説明

電子機器の衝撃検出構造

【課題】衝撃値及び衝撃の方向を簡便に検出する。
【解決手段】前カバー17の内壁には、弾性自在な突出部材25が一体に形成されている。後カバー18の内壁には、先端に感圧シート26を支持した支持部材27が設けられている。突出部材25の先端は、感圧シート26に常に一定圧で接触している。前カバー17に衝撃が加わると、突出部材25が変位してその先端が感圧シート26を押圧する。これにより。感圧シート26には、一定圧により色が変化する範囲に付く通常のマークよりも大きな範囲に、色が変化するマークが記録される。このマークの大きさ、及び伸び方向に応じて衝撃値と衝撃の方向とを割り出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の衝撃検出構造に関し、特に落下・衝撃などで壊れやすい機能部品を内部に収納した電子機器の衝撃検出構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の修理では、破損状況から破損原因を推測している。しかし、破損原因から真の破損原因を特定することは難しい。そこで、衝撃センサを予め内蔵した携帯端末機器が知られている(特許文献1)。この携帯端末機器には、衝撃センサの他に、事故診断回路と、障害記憶メモリとを備え、衝撃センサで衝撃が検出されると、自己診断回路が作動して機器の自己診断を実行し、自己診断回路により異常が認められた場合に、その障害内容を記憶メモリに記憶し、必要に応じて液晶表示器に障害内容を表示している。
【0003】
これによれば、今までに加わった衝撃値が記憶メモリに記憶されているので、記憶メモリに記憶した障害内容を修理時に液晶表示器に表示すれば、機器に加わった衝撃を過去に逆上って調べることができる。しかしながら、衝撃センサや自己診断回路などが衝撃、経年変化その他何らかの原因により故障していた場合には、調べることができなかった。
【0004】
そこで、感圧紙を予め内蔵した携帯端末機器の衝撃検出構造が知られている(特許文献2)。この携帯端末機器の衝撃検出構造では、バイブレータのシャフトに固定されている分銅の周囲の少なくとも1ヶ所の離間対向する位置に、接触により色が変位する感圧紙を設け、バイブレータをゴムホルダで保持することで、一定以上の衝撃があると分銅が変位して感圧紙に接触する。分銅は断面半形状をしており、モーターの軸に重心をかたよらせて取り付けられ、回転させることで振動を生む。感圧紙は、分銅の回転軸を中心とする周方向のうちの対向する二カ所に設けられており、顕色剤層を持つ第1の感圧紙と、発色剤層を持つ第2の感圧紙との積層構造になっている。第1の感圧紙を通して第2の感圧紙に分銅の力が加わると、第1の感圧紙の色が第2の感圧紙の発色剤の色に変化する。衝撃値は最大値を記憶する。
【特許文献1】特開平6−169285号公報
【特許文献2】特開2004−184229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2に記載の発明では、感圧紙がバイブレータの分銅の周りのうちの対面する二カ所にしか設けられていないので、バイブレータ用のモータの回転軸に対して直交する方向に向けての衝撃は検出することができるのに対し、前記回転軸に沿った衝撃を検出することができない。また、バイブレータ用のモータが駆動しているときに衝撃が加わると、分銅が偏心して回転しているため、一定未満の衝撃によっても分銅が感圧紙に接触するおそれがある。このようになると、真の衝撃を検出することができないおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、衝撃力を正確に検出でき、しかも衝撃力に加えて衝撃の方向も検出することができる電子機器の衝撃検出構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、電子機器の衝撃検出構造では、筺体を構成する外カバーの内壁、又は外カバーの内部に収納される機能部品に取り付けられた突出部材と;接触により色が変化する感圧シートと;外カバーの内部でかつ突出部材に対向する位置に設けられており、突出部材の先端が感圧面に常に当接する状態で感圧シートを保持する支持部材と;を備えたものである。
【0008】
感圧シートとしては、顕色剤層を持つ第1の感圧紙と、発色剤層を持つ第2の感圧紙との積層構造のものが、衝撃力を記憶することができるため望ましい。第1の感圧紙を通して第2の感圧紙に衝撃力が加わると、第1の感圧紙の色が第2の感圧紙の発色剤の色に変化し、感圧シートにその色のマークが付く。突出部材は、先端が予め感圧シートに当接しているため、感圧シートには、一定圧を示す基準のマークが付いた状態になっている。
【0009】
衝撃が加わると、突出部材又はそれを取り付けた部材が衝撃力に応じて変形する。衝撃が突出部材の突出方向に加わると、先端が感圧シートを押込み、基準のマークよりも大きなマークが感圧シートに付く。このマークの大きさが衝撃力に比例する。また、衝撃が突出方向に対して直交する方向に加わった場合には、先端が衝撃方向に変形して感圧シートに、変形方向に伸びたマーク、例えば涙目形状のマークが付く。このマークのうちの基準マークからの伸びる方向に基づいて衝撃の方向を検出でき、また、衝撃力は基準のマークからの伸び量及びその感の太さに基づいて検出することができる。なお、突出部材を弾性自在に設けるのが望ましい。また、弾性を有する部材、例えばプラスチップ製の外カバーなどに突出部材を取り付けても同じ効果が得られる。また、逆に感圧シートを保持する支持部材を弾性自在に設けてもよい。さらに、支持部材と感圧シートとの間にクッション部材を設けるのが望ましい。
【0010】
衝撃の方向及び衝撃力を細かく検出するためには、突出部材と間圧シートとの組み合わせを1個だけでなく、複数個設けるのが望ましい。この場合、高さ、幅、及び、奥行きとの各方向での衝撃を検出するように3個設けるのが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電子機器の衝撃検出構造によれば、外カバーの内壁、又は内部機能部品に取り付けた突出部材の先端と、感圧シートとを常に筺体の内部で当接した関係で保持しておき、突出部材、又は感圧シートを支持する支持部材が衝撃により変形すると、突出部材の先端と感圧シートとが相対的に変位してその変位が感圧シートに記録される。これにより、電子機器に加わった衝撃力及びその衝撃の方向との両方を確実にかつローコストに検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を採用した電子カメラ10は、図1に示すように、外観が横長矩形で厚みの薄い筺体形状になっており、前面に撮影レンズ11が、また、上面にシャッタボタン12や電源ボタン13が、さらに、背面には図示していないLCDや操作部などが露呈している。外装カバー14の内部には、機能部品15が内蔵されている。機能部品15は、レンズ鏡筒、CCDなどの撮像素子、ストロボ装置、ファインダー機構、LCD、シャッタボタンや電源ボタンなどの操作部、及び、これらを統括的に制御する制御部などで構成される部品である。
【0013】
外装カバー14は、筺体を前後に二分割した前・後カバー17,18で構成されている。前カバー17の合わせ目の内部には、係止部である係止爪19が複数設けられている。これら係止爪19は、前カバー17の合わせ目の内壁に一体に形成されている。また、後カバー18には、係止穴20を有する被係止部材21が合わせ目から突出して複数設けられている。これら係止爪19と係止穴20とは、互いのカバー17,18の合わせ目を取り付ける取付方向から係合させることで頑固に係止する。なお、前・後カバー17,18は、プラスチック材料で成型されており、撮影レンズ11、シャッタボタン12、電源ボタン13、LCD、及び、操作部などを外部に露呈する開口や切欠き部が設けられている。
【0014】
前カバー17の前面内壁には、図2に示すように、突出部材25が一体に取り付けられている。突出部材25は、片持ちで弾性を有する形状になるように細径の円柱形状をしており、長手方向を取付方向に沿わした姿勢で先端が後カバー18に向けて突出している。また、後カバー18の背面内壁には、感圧シート26を保持する支持部材27が一体に取り付けられている。支持部材27は、前・後カバー17,18が取り付けられたときに、突出部材25の先端が感圧面に当接するように感圧シート26を保持する。なお、突出部材25の断面形状としては、円形に限らず、矩形や三角形もしくはC字形などでもよしいし、また、中身の詰まった中実形状以外に、中空形状にしてもよい。
【0015】
突出部材25と支持部材27とは対向配置されており、突出部材25の先端と感圧シート26とは常に当接した状態になっている。突出部材25の先端には、図3に示すように、押圧部28が一体に取り付けられている。押圧部28は、先端が丸みを帯びた三角錐形状になっており、丸みを帯びた先端が感圧面26aに当接する。
【0016】
支持部材27の先端には、クッション部材29が貼着されている。感圧シート26は、クッション部材29の先端面に貼着されている。クッション部材29は、弾性を有する材料、例えばゴムやスポンジで作られており、感圧シート26を保護する。なお、クッション部材29を省略してもよい。この場合は、支持部材27を弾性自在な形状、又は弾性を有する材料で形成すればよい。
【0017】
感圧シート26は、支持体の上に顕色剤層を塗布した第1フイルムと、支持体の上に発色剤層を塗布した第2フイルムとを重ね合わせたツーシートタイプの構造になっている。これら第1及び第2フイルムは、顕色剤層と発色剤層との薬品塗布面同士を重ね合わせた1枚のシートとして使用される。この場合、発色剤層の支持体の面が感圧面になる。なお、支持体の上に顕色剤層と発色剤層とを順に塗布したワンシートタイプの構成のものを使用してもよい。また、支持体としては、例えば75μmの厚みのポリエチレンテレフタレートフイルム(PET)を用いるのが望ましい。顕色剤層又は発色剤層は、例えば15μmの厚みで塗布するのが好適である。発色剤層は、発色剤を閉じ込めたマイクロカプセルを塗布した層である。このような構成の感圧シートは、発色剤層に先端部の力が加わると、マイクロカプセルが破壊され、その中の発色剤が顕色剤に吸着し、化学反応を起こして発色剤の色に発色する。
【0018】
上記構成では、組立時に前カバー17と後カバー18とを取付方向から合わせて取り付けることで、押圧部28の先端が感圧面26aを一定の圧力で押圧する。この状態で電子カメラ10は出荷される。このように組立時に突出部材25の先端を感圧シート26に一定圧で押圧した状態になっているため、感圧シート26には、一定圧によって押圧された範囲(通常発色範囲)に色が変化したマーク30が記録される。
【0019】
使用中に前カバー17に衝撃が加わると、突出部材25が前カバー17からの衝撃力が伝達されてその衝撃の方向に弾性変形をする。この瞬時の変形により押圧部28が感圧面26aの上で変位し、感圧シート26に衝撃値が記録される。例えば衝撃が取付方向に沿って加わった場合、図4に示すように、衝撃値の記録がマーク30より大きな円の範囲に色が変化したマーク31が記録される。この場合、マーク31の大きさが衝撃値を表すことになる。
【0020】
また、衝撃が取付方向に対してずれて加わる場合、例えば直交する方向に加わる場合、図5に示すように、衝撃値の記録がマーク30から一方向に伸びた線状跡のマーク32で記録される。この場合、線状跡の太さ及び伸び量が衝撃の大きさを、また、伸び方向が衝撃の方向を表すことになる。
【0021】
電子カメラ10が故障又は破損した場合は、サービスステーションに届けられる。ここでは、電子カメラ10の破損又は故障状況によって、保証か保証対象外かを判断する必要がある。この判断をするときに、電子カメラ10の前又は後カバー17,18を取り外して、内部から感圧シート26を取り外す。取り外した感圧シート26から一定以上の衝撃が記録されているか否かを調べ、記録されている場合には衝撃値及び衝撃方向を分析し、保証か保証対象外かを判断する。また、衝撃値及び衝撃の方向に対する破損又は損傷箇所のデータ取りを迅速に行えるため、改善対策も迅速に行える。
【0022】
上記実施形態では、押圧部28を三角錘形状にしているが、三角錘形状に限らず、ピン形状でもよいし、また、ネジやビスの頭を利用してもよい。さらには、取付方向に移動自在なピンとそのピンを感圧シート26に押圧する方向に付勢するバネとで構成してもよい。この場合押圧部が変位するため、クッション部材29を省略するのが望ましい。
【0023】
また、上記各実施形態では、前カバー17に突出部材25を、後カバー18に感圧シート26を支持する支持部材27をそれぞれ設けているが、逆に取り付けてもよい。また、前・後カバー17,18に設けるに限らず、突出部材25と感圧シート26とを対向して当接することができる内部部材であればいずれでもよい。また、突出部材25と感圧シート26とを対向する方向を取付方向に平行にして設けているが、本発明ではこれに限らず、正面視において水平方向、又は垂直方向、或いは筺体の略矩形内部の対角線方向に平行に設けてもよい。
【0024】
上記実施形態では、電子カメラ10の全体に加わる衝撃を検出しているが、内部の機能部品15のうちの特定の部品のみに加わる衝撃を検出するように構成してもよい。例えばレンズ鏡筒を備えている場合には、移動筒に強い衝撃が加わると、レンズ位置が狂って変倍やピントに不都合が生じるおそれがある。この場合には、図6に示すように、レンズ鏡筒40(固定筒)と後カバー18の内壁との間に、突出部材41と感圧シート42を支持する支持部材43とを設ければよい。この構成によれば、ズームレンズの場合でも前カバー17の前面から被写体に向けて突出する移動筒に衝撃が加わっても、その移動筒が固定筒に対して進退自在に取り付けられているから、固定筒を通してその衝撃値を記録することができる。
【0025】
また、液晶表示器に加わる衝撃を検出するようにしてもよい。カメラにおいては液晶表示器が背面に設けられているのが一般的であるので、液晶表示器の裏側に突出部材を、これに対向して前カバー17の内壁に支持部材を介して感圧シートを設ければよい。なお、勿論突出部材と感圧シートとを逆に設けてもよい。
【0026】
また、上記実施形態では、突出部材と感圧シートとの1組だけを設けているが、本発明ではこれに限らず、2組又は3組設けてもよい。この場合、突出部材41と感圧シート42との対向方向をそれぞれ異ならすことで、例えば取付方向とそれに直交する方向(高さ方向又は幅方向)との2方向、又は、高さ方向、幅方向、及び、取付方向(奥行き方向)との3方向の衝撃値を別々に記録することができるため、衝撃の解析を詳しく行える。
【0027】
また、電気を必要としない圧力センサを用いてもよい。例えば、ケースの内部で一方向に移動自在な錘体の両端に押圧部をそれぞれ形成し、ケースの前記一方向に対向する側面の内壁に感圧シートをそれぞれ設け、ケースをカメラの筺体内部に取り付ければ同じように衝撃値を記録することができる。なお、電気により駆動する圧力センサを用いてもよい。この場合には、カレンダ回路を設け、衝撃力とともに衝撃の発生日時などを電気的メモリに記録するのが好適である。そして、このような圧力センサを高さ、幅、奥行き(取付)方向との3方向に対応して3個設けることで、衝撃方向をより詳しく分析することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の利用可能性としては、電子カメラ10の筺体に利用するに限らず、例えばテレビ、液晶表示装置、ステレオ、携帯電話、扇風機、時計、炊飯器、及び、ゲーム機などの電気機器や電子機器の筺体にも採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を採用した電子カメラを示す分解斜視図である。
【図2】電子カメラの内部に設けた衝撃検出装置を示す断面図である。
【図3】衝撃検出装置の概略を示す斜視図である。
【図4】圧力が取付方向に加わったときに感圧シートに記録されるマークを示す説明図である。
【図5】圧力が取付方向に対して直交する方向に加わったときに感圧シートに記録されるマークを示す説明図である。
【図6】鏡筒に加わる衝撃を記録する他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 電子カメラ
15 機能部品
17 前カバー
18 後カバーユニット
25 突出部材
26 感圧シート
27 支持部材
29 クッション部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筺体を構成する外カバーの内部に機能部品を収納した電子機器の衝撃検出構造において、
前記外カバーの内壁、又は前記機能部品に取り付けられた突出部材と、
接触により色が変化する感圧シートと、
前記外カバーの内部でかつ前記突出部材に対向する位置に設けられており、前記突出部材の先端が感圧面に常に当接する状態で前記感圧シートを保持する支持部材と、
を備えたことを特徴とする電子機器の衝撃検出構造。
【請求項2】
前記突出部材は、弾性自在に設けられていることを特徴とする請求項1記載の電子機器の衝撃検出構造。
【請求項3】
前記突出部材は外カバーに取り付けられ、前記外カバーは、弾性を有する材料で形成されていることを特徴とする請求項1記載の電子機器の衝撃検出構造。
【請求項4】
前記支持部材は、弾性自在に設けられていることを特徴とする請求項1記載の電子機器の衝撃検出構造。
【請求項5】
前記突出部材と感圧シートとの間にクッション部材を備えたことを特徴とする請求項1ないし3何れか記載の電子機器の衝撃検出構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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