説明

電子的に支援された薬剤送達装置

本発明は、電子的に支援された薬剤送達装置に関する。薬剤送達装置は投与量データを検知するためのグレイコード型検出器を含むことができ、検出器は、交互の標識のシーケンスからなるコードトラック、およびコードトラックに沿って延びる方向に相互に離間して配置された複数の検出器を含む。薬剤送達装置は、投与量設定時に近位方向へ、投与量注入時に遠位方向へ移動する投与量セレクタを含んでもよく、投与量セレクタはラッチ掛け要素によって投与完了位置にラッチ掛けされる。ラッチ掛け要素は、投与完了状態を示すための投与完了スイッチを作動する。薬剤送達装置は、組み込み電子回路の消費電力を効果的に最小化する電力管理機能を組み込んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子的に支援された薬剤送達装置に関する。具体的には、本発明は、薬剤送達装置からの放出投与量のサイズを検出および保存することに関連する対処手段に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用薬剤送達装置は、選択された投与量の薬剤を患者に送達するために使用される。インスリンなどのいくつかの薬剤は自己投与される。典型的な糖尿病患者は、一日のうちに数回のインスリン注射を必要とする。
【0003】
WO01/95959に開示される注射装置など、最先端の薬剤送達装置は、患者の要求に関してほとんどの需要を満たす、使いやすくて正確な装置を提供している。しかし、純粋に機械的に働く注射装置は、後の検索のために、先に注射された投与量に関する情報を保存することができない。
【0004】
WO02/92153に示される注射装置など、いくつかの先行技術による装置は、電子投与量サイズ識別装置、および先に注射された投与量の投与量サイズとともに現在設定されている投与量のサイズを表示するために使用されることが可能な電子ディスプレイを含む。
【0005】
より使いやすい装置を提供するために、注射装置の投与量セレクタは、好ましくは、非常に微小な増分にダイヤルを合わせることが可能な回転式投与量セレクタを含むべきである。特に薬剤の半増分単位の送達のための注射装置において、1つの投与量サイズから次の連続的な投与量サイズに回転する際の増分ステップは、好ましくは非常に小さい。これは、そうでなければ通常は投与量セレクタを数回完全に回転させる必要が生じる、より大きな投与量にダイヤルを合わせる場合に、特に重要である。このような「無限の」回転は、通常は不必要な不快感を招くと考えられるだろう。薬剤送達装置における漸増投与量設定ステップを最小化する傾向は、投与量サイズを検出する検出システムの精度に関する要求の増加を招く。
【0006】
先行技術による薬剤送達装置の別の問題は、投与状態の終わり、すなわち投与動作が完了した特定の状況の監視が、いくぶん不正確または信頼できないかも知れないということであり、投与量情報の正確な監視に影響をもたらす。
【0007】
異なるバージョンの注射装置を設計することにより、異なるバージョン、たとえば全漸増装置および半漸増装置のために異なる投与量増分を提供する際の別の問題は、通常、両方のバージョンを十分に機能させるために、多数の部品の再設計を要することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記で認識された先行技術による装置を考慮して、本発明は、注射装置における動作の電子検出の改良を可能にする薬剤送達装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明のさらなる目的は、外部装置を用いてデータを転送する手段を随意で備えた電子薬剤送達装置を提供することであって、薬剤送達装置は、組み込み電子回路の消費電力を最小化するのに効果的でありながら、装置の動作中に使いやすい電力管理機能を組み込んでいる。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、より優れた性能を有し、同時に低コストで製造される装置を獲得するための対策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第一の態様において、本発明は、保持された薬剤リザーバから薬物剤を送達するための薬剤送達装置に関し、装置は、a)薬剤送達装置の遠位端に向かってカートリッジのピストンを移動させるピストンロッドと、b)押し込み力が印加されるとピストンロッドを駆動する駆動スリーブと、c)カートリッジから放出されるべき投与量の体積を設定するための回転式投与スリーブ部材と、d)駆動スリーブを投与スリーブ部材に結合および分離させるためのクラッチ機構と、e)設定投与量および/または放出投与量のサイズを検出する回転位置エンコーダであって、投与量設定中には相互に回転し、投与量放出中には相互に回転せず、2つの部品間の相対的回転位置に関連するデータを検知するために、動作可能に結合されている回転位置エンコーダとを含む。
【0012】
装置において、クラッチ機構は、放出中に初期押し込み力が印加されるとクラッチの状態変化(すなわち結合または分離)を生じるように構成されており、回転位置エンコーダは、前記クラッチの状態変化の後に制御読み出しを実行する。放出投与量の体積の決定は、前記制御読み出しによって取得されるデータを組み込んでいる。放出投与量の体積の決定は、さらに、制御読み出しと比較する開始点を提供するように、先の放出手順の終了時、投与量設定手順の開始時、および/または投与量設定手順の最中に取得されたデータに基づいてもよい。
【0013】
本発明の第一の態様によれば、投与量設定中にのみ発生する相対的回転位置変化を検出するように構成されている回転位置エンコーダを組み込むことによって、位置エンコーダが投与量の放出を実行するために必要な投与力に関する増加を与えないことを保証する。
【0014】
第一の態様の第一の実施形態において、薬剤送達装置は、投与スリーブ部材および駆動スリーブがともに回転するように、投与量設定中に投与スリーブ部材と駆動スリーブを結合するクラッチ機構であって、投与量放出中に駆動スリーブの回転を防止しながら投与スリーブ部材を回転させるように、投与量放出中に駆動スリーブから投与スリーブ部材を分離するクラッチ機構を含む。このような構成において、駆動スリーブの回転は、投与量設定中に監視されてもよい。設定投与量を放出するために押し込み力が印加されるとき、駆動スリーブの回転は筐体に対してロックされ、このロックが発効した後に駆動スリーブの回転位置の制御読み出しが実行される。この制御読み出しは、前記ロックが確立した直後、あるいは投与量放出の完了時、すなわち投与完了状態において実行されてもよい。
【0015】
第一の態様の第二の実施形態において、薬剤送達装置は、投与量設定中に投与スリーブ部材が回転するが投与量設定中に駆動スリーブは回転的に静止するように、投与量設定中に投与スリーブ部材と駆動スリーブを分離するように構成されたクラッチ機構を含む。このような実施形態において、クラッチ機構は、投与量放出中に、投与スリーブ部材の回転と駆動スリーブの回転とを結合する。このような構成において、投与量設定中に、投与スリーブ部材と駆動スリーブとの間の相対的回転が監視される。投与量を放出するために押し込み力が印加されると、駆動スリーブの回転が投与スリーブ部材に対してロックされ、このロックが発効した後に、投与スリーブ部材に対する駆動スリーブの相対的回転位置の制御読み出しが実行される。前記制御読み出しは、前記ロックが確立した直後、あるいは投与量放出の完了時、すなわち投与完了状態において、実行されてもよい。このような機構を組み込む薬剤送達装置のさらなる仕様については、「投与量計測ドラム」と称される投与スリーブ部材および「駆動管」と称される駆動スリーブを有する薬剤送達装置を開示しているWO99/38554を参照されたい。
【0016】
第一の態様による第一および第二の両実施形態において、放出投与量は、投与量設定中の相対的回転運動に基づいて計算され、回転のロックが確立した後の最終回転位置を考慮している。したがって、装置から放出された投与量の正確な電子投与量読み出しと一致する精密な測定が実現される。
【0017】
第一の態様による薬剤送達装置は、投与スリーブ部材と一体化されることによって、あるいは投与スリーブ部材と同調して回転する部材として投与スリーブ部材に関連づけられる機械的投与量ダイヤル目盛りを含んでもよい。機械的投与量ダイヤル目盛りと、放出投与量および/または設定投与量のサイズを電子的に検出する手段とを両方組み込むことによって、たとえ電子部品に関する故障が発生しても、装置の基本的な機械的機能が確実に使用可能である。前記の投与量検知方法を使用することによって、1回転あたりの異なる投与量設定位置を数多く有する精密装置でも、検出された放出値が、確実に、機械的目盛りに示された設定投与量と正確に対応する。
【0018】
上述の検知方式によって取得された投与量情報は、薬剤送達装置に設けられた電子ディスプレイ上に表示されてもよく、代わりに、または付加的に、表示のため、保存のため、または遠隔サーバへの送信のため、外部装置に転送されてもよい。
【0019】
薬剤送達装置は、投与量放出中にピストンロッドとは異なる距離だけボタンが移動するように、たとえば投与量放出のために前記押し込み力が印加されるボタンなどの投与アクチュエータと前記ドライバとの間に機械的アドバンテージ(すなわちギアリング)を提供する機構をさらに含んでもよい。
【0020】
本発明のさらなる態様によれば、投与量設定中および/または注入中に第一要素と第二要素との間の相対運動を検出するためのグレイコード型検出器を組み込んだ薬剤送達装置が提供され、グレイコード型検出器は第一要素に設けられたコードトラックを含み、コードトラックは2つの状態を交互に繰り返す標識のシーケンスからなり、コードトラックは第二要素に設けられた複数の検出器に関連づけられており、各検出器は2つの状態を検知し、複数の検出器がコードトラックに沿って延びる方向に相互にずれていることにより、複数の検出器がコードトラックに沿って移動するとき、グレイコード方式の読み出しシーケンスが提供される。
【0021】
このような位置エンコーダによれば、物理的空間を節約するために、グレイコードトラックに沿って多数の断片的または完全なグレイコード状態が移動しただけの、全ての検出器が同じ接触パターンを使用するところに、グレイコードが作成される。このように、全ての検出器が同じトラックに実装可能であり、このため位置エンコーダの全体的な寸法が減少する。また、このようなセンサは、トラックに沿った方向を横断する方向の公差に対してより強い。
【0022】
グレイコード型検出器は、交互に並んだ第一および第二の状態それぞれの第一および第二領域を含んでもよく、各第一領域は拡張子Xのコードトラックに沿った拡張子を有し、各第二領域は長さXのコードトラックに沿った拡張子を有する。いくつかの実施形態において、長さXはX2に対応する。別の実施形態において、長さXはXと異なる。グレイ型検出器が線形運動を測定する実施形態において、前記拡張子XおよびXは長さを指定する。グレイ型検出器が回転運動を測定する実施形態において、前記拡張子XおよびXは環状幅を指定する。
【0023】
いくつかの実施形態において、コードトラックは、内側円筒面または外側円筒面のいずれかにおいて、円筒面上の円周バンドとして配置されてもよい。前記バンドは、1つまたは多数の繰り返しグレイコードシーケンスを含んでもよく、ループ状に配置された連続バンドを形成してもよい。別の実施形態において、グレイコードシーケンスは、らせん状に延伸するトラックとして配置されてもよい。さらに別の実施形態において、グレイコード検出器は、線形運動を検出するための平面センサである。
【0024】
いくつかの実施形態において、グレイコード型検出器は、1つ以上の追加検出器によって検知される少なくとも1つの追加領域を含み、前記追加検出器は、前記追加検出器とグレイコードトラックとの間の、グレイコードシーケンスに沿った方向を横断する方向の相対運動を検知するために配置されている。薬剤送達装置が投与量設定部材を含むとき、投与量設定部材の回転運動はグレイコードセンサによって検出され、追加検出器は、薬剤送達装置の注射ボタンに射出力が印加されたかどうかを検出するために使用されてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態において、複数の検出器は、少なくとも3つであり、例えば4つ、5つ、6つ、または7つである。一実施形態において、コードトラックは、導電コードトラックに印加される電圧を検出するセンサによって検知される交互の導電および電気絶縁領域を有する導体コードトラックとして提供される。別の実施形態では、グレイコード型検出器は光学的測定に基づいている。さらに別の実施形態において、グレイコード型検出器は、誘導または容量センサに基づく。
【0026】
本発明のさらに別の態様によれば、投与量設定中および/または投与量注入中に第一要素と第二要素との間の相対的回転位置変化を検出するための読み出しアセンブリを組み込んだ薬剤送達装置が提供され、読み出しアセンブリは、第一要素に関連づけられており、第二要素と関連づけられた円周配置コードトラックの内側に配置されている。円周コードトラックが読み出しアセンブリを取り囲むと、大きな測定計が提供され得るので、読み取り精度を改善することができる。
【0027】
本発明のさらなる態様によれば、2つの異なる薬剤送達装置のセットを提供する方法が提供され、2つの装置は、互いに異なる投与量増分を有する投与量設定機構を組み込んでおり、この方法は、同じタイプの回転位置エンコーダの使用を含み、前記位置エンコーダは、第一の装置の投与量増分と第二の装置の投与量増分の倍数の両方の積である分解能を有する。前記方法には、回転位置エンコーダから受信した信号に基づいて投与量体積を決定するためのアルゴリズムを修正するステップをさらに組み込むことができる。
【0028】
本発明のさらなる態様によれば、薬剤リザーバから薬物剤を送達するための薬剤送達装置が提供され、この装置は、投与量を設定するために近位方向に持ち上げられ、薬剤送達装置から設定投与量を放出するために遠位位置で押される投与量セレクタと、投与完了の最遠位位置で投与量セレクタをラッチするためのラッチ機構とを含み、前記ラッチ機構は、前記投与量セレクタが投与完了にあるときに少なくとも部分的に半径方向に移動する1つ以上のラッチ要素を含み、投与量セレクタのラッチ掛けは、投与量セレクタを近位方向に引くことによるユーザの操作により解放され、前記1つ以上のラッチ要素は、前記投与完了スイッチの1つ以上を作動させて投与量セレクタの投与完了位置を示す。
【0029】
記載された構成により、投与完了状態の検出が、投与量セレクタの投与完了位置、すなわち停止位置のラッチ止めと完全に同期することが保証される。
【0030】
前記1つ以上のラッチ要素の少なくとも1つは、バネ要素で強制されることによって、あるいは付勢手段を組み込むラッチ要素自体によって、ラッチ位置に向かって付勢される。
【0031】
ラッチ要素は、それぞれのラッチ要素のボールロック機構構成に組み込まれたボールとして提供されてもよい。
【0032】
別の実施形態において、ラッチ要素は、投与量セレクタをそのラッチ位置にラッチ掛けするとその径を拡大または縮小するように、半径方向に付勢される環状延伸バネとして提供されてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、薬剤送達装置は、互いに対向するように配置された少なくとも2つの投与完了スイッチを含む。前記少なくとも2つの投与スイッチの1つ目は、それに対応するラッチ要素の第一方向への移動によって起動され、前記少なくとも2つの投与完了スイッチの2つ目は、それに対応するラッチ要素の、前記第一方向に実質的に対向する方向への移動によって起動される。このような構成において、前記スイッチは、投与量セレクタの投与完了位置を示すために、スイッチの冗長なセットを形成する。
【0034】
前記スイッチは、少なくとも60度離れて、例えば少なくとも90度、少なくとも120度、少なくとも180度離れて配置されてもよい。
【0035】
本発明のさらなる態様によれば、薬剤リザーバから薬剤を送達するための薬剤送達装置は、薬剤送達装置から設定投与量を放出するために、近位方向に持ち上げられて遠位方向に押される投与アクチュエータと、全投与量の放出の完了時に投与アクチュエータの投与完了位置を示すための投与完了スイッチ配置とを含み、投与完了スイッチ配置は、均衡の取れた構成で少なくとも2つの投与完了スイッチを含み、前記スイッチは、投与アクチュエータの投与完了位置を示すためのスイッチの冗長なセットを形成する。
【0036】
薬剤送達装置は、投与アクチュエータの動作を、各々がそれぞれの投与完了スイッチの起動に特化されている多数のスイッチ起動要素の対応する動作に変える機構を含んでもよく、それぞれのスイッチ起動要素は、互いに異なるスイッチ運動指示を実行するように構成されている。
【0037】
投与完了スイッチは、主軸の周りの異なる角度位置に分布されてもよく、主軸は投与アクチュエータの動作によって定義される。一実施形態において、装置は、90〜180度離れるなど、互いに対向して配置された2つの投与完了(EOD)スイッチを含む。別の実施形態は、90度未満だけ離れて配置された2つのスイッチを含むことができる。さらに別の実施形態は、およそ120度離れて配置された3つのスイッチなど、3つ以上のスイッチを含んでもよい。
【0038】
記載された投与完了構成を医療用送達装置に組み込むことによって、正確な投与完了状態の検出が可能であり、この構成は、公差および投与アクチュエータが操作されたときに印加され得る機械的応力の両方について、特に確実な検出を行う。
【0039】
本発明のさらに別の態様によれば、薬剤送達装置は、a)薬剤送達装置の少なくとも1つの部品の状態を監視するためのコントローラを含むスイッチ回路であって、コントローラが複数の入力端子および出力端子を有するスイッチ回路と、b)前記少なくとも1つの部品の状態が変化すると動作する複数のスイッチであって、各々の第一末端がコントローラの接地電圧レベル端子に接続され、第二末端がコントローラのそれぞれの入力端子に接続されている複数のスイッチと、c)複数のプルアップ抵抗器であって、各プルアップ抵抗器が、抵抗器の第一末端を対応する入力端子に、および抵抗器の第二末端をコントローラの対応の出力端子に、それぞれ接続することによって、前記複数のスイッチのうちの対応する1つと直列に接続されている複数のプルアップ抵抗器とを含む。各出力端子の電圧レベルは、それぞれのスイッチの閉鎖がそれぞれの入力端子によって検出可能な第一電圧レベルから、前記スイッチの閉鎖時に実質的にゼロ電流状態でそれぞれのプルアップ抵抗器を動作するための第二電圧レベルまで、さらには、前記複数のスイッチの別の少なくとも1つの閉鎖に応答して前記第一電圧レベルまで、制御可能である。
【0040】
記載されたようなスイッチ回路を装置に組み込むことによって、スイッチ回路が1つの安定状態から別の安定状態に変化するのにかかる時間の間だけ、スイッチ検出回路が電力を消費することが保証される。これは、バッテリなどの内部電池によって電力供給される薬剤送達装置において特に有用である。たとえば、これはバッテリの長寿命を保証し、最終的には装置の全寿命の間、1つの同じバッテリの使用を可能にする。
【0041】
一実施形態において、複数のスイッチは第一スイッチおよび第二スイッチを含み、相補的スイッチ動作を提供するように、第一スイッチの極性は第二スイッチの極性とは逆である。
【0042】
さらなる実施形態において、複数のスイッチは第一および第二スイッチを含み、第一スイッチは、装置の部品が第一位置から第二位置へ移動すると閉鎖し、第二スイッチは前記部品が第二位置から第三位置へ移動すると閉鎖する。例示的な実施形態は、投与完了状況を検知するスイッチセンサとしての前記第一スイッチ、および押圧力が投与アクチュエータに対して印加されたかどうかを検知するスイッチセンサとしての前記第二スイッチを含む。
【0043】
また、いくつかの実施形態において、薬剤送達装置は、保持されたリザーバから送達される薬物の投与量を選択する投与量設定機構を含み、薬剤送達装置は、投与量設定中および/または投与量放出中に移動する部材の位置を検出することによって投与量関連情報を監視するための位置エンコーダをさらに含み、前記位置エンコーダは1つ以上の導電コード化トラックを含み、各トラックは導電および非導電領域を含む。前記位置エンコーダは、スイッチと導電コード化トラックとが互いに対して移動する際に、前記1つ以上の導電コード化トラックを読み出す複数の前記スイッチを含む符号化スイッチ回路をさらに含む。
【0044】
符号化スイッチ回路に前記スイッチ回路を使用することによって、特にエネルギー効率の良い検出構成が提供され、これは、検出された位置変化の後、可能であれば位置変化を検出した後の所定時間経過分だけ、プルアップ抵抗器の電力を遮断する。
【0045】
いくつかの実施形態において、1つ以上の導電コード化トラックは、単一のグレイコードシーケンス、または総シーケンスコード長nを形成する複数の繰り返しグレイコードシーケンスを形成し、前記導電コード化トラックを読み出す前記符号化スイッチ回路の複数のスイッチは、3つ、4つ、5つ、6つのスイッチ、および7つのスイッチなどである。
【0046】
位置エンコーダのグレイコードは、前記符号化スイッチ回路の少なくとも1つのスイッチが、現在位置からいずれかの方向へ少なくとも毎秒状態変化するたびに閉鎖するように構成されてもよく、前記現在位置は、各可能なn個の位置のいずれかから選択される。
【0047】
一形態において、位置エンコーダは、連続する導電および非導電領域を有し、前記単一または複数の繰り返しグレイコードシーケンスが得られるように、前記符号化スイッチ回路のスイッチが単一のトラックに沿って分布した単一の導電コード化トラックを含む。
【0048】
別の形態において、位置エンコーダは複数の列および行を含むマトリクスを形成し、前記符号化スイッチ回路の単一または複数のスイッチが前記マトリクスの異なる行と整合している複数の導電コード化トラックを含む。
【0049】
薬剤送達装置は、一回の回転にわたる多数の異なる回転位置Pにおいて回転可能な回転式投与量セレクタを含んでもよく、位置エンコーダは投与量セレクタの回転位置を検出するように構成されており、前記総シーケンスコード長nはPの2倍、3倍、または4倍に選択され、これは投与量セレクタが投与量設定中に複数回回転することを意味する。
【0050】
本発明のさらに別の態様によれば、薬剤送達装置は、薬剤送達装置の少なくとも1つの部品の状態を監視するためのコントローラ、および前記少なくとも1つの部品の状態が変化すると動作する複数のスイッチを含み、各スイッチは、それぞれのプルアップ抵抗器に直列に接続されている。それぞれのスイッチおよびプルアップ抵抗器はコントローラと結合しており、コントローラは、前記プルアップ抵抗器のうちの対応するものにおける電圧降下を監視することによって、それぞれのスイッチの状態を検出する。コントローラはさらに、そのそれぞれのスイッチの閉鎖を検出するために各プルアップ抵抗器に第一電圧レベルを選択的に印加し、前記スイッチの閉鎖を検出すると、対応するプルアップ抵抗器に第二電圧レベルを印加することにより非電流導通状態にし、そして前記複数のスイッチのうち少なくとも1つの他のスイッチの閉鎖に応答して、前記対応するプルアップ抵抗器に第一電圧レベルを印加するように構成されている。
【0051】
本発明のさらに別の態様に対応して、放出される薬剤の投与量を設定するための第一ユーザ操作手段、および薬剤リザーバから設定投与量を放出するための第二ユーザ操作手段を含む薬剤送達装置が提供される。装置は、データを保存および通信するための電子回路であって、冬眠状態および第一動作状態を有する電子回路と、冬眠状態から動作状態へ電子回路を起動する接触手段とを含み、第一ユーザ操作手段または第二ユーザ操作手段をユーザが操作することにより接触手段が作動し、それによって冬眠状態から第一動作状態へと電子回路が起動する。
【0052】
第一ユーザ操作手段は、回転部材の形状を有することができ、第二ユーザ操作手段は軸方向に移動可能な部材の形状を有することができる。一例として、それぞれ第一ユーザ操作手段および第二ユーザ操作手段を提供するために、回転可能かつ軸方向に移動可能な、複合ユーザ操作部材が実現されてもよい。薬剤送達装置には、それぞれ第一ユーザ操作手段および第二ユーザ操作手段によって操作可能な機械的投与量設定および放出手段を設けることができ、同様に、薬剤で満たされたリザーバを含むか、または薬剤で満たされたリザーバを受けるように構成することができる。薬剤送達装置がモータ式投与器型である場合、第一ユーザ操作手段または第二ユーザ操作手段はキーボード上の押しボタンであってもよい。
【0053】
電子回路は、無線でデータを送信および/または受信するための通信手段を含んでもよく、通信手段は、冬眠状態にあるスリープ状態、および第一動作状態にある通電手段を有する。通信手段の状態は、第一予備設定条件が合致したとき、たとえば(i)通信手段が所定時間にわたって対応する装置との無線通信の確立を試みて失敗したとき、(ii)通信手段が所定時間にわたって対応する装置に一定量のデータの送信を試みて失敗したとき、(iii)通信手段が対応する装置への一定量のデータの送信に成功したとき、(iv)第一ユーザ操作手段または第二ユーザ操作手段が作動して、設定投与量を放出するためにそれぞれ投与量を設定するとき、または(v)第一ユーザ操作手段または第二ユーザ操作手段が停止位置に配置されたときに、通電からスリープ状態に変化することができる。
【0054】
例示的実施形態において、電子回路は第二動作状態を有し、第一動作状態は第一レベルの消費電力を有し、第二動作状態は第二レベルの消費電力を有し、第一予備設定条件が合致したときに動作状態が第一レベルから第二レベルに変化し、第二予備設定条件が合致したときには動作状態は第二レベルから冬眠状態に変化する。
【0055】
電子回路は、無線でデータを送信および/または受信するための通信手段であって、冬眠状態にあるスリープ状態、第一動作状態にある通電状態、および第二動作状態にあるスリープ状態を有する通信手段と、薬剤送達装置から放出される薬剤の量/時間ログを表すデータを検出および保存するための検出手段であって、冬眠状態にあるスリープ状態ならびに態第一動作状態および第二動作状態における通電状態を有する検出手段とを含むことができる。
【0056】
言い換えると、装置は、2つの機能(たとえば検出手段および通信手段)が低電力様式にある低電力冬眠状態、両方の機能(たとえば検出手段および通信手段)が通電高電力状態にある高電力状態、および1つの機能(たとえば検出手段)が通電高電力状態にあって第二の機能(たとえば通信手段)が低電力スリープ様式にある中電力状態を有する。
【0057】
通信手段の状態は、第一予備設定条件が合致したとき、たとえば(i)通信手段が所定時間にわたって対応する装置との無線通信の確立を試みて失敗したとき、(ii)通信手段が所定時間にわたって対応する装置に一定量のデータの送信を試みて失敗したとき、(iii)通信手段が対応する装置への一定量のデータの送信に成功したとき、(iv)第一ユーザ操作手段または第二ユーザ操作手段が作動して、設定投与量を放出するためにそれぞれ投与量を設定するとき、または(v)第一ユーザ操作手段または第二ユーザ操作手段が停止位置に配置されたときに、通電からスリープ状態に変化することができる。
【0058】
検出手段の状態は、第二予備設定条件が合致したとき、たとえば(i)第二ユーザ操作手段が設定投与量を放出するために作動したとき、(ii)第二ユーザ操作手段が設定投与量を放出するために作動して所定時間が経過したときであって、所定時間とは放出される薬剤の量を電子回路に表示させる時間であるとき、(iii)第二ユーザ操作手段が停止位置に配置されたとき、(iv)第二ユーザ操作手段が停止位置に配置されて所定時間が経過したときであって、所定時間とは放出される薬剤の量を電子回路に表示させる時間であるとき、または(v)所定時間が経過したときに、通電からスリープ状態に変化することができる。
【0059】
さらなる態様において、(i)投与量設定部材および無線送信器を有する薬剤送達装置を提供するステップと、(ii)無線送信器を第一位置に移動させることによって無線送信器を通電するステップと、(iii)無線送信器を第二位置に移動させることによって無線送信器の通電を切断するステップとを含む、薬剤送達装置を操作する方法が提供される。
【0060】
本明細書で使用される「薬物」という用語は、たとえば液体、溶液、ゲル、または微細懸濁液など、制御された方法で中空針またはカニューレなどの送達手段内を通過させることが可能な、いずれかの薬物含有流体薬剤を包含するものとする。また、投与に先立って液状に溶解される凍結乾燥薬剤は、前記の定義に包含される。代表的な薬物は、固体(調剤済み)または液体状の、ペプチド、タンパク質(たとえばインスリン、インスリン類似体、およびC−ペプチド)、およびホルモンなどの医薬品、生物由来または活性薬剤、ホルモンおよび遺伝子薬剤、栄養剤、およびその他の物質を含む。
【0061】
以下の図面を参照して、本発明についてさらに詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第一の実施形態による注射装置の平面図である。
【図2】図1に示される注射装置の近位端図である。
【図3】図1に示される装置の投与量セレクタディスプレイの近位端図である。
【図4a】停止位置に配置された投与量セレクタを備える投与アセンブリの断面図である。
【図4b】準備位置に配置された投与量セレクタを備える投与アセンブリの断面図である。
【図4c】18IUに配置された投与量セレクタを備える投与アセンブリの断面図である。
【図5】18IUに配置された投与量セレクタを備える投与アセンブリの側面図である。
【図6a】投与量設定モードで投与量セレクタが18IUに配置された、図2に示される面A−Aにおける投与アセンブリの断面図である。
【図6b】投与量モードで注入中の初期位置の、図2に示される面A−Aにおける投与アセンブリの断面図である。
【図6c】投与量モードで投与完了時の、図2に示される面A−Aにおける投与アセンブリの断面図である。
【図7a】図4aと同じ状態の、投与アセンブリの側面図である。
【図7b】図4bと同じ状態の、投与アセンブリの側面図である。
【図8】投与スリーブ部材の断面斜視図である。
【図9】電子モジュール筐体に実装された積層電子部品の斜視図である。
【図10】図1の注射装置の分解斜視図である。
【図11】図1の注射装置の電子機器のブロック図である。
【図12a】図4aの部分Bに示される投与完了スイッチの拡大図である。
【図12b】図4bの部分Cに示される投与完了スイッチの拡大図である。
【図13】グレイコードシリンダアセンブリの拡大斜視図である。
【図14】グレイコードセンサアセンブリが取り付けられた案内管の斜視図である。
【図15】グレイコードセンサアセンブリの拡大斜視図である。
【図16】特定の位置におけるグレイコードセンサの第一の実施形態の模式図である。
【図17】6つの異なる位置において示される図16のグレイコードセンサの模式図である。
【図18】8つの異なる位置において示されるグレイコードセンサの第二の実施形態の模式図である。
【図19】図18に示されるグレイコードセンサの可能なグレイコードビットパターンを示す表である。
【図20a】プルアップ抵抗器を組み込んだ異なるスイッチ構成を示す図である。
【図20b】プルアップ抵抗器を組み込んだ異なるスイッチ構成を示す図である。
【図20c】本発明の一態様によるスイッチ構成を示す図である。
【図21】EODセンサおよび投与状態を検知するセンサを有する注射装置の信号を示す表である。
【図22】a〜dは、装置の動作中の電子回路の異なる状態を示す図である。
【図23a】先に注入された投与量の表示を呼び出すための操作手順の図である。
【図23b】通常の投薬手順における操作手順の図である。
【図24】本発明の第二の実施形態のメモリモジュールの図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1は、全体として、本発明の電子的に支援された機能を応用した医療用送達装置を示している。図示される医療用送達装置は、カートリッジの形状の、薬物が充填されたリザーバを、投与アセンブリ200の遠位端に結合されたカートリッジ保持器300に収容することができる再利用可能な注射ペンであり、全体として参照番号100で示される。投与アセンブリ200は、カートリッジ保持器300によって保持されるカートリッジ(図示せず)からの投与回数分の薬物を設定および放出する機構を含む。投与アセンブリ200は、ユーザによって作動可能な投与量セレクタ260を含み、この投与量セレクタ260は、投与量を選択するために操作されるもので、その後カートリッジ保持器300に取り付けられて、図示される注射針アセンブリ400を通じて設定投与量を注入するために操作することができる。投与アセンブリ200は窓205をさらに含み、この窓205を通して、投与量セレクタ260によって設定された選択された具体的な投与量サイズを表示する機械的投与規模表示器を見ることができる。図示される形態において、投与量設定過程の間、投与量セレクタ260は投与量を設定するために回転可能に設計されており、投与量セレクタ260が選択された投与量を増加するためにそのように回転するとき、投与量セレクタ260は、図1に示される軸位から投与アセンブリ200を出るように平行移動する。投与量設定過程の後に行われる投与量注入過程の間、投与量セレクタ260に押し込み力が印加されると、投与量セレクタ260は、左に移動して図1に示される軸位に戻り、投与アセンブリ200内に収容された注入機構部品を動作させてカートリッジ内の薬剤を注入するように設計されている。
【0064】
図2は、注射ペン100の端面図である。投与量セレクタ260には、注射ペンの近位端面で見られる電子ディスプレイ275を含むメモリモジュールが設けられている。図3は装置の特定の実施形態の電子ディスプレイ275を示し、このディスプレイ275は、投与量サイズが表示領域275aにおいて読み取られて、最後に注射が実行されてからの経過時間を表示領域275bで見ることができる。図示される実施形態において、前回の注射からの経過時間は、注入動作の完了に続く針挿入待ち時間を示す注射の完了からの経過秒数として、または注射からの経過時間数として示すことができる。このため、表示領域275bに表示されるセグメントの数は、経過時間数または経過秒数として、前回の注射からの経過時間のクイックリファレンスを提供する。特定の実施形態において、タイミング情報とともに複数の先に保存された放出投与量サイズが、データセットとして保存され、たとえば投与量セレクタを前後に軸方向に移動させることによって、あるいは投与量セレクタを回転させることによってなど、投与量セレクタ260を続けて動作させることによって、ディスプレイ275に表示されてもよい。
【0065】
図4aは投与アセンブリ200の断面図であり、この図において、投与量セレクタ260は、停止位置に配置状態、すなわち完全に押し込まれた状態にある。通常、先に設定された投与量の完全な注入(以下、投与完了または「EOD」と称される)の後に、ペンはこの状態になる。図4bは、投与量セレクタ260が近位方向にわずかに引かれ(以下、投与量設定モードと称される)、投与量セレクタ260が0IUを指す投与調整位置になる状態の投与アセンブリ200の断面図である。図4cは、投与量セレクタ260のダイヤルを、18IUの投与量サイズを指す特定の投与調整位置に合わせた、投与アセンブリ(まだ投与量設定モードにある)の断面図である。
【0066】
投与アセンブリ200の機械的設計は、WO01/95959に示されるペン設計と密接に関係し、この引用文献は参照によって組み込まれる。本発明の例示的実施形態の全ての部品は、注射装置100の分解斜視図を示す図10に示されている。
【0067】
投与アセンブリ200は、基部ブッシング202に恒久的に接続し、さらに基部203に恒久的に接続している円筒形の筐体スリーブ201を含む筐体を含む。基部203は、スリーブ201の内側に同軸に配置された円筒形部材として形成される。投与アセンブリ200は、投与アセンブリ200の遠位部を通じて延伸するピストンロッド210の形状のプランジャ軸をさらに含む。ピストンロッド210には、カートリッジ内に保持される流体を放出するために、カートリッジ内でピストンを前方に押すように、カートリッジ保持器300に収容されたカートリッジ内のピストンと協働するピストンワッシャ211が取り付けられている。
【0068】
投与アセンブリ200の遠位部は、注入手順の間、ピストンロッドが回転不能となり、軸方向にのみ移動できるように、基部ブッシング202に対してピストンロッド210を回転的にロックするための回転ロック機構を含む。しかし、回転ロック機構は、カートリッジ交換中には回転ロックを解放する。このタイプの機構は関連技術において周知であるのでこれ以上の説明はしない。代替構成において、ピストンロッドと連動する回転ロック機構は、WO2006/114395に開示されるように、注入手順の間にピストンロッドの回転運動を誘発する回転案内の役割を果たす。
【0069】
ピストンロッド210の外面には長さ方向に沿ってねじ山が設けられている。投与量管220は、ピストンロッド210を取り囲み、放出手順の間、ピストンロッドを前方に駆動するドライバの役割を果たす。ピストンロッド雄ねじ山は、投与量管220の遠位部に形成された雌ねじ山と結合する。
【0070】
投与アセンブリ200は、投与量管220に対する投与量セレクタ260の相対的軸方向移動の間に機械的効率を提供するためのギアリング構成を含む。図示される実施形態において、ギアリングは、歯付きラックおよび歯車を組み込んだギアリング機構によって提供される。ギアリング構成については、図6aから6cを参照して後述する。
【0071】
基部203は、その外面に並目ねじ山203aを含む(図5に最も分かり易く示す)。円筒形バレルとして形成された投与スリーブ部材240が基部203を取り囲んでいる。図示される実施形態では、投与スリーブ部材240には、機械的投与量表示器を提供するように投与スリーブ部材の外面上に印刷された、らせん状に配置された数字の形態の目盛りが設けられている。投与スリーブ部材240は、基部203の外面上に形成されたねじ山203aと協働する雌ねじ山を含む投与スリーブねじ山部材241と嵌合するように嵌め込まれる。注射ペンの操作中、投与スリーブ部材240が回転すると、窓205の下に次の投与目盛り数字が現れる。このため、設定された特定の投与量をペンの外側から読み取ることができる。
【0072】
投与量セレクタ260は、軸方向に延伸する案内管250と接続する。投与アセンブリの組み立てられた形状において、投与量セレクタ260は、案内管250と固定的に嵌合するように嵌め込まれる。案内管250は、投与量間220に対して回転的に固定されるが、投与量間220に対して軸方向に移動することは可能である。案内管250は、a)投与量設定モードおよびb)投与量モードの、2つのペンモードの間のモードセレクタとして機能する。投与量設定モードにおいて、案内管250は、ピストンロッドに対して投与量管を回転させることによって特定の投与量を調整するための部材として機能する。また、案内管250は、投与量設定中の投与量セレクタ260の回転運動を投与スリーブ部材240に伝達するための部材として機能する。投与量モードにおいて、案内管250は、上述のギアリング構成を通じて投与量セレクタの軸方向運動を投与量管の軸方向運動に伝達するための部材として機能する。
【0073】
案内管250には、2セットの結合歯250−1および250−2が設けられている。第一セットの結合歯250−1は、近位方向に延伸し、投与スリーブ部材240の内面上に形成された遠位方向に延伸する協働する結合歯240−1(図8に最も分かり易く示す)と嵌合する。第二セットの結合歯250−2は、案内管250の最遠位端に位置し、遠位方向に延伸する。結合歯250−2については後述で詳細に説明する。案内管250は投与スリーブ部材240に対して軸方向に短い距離だけ平行移動することが可能なので、結合歯250−1および240−1は互いに嵌合したり外れたりすることができる。このため、結合歯250−1および240−1は、案内管250を投与スリーブ部材240と解放可能に嵌合させるための投与ダイヤル式クラッチを形成する。投与量モードのペンを示す図4aに示される状態において、投与ダイヤル式クラッチは嵌合していない。投与量モードのペンを示す図4bに示される状態では、投与量セレクタは、ペン筐体からわずかな距離だけ離れる方向に引かれている。この状態において、結合歯250−1が投与スリーブ部材240の結合歯240−1と嵌合するように、案内管250は近位方向にわずかに移動している。この状態において、投与スリーブ部材240は、投与量セレクタ260の回転に追従する。
【0074】
図4aおよび4bに戻ると、投与アセンブリ200は、基部203に対して同軸に配置され、投与スリーブねじ山部材241に対して近位方向に配置された歯付きリム230を含む。歯付きリム230は、各々が基部203の外面に形成された軸方向に延伸するトラック203b(図5参照)と協働する複数の内向き配向突起を含む。このため、歯付きリム230は、軸方向に移動してもよいが、筐体に対して回転することはできない。歯付きリム230は、案内部材250の上述の第二セットの結合歯250−2と解放可能に嵌合するように配置された1セットの近位対向結合歯230−2(図4b参照)をさらに含む。投与量モードにおいて、図4aに示されるように、結合歯230−2および250−2が嵌合し、このため案内部材250の回転が防止される(結合歯230−2は図4aに示されない)。投与量設定モードにおいて、図4bに示されるように、結合歯230−2および250−2は嵌合していない。このモードにおいて、案内部材は、投与量セレクタが回転する際に基部203の並目ねじ山203aを昇る投与スリーブねじ山部材241の動きにしたがって、回転して軸方向に移動してもよい。
【0075】
図4cに示されるように、投与量セレクタ260は完全に一回転しており、図示される実施形態において、これは18IUの投与量体積に対応する。最大投与量に達するまで(この場合は30IUに対応する1回転+2/3回転)、投与量セレクタ260のさらなる回転が可能である。投与量セレクタが意図されるよりも大きい投与量サイズに調整された場合には、所望の投与量サイズが窓205に表示されるまで投与量セレクタを逆方向に回転させることによって、投与量サイズを減少させることができる。投与量セレクタ260の運動は、好ましくは半単位または一単位増分の個別ステップにおいて実行される。図示される実施形態は、歯付きリム230および変位ラック232の遠位部分に関連する特徴によって提供されるクリック機構(図示せず)を含む(変位ラックについては後で詳述される)。図示される実施形態において、クリック機構は、投与量設定中に投与量セレクタ260が受ける完全な回転ごとに、36の異なる位置を提供する。
【0076】
図4a、4b、および4cは基部203の近位端に取り付けられた歯付き基部ラック233をさらに示し、この基部ラック233は、ペンの中心軸に沿って移動することはできず、案内部材250の回転に応じてペンの中心軸の周りを回転することができる。基部ラック233に対向して配置されて、歯付きリム230に向かって遠位方向に延びる歯付き変位ラック232も示されている。変位ラック232の遠位部分は、変位ラック232が基部203に対して軸方向に移動可能でかつ回転可能であるように、基部203を取り囲むように配置された円筒部232aを形成する。投与アセンブリの組み立てられた状態において、変位ラック232の円筒部232aは、やはり投与スリーブねじ山部材241と並んで位置する歯付きリム230と隣接して位置する。図示のように、歯付きリム230と投与スリーブねじ山部材241とを相対回転を可能にしながら軸方向に隣り合わせて保持するために、歯付きリム230と投与スリーブねじ山部材241との間に中間要素が配置されている。
【0077】
図4a、4b、および4cは、案内管250の遠位面と変位ラックの円筒部232aの近位面との間に配置されたバネ部材204をさらに示す。バネ部材は、前記において投与量設定モードと称される状態に向かって近位方向に案内管250を押し進める役割を果たす。しかし、図4aに示されるEOD状態においては、ボールロック機構が、ユーザが投与量セレクタ260を引いて図4bに示されるような投与量設定モードにするまでペンをEOD状態に維持する働きをする。ボールロック機構は、投与量セレクタ260の壁部に形成された対応する切り欠きにボール261を収容することによって、投与量セレクタの周辺に沿って90度離れて配置された4つのボール261を含む(図5も参照)。板バネ部材262、282は、投与量セレクタ260の内壁部に配置され、各ボールを半径方向外向きに押しやるために使用される。図4aに示されるEOD状態において、ボールは、筐体スリーブ201の内壁面に形成された環状くぼみ経路201aと軸方向に整合している。この状態において、ボールは環状経路201a内に移動し、板バネ262、282の力は、投与量セレクタをこの位置に保持するのに役立ち、投与量セレクタのEOD状態からの意図しない解放に対する抵抗力となる。前記のように、投与量セレクタ260上に印加された近位方向の力は環状経路からボール261を解放し、バネ部材240は、図4に示されるように、ペンを投与量設定モードにする役割を果たす。ボール261のうちの2つがEOD状態を検知する付加的な電気スイッチング機能の役割を果たすことは特筆される。これについては後述で詳細に説明する。
【0078】
図4a、4b、および4cは、後述でさらに記載される注射装置の電子特性を促進する電子部品をさらに示す。図示される部品は、以下において電子モジュール271として示される主回路、電子モジュールに電力供給するための2つの電池272、および電子ディスプレイ275を含む。ディスプレイ窓276は、電子ディスプレイ275の検査を容易にするために、投与量セレクタ260の近位面に配置されている。グレイコードシリンダ231は、歯付きリム230に固定的に取り付けられて歯付きリム230から近位方向に延伸し、それによって案内管250を部分的に取り囲む。グレイコードシリンダ231は、図13に詳細に示される。図示される実施形態において、グレイコードシリンダ231は、案内管250と歯付きリム230との間の動作を検出するためのセンサシステムの一部である。グレイコードシリンダ231は、導電性材料でできた円筒形スリーブ231aおよび円筒形スリーブ231aの内面上にパターン231bとして配置された電気絶縁材料の層を含む。電気絶縁材料のパターン231bは、シリンダの内側の周り全体に繰り返される一連の軸方向延伸バーとして形成される。軸方向バーは、バーの遠位端で円周連続バンドに接続している。
【0079】
図5は、図4cに示されるのと同じ状態の投与アセンブリの側面図である(投与量設定モード、18IUの2倍の投与量サイズが設定されている)。図中、装置の特定の部品を可視化するために、筐体スリーブ201および投与スリーブ部材240は省略されている。同様に、グレイコードシリンダの円筒形スリーブ231aも省略されているが、電気絶縁パターン231bは見えている。グレイコードセンサアセンブリ290は、グレイコードシリンダ231と軸方向に重なるように、案内管250の外面に固定されている。グレイコードセンサアセンブリは、グレイコードシリンダの接触読み取りを容易にするように、グレイコードシリンダとガルバニック接触するように配置された多数の接触バネを含む。接触バネとグレイコードシリンダとは組み合わせられて、電子モジュール271に接続する多数の個別のスイッチとして機能する。
【0080】
図6a、6b、および6cは、図2に示される面A−Aにおける投与アセンブリの断面図である。これらの図中において、投与スリーブ部材240は、さらに分かり易くするために省略されている。図6a、6b、および6cは、主に注入手順を説明するのに役立つ。
【0081】
図6aは、図4cおよび5に示される状態(投与量設定モード、18IUの投与量サイズが設定されている)に対応する状態の投与アセンブリ200を示す。この状態において、投与スリーブ部材240の結合歯240−1(図示せず)は、投与量セレクタ260から投与スリーブ部材240に回転運動を伝達するように、案内管250の結合歯250−1と嵌合する。第二セットの結合歯250−2は歯付きリム230の結合歯のセット230−2と嵌合しないので、投与量セレクタ260は回転することができる。図6において、装置の中に軸方向に固定された基部ラック233および変位ラック232は、歯車221を通じて接続している。各歯車221の中心は、歯車のシャフト上のジャーナル運動を可能にするように、装置の中心軸に対して直交する方向に投与量管220から延伸するように配置されたシャフト部と結合する。この配置は、変位ラックの軸方向運動と投与量管220の軸方向運動との間の2:1のギアリングとしての役割を果たす。
【0082】
図6bにおいて、注入手順の初期段階の間、注射装置の状態は投与量モードに変化する。投与量セレクタ260を押す初期段階の間、案内管250は、圧縮するバネ部材204の付勢に対して遠位方向にわずかに移動する。案内管250の位置のわずかな遠位方向への移動により、案内管250の第一セットの結合歯250−1が動いて投与スリーブ部材240の結合歯240−1との嵌合が外れる。再び、案内管250のわずかな遠位方向への移動により、第二セットの結合歯250−2は、案内管の回転ロックの役割を果たす歯付きリムの結合歯230−2と嵌合する。このため、投与量モードにおいて、投与量セレクタ260の回転が防止され、したがって先に選択された投与量サイズは、注射の進行中は変更され得ない。図示される装置において、案内管250が投与量設定モードと投与量モードとの間の中間位置に位置するとき、両方のセットのカップリングが嵌合している。このため、2つのカップリングの両方が同時に外された場合には、中間位置は存在しない。
【0083】
投与量セレクタ260に遠位方向に印加される連続的な力は、案内管250およびバネ部材204を経由して、積層部品に、すなわち変異ラックの円筒部232a、歯付きリム230、およびスリーブねじ山部材241に伝達される。スリーブねじ山部材241がねじ山203aに沿って移動すると、スリーブ部材240が回転して遠位方向に移動する。変異ラック232の円筒部232aが同様に遠位方向に移動すると、変異ラック232の運動が歯車伝達を通じて投与量設定部材220の運動を誘発する。
【0084】
注入手順が完了したときの投与アセンブリを示す図6cにおいて、装置はまだ投与量モードにあるが、EOD状態にある。図6bおよび6cを比較することにより、ギアリング機構が、投与量セレクタの軸方向移動とピストンロッド210に取り付けられたピストンワッシャ211との間に2:1のギアリングを提供することが容易にわかる。また、いつも窓205に示されている投与量サイズの数字が、注入中に注入されるべき投与量の残量を示すように、スリーブ部材240の戻り運動がピストンロッド210の運動と同期することも認識されるであろう。
【0085】
図7aおよび7bは、図5に示されるものと類似の図面を示す。図7aおよび7bにおいて、同じ部品である筐体スリーブ201、投与スリーブ部材240、および円筒形スリーブ231aは、より明瞭に示すために取り外されている。図7aは、停止位置にある、すなわちEOD状態にある装置を示す。図7bは、0IUに対応する投与量設定位置に配置されている、準備位置にある装置を示す。これらの状態は、それぞれ図4aおよび4bに示される状態に対応する。
【0086】
ここで本発明の電子機器に戻ると、注射装置は、装置の異なる状態を監視し、カートリッジ内に保持される薬物の放出投与量のサイズを検出するための電子検出システムを含む。電子機器は、前回送達された投与に対する情報(量および送達からの時間)をユーザに提供する。図10を参照すると、装置は、全体として参照番号271が付された電子モジュールを含み、電子モジュールは、折り畳みPCB、プロセッサ、および様々なその他の電子部品を含んでいる。電子モジュール271の折り畳みPCBは、2つの脚において延伸して、2つのEODスイッチを形成するために追加部品と組み合わせられる(全体として参照番号280が付される)。電子モジュール271は、案内管250の動作を検出する専用グレイコードセンサアセンブリ290の下で、センサアセンブリにさらに接続する。電子機器モジュール271は、折り畳みPCBの部分の間に挟まれた2つの電池272にさらに接続し、電池は並列接続され、かつ機械的に酷似している。バネ用金属でできたバッテリクリップ273は、電池およびフレキシブルプリントを確実にガルバニック接触した状態で維持するのに役立つ。積層構成は、機械的衝撃の間でも、少なくとも1つの電池が電子モジュールとガルバニック接触した状態に維持されることを保証する。電池272の上では、ディスプレイ275が、折り畳みPCBによって電子モジュール271に接触する。
【0087】
上述の部品は、電子モジュール筐体270に実装された積層構成に構成され、メモリディスプレイ窓276は積層された部品を封鎖する。組み立てられた状態において、電子モジュール筐体270は、メモリディスプレイ窓276が投与量セレクタ260の近位端面を構成するように、投与量セレクタ260内に実装される。記載された実施形態において、メモリディスプレイ窓276には、投与量セレクタ260との接合部を封止するために周辺部を包囲するシールが設けられ、シールはディスプレイ窓276の成型過程の間に共成型によって形成することができる。図9は、ウェル型構成の電子モジュール筐体270内に実装された積層電子部品の斜視図である。電子機器モジュール筐体270の下には、電子モジュール271の折り畳みPCBの2つの脚が、先に記載されたボールロック機構に向かって投与アセンブリの遠位方向に延伸している。コネクタ277は、対になるコネクタを含むグレイコードセンサアセンブリ290との接続可能なインターフェースを提供する。不必要な電力使用を削減するために、1つまたは両方のバッテリ端子がグレイコードセンサアセンブリモジュールインターフェースコネクタのコネクタを通じて電子回路に接続される。このため、グレイコードセンサアセンブリ290の電子モジュール271へのアセンブリまで、バッテリ消費が延期される。
【0088】
図11のブロック図を参照すると、電子モジュールはバッテリによって電力供給されるプロセッサ(MCU)を含み、プロセッサおよび前回の注射からの経過時間の信号送信に使用されるリアルタイムクロックに必要な低速クロックを生成するために、水晶が使用される。プロセッサは、電子ディスプレイの読み出しを制御するための回路をさらに含む。製造中に、図9の積層構成は、投与アセンブリの残りの部分との組み立てに先立って試験され得る単一の完成ユニットとして組み立てられる。この状態において、電子モジュール271とグレイコードセンサアセンブリ290とが接続される前に、バッテリから電力が引き込まれることはない。
【0089】
図12aおよび12bは、それぞれ図4aおよび4bに示される指示部分BおよびCの拡大図を示す。図面は、投与量セレクタ260がEOD位置にあるときに保持機構としての役割を果たす上述のボールロック機構を示す。先述のように、4つのボールロック機構のうちの2つには、投与量セレクタ260がEODであるか否かを電子的に検知するための付加的な機能が設けられている。2つのタイプのボールロック機構は、90度ずれた対向するペアとして配置される。EODにおける状態を示す図12aにおいて、ボール261は、くぼみ環状経路201a内で半径方向外向きに位置している。EODスイッチ280は、案内管250と筐体スリーブ201との間に挟まれたスペーサ283を含む。スペーサ283は、案内管250と筐体スリーブ201の内壁部との間に、良好に定義された相互距離を提供する。スペーサは、スペーサ283を半径方向外向きに押しやる板バネであるバネ部材282上に実装される。バネ部材282はさらに、スイッチ部品の残りが実装されるスイッチ基部としての役割を果たす。図12aに示されるように、電子モジュール271の折り畳みPCBの部分271は、バネ部材282の「上に」実装されている(図中左側)。折り畳みPCBは、スイッチが起動されたときにスイッチドーム281によって短絡される接触電極を含む(図12b参照)。スペーサ283は、ボール261とスイッチドーム281との間に位置する付加的なリップ部283aを形成する。スペーサ283は、非導電可撓性材料によって形成されている。スイッチドーム281は、ボール261がくぼみ環状経路201a内で半径方向外向きに押しやられるのに十分な規模の半径方向外向きの力を提供する。
【0090】
投与量セレクタ260を「停止位置」(EOD位置)から図12bに示される「準備位置」(投与量設定モード、0IU)に移動させると、ボール261が半径方向内向きに押され、これがスペーサ283のリップ部283aを内向きに移動させ、ドームスイッチのためのスイッチング接触をなすその起動位置にスイッチドームが押し込まれる。逆の動作はボールを半径方向外向きに移動させ、スイッチ回路を破壊する。EODスイッチは、EOD状態になると少なくとも部分的に半径方向に移動する作動要素を含むので、切り替えタイミングが投与量セレクタ260のEOD位置への実際の移動と最適に同期することが保証される。このため、この構成は、軸方向移動スイッチを伴う解決法と比較して、公差に関してより優れた解決法を提供する。加えて、EODスイッチは均衡の取れた構成に配置され、すなわちこの実施形態では180度離れて互いに対向して配置されるので、投与量セレクタに印加される力が2つのEODスイッチの1つから離れる方向に投与量セレクタを押しやる分力を含むか否かにかかわらず、全てのEOD状態が確実に検出される。図示されるEODスイッチ構成は、より優れたスイッチを形成し、小さい寸法を有する用途における特定の有用性を見出すことが可能である。
【0091】
残り2つのボールロック機構は、それぞれのボールを筐体スリーブ201の環状くぼみ経路201a内に押し込む板バネ262(図10参照)のみを含むという点において、いくぶん簡素化されている。
【0092】
図14は、グレイコードセンサアセンブリ290が取り付けられている案内管250を示す。先述のように、グレイコードセンサアセンブリ290は、グレイコードセンサアセンブリ290を取り囲むグレイコードシリンダ230のガルバニック接触読み出しのために配置されている。本発明の一態様によれば、円周配置コードの内側に読み出しアセンブリを提供することによって、高精度の検出センサの形成を可能にする大型測定径が容易に獲得可能となる。
【0093】
グレイコードセンサアセンブリ290は、グレイコードシリンダ231とガルバニック接触する複数のコンタクトアームを含み、これは導電体スリーブ231aとガルバニック接触し、コンタクトアームが導電体スリーブから離れたとき、すなわちコンタクトアームがパターン231bの電気的絶縁領域に接触しているときに、接触を解除する。グレイコードセンサアセンブリ290およびグレイコードシリンダ231は、案内管の回転運動の検出を提供するとともに、装置が投与量設定モードまたは投与量モードのいずれであるかの検出も行う。
【0094】
3つの測定コンタクトアーム294a、294b、および294cは、投与量設定中に案内管250が歯付きリム230に対して回転する際に、グレイコードシリンダ230の軸方向延伸バーの上をワイプするように配置されている。別の2つのコンタクトアーム292aおよび292bは、装置が動作中に経験する全ての様々な状態の間、グレイコードシリンダの導電部と連続的に嵌合し、基底レベルを定義する。2つのコンタクトアーム292aおよび292bは、電子モジュール271との冗長接続を形成する。さらに、2つの付加的なコンタクトアーム293aおよび293b(以下において指定される投与量検知「DS」スイッチ)は、装置が投与量設定モードにあるときに、231bの電気的絶縁円周連続バンドと接触するように設けられている(図7bを追加参照のこと)。しかし、装置が投与量モードでは、案内管250が遠位方向に移動するため、コンタクトアーム293aおよび293bは電気的絶縁円周連続バンドとの嵌合から外れ、このためグレイコードシリンダ230とガルバニック接触する。これにより、投与量モードへのモード変化が検出される。
【0095】
図16および17は、本発明の提案された検知方式を説明するのに役立つ模式図である。図16は、導電および非導電領域のトラックに対して移動することができる3つのコンタクトアーム294a、294b、および294cを示す。グレイコードシリンダ231の内部には、導電および非導電領域(いずれも15度の幅)が30°の間隔で配置され、このため連続ループに配置された12の導電領域および12の非導電領域を含む。活性部は、グレイコードシーケンス・トラックに沿って10°ずれた3つのコンタクトアーム(SW1、SW2、およびSW3)のセットを含むグレイコードセンサアセンブリである。グレイコードセンサアセンブリのコンタクトアームがその他の間隔で配置されてもよく、それでもグレイコードセンサアセンブリがグレイコードシリンダに対して回転する際に同じセンサ出力が得られることは容易に認識されるであろう。たとえば、コンタクトアームSW1およびSW2が図中に示されるように配置されている状況において、コンタクトアームSW3は、いずれかの側に1つ以上の完全な周期に対応する距離だけ移動してもよい。図17は、6つの連続的な異なるコード位置(位置0から5)の上をワイプする3つのコンタクトアーム294a、204b、および294cの模式的な表示である。3つのコンタクトアームの各々は、絶縁領域に出入りするときにコード変化を生じる。この構成は、1回転あたり合計72のグレイコード変化を提供する。半増分注射装置である図示の装置において、1回転あたりの異なる回転位置Pの数は36であり、したがって、投与量セレクタが調整され得る各位置は2つの異なる隣接するグレイコード状態に対応する。別の実施形態は、投与量セレクタ260の1回転あたり24の異なる回転位置Pを含むことができる全増分注射装置を含んでもよい。
【0096】
前記によれば、72のグレイコード状態を有する現在記載されているグレイコードセンサシステムを選択することによって、2または3倍のオーバーサンプリングが選択可能となり、このため半増分装置ならびに全増分装置の両方について、同じセンサシステムが使用可能となる。36の位置バージョンの各機械的位置は2つの隣接するグレイコード状態に対応するので、理想的には、2つの状態の間の変位が機械的投与量調整に整合されること、すなわちクリック機構によって決定された通りであることが保証されるべきである。24の位置バージョンにおいて、各機械的静止位置は3つの隣接するグレイコード状態に対応し、理想的には、クリック機構によって決定された機械的位置が3つの隣接するグレイコード状態のうちの中央の1つの中央に収まることが保証されるべきである。図示される実施例において、36位置バージョンと比較して1回転あたり24の異なる位置を有する装置では、グレイコードシリンダは、たとえば歯付きリム230上でわずかに回転したグレイコードシリンダを実装することによって、わずかに回転させる必要が出てくる。ディスプレイ上で示される投与値が検出されたグレイコード状態から派生するときの残りの修正は、ソフトウェアにおいて実行されてもよい。
【0097】
図示される実施形態のグレイコードは3ビットのグレイコードであり、そのうち6つの可能なコードのみが使用される8つの可能なコードを潜在的に備える。論理的高レベルは「1」で特定され、論理的低レベルは「0」で特定される。省略されるコードは「000」および「111」である。グレイコードセンサ290が「000」または「111」のいずれかのコードを検知すると、これは誤動作を示し、注射装置は警告を発することができる。6つのコードは1回転あたり12回繰り返されるので、この構成はさらに、投与量セレクタ260の回転数を数えるカウンタとしての役割も果たす。上述の装置に完全な投与量を設定することは1回以上の回転を伴うため、このカウンタが必要である。
【0098】
グレイコードセンサは、投与量の設定中に信号を監視し、収集された情報から「設定投与量」の最良推測値を導き出す。このペンモードにおいて、システムは、正確な設定投与量を決定できるほど十分に精密ではないが、繰り返しコードのどの部分が機能しているかを判断するには十分に精密である。設定投与量が最終的に決定される瞬間、すなわち投与量が完全に送達されて(EOD)案内管250と歯付きリム230との間のクラッチが嵌合するときまで、システムは送達された正確な投与量を決定することができない。これは、公差状況が最も好ましく、案内管250と歯付きリム230との間のクラッチ位置の間接検出が得られるペンモードである。代替実施形態において、正確な投与量は、投与量セレクタが投与量モードに変化するとき、すなわち案内管250のクラッチ歯250−2が歯付きリムの歯230−2のセットと嵌合する時点で決定される。
【0099】
コード位置5から0への遷移を数えてこの情報を投与量前後の準絶対読み取り値と組み合わせることによって、正確な単位数を決定することが可能である。検出後、計算された投与量は、ディスプレイ275に表示される。この準絶対設定の利点は、投与量設定モードと投与量モードとの間の機械的公差が排除され得ることである。
【0100】
投与完了スイッチ280は、マイクロコントローラに投与が完了したことを知らせる。スイッチは、完全な投与によって、または投与量セレクタを下方に回して部分投与の後にそれを押し下げることによって、起動しなければならない。安全上の理由から、冗長スイッチが使用される。スイッチ用のプルアップ抵抗器は、スイッチがEOD状態にあるときに電力を使用することを回避するために、ソフトウェア制御の下にあり、具体的な省電力方法は以下に記載される。
【0101】
グレイコード構成の第二の実施形態について、図18、19、および22a〜22dを参照して説明する。ここでは、3つのグレイ・コード・スイッチの代わりに、グレイコードセンサアセンブリは、グレイコードシリンダの内面上に形成された修正グレイコードシーケンスと嵌合する4つのスイッチ・コンタクト・アームSW1、SW2、SW3、およびSW4を含む。図18に示されるように、グレイコードシリンダは、電気的絶縁領域(25度幅)および導電領域(15度幅)の連続バンドを含み、このため40度の周期長を有し、1回転において9周期の余地がある。4つのスイッチ・コンタクト・アームSW1、SW2、SW3、およびSW4は、グレイコードトラックに沿って10度離れて位置している。このような構成は、1つのグレイコードシーケンスに8つの異なるコードを有するグレイコードシーケンスを提供する。このグレイコードシーケンスに対応する二進コードは、図18および図19においても見ることができる。後述のように、このグレイコードシーケンスは、図17のグレイコードシーケンスと比較して、電力管理機能を改善する。
【0102】
ここで図20aを参照すると、従来技術による接触スイッチ構成が示されており、このようなスイッチ構成は、通常、スイッチが制御システムと結合している電子回路を組み込んだ医療用送達装置に含まれている。スイッチセンサ、例えば、その状態または条件を検出するために可動に配置された部品と結合された接触スイッチセンサの状態または条件を監視するために制御システムを使用するとき、スイッチセンサは通常はプルアップ抵抗器を使用することによって制御システムに接続され、スイッチセンサが開放されているときに入力が良好に定義された高レベルを有することを保証する。
【0103】
スイッチセンサが開放されているとき、入力は高くなり、抵抗器を流れる電流はゼロである。スイッチセンサが閉鎖されているとき、入力は低くなり、抵抗器を流れる電流は、電圧を抵抗で除した商として計算することができる。この電流は、対応するスイッチセンサが閉鎖している全てのプルアップ抵抗器に存在する。電流は、電圧を減少させることによって、または抵抗を増加させることによって、減少し得る。電圧の減少は、残りの論理回路によって定義されるので、通常は不可能であり、抵抗の増加は、システムを雑音に対してより敏感にする。これらの方法によって電流を減少させることが可能であるとはいえ、センサシステムは、スイッチセンサが閉鎖しているときも電力を消費し続ける。
【0104】
この問題を解決する1つの方法は、入力をポーリングすること、つまりシステムマイクロプロセッサが定期的にセンサに電力供給してその状態を確認することである。センサ消費電力はこのように非常に短時間だけ存在することになるが、マイクロプロセッサの消費電力も考慮しなければならない。これは、総消費電力が、ポーリング間隔に依存し、ポーリング間隔を長くすることによって削減され得ることを意味するが、これによってシステムの応答時間が遅くなる。このように、ポーリング間隔の選択は電流消費と応答時間との間のトレードオフとなる。
【0105】
上述のセンサは、スイッチセンサが閉鎖されているときにのみ電力を消費する。この消費電力は、図20bに模式的に示されるように、プルアップ抵抗器をシステム制御下に置くことによって排除され得る。スイッチが開放されているとき、出力が高く設定され、入力が高くなるが、消費電力は伴わない。スイッチが閉鎖されているときは、入力が低くなり、電流は抵抗器の中を流れる。マイクロプロセッサによって遷移が検出されると、制御出力が切られ、抵抗器の両側の電圧が等しくなるので、電力は流れなくなる。
【0106】
図20bに示されるセンサ構成は、両方の状態において完全にゼロ電力である。しかし、このような解決法は、スイッチが再開されたときに生じる問題に縛られている。プルアップ抵抗器の上部の電圧は低いので、スイッチを開放することで入力状態を変化させることはない。入力はまだプルアップ抵抗器によって良好に定義された低い状態に維持される。これは、このシステムが、閉鎖したスイッチを検出することはできるが、開放したスイッチを検出することはできないことを意味している。このため、このようなスイッチ構成は、限られた数の用途にのみ使用され得る。
【0107】
本発明のさらなる態様によれば、薬剤送達装置は、図20cに模式的に示されるようなスイッチ構成を含む。図20bに示されるスイッチ構成と比較すると、この構成には第二スイッチが追加されており、このスイッチは既存のスイッチとは逆の極性を有する。このようにすれば、いつも1つのスイッチが開放していることになる。開放していたスイッチが閉鎖されると、他のスイッチのプルアップが起動する。他のスイッチが開放されると、第一スイッチのプルアップが遮断される。常に入力が浮動したままにならないことを保証するために、プルアップ制御出力が、高くても低くても、常に起動しており、高インピーダンス状態に設定されないことが非常に重要である。図20cに示されるようなスイッチ構成において、スイッチ・センサ・システムは、スイッチシステムがある安定状態から別の状態に変位するのにかかる時間の間だけ電力を消費する。
【0108】
本明細書に開示される薬剤送達装置の実施形態において、EODスイッチ、および装置が投与量設定モードにあるか投与モードにあるかを検知する投与量検知スイッチ(DS)は、図20cに示されるような相補的状態推移方式を提供するように構成されている。しかし、図21に示されるように、投与中に投与量セレクタが押し下げられると、EODスイッチおよび投与量検知スイッチ(DS)の両方が閉鎖され、それぞれのプルアップ抵抗器を電流が流れる。通常、この状況は選択された投与量を注入するのにかかる時間だけしか存続しないので、過剰消費電力をもたらすことはない。しかし、エネルギー消費をさらに減少させるためには、この状況が発生したとき緊急ポーリング方式への推移が実行されてもよい。代替の解決法は、各スイッチを二重に実行すること、すなわち相補スイッチであろう。すると電力操作は各スイッチにおいて局所的となるであろうが、この解決法の機械的側面はより複雑になるだろう。
【0109】
また、グレイコードセンサの接触スイッチは、接地されているスイッチとして構成されており、入力はプルアップ抵抗器によって高く維持されている。開放スイッチは全く電力を消費しないが、閉鎖スイッチは、対応するプルアップ抵抗器が供給電圧とグラウンドとの間に効率的に接続されるので、電力を消費する。このため、上述の省電力方式によれば、コントローラは、閉鎖されたスイッチのためにプルアップスイッチを遮断し、その後コントローラをスタンバイモードにする。このように、センサシステムは電力を消費しないが、この設定により、閉鎖されているスイッチに対応する変化のみが検出され得る。その入力のプルアップ抵抗器は遮断されているので、開放しているスイッチは対応する入力に立ち上がり電圧を生じさせない。
【0110】
図19に示されるグレイコードを用いて、前進するときには1から2、3から4、5から6、および7から0へ、および後退するときには1から0、3から2、5から4、および7から6への位置の遷移が検出され、こうして遮断されたプルアップ抵抗器に電力供給するために使用され得る。投与量設定モードにあるときに数えられた遷移は最終結果のみを示すので、これは容認可能であるかも知れない。最終修正読み出しは、EODモードに入ったときに行われる。
【0111】
理想的には、プルアップは、プロセッサの入出力ポートに接続された外部抵抗器として実行されるべきである。これにより、プルアップおよびプルダウンの両方として機能することができ、こうして入力をいつも良好に定義された状態に維持することができる。
【0112】
実施例
センサはグレイコード位置1にあり、したがってスイッチ3は閉鎖(0)、スイッチ1、2、および4は開放(1)している。スイッチ3のプルアップは遮断され、1、2、および4は接続される。プロセッサはスタンバイモードに入る。
【0113】
次にセンサは位置2に変化する。これは、スイッチ2が閉鎖することを意味し、したがって入力が状態を0に変更してプロセッサを覚醒させる。そして全てのプルアップが接続され、入力が読み出される。ここで入力2および3のプルアップは遮断され、プロセッサは戻ってスタンバイモードに入る。
【0114】
次にセンサは位置3に変化する。これは、スイッチ3が遮断されることを意味するが、プルアップは機能していない(またはプルダウンされている)ので、入力の遷移は検出されない。プロセッサはスタンバイモードのままであり、遷移を検出することはない。
(実施例終了)
【0115】
この方式は、真のゼロパワーセンサを効率的に実現するが、全てのセンサ遷移を検出する能力が欠けている。この問題を軽減する方法は、プルアップ抵抗器のよりインテリジェントな制御を実現することである。最初に、開放スイッチのプルアップ抵抗器のみが起動される。センサ遷移が検出されると、全てのプルアップ抵抗器が起動されてソフトウェアに全てのセンサ遷移を検出させ、タイマが開始される。センサの遷移が検出されるたびに、タイマは元の値にリセットされる。タイマがタイムアウトすると、システムは開放スイッチのプルアップ抵抗器のみを起動させるように戻る。これは、一連の第一遷移のみを除外することが可能であることを意味する。センサは、状態変化の最中および直後に電力を消費するが、静止しているときはゼロパワーとなる。
【0116】
図22aから22dには、装置が動作しているときのEODスイッチおよびDSスイッチの異なる状態を示す。
【0117】
図22aは、装置が投与完了状態にある保存状態の装置を示す。この状態において、投与量セレクタ260は完全に押し下げられており、EODスイッチは起動(開放)している。内部カウンタはゼロにリセットされる。EODスイッチのプルアップ抵抗器は接続され、投与量検知スイッチの抵抗器は遮断されている。
【0118】
図22bは、ユーザが投与の準備をするために装置を動作させるとき、すなわちそのために投与量セレクタ260を引き出すときの装置を示す。これは、EODスイッチの状態を変化させ、投与量検知スイッチを起動位置から離れるように移動させる。この状態において、EODスイッチの通電は切られ、投与量検知センサが通電される。次に、ユーザは所望の投与量を設定する。これがグレイコードセンサシステムからのパルスを発生させる。これらのパルスは指示情報を含み、グレイコード遷移の数を用いて内部カウンタを更新するために使用される。
【0119】
図22cは、選択された投与量を注入するためにユーザが投与量セレクタ260を押し始めるときの装置を示す(印加される圧力は、左側に示される三角形のアイコンで示される)。グレイコードセンサシステムの接点は軸方向に移動するが、案内管250および歯付きリム230はともにロックされてその間の回転を防止しているので、いかなるパルスも発生しない。投与量検知スイッチは、プロセッサにEODスイッチを通電させる事象を発生させ、そのためEODに到達すると事象が発生され得る。投与量セレクタがEOD到達前に解放されると、EODスイッチの通電は再び切れる。
【0120】
図22dは、EODスイッチが開放しているEOD状態における装置を示す。投与量検知センサの通電が切れている。最終グレイコード読み出しが実行され、グレイコード遷移の数に基づいた投与量の計算が可能となっている。ボタンの解放および押下がゼロ単位の結果を正確に付与する。
【0121】
図3を参照して上に説明したように、電子回路は、最後に実行された注入からの経過時間を測定するためのタイマを含む。タイマは、現在の投与量注入手順が終了するときを検出するためのEODスイッチによって起動される。相対時間が時間単位で表示されるが、マイクロプロセッサの内部では精度が向上する。絶対的な時間読み出しが提供されないため、内部クロックは相対時間のみを扱い、そのため装置の正確な日時を設定する手順が不要である。ディスプレイの周囲に沿ってセグメントを使用して、合計12時間が表示可能であり、1時間は1セグメントで表される。12時間を超えると、12個全てのセグメントが点灯し、完全な円が描かれる。
【0122】
図23aは、先に注入された投与の表示をもたらす操作手順の図解である。タイムアウトの後、ディスプレイ275は、電力を節約するために消灯される。しかし、前回注入された投与のサイズを確認するため、またはその注入からの経過時間を確認するために、投与量セレクタ260は引かれて準備モードになり、押されてEOD状態になる。この後、ディスプレイ275は所定の持続時間だけ点灯する。
【0123】
図23bは、通常の投薬手順における操作手順の図解である。図示される実施形態において、機械的投与表示器の読み取りに関していかなる混乱も生じないように、ディスプレイは投与量設定中および投与量注入中には消灯されている。投与完了時に、ディスプレイは点灯されて、注入された投与のサイズを表示する。
【0124】
図24を参照して、薬剤送達装置用のメモリモジュールの第二の実施形態について説明する。上述の第一の実施形態が前回送達された投与に関する情報(量および送達以来の時間)をユーザに提供するのに対し、第二の実施形態には、この特徴に加えて、多数のデータログを保存するためのメモリが設けられており、各ログは投与量サイズおよびタイムスタンプを表すデータを含み、同様に双方向無線通信機能も設けられ、これによってモジュールは外部装置にデータを送受信することができる。記録されたインスリン注射は、数秒でペンの寿命カウンタによってタイムスタンプが刻印される。CRCチェックサムが計算され、全ての記録(投与量、タイムスタンプ、およびチェックサム)が保存され、周期的に、すなわちメモリが一杯になるとき配置され、新しい記録は、読み書きされるときにのみ通電される不揮発性メモリ(EEPROM)の最も古い記録に上書きされる。メモリは、薬剤送達装置のたとえば3ヶ月間の平均使用のデータを保持するように設計されてもよい。例示的な実施形態において、薬剤送達装置はそのデータログを、たとえばPC、PDA、ドッキングステーション、携帯電話、またはデータ網などの外部データベースにアップロードするように設計されている。
【0125】
第二の実施形態の構造は、基本的に第一の実施形態の構造と同一である。具体的には、第二の実施形態の構造は、ディスプレイ1280に取り付けられて、やはり投与量セレクタ筐体1260内に配置された電子モジュール筐体の中に配置された、折り畳みPCBの形状の電子モジュールを含み、ディスプレイはディスプレイ窓1270で覆われている。
【0126】
投与量設定中および投与量放出中に薬剤送達装置の異なる部品の間の動作を検出する手段は同じである。また、投与量セレクタ筐体がその停止位置(EOD状態)または起動引き出し位置のいずれにあるかを検出するための接点280も同じである。
【0127】
PCBには、その折り畳み位置においてディスプレイと投与量セレクタ筐体との間の間隙内に配置された延長「指」1290が設けられており、延長部およびPCBには通常、追加およびアップグレードされたメモリおよびプロセッサ部品、ならびに双方向無線通信機能をメモリモジュールに付与する追加部品が設けられている。図示される実施形態には、IR送信器1291および対応するIR光トランジスタ受信器1292が設けられているが、無線通信は、たとえばRFまたは誘導など、その他の適切な手段に基づくことも可能である。
【0128】
ディスプレイおよびIR送信器/受信器は、投与量セレクタ筐体の近位端開口部に挿入された共通ディスプレイカバー1270の下に配置されている。上述の実施形態と比較すると、ディスプレイ窓が、IR送信手段用のレンズおよびフィルタの役割を果たすように変更されている。具体的には、ディスプレイ窓は、たとえば複合射出成型によってより小さいIRカバー1275が挿入される主要透明部1271を含む。IRカバーは、IR送受信手段用のフィルタの役割を果たす着色(ここでは赤色)プラスチックでできている。IRカバーには、IR送信器によって発生したIR光を合焦してビームとし、外部IR源から受けたIR光をIR受信光トランジスタ上に合焦するのに役立つ2つの突起レンズ1276がさらに設けられている。あるいは、単一のレンズを使用する複合送受信器を使用することもできる。レンズとしての役割に加えて、突起は、送受信器がある場所をユーザに示し、これはたとえば指などによって送信が妨害されることを回避するのに役立つ。
【0129】
本発明のメモリモジュールが、電源が交換不可能な封止ユニットとしてユーザに提供されるか、または交換可能な電源を備えるかとは関係なく、電源の長動作寿命を保証することが望ましい。実際全ての電子機器に該当することであるが、比較的小さい内蔵電池に依存し、かつ比較的電力を消費する無線送信手段(たとえばIR)を備えたメモリモジュールにおいては、特に送信手段が動作している時間を最小限に抑えることが望ましい。このため、無線送信手段を備える薬剤送達装置の使用および操作は、装置の異なる機能をオン・オフするためにユーザが特別な操作をする必要がなく、可能な限り簡単であるべきである。
【0130】
これに対応して、本発明のさらなる態様において、薬剤送達装置は、放出されるべき薬剤の投与量を設定するための第一ユーザ操作手段、薬剤リザーバから設定投与量を放出するための第二ユーザ操作手段、およびデータを保存および通信するための電子回路を備える。電子回路は、低電力冬眠状態、および電子回路を冬眠から動作状態に起動するための接触(たとえばガルバニックまたは誘導接触)が提供されるときの(第一)動作状態を有する。使い易くするために、第一ユーザ操作手段または第二ユーザ操作手段の簡単なユーザ操作が接触を作動し、それによって電子回路を冬眠から(第一)動作状態に起動する。図示される実施形態において、ユーザ操作可能な投与量セレクタおよび放出部材の組合せ(以下、単に「投与量セレクタ」)が設けられ、部材は第一ユーザ操作手段および第二ユーザ操作手段をそれぞれ提供するために回転可能かつ軸方向に移動可能である。薬剤送達装置の投与量設定および放出機構の実際の設計に応じて、投与量セレクタは、設定投与量を放出するために軸方向に移動する際に、回転してもしなくてもよい。投与量セレクタが回転するように設計されている場合には、投与量セレクタの本体に対して回転できる上部近位面が設けられてもよく、これは投与量セレクタと、投与量を放出するために投与量セレクタを押下するユーザの指との間の摺動を防止する。上述のように、図示される実施形態において、投与量セレクタは、回転することはできないが、そこから電子回路が起動する「準備」位置まで引き出される押下された「停止」位置を有する。
【0131】
これに対応して、メモリモジュールがデータを無線で送信および/または受信するための通信手段を備えているとき、通信手段は、冬眠状態におけるスリーブ状態、および(第一)動作状態における通電状態を有する。記載されているように、ユーザがその停止位置から複合部材を移動させることによって送達装置を「通電」させたいとき、データを無線で送信および/または受信するための通信手段ならびに薬剤送達装置から放出される薬剤の量/時間ログを表すデータを検出および保存するための検出手段の両方が起動される。しかし、ユーザが通信機能を使用したいと望まない限り、エネルギーを節約するために可能な限り早く通電が切られるべきであるが、これは理想的にはユーザを巻き込むことなく行われるべきである。
【0132】
このため、電子回路は第二動作状態を有してもよく、ここで第一動作状態は第一レベルの消費電力を有して第二動作状態は第二レベルの消費電力を有し、第一予備設定条件が合致したときに動作状態が第一レベルから第二レベルに変化し、第二予備設定条件が合致したときに動作状態が第二レベルから冬眠状態に変化する。
【0133】
本発明の第二の実施形態に戻ると、電子回路は、データを無線で送信および/または受信するための通信手段であって、冬眠状態にあるスリープ状態、第一動作状態にある通電状態、および第二動作状態にあるスリープ状態を有する通信手段と、薬剤送達装置から放出される薬剤の量/時間ログを表すデータを検出および保存するための検出手段であって、冬眠状態にあるスリープ状態、ならびに第一動作状態および第二動作状態における通電状態を有する検出手段とを含む。
【0134】
言い換えると、本発明の第二の実施形態は、両方の主要機能(すなわち検出手段および通信手段)が低電力スリープ様式になっている低電力冬眠状態、検出手段および通信手段の両方が通電高電力状態にある高電力状態、および検出手段が通電高電力状態にあって通信手段が低電力スリープ様式にある中電力状態を有する。
【0135】
例示的な第二の実施形態のため、通信機能の意図された使用方法は以下の通りである。ユーザはまず、データの送信先である装置の通信インターフェース、例えばRoche Diagnositcs社のアキュチェック(登録商標)スマートピックス通信インターフェースを備えたPCの電源を入れる。アキュチェックスマートピックス装置読み取り機は、アキュチェック血糖測定器、携帯機器用アキュチェックソフトウェア、およびアキュチェックインスリンポンプなどから内蔵赤外線インターフェースを通じてデータを無線インポートおよび表示する小型の装置である。アキュチェックスマートピックス装置読み取り機は、糖尿病を患う個人および医療従事者が、血糖/インスリンデータを迅速および簡便に確認および分析するのを助けるために提供される。
【0136】
メモリモジュールと、適合するバージョンのスマートピックス読み取り機との間の通信シーケンスを扱うために、専用通信プロトコル(ソフトウェア)が開発された。このプロトコルは、メモリモジュールによって実行されるときに可能な限り少ない電力を使用するように最適化された。プロトコルは命令/応答モデルを使用し、このモデルでは、薬剤送達装置(たとえばペンシステム)が、起動されると命令を待って(「聞いて」)それに従って応答するする。命令は、全ログまたは部分ログを要求するために実行される。電力を節約するために、可能な限り少ないIR光パルスがペンから送信されるように、プロトコルはデータ内容を分析し、ビットを逆転することができる。エネルギーをさらに節約するために、受信器は、受信信号の強度を測定して、それに応じて送信された信号の強度に適合するように構成してもよい。実際に、プロトコルは、たとえばRF通信などを扱うために使用されることも可能である。上述のように、メモリモジュールは、秒単位の時間値とともに与えられた投与量を記録し、タイマはメモリモジュールのスイッチが初めて入れられるときにゼロから計数を開始する「寿命カウンタ」である。ログが受信装置に送信されると、プロトコルは、受信装置の内部クロックに基づいて、タイムスタンプ値を従来のリアルタイムタイムスタンプに翻訳する。
【0137】
スマートピックス装置は、USBインターフェースを使用して最初にPCに取り付けられると、送信器をスマートピックス装置と認識するコードを送信し始める。次に、ユーザが投与量セレクタを停止から準備位置に移動することによってメモリモジュールのスイッチが入り、これによって所定の時間(たとえば20秒)だけスマートピックス(またはいずれかのその他の認識可能な)信号を聞く(または「見る」)IR受信器が起動される。認識可能な信号が検出された場合、2つの装置は「握手」し、データ送信のための所定の条件が認証されると(たとえば特定のメモリモジュールが、たとえばメモリモジュールのシリアル番号を使用して、与えられたPCと事前に対になっている)メモリモジュールは、メモリモジュールに保存された全てのログデータまたは受信装置によって指定されたデータのみといった、データの送信を開始する。メモリモジュールは、受信装置から確認信号を受信するまで、または所定時間だけデータを送信した後まで、データを送信し続けてもよい。メモリモジュールが最初に聞いてその後送信するか、またはその逆であるかは、たとえばIR通信用の受信器など、最も少ないエネルギーを使用する構成要素によって決定されるべきである。
【0138】
ユーザがデータを送信したくない場合には、ユーザは、単に投与量セレクタをその準備位置から回転させることによって投与量の設定を開始し、これはただちに通信手段をスリープモードにする。ユーザは、単に投与量セレクタをその停止位置に戻すことによって全ての操作をキャンセルしてもよく、その後通信手段もスリープモードになる。
【0139】
今日のマニュアル式ログブックの使用と比較すると、電子ログブックは信頼性が高く、データが扱いやすく、最新式である。これは、医療従事者が患者をより良く監視し、提供された情報に基づいてより良い判断を下すのに役立つ。さらに、患者は、マニュアルログブックに記入する手間を省くことができ、誰もがより良く投薬指示に従うことができるようになる。
【0140】
本明細書にいくつかの好適な実施形態を示したが、本発明がこれらに限定されず、特許請求の範囲に定義される内容の範囲内で別の方法で実現可能であることを強調する。たとえば、歯車機構は、WO2004/078239、EP 1610848、およびWO99/38554に示されるものを含むその他の歯車機構に置き換えられてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤で満たされたリザーバから設定投与量の薬剤を設定および注入するための薬剤送達装置であって、
− 投与量設定中および/または注入中に相対的に移動する第一要素と第二要素との相対運動を検出するためのグレイコード型検出器であって、第一要素に設けられたコードトラックを含んでおり、コードトラックが、異なる状態を交互に繰り返す標識のシーケンスを含み、かつ第二要素に設けられた複数の検出器に関連づけられており、各検出器が標識の異なる状態を検知するグレイコード型検出器
を備えており、
複数の検出器がコードトラックに沿って延びる方向に相互にずれていることにより、複数の検出器がコード化された標識のシーケンスに沿ってコードトラックに対して移動するときにグレイコード方式の読み出しシーケンスが提供される、薬剤送達装置。
【請求項2】
グレイコード型検出器が、交互に並んだ第一状態および第二状態それぞれの第一および第二領域を含み、各第一領域が拡張子Xのコードトラックに沿った拡張子を有し、各第二領域が拡張子Xのコードトラックに沿った拡張子を有する、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項3】
コードトラックが、内側円筒面または外側円筒面において円筒面上の円周バンドとして配置されており、前記バンドが1つまたは多数の繰り返しグレイコードシーケンスを含む、請求項1または2に記載の薬剤送達装置。
【請求項4】
グレイコード型検出器が、1つ以上の追加検出器によって検知される少なくとも1つの追加領域を含み、前記追加検出器が、グレイコードシーケンスに沿った方向を横断する方向のグレイコードトラックの移動を検知するために配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項5】
グレイコードトラックの標識のシーケンスが、導電性材料および非導電性材料の領域を含み、検出器が、前記標識における導電性材料の有無を電気的に検知するように配置された接触スイッチである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項6】
薬剤で満たされたリザーバから設定投与量の薬剤を設定および注入するための薬剤送達装置であって、
− 投与量を設定するために近位方向に持ち上げられ、薬剤送達装置から設定投与量を放出するために遠位位置に押される投与量セレクタと、
− 投与完了位置において最遠位位置で投与量セレクタをラッチするためのラッチ機構であって、前記投与量セレクタが投与完了位置にあるときに少なくとも部分的に半径方向に移動する1つ以上のラッチ要素を含み、投与量セレクタのラッチ掛けが、ユーザが投与量セレクタを近位方向に引くように操作することによって解放されるラッチ機構と
を備えており、
前記1つ以上のラッチ要素が、前記投与完了スイッチの1つ以上を作動して投与量セレクタの投与完了位置を示す、薬剤送達装置。
【請求項7】
前記1つ以上のラッチ要素の少なくとも1つがそのラッチ位置に向かって付勢されている、請求項6に記載の薬剤送達装置。
【請求項8】
1つ以上のラッチ要素がボールであって、前記1つ以上のボールの少なくとも1つが対応するボールロック機構構成に組み込まれている、請求項6または7に記載の薬剤送達装置。
【請求項9】
少なくとも2つの投与完了スイッチが互いに対向するように配置されており、前記少なくとも2つの投与スイッチの1つ目が、それに対応するラッチ要素の第一方向への移動によって起動され、前記少なくとも2つの投与完了スイッチの2つ目が、それに対応するラッチ要素の前記第一方向とは異なる方向への移動によって起動されるもので、前記両スイッチが、投与量セレクタの投与完了位置を示すスイッチの冗長なセットを形成している、請求項6〜8のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項10】
薬剤送達装置であって、
− 薬剤送達装置の少なくとも1つの部品の状態を監視するためのコントローラを含むスイッチ回路であって、コントローラが複数の入力端子および出力端子を有しているスイッチ回路と、
− 前記少なくとも1つの部品の状態が変化すると動作する複数のスイッチであって、各々の第一末端がコントローラの接地電圧レベル端子に接続されており、第二末端がコントローラの対応する入力端子に接続されている複数のスイッチと、
− 複数のプルアップ抵抗器であって、各々の第一末端が対応する入力端子に、および第二末端がコントローラの対応する出力端子に接続していることにより、各々が前記複数のスイッチの対応する1つと直列に接続されている複数のプルアップ抵抗器と
を備えており、
それぞれのスイッチの閉鎖が対応する入力端子によって検出可能である場合、対応する各出力端子の電圧レベルが、第一電圧レベルから、対応するスイッチの閉鎖時に、実質的にゼロ電流状態で対応するプルアップ抵抗器を動作するための第二電圧レベルへと制御可能であり、さらに、前記複数のスイッチの別の少なくとも1つの閉鎖に応答して、前記第一電圧レベルへと制御可能である、薬剤送達装置。
【請求項11】
前記複数のスイッチが第一スイッチおよび第二スイッチを含み、第一スイッチの極性が前記第二スイッチの極性とは逆である、請求項10に記載の薬剤送達装置。
【請求項12】
前記複数のスイッチが第一スイッチおよび第二スイッチを含み、第一スイッチが、装置の部品が第一位置から第二位置へ移動すると閉鎖し、第二スイッチが、前記部品が第二位置から第三位置へ移動すると閉鎖する、請求項11に記載の薬剤送達装置。
【請求項13】
保持されたリザーバから送達される薬物の投与量を選択する投与量設定機構を備え、さらに、投与量設定中および/または投与量放出中に移動する部材の位置を検出することによって投与量関連情報を監視するための位置エンコーダを備えており、前記位置エンコーダが1つ以上の導電コード化トラックを含み、各トラックが導電および非導電領域を含み、前記位置エンコーダが、スイッチと導電コード化トラックとが互いに相対的に移動する際に前記1つ以上の導電コード化トラックを読み出す複数の前記スイッチを含む符号化スイッチ回路をさらに含んでいる、請求項10または11に記載の薬剤送達装置。
【請求項14】
1つ以上の導電コード化トラックが、単一のグレイコードシーケンスまたは総シーケンスコード長nを形成する複数の繰り返しグレイコードシーケンスを形成しており、前記導電コード化トラックを読み出す前記符号化スイッチ回路の複数のスイッチが、3つ、4つ、5つ、6つ、7つのスイッチなどとして選択される、請求項13に記載の薬剤送達装置。
【請求項15】
前記符号化スイッチ回路の少なくとも1つのスイッチが、現在位置からいずれかの方向へ少なくとも毎秒状態変化するたびに閉鎖するように、グレイコードが構成されており、前記現在位置が各n個の可能な位置のいずれかから選択される、請求項14に記載の薬剤送達装置。
【請求項16】
位置エンコーダが、連続する導電領域および非導電領域を有する単一の導電コード化トラックを含んでおり、前記符号化スイッチ回路のスイッチが単一のトラックに沿って分布していることにより、前記単一または複数の繰り返しグレイコードシーケンスが得られている、請求項13〜15のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項17】
位置エンコーダが、複数の列および行を含むマトリクスを形成する複数の導電コード化トラックを含んでおり、前記符号化スイッチ回路の単一または複数のスイッチが、前記マトリクスの異なる行と整合している、請求項13〜15のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項18】
薬剤送達装置であって、
− 放出される投与量を設定するための第一ユーザ操作手段と、
− 薬剤リザーバから設定投与量を放出するための第二ユーザ操作手段と、
− データを保存および通信するための電子回路であって、冬眠状態および第一動作状態を有する電子回路と、
− 冬眠状態から動作状態へ電子回路を起動する接触手段と
を備えており、
− 第一ユーザ操作手段または第二ユーザ操作手段のユーザ操作が接触手段を作動させることによって、冬眠状態から第一動作状態へ電子回路が起動される、
薬剤送達装置。
【請求項19】
− 電子回路が、データを無線で送信および/または受信するための通信手段を含み、通信手段が、冬眠状態にあるスリープ状態および第一動作状態にある通電状態を有する、請求項18に記載の薬剤送達装置。
【請求項20】
第一予備設定条件が合致したときに、通信手段の状態が通電状態からスリープ状態に変化する、請求項19に記載の薬剤送達装置。
【請求項21】
第一予備設定条件が、
− 通信手段が所定時間にわたって対応する装置との無線通信の確立を試みて失敗したとき、
− 通信手段が所定時間にわたって対応する装置に一定量のデータの送信を試みて失敗したとき、
− 通信手段が対応する装置への一定量のデータの送信に成功したとき、
− 第一ユーザ操作手段または第二ユーザ操作手段が作動して、設定投与量を放出するための投与量をそれぞれ設定するとき、および
− 第一ユーザ操作手段または第二ユーザ操作手段が停止位置に配置されたとき
からなる条件群に属する、請求項20に記載の薬剤送達装置。
【請求項22】
− 第一ユーザ操作手段が回転部材の形状であり、かつ
− 第二ユーザ操作手段が軸方向に移動可能な部材の形状である、
請求項18〜21のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項23】
それぞれ第一ユーザ操作手段および第二ユーザ操作手段を提供するために回転可能かつ軸方向に移動可能な複合ユーザ操作部材(1260)を含む、請求項22に記載の薬剤送達装置。
【請求項24】
ユーザ操作手段の少なくとも1つが停止位置および中立位置を有し、ユーザ操作手段がその停止位置および中立位置の間で移動するときに接触手段が作動される、請求項22または23に記載の薬剤送達装置。
【請求項25】
− 電子回路が第二動作状態を有しており、
− 第一動作状態が第一レベルの消費電力を有し、第二動作状態が第二レベルの消費電力を有しており、
− 第一予備設定条件が合致したときに動作状態が第一レベルから第二レベルに変化し、
− 第二予備設定条件が合致したときに動作状態が第二レベルから冬眠状態に変化する、
請求項18に記載の薬剤送達装置。
【請求項26】
電子回路が、
− データを無線で送信および/または受信するための通信手段であって、冬眠状態にあるスリープ状態、第一動作状態にある通電状態、および第二動作状態にあるスリープ状態を有する通信手段と、
− 薬剤送達装置から放出される薬剤の量/時間ログを表すデータを検出および保存するための検出手段であって、冬眠状態にあるスリープ状態、ならびに第一動作状態および第二動作状態における通電状態を有する検出手段と
を備えている、請求項25に記載の薬剤送達装置。
【請求項27】
(a)第一予備設定条件が、
− 通信手段が所定時間にわたって対応する装置との無線通信の確立を試みて失敗したとき、
− 通信手段が所定時間にわたって対応する装置に一定量のデータの送信を試みて失敗したとき、
− 通信手段が対応する装置への一定量のデータの送信に成功したとき、
− 第一ユーザ操作手段または第二ユーザ操作手段が作動して、設定投与量を放出するための投与量をそれぞれ設定するとき、および
− 第一ユーザ操作手段または第二ユーザ操作手段が停止位置に配置されたとき
からなる条件群に属し、
(b)第二予備設定条件が、
− 第二ユーザ操作手段が設定投与量を放出するために作動したとき、
− 第二ユーザ操作手段が設定投与量を放出するために作動して所定時間が経過したときであって、所定時間とは放出される薬剤の量を電子回路に表示させる時間であるとき、
− 第二ユーザ操作手段が停止位置に配置されたとき、
− 第二ユーザ操作手段が停止位置に配置されて所定時間が経過したときであって、所定時間とは放出される薬剤の量を電子回路に表示させる時間であるとき、および
− 所定時間が経過したとき
からなる条件群に属する、請求項25または26に記載の薬剤送達装置。
【請求項28】
− 第一ユーザ操作手段が回転部材の形状であり、かつ
− 第二ユーザ操作手段が軸方向に移動可能な部材の形状である、
請求項25〜27のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項29】
それぞれ第一ユーザ操作手段および第二ユーザ操作手段を提供するために回転可能かつ軸方向に移動可能な複合ユーザ操作部材を含む、請求項28に記載の薬剤送達装置。
【請求項30】
ユーザ操作手段の少なくとも1つが停止位置および中立位置を有し、ユーザ操作手段がその停止位置および中立位置の間で移動するときに接触手段が作動される、請求項28または29に記載の薬剤送達装置。
【請求項31】
第一ユーザ操作手段および第二ユーザ操作手段によってそれぞれ操作可能な機械的な投与量設定手段および放出手段を含む、請求項18〜31のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項32】
薬剤で満たされたリザーバを含むか、または薬剤で満たされたリザーバを受ける、請求項18〜32のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項33】
薬剤送達装置を操作する方法であって、
− 投与量設定部材および無線送信器を有する薬剤送達装置を提供するステップと、
− 無線送信器を第一位置に移動させることによって無線送信器を通電するステップと、
− 無線送信器を第二位置に移動させることによって無線送信器の通電を切断するステップと
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20a】
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【図20b】
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【図20c】
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【図21】
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【図22】
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【図23a】
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【図23b】
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【図24】
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【公表番号】特表2012−507314(P2012−507314A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533765(P2011−533765)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064692
【国際公開番号】WO2010/052275
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(596113096)ノボ・ノルデイスク・エー/エス (241)
【Fターム(参考)】