことができる。
【0035】
このコーナ逃がし部72により樹脂絶縁52の上から巻き付けられる巻線30の巻回張力F1や永久磁石110を備えた回転子100を着磁する際に発生する磁極歯10bに巻き付けた巻線30間の引き付け合う力F2によって巻線胴部52bとスロット絶縁部52dとで構成した樹脂絶縁52の内側コーナ部分での亀裂(破損)60a等の発生を低減することができる。
【0036】
尚、図4同様にエッジ部やバリ、カエリ80等を逃がすコーナ逃がし部72の深さa2は、電磁鋼板20の打ち抜き時に発生するエッジ部やバリ、カエリ80等の高さや幅に依存するため電磁鋼板20の板厚b2以下であればよい。電磁鋼板20の板厚はt0.25〜t0.5を用いる場合が多い。尚、磁極歯10bのスロット側面のスロット絶縁部分52d側のコーナ逃がし部分の深さは、電磁鋼板20の打ち抜かれる板面側からせん断面にかけてのダレ込みによる膨らみを考慮すればよいことになり、先のコーナ逃がし部72の深さa2に、更に電磁鋼板20の板厚分のダレ込みによる膨らみ、つまり電磁鋼板20の板厚分b2以上を考慮した深さとするのが好ましいことになる。
また、図5の樹脂絶縁52のコーナ逃がし部72は一体成形型で製作しても良いが、磁極歯10bの固定子10の軸方向端面側のコーナ逃がし部を一体成形で製作した後に、磁極歯10bのスロット側面のスロット絶縁部分52d側にコーナ逃がし部を追加加工で設けてもよい。また、コーナ逃がし部72自体を設けていない樹脂絶縁(例えば、樹脂絶縁50)に追加加工で設けても良い。
【0037】
また、スロット絶縁部52dの樹脂厚さは、巻線胴部52bの樹脂厚さより薄くしている。これはスロット90に巻線30を多く巻き付け電動機の効率を向上させるために薄くしている。このことからもわかるように巻線胴部52bとスロット絶縁部52dとで構成した樹脂絶縁52のコーナ部分の強度が弱いため、コーナ逃がし部72を設けることによりエッジ部やバリ、カエリ80等に影響されることがなく強度を維持することができる。
【0038】
図6は、図3及び図4に説明した巻線胴部51bとスロット絶縁部51dとのコーナ部分のコーナ逃がし部71を、電磁鋼板20の固定子軸方向の磁極歯10b端面側から見た樹脂絶縁51の装着面(図1で説明した樹脂絶縁51の裏側面)である。図6からわかるように、スロット絶縁部51dの内側コーナ部であるスロット開口部周囲にコーナ逃がし部71が設けられている。このコーナ逃がし部71は固定子軸方向に貫通するスロット90の開口部の全周でもよく、その一部に設けてもよい。コーナ逃がし部の形状は、凹状の溝等、固定子10のスロット90部分における電磁鋼板20の打ち抜きによるエッジ部やバリ、カエリ80等の高さや幅を吸収できる形状であれば良い。特に、磁極歯10b端面側に面する樹脂絶縁51の巻線胴部51bとスロット絶縁部51dの内側コーナ部分にコーナ逃がし部71を設けることにより、よりよい効果を得ることができる。
【0039】
図7は図4で説明した効果を更に向上させることができる。
図4で説明した構成に、図7に示すように樹脂絶縁53の巻線30を巻き付ける、巻き付け面側の巻線胴部53bとスロット絶縁部53dとの外側コーナ部分において円弧面(R面)形状が設けられている。この円弧面形状は巻線30の線径の半径より大きな半径で外側コーナ部に円弧面形状を設けている。
【0040】
従って、コーナ逃がし部73を設けることにより外側コーナ部分の樹脂絶縁53の上から巻き付けられる巻線30の巻回張力F1や永久磁石110を備えた回転子100を着磁する際に発生する磁極歯10bに巻き付けた巻線30間の引き付け合う力F2による樹脂絶縁53の内側コーナ部分で発生する亀裂(破損)60a等を低減することができ、更に、樹脂絶縁53に巻線30を巻き付ける巻線胴部53bとスロット絶縁部53dとの外側コーナ部分に円弧面(R面)形状を設けることにより、巻線30が巻き付く外側コーナ部に加わる力F3を分散させることができ亀裂(破損)60a等を防ぐことができる。
【0041】
また、図8は図7と同様の効果を有する別の実施形態を示している。
図8は、樹脂絶縁54の巻線30を巻き付ける、巻き付け面側の巻線胴部54bとスロット絶縁部54dとの外側コーナ部分において面取り形状を設けている。この面取り形状は巻線30の線径の半径より一辺の長さが長い面取り形状を設けている。
【0042】
従って、コーナ逃がし部74を設けることにより外側コーナ部分の樹脂絶縁54の上から巻き付けられる巻線30の巻回張力F1や永久磁石110を備えた回転子100を着磁する際に発生する磁極歯10bに巻き付けた巻線30間の引き付け合う力F2による樹脂絶縁54の内側コーナ部分で発生する亀裂(破損)60a等を低減することができ、更に、樹脂絶縁54に巻線30を巻き付ける巻線胴部54bとスロット絶縁部54dとの外側コーナ部分に面取り形状を設けることにより、巻線30が巻き付く外側コーナ部に加わる力F3を分散させることができ亀裂(破損)60a等を防ぐことができる。
【0043】
また、図9は図8及び図7と同様の効果を有する他の実施形態を示している。
図9は、樹脂絶縁55の巻線30を巻き付ける、巻き付け面側の巻線胴部55bとスロット絶縁部55dとの外側コーナ部分において段付き形状が設けられている。この段付き形状の間隔は巻線30の線径の半径より広い間隔で設けられている。
【0044】
従って、コーナ逃がし部75を設けることにより外側コーナ部分の樹脂絶縁55の上から巻き付けられる巻線30の巻回張力F1や永久磁石110を備えた回転子100を着磁する際に発生する磁極歯10bに巻き付けた巻線30間の引き付け合う力F2による樹脂絶縁55の内側コーナ部分で発生する亀裂(破損)60a等を低減することができ、更に、樹脂絶縁55に巻線30を巻き付ける巻線胴部55bとスロット絶縁部55dとの外側コーナ部分に段付き形状を設けることにより、巻線30が巻き付く外側コーナ部に加わる力F3を分散させることができ亀裂(破損)60a等を防ぐことができる。
【0045】
尚、本願の発明では、先に述べたように固定子10を着磁ヨークとして、固定子10に巻き付けられた巻線30に直流電流を流し、回転子100に備えた永久磁石110を着磁する際の巻線30が回転子100側へ引き付けられる現象の他に、図13で説明した様に、隣り合う磁極歯10bに装着した固定子10の軸方向の両端面と対向する巻線胴部50bとスロット内側壁に沿って装着したスロット絶縁部50dの外側コーナ部分に巻線30間の引き付け合う力F2が加わったとしても、図1〜図9の様に樹脂絶縁51〜55の巻線30を巻き付ける巻線胴部51b〜55bとスロット絶縁部51d〜55dとの内側コーナ部分にコーナ逃げ部71〜75を設けているので亀裂(破損)60a等の発生を低減することができる。
【0046】
また、この電動機の固定子10を密閉容器内に冷媒ガス及び潤滑油を混入した圧縮機を駆動する駆動源の電動機とした、空調機及び冷凍機に搭載する圧縮機装置や、この電動機の固定子10を車両用途の搭載機器を駆動する電動機として車両に用いることにより、固定子10の巻線30を巻き付ける樹脂絶縁51〜55の巻線胴部51b〜55bとスロット絶縁部51d〜55dとで構成する内側コーナ部分において亀裂(破損)60a等を低減することができるので品質的に優れ、絶縁不良を低減した電動機を搭載した、圧縮装置及び車両とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施形態の電動機。
【図2】図1に示した電動機の磁極歯におけるF−F’断面図。
【図3】図1に示した電動機の磁極歯におけるG−G’断面図。
【図4】図3のコーナ逃がし部におけるd部分詳細図。
【図5】コーナ逃がし部における別の実施形態。
【図6】図1のスロット部における樹脂絶縁の裏側から見た図。
【図7】コーナ逃がし部における別の実施形態。
【図8】コーナ逃がし部における別の実施形態。
【図9】コーナ逃がし部における別の実施形態。
【図10】従来の電動機。
【図11】図10に示した従来の電動機の磁極歯におけるE−E’断面図。
【図12】図10に示した従来の電動機の磁極歯のC−C’断面における巻回張力F1によって発生する樹脂絶縁の亀裂(破壊)を説明する図。
【図13】図10に示した従来の電動機の磁極歯のC−C’断面における着磁する際の巻線間の引き付け合う力F2によって発生する樹脂絶縁の亀裂(破壊)を説明する図。
【符号の説明】
【0048】
10・・・固定子
10a・・・継鉄
10b・・・磁極歯
20・・・電磁鋼板
30・・・巻線
40・・・係り止め
40a、41a・・・上側樹脂絶縁
40b、41b・・・下側樹脂絶縁
50〜55・・・樹脂絶縁
50a、51a・・・外側鍔部
50b、51b〜55b・・・巻線胴部
50c、51c・・・内側鍔部
50d、51d〜55d・・・スロット絶縁部
60a・・・亀裂部分(破壊部分)
71〜75・・・コーナ逃がし部
80・・・エッジ部やバリ、カエリ
90・・・スロット
100・・・回転子
110・・・永久磁石
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電磁鋼板を固定子軸方向に積層して構成した固定子であって、この固定子の継鉄から放射状に伸びる複数の磁極歯を有し、この磁極歯に樹脂絶縁を介して巻線を巻装した電動機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような電動機は汎用電動機、或いは空調装置・冷凍装置の圧縮機用電動機や車両用搭載機器を駆動する電動機として用いられている。固定子の継鉄(バックヨーク部)から放射状に伸びる複数の磁極歯に、樹脂絶縁を介して直接巻線を巻き付けた集中巻き方式による電動機が用いられている。この集中巻き方式による電動機は、複数の磁極歯を跨ぎ巻線が巻き付けられた分布巻方式の電動機の場合に比べて巻線の銅量を低減でき性能を向上することができる。また、固定子端部から軸方向に飛び出ているコイルエンド部の高さも小さくすることができ電動機を小型化することができる。
【0003】
また、この様な電動機の回転子の構造には、回転子鉄心の表面に永久磁石を張り付けた回転子(SPM)や、回転子鉄心の内部に永久磁石を埋め込んだ回転子(IPM)等の永久磁石形回転子を用いることにより電動機の性能を向上させることができる。この永久磁石にはフェライト磁石やフェライト磁石よりも磁力の強い希土類磁石等が用いられている。
【0004】
また、固定子の磁極歯に樹脂絶縁を介して直接巻線を巻き付けた集中巻き方式の樹脂絶縁の構造には、例えば、特許文献1(特開2003−259591号公報)のような構造がある。特許文献1には、永久磁石を備えた回転子を外部の着磁ヨークで着磁してケース等に組み込む際に塵、埃等の付着や、ケース等にぶつけて破損しないように、回転子をケース等に組み込んだ後に固定子を着磁ヨークとして回転子を着磁(磁化)した永久磁石電動機が示されている。
【0005】
この場合、固定子の巻線を着磁巻線として使用している関係上、強力な着磁磁界により磁性材である回転子側に巻線が引き付けられるため、巻線を巻き付けている樹脂絶縁の巻線胴部と、巻線胴部の固定子内周側から固定子軸方向に伸びる内側鍔部の根元部のコーナに亀裂(破損)が生じ易いため、この根元部のコーナに巻線の半径以上の丸み半径を設けている。
【0006】
また、特許文献2(特開2005−328700号公報)には、固定子の磁極歯に樹脂絶縁を介して巻線が巻き付けられ、巻線が巻き付けられた巻線胴部、巻線胴部の固定子外周側において固定子軸方向に伸びる外側鍔部、巻線胴部の固定子内周側において固定子軸方向に伸びる内側鍔部、スロット内側壁に沿うようなスロット絶縁部を有した電動機が示されている。
【0007】
この場合も特許文献1と同様に、固定子を着磁ヨークとして回転子を着磁(磁化)する場合、隣り合う磁極歯に巻き付けられた巻線間で引き付け合う力が発生し、外側鍔部、内側鍔部の根元部に亀裂(破損)が生じ易いため、樹脂絶縁の巻線胴部及び外側鍔部、内側鍔部の厚さを、スロット絶縁部の厚さよりも厚くしている。
【0008】
【特許文献1】特開2003−259591号公報
【特許文献2】特開2005−328700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これらの方法においても樹脂絶縁の亀裂(破壊)等による絶縁不良を確実に低減することができていない。以下図10及至図13を用いて説明する。
図10の電動機は固定子10の継鉄10aから放射状に伸びる複数の磁極歯10bに、樹脂絶縁50を介して直接巻線30(点線部分)が巻き付けられた集中巻き方式の電動機である。隣り合う磁極歯10bにより固定子10の軸方向に貫通するスロット90を形成し、磁極歯10bには樹脂絶縁50を介して巻線30が巻装されている。
【0010】
図11は、図10に示した電動機の樹脂絶縁50を介して直接巻線30を巻き付けた状態を示した磁極歯10bのE−E’断面図である。図10及び図11で示した樹脂絶縁50は巻線30が巻装される巻線胴部50b、巻線胴部50bの固定子外周側において固定子10の軸方向に伸びる外側鍔部50a、巻線胴部50bの固定子内周側において固定子10の軸方向に伸びる内側鍔部50c、スロット内側壁に沿うようなスロット絶縁部50dを有している。また、この電動機の回転子100には、内部に永久磁石110を埋め込んだ永久磁石形回転子を用いた電動機である。図10の電動機ではスロット数が6スロットであり、隣り合う永久磁石110が異極となるように着磁(磁化)され4極を形成している。
【0011】
このような電動機では、図10及び図12の固定子10の磁極歯10bのC−C’断面図に示すように電磁鋼板20を打ち抜いてスロット90を形成する際にスロットコナー部分に打ち抜きによるエッジ部やバリ、カエリ等が発生している。このエッジ部やバリ、カエリ等がある磁極歯10bの上から樹脂絶縁50を装着して巻線30を巻き付けた場合、巻線30の巻回する巻回張力F1により磁極歯10bに樹脂絶縁50が強く押さえ付けられ磁極歯10bの固定子10の軸方向の両端面と対向する巻線胴部50bとスロット内側壁に沿って装着したスロット絶縁部50dのコーナ部分において亀裂(破損)60a等が生じ易くなっている。
【0012】
また、図13に示すように固定子10を着磁ヨークとして、回転子100に備えた永久磁石110を着磁する際、特許文献1で述べたように巻線30が回転子100側へ引き付けられる力の他に、特許文献2で述べたように隣り合う磁極歯10bに巻き付けられた巻線30間で引き付け合う力F2が発生し、前記同様に磁極歯10bに装着した固定子10の軸方向の両端面と対向する巻線胴部50bとスロット内側壁に沿って装着したスロット絶縁部50dのコーナ部分において亀裂(破損)60a等が発生し易い。
【0013】
特に、前述した電磁鋼板20を打ち抜いてスロット90を形成する際に発生するエッジ部やバリ、カエリ等があるところに、後述した固定子10を着磁ヨークとして回転子100を着磁する場合、相互の作用が重なり合い磁極歯10bに装着した固定子10の軸方向の両端面と対向する巻線胴部50bとスロット内側壁に沿って装着したスロット絶縁部50dのコーナ部分に亀裂(破損)60a等が発生し易い。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明はこの様な問題点に鑑みてなされたものであり、複数の電磁鋼板を固定子軸方向に積層して構成した固定子であって、固定子は継鉄から放射状に伸びる複数の磁極歯を有し、隣り合う磁極歯と磁極歯により固定子軸方向に貫通するスロットが形成され、磁極歯には樹脂絶縁を介して巻線が巻装した電動機において、
前記樹脂絶縁は、巻線が巻装される巻線胴部、巻線胴部の固定子外周側において固定子軸方向(固定子端面側と反対方向)に伸びる外側鍔部、巻線胴部の固定子内周側において固定子軸方向(固定子端面側と反対方向)に伸びる内側鍔部、スロット内側壁に沿うようなスロット絶縁部を有した形状とし、
前記磁極歯の固定子軸方向の端面側に面する前記樹脂絶縁の磁極歯コーナ部分において少なくともいずれか一箇所にコーナ逃がし部を設けた電動機としている。
【0015】
また、前記樹脂絶縁の磁極歯コーナ部分におけるコーナ逃がし部の深さが電磁鋼板の板厚以下の深さとした電動機としている。
【0016】
また、これらの樹脂絶縁の巻線が巻装される、巻き付け面側の巻線胴部とスロット絶縁部とで構成する外側コーナ部分を円弧面(R面)形状、あるいは面取り形状、あるいは段付き形状のいずれかにした電動機としている。
【0017】
また、固定子の巻線に直流電流を流し着磁ヨークとして永久磁石を備えた回転子に着磁を施した電動機に用いることにより特に好適である。
【0018】
尚、この電動機を圧縮機構部を駆動する駆動源の電動機に用いた圧縮装置や車両用途に用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電動機は、複数の電磁鋼板を打ち抜いて固定子軸方向に積層して構成した固定子のスロットコナー部分において打ち抜きによるエッジ部やバリ、カエリ等が発生し、このエッジ部やバリ、カエリ等がある磁極歯に樹脂絶縁を装着して巻線が直接巻き付けられた集中巻き方式の固定子において、巻線の巻回する巻回張力により磁極歯側に樹脂絶縁が強く押さえ付けられても磁極歯の固定子軸方向端部と対向(対峙)する樹脂絶縁の磁極歯コーナ部分において、亀裂(破損)等が発生しないように樹脂絶縁の内側コーナ部分に電磁鋼板の打ち抜きによるエッジ部やバリ、カエリ等に影響されないようなコーナ逃がし部分が設けられている。
【0020】
また、固定子を着磁ヨークとして巻き付けられた巻線に直流電流を流し永久磁石を備えた回転子を着磁(磁化)する際、隣り合う磁極歯に巻き付けられた巻線間で引き付け合う力により、前記同様に磁極歯に装着した樹脂絶縁の磁極歯コーナ部分に亀裂(破損)等が発生しないように樹脂絶縁の内側コーナ部分にコーナ逃がし部分を設けている。
【0021】
尚、樹脂絶縁の内側コーナ部分のコーナ逃がし部の深さは、実質的には電磁鋼板を打ち抜いた時に発生するエッジ部やバリ、カエリ等の高さや幅が問題となるため電磁鋼板の板厚以下としている。これにより巻線の巻回する巻回張力により磁極歯側に樹脂絶縁を強く押さえ付けたとしても磁極歯の固定子軸方向端部と対向する樹脂絶縁のコーナ部分において亀裂(破損)等が発生するのを低減することができる。
【0022】
また、固定子を着磁ヨークとして、固定子に巻き付けられた巻線に直流電流を流し、永久磁石を備えた回転子を着磁(磁化)する際に発生する、隣り合う磁極歯に巻き付けられた巻線間の引き付け合う力による樹脂絶縁のコーナ部分における亀裂(破損)等も低減することができる。
【0023】
更に、これらの樹脂絶縁の巻線が巻装される、巻き付け面側の巻線胴部とスロット絶縁部とで構成する外側コーナ部分に円弧面(R面)形状、あるいは面取り形状、あるいは段付き形状のいずれかとすることにより、巻線30が巻き付く外側コーナ部分に加わる力を分散することができる。
【0024】
これにより、樹脂絶縁の内側コーナ部分の亀裂(破損)等による絶縁不良を低減でき品質的に優れ、生産性のよい電動機とすることができる。また、このように品質的に向上した生産性の高い電動機を圧縮機構部を駆動する駆動源の電動機に用いた圧縮装置や車両用途に用いることにより好適である。
【0025】
尚、この樹脂絶縁の内側コーナ部分のコーナ逃がし部は、複数に積層された電磁鋼板の固定子軸方向両端部、片側端部、或いは、複数の磁極歯の少なくともいずれか一箇所と対向する、巻線が巻き付けられる巻線胴部と巻線胴部からスロット内側壁に沿うように固定子軸方向に伸びたスロット絶縁部とで構成する内側コーナ部分に設けている。この内側コーナ部分のコーナ逃がし部は、磁極歯の固定子軸方向の端面側に設けてもよく、スロット内側壁のスロット絶縁部にコーナ逃がし部を設けてもよく、この両方に設けてもよい。また、固定子軸方向に貫通するスロット開口部の全周またはその一部に設けてもよい。また、コーナ逃がし部の形状は、凹状の溝等、固定子のスロットコナー部分の電磁鋼板の打ち抜きによるエッジ部やバリ、カエリ等に影響されないような形状とすることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を図面を用いて説明する。尚、本発明の構成上支障がない部分には共通の符号を用いて説明する。図1の電動機は固定子10の継鉄10aから放射状に伸びる複数の磁極歯10bに、樹脂絶縁51を介して直接巻線30(点線部分)が巻き付けられた集中巻き方式による電動機である。隣り合う磁極歯10bにより固定子10の軸方向に貫通するスロット90が形成され磁極歯10bには樹脂絶縁51を介して巻線30が巻装されている。尚、この継鉄10a(バックヨーク部)は、環状に繋がった環状鉄心でもよく、また分割された鉄心を環状に繋いだ鉄心としてもよい。
【0027】
図2には、図1に示した電動機の磁極歯10bに樹脂絶縁51を介して直接巻線30が巻き付けている状態を示したF−F’断面図である。樹脂絶縁51は巻線30が巻装される巻線胴部51b、巻線胴部51bの固定子外周側において固定子10の軸方向(固定子端面側と反対方向)に伸びる外側鍔部51a、巻線胴部51bの固定子内周側において固定子10の軸方向(固定子端面側と反対方向)に伸びる内側鍔部51c、スロット内側壁に沿うようなスロット絶縁部51dを有している。また、この電動機の回転子100の内部に永久磁石110を埋め込んだ永久磁石形回転子を用いている。図1の電動機はスロット数が6スロットであり、隣り合う永久磁石110が異極となるように着磁(磁化)され4極を形成している。
【0028】
本実施形態では内側鍔部51cより外側鍔部51aの方が固定子の軸方向の高さが高くなっている。これは永久磁石110を備えた回転子100を着磁(磁化)する際、磁性体である回転子100に内側鍔部51c近傍に巻き付けられた巻線30を引き付ける力、言い換えれば、回転子100に巻線が倒れ込もうとする力を軽減するために外側鍔部51aの高さを高くして巻線30を極力固定子10の外周側(外側鍔部51a側)に配置するように巻き付けるためである。また、外側鍔部51aを内側鍔51cより高くすることにより接続点やリード線等を取り付ける係り止め40や、接続点やリード線等が外部に飛び出すのを防ぐ絶縁カバー(図示していない)を取り付ける係り止め40として設けることもできる。
【0029】
また、図3には本実施形態の電動機の固定子10の磁極歯10bに装着された樹脂絶縁51のG−G’断面図を示している。図3に示したように固定子10の磁極歯10bに装着された樹脂絶縁51は、固定子10の軸方向から磁極歯10bのスロット内側壁に沿うようにスロット絶縁部51dが挿入されている。この樹脂絶縁51は固定子10の軸方向上部からスロット内側壁に沿うように挿入される上部樹脂絶縁41aと固定子10の軸方向下部からスロット内側壁に沿うように挿入される下部樹脂絶縁41bで構成されている。上部樹脂絶縁41aと下部樹脂絶縁41bはスロット内の略中央で上部樹脂絶縁41aと下部樹脂絶縁41bの先端部分の一部が重なり合うようになっており上下に2分割されている。
【0030】
この磁極歯10bへの樹脂絶縁51の装着形態は、巻線30が巻装される巻線胴部51bと磁極歯10bのスロット内側壁に沿うようにスロット絶縁部51dが、磁極歯10bに凹状に覆い被さっている。この磁極歯10bは電磁鋼板20を打ち抜きスロット90を形成する際に発生するエッジ部やバリ、カエリ80等のコーナ逃がし部71を磁極歯10bの固定子10の軸方向の端面と対向(対峙)する樹脂絶縁51の巻線胴部51bとスロット内側壁に沿って装着したスロット絶縁部51dの内側コーナ部分に設けている。
【0031】
このコーナ逃がし部71があることにより、電磁鋼板20を打ち抜きスロット90を形成する際にスロット90のコーナ部分に打ち抜きによるエッジ部やバリ、カエリ80等が発生した固定子10(磁極歯10b)の上から、樹脂絶縁51を介して巻線30を巻き付ける巻回張力F1や永久磁石110を備えた回転子100を着磁する際に発生する磁極歯10bに巻き付けた巻線30間の引き付け合う力F2が加わっても、樹脂絶縁51の固定子10の軸方向の端面と対向する巻線胴部51bとスロット内側壁に沿って装着したスロット絶縁部51dのコーナ部分に亀裂(破損)60a等が生じるのを低減することができる。
【0032】
図4には、図3で説明した樹脂絶縁51のコーナ逃がし部71のd部分詳細図を示している。複数の電磁鋼板20が打ち抜かれ固定子の軸方向に積層し磁極歯10bで構成されるスロット90のコーナ部分にエッジ部やバリ、カエリ80等が発生している。仮に、このエッジ部やバリ、カエリ80等の上から図10及び図11で説明した、コーナ逃がし部71がない樹脂絶縁50を配置させた場合、このコーナ部分において樹脂絶縁50の上から巻き付けられる巻線30の巻回張力F1や永久磁石110を備えた回転子100を着磁する際に発生する磁極歯10bに巻き付けた巻線30間の引き付け合う力F2によって巻線胴部50bとスロット絶縁部50dとで構成した樹脂絶縁50の内側コーナ部分に亀裂(破損)60a等が生じ易くなる。
【0033】
このエッジ部やバリ、カエリ80等を逃がすコーナ逃がし部71の深さa1は、電磁鋼板20の打ち抜き時に発生するエッジ部やバリ、カエリ80等の高さや幅に依存するため電磁鋼板20の板厚b1以下であればよい。電磁鋼板20の板厚はt0.25〜t0.5を用いられる場合が多い。尚、このコーナ逃がし部71の深さa1が深すぎると樹脂厚さが薄くなり品質、強度等を維持することができなくなる。
また、スロット絶縁部51dの樹脂厚さは、巻線胴部51bの樹脂厚さより薄くしている。これはスロット90に巻線30を多く巻き付け電動機の効率を向上させるために薄くしている。このことからもわかるように巻線胴部51bとスロット絶縁部51dとで構成した樹脂絶縁51のコーナ部分の強度が弱いため、コーナ逃がし部71を設けることによりエッジ部やバリ、カエリ80等に影響されることがなく強度を維持することができる。
【0034】
図5は別の実施形態を示している。図5は図4同様に樹脂絶縁52のコーナ逃がし部72の部分詳細図を示している。コーナ逃がし部72は巻線胴部52bとスロット絶縁部52dとで構成した樹脂絶縁52の内側コーナ部分に設けられている。図4と同様に電磁鋼板20にはエッジ部やバリ、カエリ80等に影響されないように磁極歯10bの固定子10の軸方向端面側にコーナ逃がし部と、磁極歯10bのスロット側面のスロット絶縁部分52d側にコーナ逃がし部を設けている。これにより打ち抜き型の刃先(上刃、下刃の先端)で発生する電磁鋼板20の打ち抜かれる板面側からせん断面にかけてのダレ込みによる膨らみを逃がすことができる。
【0035】
このコーナ逃がし部72により樹脂絶縁52の上から巻き付けられる巻線30の巻回張力F1や永久磁石110を備えた回転子100を着磁する際に発生する磁極歯10bに巻き付けた巻線30間の引き付け合う力F2によって巻線胴部52bとスロット絶縁部52dとで構成した樹脂絶縁52の内側コーナ部分での亀裂(破損)60a等の発生を低減することができる。
【0036】
尚、図4同様にエッジ部やバリ、カエリ80等を逃がすコーナ逃がし部72の深さa2は、電磁鋼板20の打ち抜き時に発生するエッジ部やバリ、カエリ80等の高さや幅に依存するため電磁鋼板20の板厚b2以下であればよい。電磁鋼板20の板厚はt0.25〜t0.5を用いる場合が多い。尚、磁極歯10bのスロット側面のスロット絶縁部分52d側のコーナ逃がし部分の深さは、電磁鋼板20の打ち抜かれる板面側からせん断面にかけてのダレ込みによる膨らみを考慮すればよいことになり、先のコーナ逃がし部72の深さa2に、更に電磁鋼板20の板厚分のダレ込みによる膨らみ、つまり電磁鋼板20の板厚分b2以上を考慮した深さとするのが好ましいことになる。
また、図5の樹脂絶縁52のコーナ逃がし部72は一体成形型で製作しても良いが、磁極歯10bの固定子10の軸方向端面側のコーナ逃がし部を一体成形で製作した後に、磁極歯10bのスロット側面のスロット絶縁部分52d側にコーナ逃がし部を追加加工で設けてもよい。また、コーナ逃がし部72自体を設けていない樹脂絶縁(例えば、樹脂絶縁50)に追加加工で設けても良い。
【0037】
また、スロット絶縁部52dの樹脂厚さは、巻線胴部52bの樹脂厚さより薄くしている。これはスロット90に巻線30を多く巻き付け電動機の効率を向上させるために薄くしている。このことからもわかるように巻線胴部52bとスロット絶縁部52dとで構成した樹脂絶縁52のコーナ部分の強度が弱いため、コーナ逃がし部72を設けることによりエッジ部やバリ、カエリ80等に影響されることがなく強度を維持することができる。
【0038】
図6は、図3及び図4に説明した巻線胴部51bとスロット絶縁部51dとのコーナ部分のコーナ逃がし部71を、電磁鋼板20の固定子軸方向の磁極歯10b端面側から見た樹脂絶縁51の装着面(図1で説明した樹脂絶縁51の裏側面)である。図6からわかるように、スロット絶縁部51dの内側コーナ部であるスロット開口部周囲にコーナ逃がし部71が設けられている。このコーナ逃がし部71は固定子軸方向に貫通するスロット90の開口部の全周でもよく、その一部に設けてもよい。コーナ逃がし部の形状は、凹状の溝等、固定子10のスロット90部分における電磁鋼板20の打ち抜きによるエッジ部やバリ、カエリ80等の高さや幅を吸収できる形状であれば良い。特に、磁極歯10b端面側に面する樹脂絶縁51の巻線胴部51bとスロット絶縁部51dの内側コーナ部分にコーナ逃がし部71を設けることにより、よりよい効果を得ることができる。
【0039】
図7は図4で説明した効果を更に向上させることができる。
図4で説明した構成に、図7に示すように樹脂絶縁53の巻線30を巻き付ける、巻き付け面側の巻線胴部53bとスロット絶縁部53dとの外側コーナ部分において円弧面(R面)形状が設けられている。この円弧面形状は巻線30の線径の半径より大きな半径で外側コーナ部に円弧面形状を設けている。
【0040】
従って、コーナ逃がし部73を設けることにより外側コーナ部分の樹脂絶縁53の上から巻き付けられる巻線30の巻回張力F1や永久磁石110を備えた回転子100を着磁する際に発生する磁極歯10bに巻き付けた巻線30間の引き付け合う力F2による樹脂絶縁53の内側コーナ部分で発生する亀裂(破損)60a等を低減することができ、更に、樹脂絶縁53に巻線30を巻き付ける巻線胴部53bとスロット絶縁部53dとの外側コーナ部分に円弧面(R面)形状を設けることにより、巻線30が巻き付く外側コーナ部に加わる力F3を分散させることができ亀裂(破損)60a等を防ぐことができる。
【0041】
また、図8は図7と同様の効果を有する別の実施形態を示している。
図8は、樹脂絶縁54の巻線30を巻き付ける、巻き付け面側の巻線胴部54bとスロット絶縁部54dとの外側コーナ部分において面取り形状を設けている。この面取り形状は巻線30の線径の半径より一辺の長さが長い面取り形状を設けている。
【0042】
従って、コーナ逃がし部74を設けることにより外側コーナ部分の樹脂絶縁54の上から巻き付けられる巻線30の巻回張力F1や永久磁石110を備えた回転子100を着磁する際に発生する磁極歯10bに巻き付けた巻線30間の引き付け合う力F2による樹脂絶縁54の内側コーナ部分で発生する亀裂(破損)60a等を低減することができ、更に、樹脂絶縁54に巻線30を巻き付ける巻線胴部54bとスロット絶縁部54dとの外側コーナ部分に面取り形状を設けることにより、巻線30が巻き付く外側コーナ部に加わる力F3を分散させることができ亀裂(破損)60a等を防ぐことができる。
【0043】
また、図9は図8及び図7と同様の効果を有する他の実施形態を示している。
図9は、樹脂絶縁55の巻線30を巻き付ける、巻き付け面側の巻線胴部55bとスロット絶縁部55dとの外側コーナ部分において段付き形状が設けられている。この段付き形状の間隔は巻線30の線径の半径より広い間隔で設けられている。
【0044】
従って、コーナ逃がし部75を設けることにより外側コーナ部分の樹脂絶縁55の上から巻き付けられる巻線30の巻回張力F1や永久磁石110を備えた回転子100を着磁する際に発生する磁極歯10bに巻き付けた巻線30間の引き付け合う力F2による樹脂絶縁55の内側コーナ部分で発生する亀裂(破損)60a等を低減することができ、更に、樹脂絶縁55に巻線30を巻き付ける巻線胴部55bとスロット絶縁部55dとの外側コーナ部分に段付き形状を設けることにより、巻線30が巻き付く外側コーナ部に加わる力F3を分散させることができ亀裂(破損)60a等を防ぐことができる。
【0045】
尚、本願の発明では、先に述べたように固定子10を着磁ヨークとして、固定子10に巻き付けられた巻線30に直流電流を流し、回転子100に備えた永久磁石110を着磁する際の巻線30が回転子100側へ引き付けられる現象の他に、図13で説明した様に、隣り合う磁極歯10bに装着した固定子10の軸方向の両端面と対向する巻線胴部50bとスロット内側壁に沿って装着したスロット絶縁部50dの外側コーナ部分に巻線30間の引き付け合う力F2が加わったとしても、図1〜図9の様に樹脂絶縁51〜55の巻線30を巻き付ける巻線胴部51b〜55bとスロット絶縁部51d〜55dとの内側コーナ部分にコーナ逃げ部71〜75を設けているので亀裂(破損)60a等の発生を低減することができる。
【0046】
また、この電動機の固定子10を密閉容器内に冷媒ガス及び潤滑油を混入した圧縮機を駆動する駆動源の電動機とした、空調機及び冷凍機に搭載する圧縮機装置や、この電動機の固定子10を車両用途の搭載機器を駆動する電動機として車両に用いることにより、固定子10の巻線30を巻き付ける樹脂絶縁51〜55の巻線胴部51b〜55bとスロット絶縁部51d〜55dとで構成する内側コーナ部分において亀裂(破損)60a等を低減することができるので品質的に優れ、絶縁不良を低減した電動機を搭載した、圧縮装置及び車両とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施形態の電動機。
【図2】図1に示した電動機の磁極歯におけるF−F’断面図。
【図3】図1に示した電動機の磁極歯におけるG−G’断面図。
【図4】図3のコーナ逃がし部におけるd部分詳細図。
【図5】コーナ逃がし部における別の実施形態。
【図6】図1のスロット部における樹脂絶縁の裏側から見た図。
【図7】コーナ逃がし部における別の実施形態。
【図8】コーナ逃がし部における別の実施形態。
【図9】コーナ逃がし部における別の実施形態。
【図10】従来の電動機。
【図11】図10に示した従来の電動機の磁極歯におけるE−E’断面図。
【図12】図10に示した従来の電動機の磁極歯のC−C’断面における巻回張力F1によって発生する樹脂絶縁の亀裂(破壊)を説明する図。
【図13】図10に示した従来の電動機の磁極歯のC−C’断面における着磁する際の巻線間の引き付け合う力F2によって発生する樹脂絶縁の亀裂(破壊)を説明する図。
【符号の説明】
【0048】
10・・・固定子
10a・・・継鉄
10b・・・磁極歯
20・・・電磁鋼板
30・・・巻線
40・・・係り止め
40a、41a・・・上側樹脂絶縁
40b、41b・・・下側樹脂絶縁
50〜55・・・樹脂絶縁
50a、51a・・・外側鍔部
50b、51b〜55b・・・巻線胴部
50c、51c・・・内側鍔部
50d、51d〜55d・・・スロット絶縁部
60a・・・亀裂部分(破壊部分)
71〜75・・・コーナ逃がし部
80・・・エッジ部やバリ、カエリ
90・・・スロット
100・・・回転子
110・・・永久磁石
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電磁鋼板を固定子軸方向に積層して構成した固定子であって、前記固定子は継鉄から放射状に伸びる複数の磁極歯を有し、隣り合う磁極歯と磁極歯により固定子軸方向に貫通するスロットが形成され、前記磁極歯には樹脂絶縁を介して巻線を巻装した電動機において、
前記樹脂絶縁は、巻線が巻装される巻線胴部、巻線胴部の固定子外周側において固定子軸方向に伸びる外側鍔部、巻線胴部の固定子内周側において固定子軸方向に伸びる内側鍔部、スロット内側壁に沿うようなスロット絶縁部を有した形状であり、
前記磁極歯の固定子軸方向の端面側に面する前記樹脂絶縁の磁極歯コーナ部分において少なくともいずれか一箇所にコーナ逃がし部を設けたことを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記樹脂絶縁の磁極歯コーナ部分におけるコーナ逃がし部の深さが電磁鋼板の板厚以下の深さとしたことを特徴とする請求項1項記載の電動機。
【請求項3】
前記樹脂絶縁の巻線が巻装される、巻き付け面側の巻線胴部とスロット絶縁部とで構成する外側コーナ部分を円弧面(R面)形状、あるいは面取り形状、あるいは段付き形状のいずれかにしたことを特徴とする請求項1または請求項2項記載の電動機。
【請求項4】
前記電動機の回転子には、永久磁石を備えた回転子であることを特徴とする請求項1項及至請求項3項のいずれかに記載の電動機。
【請求項5】
前記電動機が圧縮機構部を駆動する駆動源の電動機に用いられたことを特徴とする請求項1項及至請求項4項のいずれかに記載の圧縮装置。
【請求項6】
前記電動機が車両用途として搭載されたことを特徴とする請求項1項及至請求項4項のいずれかに記載の車両。
【請求項1】
複数の電磁鋼板を固定子軸方向に積層して構成した固定子であって、前記固定子は継鉄から放射状に伸びる複数の磁極歯を有し、隣り合う磁極歯と磁極歯により固定子軸方向に貫通するスロットが形成され、前記磁極歯には樹脂絶縁を介して巻線を巻装した電動機において、
前記樹脂絶縁は、巻線が巻装される巻線胴部、巻線胴部の固定子外周側において固定子軸方向に伸びる外側鍔部、巻線胴部の固定子内周側において固定子軸方向に伸びる内側鍔部、スロット内側壁に沿うようなスロット絶縁部を有した形状であり、
前記磁極歯の固定子軸方向の端面側に面する前記樹脂絶縁の磁極歯コーナ部分において少なくともいずれか一箇所にコーナ逃がし部を設けたことを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記樹脂絶縁の磁極歯コーナ部分におけるコーナ逃がし部の深さが電磁鋼板の板厚以下の深さとしたことを特徴とする請求項1項記載の電動機。
【請求項3】
前記樹脂絶縁の巻線が巻装される、巻き付け面側の巻線胴部とスロット絶縁部とで構成する外側コーナ部分を円弧面(R面)形状、あるいは面取り形状、あるいは段付き形状のいずれかにしたことを特徴とする請求項1または請求項2項記載の電動機。
【請求項4】
前記電動機の回転子には、永久磁石を備えた回転子であることを特徴とする請求項1項及至請求項3項のいずれかに記載の電動機。
【請求項5】
前記電動機が圧縮機構部を駆動する駆動源の電動機に用いられたことを特徴とする請求項1項及至請求項4項のいずれかに記載の圧縮装置。
【請求項6】
前記電動機が車両用途として搭載されたことを特徴とする請求項1項及至請求項4項のいずれかに記載の車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−215383(P2007−215383A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35626(P2006−35626)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000100872)アイチエレック株式会社 (58)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000100872)アイチエレック株式会社 (58)
【Fターム(参考)】
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