説明

電子部品の特性測定装置

【課題】互いに対向する端部に外部端子電極がそれぞれ形成されたチップ状の電子部品の電気的特性を測定するにあたって、外部端子電極にそれぞれ接触する測定端子による浮遊容量が、電子部品の寸法ばらつきによって変動し、そのため測定誤差を招くことがある。
【解決手段】第1および第2の外部端子電極2,3を収容キャビティ5の第1および第2の開口端6,7側にそれぞれ向けた状態で電子部品4を保持しているホルダ14に、第1および第2の測定端子9,10間の位置を横切るように延びるシールド層15を設け、シールド層15を測定基準電位16に電気的に接続する。シールド層15によって、電子部品4近辺に寄生する浮遊容量を低減し、電子部品4の寸法ばらつきに起因する測定誤差を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子部品の特性測定装置に関するもので、特に、電気的特性が測定される電子部品を保持するためのホルダの構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この発明にとって興味ある従来の電子部品の特性測定装置として、米国特許第5,842,579号明細書(特許文献1)に記載されたものがある。この従来の電子部品の特性測定装置の主要部が、図10に図解的に示されている。
【0003】
図10を参照して、特性測定装置1は、互いに対向する第1および第2の端部に第1および第2の外部端子電極2および3がそれぞれ形成されたチップ状の電子部品4の特性を測定するためのものである。
【0004】
特性測定装置1は、電子部品4を収容するための収容キャビティ5を有し、かつ第1および第2の外部端子電極2および3を収容キャビティ5の互いに対向する第1および第2の開口端6および7側にそれぞれ向けた状態で電子部品4を保持する、ホルダ8を備えている。
【0005】
また、特性測定装置1は、収容キャビティ5の第1および第2の開口端6および7の位置において、電子部品4の第1および第2の外部端子電極2および3にそれぞれ接触するように配置される、第1および第2の測定端子9および10を備えている。第1の測定端子9は、たとえば板ばねから構成され、第1の外部端子電極2に弾性的に接触するようにされる。第2の測定端子10は、たとえばブロック状とされ、固定的に設けられる。
【0006】
ホルダ8は、通常、円板状であり、そこには、複数個の収容キャビティ5が周方向に分布するように配列され、各収容キャビティ5には、電子部品4が1個ずつ収容される。したがって、図10には、ホルダ8の一部が図示されていると理解すればよい。
【0007】
円板状のホルダ8は回転される。このホルダ8の回転によって移動される収容キャビティ5の経路上の所定の位置で、電子部品4が収容キャビティ5内に振り込まれ、次いで、収容キャビティ5内に収容された電子部品4が第1および第2の測定端子9および10の間の位置に移動され、第1および第2の測定端子9および10が第1および第2の外部端子電極2および3に接触することによって、電子部品4の電気的特性が測定される。その後、電子部品4は、収容キャビティ5から取り出される。このとき、測定された電気的特性に応じて、たとえば、電気的特性の良否に応じて、電子部品4が選別される。
【特許文献1】米国特許第5,842,579号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のような特性測定装置1を用いて、電子部品4の静電容量を求めようとする場合、その精度を高めるため、実際には、次のような手順で静電容量が求められる。
【0009】
まず、特性測定装置1に備える測定端子9および10やケーブル(図示せず。)等の電気的要素によってもたらされる電気的寄生成分を予め測定しておく。次いで、電子部品4の静電容量を測定する。この測定された静電容量は、電気的寄生成分を含む値となっている。そして、電子部品4の静電容量の測定結果から、電気的寄生成分を差し引いた値を、電子部品4の静電容量とする。
【0010】
したがって、予め測定された電気的寄生成分値と電子部品4を実際に測定した際にもたらされた電気的寄生成分値との間に差がある場合、この差が誤差として、求められた静電容量に含まれてしまうことになる。
【0011】
上述した電気的寄生成分には、測定端子9および10間の浮遊容量が含まれている。図10には、この浮遊容量を与える電気力線11が破線の矢印によって図解的に示されている。電子部品4の寸法が小さく、そのため、第1および第2の測定端子9および10間の距離が短くなるほど、また、第1および第2の測定端子9および10の対向面積が大きくなるほど、この浮遊容量は無視できなくなってくる。特に、図10に示すように、第1および第2の測定端子9および10の少なくとも一方が、電子部品4の外部端子電極2および3より大きく、電子部品4の外側を通過する電気力線11が存在する場合、上記の問題がより深刻になる。
【0012】
このような状況下において、電子部品4の寸法にばらつきが生じると、この寸法ばらつきが原因となって浮遊容量にばらつきが生じ、その結果、特性測定時の電気的寄生成分値と予め測定された電気的寄生成分値との間に差が生じるばかりでなく、この差が変動し、それによってもたらされた誤差が静電容量の測定結果に含まれることになる。
【0013】
同様の問題は、静電容量の測定の場合に限らず、他の電気的特性の測定の場合においても遭遇する。
【0014】
そこで、この発明の目的は、上述のような問題を解決し、より精度の高い電気的特性の測定を可能にする、電子部品の特性測定装置を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、簡単に言えば、電気的特性が測定される電子部品の近辺に寄生する浮遊容量をできるだけ低減し、それによって、電子部品の寸法ばらつきに起因する測定誤差をできるだけ抑えようとするものである。
【0016】
より詳細には、この発明は、互いに対向する第1および第2の端部に第1および第2の外部端子電極がそれぞれ形成されたチップ状の電子部品の電気的特性を測定するためのものであって、電子部品を収容するための収容キャビティを有し、第1および第2の外部端子電極を収容キャビティの互いに対向する第1および第2の開口端側にそれぞれ向けた状態で電子部品を保持する、ホルダと、収容キャビティの第1および第2の開口端に位置において、電子部品の第1および第2の外部端子電極にそれぞれ接触するように配置される、第1および第2の測定端子とを備え、第1および第2の測定端子の少なくとも一方は、第1および第2の外部端子電極より大きい、電子部品の特性測定装置に向けられる。そして、上述した技術的課題を解決するため、次のような構成を備えることを特徴としている。
【0017】
すなわち、ホルダは、第1および第2の測定端子間の位置を横切るように延びる、導電性材料からなるシールド層を備え、ホルダの、シールド層を除く部分は、電気絶縁性材料から構成され、シールド層は、測定基準電位に電気的に接続されていることを第1の特徴としている。
【0018】
上述のように、ホルダにシールド層が設けられることによって、浮遊容量を与える電気力線は、電子部品近辺において、シールド層によって遮断され、したがって、浮遊容量を低減することができる。
【0019】
また、この発明において、ホルダは、電子部品を1個ずつ収容する複数個の収容キャビティを有し、第1および第2の測定端子が各収容キャビティ内に収容された各電子部品の第1および第2の外部端子電極に順次接触するように、ホルダが移動可能とされることを第2の特徴としている。これによって、複数個の電子部品に対して特性測定を行なう工程を能率的に進めることができる。
【0020】
上述の構成において、ホルダは円板状であり、複数個の収容キャビティが、ホルダの周方向に分布するように配列され、ホルダが回転することによって、第1および第2の測定端子が各収容キャビティ内に収容された各電子部品の第1および第2の外部端子電極に順次接触するようにされることがより好ましい。このように構成することにより、ホルダの一方方向への回転に従って、電子部品の特性測定工程を連続的に進めることができる。
【0021】
上述の好ましい実施態様において、複数対の第1および第2の測定端子が、ホルダの周方向に分布するように配置されてもよい。このような構成によれば、ホルダに関連して複数箇所に電気的特性の測定のための測定部を設けることができ、また、各測定部において同時に電気的特性の測定工程を実施することができる。そして、複数箇所の測定部で同じ種類の電気的特性の測定を行なう場合には、この電気的特性の測定工程を能率的に進めることができ、他方、複数箇所の測定部において、互いに異なる種類の電気的特性を測定する場合には、ホルダによって保持されたままの状態で、電子部品の複数種類の電気的特性の測定を行なうことができる。
【0022】
上述の後者のように、複数種類の電気的特性を測定する場合には、シールド層は、ホルダの周方向に分布するように、複数部分に分割され、分割されたシールド層の各部分に、少なくとも1個の収容キャビティが配置されることが好ましい。これによって、測定されるべき電気的特性の種類毎に、シールド層に与えられる測定基準電位を変えることができるからである。
【0023】
また、第1および第2の測定端子の少なくとも一方は、対応の外部端子電極に接触しながら転動するローラを備えることが好ましい。これによって、測定端子を、外部端子電極に対して円滑に接触させることができる。
【0024】
さらに、この発明では、ホルダには、シールド層に電気的に接続されるシールド導電面が露出する状態で設けられ、測定基準電位を与えるため、このシールド導電面に接触するシールド端子をさらに備えていることを第3の特徴としている。これによって、ホルダの移動の間、シールド端子からシールド導電面を介してシールド層に測定基準電位を与えることができる。
【0025】
上述の構成において、シールド導電面がシールド層の一部によって与えられると、シールド導電面を特別に設ける必要がなくなりホルダの構造が複雑化することを避けることができる。
【0026】
この発明において、シールド層は、測定基準電位に電気的に直接接続されていることが好ましいが、コンデンサを介して測定基準電位に電気的に接続されていてもよい。
【0027】
シールド層がコンデンサを介して測定基準電位に電気的に接続される場合、次のような構成が採用されることが好ましい。すなわち、ホルダは、シールド層に接するとともに、シールド層の延びる方向に延びる外面を与えながら所定の厚みをもって形成され、かつ所定の比誘電率を有する誘電体材料からなる、誘電体層を備える。また、この発明に係る電子部品の特性測定装置は、さらに、ホルダの上記外面に接するように設けられ、かつ測定基準電位に電気的に接続される、導電性材料からなる基台を備える。そして、上記コンデンサは、シールド層と誘電体層と基台とによって与えられる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、この発明によれば、電気的特性を測定しようとするホルダには、第1および第2の測定端子間の位置を横切るように延びるシールド層が設けられ、このシールド層が測定基準電位に接続されているので、第1および第2の測定端子間に生じる電気力線をシールド層によって遮断することができ、そのため、第1および第2の測定端子間に寄生する浮遊容量を低減することができる。その結果、電子部品の寸法ばらつきに起因する浮遊容量の変動による電気的特性の測定誤差を抑制することができる。
【0029】
したがって、より高い精度をもって電子部品の電気的特性を測定することができる。その結果として、電子部品の電気的特性に関する良品選別範囲を広げることができ、良品率の向上を期待することもできる。
【0030】
また、この発明によれば、ホルダが、電子部品を1個ずつ収容する複数個の収容キャビティを有し、第1および第2の測定端子が各収容キャビティ内に収容された電子部品の第1および第2の外部端子電極に順次接触するように、ホルダと第1および第2の測定端子とが相対的に移動可能とされるので、複数個の電子部品についての特性測定工程を能率的に進めることができる。
【0031】
上述の場合、ホルダが円板状であり、複数個の収容キャビティが、ホルダの周方向に分布するように配列され、ホルダが回転することによって、第1および第2の測定端子が各収容キャビティ内に収容された各電子部品の第1および第2の外部端子電極に順次接触するようにされると、ホルダを一方方向へ回転させながら、収容キャビティ内への電子部品の挿入工程、収容キャビティ内の電子部品の電気的特性の測定工程および収容キャビティからの電子部品の取出し工程を連続的に実施することができ、特性測定工程をより能率的に進めることができる。
【0032】
上述の場合において、複数対の第1および第2の測定端子が、ホルダの周方向に分布するように配置されると、特性測定工程を複数箇所において同時に実施することができるようになる。
【0033】
上述の場合において、シールド層が、ホルダの周方向に分布するように、複数部分に分割され、分割されたシールド層の各部分に、少なくとも1個の収容キャビティが配置されると、シールド層に与えられる測定基準電位を変えながら、複数種類の電気的特性の測定工程を同時に実施できるようになる。
【0034】
また、第1および第2の測定端子の少なくとも一方が、対応の外部端子電極に接触しながら転動するローラを備えていると、外部端子電極への測定端子の円滑な接触状態を実現することができる。
【0035】
また、この発明によれば、ホルダが移動可能とされ、シールド層に電気的に接続されるシールド導電面がホルダに露出する状態で設けられているので、このシールド導電面にシールド端子を接触させることにより、ホルダの移動に関わらず、シールド層に測定基準電位を与えることができる。
【0036】
また、この発明において、シールド層が、測定基準電位に電気的に直接接続されると、シールド層による電気力線の遮断効果をより高めることができる。
【0037】
他方、シールド層が、コンデンサを介して測定基準電位に電気的に接続される場合、ホルダが、シールド層に接する誘電体層を備え、ホルダの外面に接するように導電性材料からなる基台を設けるようにすれば、ホルダの一部を利用してコンデンサを与えることができるとともに、基台を測定基準電位に電気的に接続すればよいので、シールド層を測定基準電位に電気的に接続した状態とするためのシールド端子が不要になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は、この発明の原理を説明するためのもので、この発明に係る電子部品の特性測定装置13の主要部を示す、図10に相当する図である。図1において、図10に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0039】
図1に示した特性測定装置13は、電子部品4を保持するためのホルダ14の構造に特徴がある。すなわち、ホルダ14は、第1および第2の測定端子9および10間の位置を横切るように延びる、導電性材料からなるシールド層15を備えている。また、このシールド層15は、測定基準電位16に電気的に接続されている。
【0040】
図1には、図10の場合と同様、浮遊容量を与える電気力線11が破線の矢印によって示されている。
【0041】
第1および第2の測定端子9および10の間で発生する電気力線11は、シールド層15によって遮断され、電子部品4内を通るものだけに制限される。したがって、電子部品4近辺で寄生する浮遊容量が低減される。そのため、電子部品4の寸法ばらつきに起因する浮遊容量の変動を抑えることができ、その結果、静電容量等の電気的特性の測定誤差をより生じにくくすることができる。
【0042】
以下に、この発明のより具体的な実施形態について説明する。
【0043】
図2および図3は、この発明の第1の実施形態を説明するためのもので、電子部品の特性測定装置21の主要部を示している。ここで、図2には、特性測定装置21に備えるホルダ22が平面図で示され、図3には、ホルダ22の一部が拡大されて断面図で示されている。
【0044】
この特性測定装置21においては、図1および図10に示した電子部品4と同様、互いに対向する第1および第2の端部に第1および第2の外部端子電極2および3がそれぞれ形成されたチップ状の電子部品4が取り扱われる。
【0045】
ホルダ22は、図2によく示されているように、円板状である。ホルダ22には、電子部品4を1個ずつ収容する複数個の収容キャビティ23が設けられている。複数個の収容キャビティ23は、ホルダ22の周方向に分布するように配列されている。なお、図示しないが、複数個の収容キャビティ23は、必要に応じて、複数列に配列されてもよい。
【0046】
ホルダ22の中心には、シャフト受入孔24が設けられ、ここに受け入れられたシャフト(図示せず。)の回転が伝達されることによって、ホルダ22は、矢印25で示すように回転される。ホルダ22は、通常、間欠的に回転される。
【0047】
上述したホルダ22の回転に従って移動される収容キャビティ23の経路上の所定の位置において、収容キャビティ23内に電子部品4が振り込まれる。収容キャビティ23内に収容された電子部品4は、図3に示すように、第1および第2の外部端子電極2および3を収容キャビティ23の互いに対向する第1および第2の開口端26および27側にそれぞれ向けた状態となっている。
【0048】
この特性測定装置21は、収容キャビティ23の第1および第2の開口端26および27の位置において、電子部品4の第1および第2の外部端子電極2および3にそれぞれ接触するように配置される、第1および第2の測定端子28および29を備えている。ホルダ22が回転することによって、第1および第2の測定端子28および29は、各収容キャビティ23内に収容された各電子部品4の第1および第2の外部端子電極2および3に順次接触し、この状態において、電子部品4の所望の電気的特性を測定する工程が実施される。
【0049】
その後、電子部品4は、ホルダ22の回転に従って移動された後、収容キャビティ23から取り出される。このとき、測定された電気的特性に応じて、たとえば、電気的特性の良否に応じて、電子部品4が選別される。
【0050】
この実施形態では、第1および第2の測定端子28および29は、第1および第2の外部端子電極2および3にそれぞれ接触しながら転動するローラ30および31を備えている。これらローラ30および31は、ホルダ22の回転に従って移動する電子部品4の外部端子電極2および3への円滑な接触状態を可能にする。
【0051】
図3にその一部が図示されているように、ホルダ22の下方には、固定台32が設けられ、収容キャビティ23内に収容された電子部品4が脱落しないように、これを受けるようにされている。なお、収容キャビティ23が電子部品4の脱落を防止するような形状であれば、固定台32は設けられる必要はない。
【0052】
ホルダ22は、第1および第2の測定端子28および29間の位置を横切るように延びるシールド層33を備えている。シールド層33は、たとえば銅またはその合金あるいはその他の金属のような導電性材料から構成される。取り扱われる電子部品4の寸法によって異なるが、一例として、ホルダ22の全体の厚みは500μm程度とされ、シールド層33の厚みは35μm程度とされる。
【0053】
ホルダ22の、シールド層33を除く部分は、電気絶縁性材料から構成され、この電気絶縁性材料として、たとえば、ガラスエポキシ樹脂、ベークライトのような樹脂、またはジルコニアのようなセラミックが用いられる。なお、ホルダ22の耐久性、耐磨耗性およびコストを考慮すると、特にガラスエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0054】
ホルダ22の内周側には、シールド層33に電気的に接続されるシールド導電面34が形成される。この実施形態では、シールド導電面34は、シールド層33の一部によって与えられる。シールド端子35が、シールド導電面34に接触するように設けられる。シールド端子35には、測定基準電位が与えられ、したがって、シールド端子35がシールド導電面34に接触することによって、シールド層33は、測定基準電位に電気的に接続された状態となる。
【0055】
この実施形態では、シールド端子35は、シールド導電面34に接触しながら転動するローラ36を備えている。ローラ36は、ホルダ22の回転に従って移動するシールド導電面34へのシールド端子35の円滑な接触を可能にする。
【0056】
図2に示すように、シールド導電面34がホルダ22の周方向に連続して形成される場合には、シールド端子35は、シールド導電面34に接触する限り、任意の位置に設けることができる。
【0057】
以上のように、この特性測定装置21によれば、第1および第2の測定端子28および29間で生じる電気力線は、電子部品4を通るものだけに制限されるように、シールド層33によって有利に遮断される。したがって、電子部品4の近辺に寄生する浮遊容量を低減することができ、電子部品4の寸法ばらつきに起因する電気的特性の測定誤差を抑えることができ、高い精度をもって電気的特性の測定を行なうことができる。
【0058】
なお、測定されるべき電気的特性としては、種々のものがある。電子部品4がコンデンサの場合、前述の静電容量の他、絶縁抵抗といった電気的特性が測定されることができ、チップ抵抗器の場合には、抵抗値のような電気的特性が測定されることができ、チップインダクタの場合には、インダクタンス値のような電気的特性が測定されることができる。
【0059】
以下、この発明の他の実施形態について説明する。
【0060】
図4、図5および図6は、それぞれ、この発明の第2、第3および第4の実施形態を説明するためのもので、測定端子に関する変形例が示されている。なお、図4ないし図6において、図3に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0061】
図4に示した第2の実施形態では、第1の測定端子28が板ばねから構成されている。その他の構成は、第1の実施形態の場合と実質的に同様である。
【0062】
図4に示した第2の実施形態の変形例として、第2の測定端子29が板ばねから構成され、第1の測定端子28がローラ30を備えるものであってもよい。あるいは、第1および第2の測定端子28および29の双方が板ばねから構成されてもよい。
【0063】
図5に示した第3の実施形態では、第2の測定端子29がブロック状のもので構成されている。ブロック状の測定端子29には、好ましくはテーパ面38が形成される。
【0064】
図5に示した第3の実施形態の変形例として、第1の測定端子28がブロック状のもので構成され、第2の測定端子29がローラ31を備えるものであってもよい。あるいは、第1および第2の測定端子28および29の双方がブロック状のもので構成されてもよい。
【0065】
図6に示した第4の実施形態では、第1の測定端子28がピンプローブによって構成される。
【0066】
図6に示した第4の実施形態の変形例として、第2の測定端子29がピンプローブによって構成され、第1の測定端子28がローラ30を備えるものであってもよい。あるいは、第1および第2の測定端子28および29の双方がピンプローブから構成されてもよい。
【0067】
さらに、具体的な図示は省略するが、板ばねからなる測定端子とブロック状の測定端子との組み合わせ、ピンプローブから構成される測定端子とブロック状の測定端子との組み合わせなどが適用されてもよい。
【0068】
図7は、この発明の第5の実施形態を説明するためのものである。図7において、図3に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0069】
図7には、円板状のホルダ22の外周部分が図示されている。シールド層33に電気的に接続されるシールド導電面34は、ホルダ22の外周面上に露出するように形成される。他方、シールド導電面34に接触するシールド端子35は、そのローラ36がホルダ22の外周面に接触しながら転動するように配置される。
【0070】
上述のようなシールド端子35の配置に関するさらに他の実施形態として、具体的には図示しないが、図3を参照して説明すれば、ホルダ22の下面側にシールド導電面34を形成し、シールド端子35をホルダ22の下面側に配置してもよい。
【0071】
また、シールド端子35の形態に関する他の実施形態として、シールド端子35が、図4に示した第1の測定端子28のように、板ばねから構成されても、図5に示した第2の測定端子29のように、ブロック状のもので構成されてもよい。
【0072】
図8は、この発明の第6の実施形態を説明するためのもので、ホルダ22aの平面図である。図8において、図2に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0073】
図8に示したホルダ22aにおいては、シールド層33は、ホルダ22aの周方向に分布するように、複数部分に分割されている。そして、分割されたシールド層33の各部分に、少なくとも1個の収容キャビティ23が配置される。
【0074】
この実施形態では、複数対の第1および第2の測定端子28および29(その位置のみが1点鎖線の円によって示されている。)が、ホルダ22aの周方向に分布するように配置されることが好ましい。また、シールド端子35についても、その位置のみが1点鎖線の円によって示されているように、第1および第2の測定端子28および29の各対に対応して設けられることが好ましい。
【0075】
この実施形態によれば、電子部品4をホルダ22aに保持したままの状態で、測定しようとする電気的特性の種類毎に測定基準電位を変えながら、電子部品4の複数種類の電気的特性を同時に測定することができる。
【0076】
なお、複数種類の電気的特性を測定するための測定基準電位が共通であってもよい場合には、図8のように、シールド層33を複数部分に分割することなく、複数対の第1および第2の測定端子28および29を、ホルダ22の周方向に分布するように配置すればよい。この場合、複数種類の電気的特性を測定するのではなく、同一種類の電気的特性を測定するようにすれば、このような電気的特性の測定をより能率的に行なうことができる。
【0077】
以上説明した第1ないし第6の実施形態では、シールド層33は、測定基準電位に電気的に直接接続されていたが、以下に説明する第7の実施形態のように、コンデンサを介して測定基準電位に電気的に接続されていてもよい。
【0078】
図9は、この発明の第7の実施形態を説明するためのもので、ホルダ22およびそれに関連する構成を示す断面図である。
【0079】
図9に示した実施形態においても、第1の実施形態の場合と同様、ホルダ22は、円板状であり、その中心には、シャフト受入孔24が設けられている。
【0080】
また、ホルダ22には、電子部品4を1個ずつ収容する複数個の収容キャビティ23が設けられている。これら収容キャビティ23は、ホルダ22の周方向に分布するように配列されている。収容キャビティ23内に収容された電子部品4は、その第1および第2の外部端子電極2および3を収容キャビティ23の互いに対向する第1および第2の開口端26および27側にそれぞれ向けた状態となっている。
【0081】
ホルダ22は、また、第1の実施形態の場合と同様、導電性材料からなるシールド層33を備えている。また、ホルダ22の、シールド層33を除く部分は、たとえばガラスエポキシ樹脂のような電気絶縁性材料から構成される。このような電気絶縁性材料は、所定の比誘電率を有している。したがって、ホルダ22には、シールド層33に接するとともに、シールド層33の延びる方向に延びる外面40を与えながら所定の厚みをもって形成される誘電体層41が、結果として形成されることになる。
【0082】
この実施形態では、さらに、ホルダ22の上述の外面40に接するように、たとえば銅または銅合金のような導電性材料からなる基台42が固定的に設けられる。基台42は、ホルダ22と同様の円板状である。また、ホルダ22は、前述したように、間欠的に回転されるが、その停止段階では、基台42に対して真空吸引によって密着するように構成されている。
【0083】
このような構成において、シールド層33は、ホルダ22の一部としての誘電体層41を介して、基台42に対向する状態となり、したがって、シールド層33と誘電体層41と基台42とによって、コンデンサが与えられる。
【0084】
また、ホルダ22に備える収容キャビティ23の第1および第2の開口端26および27の位置において、電子部品4の第1および第2の外部端子電極2および3にそれぞれ接触するように、第1および第2の測定端子28および29が配置されている。
【0085】
この実施形態では、第1の測定端子28は板ばねから構成される。他方、第2の測定端子29は、ブロック状の導体から構成され、基台42に対して、たとえば樹脂からなる電気絶縁材44を介して取り付けられる。
【0086】
なお、第1および第2の測定端子28および29については、図4ないし図6を参照して説明したような変形例を採用することもできる。
【0087】
この第7の実施形態のように、シールド層33がコンデンサを介して測定基準電位43に電気的に接続される場合、高周波特性を測定するとき、コンデンサは、バイパスコンデンサとして機能するため、シールド層33が測定基準電位に電気的に直接接続されている場合に匹敵する効果をシールド層33によって与えることができる。
【0088】
以下に、より具体的に、第7の実施形態におけるシールド層33による効果について考察する。この考察にあたっては、次のような条件を採用する。
【0089】
まず、ホルダ22は直径300mmの円板状であり、そのシールド層33以外の誘電体層41を含む部分を、比誘電率が2〜10のガラスエポキシ樹脂から構成する。シールド層33は、ホルダ22の中心部における直径150mmの領域を除く領域においてドーナツ状に形成される。シールド層33と基台42との間に位置する誘電体層41の厚みは0.5mmである。
【0090】
このような条件の下で、測定周波数帯域を1kHz〜1MHzとしたとき、シールド層33と基台42との間のインピーダンスは数十Ωになる。他方、シールド層33を直接接地した場合のインピーダンスは数Ωとより小さいが、上述した数十Ωであっても十分に小さいと言える。したがって、第1および第2の測定端子28および29間の電気力線は、シールド層33と基台42とによって遮断され、電子部品4を通るものだけに制限されることができる。
【0091】
以上、この発明を図示した実施形態に関連して説明したが、この発明の範囲内において、その他、種々の変形例が可能である。
【0092】
たとえば、図示の実施形態では、ホルダ22および22aは円板状であり、これらホルダ22および22aが回転するように構成されたが、ホルダは、たとえば、平行移動するように構成されてもよい。
【0093】
また、図示の実施形態では、ホルダ22および22aは、そこに設けられた収容キャビティ23の開口端26および27が上下方向に向くように配置されたが、水平方向に向くように配置されても、斜め方向に向くように配置されてもよい。
【0094】
また、測定基準電位は、必ずしもゼロ電位に限らず、電子部品の電気的特性に応じて特定の電位に合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】この発明の原理を説明するためのもので、電子部品の特性測定装置13の主要部を図解的に示す断面図である。
【図2】この発明の第1の実施形態による電子部品の特性測定装置21に備える、ホルダ22を、第1の測定端子28およびシールド端子35とともに示す平面図である。
【図3】図2に示した電子部品の特性測定装置21に備える、第1および第2の測定端子28および29ならびにシールド端子35を拡大して正面図で示すとともに、ホルダ22の一部を拡大して断面図で示す図である。
【図4】この発明の第2の実施形態を説明するためのもので、第1および第2の測定端子28および29を拡大して正面図で示すとともに、ホルダ22の一部を拡大して断面図で示す図である。
【図5】この発明の第3の実施形態を説明するための図4に相当する図である。
【図6】この発明の第4の実施形態を説明するための図4に相当する図である。
【図7】この発明の第5の実施形態を説明するためのもので、シールド端子35を拡大して正面図で示すとともに、ホルダ22の外周部を拡大して断面図で示す図である。
【図8】この発明の第6の実施形態を説明するためのホルダ22aを示す平面図である。
【図9】この発明の第7の実施形態を説明するためのホルダ22およびそれに関連する構成を示す断面図である。
【図10】この発明にとって興味ある従来の電子部品の特定測定装置1の主要部を図解的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0096】
2 第1の外部端子電極
3 第2の外部端子電極
4 電子部品
5,23 収容キャビティ
6,26 第1の開口端
7,27 第2の開口端
9,28 第1の測定端子
10,29 第2の測定端子
14,22,22a ホルダ
15,33 シールド層
16 測定基準電位
30,31 ローラ
34 シールド導電面
35 シールド端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1および第2の端部に第1および第2の外部端子電極がそれぞれ形成されたチップ状の電子部品の電気的特性を測定する装置であって、
前記電子部品を1個ずつ収容するための複数個の収容キャビティを有し、前記第1および第2の外部端子電極を前記収容キャビティの互いに対向する第1および第2の開口端側にそれぞれ向けた状態で前記電子部品を保持する、ホルダと、
前記収容キャビティの第1および第2の開口端の位置において、前記電子部品の前記第1および第2の外部端子電極にそれぞれ接触するように配置される、第1および第2の測定端子と
を備え、
前記ホルダは、前記第1および第2の測定端子が各前記収容キャビティ内に収容された各前記電子部品の前記第1および第2の外部端子電極に順次接触するように移動可能とされ、
前記第1および第2の測定端子の少なくとも一方は、前記第1および第2の外部端子電極より大きく、
前記ホルダには、前記第1および第2の測定端子間の位置を横切るように延びる、導電性材料からなるシールド層が設けられるとともに、前記シールド層に電気的に接続されるシールド導電面が露出する状態で設けられ、前記ホルダの、前記シールド層およびシールド導電面を除く部分は、電気絶縁性材料から構成され、前記シールド層は、測定基準電位に電気的に接続され、
前記測定基準電位を与えるため、前記シールド導電面に接触するシールド端子をさらに備えていることを特徴とする、電子部品の特性測定装置。
【請求項2】
前記ホルダは、前記シールド層と前記シールド層の両主面を覆うように形成された電気絶縁性材料からなる層とから構成される、請求項1に記載の電子部品の特性測定装置。
【請求項3】
前記シールド層は、前記収容キャビティの内面に露出する、請求項1または2に記載の電子部品の特性測定装置。
【請求項4】
前記ホルダは円板状であり、複数個の前記収容キャビティは、前記ホルダの周方向に分布するように配列され、前記ホルダが回転することによって、前記第1および第2の測定端子が各前記収容キャビティ内に収容された各前記電子部品の前記第1および第2の外部端子電極に順次接触するようにされる、請求項1ないし3のいずれかに記載の電子部品の特性測定装置。
【請求項5】
複数対の前記第1および第2の測定端子が、前記ホルダの周方向に分布するように配置される、請求項4に記載の電子部品の特性測定装置。
【請求項6】
前記シールド層は、前記ホルダの周方向に分布するように、複数部分に分割され、分割された前記シールド層の各部分に、少なくとも1個の前記収容キャビティが配置される、請求項5に記載の電子部品の特性測定装置。
【請求項7】
前記第1および第2の測定端子の少なくとも一方は、対応の前記外部端子電極に接触しながら転動するローラを備える、請求項1ないし6のいずれかに記載の電子部品の特性測定装置。
【請求項8】
前記シールド導電面は、前記シールド層の一部によって与えられる、請求項1ないし7のいずれかに記載の電子部品の特性測定装置。
【請求項9】
前記シールド層は、前記測定基準電位に電気的に直接接続されている、請求項1ないし8のいずれかに記載の電子部品の特性測定装置。
【請求項10】
前記シールド層は、コンデンサを介して前記測定基準電位に電気的に接続されている、請求項1ないし8のいずれかに記載の電子部品の特性測定装置。
【請求項11】
前記ホルダは、前記シールド層に接するとともに、前記シールド層の延びる方向に延びる外面を与えながら所定の厚みをもって形成され、かつ所定の比誘電率を有する誘電体材料からなる、誘電体層を備え、さらに、前記ホルダの前記外面に接するように設けられ、かつ前記測定基準電位に電気的に接続される、導電性材料からなる基台を備え、前記コンデンサは、前記シールド層と前記誘電体層と前記基台とによって与えられる、請求項10に記載の電子部品の特性測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−224681(P2008−224681A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121806(P2008−121806)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【分割の表示】特願2003−79666(P2003−79666)の分割
【原出願日】平成15年3月24日(2003.3.24)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】