説明

電動農作業機

【課題】 方向転換時に機体を後側へ傾けて農作業装置を畝から浮かせる必要がある歩行型の電動農作業機において、機体の傾斜や旋回の操作性を良好にする。
【解決手段】 機体2の中間位置にモーター5で駆動する左右一対の車輪3を設け、機体2の前部位置に茎葉処理装置8を設け、作業者が機体2の後方で歩行しながら操作するハンドル4を設けた歩行型の電動農作業機1において、モーター5を車輪3より後方の機体2の後部位置に配置し、モーター5に給電するバッテリー6をモーター5より後方の機体2の後部に配置し、同バッテリー6を前記茎葉処理装置8のカウンタウェイトとして用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が機体の後方で歩行しながら操作して農作業する電動農作業機に関する。具体的には、茎葉処理機・人参収穫機・バレイショ植付機・玉ねぎ収穫機等に適用できる技術である。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示される茎葉処理機等の農作業機の駆動源はエンジンが一般的であった。しかし、化石燃料の大量消費で排出される二酸化炭素が地球温暖化を招いており、農作業機の分野においても脱化石燃料・低炭素化が求められている。近年では駆動源にモーターを利用した電動農作業機が考案されており、車輪と農作業装置を駆動するモーターと、モーターに給電するバッテリーと、これらを制御するコントローラ等の装置を備えている。
【0003】
ところで、前記のような歩行型の農作業機では、例えば方向転換して隣の畝に移動する際、機体を後側へ傾けて前部の農作業装置を畝より高く浮かせる必要がある。この場合、ハンドルを押し下げ、車輪を支点にして機体前部を上向きにするが、農作業装置は重量を有しているから相当の力が必要であった。したがって、これを電動化した場合、重量を有するバッテリー及びモーターの配置を考慮しないと、機体の傾斜や旋回の操作性を著しく悪化させてしまうことがあった。
【0004】
一方、電動化した農作業機が特許文献2,3で提案されている。これらの技術は歩行型耕耘機に関するものであって、モーターで駆動する耕耘爪を機体の下部に配置し、モーターを機体の上部に配置し、モーターに給電する小型のバッテリーを機体の上面に分散して配置したことを特徴としている。これらの特許文献には、小型のバッテリーを分散して配置する技術が開示されているが、この方法は重量バランスは良好となるが、構造が複雑で高コストとなる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−253019号公報
【特許文献2】特許第4116904号公報
【特許文献3】特開2008−141992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、方向転換時に機体を後側へ傾けて農作業装置を畝から浮かせる必要がある歩行型の電動農作業機において、機体の傾斜や旋回の操作性を良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 機体の中間位置に駆動源で駆動する左右一対の車輪を設け、機体の前部位置に前記駆動源で作動する農作業装置を設け、作業者が機体の後方で歩行しながら操作する操作部を機体の後方に設け、方向転換時は機体を後側へ傾けて前部の農作業装置を畝より高く浮かせる必要がある歩行型の農作業機において、前記駆動源がバッテリーから給電されるモーターであって、同モーターとバッテリーを車輪より後方の機体後部位置に配置し、同バッテリーを前記農作業装置のカウンタウェイトとして用いるようにしたことを特徴とする、電動農作業機
2) バッテリーを操作部を除いた機体の最後尾位置に配置した、前記1)記載の電動農作業機
3) 農作業装置が茎葉処理装置である、前記1)又は2)記載の電動農作業機
にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、方向転換する際、機体の後部を押し下げて前部の農作業装置が上方を向くように傾け、その状態で旋回して移動する。このとき、重量のあるバッテリー及びモーターが機体の後部に搭載されているから、そのバッテリーが農作業装置のカウンタウェイトとなって機体後部を押し下げる際に小さな力で済み、機体の傾斜や旋回操作が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例の電動農作業機の左側面図である。
【図2】実施例の電動農作業機の傾けた状態を示す左側面図である。
【図3】実施例の他の例の電動農作業機の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明では、バッテリーは操作部を除いた機体の最後尾に配置するのが、バッテリーによるモーメントが最大にでき好ましい。また、機体の所要箇所にモーメントを最適にする所要重さのカウンタウェイトを脱着自在に取り付けるのが好ましい。以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0011】
図1,2に示す実施例は電動茎葉処理機の例である。図1は実施例の電動農作業機の左側面図、図2は実施例の電動農作業機の傾けた状態を示す左側面図である。図中、1は電動農作業機、2は機体、3は車輪、4はハンドル、4aは操作部、5はモーター、5aは伝動装置、6はバッテリー、7はコントローラ、8は茎葉処理装置、9はフレーム、10は畝である。
【0012】
本実施例の電動農作業機1は、図1に示すように、機体2の中間下部に左右一対の車輪3を軸支し、機体2の中間上部から斜め後方へ向けてハンドル4を取り付け、機体2の後上部にモーター5を横向きに搭載し、機体2の後部にバッテリー6を搭載し、機体2の後下部にコントローラ7を取り付けている。また、機体2の前部に茎葉処理装置8を取り付け、フレーム9を機体2の前端部に取り付けている。
【0013】
モーター5の駆動力は伝動装置5aを介して車輪3に伝達される。バッテリー6の重量はおよそ30kgで、茎葉処理装置8の重量はおよそ60kg程度である。モーター5の重量は約20〜30kgで、出力は約2〜3kWである。茎葉処理装置8は、内蔵されたモーターで回動する複数の掻込爪が左右対称に設けられ、バッテリー6で給電して作動する。
【0014】
本実施例では、作業者が機体2の後方でハンドル4を持って歩行し、畝10に沿って走行させながら茎葉を引抜き処理する。隣の畝10に移動する際は、図2に示すようにハンドル4を押し下げ、茎葉処理装置8が上方を向くように機体2を傾けて茎葉処理装置8の下部を畝10より高く浮かせ、その状態で旋回して隣の畝10に移動する。このとき、重量のあるバッテリー6が機体2の後部に搭載されているから、そのバッテリー6が茎葉処理装置8のカウンタウェイトとなって機体2を傾ける際に小さな力で済み、機体2の傾斜や旋回操作が容易となる。
【0015】
図3に示すのは、実施例の電動農作業機1の他の例である。図3は実施例の他の例の電動農作業機の左側面図である。この例では、バッテリー6を機体2の後側部に搭載し、コントローラ7をモーター5の背後に取り付けている。この例も実施例と同様にバッテリー6が機体2の後部に搭載されているから、そのバッテリー6が茎葉処理装置8のカウンタウェイトとなって機体2を傾ける際に小さな力で済み、機体2の傾斜や旋回操作が容易となる。その他、符号、構成は実施例と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の技術は、作物の収穫前に地表面の茎葉を引抜き処理する茎葉処理機など、旋回時に作業者の力で機体を傾ける必要のある農作業機に利用される。
【符号の説明】
【0017】
1 電動農作業機
2 機体
3 車輪
4 ハンドル
4a 操作部
5 モーター
5a 伝動装置
6 バッテリー
7 コントローラ
8 茎葉処理装置
9 フレーム
10 畝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の中間位置に駆動源で駆動する左右一対の車輪を設け、機体の前部位置に前記駆動源で作動する農作業装置を設け、作業者が機体の後方で歩行しながら操作する操作部を機体の後方に設け、方向転換時は機体を後側へ傾けて前部の農作業装置を畝より高く浮かせる必要がある歩行型の農作業機において、前記駆動源がバッテリーから給電されるモーターであって、同モーターとバッテリーを車輪より後方の機体後部位置に配置し、同バッテリーを前記農作業装置のカウンタウェイトとして用いるようにしたことを特徴とする、電動農作業機。
【請求項2】
バッテリーを操作部を除いた機体の最後尾位置に配置した、請求項1記載の電動農作業機。
【請求項3】
農作業装置が茎葉処理装置である、請求項1又は2記載の電動農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−220480(P2010−220480A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67971(P2009−67971)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000217240)田中工機株式会社 (10)
【Fターム(参考)】