説明

電動送風機または電動送風機ユニットまたはこれらを用いた電気掃除機

【課題】吸込んだ気流の一部をケーシングの外周から排出させることにより送風効率を向上させると共に、カーボンブラシの効果的な冷却により、電動送風機の寿命を向上させること。
【解決手段】電動送風機カバー3内にリブ3a、リブ3bを設けることにより、排気口D54からの排気を再度電動送風機2内部に戻し、ブラシ保持機12に設けた冷却穴20内に通すことで、カーボンブラシ11の冷却効果を高め、電動送風機2の寿命を向上させることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動送風機及び電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電動送風機はインペラで発生させた気流の一部をケーシングの外周に設けた排気口より排出し、その他の気流はブラケット内部に導かれ、巻線、整流子、カーボンブラシを冷却する構造であった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開昭61−47964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記構成では、インペラで発生させた気流の一部をケーシングの外周へと排出してしまうため、ブラケット内部に導かれる気流が減少してしまい、結果カーボンブラシの温度が上昇し、電動送風機の寿命が短くなってしまう問題があった。
【0004】
本発明は、電動送風機において効率向上のために、排気の一部をケーシングの外周から電動送風機の外へ排気することでカーボンブラシの冷却効果が薄れ、カーボンブラシの温度が上昇してしまう課題を解決するもので、電動送風機の効率を低下させることなく、カーボンブラシの温度上昇を抑えることの可能な優れた電動送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記従来の課題を解決するために本発明は、電機子巻線及び整流子を有する電機子と、界磁巻線を有する界磁と、前記電機子の両端を回転自在に支持するベアリングと、整流子と電気的接続をする為のカーボンブラシと、前記カーボンブラシを収納する為のブラシホルダーと、排気口A1及びA2を設けた反負荷側ブラケットと、排気口Bを設けた負荷側ブラケットと、前記電機子の一端に固定されたインペラと、前記インペラを覆う排気口Cを設けたケーシングと、インペラ外周に配置され動圧を静圧へと変換するエアガイドと、前記排気口Cからの排気を直接ブラシホルダー端面に導く排気通路とを備える電動送風機とした。
【0006】
これによって、電動送風機は効率向上の為に一度排気した空気を、再度整流子の冷却に使用することが可能となり、電動送風機の効率を低下させることなく、カーボンブラシの温度上昇を抑えることの可能な優れた電動送風機を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電動送風機は、効率を低下させること無く、その冷却を効率よく行い、カーボンブラシの寿命の向上による、電動送風機およびこれを用いた電気掃除機の寿命向上を実現させるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、電機子巻線及び整流子を有する電機子と、界磁巻線を有する界磁と、前記電機子の両端を回転自在に支持するベアリングと、整流子と電気的接続をする為のカーボンブラシと、前記カーボンブラシを収納する為のブラシホルダーと、排気口A1及びA2を設けた反負荷側ブラケットと、排気口Bを設けた負荷側ブラケットと、前記電機子の一端に固定されたインペラと、前記インペラを覆う排気口Cを設けたケーシングと、インペラ外周に配置され動圧を静圧へと変換するエアガイドと、前記排気口Cからの排気を直接ブラシホルダー端面に導く排気通路とを備える電動送風機とした。
【0009】
これにより、無駄なくカーボンブラシを冷却し、カーボンブラシの冷却効果を高めることができる。
【0010】
第2の発明は、電機子巻線及び整流子を有する電機子と、界磁巻線を有する界磁と、前記電機子の両端を回転自在に支持するベアリングと、整流子と電気的接続をする為のカーボンブラシと、前記カーボンブラシを収納する為のブラシホルダーと、排気口A1及びA2を設けた反負荷側ブラケットと、排気口Bを設けた負荷側ブラケットと、前記電機子の一端に固定されたインペラと、前記インペラを覆う排気口Cを設けたケーシングと、インペラ外周に配置され動圧を静圧へと変換するエアガイドとを有する電動送風機と、前記電動送風機を固定し前記電動送風機からの排気を排気口Dから排出する電動送風機カバーと前記電動送風機とで構成される電動送風機ユニットにおいて、電動送風機カバー内に排気口Cからの排気を排気口A1に導く形状にリブを設け、前記排気口Cからの排気を前記排気口A1を通し、一度反負荷側ブラケット内に戻し、前記ブラシホルダーに設けた冷却穴より排気を流入させてカーボンブラシを冷却した後に、前記排気口A2を通して、電動送風機外に排気した後、前記排気口Dから排気することを特徴とする電動送風機ユニットとした。
【0011】
これにより、電動送風機は効率向上の為に一度排気した空気を、再度整流子の冷却に使用することが可能となり、電動送風機の効率を低下させることなく、カーボンブラシの温度上昇を抑える効果を得ることができる。
【0012】
第3の発明は、第1の発明に記載の電動送風機または第2の発明に記載の電動送風機ユニットを備えた電気掃除機としたものであり、電気掃除機での吸込み性能を低下させることなく、カーボンブラシの冷却効果を高めて、電気掃除機の寿命を向上させることが可能となる。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態1)
以下、本発明の第1の実施の形態を、図1、図2を用いて説明する。
【0015】
図1、図2は本実施の形態の電動送風機ユニットの断面図である。
【0016】
図1において、1は電動送風機2と電動送風機を保持する為の電動送風機カバー3からなる電動送風機ユニットである。電動送風機カバー3は電動送風機2からの排気の流れを制御するリブ3a、リブ3bと、電動送風機2からの排気を排出する排気口E55を有している。前記電動送風機2を構成する反負荷側ブラケット4a内にはベアリング30に接続された回転軸5に整流子6と薄い珪素鋼板を積層して成る電機子コア7を圧入固定し巻線を施したローター8と、薄い珪素鋼板を積層して成る界磁コア9に巻線を施したステーター10を内蔵している。
【0017】
また、前記反負荷側ブラケット4aには整流子6と摺動するカーボンブラシ11を収納したブラシ保持機12を設けている。またブラシ保持機12はカーボンブラシ11を冷却する為の、冷却穴20を有している。
【0018】
負荷側ブラケット4bに接続されるファンユニット13は、前記回転軸5に回転により気流を発生させるインペラ14が取付け固定されており、その外周には複数の案内翼15でボリュート室16を構成したエアガイド17を配置している。18はインペラ14とエアガイド17を内包し、かつ負荷側ブラケット4bの外周に気密に取り付けられた中央部に吸気孔19を有するケーシングであり、その外周にはエアガイド17を経由した気流の一部が排出される排気口Cが設けられている。
【0019】
また、反負荷側ブラケット4aには排気口A51、排気口B52、負荷側ブラケット4bには排気口C53が設けている。このとき排気口A51の面積をS1、排気口C53と排気口D54の面積の和をS2とする。
【0020】
以上のように構成された電動送風機ユニットについてその動作を説明する。
【0021】
まず、電力が電動送風機2のカ−ボンブラシ11及び整流子6を経由してローター8とステーター10に供給されて電動送風機2が運転し、ローター8の回転軸5が高速で回転し、この回転軸5に固定されたインペラ14も高速で回転する。その結果吸引される気流が発生し、吸引された気流は前記インペラ14外周より排出される。
【0022】
そして、インペラ14外周より排出された気流は、エアガイド17の隣り合う複数の案内翼15で構成されたボリュート室16を通ってエアガイド17の外周より排出される。
【0023】
このエアガイド5の外周から排出された気流の一部はケーシング18に設けられた排気口D54から外部へ排出され、残りの気流は排気口C53を通って反負荷側ブラケット4a内に内蔵されたローター8、ステーター10等を冷却した後に反負荷側ブラケット4aの排気口B52を通り、排気口E55から外部に排出されるものである。
【0024】
ここで、吸込まれた気流の一部がケーシング18に設けられた排気口D54から直接電動送風機2の外部に排出されるので、エアガイド5に形成されたボリュート室16を経由してエアガイド5の裏面へ導かれる際に生じる気流の「曲がり損失」が低減され、また同時に電動送風機2内を通過する気流も減少するのでその際に生じる「風損」も低減される。従って「曲がり損失」と「風損」の流体的損失が低減できるので全体の送風効率が向上するものである。
【0025】
しかし、排気口D54から気流を排出する為、電動送風機2の内部に流れる冷却風量が減少し、カーボンブラシ11の温度が上昇する問題があった。ここで、電動送風機カバー3内にリブ3a、リブ3bを設ける。
【0026】
上記構成とすることで、排気口D54から排気された気流は、リブ3aよりも低い位置にある場合、リブ3bに当たり、リブ3aよりも上に導かれる。
【0027】
その後、上記気流はリブ3aよりも上にある排気口D54からの排気と合流して電動送風機カバー3内を通り、電動送風機カバー3の外部へ通じる唯一の排気口である排気口E55へと通じる排気口A51へと導かれる。
【0028】
排気口A51から再度電動送風機2内部へ導かれた気流は、ブラシ保持機12に設けた冷却穴20内を通り、カーボンブラシ11を冷却した後、排気口B52から電動送風機2の外部へ再度排気され、さらに排気口E55を通って外部へと排気される。
【0029】
このとき、排気口D54から排気された気流の温度は外気と同じであり、電動送風機内部を通過する気流の温度に比べ低くなっている。
【0030】
従って排気口D54からの冷たい排気をカーボンブラシ11に直接当てることで、排気口C53から負荷側ブラケットを通過してくる熱い排気をカーボンブラシ11に当てるよりも効果的に冷却効果を得ることが出来る。
【0031】
以上の冷却効果によりカーボンブラシ11の寿命向上が図れる。
【0032】
また、ここでブラシ保持機12の形状を図3に示す形状にすることで、カーボンブラシの上下ともムラなく冷却することが可能となり、更なるカーボンブラシ11の寿命向上を図れる。
【0033】
さらに、ブラシ保持機12の形状を図4に示す形状にすることで、より多くの冷却風を取り込むことが可能となり、更なるカーボンブラシ11の寿命向上を図れる。
【0034】
また、このときにブラシ保持機の各面に同様の冷却穴を設けることで異なる角度からの冷却風を直接カーボンブラシ11に当てることが出来る為、更なる冷却効果を得ることが可能となる。
【0035】
さらに、ブラシ保持機12の形状を図5に示すようにすることで、カーボンブラシの先端から根元までを均一に冷却することが可能となり、更なるカーボンブラシ11の寿命向上を図れる。このときに冷却穴から入った気流を電動送風機外部まで排出する構造とすることで、冷却風の流れを良くし、更なるカーボンブラシ11の寿命向上を図れる。
【0036】
さらに、ブラシ保持機12の形状を図6に示す様に螺旋形状にすることで、カーボンブラシ全体を均一に冷却することが可能となり、更なるカーボンブラシ11の寿命向上を図れる。
【0037】
また、排気口B52の面積をS1とし、排気口C53と排気口D54の面積の和をS2とした時にS1≧S2とするもので排気口C53と排気口D54から排気される気流の量を排気口B52以下とすることで排気口B52で排気が詰まることなく流れ、安定した冷却風の流れを維持できる為、よりカーボンブラシ11の冷却効果を高めることができ、更なるカーボンブラシ11の寿命向上を図れる。
【0038】
(実施の形態2)
次に、本発明の第2の実施の形態を、図7を用いて説明する。なお上記実施の形態1と同一構成部品については同一符号を付してその説明を省略する。
【0039】
本実施の形態において、排気チューブ40が排気口D54からカーボンブラシ11の端面まで接続されている。
【0040】
以上の構成とすることで、排気口D54の排気を直接カーボンブラシ冷却に使用することが可能となり、カーボンブラシ11の冷却効果を上げることができ、更なるカーボンブラシ11の寿命向上を図れる。
【0041】
以上のように本実施の形態によれば吸引力が落ちることなく、カーボンブラシ11、電動送風機2の寿命を向上した電動送風機を電気掃除機に用いることで電気掃除機の吸い込み仕事率を低下させること無く寿命の向上を図れるものである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明にかかる電気掃除機は、電動送風機の信頼性の向上、ならびに電気掃除機の信頼性の向上が図れるので、電動送風機を用いる家庭用電化機器、産業機器等の用途にも幅広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す電動送風機ユニットの縦断面図
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す電動送風機ユニットの横断面図
【図3】本発明の第1の実施の形態を示すブラシ保持機の図
【図4】本発明の第1の実施の形態の他の例を示すブラシ保持機の図
【図5】本発明の第1の実施の形態の他の例を示すブラシ保持機の図
【図6】本発明の第1の実施の形態の他の例を示すブラシ保持機の図
【図7】本発明の第2の実施の形態を示す電動送風機ユニットの縦断面図
【符号の説明】
【0044】
1 電動送風機ユニット
2 電動送風機
3 電動送風機カバー
3a リブ
3b リブ
4a 反負荷側ブラケット
4b 負荷側ブラケット
6 整流子
7 電機子コア
8 ローター
9 界磁コア
10 ステーター
11 カーボンブラシ
12 ブラシ保持機
14 インペラ
17 エアガイド
18 ケーシング
20 冷却穴
30 ベアリング
40 排気チューブ
51 排気口A
52 排気口B
53 排気口C
54 排気口D
55 排気口E

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電機子巻線及び整流子を有する電機子と、界磁巻線を有する界磁と、前記電機子の両端を回転自在に支持するベアリングと、整流子と電気的接続をする為のカーボンブラシと、前記カーボンブラシを収納する為のブラシホルダーと、排気口A1及びA2を設けた反負荷側ブラケットと、排気口Bを設けた負荷側ブラケットと、前記電機子の一端に固定されたインペラと、前記インペラを覆う排気口Cを設けたケーシングと、インペラ外周に配置され動圧を静圧へと変換するエアガイドと、前記排気口Cからの排気を直接ブラシホルダー端面に導く排気通路とを備えたことを特徴とする電動送風機。
【請求項2】
電機子巻線及び整流子を有する電機子と、界磁巻線を有する界磁と、前記電機子の両端を回転自在に支持するベアリングと、整流子と電気的接続をする為のカーボンブラシと、前記カーボンブラシを収納する為のブラシホルダーと、排気口A1及びA2を設けた反負荷側ブラケットと、排気口Bを設けた負荷側ブラケットと、前記電機子の一端に固定されたインペラと、前記インペラを覆う排気口Cを設けたケーシングと、インペラ外周に配置され動圧を静圧へと変換するエアガイドとを有する電動送風機と、前記電動送風機を固定し前記電動送風機からの排気を排気口Dから排出する電動送風機カバーと前記電動送風機とで構成される電動送風機ユニットにおいて、電動送風機カバー内に排気口Cからの排気を排気口A1に導く形状にリブを設け、前記排気口Cからの排気を前記排気口A1を通し、一度反負荷側ブラケット内に戻し、前記ブラシホルダーに設けた冷却穴より排気を流入させてカーボンブラシを冷却した後に、前記排気口A2を通して、電動送風機外に排気した後、前記排気口Dから排気することを特徴とする電動送風機ユニット。
【請求項3】
請求項1に記載の電動送風機または請求項2に記載の電動送風機ユニットを備えた電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−288709(P2006−288709A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113224(P2005−113224)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】