電子制御装置
【課題】ケース開口端へのフラックスの付着を抑制することにより、ケース開口端に対するカバーの接着性の低下を抑制できる電子制御装置を提供する。
【解決手段】ケース12の底壁13側からパワーモジュール16、制御モジュール17の順で両者16,17が重合配置され、制御モジュール17のうちパワーモジュール16とは反対側の面に付着した半田をもってパワーモジュール16と制御モジュール17とが電気的に接続されているとともに、ケース12の開口端に塗布された接着剤をもってケース12とカバーとを接着固定してなる電子制御装置において、ケース12の開口端よりもカバー側となる位置に制御モジュール17を設ける。
【解決手段】ケース12の底壁13側からパワーモジュール16、制御モジュール17の順で両者16,17が重合配置され、制御モジュール17のうちパワーモジュール16とは反対側の面に付着した半田をもってパワーモジュール16と制御モジュール17とが電気的に接続されているとともに、ケース12の開口端に塗布された接着剤をもってケース12とカバーとを接着固定してなる電子制御装置において、ケース12の開口端よりもカバー側となる位置に制御モジュール17を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1回路基板と第2回路基板とを筐体の内部に重合配置してなる電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電子制御装置として例えば特許文献1に記載のものが提案されている。特許文献1に記載の電子制御装置は、自動車の制動力を運転者の操作に基づいて制御するブレーキ制御装置であって、第1回路基板としての制御基板が着座する着座面と第2回路基板としてのパワー基板が着座する着座面とを段違いに形成したケースに、上記パワー基板と制御基板とが所定の間隔を隔てて重合した状態で固定されているとともに、上記ケースの開口を閉蓋するカバーが、上記ケースの開口端に塗布された接着剤をもってそのケースに固定されている。
【0003】
また、上記制御基板には複数のスルーホールが貫通形成されており、上記パワー基板を含む他の電気部品の端子がそのスルーホールを挿通し、上記制御基板のうちカバー側の面に付着した半田をもって上記端子と上記制御基板とが電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−132103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記制御基板のような回路基板に形成したスルーホールと他の電気部品の端子とを半田によって電気的に接続する際には、一般に、上記スルーホールに上記端子を挿通させた後、半田が付きやすくなるように上記回路基板にフラックスを塗布し、その上で半田付けを施すことになる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の電子制御装置では、上記制御基板に形成されたスルーホールに他の電気部品の端子を挿通させつつ、その制御基板を上記ケース内に収容した状態で当該制御基板に上記フラックスを塗布することになるため、上記ケースの開口端にフラックスが付着してしまい、上記接着剤による上記ケースと上記カバーとの接着性が低下してしまう虞があった。
【0007】
本発明は以上のような課題に鑑みてなされたものであって、上記ケースの開口端へのフラックスの付着を抑制することにより、上記ケースと上記カバーとの接着性の低下を抑制した電子制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、特に、上記第1回路基板が、上記ケースの開口端よりも上記カバー側の位置で上記ケースによって支持されて上記カバー内に収容されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
したがって、本発明によれば、上記第1回路基板が上記ケースの開口端よりも上記カバー側の位置に設けられているため、上記第1回路基板のうちカバー側の面にフラックスを塗布する際に、上記ケースの開口端へのフラックスの付着が抑制され、上記ケースと上記カバーとの接着性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態として、本発明にかかる電子制御装置が適用されたアクチュエータユニットを示す分解斜視図。
【図2】図1におけるアクチュエータユニットを別の角度から見た分解斜視図。
【図3】図2におけるモータ制御装置を分解して示す斜視図。
【図4】図2におけるモータ制御装置のA−A線に沿った断面図。
【図5】図2におけるモータ制御装置からカバーを取り除いた状態を示す平面図。
【図6】図3におけるモータ制御装置のケースを単体で示す斜視図。
【図7】図4におけるシール溝を拡大して示す断面図。
【図8】図3におけるパワーモジュールを単体で示す斜視図であって、そのパワーモジュールを部品実装面側から見た図。
【図9】図8に示すパワーモジュールを制御モジュール対向面側から見た斜視図。
【図10】図9におけるスナップフィット部を拡大して示す拡大斜視図。
【図11】制御モジュールに対するフラックスの塗布方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜11は本発明の好適な実施の形態を示す図であって、そのうち図1は本発明にかかる電子制御装置が適用されたアクチュエータユニットを示す分解斜視図、図2は図1に示すアクチュエータユニットを別の角度から見た分解斜視図である。また、図3は電子制御装置の分解斜視図、図4は図2に示す電子制御装置のA−A線に沿った断面図、図5はカバーを取り除いた状態の電子制御装置を示す平面図である。
【0012】
図1,2に示すアクチュエータユニット1は、自動車に搭載される電動式のブレーキ倍力装置に用いられるものであって、三相交流電力によって駆動され、ブレーキ液の液圧を制御する電動アクチュエータである電動モータ2と、運転者によるブレーキ操作や自動車の運転状態に基づいて電動モータ2を駆動制御する電子制御装置としてのモータ制御装置3と、を備えている。なお、図示は省略しているが、電動モータ2は、いわゆるボールねじ機構により、ブレーキ液の液圧を制御する図示しないピストンを進退移動させることになる。
【0013】
電動モータ2のうちアクチュエータハウジングであるモータハウジング4の外面には、当該電動モータ2の軸方向に延びる一対の台座部5が電動モータ2の軸直角方向で互いに所定の間隔を隔てて形成されている。両台座部5のうち長手方向の両端部にはねじ孔6aが穿設された円形の着座面6がそれぞれ突出形成されている一方、モータ制御装置3の筐体7のうち後述するケース12にはモータハウジング4側の各着座面6にそれぞれ着座する4つの脚部8が形成されている。そして、筐体7側の各脚部8を挿通しつつモータハウジング4側の各ねじ孔6aに螺合する4つの制御装置取付ねじ9により、モータ制御装置3が電動モータ2に固定されることになる。
【0014】
他方、モータハウジング4のうち両台座部5同士の間の位置には略偏平角筒状の筒状壁10が突出形成され、モータ制御装置3の筐体7をモータハウジング4に固定したときに、モータ制御装置3側のステータ接続部20およびセンサ接続部23が、筒状壁10の内周側に開口する開口部11を通じてモータハウジング4内に臨むようになっている。そして、ステータ接続部20がモータハウジング4内のステータ(図示せず)に、センサ接続部23がモータハウジング4内の回転位置センサ(図示せず)にそれぞれ接続されることになる。なお、上記回転位置センサとは、周知のように、モータハウジング4内に設けられたロータ(図示せず)の回転位置を検出するものであって、当該回転位置センサの出力信号はモータ制御装置3による電動モータ2の駆動制御に供されることになる。また、筒状壁10の先端には閉ループ状の溝部10aが形成されており、この溝部10aに配置されるシール部材(図示せず)がケース12の底壁13に圧接することにより、モータハウジング4の内外をシールするようになっている。
【0015】
図1,2のほか図3に示すように、モータ制御装置3の筐体7は、底壁13と周壁14を有し、上方に向けて開口する平面視略矩形状の金属製のケース12と、そのケース12の開口を閉蓋する平面視略矩形状の金属製のカバー15と、を備えていて、当該筐体7の内部には、カバー15側から第1回路基板である制御モジュール17,第2回路基板であるパワーモジュール16の順で両者16,17が所定の間隔を隔てて積層配置されている。そして、筐体7は、ケース12の底壁13をモータハウジング4側に向けた姿勢でモータハウジング4に固定されるようになっている。
【0016】
図3のほか図4に示すように、カバー15は、金属板を略皿状にプレス成形してなるものであって、制御モジュール17を収容すべくケース12とは反対側に向けて膨出した第1回路基板収容部としての膨出部43と、その膨出部43の外周縁から外周側に向けて延出するフランジ部44と、そのフランジ部44の外周縁を下向き(ケース12側)に曲折してなる突縁部45と、を備えている。
【0017】
他方、図3のほか図6に単体で示すように、ケース12はいわゆるアルミダイカスト法をもって型成形されたものであって、当該ケース12のうち平面視略矩形状の周壁14の一辺には、パワーモジュール16側の後記の外部接続コネクタ19を受容する開口部36が上方側から切欠形成されている。開口部36は外部接続コネクタ19の根元部に形成されたフランジ部19aに合致する形状を呈しており、当該開口部36の開口縁には、シール性を有する接着材(図示せず)によってフランジ部19aが接着固定されている。
【0018】
ケース12のうちフランジ部19aを含む周壁14の開口端には、閉ループ状に連続したシール溝46が受容溝として形成されている。なお、図3,6の符号12aは、ケース12の外面に形成された冷却用のフィンを示しており、図6の符号41は、周壁14に貫通形成され、空気は通すが水は通さない呼吸フィルタ42(図1,2参照)が取り付けられた呼吸孔を示している。
【0019】
図7に拡大して示すように、シール溝46は、シール溝46の外周側を囲繞する外周側の側壁52と、シール溝46の内周側を囲繞する内周側の側壁53との間に形成されており、当該シール溝46内にはシール性を有する熱硬化性の接着剤54が塗布されている。そして、接着剤54内にカバー15側の突条部45が没入している。つまり、詳しくは後述するが、液状またはペースト状の接着剤54をシール溝46内に塗布するとともに、カバー15側の突条部45を接着剤54に没入させ、その状態で接着剤54を硬化させることにより、カバー15とケース12とを接着固定しつつ両者12,15の間を液密にシールしている。
【0020】
また、シール溝46は、当該シール溝46のうち外周側の側壁52をもって構成された外周側の内側面46aの高さh1が、シール溝46のうち内周側の側壁53をもって構成された内周側の内側面46bの高さh2よりも高くなるように形成されている。なお、ここでいう両内側面46a,46bの高さh1,h2とは、溝部46の底面46cから両内側面46a,46bの上端までの距離を意味している。これにより、硬化前の接着剤54内にカバー15側の突条部45を没入させるのに伴い、シール溝46から接着剤54が溢れ出た場合に、シール溝46から溢れ出た接着剤54が、カバー15のフランジ部44とケース12の内周側の側壁53との間の空隙Gを介してカバー15内へ流れるようになっている。
【0021】
すなわち、筐体7の外部に接着剤54が溢れ出た状態でその接着剤54が硬化してしまうと、その溢れ出た部分を起点として接着剤54の剥がれが生じ、筐体7のシール性が低下する虞があるため、硬化前にシール溝46から溢れ出た接着剤54を筐体7の内部に流すようにすることでこれを抑制している。同時に、シール溝46から筐体7の内部に溢れ出た接着剤54により、ケース12のうち内周側の側壁53の先端とカバー15のフランジ部44とを接着することで、ケース12とカバー15とをより強固に接着固定しているとともに、ケース12とカバー15との間のシール性を向上させている。
【0022】
また、図5,6に示すように、シール溝46のうち長手方向の所定位置、具体的にはシール溝46の四隅近傍の位置には、両側壁52,53の少なくとも一方を他方から離間する方向へ向けて凸となるように湾曲させることにより、部分的に一般部よりも幅広となった拡幅部47がそれぞれ形成されているとともに、それらの各拡幅部47の略中央部にはボス部50がそれぞれ突出形成されている。
【0023】
そして、各ボス部50の先端面にカバー15側のフランジ部44が着座している一方、カバー15側のフランジ部44のうち各ボス部51に対応する位置には取付孔44a(図3参照)がそれぞれ貫通形成されていて、それらの各取付孔44aをそれぞれ挿通しつつボス部51の内周側に螺合する複数のカバー取付ねじ34により、カバー15とケース12とが締結固定されている。つまり、各ボス部51の先端面にフランジ部44が着座することにより、カバー15とケース12とが両者の接近離間方向で位置決めされていて、その結果、図7に示すように、カバー15のフランジ部44とケース12の内周側の側壁53との間に空隙Gが形成されている。
【0024】
さらに、ケース12の底壁13には、当該底壁13のうち四隅近傍の位置からカバー15側に向けてそれぞれ突出する略円柱状のパワーモジュール支持部37と、底壁13のうちパワーモジュール16側の後述するスイッチング素子実装領域A(図8参照)に対応する位置からカバー15側に向けて突出する平面視略矩形状の突出部たるブロック状突部38と、がそれぞれ形成されているとともに、底壁13とブロック状突部38とのなすコーナー部に電力供給端子挿通孔39が、ブロック状突部38と周壁14とのなすコーナー部にコネクタ挿通孔40がそれぞれ貫通形成されている。
【0025】
他方、パワーモジュール16は、図8に示すように、樹脂材料をもって略平板状に形成され、金属製のバスバーが多数埋設された板状基部18と、その板状基部18のうちケース12の底壁13側を向く部品実装面18aに実装された種々の電子部品と、板状基部18の一端縁に一体に形成されているとともに、ケース12側の開口部36を通じて外部に臨んでいて(図2参照)、外部の電子機器と信号および電力を授受する外部接続コネクタ19と、板状基部18のうち部品実装面18aの略中央部に突設され、電動モータ2のステータ(図示せず)と電気的に接続されるステータ接続部20と、板状基部18の部品実装面18aのうちステータ接続部20を挟んで一方側の端縁に突設され、上述した回転位置センサ(図示せず)と電気的に接続されるセンサ接続部23と、を備えている。
【0026】
ステータ接続部20は、板状基部18のうち外部接続コネクタ19が形成された一端縁に対して直交する方向に沿って整列配置された3つの電力供給端子21と、板状基部18の部品実装面18aから突出形成され、各電力供給端子21の根元部を被覆する断面略偏平矩形状の被覆部22と、を備えている。一方、センサ接続部23は、各電力供給端子21の整列方向を長手方向とした断面略偏平矩形状のコネクタハウジング内に複数の端子(図示せず)を収容することで構成されている。
【0027】
次いで、板状基部18の部品実装面18aに実装された種々の電子部品について具体的に説明するに、部品実装面18aのうちステータ接続部20とセンサ接続部23との間の位置には平面視略矩形状の突条部18bによって囲われたスイッチング素子実装領域Aが発熱部品実装領域として形成されているとともに、そのスイッチング素子実装領域Aには、発熱部品である6つのスイッチング素子24が実装され、これらの各スイッチング素子24により、外部接続コネクタ19を介して供給される直流電力を3相交流電力に変換する周知のインバータ回路が構成されている。このインバータ回路の出力である3相交流電力は、ステータ接続部20を介して電動モータ2に供給され、その電動モータ2を回転駆動する。なお、本実施の形態では、各スイッチング素子24としていわゆるMOSFET(電界効果トランジスタ)を用いている。
【0028】
そのほか、板状基部18の部品実装面18aには、当該部品実装面18aの面直角方向に突出する略円柱状に形成された一対の第1電解コンデンサ25、同じく部品実装面18aの面直角方向に突出した略円柱状を呈していて、且つ両第1電解コンデンサ25よりも軸方向の長さが短い一対の第2電解コンデンサ26、複数のセラミックコンデンサ27、電流を検出するための複数のシャント抵抗28、回路保護のための一対のリレー29、第1,第2電解コンデンサ25,26とともにノイズ除去のためのノイズフィルタ部品として機能するノーマルモードコイル30およびコモンモードコイル31がそれぞれ実装されている。
【0029】
そして、パワーモジュール16は、ステータ接続部20をケース12側の電力供給端子挿通孔39に、センサ接続部23をケース12側のコネクタ挿通孔40にそれぞれ挿通させつつ、各パワーモジュール支持部37およびブロック状突部38に板状基部18を載置した状態で、板状基部18に貫通形成された複数の取付孔32をそれぞれ挿通して各パワーモジュール支持部37およびブロック状突部38にそれぞれ形成されたねじ孔37a,38aに螺合する複数のパワーモジュール取付ねじ35により、ケース12に対して締結固定されている。その結果、パワーモジュール16の板状基部18がケース12の底壁13に対して所定の間隔を隔てた位置に保持されているとともに、その板状基部18のうちスイッチング素子実装領域Aに実装された各スイッチング素子24がブロック状突部38の上面に当接している。また、図示は省略しているが、ブロック状突部38の上面と各スイッチング素子24との間には熱伝導グリースが介在していて、各スイッチング素子24が発した熱は熱伝導グリースを介してブロック状突部38へ伝達されるようになっている。なお、熱伝導グリースは、弾性を有するシート状の熱伝導体(例えば熱伝導シート等)でも構わない。
【0030】
また、図3,9に示すように、板状基部18のうち部品取付面18aとは反対側の制御モジュール対向面18cには、当該制御モジュール対向面18aの外周縁部から面直角方向に突出して制御モジュール17をいわゆるスナップフィット方式で係合保持するスナップフィット部55が複数形成されているとともに、パワーモジュール16と制御モジュール17とを電気的に接続するための接続端子60が複数突設されている。
【0031】
図10は、制御モジュール17を係合保持している状態のスナップフィット部55を拡大して示す斜視図である。なお、図10では各スナップフィット部55のうちの一つのみを図示しているが、他のスナップフィット部55も同様に構成されている。
【0032】
図10に示すように、スナップフィット部55は、制御モジュール17のうちパワーモジュール16側のパワーモジュール対向面17aが着座する略円柱状の制御モジュール支持部56と、その制御モジュール支持部56の近傍に設けられた保持片57と、を備えている。保持片57は、板状基部18の制御モジュール対向面18cから突出する断面略偏平状の柱状基部58の先端に、制御モジュール17側へ突出する爪部59を形成してなるものであって、爪部59の下面は制御モジュール17に対する係合面59aとして下向きに傾斜して形成されている一方、爪部59の上面は滑らかに湾曲しつつ上向きに傾斜したガイド面59bとして形成されている。
【0033】
そして、制御モジュール支持部56に制御モジュール17のパワーモジュール対向面17aが着座しているとともに、その制御モジュール17のカバー対向面17bに爪部59の係合面59aが係合している。これにより、制御モジュール17は、図10のほか図4に示すように、パワーモジュール16側の板状基部18に対して面直角方向で所定の間隔を隔てた位置、具体的にはケース12の開口端よりもカバー15側の位置で、各スナップフィット部55によって位置決め保持され、カバー15の膨出部43内に収容されている。つまり、制御モジュール17は、パワーモジュール17を介してケース12に支持されている。
【0034】
図3,4に示すように、制御モジュール17は、ガラスエポキシ樹脂に代表されるような非導電性樹脂材料からなる基板の表裏両面にそれぞれ導体パターン(図示せず)を形成し、その上に多数の電子部品(図示せず)を実装することで構成されたものであって、当該制御モジュール17の外周縁のうち各保持片57に対応する位置には、それらの各保持片57のうち柱状基部58の断面形状に合致する形状の切欠部17cがそれぞれ形成されている。すなわち、制御モジュール17は、各保持片57の柱状基部58を各切欠部17cにそれぞれ受容することにより、当該制御モジュール17に平行な方向で位置決めされるようになっている。
【0035】
また、図3,5に示すように、制御モジュール17のうちパワーモジュール16側の各接続端子60に対応する位置には、それらの各接続端子60が挿通するスルーホール61がそれぞれ貫通形成されている。そして、パワーモジュール16側の各接続端子60は、各スルーホール61を挿通して制御モジュール17からカバー15側へ突出し、制御モジュール17のカバー対向面17bに付着した半田(図示せず)をもって各スルーホール61にそれぞれ電気的に接続されている。これにより、制御モジュール17は、運転者によるブレーキ操作や自動車の運転状態にかかる情報を外部接続コネクタ19および各接続端子52を介して入力するとともに、その情報に基づいて生成した駆動指令信号を各接続端子52を介して各スイッチング素子24へ出力し、もって各スイッチング素子24をスイッチング動作させて電動モータ2を駆動制御することになる。
【0036】
次に、以上のように構成したモータ制御装置3の組立手順について説明する。モータ制御装置3を組み立てるにあたっては、先ず、パワーモジュール16のステータ接続部20をケース12側の電力供給端子挿通孔39に、パワーモジュール16のセンサ接続部23をケース12側のコネクタ挿通孔40にそれぞれ挿通させつつ、各パワーモジュール支持部37に板状基部18を載置し、各パワーモジュール取付ねじ35によってパワーモジュール16をケース12に締結固定する。
【0037】
次いで、図5,10に示したように、パワーモジュール16に対して制御モジュール17を組み付ける。具体的には、制御モジュール17の各スルーホール61にパワーモジュール16側の各接続端子60を挿通させつつ、制御モジュール17のうち各切欠部17cの外縁部をパワーモジュール16側の各保持片57のうち爪部59のガイド面59bにそれぞれ当接させる。なお、制御モジュール17の各スルーホール61にパワーモジュール16側の各接続端子60を挿通させるにあたっては、各接続端子60のうちケース12の開口端よりも制御モジュール17側に向けて突出する端部を周知の櫛歯状治具(図示せず)によって所定位置に位置決めするとよい。
【0038】
その上で、制御モジュール17をパワーモジュール16側に向かって押圧することにより、各保持片57のうち爪部59のガイド面59bと制御モジュール16の端縁との傾斜面接触をもって各保持片57が弾性的に撓み変形し、各保持片57は、爪部59と制御モジュール支持部53との間の位置に制御モジュール17を受容した上で、上記撓み変形に基づく復元力によって制御モジュール17のカバー対向面17bに爪部59の係合面59aを係合させることになる。その結果、制御モジュール17は、各スナップフィット部55によってケース12の開口端12bよりもカバー15側となる位置にいわゆるスナップフィット方式をもって位置決め支持される。
【0039】
その後に、パワーモジュール16側の各接続端子60と制御モジュール17側の各スルーホール61とを半田によって電気的に接続する。なお、パワーモジュール16側の各接続端子60と制御モジュール17側の各スルーホール61とを電気的に接続する半田は、いわゆるフローソルダリング方式により、制御モジュール17のうちカバー対向面17aの所定位置に付着させることになる。その上で、ケース12のシール溝46に液状またはペースト状の接着剤54を塗布し、その接着剤54にカバー15側の突縁部45を没入させつつ当該カバー15によってケース12の開口を閉蓋する。
【0040】
そして、このようにケース12の開口をカバー15によって閉蓋したならば、各カバー取付ねじ34により、カバー15とケース12とを締結固定した上で、加熱によって接着剤54を硬化させることにより、モータ制御装置3の組立が完了することになる。
【0041】
ここで、パワーモジュール16側の各接続端子60と制御モジュール17側の各スルーホール61とを電気的に接続する際には、制御モジュール17のカバー対向面17bに半田を付着させるのに先立って、半田をつけやすくするためのフラックスをカバー対向面17bのうち半田を付着させるべき領域に塗布することになる。
【0042】
具体的には図11に示すように、まず、パワーモジュール16および制御モジュール17を上述したように組み付けたケース12を、制御モジュール17のカバー対向面17bが下向きとなるように支持するとともに、ケース12の開口端と制御モジュール17との間の位置に配置したマスク板51をもってケース12のシール溝46を覆った状態で、制御モジュール17の下方側となる位置に設けたスプレーノズル62から霧状のフラックスFを噴射することにより、制御モジュール17のカバー対向面17bのうち半田を付着させるべき領域にフラックスFを塗布する。なお、図11では、外部接続コネクタ19から延びる接続端子60と電気的に接続すべく制御モジュール17の一端縁に設けられたスルーホール61の周縁にフラックスFを塗布する例を図示しているが、他のスルーホール61の周縁にも同様にフラックスFが塗布されることになる。
【0043】
つまり、本実施の形態では、ケース12の開口端よりもカバー15側となる位置、すなわちケース12側のシール溝46よりもスプレーノズル62に近接する位置に制御モジュール17を設けている上、カバー15のうち制御モジュール17を収容することになる膨出部43とシール溝46に挿入される突縁部45との間にフランジ部44を形成することにより、制御モジュール17の外周縁とシール溝46とをフランジ部44の延出方向で離間させているため、スプレーノズル62から噴射したフラックスFのシール溝46への付着が抑制されることになる。
【0044】
しかも、フラックスFの塗布時において、ケース12側のシール溝46を覆うマスク板51をケース12の開口端と制御モジュール17との間の位置に配置することにより、マスク板51と制御モジュール17との間の隙間Cがスプレーノズル62側から見てシール溝46とは反対側を指向することになるため、スプレーノズル62から噴射したフラックスFが隙間Cを介してシール溝46に付着することも抑制される。
【0045】
したがって、本実施の形態によれば、シール溝46に付着したフラックスFによって接着剤54の硬化が阻害されることを抑制し、ケース12とカバー15との接着性の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0046】
7…筐体
12…ケース
15…カバー
16…パワーモジュール(第2回路基板)
17…制御モジュール(第1回路基板)
43…膨出部(第1回路基板収容部)
44…フランジ部
45…突縁部
46…シール溝(受容溝)
46a…シール溝の外周側の内側面
46b…シール溝の内周側の内側面
54…接着剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1回路基板と第2回路基板とを筐体の内部に重合配置してなる電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電子制御装置として例えば特許文献1に記載のものが提案されている。特許文献1に記載の電子制御装置は、自動車の制動力を運転者の操作に基づいて制御するブレーキ制御装置であって、第1回路基板としての制御基板が着座する着座面と第2回路基板としてのパワー基板が着座する着座面とを段違いに形成したケースに、上記パワー基板と制御基板とが所定の間隔を隔てて重合した状態で固定されているとともに、上記ケースの開口を閉蓋するカバーが、上記ケースの開口端に塗布された接着剤をもってそのケースに固定されている。
【0003】
また、上記制御基板には複数のスルーホールが貫通形成されており、上記パワー基板を含む他の電気部品の端子がそのスルーホールを挿通し、上記制御基板のうちカバー側の面に付着した半田をもって上記端子と上記制御基板とが電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−132103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記制御基板のような回路基板に形成したスルーホールと他の電気部品の端子とを半田によって電気的に接続する際には、一般に、上記スルーホールに上記端子を挿通させた後、半田が付きやすくなるように上記回路基板にフラックスを塗布し、その上で半田付けを施すことになる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の電子制御装置では、上記制御基板に形成されたスルーホールに他の電気部品の端子を挿通させつつ、その制御基板を上記ケース内に収容した状態で当該制御基板に上記フラックスを塗布することになるため、上記ケースの開口端にフラックスが付着してしまい、上記接着剤による上記ケースと上記カバーとの接着性が低下してしまう虞があった。
【0007】
本発明は以上のような課題に鑑みてなされたものであって、上記ケースの開口端へのフラックスの付着を抑制することにより、上記ケースと上記カバーとの接着性の低下を抑制した電子制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、特に、上記第1回路基板が、上記ケースの開口端よりも上記カバー側の位置で上記ケースによって支持されて上記カバー内に収容されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
したがって、本発明によれば、上記第1回路基板が上記ケースの開口端よりも上記カバー側の位置に設けられているため、上記第1回路基板のうちカバー側の面にフラックスを塗布する際に、上記ケースの開口端へのフラックスの付着が抑制され、上記ケースと上記カバーとの接着性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態として、本発明にかかる電子制御装置が適用されたアクチュエータユニットを示す分解斜視図。
【図2】図1におけるアクチュエータユニットを別の角度から見た分解斜視図。
【図3】図2におけるモータ制御装置を分解して示す斜視図。
【図4】図2におけるモータ制御装置のA−A線に沿った断面図。
【図5】図2におけるモータ制御装置からカバーを取り除いた状態を示す平面図。
【図6】図3におけるモータ制御装置のケースを単体で示す斜視図。
【図7】図4におけるシール溝を拡大して示す断面図。
【図8】図3におけるパワーモジュールを単体で示す斜視図であって、そのパワーモジュールを部品実装面側から見た図。
【図9】図8に示すパワーモジュールを制御モジュール対向面側から見た斜視図。
【図10】図9におけるスナップフィット部を拡大して示す拡大斜視図。
【図11】制御モジュールに対するフラックスの塗布方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜11は本発明の好適な実施の形態を示す図であって、そのうち図1は本発明にかかる電子制御装置が適用されたアクチュエータユニットを示す分解斜視図、図2は図1に示すアクチュエータユニットを別の角度から見た分解斜視図である。また、図3は電子制御装置の分解斜視図、図4は図2に示す電子制御装置のA−A線に沿った断面図、図5はカバーを取り除いた状態の電子制御装置を示す平面図である。
【0012】
図1,2に示すアクチュエータユニット1は、自動車に搭載される電動式のブレーキ倍力装置に用いられるものであって、三相交流電力によって駆動され、ブレーキ液の液圧を制御する電動アクチュエータである電動モータ2と、運転者によるブレーキ操作や自動車の運転状態に基づいて電動モータ2を駆動制御する電子制御装置としてのモータ制御装置3と、を備えている。なお、図示は省略しているが、電動モータ2は、いわゆるボールねじ機構により、ブレーキ液の液圧を制御する図示しないピストンを進退移動させることになる。
【0013】
電動モータ2のうちアクチュエータハウジングであるモータハウジング4の外面には、当該電動モータ2の軸方向に延びる一対の台座部5が電動モータ2の軸直角方向で互いに所定の間隔を隔てて形成されている。両台座部5のうち長手方向の両端部にはねじ孔6aが穿設された円形の着座面6がそれぞれ突出形成されている一方、モータ制御装置3の筐体7のうち後述するケース12にはモータハウジング4側の各着座面6にそれぞれ着座する4つの脚部8が形成されている。そして、筐体7側の各脚部8を挿通しつつモータハウジング4側の各ねじ孔6aに螺合する4つの制御装置取付ねじ9により、モータ制御装置3が電動モータ2に固定されることになる。
【0014】
他方、モータハウジング4のうち両台座部5同士の間の位置には略偏平角筒状の筒状壁10が突出形成され、モータ制御装置3の筐体7をモータハウジング4に固定したときに、モータ制御装置3側のステータ接続部20およびセンサ接続部23が、筒状壁10の内周側に開口する開口部11を通じてモータハウジング4内に臨むようになっている。そして、ステータ接続部20がモータハウジング4内のステータ(図示せず)に、センサ接続部23がモータハウジング4内の回転位置センサ(図示せず)にそれぞれ接続されることになる。なお、上記回転位置センサとは、周知のように、モータハウジング4内に設けられたロータ(図示せず)の回転位置を検出するものであって、当該回転位置センサの出力信号はモータ制御装置3による電動モータ2の駆動制御に供されることになる。また、筒状壁10の先端には閉ループ状の溝部10aが形成されており、この溝部10aに配置されるシール部材(図示せず)がケース12の底壁13に圧接することにより、モータハウジング4の内外をシールするようになっている。
【0015】
図1,2のほか図3に示すように、モータ制御装置3の筐体7は、底壁13と周壁14を有し、上方に向けて開口する平面視略矩形状の金属製のケース12と、そのケース12の開口を閉蓋する平面視略矩形状の金属製のカバー15と、を備えていて、当該筐体7の内部には、カバー15側から第1回路基板である制御モジュール17,第2回路基板であるパワーモジュール16の順で両者16,17が所定の間隔を隔てて積層配置されている。そして、筐体7は、ケース12の底壁13をモータハウジング4側に向けた姿勢でモータハウジング4に固定されるようになっている。
【0016】
図3のほか図4に示すように、カバー15は、金属板を略皿状にプレス成形してなるものであって、制御モジュール17を収容すべくケース12とは反対側に向けて膨出した第1回路基板収容部としての膨出部43と、その膨出部43の外周縁から外周側に向けて延出するフランジ部44と、そのフランジ部44の外周縁を下向き(ケース12側)に曲折してなる突縁部45と、を備えている。
【0017】
他方、図3のほか図6に単体で示すように、ケース12はいわゆるアルミダイカスト法をもって型成形されたものであって、当該ケース12のうち平面視略矩形状の周壁14の一辺には、パワーモジュール16側の後記の外部接続コネクタ19を受容する開口部36が上方側から切欠形成されている。開口部36は外部接続コネクタ19の根元部に形成されたフランジ部19aに合致する形状を呈しており、当該開口部36の開口縁には、シール性を有する接着材(図示せず)によってフランジ部19aが接着固定されている。
【0018】
ケース12のうちフランジ部19aを含む周壁14の開口端には、閉ループ状に連続したシール溝46が受容溝として形成されている。なお、図3,6の符号12aは、ケース12の外面に形成された冷却用のフィンを示しており、図6の符号41は、周壁14に貫通形成され、空気は通すが水は通さない呼吸フィルタ42(図1,2参照)が取り付けられた呼吸孔を示している。
【0019】
図7に拡大して示すように、シール溝46は、シール溝46の外周側を囲繞する外周側の側壁52と、シール溝46の内周側を囲繞する内周側の側壁53との間に形成されており、当該シール溝46内にはシール性を有する熱硬化性の接着剤54が塗布されている。そして、接着剤54内にカバー15側の突条部45が没入している。つまり、詳しくは後述するが、液状またはペースト状の接着剤54をシール溝46内に塗布するとともに、カバー15側の突条部45を接着剤54に没入させ、その状態で接着剤54を硬化させることにより、カバー15とケース12とを接着固定しつつ両者12,15の間を液密にシールしている。
【0020】
また、シール溝46は、当該シール溝46のうち外周側の側壁52をもって構成された外周側の内側面46aの高さh1が、シール溝46のうち内周側の側壁53をもって構成された内周側の内側面46bの高さh2よりも高くなるように形成されている。なお、ここでいう両内側面46a,46bの高さh1,h2とは、溝部46の底面46cから両内側面46a,46bの上端までの距離を意味している。これにより、硬化前の接着剤54内にカバー15側の突条部45を没入させるのに伴い、シール溝46から接着剤54が溢れ出た場合に、シール溝46から溢れ出た接着剤54が、カバー15のフランジ部44とケース12の内周側の側壁53との間の空隙Gを介してカバー15内へ流れるようになっている。
【0021】
すなわち、筐体7の外部に接着剤54が溢れ出た状態でその接着剤54が硬化してしまうと、その溢れ出た部分を起点として接着剤54の剥がれが生じ、筐体7のシール性が低下する虞があるため、硬化前にシール溝46から溢れ出た接着剤54を筐体7の内部に流すようにすることでこれを抑制している。同時に、シール溝46から筐体7の内部に溢れ出た接着剤54により、ケース12のうち内周側の側壁53の先端とカバー15のフランジ部44とを接着することで、ケース12とカバー15とをより強固に接着固定しているとともに、ケース12とカバー15との間のシール性を向上させている。
【0022】
また、図5,6に示すように、シール溝46のうち長手方向の所定位置、具体的にはシール溝46の四隅近傍の位置には、両側壁52,53の少なくとも一方を他方から離間する方向へ向けて凸となるように湾曲させることにより、部分的に一般部よりも幅広となった拡幅部47がそれぞれ形成されているとともに、それらの各拡幅部47の略中央部にはボス部50がそれぞれ突出形成されている。
【0023】
そして、各ボス部50の先端面にカバー15側のフランジ部44が着座している一方、カバー15側のフランジ部44のうち各ボス部51に対応する位置には取付孔44a(図3参照)がそれぞれ貫通形成されていて、それらの各取付孔44aをそれぞれ挿通しつつボス部51の内周側に螺合する複数のカバー取付ねじ34により、カバー15とケース12とが締結固定されている。つまり、各ボス部51の先端面にフランジ部44が着座することにより、カバー15とケース12とが両者の接近離間方向で位置決めされていて、その結果、図7に示すように、カバー15のフランジ部44とケース12の内周側の側壁53との間に空隙Gが形成されている。
【0024】
さらに、ケース12の底壁13には、当該底壁13のうち四隅近傍の位置からカバー15側に向けてそれぞれ突出する略円柱状のパワーモジュール支持部37と、底壁13のうちパワーモジュール16側の後述するスイッチング素子実装領域A(図8参照)に対応する位置からカバー15側に向けて突出する平面視略矩形状の突出部たるブロック状突部38と、がそれぞれ形成されているとともに、底壁13とブロック状突部38とのなすコーナー部に電力供給端子挿通孔39が、ブロック状突部38と周壁14とのなすコーナー部にコネクタ挿通孔40がそれぞれ貫通形成されている。
【0025】
他方、パワーモジュール16は、図8に示すように、樹脂材料をもって略平板状に形成され、金属製のバスバーが多数埋設された板状基部18と、その板状基部18のうちケース12の底壁13側を向く部品実装面18aに実装された種々の電子部品と、板状基部18の一端縁に一体に形成されているとともに、ケース12側の開口部36を通じて外部に臨んでいて(図2参照)、外部の電子機器と信号および電力を授受する外部接続コネクタ19と、板状基部18のうち部品実装面18aの略中央部に突設され、電動モータ2のステータ(図示せず)と電気的に接続されるステータ接続部20と、板状基部18の部品実装面18aのうちステータ接続部20を挟んで一方側の端縁に突設され、上述した回転位置センサ(図示せず)と電気的に接続されるセンサ接続部23と、を備えている。
【0026】
ステータ接続部20は、板状基部18のうち外部接続コネクタ19が形成された一端縁に対して直交する方向に沿って整列配置された3つの電力供給端子21と、板状基部18の部品実装面18aから突出形成され、各電力供給端子21の根元部を被覆する断面略偏平矩形状の被覆部22と、を備えている。一方、センサ接続部23は、各電力供給端子21の整列方向を長手方向とした断面略偏平矩形状のコネクタハウジング内に複数の端子(図示せず)を収容することで構成されている。
【0027】
次いで、板状基部18の部品実装面18aに実装された種々の電子部品について具体的に説明するに、部品実装面18aのうちステータ接続部20とセンサ接続部23との間の位置には平面視略矩形状の突条部18bによって囲われたスイッチング素子実装領域Aが発熱部品実装領域として形成されているとともに、そのスイッチング素子実装領域Aには、発熱部品である6つのスイッチング素子24が実装され、これらの各スイッチング素子24により、外部接続コネクタ19を介して供給される直流電力を3相交流電力に変換する周知のインバータ回路が構成されている。このインバータ回路の出力である3相交流電力は、ステータ接続部20を介して電動モータ2に供給され、その電動モータ2を回転駆動する。なお、本実施の形態では、各スイッチング素子24としていわゆるMOSFET(電界効果トランジスタ)を用いている。
【0028】
そのほか、板状基部18の部品実装面18aには、当該部品実装面18aの面直角方向に突出する略円柱状に形成された一対の第1電解コンデンサ25、同じく部品実装面18aの面直角方向に突出した略円柱状を呈していて、且つ両第1電解コンデンサ25よりも軸方向の長さが短い一対の第2電解コンデンサ26、複数のセラミックコンデンサ27、電流を検出するための複数のシャント抵抗28、回路保護のための一対のリレー29、第1,第2電解コンデンサ25,26とともにノイズ除去のためのノイズフィルタ部品として機能するノーマルモードコイル30およびコモンモードコイル31がそれぞれ実装されている。
【0029】
そして、パワーモジュール16は、ステータ接続部20をケース12側の電力供給端子挿通孔39に、センサ接続部23をケース12側のコネクタ挿通孔40にそれぞれ挿通させつつ、各パワーモジュール支持部37およびブロック状突部38に板状基部18を載置した状態で、板状基部18に貫通形成された複数の取付孔32をそれぞれ挿通して各パワーモジュール支持部37およびブロック状突部38にそれぞれ形成されたねじ孔37a,38aに螺合する複数のパワーモジュール取付ねじ35により、ケース12に対して締結固定されている。その結果、パワーモジュール16の板状基部18がケース12の底壁13に対して所定の間隔を隔てた位置に保持されているとともに、その板状基部18のうちスイッチング素子実装領域Aに実装された各スイッチング素子24がブロック状突部38の上面に当接している。また、図示は省略しているが、ブロック状突部38の上面と各スイッチング素子24との間には熱伝導グリースが介在していて、各スイッチング素子24が発した熱は熱伝導グリースを介してブロック状突部38へ伝達されるようになっている。なお、熱伝導グリースは、弾性を有するシート状の熱伝導体(例えば熱伝導シート等)でも構わない。
【0030】
また、図3,9に示すように、板状基部18のうち部品取付面18aとは反対側の制御モジュール対向面18cには、当該制御モジュール対向面18aの外周縁部から面直角方向に突出して制御モジュール17をいわゆるスナップフィット方式で係合保持するスナップフィット部55が複数形成されているとともに、パワーモジュール16と制御モジュール17とを電気的に接続するための接続端子60が複数突設されている。
【0031】
図10は、制御モジュール17を係合保持している状態のスナップフィット部55を拡大して示す斜視図である。なお、図10では各スナップフィット部55のうちの一つのみを図示しているが、他のスナップフィット部55も同様に構成されている。
【0032】
図10に示すように、スナップフィット部55は、制御モジュール17のうちパワーモジュール16側のパワーモジュール対向面17aが着座する略円柱状の制御モジュール支持部56と、その制御モジュール支持部56の近傍に設けられた保持片57と、を備えている。保持片57は、板状基部18の制御モジュール対向面18cから突出する断面略偏平状の柱状基部58の先端に、制御モジュール17側へ突出する爪部59を形成してなるものであって、爪部59の下面は制御モジュール17に対する係合面59aとして下向きに傾斜して形成されている一方、爪部59の上面は滑らかに湾曲しつつ上向きに傾斜したガイド面59bとして形成されている。
【0033】
そして、制御モジュール支持部56に制御モジュール17のパワーモジュール対向面17aが着座しているとともに、その制御モジュール17のカバー対向面17bに爪部59の係合面59aが係合している。これにより、制御モジュール17は、図10のほか図4に示すように、パワーモジュール16側の板状基部18に対して面直角方向で所定の間隔を隔てた位置、具体的にはケース12の開口端よりもカバー15側の位置で、各スナップフィット部55によって位置決め保持され、カバー15の膨出部43内に収容されている。つまり、制御モジュール17は、パワーモジュール17を介してケース12に支持されている。
【0034】
図3,4に示すように、制御モジュール17は、ガラスエポキシ樹脂に代表されるような非導電性樹脂材料からなる基板の表裏両面にそれぞれ導体パターン(図示せず)を形成し、その上に多数の電子部品(図示せず)を実装することで構成されたものであって、当該制御モジュール17の外周縁のうち各保持片57に対応する位置には、それらの各保持片57のうち柱状基部58の断面形状に合致する形状の切欠部17cがそれぞれ形成されている。すなわち、制御モジュール17は、各保持片57の柱状基部58を各切欠部17cにそれぞれ受容することにより、当該制御モジュール17に平行な方向で位置決めされるようになっている。
【0035】
また、図3,5に示すように、制御モジュール17のうちパワーモジュール16側の各接続端子60に対応する位置には、それらの各接続端子60が挿通するスルーホール61がそれぞれ貫通形成されている。そして、パワーモジュール16側の各接続端子60は、各スルーホール61を挿通して制御モジュール17からカバー15側へ突出し、制御モジュール17のカバー対向面17bに付着した半田(図示せず)をもって各スルーホール61にそれぞれ電気的に接続されている。これにより、制御モジュール17は、運転者によるブレーキ操作や自動車の運転状態にかかる情報を外部接続コネクタ19および各接続端子52を介して入力するとともに、その情報に基づいて生成した駆動指令信号を各接続端子52を介して各スイッチング素子24へ出力し、もって各スイッチング素子24をスイッチング動作させて電動モータ2を駆動制御することになる。
【0036】
次に、以上のように構成したモータ制御装置3の組立手順について説明する。モータ制御装置3を組み立てるにあたっては、先ず、パワーモジュール16のステータ接続部20をケース12側の電力供給端子挿通孔39に、パワーモジュール16のセンサ接続部23をケース12側のコネクタ挿通孔40にそれぞれ挿通させつつ、各パワーモジュール支持部37に板状基部18を載置し、各パワーモジュール取付ねじ35によってパワーモジュール16をケース12に締結固定する。
【0037】
次いで、図5,10に示したように、パワーモジュール16に対して制御モジュール17を組み付ける。具体的には、制御モジュール17の各スルーホール61にパワーモジュール16側の各接続端子60を挿通させつつ、制御モジュール17のうち各切欠部17cの外縁部をパワーモジュール16側の各保持片57のうち爪部59のガイド面59bにそれぞれ当接させる。なお、制御モジュール17の各スルーホール61にパワーモジュール16側の各接続端子60を挿通させるにあたっては、各接続端子60のうちケース12の開口端よりも制御モジュール17側に向けて突出する端部を周知の櫛歯状治具(図示せず)によって所定位置に位置決めするとよい。
【0038】
その上で、制御モジュール17をパワーモジュール16側に向かって押圧することにより、各保持片57のうち爪部59のガイド面59bと制御モジュール16の端縁との傾斜面接触をもって各保持片57が弾性的に撓み変形し、各保持片57は、爪部59と制御モジュール支持部53との間の位置に制御モジュール17を受容した上で、上記撓み変形に基づく復元力によって制御モジュール17のカバー対向面17bに爪部59の係合面59aを係合させることになる。その結果、制御モジュール17は、各スナップフィット部55によってケース12の開口端12bよりもカバー15側となる位置にいわゆるスナップフィット方式をもって位置決め支持される。
【0039】
その後に、パワーモジュール16側の各接続端子60と制御モジュール17側の各スルーホール61とを半田によって電気的に接続する。なお、パワーモジュール16側の各接続端子60と制御モジュール17側の各スルーホール61とを電気的に接続する半田は、いわゆるフローソルダリング方式により、制御モジュール17のうちカバー対向面17aの所定位置に付着させることになる。その上で、ケース12のシール溝46に液状またはペースト状の接着剤54を塗布し、その接着剤54にカバー15側の突縁部45を没入させつつ当該カバー15によってケース12の開口を閉蓋する。
【0040】
そして、このようにケース12の開口をカバー15によって閉蓋したならば、各カバー取付ねじ34により、カバー15とケース12とを締結固定した上で、加熱によって接着剤54を硬化させることにより、モータ制御装置3の組立が完了することになる。
【0041】
ここで、パワーモジュール16側の各接続端子60と制御モジュール17側の各スルーホール61とを電気的に接続する際には、制御モジュール17のカバー対向面17bに半田を付着させるのに先立って、半田をつけやすくするためのフラックスをカバー対向面17bのうち半田を付着させるべき領域に塗布することになる。
【0042】
具体的には図11に示すように、まず、パワーモジュール16および制御モジュール17を上述したように組み付けたケース12を、制御モジュール17のカバー対向面17bが下向きとなるように支持するとともに、ケース12の開口端と制御モジュール17との間の位置に配置したマスク板51をもってケース12のシール溝46を覆った状態で、制御モジュール17の下方側となる位置に設けたスプレーノズル62から霧状のフラックスFを噴射することにより、制御モジュール17のカバー対向面17bのうち半田を付着させるべき領域にフラックスFを塗布する。なお、図11では、外部接続コネクタ19から延びる接続端子60と電気的に接続すべく制御モジュール17の一端縁に設けられたスルーホール61の周縁にフラックスFを塗布する例を図示しているが、他のスルーホール61の周縁にも同様にフラックスFが塗布されることになる。
【0043】
つまり、本実施の形態では、ケース12の開口端よりもカバー15側となる位置、すなわちケース12側のシール溝46よりもスプレーノズル62に近接する位置に制御モジュール17を設けている上、カバー15のうち制御モジュール17を収容することになる膨出部43とシール溝46に挿入される突縁部45との間にフランジ部44を形成することにより、制御モジュール17の外周縁とシール溝46とをフランジ部44の延出方向で離間させているため、スプレーノズル62から噴射したフラックスFのシール溝46への付着が抑制されることになる。
【0044】
しかも、フラックスFの塗布時において、ケース12側のシール溝46を覆うマスク板51をケース12の開口端と制御モジュール17との間の位置に配置することにより、マスク板51と制御モジュール17との間の隙間Cがスプレーノズル62側から見てシール溝46とは反対側を指向することになるため、スプレーノズル62から噴射したフラックスFが隙間Cを介してシール溝46に付着することも抑制される。
【0045】
したがって、本実施の形態によれば、シール溝46に付着したフラックスFによって接着剤54の硬化が阻害されることを抑制し、ケース12とカバー15との接着性の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0046】
7…筐体
12…ケース
15…カバー
16…パワーモジュール(第2回路基板)
17…制御モジュール(第1回路基板)
43…膨出部(第1回路基板収容部)
44…フランジ部
45…突縁部
46…シール溝(受容溝)
46a…シール溝の外周側の内側面
46b…シール溝の内周側の内側面
54…接着剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側に向けて開口するケースとそのケースの開口を閉蓋するカバーとからなる筐体の内部に、上記カバー側から第1回路基板、第2回路基板の順でそれらの両回路基板が重合配置され、上記第1回路基板のうち上記カバー側の面に付着した半田によって当該第1回路基板が上記第2回路基板に対して電気的に接続されているとともに、上記ケースの開口端に塗布された接着剤をもって上記ケースと上記カバーとが接着固定されている電子制御装置において、
上記第1回路基板は、上記ケースの開口端よりも上記カバー側の位置で上記ケースによって支持されて上記カバー内に収容されていることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
上記ケースの開口端に当該開口端の長手方向に沿った受容溝が形成され、その受容溝内に上記接着剤が塗布されている一方、
上記カバーは、上記ケースとは反対側に向けて膨出して上記第1回路基板を収容する第1回路基板収容部と、その第1回路基板収容部の外周縁から外周側に向けて延出するフランジ部と、上記フランジ部の外周縁に曲折成形されて上記受容溝内の接着剤に没入する突縁部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
上記受容溝のうち外周側の内側面が、上記受容溝のうち内周側の内側面よりも高く形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項1】
一方側に向けて開口するケースとそのケースの開口を閉蓋するカバーとからなる筐体の内部に、上記カバー側から第1回路基板、第2回路基板の順でそれらの両回路基板が重合配置され、上記第1回路基板のうち上記カバー側の面に付着した半田によって当該第1回路基板が上記第2回路基板に対して電気的に接続されているとともに、上記ケースの開口端に塗布された接着剤をもって上記ケースと上記カバーとが接着固定されている電子制御装置において、
上記第1回路基板は、上記ケースの開口端よりも上記カバー側の位置で上記ケースによって支持されて上記カバー内に収容されていることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
上記ケースの開口端に当該開口端の長手方向に沿った受容溝が形成され、その受容溝内に上記接着剤が塗布されている一方、
上記カバーは、上記ケースとは反対側に向けて膨出して上記第1回路基板を収容する第1回路基板収容部と、その第1回路基板収容部の外周縁から外周側に向けて延出するフランジ部と、上記フランジ部の外周縁に曲折成形されて上記受容溝内の接着剤に没入する突縁部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
上記受容溝のうち外周側の内側面が、上記受容溝のうち内周側の内側面よりも高く形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−30518(P2013−30518A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163778(P2011−163778)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]