説明

電子機器の固定構造

【課題】告知放送用の受信機の如き電子機器を、様々な固定状態に簡易に変更することができ、不要部品を発生させず、受信機の販売コストを低減できる、電子機器の固定構造を提供する。
【解決手段】受信機1を設置面に固定する固定構造であって、受信機1を設置面に固定する固定板20を備え、固定板20には、受信機1に対して係脱自在に係止されることにより、固定板20に対して受信機1を着脱させる係止突起を設け、設置壁に取り付けた固定板20の係止突起に対して、受信機1を当該受信機1の背面において係止することにより、受信機1を設置壁に沿わせた状態で固定する壁面平行状態と、床面Gに載置した固定板20の係止突起に対して、受信機1を当該受信機1の底面において係止することにより、受信機1を床面Gに対して起立させた状態で固定する直立状態とを取り得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
センターから複数の住戸に対して各種の告知放送を行うための告知放送システムが普及している。この告知放送システムは、概略的に、センター側に配置したセンター装置と、各住戸内に設置した受信機とを、CATV等の伝送線路を介して相互に接続して構成されている。そして、地域のイベント開催又はFMラジオ放送等の一般放送や、火災や地震が発生した時の緊急放送を行う際、センター装置は告知放送信号を伝送線路を介して送信し、この告知放送信号を受信機が受信して、告知放送をスピーカにて音声出力する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような受信機を住戸内に固定する固定状態としては、壁面に固定する形態と、床面や卓上に載置する形態を挙げることができる。従来、壁面に固定する形態の場合には、最初に平板状の専用の取付ステーを取り付けネジにて壁面に固定し、次いで取付ステーに対して受信機を係止させることで、この取付ステーを介して受信機を壁面に固定していた。また、床面や卓上に載置する形態の場合には、取付ステー等の固定手段を用いることなく、単に床面や卓上に受信機を直接置いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−8753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特に近年の受信機には、受信機に録音された告知放送の再生を指示するための再生ボタンや、告知放送の録音状態を示す表示灯のように、様々な操作手段や表示手段が設けられており、床面や卓上に受信機を置いた場合には、これら操作手段や表示手段の視認性が低下する場合もあった。このような課題を解消するためには、受信機を床面や卓上に対して直立させた状態で固定するためのスタンドを利用することが考えられる。具体的には、スタンドを取り付けネジ等によって受信機に取り付け、次いで、このスタンドを床面等に載置することによって、受信機を床面等に固定する。
【0006】
しかし、従来の固定構造は、壁面に固定する場合と、床面等に固定する場合とで、取付ステーとスタンドを相互に取り替えなければならず、この取り替え作業が面倒であった。また、従来の固定構造は、壁面に固定する形態の場合には、スタンドを用いず、床面や卓上に載置する形態の場合には、取付ステーを用いないため、各固定状態によって発生する不要部品の管理が問題となっていた。
【0007】
また、従来の受信機の固定構造は、壁面固定用の取付ステーとは別に、床面固定用のスタンドを受信機に付属させて販売する必要が生じるため、受信機の販売コストの上昇を招いていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、告知放送用の受信機の如き電子機器を、様々な固定状態に簡易に変更することができ、不要部品を発生させず、受信機の販売コストを低減できる電子機器の固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の電子機器の固定構造は、電子機器を設置面に固定するための固定構造であって、前記電子機器と前記設置面の間に介在されるものであって、当該電子機器を当該設置面に固定するための固定板を備え、前記固定板には、前記電子機器に対して係脱自在に係止されることにより、当該固定板に対して前記電子機器を着脱させる係止手段を設け、鉛直方向に略沿った設置面に取り付けた前記固定板の前記係止手段に対して、前記電子機器を当該電子機器の背面において係止することにより、当該電子機器を当該設置面に沿わせた状態で固定する第1固定状態と、水平方向に略沿った設置面に載置した前記固定板の前記係止手段に対して、前記電子機器を当該電子機器の底面において係止することにより、当該電子機器を当該設置面に対して起立させた状態で固定する第2固定状態とを取り得る。
【0010】
請求項2に記載の電子機器の固定構造は、請求項1に記載の電子機器の固定構造において、前記第1固定状態における前記電子機器の正面形状及び前記固定板の正面形状を鉛直方向を長手方向とする長方形状とし、当該電子機器の正面形状に対して当該固定板の正面形状を同一又は小さくすることにより、当該第1固定状態においては当該固定板を当該電子機器の正面から見て非露出状とし、前記第2固定状態における前記電子機器の底面形状を長方形状とし、前記第2固定状態においては当該電子機器の底面形状の長手方向に前記固定板の長手方向が沿うように当該固定板に当該電子機器を配置し、当該固定板の長手方向の寸法を当該電子機器の底面形状の長手方向の寸法に略適合させることにより、当該第2固定状態においては当該固定板を当該電子機器の上面から見て非露出状とする。
【0011】
請求項3に記載の電子機器の固定構造は、請求項2に記載の電子機器の固定構造において、前記固定板は、前記第2固定状態において前記電子機器の底面と対向する当該固定板の側面に溝部を備え、当該第2固定状態においては当該溝部によって前記電子機器の底部における短手側部を狭持する。
【0012】
請求項4に記載の電子機器の固定構造は、請求項1から3のいずれか一項に記載の電子機器の固定構造において、電子機器は、送信手段から送信された告知放送信号を受信する受信機である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の電子機器の固定構造によれば、第1固定状態においては、鉛直方向に略沿った設置面に取り付けた固定板に対して、電子機器を当該電子機器の背面において係止でき、第2固定状態においては、水平方向に略沿った設置面に載置した固定板に対して、電子機器を当該電子機器の底面において係止できるので、1台の固定板により、電子機器を設置面に沿わせた状態と、電子機器を起立させた状態のいずれにおいても、電子機器を設置面に固定することができる。また、固定板に電子機器を着脱させる係止手段を設けることで、受信機の固定状態を簡易に変更できる。また、この固定板を用いることで、各固定状態に応じて複数の部品を用いる必要がないため、各固定状態において使用されない部品を発生させない。また、この固定板を用いることで、受信機の部品数を減らすことができるので、受信機の販売コストを低減できる。
【0014】
請求項2に記載の電子機器の固定構造によれば、第1固定状態において、電子機器の正面形状に対して固定板の正面形状を同一又は小さくすることにより、当該固定板を当該電子機器の正面から見て非露出状とし、第2固定状態において、固定板の長手方向の寸法を電子機器の底面形状の長手方向の寸法に略適合させることにより、当該固定板を当該電子機器の上面から見て非露出状とすることによって、電子機器の設置形態に関わらず、固定板が利用者から見て目立たないようにすることができ、電子機器の外観を維持することができる。
【0015】
請求項3に記載の電子機器の固定構造によれば、第2固定状態において、固定板の溝部によって電子機器の底部における短手側部を狭持するので、当該狭持する方向への電子機器の移動を拘束でき、受信機を一層強固に固定することができる。
【0016】
請求項4に記載の電子機器の固定構造によれば、表示部や操作部を備えるために設置状況に応じて様々な状態で設置されるニーズがある告知放送用の受信機についても、共通の固定具を用いて様々な状態で設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】受信機を示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は底面図である。
【図2】固定板を示す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は(a)のA−A矢視断面図、(d)は底面図、(e)は(a)のB−B矢視断面図、(f)は背面図である。
【図3】壁面平行状態で固定された受信機を示す斜視図である。
【図4】壁面平行状態で固定された受信機を固定板と共に示す図であり、(a)は背面図、(b)は右側面図、(c)は平面図である。
【図5】壁面平行状態で固定された受信機を固定板と共に示す右側面図である。
【図6】直立状態で固定された受信機を固定板と共に示す斜視図である。
【図7】直立状態で固定された受信機を固定板と共に示す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【図8】直立状態で固定された受信機を固定板と共に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る電子機器の固定構造の実施の形態を詳細に説明する。最初に電子機器の全体構成を説明し、次に固定板を用いた電子機器の固定構造を説明し、最後に本実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。なお、この実施の形態では、固定対象となる電子機器として、告知放送システムのセンター装置から送信された告知放送信号を住戸内で受信して告知放送出力を行う受信機を挙げて説明する。
【0019】
(構成−受信機)
最初に、固定対象となる受信機の基本構成について説明する。図1は受信機を示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は底面図である。図1(a)に示すように、受信機1は、筐体3の内部に図示しない各種の電子部品等を収容して構成されている。この筐体3は、正面カバー3aと背面カバー3bとを組み合わされて構成されている。正面カバー3aと背面カバー3bの接続方法は任意であるが、例えば、正面カバー3aと背面カバー3bは嵌合やネジ留めにて接続することができる。以下では、図1(a)の寸法L1を受信機1(筐体3)の「長さ」、図1(a)の寸法L2を受信機1(筐体3)の「幅」、図1(c)の寸法L3を受信機1(筐体3)の「厚さ」とする。ここでは、受信機1(筐体3)の正面形状は、図1(a)に示すように、長さL1>幅L2となる縦長直方形状に形成されている。
【0020】
この筐体3の正面には、操作部4及び表示部5が設けられている。操作部4としては、具体的には、受信機1に録音された告知放送の再生を指示するための告知再生スイッチ4a、後述するアンテナ17から受信したFMラジオ放送等の再生を指示するためのラジオ再生スイッチ4b、及び放送音量を調節するためのボリュームスイッチ4cが設けられている。表示部5としては、具体的には、電源ON時に点灯する電源表示灯5a、緊急放送時に点灯又は点滅する緊急放送表示灯5b、及び一般放送時に点灯又は点滅する一般放送表示灯5cが設けられている。また、筐体3の正面には、筐体3の内部に設けた図示しないスピーカから出力された音を、当該筐体3の外部に放出するための音響孔6が設けられている。
【0021】
また、図1(b)に示すように、筐体3の背面において、この受信機1に対しては、告知放送信号を受信機1に入力するための同軸ケーブル10が接続される。この同軸ケーブル10は、筐体3の上側に形成された収容空間部7にコネクタ部分が収容されると共に、筐体3の右側に形成された収容空間部8にケーブル部分が収容されることで、筐体3の外部に突出することが防止されている。また、筐体3の背面において、受信機1に対しては、商用電源からの電力を受信機1に供給するための電源コード11が接続される。この電源コード11は、筐体3の左下側に形成された収容空間部9にコネクタ部分及びケーブル部分が収容されることで、筐体3の外部に突出することが防止されている。
【0022】
また、図1(b)に示すように、筐体3の背面において、受信機1に対しては、各種の移報用の信号を出力するための移報用ケーブル13が接続される。この移報用ケーブル13は、筐体3の左上側に形成された収容空間部14にコネクタ部分が収容されている。また、移報用ケーブル13のケーブル部分は、筐体3の上下中央付近に筐体3の幅方向に沿って形成されたガイド部15を通って、収容空間部8に収容されている。このような構造により、移報用ケーブル13が筐体3の外部に突出することが防止されている。なお、これら同軸ケーブル10、電源コード11、及び移報用ケーブル13は、図1(b)以外では図示を省略する。
【0023】
ガイド部15は、小径部15a、中径部15b、及び大径部15cを有する。小径部15aは、筐体3の図示左側に設けられたものであって、少なくとも移報用ケーブル13を挿通可能な径で形成された開口である。中径部15bは、筐体3の図示右側に設けられたものであって、少なくとも同軸ケーブル10を挿通可能な径で形成された開口である。大径部15cは、小径部15aと中径部15bとの相互間に設けられたものであって、中径部15bよりも大きな径を有する開口である。このようなガイド部15を設けたことで、筐体3の図示右側と図示左側との間で、各種の配線を取り回すことが可能になる。ここでは、上述したように、移報用ケーブル13をガイド部15を介して収容空間部8へ取り回している。また、このようなガイド部15を設けたことで、筐体3の図示右側から中央にかけて、あるいは図示左側から中央にかけて、各種の配線を取り回し、大径部15cから筐体3の外部に引き出すことが可能となる。例えば、移報用ケーブル13を小径部15a及び大径部15cを介して筐体3の外部に引き出すことができ、又は同軸ケーブル10を中径部15b及び大径部15cを介して筐体3の外部に引き出すことができる。なお、ガイド部15は、移報用ケーブル13又は同軸ケーブル10を収容するだけでなく、電源コード11も収容できるようにしてもよい。この場合には、ガイド部15は、収容空間部9と連通させて構成する。
【0024】
また、図1(a)に示すように、筐体3には、図示しない電池を収容するための空間部である電池取付部16と、この電池取付部16を開閉自在に覆う電池カバー16aが設けられている。このように電池カバー16aを筐体3の正面に設けることで、電池カバー16aの着脱や電池交換を容易に行うことができる。
【0025】
また、図1(a)、(b)に示すように、筐体3の左側面には、FMラジオ等の電波を受信するためのアンテナ17が設けられている。従って、告知放送がセンター装置から受信できない状況であっても、アンテナ17にてFMラジオ等を受信することができる。
【0026】
また、図1(b)、(c)に示すように、筐体3の背面には複数の係止穴1a、1bが形成されており、筐体3の底面には複数の係止穴1c、1dが形成されている。これら係止穴1a〜1dは、後述する固定板20の係止突起24を係脱自在に係止するための貫通穴である。係止穴1a、1bは、筐体3の重心位置を中心として、上下に対称となる複数箇所に方形状に形成されている。係止穴1c、1dは、筐体3の左右中央位置を中心として、左右対称となる複数箇所に方形状に形成されている。
【0027】
(構成−固定板)
次に、このように構成された受信機1を固定するための固定板20について説明する。図2は固定板20を示す図であり、(a)は正面図(受信機1に対向する側を正面とする)、(b)は右側面図、(c)は(a)のA−A矢視断面図、(d)は底面図、(e)は(a)のB−B矢視断面図、(f)は背面図である。固定板20は、樹脂材にて形成された略板状体であり、受信機1と設置面の間に介在され、受信機1を設置面に固定するものである。
【0028】
この固定板20は、開口部21、上下一対のネジ孔22、23、複数の係止突起24、及び溝部25を備えて構成されている。以下では、図2(a)の寸法L4を固定板20の「長さ」、図2(a)の寸法L5を固定板20の「幅」、図2(b)の寸法L6を固定板20の「厚さ」とする。ここでは、固定板20の長さL4は、上述した受信機1の長さL1に対して同一又は短く、かつ、受信機1の幅L2に対して同一又は短くなるように設定されている。また、固定板20の幅L5は、受信機1の幅L2に対して同一又は短くなるように設定されている。ここでは、固定板20の正面形状は、図2(a)に示すように、長さL4>幅L5となる縦長直方形状に形成されている。
【0029】
開口部21は、受信機1に接続した移報用ケーブル13又は同軸ケーブル10を、受信機1のガイド部15の大径部15cを介して固定板20の外部に引き出すための開口であり、図2(a)、(c)、(f)に示すように、固定板20の上下左右のほぼ中央付近に設けられている。この開口部21は、ガイド部15の大径部15cとほぼ同じ形状(略長方形状)で形成されており、ガイド部15の大径部15cに対応する位置に配置されている。このような構造とすることで、受信機1を後述する壁面平行状態で固定する際には、移報用ケーブル13又は同軸ケーブル10を、筐体3の外部に突出させることなく開口部21を介して壁面の内部に引き込むことができる。
【0030】
上下一対のネジ孔22、23は、受信機1を後述する壁面平行状態で固定する際に、当該壁面にねじ込まれた図示しない取り付けネジを係止させるためのものである。上方のネジ孔22は、ダルマ形状の孔部であり、図示しない取り付けネジの頭部を挿通可能な径の大径部22aと、この大径部22aに対して上方に設けられたものであって図示しない取り付けネジの頭部は挿通不能であるが図示しない取り付けネジの本体部を挿通可能な径の小径部22bとを、相互に連通させて構成されている。下方のネジ孔23は、図示しない取り付けネジの頭部は挿通不能であるが図示しない取り付けネジの本体部を挿通可能な径にて形成されたもので、固定板20の幅方向に沿って長い長孔状として形成されている。
【0031】
複数の係止突起24は、図2(a)、(c)〜(e)に示すように、固定板20の正面に設けられたもので、受信機1を後述する壁面平行状態で固定する際に、受信機1の背面の係止穴1a、1bに係脱自在に係止され、あるいは、受信機1を後述する直立状態で固定する際に、受信機1の底面の係止穴1c、1dに係脱自在に係止されることによって、固定板20に対して受信機1を着脱自在に取り付けるものである。
【0032】
これら複数の係止突起24は、固定板20と同様の樹脂材にて形成された略板状体であり、固定板20の係止穴1a、1bに対応する位置及び形状(側面略L字形状)で、固定板20から受信機1に向けて突出するように形成されており、固定板20の長さ方向に沿って並設されている。また、この複数の係止突起24は、受信機1を後述する壁面平行状態で固定する際に、固定板20の側面に沿った係止突起24の側部を上方に向けて突出させるように配置されている。この固定板20の側面に沿った係止突起24の側部と固定板20との隙間の大きさは任意であるが、係止突起24と係止穴1a〜1dとの係止力を強固にするために、例えば、受信機1の筐体3の板厚の大きさに対応させることが好ましい。この複数の係止突起24と固定板20との接続方法は任意であるが、例えば、複数の係止突起24と固定板20とを樹脂成型にて相互一体に形成される方法がある。ただし、このような接続方法に限らず、複数の係止突起24と固定板20とを接着剤等にて固着する方法がある。ただし、樹脂成型にて形成することで、固定板20の製造が容易になり、固定板20の製造コストを低減できる。
【0033】
また、係止突起24の耐力を向上するため、略板状のリブ材24aが設けられている。このリブ材24aは、固定板20に厚さ方向に沿って配置された係止突起24の側面に対して略直角に配置されている。このリブ材24a及び固定板20、並びにリブ材24a及び係止突起24との接続方法は任意であるが、例えば、リブ材24a及び固定板20、並びにリブ材24a及び係止突起24を一体成型する方法が該当する。この構造によれば、係止突起24は、リブ材24aを備えることによって、係止穴1a、1bに係止したときに固定板20から受ける力に対して強固に抵抗することができる。
【0034】
溝部25は、図2(a)、(c)〜(e)に示すように、固定板20の正面に設けられたもので、受信機1を後述する直立状態で固定する際に、受信機1を固定板20に対して嵌合させるものである。すなわち、上述した複数の係止突起24は、溝部25における、受信機1の底面の係止穴1c、1dに対応する位置に配置されており、受信機1を溝部25に配置することで、係止穴1c、1dに係止突起24を係止させることが可能となる。また、溝部25は、受信機1の底面とほぼ同じ形状(略長方形状)で設けられており、この溝部25に受信機1の底面を配置することで、この底部を溝部25に嵌合させることができる。
【0035】
(固定方法)
次に、受信機1の固定方法について説明する。受信機1の固定状態としては、壁面平行状態、及び直立状態の2つの方法を取り得る。ここで、壁面平行状態とは、受信機1を、鉛直方向に略沿った設置面である設置壁Wに沿わせた状態のことである。また、直立状態とは、受信機1を、水平方向に略沿った設置面である床面Gに沿わせた状態のことである。
【0036】
まず、壁面平行状態での固定について説明する。図3は、壁面平行状態で固定された受信機1を示す斜視図である。図4は、壁面平行状態で固定された受信機1を固定板20と共に示す図であり、(a)は背面図、(b)は右側面図、(c)は平面図である。図5は、壁面平行状態で固定された受信機1を固定板20と共に示す右側面図である(ただし受信機1は想像線にて外形のみを示す)。
【0037】
この壁面平行状態の固定方法では、最初に、固定板20を設置壁Wへ固定する。このため、固定板20の上下一対のネジ孔22、23に、設置壁Wにねじ込まれた図示しない取り付けネジを係止する。具体的には、設置壁Wにねじ込まれた図示しない取り付けネジの頭部を、上方のネジ孔22の大径部22aに挿通させた後、小径部22bに挿通させ、この図示しない取り付けネジを支点に固定板20の鉛直面内での角度を任意に調整する。その後、下方のネジ孔23を介して設置壁Wに図示しない取り付けネジをねじ込むことで、固定板20を設置壁Wに固定する。
【0038】
次に、設置壁Wに取り付けた固定板20の係止突起24に対して、受信機1を当該受信機1の背面の係止穴1a、1bにおいて係止することにより、当該受信機1を当該設置壁Wに沿わせた状態で固定できる。
【0039】
この壁面平行状態では、上述のように、固定板20の長さL4は、上述した受信機1の長さL1に対して同一又は短くなるように設定されており、固定板20の幅L5は、受信機1の幅L2に対して同一又は短くなるように設定されているため、正面から見た場合に、固定板20は受信機1によって完全に覆われることになり、固定板20が非露出状となる。
【0040】
次に、直立状態での固定について説明する。図6は、直立状態で固定された受信機1を固定板20と共に示す斜視図である。図7は、直立状態で固定された受信機1を固定板20と共に示す図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図である。図8は、直立状態で固定された受信機1を固定板20と共に示す正面図である(ただし受信機1は想像線にて外形のみを示す)。
【0041】
この直立状態の固定方法では、最初に、固定板20を床面Gに載置する。例えば、単に固定板20を床面Gに載置してもよく、或いは、ネジ孔22、23を介して固定板20を床面Gに対してネジ留め等してもよい。
【0042】
次に、固定板20に受信機1を固定する。このため、固定板20の上方において、固定板20の係止穴1a、1bと受信機1の係止突起24との位置を合わせた後に、受信機1を溝部25に嵌め合わせる。このとき、受信機1は、固定板20の真上位置よりも幅方向に少しずらした位置に配置される。次いで、受信機1を、幅方向にスライドさせて固定板20の真上位置に位置させることで、受信機1の底面の係止穴1c、1dに固定板20の係止突起24を係止させ、受信機1を床面Gに対して起立させた状態で固定できる。また、固定板20の溝部25によって、受信機1の底部における短手側部(受信機1の幅方向の側部)を固定板20の幅方向から狭持することにより、受信機1を一層安定的に固定できる。
【0043】
この直立状態では、上述のように、固定板20の長さL4は、受信機1の幅L2に対して同一又は短くなるように設定されているため、上方から見た場合に、固定板20は受信機1によって完全に覆われることになり、固定板20が非露出状となる。
【0044】
壁面平行状態や直立状態の他にも、例えば、直立状態と同様に固定板20を床面Gに載置した後で、壁面平行状態と同様に受信機1の背面の係止穴1a、1bに固定板20の係止突起24を係止させるように、受信機1を固定板20に固定してもよい。
【0045】
(効果)
このように本実施の形態によれば、壁面平行状態においては、壁面に取り付けた固定板20に対して、受信機1を当該受信機1の背面において係止でき、直立状態においては、床面Gに載置した固定板20に対して、受信機1を当該受信機1の底面において係止できるので、1台の固定板20により、受信機1を壁面平行状態と、直立状態のいずれにおいても壁面、又は床面Gに固定することができる。また、固定板20には受信機1を着脱させる係止突起24を設けることで、受信機1の固定状態を簡易に変更できる。また、この固定板20を用いることで、各固定状態に応じて複数の部品を用いる必要がないため、各固定状態において使用されない部品を発生させない。また、この固定板20を用いることで、受信機1の部品数を減らすことができるので、受信機1の販売コストを低減できる。
【0046】
また、壁面平行状態において、受信機1の正面形状に対して固定板20の正面形状を同一又は小さくすることにより、当該固定板20を当該受信機1の正面から見て非露出状とし、直立状態において、固定板20の長さ方向の寸法を受信機1の底面形状の長手方向の寸法に略適合させることにより、受信機1の設置形態に関わらず、固定板20が利用者から見て目立たないようにすることができ、受信機1の外観を維持することができる。
【0047】
また、直立状態において、固定板20の溝部25によって受信機1の底部における短手側部を狭持するので、当該狭持する方向への受信機1の移動を拘束でき、受信機1を一層強固に固定することができる。
【0048】
〔本実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明の本実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0049】
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0050】
(受信機及び固定具の寸法や形状について)
本実施の形態で説明又は図示した受信機1及び固定板20の寸法や形状は例示であり、変更可能である。特に、固定板20の各部の形状の詳細については、当該各部の機能を発揮し得る限りにおいて、受信機1や固定板20の自身の形状や位置に応じて、任意に変更することができる。
【0051】
(係止穴と係止突起について)
上記実施の形態では、係止穴1a〜1dを受信機1に設け、係止突起24を固定板20に設ける場合を説明したが、このような構造に限らず、例えば、係止穴1a〜1dを固定板20に設け、係止突起24を受信機1に設けてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 受信機
1a、1b、1c、1d 係止穴
3 筐体
3a 正面カバー
3b 背面カバー
4 操作部
4a 告知再生スイッチ
4b ラジオ再生スイッチ
4c ボリュームスイッチ
5 表示部
5a 電源表示灯
5b 緊急放送表示灯
5c 一般放送表示灯
6 音響孔
7〜9、14 収容空間部
10 同軸ケーブル
11 電源コード
13 移報用ケーブル
15 ガイド部
15a、22b 小径部
15b 中径部
15c、22a 大径部
16 電池取付部
16a 電池カバー
17 アンテナ
20 固定板
21 開口部
22、23 ネジ孔
24 係止突起
24a リブ材
25 溝部
G 床面
W 設置壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を設置面に固定するための固定構造であって、
前記電子機器と前記設置面の間に介在されるものであって、当該電子機器を当該設置面に固定するための固定板を備え、
前記固定板には、前記電子機器に対して係脱自在に係止されることにより、当該固定板に対して前記電子機器を着脱させる係止手段を設け、
鉛直方向に略沿った設置面に取り付けた前記固定板の前記係止手段に対して、前記電子機器を当該電子機器の背面において係止することにより、当該電子機器を当該設置面に沿わせた状態で固定する第1固定状態と、
水平方向に略沿った設置面に載置した前記固定板の前記係止手段に対して、前記電子機器を当該電子機器の底面において係止することにより、当該電子機器を当該設置面に対して起立させた状態で固定する第2固定状態とを取り得る、
電子機器の固定構造。
【請求項2】
前記第1固定状態における前記電子機器の正面形状及び前記固定板の正面形状を鉛直方向を長手方向とする長方形状とし、当該電子機器の正面形状に対して当該固定板の正面形状を同一又は小さくすることにより、当該第1固定状態においては当該固定板を当該電子機器の正面から見て非露出状とし、
前記第2固定状態における前記電子機器の底面形状を長方形状とし、前記第2固定状態においては当該電子機器の底面形状の長手方向に前記固定板の長手方向が沿うように当該固定板に当該電子機器を配置し、当該固定板の長手方向の寸法を当該電子機器の底面形状の長手方向の寸法に略適合させることにより、当該第2固定状態においては当該固定板を当該電子機器の上面から見て非露出状とした、
請求項1に記載の電子機器の固定構造。
【請求項3】
前記固定板は、前記第2固定状態において前記電子機器の底面と対向する当該固定板の側面に溝部を備え、当該第2固定状態においては当該溝部によって前記電子機器の底部における短手側部を狭持する、
請求項2に記載の電子機器の固定構造。
【請求項4】
前記電子機器は、送信手段から送信された告知放送信号を受信する受信機である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の電子機器の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−4029(P2011−4029A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143921(P2009−143921)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】