説明

電子機器の圧力調整構造

【課題】激しい雨水、ホースからの強い流水、あるいは急激な温度変化により、電子機器内部に設ける圧力調整部材の膨張が大きくなったとしても、その破壊を防止する。
【解決手段】電子部品を内蔵する筐体1・2が密閉される電子機器において、筐体1の外側に密着される開口を有し、筐体1・2の内部に突出して中空状態で、筐体1・2の内外の圧力差に応じて膨張・収縮する伸縮部材3と、筐体1・2の内部で膨張する伸縮部材3に当接して規制する規制部材5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の圧力調整構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器において、ケースの一部に、ケース内外の圧力差によって伸縮する弾性体を設けた技術がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−68333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1はケース内外の圧力差によって伸縮する弾性体を設けたものであるが、激しい雨水や、ホースからの強い流水、あるいは急激な温度変化によっては、弾性体の膨張が大きくなってしまい、弾性体が破けてしまう虞があった。
【0004】
本発明の課題は、激しい雨水、ホースからの強い流水、あるいは急激な温度変化により、電子機器内部に設ける圧力調整部材の膨張が大きくなったとしても、その破壊を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、電子部品を内蔵する筐体が密閉される電子機器において、筐体の外側に密着される開口を有し、筐体の内部に突出して中空状態で、筐体の内外の圧力差に応じて膨張・収縮する伸縮部材と、筐体の内部で膨張する伸縮部材に当接して規制する規制部材と、を備える圧力調整構造を特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子機器の圧力調整構造であって、前記伸縮部材は弾性体により形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の電子機器の圧力調整構造であって、前記開口に跨って固定され、前記伸縮部材の中空内に突出し、収縮する伸縮部材に当接して規制する第2規制部材を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の電子機器の圧力調整構造であって、前記伸縮部材には、収縮する際に段階的に収縮動作させるための段部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の電子機器の圧力調整構造であって、前記開口を覆う通気性部材を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、激しい雨水、ホースからの強い流水、あるいは急激な温度変化により伸縮部材の膨張が大きくなったとしても、規制部材によって規制されるため、伸縮部材が破壊されてしまうのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成として圧力調整構造部を破断して示したもので、1は下筐体、2は上筐体、3は伸縮部材、4は空気室、5はガイドフェンス(規制部材)である。
【0012】
実施形態では、携帯電話の操作部筐体において、その防水筐体は下筐体1及び上筐体2より構成されて図示しない電子部品を内蔵して密閉され、その内部に伸縮部材3が突出して設けられている。伸縮部材3は、ゴムや合成樹脂等の弾性体により形成された有底筒状の袋体で、内部に空気室4を形成して、上筐体2の外側に密着固定した開口を有している。
【0013】
そして、下筐体1の内部には、防水筐体1・2の内外の圧力差により膨張する伸縮部材3に当接して規制する規制部材であるガイドフェンス5が一体に形成されている。また、上筐体2の外側には、各種キーによる操作部21が設けられている。
【0014】
伸縮部材3は、防水筐体の内部圧力を調整するもので、図2にも示すように、空気室4の開口の周囲に形成したフランジ31を、上筐体2の内面と、下筐体1に形成したガイドフェンス5との間に挟み込むとともに、開口周囲を上筐体2の外側に密着固定して外部との気密が保たれている。
【0015】
ガイドフェンス5は、伸縮部材3の外周面に対し間隔を開けて囲むとともに、その伸縮部材3の所定以上の膨張を規制する筒状のもので、図3にも示すように、その周方向の複数個所(図示例では等間隔三箇所)に長さ方向に沿った通気用スリット51が形成されている。
【0016】
以上において、下筐体1と上筐体2はパッキン22を介装して締結ネジで合体した防水シール構造となっており、上筐体2の操作部21も防水シール構造となっている。これにより防水筐体1・2とされている。
そして、伸縮部材3は、上筐体2に対し接着・二色成形・インサート成形等による防水シール構造とされている。
【0017】
以上により、携帯電話の防水筐体1・2において、熱等で防水筐体1・2の内部圧力が上昇した場合、開口を有する空気室4を形成する伸縮部材3が収縮することによって内部圧力を調整し、また、外部から高い圧力が作用した場合は、伸縮部材3が膨張して破裂しないように規制部材(ガイドフェンス)5で圧力を受ける圧力調整構造が備えられる。
【0018】
すなわち、図4は伸縮部材3及び規制部材(ガイドフェンス)5を破断して拡大した図で、防水筐体1・2の内外圧力差がない通常圧力時は、図4(a)に示したように、空気室4を形成する伸縮部材3は弾性変形のない初期状態に保たれる。
【0019】
そして、熱等による防水筐体1・2内部の高圧時は、図4(b)に示すように、伸縮部材3が潰れることによって内部圧力を調整する。
また、外部圧力が高い場合は、伸縮部材3が膨張することによって外部圧力と平衡するよう内部圧力を調整する。
【0020】
さらに、激しい雨水、ホースからの強い流水、あるいは急激な温度変化により伸縮部材3の膨張が大きくなったとしても、その周囲の規制部材5によって所定以上の膨張が規制される。従って、伸縮部材3が破壊されてしまうのを防止できる。
【0021】
(実施形態2)
図5は実施形態2を示すもので、空気室4を形成する伸縮部材3において、通常圧力時を示した図5(a)のように、二段階で径が小さくなる小径部32・33を形成することで、収縮する際に二段階に収縮動作させるための段部32a・33aを形成している。
これにより伸縮部材3は、内部高圧時において、図5(b)に示したように、段部32aで小径部32が折り返されて、この小径部32の内方に、段部33aで折り畳まれて小径部33がオーバーラップするよう収縮する。
【0022】
(実施形態3)
図6は実施形態3を示すもので、図示のように、通気性のフィルムやメッシュ等の通気性部材6を、伸縮部材3により形成される空気室4の開口を塞ぐよう上筐体2の外側に貼り付けている。
これにより、伸縮部材3で囲まれた空気室4の内部への異物浸入を防ぐことができる。
【0023】
(実施形態4)
図7は実施形態4を示すもので、伸縮部材3により形成される空気室4の中に、図示のように、第2規制部材をなすロッド状の反転防止ガイド7を配置している。この反転防止ガイド7は、軸線方向に沿った中空の通気孔71を有するとともに、空気室4の開口を塞ぐよう上筐体2の外側に貼り付けるフランジ72を一体に有している。なお、フランジ72にも円周方向に複数の通気孔73が形成されている。
【0024】
このような反転防止ガイド7を設けておけば、防水筐体1・2の内部圧力の過大時や外部圧力の過大な低下時において、伸縮部材3が収縮により反転して上筐体2の外部に飛び出すのを防止できる。
【0025】
(実施形態5)
図8は実施形態5を示すもので、空気室4を形成する伸縮部材3において、図示のように、有底筒状の袋体内に、空気室4を囲むような衝撃吸収用空気室34を形成している。
このような空気室4を囲むような衝撃吸収用空気室34を有する伸縮部材3によれば、外部の急激な圧力増加時において、伸縮部材3の急激な膨張によるガイドフェンス5に対する衝撃を衝撃吸収用空気室34により吸収できる。
【0026】
なお、この実施形態では、伸縮部材3に衝撃吸収用空気室34を一体成形したが、別部材の組合せによる構成でも可能である。さらに、衝撃吸収用空気室34に衝撃吸収のためのジェルや液体を封入しても良い。また、衝撃吸収用空気室34は、伸縮部材3により囲まれた空気室4と独立したものとしたが、必ずしも気密構造として独立させる必要はなく、一部を開放しても良い。
【0027】
(実施形態6)
図9は実施形態6を示すもので、空気室4を形成する伸縮部材3を、図示のように、キーラバー8と一体に成形したものを使用しても良い。
【0028】
なお、以上の実施形態においては、携帯電話としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、電卓、デジタルカメラ、ビデオカメラ、PDA、ノートパソコン、ウェアラブルパソコン、電子辞書等の携帯機器などの電子機器であっても良い。
また、伸縮部材は蛇腹、楕円など、どのような形状でも良く、さらに、規制部材の通気構造は貫通穴でも良く、その他、第2規制部材の形状など具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
また、規制部材は伸縮部材の外周面に対し間隔を開けて囲む筒状のもの以外に、伸縮部材の先端と間隔を開けて設けられた板状のものであってもよい。
また、規制部材はネット状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成を示すもので、圧力調整構造部を示した要部破断の斜視図(a)とその要部の拡大図(b)である。
【図2】図1の筐体及び伸縮部材の分解斜視図である。
【図3】図2の規制部材を上方から見た斜視図である。
【図4】伸縮部材及び規制部材を破断した斜視図で、通常圧力時を示した図(a)と内部高圧時を示した図(b)である。
【図5】実施形態2を示す要部破断の斜視図で、通常圧力時を示した図(a)と内部高圧時を示した図(b)である。
【図6】実施形態3を示す要部破断の斜視図である。
【図7】実施形態4を示す要部破断の斜視図である。
【図8】実施形態5を示す要部破断の斜視図である。
【図9】実施形態6を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 下筐体
2 上筐体
21 操作部
22 パッキン
3 伸縮部材
31 フランジ
32・33 小径部
32a・33a 段部
34 衝撃吸収用空気室
4 空気室
5 規制部材
51 通気用スリット
6 通気性部材
7 第2規制部材
71 通気孔
72 フランジ
73 通気孔
8 キーラバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を内蔵する筐体が密閉される電子機器において、
筐体の外側に密着される開口を有し、筐体の内部に突出して中空状態で、筐体の内外の圧力差に応じて膨張・収縮する伸縮部材と、
筐体の内部で膨張する伸縮部材に当接して規制する規制部材と、を備えることを特徴とする電子機器の圧力調整構造。
【請求項2】
前記伸縮部材は弾性体により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器の圧力調整構造。
【請求項3】
前記開口に跨って固定され、前記伸縮部材の中空内に突出し、収縮する伸縮部材に当接して規制する第2規制部材を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器の圧力調整構造。
【請求項4】
前記伸縮部材には、収縮する際に段階的に収縮動作させるための段部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器の圧力調整構造。
【請求項5】
前記開口を覆う通気性部材を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電子機器の圧力調整構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−70909(P2009−70909A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235522(P2007−235522)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(504149100)株式会社カシオ日立モバイルコミュニケーションズ (893)
【Fターム(参考)】