説明

電子機器の滑止構造

【課題】ポケットから取り出そうとした際にスムースな出し入れができ、かつ入力キー操作時に加わる力に対応した高い滑り止め機能を有する電子機器の滑止構造を提供する。
【解決手段】厚さ方向に交差する方向に拡がる主面に入力キーが設けられた第一筐体11と、入力キーの入力情報を表示可能な表示部が設けられ、第一筐体11と重ね合わせ可能な第二筐体12と、第一筐体11及び第二筐体12のそれぞれの長縁部11c,12cに設けられ、第一筐体11及び第二筐体12を相対回動可能に連結するヒンジ部14とを備える折畳式の電子機器10の滑止構造であって、第一筐体11のうち主面と表裏関係にある底面11dにおいて第一筐体11の長縁部11cに沿って長尺状の滑止部材20を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折畳式の小型コンピュータ、モバイル通信機器、ゲーム機器などの電子機器に適用される滑止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような電子機器においては、入力キーの操作時の滑りを防止するために底面にゴム足を配設したものがある。
【0003】
図7及び図8は、ゴム足を配設した折畳式の電子機器の一例を示す斜視図であって、ヒンジ部を閉じた状態を示している。図7及び図8に示す電子機器1は、第一筐体2と、第一筐体2の長縁部2Aに沿うヒンジ部3を介して開閉自在な第二筐体4とからなる機器本体5を具備している。そして、機器本体5の第二筐体4は、第一筐体2の長縁部2Aに沿うヒンジ部3の回転軸3Aを中心として、第一筐体2に対して開閉自在とされている。
このような電子機器1においては、第一筐体2の底面6の四隅に円筒形状のゴム足7が設けられた滑止構造が用いられており、四隅のゴム足7によって机上等の支持面に設置した際の滑りを抑制している(例えば、下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-284848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の滑止構造は、滑止効果を十分に発揮させるためにゴム足を底面に散在させており、衣服や鞄等のポケット等に対して電子機器を収容・取り出す際に、ゴム足が引っ掛かってスムーズに収容・取り出しができないという問題がある。さらに、引っ掛かりによってゴム足に局所的な力が作用することによりゴム足が脱落して滑止効果が十分に得られなくなるという問題がある。
【0006】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ポケット等に対する電子機器の収容・取り出しをスムーズにすると共に、十分な滑止効果を維持することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。すなわち、本発明は、厚さ方向に交差する方向に拡がる主面に入力キーが設けられた第一筐体と、前記入力キーの入力情報を表示可能な表示部が設けられ、前記第一筐体と重ね合わせ可能な第二筐体と、前記第一筐体及び前記第二筐体のそれぞれの長縁部に設けられ、前記第一筐体及び前記第二筐体を相対回動可能に連結するヒンジ部とを備える折畳式の電子機器の滑止構造であって、前記第一筐体のうち前記主面と表裏関係にある底面において前記第一筐体の長縁部に沿って長尺状の滑止部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第一筐体のうち底面において長縁部に沿って長尺状の滑止部材を設けたので、第一筐体の底面を支持面に載置させると共に、第一筐体と第二筐体とを展開させて表示部を視認可能な姿勢にした場合において、第二筐体を展開させた際に掛かる重量によって、滑止部材と支持面とが密着し、これによって入力キー操作時に電子機器が滑ることが効果的に防止され、良好なキー操作性を実現できる。
また、通常、衣服や鞄等のポケット等に対して電子機器を収容・取り出す際には、電子機器の長手方向に向けて収容・取り出しを行うのが通常であるが、長尺状の滑止部材が第一筐体の底面における長縁部に沿って配置されているので、衣服や鞄等のポケット等に対して滑り止め部材が引っ掛かり難い。換言すれば、滑止部材の延在方向と、ポケットに対する電子機器の収容・取出方向とが略一致することになるので、相対的に滑止部材上をポケット内面が摺動することとなり、滑止部材に局所的な力が作用することが防止される。これにより、滑止部材の脱落を抑止して滑止効果を十分に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るに適用される電子機器10を示す斜視図である。
【図2】電子機器10が閉じられた状態を示す斜視図である。
【図3】電子機器10を裏側から見た斜視図である。
【図4】電子機器10を側方から見た側面図である。
【図5】(A)延在方向に交差する断面が三角形状の滑止部材20を示す斜視図、(B)延在方向に交差する断面が円形状の滑止部材21を示す斜視図、(C)凹部が形成された滑止部材22を示す斜視図である。
【図6】滑止部材20をアーチ状に形成した変形例を示す概略構成図であって、(A)延在方向に交差する断面が三角形状の滑止部材23を示す斜視図、(B)延在方向に交差する断面が円形状の滑止部材24を示す斜視図である。
【図7】従来の一般的な電子機器を底面から見た場合の斜視図である。
【図8】図7の電子機器を側方から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について図1〜図5を参照して説明する。
図1〜図4は、発明の実施形態に係る折り畳み式の電子機器10であり、厚さ方向に交差する方向に拡がる主面11aに入力キー11bが設けられた第一筐体11と、入力キー11bの入力情報や各種通信情報・機器情報等を表示可能な表示画面(表示部)12Aが設けられ、第一筐体11と重ね合わせ可能な第二筐体12とからなる機器本体13を有する。
【0011】
第一筐体11及び第二筐体12は、それぞれ薄型の矩形板状に形成されている。これら第一筐体11及び第二筐体12は、それぞれの長手方向に沿って延びる長縁部11c,12cに沿って配設されたヒンジ部14により、相対回動可能に連結されている。より具体的には、ヒンジ部14の矢印A−B方向(電子機器10の長手方向)に沿う回転軸14Aを中心として相対回動可能に連結されることにより、入力キー11bと表示画面12Aとが対向するように第一筐体11と第二筐体12とを折り畳んだ姿勢(図2参照)、及び、入力キー11bと表示画面12Aとが鈍角を形成する位置関係となるように第一筐体11と第二筐体12とを展開させた姿勢(図1参照)にすることが可能となっている。
【0012】
この電子機器10は、第一筐体11の底面11dにおいて、ヒンジ部14の近傍位置に複数(本実施形態では二つ)の滑止部材20が設けられている。
複数の滑止部材20は、例えば、それぞれゴム樹脂からなる長尺状のものであって、図3に示されるように、互いが平行となるように長縁部11cに沿って配置されている。また、滑止部材20は、図4及び図5(A)に示すように、延在方向全域に亘って延在方向に交差する断面形状が三角形の三角リブ(三角リブ部)となっている。
【0013】
次に、上述した電子機器10の作用について説明する。
まず、電子機器10を使用する際には、第一筐体11と第二筐体12とを展開させた姿勢で、第二筐体12が第一筐体11に対して上方に位置するように作業机等の支持面に載置する。電子機器10を載置すると、滑止部材20の先端が支持面に線接触して密着する。この際、電子機器10を展開させた姿勢においては、第一筐体11に対して第二筐体12が鈍角を形成し、電子機器10の重心が長縁部11c側に移動しているために、電子機器10の自重によって滑止部材20が支持面に対して押し付けられて強い密着・滑り止め効果が得られる。
【0014】
また、電子機器10の入力キー11bの操作時には、操作者が表示画面12Aを視認しつつ表示画面12Aよりも手前側に位置する入力キー11bを押下するために、入力キー11b側から表示画面12A側(図3に示される矢印C側。以下、「特定方向」という。)に向けて機器本体13に多くの力が作用する。この際、滑止部材20の支持面に対する摩擦力が特定方向の力に対応して反対向きに作用することにより、電子機器10の支持面に対する滑りが防止される。
さらに、滑止部材20が複数配設されているので、滑止部材20の支持面に対する摩擦力が滑止部材20を単数設けた場合に比べて大きくなって、電子機器10の支持面に対する滑りがさらに防止される。
このようにして、良好な操作性を得ながら入力キー11bによる入力を行うことができる。
【0015】
一方、電子機器10をポケットに収容する際には、第一筐体11と第二筐体12とを折り畳んだ姿勢とし、ポケット開口に電子機器10の長手方向を向けた状態で、電子機器10の長手方向の一端をポケットに挿入する。
【0016】
ポケット内に滑止部材20が収容された後には、電子機器10のポケット奥部への変位に伴って、滑止部材20がポケット内面を摺動する。つまり、ポケットに滑止部材20が引っ掛かることなく、収容が完了される。
【0017】
以上詳細に説明したように、電子機器10によれば、第一筐体11における底面11dの長縁部11cに沿って長尺状の滑止部材20を設けたので、第二筐体12を展開させた姿勢で第一筐体11を操作した場合に、矢印A‐B方向に線接触した滑止部材20が抵抗になって、入力キー操作時に機器本体13が特定方向(図3に示される矢印C側)に滑ることが防止される。
また、滑止部材20がある箇所は、第二筐体12を展開させた際にその重量が掛かる第一筐体11の底面11dにおける長縁部11cに沿って配置されているので、第一筐体11と第二筐体12とを展開させた姿勢において、当該重量によって該滑止部材20と作業机の支持面とが密着し、これによって入力キー操作に機器本体13が滑ることが防止され、良好なキー操作性を実現できる。
また、電子機器10のような長さを有する電子機器は、該電子機器10をポケットに収容・取り出す場合においてポケットに対して電子機器10の長手方向に変位させるのが一般的であるが、滑止部材20の延在方向(矢印A−B方向)と、ポケットに対する機器本体13の変位方向とがほぼ一致することになるので、滑止部材20がポケットに引っ掛からない。すなわち、滑止部材20の延在方向(矢印A−B方向)と、ポケットに対する機器本体13の変位方向とがほぼ一致することになるので、滑止部材20上を相対的にポケット内面が摺動することとなり、滑止部材20に局所的な力が作用することが防止される。これにより、滑止部材20の脱落を抑止して滑止効果を十分に維持することができる。
【0018】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、矢印C方向への機器本体13の滑りを防止できるものであればその形状は限定されない。例えば、滑止部材20としては、図4及び図5(A)で示すような、断面形状が三角形の三角リブ部の他、図5(B)で示すような、断面形状が半円形状の半円リブ部を用いた滑止部材21を用いてもよい。また、これに限定されず、図5(C)に示されるような、他方の面の法線方向から見て矩形枠状に形成された滑止部材22を使用しても良い。
さらに、延在方向の一部を三角リブ部や半円リブ部にする構成でもよいし、三角リブ部と半円リブ部とを重畳的に用いてもよい。さらに、滑止部材22の枠部に三角リブ部や半円リブ部を用いてもよい。
【0019】
また、より大きな摩擦力を得るために滑止部材20の全体形状をシボ状に形成してもよい。この際、シボ状に形成することで、デザイン性も向上することができる。
【0020】
また、上述した滑止部材20に代えて、図6(A),(B)に示すように、滑止部材20の延在方向において両端から中間位置に向けて漸次薄くなるようにアーチ状に形成した滑止部材22,23を用いてもよい。こうすることで、机上に置いた際は一つの滑止部材20につき二点で電子機器10を支えることとなるためにガタつきが抑制されるばかりでなく、支持面に対する摩擦力も向上させることができる。
また、入力キー11bを押下したり叩いたりした場合において電子機器10に荷重が加わったときには、滑止部材20全体で支えることができるために安定性を向上させることができる。さらに、入力キー11bの操作時において滑止部材20の磨耗を防止することができると共に、ポケット収納時の滑止部材20とポケット内面との接触を低減することができ、滑止部材20とポケット内面との摩擦抵抗を軽減することが可能となり、ポケット等に対する電子機器10の収容・取り出しをさらにスムーズにすることができる。
【0021】
また、本実施形態の図3及び図4に示される滑止部材20は、ヒンジ部14の直下にて該ヒンジ部14の軸方向に沿う矢印A−B方向に配置されているが、ヒンジ部14の直下ではなく、例えば矢印C方向に若干ずれて配置しても良い。
【0022】
また、上述した実施形態では、滑止部材20を複数設ける構成としたが、単数設ける構成としてもよい。
また、上述した実施形態では、滑止部材20の材質をゴム樹脂としたが、他の合成樹脂等を用いてもよい。
【0023】
また、上述した実施形態では、回動軸が単数に設定されたヒンジ部14を備える電子機器10について本発明を適用したが、回動軸が複数に設定されたヒンジ部を備える電子機器についても本発明を適用することができる。
【0024】
また、上述した実施形態では、矩形板状ではなく長手方向を有する他の形状、例えば、楕円板状に形成されたものについても本発明を適用することができる。円弧状の縁に沿って円弧状に配設してもよいし、円弧状の縁に沿って直線状に沿わしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、折畳式の小型コンピュータ、モバイル通信機器、ゲーム機器などの電子機器に適用される。
【符号の説明】
【0026】
10…電子機器
11…第一筐体
11a…主面
11b…入力キー
11c,12c…長縁部
11d…底面
12…第二筐体
12A…表示画面(表示部)
14…ヒンジ部
20〜24…滑止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に交差する方向に拡がる主面に入力キーが設けられた第一筐体と、
前記入力キーの入力情報を表示可能な表示部が設けられ、前記第一筐体と重ね合わせ可能な第二筐体と、
前記第一筐体及び前記第二筐体のそれぞれの長縁部に設けられ、前記第一筐体及び前記第二筐体を相対回動可能に連結するヒンジ部とを備える折畳式の電子機器の滑止構造であって、
前記第一筐体のうち前記主面と表裏関係にある底面において前記第一筐体の長縁部に沿って長尺状の滑止部材を設けたことを特徴とする電子機器の滑止構造。
【請求項2】
前記滑止部材は、該滑止部材の延在方向に交差する断面が三角形状となった三角リブ部を有することを特徴とする請求項1に記載の電子機器の滑止構造。
【請求項3】
前記滑止部材は、該滑止部材の延在方向に交差する断面が半円形状となった半円リブ部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器の滑止構造。
【請求項4】
前記滑止部材は、前記他厚さ方向から見て矩形枠状に形成されていることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の電子機器の滑止構造。
【請求項5】
前記滑止部材は、該滑止部材の延在方向において両端から中間位置に向けて漸次薄くなることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の電子機器の滑止構造。
【請求項6】
前記滑止部材は、相互に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか一項に記載の電子機器の滑止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−243691(P2011−243691A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113277(P2010−113277)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】