説明

電動送風機

【課題】 電動送風機において、遠心型送風ファンから放出された気流により、温度上昇した電動部を効率よく冷却することが課題であった。
【解決手段】 ロータ25の回転軸26に固定された遠心型送風ファン33と、ステータ5およびロータ25の外周部を覆う筒状のモータフレーム4と、このモータフレーム4の外周から外方に向かって環状に突出したフランジ部11と、このフランジ部11に設けモータフレーム4の外周面とほぼ平行面になった環状壁14と、この環状壁14に開口した複数の放出口15とを設けて、遠心型送風ファン33から排出される排気風をこれらの放出口15から放出させるような電動送風機1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心型送風ファンの排気風により電動部の冷却効果を高めるようにした電動送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電気掃除機などに用いられる電動送風機には、ロータおよびステータの周囲を円筒状のブラケットで覆った電動機部と、ロータのシャフトに固定されたファンと、このファンを覆うファンカバーと、ファンと電動機部との間に設けられたディフューザおよびモータフレームとが設けられ、ロータが回転することにより、ファンの外周から流出した空気は、ディフューザからモータフレームの通風口または開口を経由しブラケットの内部と外部とに分流されて、ブラケットの内外から電動機部を冷却するようになっている。
【0003】
このモータフレームの外周部にある開口には、電動機部側に向かって舌片が突出した4個所の切り起し部が設けられ、この切り起し部の傾斜した舌片に案内された気流が、ブラケットの外表面に沿って螺旋状に下流側に流れていくようになっている。(例えば、特許文献1参照)
【0004】
また、他の従来の電動送風機には、ロータおよびステータの周囲を円筒状のモータフレームで覆ったモータと、ロータのシャフトに固定されたファンと、このファンを覆うファンカバーと、ファンとモータとの間に設けられたディフューザおよびリターンガイドを有する案内羽根と、複数の排気口を有するブラケットとを備えたものがあり、モータを回転することにより、ファンの外周から流出した空気は、案内羽根のリターンガイドまたはブラケットの排気口から、それぞれモータフレームの内部と外部とに分流されて、モータフレーム内外の空気によりモータの温度上昇を抑えるようになっている。(例えば、特許文献2参照)
【0005】
これらのいずれの電動送風機も、ステータの外周を覆う円筒状のブラケット(特許文献2においてはモータフレーム、以下同じ)の外表面から、外方にほぼ90度の角度で延びた環状の壁面に開口(特許文献2においては排気口、以下同じ)を設け、ブラケットの外表面から離れた位置にあるこれらの開口から、この外表面と平行となった方向に気流を流出させるようになっているものである。
【特許文献1】特開平3−105099号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】特開平10−26099号公報(第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のこれらの電動送風機は、ファンの外周から流出し円筒状のブラケット内を通過せずに放出される気流が、ブラケットの外表面から離れた位置で外表面と平行方向に放出されるものであるから、電動機部の十分な冷却作用が得られないものである。
【0007】
本発明は、上記事情によりなされたものであって、ファンの外周から流出しモータフレーム内を通過せずに放出される気流によって、電動部の冷却効果を向上させた電動送風機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ロータおよびステータならびにこれらの外周部を覆う筒状のモータフレームを有する電動部と、前記ロータの回転軸に固定された遠心型送風ファンと、前記モータフレームの外周から外方に向かって環状に突出したフランジ部と、このフランジ部に外周端部が係合し前記遠心型送風ファンを覆うファンカバーと、前記フランジ部と前記遠心型送風ファンとの間に設けられ前記遠心型送風ファンの外周から流出した気体を前記電動部に向かって排出させるディフューザとを備えた電動送風機において、前記モータフレームの外周面とほぼ平行面になった開口壁を前記フランジ部に設け、この開口壁に前記モータフレームに面した複数の放出口を開口して、前記遠心型送風ファンから排出される排気風をこれらの放出口から放出させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電動送風機は、ファンから流出しモータフレーム内を通過せずに放出される気流によって電動部の冷却効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明による電動送風機の実施態様について、図1から図5を参照して説明する。
【実施例1】
【0011】
図1および図2は、この発明の一つの実施形態に係る電動送風機1を示す。この電動送風機1は、一般に電気掃除機などに用いられるもので、大きく分けて電動部2とファン部3とから構成されている。このうち電動部2は、比較的肉厚の鉄板を有底円筒状に成形したモータフレーム4を有し、このモータフレーム4の内周壁には、後述するステータ5が固定されている。またモータフレーム4の底部6の中心部には、円形の軸受凹部7を有してベアリング8が収容されている。
【0012】
さらに、モータフレーム4の底部6と反対側の端部には、開口部10を有するとともに、湾曲部を介して全体的には外方に向かって延びた環状のフランジ部11が一体的に設けられている。このフランジ部11は、モータフレーム4の外周面から直角方向に外方に向かって環状に延びた支持壁12および環状壁13と、これらの支持壁12と環状壁13と間にあり、モータフレーム4の外周面と平行面となった環状の開口壁14とを折り曲げて構成されている。この開口壁14には、全周に渡って環状に分散された多数の楕円形の放出口15が設けられている。
【0013】
フランジ部11の支持壁12には、モータフレーム4の開口部10を覆うように設けられた円板状のブラケット17の外周部18が、図示しない複数のネジにより固定されている。このブラケット17の中央部には円形の軸受凹部19を有し、その周囲には4分割するように区切られた通風路20が設けられている。軸受凹部19にはベアリング21が収容され、このベアリング21とモータフレーム4の底部6にある前記ベアリング8とにより支持されて、ロータ25の回転軸であるシャフト26が回転自在に設けられている。
【0014】
このシャフト26には、整流子片を多数外周に有する整流子27、積層鉄心を主体とするアーマチュアコア29、およびこのアーマチュアコア29に巻回して各整流子片に各端部が接続されたアーマチュアコイル28が設けられ、回転子である前記ロータ25を形成している。また整流子27の外周面には、モータフレーム4に固定された一対のカーボンブラシ装置30に収容されたカーボンブラシ31の先端が、それぞれ両側から圧接されている。
【0015】
また、シャフト26の先端部には、遠心型送風ファン33が取り付けられている。この遠心型送風ファン33は、いずれも円板状をして吸入口34を有する上ファンプレート35および下ファンプレート36と、これらの間に固定された渦巻状のファン翼 37とを備え、この下ファンプレート36の中心孔をシャフト26に挿入してナット 38により固定されている。さらに遠心型送風ファン33は、中心部に円形の流入口39を有するお椀状のファンカバー40により覆われ、このファンカバー40の外周端は、モータフレーム4に一体となったフランジ部11の外周端に嵌合して固定されている。
【0016】
この遠心型送風ファン33と前記ブラケット17との間には、円盤状のディフューザ44が、ブラケット17の軸支部を中心に相対的な位置にある一対のねじ45により、ブラケット17に取り付けられている。このディフューザ44には、遠心型送風ファン33の外周にあたる位置を入口として渦巻状に設けられた整流板46が設けられ、この整流板46により形成される通風路47は、ディフューザ44の円板部48に設けられた数個所の図示しない流出孔から、ファンカバー40の内側外周部49を経由して裏側に渦巻状に備えた下流整流板50により形成される通気路51に連通している。さらにこの通気路51は、ブラケット17の通風路20から前記ステータ5とロータ25との間の空隙や周辺部に連通するとともに、さらにモータフレーム4の端部外周に設けた複数の排気口55に連通している。また、ロータ25の外周部には、図示しないステータコイルを巻回した積層鉄心からなるステータコア53を有する前記ステータ5が、モータフレーム4に間接的に固定されている。
【0017】
次に、この電動送風機1を駆動した場合について説明する。ステータコイルおよびアーマチュアコイル28に電流が供給されると、回転軸であるシャフト26を中心にロータ25が回転して遠心型送風ファン33を回転させる。これによりファンカバー40の流入口39から空気が流入し、遠心型送風ファン33を通過して、その外周から整流板46により形成された通風路47を経由し、ファンカバー40の内側外周部49に流入する。
【0018】
そして、この内側外周部49から空気は二つに分流し、その一方は、ディフューザ44の下流整流板50により形成された通気路51から、ブラケット17の通風路20を経由してモータフレーム4の内部に流入し、ステータ5およびロータ25を冷却して排気口55から電動送風機1の外部に放出される。また、分流した他方は、フランジ11の開口壁14に多数設けられた放出口15から、それぞれモータフレーム4の外周面に直交する方向に向かって放出される。そして、モータフレーム4の外周面に衝突した後、気流はモータフレーム4の外周面に接触または近接しながら、これに沿って移動し、モータフレーム4を含む電動部2を冷却していく。このように、他方の分流を、モータフレーム4の周囲からその外周面に衝突するように放出するとともに、外周面に沿って移動させることにより、電動部2の冷却効果を著しく高めることができる。また、遠心型送風ファン33で発生した気流の一部を、風路抵抗が大きいモータフレーム4の内部を通過しないようにしたことにより、電動送風機1の吸込効率を上げることができる。
【実施例2】
【0019】
次に、図3および図4により、その他の実施例を説明する。実施例1と同一の構成は、同一の符号により示した。モータフレーム4の外周部には、排気風案内カバー60が固定されている。この排気風案内カバー60は、鉄などの金属板を成形したフレームガイド部61とフランジガイド部62とからなり、フレームガイド部61は、モータフレーム4の外周面と平行面となった円筒状をなし、フランジガイド部62は、フレームガイド部61から湾曲部を介して支持壁12および環状壁13と平行面となるように外方に直角方向に曲げられている。このフランジガイド部62の外周部は、フランジ部11の環状壁13に複数の図示しないビスで固定され、排気風案内カバー60の全体が支持されている。
【0020】
この排気風案内カバー60を設けた電動送風機1を駆動した場合について説明する。上記実施例1と同様に、ファンカバー40の内側外周部49に流入した気流は、この内側外周部49から空気は二つに分流し、その一方は、ディフューザ44からモータフレーム4の内部に流入し、ステータ5およびロータ25を冷却して排気口55から電動送風機1の外部に放出される。
【0021】
また、分流した他方は、フランジ部11の開口壁14に多数設けられた放出口15から流出し、まず支持壁12とフランジガイド部62との間を流れてモータフレーム4の外周面に衝突し、次にモータフレーム4とフレームガイド部61との間に案内されて、これらの表面に接触しながら流れていく。そして排気風案内カバー60から流出した後も、気流はほとんどがモータフレーム4の外周面に沿って移動し、モータフレーム4が含まれる電動部2を冷却していく。すなわち、放出口15から放出された気流は、この排気風案内カバー60の存在により、ほとんど全てがモータフレーム4の外周面に衝突するとともに、接触したり近接したりする状態でこれに沿って流れるため、一層電動部の温度上昇を抑制することができる。この排気風案内カバー60は、電動部2の放熱板としての働きをなすものとなる。
【実施例3】
【0022】
図5により、他の実施例を説明する。上記実施例2と同一の構成は、同一の符号により示した。これは、上記実施例1および2のフランジ部11とフランジ部64の形状が異なるものである。すなわち、このフランジ部64は、モータフレーム4の支持壁12を、外方にそのまま平面的に延長してその先端部に楕円形の放出口65が設けられている。この放出口65は、ファンカバー40の内側外周部49に沿って環状に多数配置されている。このファンカバー40の端部は、支持壁12の端部の位置よりもさらに突出している。
【0023】
また、これらのフランジ部64とモータフレーム4の一部外周とに近接して、前述と同様の排気風案内カバー60が設けられ、ファンカバー40に外周端部が当接するとともに、モータフレーム4の外周面に、これと一定の間隔を維持させて複数個所で図示しないネジにより固定されている。
【0024】
これらの構成により、上記実施例と同様に、ファンカバー40の内側外周部49に流入した気流は、この内側外周部49から空気は二つに分流し、その一方は、ディフューザ44からモータフレーム4の内部に流入し、他方は、実施例2と同様に排気風案内カバー60に案内されるとともに、排気風案内カバー60から流出した後も、気流はモータフレーム4の外周面に沿って移動し、モータフレーム4が含まれる電動部2を冷却していく。すなわち、排気風案内カバー60を設けることにより、放出口15または放出口65の開口方向に制限されることなく、気流による電動部2の冷却効果を高めることができる。
【0025】
モータフレームに対しフランジ部を同一材料により一体に設けたが、これらを別々に形成し、ビスやネジなどにより一体的に結合することもできる。この際、モータフレームとフランジ部との結合部に、湾曲部を設ける必要はない。
【0026】
以上説明したように、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で変形することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による電動送風機の一部断面図である。(実施例1)
【図2】図1に示す電動送風機のモータフレームとフランジ部の斜視図である。
【図3】本発明による他の実施例における電動送風機の一部断面図である。(実施例2)
【図4】図3に示す電動送風機のモータフレーム、フランジ部および排気風案内カバーの分解斜視図である。
【図5】本発明による他の実施例における電動送風機の部分断面図である。(実施例3)
【符号の説明】
【0028】
1 電動送風機
2 電動部
3 ファン部
4 モータフレーム
5 ステータ
11、64 フランジ部
14 開口壁
15 放出口
25 ロータ
26 回転軸(シャフト)
33 遠心型送風ファン
40 ファンカバー
44 デュフューザ
60 排気風案内カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータおよびステータならびにこれらの外周部を覆う筒状のモータフレームを有する電動部と、前記ロータの回転軸に固定された遠心型送風ファンと、前記モータフレームの外周から外方に向かって環状に突出したフランジ部と、このフランジ部に外周端部が係合し前記遠心型送風ファンを覆うファンカバーと、前記フランジ部と前記遠心型送風ファンとの間に設けられ前記遠心型送風ファンの外周から流出した気体を前記電動部に向かって排出させるディフューザとを備えた電動送風機において、
前記モータフレームの外周面とほぼ平行面になった開口壁を前記フランジ部に設け、この開口壁に前記モータフレームに面した複数の放出口を開口して、前記遠心型送風ファンから排出される排気風をこれらの放出口から放出させるようにしたことを特徴とする電動送風機。
【請求項2】
ロータおよびステータならびにこれらの外周部を覆う筒状のモータフレームを有する電動部と、前記ロータの回転軸に固定された遠心型送風ファンと、前記モータフレームの外周から外方に向かって環状に突出したフランジ部と、このフランジ部に外周端部が係合し前記遠心型送風ファンを覆うファンカバーと、前記フランジ部と前記遠心型送風ファンとの間に設けられ前記遠心型送風ファンの外周から流出した気体を前記電動部に向かって排出させるディフューザとを備えた電動送風機において、
前記フランジ部に設けた開口壁に複数の放出口を開口するとともに、前記フランジ部および前記モータフレームのそれぞれの外周面とほぼ平行面を有する排気風案内カバーを設け、この排気風案内カバーにより、前記放出口から放出された排気風を前記フランジ部ならびに前記モータフレームの外周面に沿って流出させるようにしたことを特徴とする電動送風機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−104976(P2006−104976A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290167(P2004−290167)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】