説明

電動車両および電力伝送システム

【課題】隊列走行時の航続距離を延ばすことができる電動車両およびその電動車両を用いた電力伝送システムを提供する。
【解決手段】隊列走行可能な電動車両10は、送受電部12,14と、蓄電部16と、電力変換部18と、接続部20と、ECU22とを備える。電力変換部18は、蓄電部16に接続され、双方向に電力変換可能に構成される。送受電部12,14は、隊列走行時に隣接する第1および第2の車両とそれぞれ非接触で電力を授受するためのものである。接続部20は、送受電部12,14ならびに電力変換部18のいずれか2つを選択的に接続する。ECU22は、電力変換部18および接続部20を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動車両および電力伝送システムに関し、特に、複数の車両が所定の車間距離を維持して走行する隊列走行が可能な電動車両およびその電動車両を用いた電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開平9−293194号公報(特許文献1)は、先導車と複数の追従車とが隊列走行(コンボイ走行)する車両群走行システムを開示する。このシステムにおいては、先導車は、所定周期毎に後続の追従車に送信を行なう。各追従車は、前方車からの情報を受信すると、その前方車へ返信するとともに後続の追従車へ上記前方車からの情報を送信する。そして、各追従車は、前方車への次回返信時に後続の追従車からの返信情報を前方車へ送信し、後続の追従車からの返信がない場合には、自車を最後尾車と認識して前方車へ返信する。
【0003】
これにより、先導車を同期源として各後続車への情報伝達を効率よく行なうことができ、さらに、先導車は最後尾車まで情報が正常に伝達されたことを確認することができるとされる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−293194号公報
【特許文献2】特開2005−210843号公報
【特許文献3】特開2010−219838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
隊列走行中の電動車両のいずれかにおいて、蓄電部に蓄えられた走行用の電力が枯渇すると、他の電動車両においては電力に余裕があっても、隊列走行は不可能になる。隊列走行については、先頭車両のみにドライバーを配置することによる人件費の削減や、走行中の空気抵抗低減による燃費向上などのメリットが得られるので、航続距離をできる限り延ばすことが課題である。しかしながら、上記公報では、このような課題およびその解決手段については、特に検討されていない。
【0006】
それゆえに、この発明の目的は、隊列走行時の航続距離を延ばすことができる電動車両およびその電動車両を用いた電力伝送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によれば、電動車両は、受電装置と、送電装置とを備える。受電装置は、車両外部から非接触で受電可能に構成される。送電装置は、受電装置によって受電された電力を車両外部へ送電可能に構成される。
【0008】
好ましくは、電動車両は、再充電可能な蓄電部と、電力変換部と、接続部と、制御部とをさらに備える。蓄電部は、受電装置によって受電された電力を蓄える。電力変換部は、蓄電部に接続され、双方向に電力変換可能に構成される。接続部は、受電装置、送電装置、および電力変換部のいずれか2つを選択的に接続する。制御部は、電力変換部および接続部を制御する。
【0009】
さらに好ましくは、受電装置から送電装置への電力伝送が要求されたとき、制御部は、受電装置を送電装置に電気的に接続するように接続部を制御する。
【0010】
好ましくは、受電装置は、当該電動車両に隣接する第1の車両から非接触で受電可能に構成される。送電装置は、当該電動車両に隣接する第2の車両へ非接触で送電可能に構成される。
【0011】
さらに好ましくは、受電装置は、複数の車両が所定の車間距離を維持して走行する隊列走行時に第1の車両から非接触で受電可能に構成される。送電装置は、隊列走行時に第2の車両へ非接触で送電可能に構成される。
【0012】
好ましくは、受電装置は、車両最前部または車両最後部の一方に配設され、送電装置は、車両最前部または車両最後部の他方に配設される。
【0013】
好ましくは、受電装置の固有周波数と、第1の車両において受電装置へ送電可能に構成された送電部の固有周波数との差は、受電装置の固有周波数または第1の車両における送電部の固有周波数の±10%以下である。また、送電装置の固有周波数と、第2の車両において送電装置から受電可能に構成された受電部の固有周波数との差は、送電装置の固有周波数または第2の車両における受電部の固有周波数の±10%以下である。
【0014】
さらに好ましくは、受電装置と第1の車両の送電部との結合係数、および送電装置と第2の車両の受電部との結合係数の各々は、0.1以下である。
【0015】
さらに好ましくは、受電装置は、受電装置と第1の車両の送電部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する磁界と、受電装置と第1の車両の送電部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて第1の車両の送電部から受電する。送電装置は、送電装置と第2の車両の受電部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する磁界と、送電装置と第2の車両の受電部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて第2の車両の受電部へ送電する。
【0016】
好ましくは、受電装置は、さらに車両外部へ非接触で送電可能に構成される。送電装置は、さらに車両外部から非接触で受電可能に構成される。
【0017】
好ましくは、受電装置は、車両外部に設けられる給電設備から非接触で受電可能に構成される。送電装置は、当該電動車両に隣接する車両へ非接触で送電可能に構成される。
【0018】
また、この発明によれば、電力伝送システムは、複数の車両と、計画部とを備える。複数の車両の各々は、上述したいずれかの電動車両である。計画部は、動的計画法を用いて、複数の車両間の電力伝送を計画する。複数の車両の各々において、制御部は、計画部の演算結果に基づいて電力変換部および接続部を制御する。
【0019】
好ましくは、電力伝送システムは、報知部をさらに備える。報知部は、計画部による演算の結果、複数の車両の中に目的地に到達できない車両が存在するとき、複数の車両の利用者に報知する。
【0020】
また、この発明によれば、電力伝送システムは、複数の車両と、計画部とを備える。複数の車両の各々は、上述したいずれかの電動車両である。計画部は、複数の車両間の電力伝送を計画する。そして、計画部は、複数の車両間で電力伝送を行なわない場合の各車両の走行可能距離を算出し、複数の車両の中に目的地に到達できない車両が存在するとき、目的地に到達したときの各車両のエネルギー余裕を算出し、目的地に到達したときにエネルギーに余裕のある車両であって目的地に到達できない車両から最近傍のものから、目的地に到達できない車両へ電力を伝送するように、複数の車両間の電力伝送を計画する。
【発明の効果】
【0021】
この発明においては、受電装置は、車両外部から非接触で受電可能に構成され、送電装置は、受電装置によって受電された電力を車両外部へ送電可能に構成されるので、たとえば、複数の車両が所定の車間距離を維持して走行する隊列走行時に、隊列走行する車両間で電力をやり取りすることができる。これにより、電力に余裕のある車両から余裕のない車両へ電力を伝送することができる。したがって、この発明によれば、隊列走行時の航続距離を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施の形態1による電動車両の全体構成図である。
【図2】接続部の回路構成の一例を示す回路図である。
【図3】接続部の構造の一例を示した平面図である。
【図4】RFモード時の電力の流れを示した図である。
【図5】TFモード時の電力の流れを示した図である。
【図6】RRモード時の電力の流れを示した図である。
【図7】TRモード時の電力の流れを示した図である。
【図8】THモード時の電力の流れを示した図である。
【図9】隊列走行時における車両間での電力伝送の一例を示した図である。
【図10】隊列走行時における車両間での電力伝送の他の例を示した図である。
【図11】電力伝送システムのシミュレーションモデルを示した図である。
【図12】送電部および受電部の固有周波数のズレと電力伝送効率との関係を示した図である。
【図13】隣接する2台の電動車両間で電力が伝送されるときの等価回路図である。
【図14】電流源(磁流源)からの距離と電磁界の強度との関係を示した図である。
【図15】隊列走行時に電動車両がマスター車両となるときのECUの機能を示す機能ブロック図である。
【図16】隊列走行時に電動車両がスレーブ車両であるときのECUの機能を示す機能ブロック図である。
【図17】隊列走行時にECUにより実行される車両間での電力伝送計画の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図18】実施の形態2におけるECUにより実行される車両間での電力伝送の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図19】実施の形態3による電動車両の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0024】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による電動車両の全体構成図である。図1を参照して、電動車両10は、送受電部12,14と、蓄電部16と、動力生成部17と、電力変換部18と、接続部20と、電子制御ユニット(以下「ECU(Electronic Control Unit)」と称する。)22と、通信部24とを備える。
【0025】
この電動車両10は、複数の車両が所定の車間距離を維持して走行する隊列走行(コンボイ走行とも称される。)が可能である。そして、送受電部12は、隊列走行時に電動車両10の1台前を走行する車両(以下「前方車両」と称する。)と非接触で電力を授受するために設けられる。詳しくは、送受電部12は、車両の最前部に配設される。そして、隊列走行時に電動車両10から前方車両への送電が要求されたとき、送受電部12は、接続部20から受ける電力を、前方車両の最後部に配設される送受電部(図示せず)へ非接触で出力する。また、隊列走行時に前方車両から電動車両10への送電が要求されたときは、送受電部12は、前方車両の最後部に配設される送受電部から出力される電力を非接触で受電する。一例として、送受電部12は、コイルおよびキャパシタを含む共振回路によって構成される。この送受電部12については、後ほど詳しく説明する。
【0026】
送受電部14は、隊列走行時に電動車両10の1台後を走行する車両(以下「後方車両」と称する。)と非接触で電力を授受するために設けられる。詳しくは、送受電部14は、車両の最後部に配設される。そして、隊列走行時に電動車両10から後方車両への送電が要求されたとき、送受電部14は、接続部20から受ける電力を、後方車両の最前部に配設される送受電部(図示せず)へ非接触で出力する。また、隊列走行時に後方車両から電動車両10への送電が要求されたときは、送受電部14は、後方車両の最前部に配設される送受電部から出力される電力を非接触で受電する。一例として、送受電部14も、コイルおよびキャパシタを含む共振回路によって構成される。この送受電部14についても、後ほど詳しく説明する。
【0027】
蓄電部16は、再充電可能な直流電源であり、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池によって構成される。蓄電部16は、走行用の電力を蓄える。そして、蓄電部16は、その蓄えられた電力を動力生成部17へ供給し、また、動力生成部17によって発電された電力を受けて充電される。さらに、隊列走行時、蓄電部16は、前方車両または後方車両へ給電するために、蓄えられた電力を電力変換部18へ供給することができ、また、前方車両または後方車両から受電された電力を電力変換部18から受けて充電され得る。なお、蓄電部16として、大容量のキャパシタも採用可能であり、電力を一時的に蓄え、その蓄えた電力を出力可能な電力バッファであれば如何なるものでもよい。
【0028】
動力生成部17は、図示しないインバータおよび電動機を含み、蓄電部16から電力を受けて走行駆動力を発生する。また、車両の制動時には、動力生成部17は、車両の運動エネルギーを電動機によって電力に変換し、蓄電部16へ出力する。なお、動力生成部17は、図示しないエンジンを含んでもよく、さらに、エンジンの出力を用いて発電し蓄電部16を充電可能な発電機を含んでもよい。
【0029】
電力変換部18は、ECU22から受ける制御指令に従って、蓄電部16から出力される電力を高周波の交流に変換し、その変換された高周波交流電力を接続部20を介して送受電部12または送受電部14へ供給する。また、電力変換部18は、ECU22からの制御指令に従って、送受電部12または送受電部14によって受電され接続部20を介して受ける交流電力を直流に変換し、蓄電部16へ出力する。電力変換部18は、たとえば単相ブリッジインバータによって構成される。
【0030】
接続部20は、ECU22から受ける切替指令に従って、送受電部12、送受電部14、および電力変換部18のいずれか2つを選択的に電気的に接続する。
【0031】
図2は、接続部20の回路構成の一例を示す回路図である。図2を参照して、接続部20は、開閉器30,32,34と、端子36,38,40とを含む。端子36,38,40は、電力変換部18、送受電部12、および送受電部14にそれぞれ接続される。開閉器30は、端子36,38間に接続される。開閉器32は、端子36,40間に接続される。開閉器34は、端子38,40間に接続される。
【0032】
開閉器30,32,34の各々は、リレーや半導体スイッチによって構成され、ECU22(図1)からの切替指令に従ってオン/オフ制御される。開閉器30がオンになり、開閉器32,34がオフになると、送受電部12と電力変換部18とが電気的に接続される。また、開閉器32がオンになり、開閉器30,34がオフになると、送受電部14と電力変換部18とが電気的に接続される。また、開閉器34がオンになり、開閉器30,32がオフになると、送受電部12と送受電部14とが電気的に接続され、電力変換部18は、接続部20から電気的に切離される。
【0033】
図3は、接続部20の構造の一例を示した平面図である。図3とともに図2を参照して、開閉器30,32,34は、ケース44内に格納される。端子36,38,40は、コネクタによって構成される。そして、端子36は、開閉器30,32に接続され、端子38は、開閉器30,34に接続され、端子40は、開閉器32,34に接続される(配線については図示せず)。コネクタ部42は、ECU22(図1)からの切替指令を受けるための信号端子である。
【0034】
再び図1を参照して、ECU22は、予め記憶されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)で実行することによるソフトウェア処理および/または専用の電子回路によるハードウェア処理により、電力変換部18および接続部20ならびに動力生成部17を制御する。
【0035】
具体的には、隊列走行時、ECU22は、電動車両10が前方車両および/または後方車両と所定の車間距離を維持して走行するように、通信部24によって他の車両と通信しながら動力生成部17を制御する。
【0036】
また、隊列走行時に車両間で電力伝送が行なわれる場合、ECU22は、後述の電力伝送計画に従って、以下に示す5つのモードのいずれかの電力伝送を行なうように、電力変換部18および接続部20を制御する。5つのモードとは、具体的には、前方受電モード(RFモード)、前方送電モード(TFモード)、後方受電モード(RRモード)、後方送電モード(TRモード)、および通過モード(THモード)である。
【0037】
図4は、RFモード時の電力の流れを示した図である。図4とともに図1を参照して、RFモードでは、送受電部12により前方車両から非接触で受電され、その受電された電力が蓄電部16へ供給される。RFモード時、ECU22は、送受電部12と電力変換部18とを電気的に接続するように接続部20を制御するとともに、送受電部12から接続部20を介して受ける交流電力を直流に変換して蓄電部16へ出力するように電力変換部18を制御する。
【0038】
図5は、TFモード時の電力の流れを示した図である。図5とともに図1を参照して、TFモードでは、蓄電部16から送受電部12へ電力が供給され、送受電部12により前方車両へ非接触で送電される。TFモード時、ECU22は、送受電部12と電力変換部18とを電気的に接続するように接続部20を制御するとともに、蓄電部16から出力される電力を高周波の交流に変換して接続部20を介して送受電部12へ供給するように電力変換部18を制御する。
【0039】
図6は、RRモード時の電力の流れを示した図である。図6とともに図1を参照して、RRモードでは、送受電部14により後方車両から非接触で受電され、その受電された電力が蓄電部16へ供給される。RRモード時、ECU22は、送受電部14と電力変換部18とを電気的に接続するように接続部20を制御するとともに、送受電部14から接続部20を介して受ける交流電力を直流に変換して蓄電部16へ出力するように電力変換部18を制御する。
【0040】
図7は、TRモード時の電力の流れを示した図である。図7とともに図1を参照して、TRモードでは、蓄電部16から送受電部14へ電力が供給され、送受電部14により後方車両へ非接触で送電される。TRモード時、ECU22は、送受電部14と電力変換部18とを電気的に接続するように接続部20を制御するとともに、蓄電部16から出力される電力を高周波の交流に変換して接続部20を介して送受電部14へ供給するように電力変換部18を制御する。
【0041】
図8は、THモード時の電力の流れを示した図である。図8とともに図1を参照して、THモードでは、電力変換部18および蓄電部16を介することなく、送受電部12と送受電部14とが電気的に接続される。THモード時、ECU22は、送受電部12,14を電気的に接続するように接続部20を制御するとともに、電力変換部18を停止する。
【0042】
なお、隊列走行時は、隊列走行を形成する複数の車両のうちのいずれかがマスター車両となり、そのマスター車両のECU22において、車両間での電力伝送が計画される。そして、マスター車両からその他のスレーブ車両へ電力伝送計画が通知され、各車両において、ECU22によって電力変換部18および接続部20が制御される。この点については、後ほど説明する。
【0043】
図9は、隊列走行時における車両間での電力伝送の一例を示した図である。図9を参照して、4台の電動車両10A,10B,10C,10Dが隊列走行しているものとする。そして、先頭の電動車両10Aから最後尾の電動車両10Dへ電力が伝送される場合、電動車両10A,10B,10C,10Dは、それぞれTRモード、THモード、THモード、RFモードとなる。これにより、電動車両10Aに蓄えられているエネルギー(電力)をTHモードの電動車両10B,10Cを介して電動車両10Dへ伝送することができる。
【0044】
図10は、隊列走行時における車両間での電力伝送の他の例を示した図である。図10を参照して、4台の電動車両10A,10B,10C,10Dで隊列走行しており、電動車両10Aから電動車両10Bへの電力伝送と、電動車両10Dから電動車両10Cへの電力伝送とが同時に行なわれるものとする。この場合、電動車両10A,10B,10C,10Dは、それぞれTRモード、RFモード、RRモード、TFモードとなる。これにより、電動車両10Aに蓄えられているエネルギー(電力)を電動車両10Bへ伝送するのと同時に、電動車両10Dに蓄えられているエネルギー(電力)を電動車両10Cへ伝送することができる。
【0045】
再び図1を参照して、通信部24は、隊列走行時に、隊列走行を形成する他の車両と無線通信を行なうための通信インターフェースである。この通信部24によって、隊列走行を行なうための各車両の情報や、隊列走行時に車両間で伝送伝送を行なうための情報が、車両間で相互にやり取りされる。
【0046】
次に、車両間における電力伝送について説明する。再び図1を参照して、この電動車両10においては、送受電部12の固有周波数と、前方車両の最後部に配設される送受電部(図示せず)の固有周波数との差は、送受電部12の固有周波数または前方車両の上記送受電部の固有周波数の±10%以下である。また、送受電部14の固有周波数と、後方車両の最前部に配設される送受電部(図示せず)の固有周波数との差も、送受電部14の固有周波数または後方車両の上記送受電部の固有周波数の±10%以下である。このような範囲に送受電部12,14の固有周波数を設定することで電力伝送効率を高めることができる。一方、上記の固有周波数の差が±10%よりも大きくなると、電力伝送効率が10%よりも小さくなり、電力伝送時間が長くなるなどの弊害が生じる。
【0047】
なお、送受電部12(14)の固有周波数とは、送受電部12(14)を構成する電気回路(共振回路)が自由振動する場合の振動周波数を意味する。なお、送受電部12(14)の共振周波数とは、送受電部12(14)を構成する電気回路(共振回路)において、制動力または電気抵抗を零としたときの固有周波数を意味する。
【0048】
図11および図12を用いて、固有周波数の差と電力伝送効率との関係とを解析したシミュレーション結果について説明する。図11は、電力伝送システムのシミュレーションモデルを示す図である。また、図12は、送電部および受電部の固有周波数のズレと電力伝送効率との関係を示す図である。
【0049】
図11を参照して、電力伝送システム89は、送電装置90と、受電装置91とを備える。送電装置90は、電磁誘導コイル92と、送電部93とを含む。送電部93は、共振コイル94と、共振コイル94に設けられたキャパシタ95とを含む。受電装置91は、受電部96と、電磁誘導コイル97とを備える。受電部96は、共振コイル99とこの共振コイル99に接続されたキャパシタ98とを含む。
【0050】
共振コイル94のインダクタンスをインダクタンスLtとし、キャパシタ95のキャパシタンスをキャパシタンスC1とする。また、共振コイル99のインダクタンスをインダクタンスLrとし、キャパシタ98のキャパシタンスをキャパシタンスC2とする。このように各パラメータを設定すると、送電部93の固有周波数f1は、下記の式(1)によって示され、受電部96の固有周波数f2は、下記の式(2)によって示される。
【0051】
f1=1/{2π(Lt×C1)1/2}・・・(1)
f2=1/{2π(Lr×C2)1/2}・・・(2)
ここで、インダクタンスLrおよびキャパシタンスC1,C2を固定して、インダクタンスLtのみを変化させた場合において、送電部93および受電部96の固有周波数のズレと電力伝送効率との関係を図12に示す。なお、このシミュレーションにおいては、共振コイル94および共振コイル99の相対的な位置関係は固定とし、さらに、送電部93に供給される電流の周波数は一定である。
【0052】
図12に示すグラフのうち、横軸は固有周波数のズレ(%)を示し、縦軸は一定周波数での電力伝送効率(%)を示す。固有周波数のズレ(%)は、下記の式(3)によって示される。
【0053】
(固有周波数のズレ)={(f1−f2)/f2}×100(%)・・・(3)
図12からも明らかなように、固有周波数のズレ(%)が0%の場合には、電力伝送効率は100%近くとなる。固有周波数のズレ(%)が±5%の場合には、電力伝送効率は40%程度となる。固有周波数のズレ(%)が±10%の場合には、電力伝送効率は10%程度となる。固有周波数のズレ(%)が±15%の場合には、電力伝送効率は5%程度となる。すなわち、固有周波数のズレ(%)の絶対値(固有周波数の差)が、受電部96の固有周波数の10%以下の範囲となるように送電部および受電部の固有周波数を設定することで、電力伝送効率を実用的なレベルに高めることができることがわかる。さらに、固有周波数のズレ(%)の絶対値が受電部96の固有周波数の5%以下となるように送電部および受電部の固有周波数を設定すると、電力伝送効率をさらに高めることができるのでより好ましい。なお、シミュレーションソフトしては、電磁界解析ソフトウェア(JMAG(登録商標):株式会社JSOL製)を採用している。
【0054】
再び図1を参照して、送受電部12は、送受電部12と前方車両の送受電部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する磁界と、送受電部12と前方車両の送受電部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて、前方車両の送受電部と非接触で電力を授受する。送受電部12と前方車両の送受電部との結合係数κは0.1以下であり、送受電部12と前方車両の送受電部とを電磁界によって共振(共鳴)させることで、電動車両10の送受電部12と前方車両の最後部に配設される送受電部との間で電力が伝送される。
【0055】
同様に、送受電部14は、送受電部14と後方車両の送受電部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する磁界と、送受電部14と後方車両の送受電部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて、後方車両の送受電部と非接触で電力を授受する。送受電部14と後方車両の送受電部との結合係数κは0.1以下であり、送受電部14と後方車両の送受電部とを電磁界によって共振(共鳴)させることで、電動車両10の送受電部14と後方車両の最前部に配設される送受電部との間で電力が伝送される。
【0056】
上記のように、この電動車両10においては、送受電部12と前方車両の送受電部とを電磁界によって共振(共鳴)させることで、送受電部12と前方車両の送受電部との間で非接触で電力が伝送される。また、送受電部14と後方車両の送受電部とを電磁界によって共振(共鳴)させることで、送受電部14と後方車両の送受電部との間で非接触で電力が伝送される。電力伝送における、このような送受電部12と前方車両の送受電部との結合(送受電部14と後方車両の送受電部との結合)を、たとえば、「磁気共鳴結合」、「磁界(磁場)共鳴結合」、「電磁界(電磁場)共振結合」、「電界(電場)共振結合」等という。「電磁界(電磁場)共振結合」は、「磁気共鳴結合」、「磁界(磁場)共鳴結合」、「電界(電場)共振結合」のいずれも含む結合を意味する。
【0057】
送受電部12と前方車両の送受電部とが上記のようにコイルによって形成される場合には、送受電部12と前方車両の送受電部とは、主に磁界(磁場)によって結合し、「磁気共鳴結合」または「磁界(磁場)共鳴結合」が形成される。なお、送受電部12と前方車両の送受電部とに、たとえば、メアンダライン等のアンテナを採用することも可能であり、この場合には、送受電部12と前方車両の送受電部とは、主に電界(電場)によって結合し、「電界(電場)共鳴結合」が形成される。なお、送受電部14と後方車両の送受電部との結合についても同様である。
【0058】
図13は、隣接する2台の電動車両10A,10B間で電力が伝送されるときの等価回路図である。なお、この図13では、電動車両10Bが電動車両10Aに追従して走行しているものとする。
【0059】
図13を参照して、電動車両10Aの最後部に設けられる送受電部14は、電磁誘導コイル110と、共振コイル112と、キャパシタ114とを含む。また、電動車両10Bの最前部に設けられる送受電部12は、共振コイル116と、キャパシタ118と、電磁誘導コイル120とを含む。
【0060】
送受電部14において、共振コイル112は、キャパシタ114とともにLC共振回路を形成する。送受電部12においても、共振コイル116は、キャパシタ118とともにLC共振回路を形成する。そして、共振コイル112およびキャパシタ114によって形成されるLC共振回路の固有周波数と、共振コイル116およびキャパシタ118によって形成されるLC共振回路の固有周波数との差は、上記固有周波数の±10%以下である。
【0061】
電動車両10Aから電動車両10Bへ電力が伝送される場合について説明すると、電動車両10Aにおいて、接続部20から電磁誘導コイル110へ高周波の交流電力が供給され、電磁誘導コイル110を用いて共振コイル112へ電力が供給される。そうすると、共振コイル112と電動車両10Bの共振コイル116との間に形成される磁界を通じて共振コイル112から共振コイル116へエネルギー(電力)が移動する。共振コイル116へ移動したエネルギー(電力)は、電磁誘導コイル120を用いて取出され、電動車両10Bの接続部20へ伝送される。
【0062】
なお、キャパシタ114,118は、共振回路の固有周波数を調整するために設けられるものであり、共振コイルの浮遊容量を利用して所望の固有周波数が得られる場合には、キャパシタ114,118を設けない構成としてもよい。
【0063】
図14は、電流源(磁流源)からの距離と電磁界の強度との関係を示した図である。図14を参照して、電磁界は主に3つの成分から成る。曲線k1は、波源からの距離に反比例した成分であり、「輻射電磁界」と称される。曲線k2は、波源からの距離の2乗に反比例した成分であり、「誘導電磁界」と称される。また、曲線k3は、波源からの距離の3乗に反比例した成分であり、「静電磁界」と称される。
【0064】
「静電磁界」は、波源からの距離とともに急激に電磁波の強度が減少する領域であり、共鳴法では、この「静電磁界」が支配的な近接場(エバネッセント場)を利用してエネルギー(電力)の伝送が行なわれる。すなわち、「静電磁界」が支配的な近接場において、近接した固有周波数を有する一対の共振器(たとえば一対の共振コイル)を共振させることにより、一方の共振器(一次側共振コイル)から他方の共振器(二次側共振コイル)へエネルギー(電力)を伝送する。この「静電磁界」は遠方にエネルギーを伝播しないので、遠方までエネルギーを伝播する「輻射電磁界」によりエネルギー(電力)を伝送する電磁波に比べて、共鳴法は、より少ないエネルギー損失で送電することができる。
【0065】
図15,16は、図1に示したECU22の機能ブロック図である。なお、図15は、隊列走行時に電動車両10がマスター車両となるときのECU22の機能を示し、図16は、隊列走行時に電動車両10がスレーブ車両であるときのECU22の機能を示す。
【0066】
図15を参照して、ECU22は、通信制御部50と、隊列走行制御部51と、エネルギー情報取得部52と、エネルギー計画部54と、電力変換制御部56と、切替制御部58とを含む。通信制御部50は、隊列走行時に、隊列走行を形成する他の車両との通信部24(図1)による通信を制御する。隊列走行制御部51は、隊列走行を実施するための各種制御(車間距離制御、速度制御等)を実行する。なお、隊列走行を実施するための制御情報は、通信制御部50によって他の車両と常時通信される。
【0067】
エネルギー情報取得部52は、電動車両10のエネルギーに関する情報を取得する。具体的には、エネルギー情報取得部52は、蓄電部16(図1)の充電状態(SOC(State Of Charge)とも称され、たとえば蓄電部16の満充電状態に対する百分率で示される。)を蓄電部16の入出力電流や電圧等に基づいて算出する。この蓄電部16のSOCは、種々の公知の手法によって算出することができる。また、エネルギー情報取得部52は、蓄電部16の最大エネルギー量や、電動車両10の単位走行距離あたりの損失エネルギー等を取得する。なお、これらの情報は、種々のパラメータ(温度や走行速度等)に基づいてマップ等を用いて取得してもよいし、固定値であってもよい。
【0068】
エネルギー計画部54は、電動車両10のエネルギー情報をエネルギー情報取得部52から受ける。また、エネルギー計画部54は、通信制御部50によって、隊列走行を形成する他の車両のエネルギー情報を取得する。そして、エネルギー計画部54は、後述の方法に従って、隊列走行を形成する車両間での電力伝送を計画する。概略的には、電力伝送効率を考慮しつつ、エネルギーに余裕のある車両から余裕のない車両へ電力が伝送されるように、各車両の電力伝送モードが計画される。そして、この電力伝送計画は、通信制御部50によって、隊列走行を形成する他の車両へ送信される。
【0069】
電力変換制御部56は、エネルギー計画部54の演算結果に基づいて電力変換部18(図1)を制御する。具体的には、電動車両10から他の車両へ電力を供給する必要がある場合には、電力変換制御部56は、蓄電部16から出力される電力を高周波の交流に変換して接続部20へ出力するように、電力変換部18を駆動するための制御指令を生成する。一方、他の車両から電動車両10の蓄電部16へ電力を供給する必要がある場合には、電力変換制御部56は、接続部20から受ける交流電力を直流に変換して蓄電部16へ出力するように、上記制御指令を生成する。なお、電動車両10を電力が通過するだけのときは(THモード)、電力変換制御部56は、電力変換部18を停止するための制御指令を生成する。
【0070】
切替制御部58は、エネルギー計画部54の演算結果に基づいて接続部20(図1)を制御する。具体的には、電動車両10の蓄電部16と前方車両との間で電力を授受する必要がある場合には(RFモード、TFモード)、切替制御部58は、送受電部12を電力変換部18と電気的に接続するための切替指令を生成する。また、電動車両10の蓄電部16と後方車両との間で電力を授受する必要がある場合には(RRモード、TRモード)、切替制御部58は、送受電部14を電力変換部18と電気的に接続するための切替指令を生成する。また、電動車両10を電力が通過するだけのときは(THモード)、切替制御部58は、送受電部12を送受電部14と電気的に接続するための切替指令を生成する。
【0071】
次に、図16を参照して、隊列走行時に電動車両10がスレーブ車両であるときは、エネルギー情報取得部52によって収集された、電動車両10のエネルギーに関する情報が、通信制御部50へ出力され、通信部24を用いてマスター車両へ送信される。
【0072】
また、電力変換制御部56は、マスター車両において計画され、通信部24(図1)によって受信された電力伝送計画を通信制御部50から受け、その計画に従って電力変換部18(図1)を制御する。同様に、切替制御部58も、マスター車両において計画された電力伝送計画を通信制御部50から受け、その計画に従って接続部20(図1)を制御する。なお、その他の部分については、図15で説明したとおりである。
【0073】
図17は、隊列走行時にECU22により実行される車両間での電力伝送計画の処理手順を説明するためのフローチャートである。なお、このフローチャートに示される処理は、一定時間ごとまたは所定の条件の成立時にメインルーチンから呼出されて実行される。
【0074】
図17を参照して、ECU22は、隊列走行時の電力伝送計画を作成するにあたり、以下の情報、すなわち、道路の傾斜を含む地図情報、出発位置、目的位置、目的地到着までの制限時間、隊列走行を形成する各車両のエネルギー、各車両の蓄電部16の最大エネルギー、各車両の単位走行距離あたりの損失、電力伝送効率等の情報を取得する(ステップS10)。地図情報、出発位置、目的位置、制限時間の情報等は、たとえば図示されないカーナビゲーション装置から取得される。
【0075】
次いで、ECU22は、上記の情報に基づいて、動的計画法により車両間の電力伝送計画を作成する(ステップS20)。制御目標は、目的地に到達するまでにいずれかの車両のエネルギー残量が零にならないことと、目的地で全車両のエネルギー残量の総和を最大化することである。また、制御出力は、各車両における接続部20への切替指令および電力変換部18への制御指令である。
【0076】
ここで、解が存在しない場合、すなわち、目的地に到達できない車両が存在する場合(ステップS30においてYES)、ECU22は、電力伝送を実施することなく、利用者にその旨を報知する(ステップS50)。一方、目的地に到達できる場合には(ステップS30においてNO)、ECU22は、ステップS20において作成された電力伝送計画に基づいて、車両間での電力伝送を実施する(ステップS40)。
【0077】
以上のように、この実施の形態1においては、電動車両10は、隊列走行時に隣接する車両と非接触で電力を授受するための送受電部12,14を備える。そして、送受電部12,14および電力変換部18のいずれか2つを選択的に接続する接続部20が設けられるので、隊列走行する車両間で電力を授受することができる。これにより、電力に余裕のある電動車両から余裕のない電動車両へ電力を伝送することができる。したがって、この実施の形態1によれば、隊列走行時の航続距離を延ばすことができる。
【0078】
また、この実施の形態1においては、送受電部12の固有周波数と、前方車両の最後部に配設される送受電部の固有周波数との差は、送受電部12の固有周波数または前方車両の送受電部の固有周波数の±10%以下である。また、送受電部14の固有周波数と、後方車両の最前部に配設される送受電部の固有周波数との差は、送受電部14の固有周波数または後方車両の送受電部の固有周波数の±10%以下である。これにより、電磁誘導よりも送電距離の大きい電磁界共振により車両間で電力が伝送される。したがって、この実施の形態1によれば、電磁誘導による電力伝送手法を採用した場合に比べて、隊列走行時の車間距離が大きくなっても車両間で電力を伝送することができる。
【0079】
また、この実施の形態1によれば、動的計画法を用いて電力伝送計画が作成されるので、隊列走行時の電力伝送を最適化することができる。
【0080】
[実施の形態2]
実施の形態1では、動的計画法を用いて、隊列走行時の車両間の電力伝送計画を作成するものとしたが、この実施の形態2では、より簡易な手法で電力伝送が計画実施される。
【0081】
実施の形態2における電動車両の全体構成は、図1に示した実施の形態1による電動車両10と同じである。
【0082】
図18は、実施の形態2におけるECU22により実行される車両間での電力伝送の処理手順を説明するためのフローチャートである。なお、このフローチャートに示される処理も、一定時間ごとまたは所定の条件の成立時にメインルーチンから呼出されて実行される。
【0083】
図18を参照して、ECU22は、以下の情報、すなわち、道路の傾斜を含む地図情報、出発位置、目的位置、目的地到着までの制限時間、隊列走行を形成する各車両のエネルギー、各車両の蓄電部16の最大エネルギー、各車両の単位走行距離あたりの損失、電力伝送効率等の情報を取得する(ステップS110)。なお、この処理は、図17に示したステップS10において実行される処理と同じである。
【0084】
次いで、ECU22は、上記の情報を用いて、現状の各車両の残存走行距離を算出する(ステップS120)。その結果、目的地に到達できない車両が存在する場合(ステップS130においてYES)、ECU22は、目的地に到達したときの各車両のエネルギー余裕を予測する(ステップS140)。一例として、各車両において、目的地に到達したときの蓄電部16のSOC推定値に基づいてエネルギー余裕が予測される。
【0085】
そして、ECU22は、残存走行距離が短い車両の順に、目的地に到達したときにエネルギーに余裕のある車両であって残存走行距離が短い上記車両の最近傍のものから、残存走行距離が短い上記車両へ電力を伝送するように、車両間での電力伝送を実施する(ステップS150)。
【0086】
なお、ステップS130において目的地に到達できない車両はないと判定されると(ステップS130においてNO)、ECU22は、ステップS140,S150の処理を実行することなくステップS160へ処理を移行する。
【0087】
以上のように、この実施の形態2によれば、隊列走行時の車両間の電力伝送につき、より簡易な手法で車両間の電力伝送を計画実施することができる。
【0088】
[実施の形態3]
上記の実施の形態1,2において、隊列走行を形成する各車両に全車両のエネルギー状態を表示させてもよい。さらに、その表示結果に基づいて、利用者が手動で車両間の電力伝送を設定できるようにしてもよい。
【0089】
図19は、実施の形態3による電動車両10Eの全体構成図である。図19を参照して、この電動車両10Eは、図1に示した電動車両10の構成において、表示設定部26をさらに備える。
【0090】
表示設定部26は、ECU22から電動車両10Eのエネルギー状態(たとえば蓄電部16のSOC)を取得する。また、表示設定部26は、通信部24によって電動車両10E以外の各車両のエネルギー状態を取得する。そして、表示設定部26は、その取得した各車両(電動車両10Eを含む)のエネルギー状態を表示する。
【0091】
また、表示設定部26は、その各車両のエネルギー表示状態に基づいて利用者が車両間のエネルギー伝送を設定可能に構成される。そして、利用者により車両間のエネルギー伝送が設定されると、表示設定部26は、車両間のエネルギー伝送に関する情報を通信部24によって各車両へ送信するとともに、当該電動車両10EのECU22へ通知する。
【0092】
なお、電動車両10Eのその他の構成は、電動車両10と同じである。
以上のように、この実施の形態3によれば、隊列走行を形成する各車両に全車両のエネルギー状態が表示設定部26に表示されるので、利用者は各車両のエネルギー状態を把握することができる。さらに、この実施の形態3によれば、表示設定部26に表示された各車両のエネルギー状態に基づいて、利用者の判断で電力伝送を実施することができる。
【0093】
なお、上記の各実施の形態においては、隊列走行する車両間で電力を授受するものとしたが、車両の停車中に充電スタンド等の給電設備から非接触で受電した電力を、給電設備から受電した車両に隣接する車両へ非接触で送電することも可能である。
【0094】
なお、上記において、送受電部12,14は、それぞれこの発明における「受電装置」および「送電装置」の一実施例、または、それぞれ「送電装置」および「受電装置」の一実施例に対応する。また、ECU22は、この発明における「制御部」の一実施例に対応する。さらに、ECU22のエネルギー計画部54は、この発明における「計画部」の一実施例に対応し、ECU22によりステップS50において実行される処理は、この発明における「報知部」により実行される処理に対応する。
【0095】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
10,10A〜10E 電動車両、12,14 送受電部、16 蓄電部、17 動力生成部、18 電力変換部、20 接続部、22 ECU、24 通信部、26 表示設定部、30,32,34 開閉器、36,38,40 端子、42 コネクタ部、44 ケース、50 通信制御部、51 隊列走行制御部、52 エネルギー情報取得部、54 エネルギー計画部、56 電力変換制御部、58 切替制御部、110,120 電磁誘導コイル、112,116 共振コイル、114,118 キャパシタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外部から非接触で受電可能に構成された受電装置と、
前記受電装置によって受電された電力を車両外部へ送電可能に構成された送電装置とを備える電動車両。
【請求項2】
前記受電装置によって受電された電力を蓄える再充電可能な蓄電部と、
前記蓄電部に接続され、双方向に電力変換可能に構成された電力変換部と、
前記受電装置、前記送電装置、および前記電力変換部のいずれか2つを選択的に接続する接続部と、
前記電力変換部および前記接続部を制御する制御部とをさらに備える、請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
前記受電装置から前記送電装置への電力伝送が要求されたとき、前記制御部は、前記受電装置を前記送電装置に電気的に接続するように前記接続部を制御する、請求項2に記載の電動車両。
【請求項4】
前記受電装置は、当該電動車両に隣接する第1の車両から非接触で受電可能に構成され、
前記送電装置は、当該電動車両に隣接する第2の車両へ非接触で送電可能に構成される、請求項1から3のいずれか1項に記載の電動車両。
【請求項5】
前記受電装置は、複数の車両が所定の車間距離を維持して走行する隊列走行時に前記第1の車両から非接触で受電可能に構成され、
前記送電装置は、前記隊列走行時に前記第2の車両へ非接触で送電可能に構成される、請求項4に記載の電動車両。
【請求項6】
前記受電装置は、車両最前部または車両最後部の一方に配設され、
前記送電装置は、車両最前部または車両最後部の他方に配設される、請求項4または5に記載の電動車両。
【請求項7】
前記受電装置の固有周波数と、前記第1の車両において前記受電装置へ送電可能に構成された送電部の固有周波数との差は、前記受電装置の固有周波数または前記送電部の固有周波数の±10%以下であり、
前記送電装置の固有周波数と、前記第2の車両において前記送電装置から受電可能に構成された受電部の固有周波数との差は、前記送電装置の固有周波数または前記受電部の固有周波数の±10%以下である、請求項4から6のいずれか1項に記載の電動車両。
【請求項8】
前記受電装置と前記送電部との結合係数、および前記送電装置と前記受電部との結合係数の各々は、0.1以下である、請求項7に記載の電動車両。
【請求項9】
前記受電装置は、前記受電装置と前記送電部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する磁界と、前記受電装置と前記送電部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて前記送電部から受電し、
前記送電装置は、前記送電装置と前記受電部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する磁界と、前記送電装置と前記受電部との間に形成され、かつ、特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて前記受電部へ送電する、請求項7または8に記載の電動車両。
【請求項10】
前記受電装置は、さらに車両外部へ非接触で送電可能であり、
前記送電装置は、さらに車両外部から非接触で受電可能である、請求項1から9のいずれか1項に記載の電動車両。
【請求項11】
前記受電装置は、車両外部に設けられる給電設備から非接触で受電可能に構成され、
前記送電装置は、当該電動車両に隣接する車両へ非接触で送電可能に構成される、請求項1から3のいずれか1項に記載の電動車両。
【請求項12】
各々が請求項1から10のいずれか1項に記載の電動車両である複数の車両と、
動的計画法を用いて、前記複数の車両間の電力伝送を計画する計画部とを備え、
前記複数の車両の各々において、前記制御部は、前記計画部の演算結果に基づいて前記電力変換部および前記接続部を制御する、電力伝送システム。
【請求項13】
前記計画部による演算の結果、前記複数の車両の中に目的地に到達できない車両が存在するとき、前記複数の車両の利用者に報知するための報知部をさらに備える、請求項12に記載の電力伝送システム。
【請求項14】
各々が請求項1から10のいずれか1項に記載の電動車両である複数の車両と、
前記複数の車両間の電力伝送を計画する計画部とを備え、
前記計画部は、前記複数の車両間で電力伝送を行なわない場合の各車両の走行可能距離を算出し、前記複数の車両の中に目的地に到達できない車両が存在するとき、前記目的地に到達したときの各車両のエネルギー余裕を算出し、前記目的地に到達したときにエネルギーに余裕のある車両であって前記目的地に到達できない車両から最近傍のものから、前記目的地に到達できない車両へ電力を伝送するように、前記複数の車両間の電力伝送を計画する、電力伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−70514(P2013−70514A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207239(P2011−207239)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】