説明

電動移動体の充電装置

【課題】電動移動体用の従来の充電装置は、需用電力が目標需要電力量を超過しないように充電電力を自動的に調整することができなかった。
【解決手段】受電設備にデマンド監視機能が存在する場合には現在供給できる最大供給電力値を取得するようにし、受電設備にデマンド監視機能が存在しない場合には充電装置の内部に最大供給電力値を演算する演算ユニットを設け、最大供給電力値またはそれを供給するための最大電圧と最大電流の値を電動移動体に通知するとともに電動移動体がこれらの情報に基づいて最適計算する充電電流の指示値を受けてこれに従って充電電流を供給する。また、デマンド監視の単位時間の切り替わるタイミングで充電を一旦完了して最大供給電力値を更新してから充電を再開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動移動体に搭載された蓄電池を充電する充電装置に係り、特に需要電力量のピークカットを目的としたデマンド制御を可能にする充電技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な電動移動体用の充電装置は交流電源から電力を取込み、整流機能を有する直流電源ユニットにより直流電力に変換し、制御部が出力電流及び電圧を制御して定電流定電圧方式等の充電方式によって電動移動体の蓄電池を充電する。実施例として、複数台の充電器ユニットを並列接続して構成されるシステムが提案されている。(例えば、特許文献1参照)
また、電力を供給する電力供給手段と、充電指示情報を入力可能とする情報入力手段、情報表示手段、および利用者から料金を回収する料金回収手段を有する充電端末機と、記憶装置と演算装置を有し、前記情報入力手段から入力された充電指示情報を記憶し、充電開始予定時間、充電終了予定時間および充電料金を含む充電予約情報を計算し、前記電力供給手段の使用可能時間を設定する制御部を備えた充電システムが提案されている。(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−261230
【特許文献2】特開2010−28913
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示した一般的な充電装置では、電動移動体に供給する充電電力に応じて充電器ユニットの運転台数を制御するが、交流電源の需要電力に基づく需要調整については考慮されていないという課題がある。
【0005】
特許文献2に示した方法によると、大きな需要電力が予想される時間帯を使用可能時間から除外するように設定することにより、定められた時間帯の電力を抑制して充電を行うようにすることができるが、目標需要電力を定めてこれを超過しないように自動的に電力を抑制しながら充電することができないという課題がある。
【0006】
そこで、本発明は上述した実情に鑑みて提案されたものであり、受電設備の目標需要電力を超過しないように正確な需要抑制をしながら電動移動体へ充電できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、電圧および電流の制御が可能な直流電源ユニットと、電動移動体に接続して電力を供給するための送電手段と、充電開始と充電停止の操作を行う操作手段と、需要電力量の目標値を超過しない範囲でその時点に追加供給できる最大供給電力値を演算するデマンド監視機能を有する受電設備との間で情報交換するための受電情報通信手段と、充電の処理に必要な情報を電動移動体との間で交換するための車両情報通信手段と、前記直流電源ユニットの電圧および電流を制御する制御手段を備え、前記受電情報通信手段は受電設備のデマンド監視機能が算出する最大供給電力値を取得し、前記車両情報通信手段は最大供給電力値または最大供給電力を供給するための最大電圧および最大電流の値を電動移動体に通知し、電動移動体が前記通知情報に基づいて最適計算した充電電圧および充電電流の指示値の通知と蓄電池の満充電を知らせる充電完了の通知を電動移動体から取得するようにし、前記制御手段は通知される指示値に従って電圧および電流を調整しながら充電電力を供給し、電動移動体からの充電完了の通知を受けて電流供給を停止するようにした。
【0008】
第2の発明は、充電を開始する前に充電装置から取得する最大供給電力値または最大電圧および最大電流の値に基づいて、満充電に至るまでの充電電流のタイムスケジュールを決定してから充電電流の指示値を充電装置に要求するタイプの電動移動体への充電に鑑み、第1の発明を補完するものである。第1の発明において、前記受電情報通信手段は受電設備からデマンド監視の単位時間が終了して次の単位時間に切り替わるタイミングの情報を取得するようにし、充電中にこのタイミングを通過したときには受電設備から最大供給電力値を再取得し、電動移動体が前回充電電流のスケジュールを決定した根拠にした最大供給電力値に比べて今回の値の方が大きいときには一旦充電を停止し、その直後に自動的に充電処理を再開するようにした。
【0009】
第3の発明は第1あるいは第2の発明において、受電設備の需要電力量計測手段と、デマンド監視の単位時間の目標需要電力量を設定する目標電力量設定手段と、デマンド監視の単位時間を生成するタイマーと、単位時間終了時の需要電力量を予測してこれが目標需要電力量を超過しない範囲でその時点に追加供給できる最大供給電力値を算出する演算処理手段を備えた。
【0010】
第4の発明は第3の発明において、前記演算処理手段は充電中に単位時間終了時の需要電力量の予測値が目標需要電力量を超過する懸念が生じたときに、目標需用電力量を超過しないようにその時点で抑制すべき電力値を算出し、その値がその時点の充電電力の値以上になった場合に充電を停止するようにし、この作用によって充電を停止した場合にはデマンド監視の単位時間が次の単位時間に切り替わるタイミングにおいて充電処理を自動的に再開するようにした。
【発明の効果】
【0011】
以上に説明したように、第1の発明によれば受電設備のデマンド監視機能による結果として得られる最大供給電力値の情報に基づいて充電電力が設定されるため、需用電力量が目標の需用電力量を超過する懸念が生じたときに充電電力を抑制して電動移動体に充電できるようになる。
【0012】
受電設備のデマンド監視機能において、その時点で追加供給できる最大供給電力はデマンド監視の単位時間からその時点までの需要電力量によって変化する。一般的にデマンド監視制御は単位時間の終了前に目標需要電力量へ漸近するように需要電力を抑制する制御が行われるため、単位時間の後半の最大供給電力値は単位時間の前半に比べて小さくなる可能性が大きい。特に、単位時間の前半に一回の充電が終了し、同時限の後半に次の充電が開始される場合においてこのような傾向が顕著となることが予想される。
【0013】
CHAdeMO協議会が公開しているチャデモプロトコルは、電動移動体の一形態であるところの電気自動車の急速充電方式の標準仕様として採用されている。この仕様による急速充電方式では、電気自動車が充電を開始する前に充電装置から最大供給電力を供給するための最大電圧と最大電流の情報を取得して、これに基づいて満充電までの充電電流値のタイムスケジュールが決定される。このため充電開始時点の最大供給電力が充電完了するまで影響を及ぼすことになる。
【0014】
このような電動移動体への充電において、デマンド監視の単位時間の後半に充電を開始すると単位時間の前半に開始する場合に比べて最大供給電力値が小さいために充電時間が長くなる可能性がある。第2の発明によると、充電中にデマンド監視の単位時間が切り替わったときに一旦充電を完了して最大供給電力値をデマンド監視の単位時間開始直後の値に更新してから充電を再開することができる。一般的にデマンド監視の単位時間の開始直後の最大供給電力値は単位時間後半のそれに対して大きいので充電時間を短縮することができる。また、デマンド監視の単位時間が切り替わったときに再取得した最大供給電力値が、前回の充電電流のタイムスケジュール決定で電動移動体が使用した最大供給電力値に比べて大きいときだけ充電停止と再開の処理を実行することにより、充電時間が短縮できない場合には作用しないようにすることができる。
【0015】
更に、第3の発明では充電装置が最大供給電力値およびデマンド監視の単位時間が切り替わるタイミングの情報に関する情報を作成することで、受電設備にデマンド監視機能が無くても充電装置自らが生成した最大供給電力値に基づいて電動移動体への供給電力を抑制することが可能になり、また、第2の発明における充電の一旦停止と再開始の処理を充電装置自らが生成した単位時間のタイミング情報で実施できるようになる。
【0016】
更に、第4の発明では本充電装置が充電中に受電設備が本充電装置以外へ供給する電力の増加によって目標需要電力量を超過する懸念が生じた場合に、本充電装置の充電を停止すれば目標需用電力量の超過を回避できる場合には充電を継続し、充電を停止しなければ超過するときに充電を停止することができる。また、この作用により一旦停止した後にはデマンド監視の単位時間が切り替わるタイミングで充電を再開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の構成を説明する機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本発明は、例えば図1に示すように構成された充電装置1に適用される。
充電装置1は受電設備5から交流電源の供給を受けて、整流機能を有し電流制御が可能な直流電源ユニット2で直流に変換する。直流電源ユニット2は充電処理が開始されていない間は出力を停止する。受電情報通信器6は受電設備5から最大供給電力値を一定周期で取得して最新の値を維持する。
【0019】
操作器4で充電開始の操作を行うと充電処理を開始し、開始指令を電流制御器8に通知する。電流制御器8は開始指令を受けたら受電情報通信器6からその瞬間の最大供給電力値を取得し、充電装置自体の最大出力電力値と比較して小さい方の値を最大供給電力として車両情報通信器7にセットする。車両情報通信器7はこの情報を電動移動体9に通知する。図1では最大供給電力値の数値データを電動移動体9に通知する構成を示すが、チャデモプロトコルの仕様では最大電圧と最大電流の情報に分けて通知する。
【0020】
電動移動体9は、最大供給電力値または最大電圧と最大電流の値に基づいて充電電流を最適計算して充電のタイムスケジュールを生成し、これに基づいて充電電流の指示値を充電装置1の車両情報通信器7に通知して電流の供給を要求する。車両情報通信器7は充電電流の指示値を電流制御器8に通知し、電流制御器8は指示値に従って充電電圧と電流を調整し、送電手段3を経由して電動移動体9に充電電力を供給する。車両情報通信器7が電動移動体9から充電完了通知を受信したとき、または操作器4で充電終了の操作を実施したときに電流制御器8は充電電流の供給を停止して充電処理を完了する。
【0021】
次に第2の発明の構成について説明する。受電情報通信器6は受電設備5からデマンド監視の単位時間が切り替わるタイミングを示す信号を受信して電流制御器8に通知する。電流制御器8は充電中にこの通知を受けると受電設備5から最大供給電力値を再取得し、電動移動体9へ最大電圧および最大電流の値を前回通知したときの最大供給電力値と比較する。比較した結果、前回の値に比べて今回の値の方が大きいときには、操作器4からの停止指令受信と同様に一旦充電を完了し、その直後、操作器4からの開始指令受信と同様に充電を再び開始する。受電情報通信器6は再取得した最大供給電力値を供給するための最大電圧と最大電流の値を電動移動体9に通知する。電動移動体9はこれに基づいて最適計算される充電電流のタイムスケジュールを再生成して充電装置1に充電電流の指示値を通知して充電電力の供給を要求する。
【0022】
以上の説明は受電設備5にデマンド監視機能が存在することを前提としており、デマンド監視機能が存在しない場合には充電装置1は最大供給電力値およびデマンド監視の単位時間が切り替わるタイミングの情報を取得できない。第3の発明は充電装置1の内部でこれらの情報を生成するようにした。図1の構成はデマンド監視機能が存在する場合、およびデマンド監視機能が存在しない場合の双方に対応できる機能を包含している。図1を参照して第3の発明の構成について説明する。
【0023】
タイマー11はデマンド監視の単位時間を生成する。デマンドの単位時間は30分が一般的であるため以降の説明では単位時間を30分として記述する。タイマー11はスタートした時点を時間の基点として30分のカウントを始め、時間のカウントダウン情報を生成する。30分周期でタイマー11をリセットしてこの時間サイクルを繰り返す。需要電力量計測器10は受電設備5の受電点における取引用計器の電力量パルスを入力して時間基点からの積算処理を行って積算電力量を算出する。時間カウント情報と積算電力量は演算処理ユニット13に逐次通知して更新する。
【0024】
デマンド監視のための目標需要電力量は目標電力量設定器12で設定して演算処理ユニット13に保存する。演算処理ユニット13は一定時間周期で以下の(1)から(5)までの演算を繰り返す。
(1) 単位時間30分の残り時間を求める。
(2) その前後の微小期間の電力量の変化から積算電力量の変化の傾きを求め、1時間に換算した電力量を求める。これはその時点における平均電力を示す。
(3) 上記(2)の平均電力で残り時間を消費したときの積算電力量に現在時点の積算電力量を加算して30分終了時点の予測需要電力量を求める。
(4) その時点の積算電力量と目標需要電力量の差を求め、これを残り時間と1時間の時間による比例演算で1時間値に換算する。この値は30分終了時点における積算電力量が目標需要電力量に一致するために現在使用できる許容電力を示す。
(5) 上記(4)の許容電力から上記(2)の平均電力を差し引いた値を求める。この値は30分終了時点において積算電力量が目標需要電力量に一致するために現在追加して使用できる電力である。この値は目標需要電力量の範囲内で本充電装置がこの瞬間から使用できる電力を示し、第1の発明における受電設備から取得する最大供給電力値に相当する。
【0025】
操作器4で充電開始の操作を行うと開始指令が電流制御器8に通知される。この通知によって電流制御器8は演算処理ユニット13からその瞬間の最大供給電力値に相当する前記演算結果(5)の最大供給電力値を取得し、第1の発明の説明と同様の動作を行う。
【0026】
次に第4の発明について説明する。受電設備5が本装置以外に電力を供給する場合には本装置以外の需要電力が変化すると、この影響を受けて前記演算結果(5)の値が変動する。充電中に本装置以外の需要電力が増加し、予想需要電力量が目標需要電力量を超過する懸念が生じたときには前記演算結果(5)は負の値になる。これは(4)の許容電力値が(2)の平均電力より小さいことを示し、この値の絶対値は、時間基点30分終了時点における積算電力量が目標需要電力量と一致するために現在遮断すべき電力を示すことになる。
電流制御器8は充電中における充電電力を監視し、前記演算結果(5)の最大供給電力値が負でかつその絶対値が充電電力の値以上になった場合に充電を停止する。また、この作用によって充電を停止した場合には第2の発明と同様に、デマンド監視の単位時間が切り替わるタイミングにおける充電再開のプロセスを実行する。
【符号の説明】
【0027】
1 充電装置
2 直流電源ユニット
3 送電手段
4 操作器
5 受電設備
6 受電情報通信器
7 車両情報通信器
8 電流制御器
9 電動移動体
10 需要電力量計測器
11 タイマー
12 目標電力量設定器
13 演算処理ユニット




【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動移動体の蓄電池を充電する充電装置において、電圧および電流の制御が可能な直流電源ユニットと、電動移動体に接続して電力を供給するための送電手段と、充電開始と充電停止の操作を行う操作手段と、需要電力量の目標値を超過しない範囲でその時点に追加供給できる最大供給電力値を演算するデマンド監視機能を有する受電設備との間で情報交換するための受電情報通信手段と、充電の処理に必要な情報を電動移動体との間で交換するための車両情報通信手段と、前記直流電源ユニットの電圧および電流を制御する制御手段を備え、前記受電情報通信手段は受電設備のデマンド監視機能が算出する最大供給電力値を取得し、前記車両情報通信手段は最大供給電力値または最大供給電力を供給するための最大電圧および最大電流の値を電動移動体に通知し、電動移動体が前記通知情報に基づいて最適計算した充電電圧および充電電流の指示値の通知と蓄電池の満充電を知らせる充電完了の通知を電動移動体から取得するようにし、前記制御手段は通知される指示値に従って電圧および電流を調整しながら充電電力を供給し、電動移動体からの充電完了の通知を受けて電流供給を停止するようにしたことを特徴とする充電装置。
【請求項2】
充電を開始する前に充電装置から取得する最大供給電力値または最大電圧および最大電流の値に基づいて、満充電に至るまでの充電電流のタイムスケジュールを決定してから充電電流の指示値を充電装置に要求するタイプの電動移動体への充電において、前記受電情報通信手段は受電設備からデマンド監視の単位時間が終了して次の単位時間に切り替わるタイミングの情報を取得するようにし、充電中にこのタイミングを通過したときには受電設備から最大供給電力値を再取得し、電動移動体が前回充電電流のスケジュールを決定した根拠にした最大供給電力値に比べて今回の値の方が大きいときには一旦充電を停止し、その直後に自動的に充電処理を再開するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の充電装置。
【請求項3】
受電設備の需要電力量計測手段と、デマンド監視の単位時間の目標需要電力量を設定する目標電力量設定手段と、デマンド監視の単位時間を生成するタイマーと、単位時間終了時の需要電力量を予測してこれが目標需要電力量を超過しない範囲でその時点に追加供給できる最大供給電力値を算出する演算処理手段を備えたことを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の充電装置。
【請求項4】
前記演算処理手段は充電中に単位時間終了時の需要電力量の予測値が目標需要電力量を超過する懸念が生じたときに、目標需用電力量を超過しないようにその時点で抑制すべき電力値を算出し、その値がその時点の充電電力の値以上になった場合に充電を停止するようにし、この作用によって充電を停止した場合にはデマンド監視の単位時間が次の単位時間に切り替わるタイミングにおいて充電処理を自動的に再開するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の充電装置。


【図1】
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【公開番号】特開2012−170206(P2012−170206A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28271(P2011−28271)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000002842)株式会社高岳製作所 (72)
【Fターム(参考)】