説明

電子機器ケース

【課題】車載に適した電子機器ケースを提供する。
【解決手段】インバータのケース2aには、コネクタ挿入部4と突出部8が設けられている。コネクタ挿入部4において、インバータを外部機器と電気的に接続するためのケーブルのコネクタを挿入する開口部7がケース本体から突出している。また、コネクタ挿入部4には、開口部7の内外を連通する水抜き孔5が設けられている。突出部8は、コネクタ挿入部4の下側にてケース2aから突出しており、鉛直方向において水抜き孔5と重なるように設けられている。突出部8が、撒き上がる泥水や塵埃が水抜き孔5からコネクタ挿入部4の内部に侵入することを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器のケースに関する。電子機器とは、例えば車載のインバータである。
【背景技術】
【0002】
電子機器のケースには、他の機器から伸びるケーブルのコネクタを挿入するコネクタ挿入口部が設けられることが多い。コネクタ挿入部に関するいくつかの改良が例えば特許文献1や特許文献2に開示されている。特許文献1には、ケースの小型化、省コスト化を図りながら、コネクタの組み付け作業を容易にする電子機器ケースが開示されている。特許文献2には、端子金具同士をボルト留めする工具とコネクタ部との干渉を回避でき、かつ小型化できるコネクタ構造を有するケースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−134162号公報
【特許文献2】特開2011−100551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載用の電子機器ケースの場合、コネクタ挿入部に水が侵入することを防止しなければならない。あるいは、侵入した水が容易に抜ける構造が要求される。しかしながら、単に水抜きの孔をコネクタ挿入部に設けるだけでは、その孔から逆に水が侵入したり、あるいは、泥や塵埃などで目詰まりを起こす虞がある。本明細書は、上記課題に鑑みて創作された。本明細書が開示する技術は、車載に適した電子機器ケースを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する電子機器ケースの一態様は、コネクタ挿入部と突出部を備える。コネクタ挿入部は、コネクタを挿入するための開口部がケース本体から突出しており、開口部の内外を連通する水抜き孔が設けられている。また、突出部は、コネクタ挿入部の下側にてケース本体から張り出しており、鉛直方向において水抜き孔と重なるように設けられている。
【0006】
コネクタ挿入部の開口部は、ケースの上方に向けて開口している。水抜き孔は、上方に向けて開口しているコネクタ挿入部の底部を上下方向に貫通している。水抜き孔の下側には平板状の突出部が位置しており、タイヤが撒き上げる泥や塵埃が水抜き孔から侵入することを防止する。
【0007】
本明細書が開示する電子機器ケースの別の態様は、突出部を設ける代わりに、スリット状の水抜き孔が設けられている。スリット状の水抜き孔は、上記したケースと同様に、上方に向けて開口しているコネクタ挿入部の底部を上下方向に貫通している。水抜き孔をスリット状とすることによって、泥や塵埃によって目詰まりを起こすことを防止する。なお、コネクタ挿入部は、ケース本体から水平方向に張り出している。
【0008】
上記した突出部や、ケース本体から水平方向に張り出しているコネクタ挿入部は、電子機器の持ち手としても機能する。即ち、上記の電子機器ケースは、水抜き孔への泥の侵入や目詰まりを防止するという利点に加え、持ち手があるので車両への取り付けが容易となるという利点も備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】インバータの上面図である。
【図2】インバータの正面図である。
【図3】インバータの側面図である。
【図4】図1の破線で囲った領域の拡大図である。
【図5】第2実施例のインバータの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施例)図面を参照して実施例の電子機器ケースを説明する。本実施例の電子機器ケースは、電気自動車に搭載されるインバータ2のケース2aである。図1に、インバータ2(ケース2a)の上面図を示し、図2にインバータ2(ケース2a)の正面図を示し、図3にインバータ2(ケース2a)の側面図を示す。図中のZ軸が鉛直方向に相当し、X軸が車両の前後方向(あるいは横方向)に相当し、Y軸が車両の横方向(あるいは前後方向)に相当する。
【0011】
インバータ2は、バッテリの直流電力を車輪駆動用のモータに適した交流電力に変換する装置である。インバータ2は、車両のフロントコンパートメントに搭載される。インバータ2に雨が直接当たることはないが、雨が激しい場合にはフロントコンパートメント内に水が侵入することがある。典型的には、タイヤが撒き上げる泥水がフロントコンパートメント内に侵入することがある。あるいは、ボンネットを開けたときに雨が降り込むことも考えられる。そのため、インバータケース2aには防水対策が施される。
【0012】
ケース2a(ケース本体)には、モータに交流電力を供給するケーブルのコネクタを挿入するコネクタ挿入部4a、4b、及び4cが設けられている。3個のコネクタの夫々に、個別のモータ(不図示)に電力を供給するためのコネクタが挿入される。3個のコネクタ挿入部は基本的に同じ形状を有しているので、特定の挿入部を示すとき以外は、複数のコネクタ挿入部を「コネクタ挿入部4」と総称する。
【0013】
コネクタ挿入部4は、ケース2aから上方に向かって突出している。コネクタを挿入するための開口部7が、鉛直上方に開いている。図4に、図1にて符号IVが示す破線領域の拡大図を示す。理解し易いように、図4の拡大図では、開口部7にハッチングを施してある。開口部7の内部には、3個の金属端子6が露出している。3個の金属端子6は夫々、3相UVW各相の電流を供給するための端子である。
【0014】
図1〜4に示すように、開口部7は鉛直上方に向かって開口しており、ケーブルコネクタ(不図示)は鉛直上方から下方に向けて挿入される。防水性を確保するため、コネクタ挿入時には開口部7にゴムパッキン(不図示)が取り付けられる。
【0015】
コネクタ挿入部4の内側に水が侵入したときのために、上方に向けて開口しているコネクタ挿入部4の底部に水抜き孔5が設けられている。水抜き孔5は、コネクタ挿入部の底部を上下方向に貫通しており、コネクタ挿入部4の内外を連通している。図1、図2に示されているように、一つのコネクタ挿入部4に2個の水抜き孔5が設けられている。コネクタ挿入部4内に侵入した水は、底部に設けられている水抜き孔5から排出される。
【0016】
夫々の水抜き孔5の下方に、平板状の突出部8が設けられている。突出部8は、コネクタ挿入部4の下方にて、ケース2aの側面から水平方向に張り出している。鉛直方向から見ると、即ち、図のZ軸方向に見ると、水抜き孔5と突出部8はオーバーラップする。突出部8は、下から撒き上がる泥や塵埃が水抜き孔5に侵入することを防止する。
【0017】
突出部8の他の利点を説明する。図3によく示されているように、突出部8は、コネクタ挿入部とほぼ同程度にケース本体から張り出している。別言すれば、鉛直方向から見たとき、突出部8はコネクタ挿入部4を超えては突出していない。そのため、突出部8はケース2aのZ方向射影面積を増大させない。即ち、突出部8はケース2aのサイズを増大させない。
【0018】
突出部8は、インバータ2を車両に取り付ける際に取手としても機能する。図2に示されているように、突出部8は、ケース2aの長手方向に沿って複数設けられているので、作業者がインバータ2を持つのに都合がよい。インバータ2を縦置きする場合(インバータ2の長手方向を車両の前後方向に向ける)にも横置きする場合(インバータ2の長手方向を車両の横方向に向ける)にもインバータ2は持ち易く、組み付け作業性がよい。
【0019】
(第2実施例)次に、第2実施例のインバータケース102aを説明する。図5に、インバータケース102aの部分拡大図を示す。図5(A)は、第1実施例の図4に対応する。図5(B)は、図5(A)に対応する側面図である。ただし、座標系の取り方が図3とは異なることに留意されたい。図5(A)ではZ軸(上方向)が図の上方向に相当し、図5(B)では、Z軸(上方向)は図の右方向に相当する。
【0020】
図5(A)に示すように、コネクタ挿入部104の外形状は第1実施例のコネクタ挿入部4と同じである。第2実施例のコネクタ挿入部104は、鉛直方向にコネクタ挿入部を貫通する水抜き孔105の形状がスリット状であるという特徴を有する。第2実施例のコネクタ挿入部104は、ケース102a(ケース本体)の側面から水平方向に張り出している。そして、図5(B)に示されているように、コネクタ挿入部104の底面109が平坦である。第2実施例のケース102aは、第1実施例における突出部8が設けられていない。第2実施例のケース102aでは、底面109が平坦なコネクタ挿入部104自体が、取っ手の機能を果たす。
【0021】
第2実施例では、水抜き孔105がスリット状であり開口が広い。従って、撒き上がる泥や塵埃によって目詰まりし難い。また、突出部8が設けられていないため、下側から撒き上げられる泥水や塵埃は水抜き孔105を通じてコネクタ挿入部104の内部に侵入するが、コネクタ挿入部104の底部を上下方向に貫通している水抜き孔105の開口が広いので、一旦侵入した泥や塵埃も直ぐに排出される。
【0022】
第2実施例のケース102aは、第1実施例のケース2aに備えられていた突出部8が設けられていない。そのため、第2実施例のケース102aは、第1実施例のケース2aと比較してコストが低いという利点もある。また、第1実施例のケース2aのように、板状の突出部8を有していないので、突出部8が破損するということがなく、耐久性が高い。さらに、ケース102aはアルミニウム等の射出成型工法で製造されるが、板状の突出部8が存在しないので、ケース102aを製造するための金型に、突出部8を形成するための細長いキャビティが必要ないので金型のコスト(例えばメンテナンスコスト)も嵩まない。
【0023】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0024】
2、102:インバータ
2a、102a:ケース本体
4、104:コネクタ挿入部
5、105:水抜き孔
6:端子
7:開口部
8:突出部
109:コネクタ挿入部底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタを挿入するための開口部がケース本体から突出しており、開口部の内外を連通する水抜き孔が設けられたコネクタ挿入部と、
コネクタ挿入部の下側にてケース本体から張り出しており、鉛直方向において水抜き孔と重なるように設けられた突出部と、
を備えることを特徴とする電子機器ケース。
【請求項2】
コネクタを挿入するための開口部がケース本体から突出しており、開口部の内外を連通するスリット状の水抜き孔が設けられたコネクタ挿入部を備えており、
前記コネクタ挿入部が、ケース本体から水平方向に張り出していることを特徴とする電子機器ケース。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate