説明

電気パルスを送信するためのシステム及び同システムのための容量減結合装置

電荷分布を判断することができる電気パルスを送信する送信電極の電気的減結合及び送信電極の高電圧分極の両方を可能にする技術を提供する。本発明は、特に、誘電体で作られた要素(2)の厚みに含まれる電荷の分布を判断するための装置に対して少なくとも1つの電気パルスを送信するためのシステムに関し、この送信システムは、少なくとも1つのパルスを送信するための送信電極(1)と、このパルスの発生器(3)とを含む。システムは、電極が伝送線路(1)によって形成され、この伝送線路が、解析される要素(2)に対して実質的に水平であり、かつインピーダンス整合手段を含み、整合手段が、パルスの通過帯域内でインピーダンスをこの伝送線路に沿って実質的に一定に保つという点で顕著である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体から作られた要素の厚みに含まれた電荷の分布を判断するための装置に対して電気パルスを送信するためのシステムに関する。
【0002】
本発明は、特に、電荷分布を判断することができる電気パルスを送信する送信電極の電気的減結合及び送信電極の高電圧分極の両方を可能にすることを目指すものである。
【背景技術】
【0003】
本発明によるシステムは、励振器パルス送信時の改善した有効性を用いて帯電誘電体要素の厚み内の電荷の分布を特定することを準備するものである。
【0004】
「パルス式電子音響(PEA)」方法を適用するように設計された要素の厚み内の電荷分布を解析するためのシステムは公知である。このPEA方法は、解析される要素に含まれた電荷の密度、分布、及び極性を判断することを目指すものである。
【0005】
PEA方法の原理は、材料を綿密に調べることを目的として2つの電極間に置かれた要素に短持続時間パルスを印加することである。初期電気パルスの影響を受けて、材料に含まれた電荷は、生成された電界と平行に移動してそれらの最初の位置に戻る。電荷のこの移動は、電界の方向に伝播する電子音響波を発生させる。この波は、その振幅が電極上に含まれるか又は誘発される電荷量に比例するが、解析要素が生成される材料に特異な速度で解析要素の表面に向けて移動する。要素における電荷の深さは、この速度から推定される。受信電極は、音波を電気信号に変換する圧電センサを装備している。電気信号は、増幅され、信号を可視化することができる測定オシロスコープに送信される。ソフトウエアに関連して基準測定を用いてプログラムされた電気信号のためのデータ処理システムは、次に、解析要素に含まれる電荷の空間分布に関する情報を送出する。
【0006】
このような方法は、特に、「工業用途のための革新的PEA空間電荷測定システム」(IEEE電気絶縁誌、2004年3月/4月、第20巻、第2号)という名称の論文に説明されている。
【0007】
このPEA方法を実施するためのシステムを図1に概略的に示している。
【0008】
それは、解析される要素2内にパルスを送信する送信電極1を含み、要素は、誘電体から作られ、電極1は、要素2を通過する音波を発生させることができるパルス発生器3に接続されている。システムはまた、解析される要素2を支持することができる支持体を含み、この支持体は、圧電センサ5が装備された受信電極4に接続され、センサは、パルスによって発生される音波を感知することができ、かつそれを蓄積電荷の位置的分布を解析するためにオシロスコープ上でパルスによって発生された音波を表す電気信号に変換することができる。
【0009】
システムはまた、センサの出力部に配置された増幅器及びフィルタ6及び7を含み、信号を解析して下流に配置されたオシロスコープ8上にそれを可視化することができるように信号を増幅する。最後に、送信電極1には、電源ユニット9により電圧供給することができる。
【0010】
コンピュータ10は、電気信号を受信してそれが含むデータを解析するためにオシロスコープ8に接続されている。コンピュータ10はまた、送信電極により送信された初期パルスのパラメータを通知されるようにパルス発生器3に接続されている。上述の要素に貯蔵された電荷の分布は、このようにして判断することができ、その結果は、コンピュータ10の画面を通じて表又は3次元表現の形式で可視化することができる。
【0011】
このようなシステムは、いくつかの欠点を示し、特に送信電極1でのパルスの送信中に要素2に印加される信号の歪みの欠点を特に含む。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「工業用途のための革新的PEA空間電荷測定システム」(IEEE、Electric Insulation Magazine、March/April 2004、Vol. 20, No. 2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述の欠点を克服することにより、図1に示すものよりも良好に機能する少なくとも1つの電気パルスを送信するためのシステムを達成することを目指している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、誘電体で作られた要素の厚みに含まれる電荷の分布を判断するための装置に対して少なくとも1つの電気パルスを送信するためのシステムに関し、この送信システムは、少なくとも1つのパルスを送信するための送信電極と、このパルスの発生器とを含む。本発明によるシステムは、電極が伝送線路によって形成され、伝送線路が、解析される要素に対して実質的に水平であり、かつインピーダンス整合手段を含み、整合手段が、パルスの通過帯域内でインピーダンスをこの伝送線路に沿って実質的に一定に保つという点で顕著である。
【0015】
インピーダンス整合手段と組み合わされた実質的に水平な電極は、歪みなしでパルスを送信することを可能にする。
【0016】
更に、本発明は、特に個別の構成要素を導入することに備える従来技術によって提案されるものと比較して、インピーダンスを整合させるより有効な技術的解決法を提供する。
【0017】
本発明の実施形態によれば、システムは、別々に又は組合せで取られる以下の特徴を含むことができる:
−インピーダンス整合手段は、一方でパルス発生器と送信電極の1つの端部との間に、他方で送信電極の第2の端部と負荷の間に電気的リンク手段を含み、そのインピーダンスは、電極の固有インピーダンスに等しく、
−リンク手段は、同軸ケーブルであり、
−インピーダンスは、実質的に50オームであり、
−負荷は、電極の下流に位置する信号を吸収するための回路によって形成され、
−システムは、電極に分極電圧を印加するための手段と、電極の1つの端部に配置された電極のための少なくとも1つの容量減結合装置とを含み、
−減結合装置は、電圧に適合する少なくとも1つのコンデンサと、コンデンサのインピーダンスを整合させるための構成要素とを含む。
−コンデンサは、細長形状を有し、整合構成要素は、コンデンサの1つの接続端部の近くに配置された少なくとも1つの金属構造体を含み、この構造体は、コンデンサを実質的にその全長にわたって取り囲み、
−それは、少なくとも2つの金属構造体を含み、構造体の各々は、コンデンサの1つの接続端部の近くに配置され、この2つの構造体は、空気、真空、及び誘電体を含む群に属する絶縁要素により分離され、
−この構造体は、反対向きに配置され、
−構造体の自由縁は、コンデンサの回りに重なり、
−減結合装置は、コンデンサと整合構成要素とを含むケーシングを含み、ケーシングは、少なくとも2つのコネクタを含み、かつ接地面に接続され、
−容量減結合装置は、横断切断部を有する少なくとも1つのマイクロストリップ線路を含み、横断切断部は、マイクロストリップ線路を減結合コンデンサにより相互接続された2つの部分に分割し、
−送信電極は、横断切断部を端部の各々に有するマイクロストリップ線路を含み、横断切断部は、マイクロストリップ線路を2つの側面部分と1つの中央部分に分割し、中央部分は、コンデンサによって各々の側面部分に接続され、マイクロストリップ線路の各端部に位置する各横断切断部/コンデンサ/側面部分アセンブリは、容量減結合装置を形成する。
【0018】
本発明はまた、電圧に適合する少なくとも1つのコンデンサとコンデンサのインピーダンスを整合させるための構成要素とを含む点で顕著である、上記に定めた少なくとも1つの電気パルスを送信するためのシステムのための容量減結合装置に関する。
【0019】
別々に又は組合せで取られる本発明による装置の他の特徴により:
−コンデンサは、細長形状を有し、整合構成要素は、コンデンサの1つの接続端部の近くに配置された少なくとも1つの金属構造体を含み、この構造体は、コンデンサを実質的にその全長にわたって取り囲み、
−装置は、少なくとも2つの金属構造体を含み、構造体の各々は、コンデンサの1つの接続端部の近くに配置され、この2つの構造体は、空気、真空、及び誘電体を含む群に属する絶縁要素によって分離され、
−構造体が、カップ形状を示し、
−この構造体は、反対向きに配置され、
−構造体の自由縁は、コンデンサの回りに重なり、
−装置は、コンデンサと整合構成要素とを含むケーシングを含み、ケーシングは、少なくとも2つのコネクタを含み、
−容量減結合装置は、横断切断部を有する少なくとも1つのマイクロストリップ線路を含み、横断切断部は、マイクロストリップ線路を減結合コンデンサによって相互接続された2つの部分に分割する。
【0020】
最後に、本発明は、横断切断部を端部の各々に有するマイクロストリップ線路を含み、横断切断部が、マイクロストリップ線路を2つの側面部分と1つの中央部分に分割し、中央部分が、コンデンサによって側面部分の各々に接続され、マイクロストリップ線路の各端部に位置する各横断切断部/コンデンサ側面部分アセンブリが、容量減結合装置を形成する点で顕著である、上記に定めたような電気パルスを送信するためのシステムのための送信電極に関する。
【0021】
本発明は、添付図面を参照して本発明の例示的な実施形態の説明に照らすとより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】上述のような従来技術によるシステムの概略図である。
【図2】判断すべき電荷分布を有する誘電体で作られた要素の上方に実施された本発明による少なくとも1つの電荷を送信するためのシステムの第1の実施形態の概略図である。
【図3】判断すべき電荷分布を有する誘電体で作られた要素の上方に実施された本発明によるシステムの第2の実施形態の概略図である。
【図4】判断すべき電荷分布を有する誘電体で作られた要素の上方に実施された本発明によるシステムの第3の実施形態の概略図である。
【図5】ケーシングに収容された第1の実施形態による本発明による減結合装置の上から見た図である。
【図6】容量減結合装置がケーシングに収容されない図5と類似の図である。
【図7】第2の実施形態による本発明による減結合装置の上から見た図である。
【図8】第3の実施形態による本発明による減結合装置の上から見た図である。
【図9】第4の実施形態による本発明による減結合装置の側面図である。
【図10】判断すべき電荷分布を有する誘電体で作られた要素の上方に実施された本発明による減結合装置の第5の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明による少なくとも1つの電荷を送信するためのシステムの第1の実施形態に対して図2を参照して以下に説明する。
【0024】
図2は、誘電体要素2内の電荷分布を判断することができる完全な装置の概略図を示している。
【0025】
完全な装置は、2つの部分、すなわち、上部S及び下部Iを含む。上部Sは、例えば、それが固定部に面する参照記号Aを付した矢印に示す解析位置と、それが固定部から遠ざかる参照記号Bを付した矢印に示す照射位置との間に移動可能に取り付けられることによって取外し可能である。
【0026】
この実施形態による装置は、可動部を位置Aから位置Bまで、又は位置Bから位置Aまで通過させるために電動式の手段Mを装備している。
【0027】
可動上部Sは、この実施形態の関連では、後で詳述する本発明の第1の実施形態による少なくとも1つの電気パルスを送信するためのシステムによって形成される。
【0028】
装置の下部は、基本的に公知であり、信号検出及び処理モジュール11を形成する。
【0029】
検出及び処理モジュール11は、圧電センサに接続した検出(又は受信)電極を含み、圧電センサは、次に、フィルタ及び増幅器に接続される。増幅器の出力は、電気信号、特に、判断することが望ましい分布を有する要素2に格納された電荷の移動によって発生させることができる音波からの電気信号を可視化するオシロスコープに接続される。
【0030】
解析される要素2を接着剤の層によって検出モジュール11の電極上に保つことを準備することができる。
【0031】
装置の可動部Sは、要素2が含む電荷に固有の音波の発生に要するパルスを解析される要素/サンプル2に送信すると同時に、検出される電荷の量及びそれらが要素2内に置かれた方法に対して最大限の精度を取得するためにパルスの歪みを最小にすることを準備する。
【0032】
システムSは、送信電極1を含み、その端部の一方は、パルス発生器3に接続され、その他端は、回路12に接続され、そのインピーダンスは、その固有インピーダンスに等しい。
【0033】
この例示的な実施形態の関連では、送信電極1のインピーダンスは、50Ωに固定される。従って、回路12も50Ωのインピーダンスを示す。
【0034】
送信システムは、このようにして得られ、パルスにより見られるインピーダンスは、それが発生器3と負荷20の間で伝送線路に沿って進む時に実質的に一定である。
【0035】
回路12は、信号を「吸収する」ことによって信号又はパルスの戻りを防止するためのものである。
【0036】
より具体的には、信号の反射は、モジュール11の圧電センサの出力での電気信号の解析を複雑にすると考えられ、すなわち、解析された信号は、第1の音波が、第1のパルスに応答する電荷の第1の移動に対応し、第2の音波が、パルスの戻りに応答する電荷の第2の移動に対応するような電荷によって発生した2つの音波を表すであろう。
【0037】
従って、回路12は、信号を吸収して、それがシステムS内で歪むのを防止する効果を有する。
【0038】
図3に示す一変形実施形態では、回路12は、オシロスコープ13及びオシロスコープ13の上流に配置された信号減衰装置14によって置換される。オシロスコープ13は、パルスをそれが伝送線路に沿って進んだ後に観測するため、及び必要に応じてその歪みを測定するためのものである。
【0039】
回路12又は減衰器14は、パルスの往復時間が測定又は解析に必要な時間を超える場合に信号の戻りを許容すれば不可欠なものではない。
【0040】
本発明によるシステムSが解析位置Aに置かれた時、非接触実施例の一部として、送信電極1と解析される要素2の表面との間に空間が存在する。例えば空気又は真空とすることができるこの空間は、送信電極1と解析される要素2の間の誘電体を形成する。
【0041】
上述の本発明によるシステムの2つの例は、信号又はパルスの歪みをそれが発生器3と送信電極1の間で伝播する時に防止することを準備するものである。
【0042】
以上の例示的な実施形態の関連では、電極は、いかなる分極電圧も受けない。
【0043】
しかし、実験要件に対しては、電極を分極すること、すなわち、それにDC電圧を印加することは時に適切である。
【0044】
より具体的には、この電圧を印加することにより、標準値を取得することができ、及び/又は解析される要素2が、電界を受けることができ、及び/又は電荷を経時的なその影響を測定するために解析される要素2に注入することができる。
【0045】
電極1にDC電圧を印加することによってこの分極を達成するために、電極1も、電極1に及びそれだけにDC電圧を印加するために、送信システムに含まれた他の要素から減結合されるか、又は換言すれば、「絶縁される」べきである。
【0046】
こういうわけで、2つのコンデンサベースの減結合装置15が、図4に示すように電極1のいずれの側にも配置されている。
【0047】
図4は、解析されるサンプル要素2の上方に配置された電極1を示しており、電極1は、その両端の各々で2つの減結合装置15の1つに接続されており、かつそれに高電圧発生器16により電圧を印加されている。
【0048】
非常に高値の抵抗器17が、短絡の場合に電流を制限するために高電圧発生器16と電極1の間に配置されている。
【0049】
信号のあらゆる歪みを防止するために、電極1と同じインピーダンスのリンク手段18及び19が、それぞれ、電極1と同じインピーダンスを有するパルス発生器3及び負荷20に接続されており、結果として信号又はパルスが吸収される。
【0050】
しかし、送信システムが作動するためには、容量減結合装置15は、それらがパルスの歪みを防止するために接続されたケーブル又はリンク手段18及び19のインピーダンスに整合されるべきである。
【0051】
より具体的には、入射励振器電圧パルスを中断させないために、分極電極1とケーブル18及び19との間にインピーダンスの中断があってはならない。設計上は、高圧コンデンサは、コンデンサ構造の関数である寄生自己インダクタンス/寄生キャパシタンス比の不均衡を招くそれらの幾何学形状のために、同じインピーダンスを示す2つの要素又は「線路」の間にそれらが単に置かれた時には整合されない。
【0052】
コンデンサの寄生自己インダクタンスは、その金属長さの自己インダクタンスである。コンデンサの寄生キャパシタンスは、その金属部分と基底基準の間のキャパシタンスの群によって表される。
【0053】
コンデンサのキャパシタンスは、励振器パルスに対して短絡を形成するのに十分な値でなければならないので、これには、嵩張る減結合コンデンサを装置に追加する必要があり、これは、伝送線路の不整合をもたらす。
【0054】
従って、図4で概略的に表すように、電極1の両側に接続した減結合装置15は、本発明により整合されて本発明による装置の主題を形成し、ここで、図5〜図9を参照してその例示的な実施形態を以下に説明する。
【0055】
整合した減結合装置15の本発明による第1の実施形態を図5及び図6に示している。
【0056】
容量減結合装置15は、ケーシング22に収容された高電圧コンデンサ21を含み、その端子は、ケーシング22の2つのコネクタ23及び24に接続されている。2つのコネクタ23及び24は、パルス発生器に接続したケーブル18と送信電極1の一端とにケーシング22をそれぞれ接続するためのものである。
【0057】
コンデンサ21は、市販で容易に入手可能なコンデンサであり、そのキャパシタンスは、1GHzに達する可能性がある周波数までで例えば250pF程度である。
【0058】
ケーシング22は、接地面30に接続されている(図4及び図6を参照されたい)。
【0059】
減結合装置15を整合させる手段は、コンデンサの外部寄生キャパシタンスを増大させることを可能にする手段である。
【0060】
この目的のために、かつ図5及び図6に示す実施形態により、整合構成要素は、実質的にカップの形状に、すなわち、閉鎖円錐形状端部27を有する金属中空円筒26の形状に(この実施例の関連では)生成された金属構造体25から成る。
【0061】
この実施形態の関連では、この金属構造体25は、コンデンサ21の端部の一方を覆い、金属中空円筒の長さは、実質的に完全にコンデンサを取り囲むようにコンデンサの長さと実質的に等しいか、又はコンデンサの長さを若干超えるか又は下回ってさえいる。
【0062】
空気のような絶縁体が、金属構造体とコンデンサ21の間を循環する。
【0063】
この金属構造体25の存在により、整合された容量減結合装置15の寄生キャパシタンスは、接地基準に関してコンデンサ21の寄生キャパシタンスよりも高い。このキャパシタンスを増大させることにより、コンデンサの寄生自己インダクタンス/寄生キャパシタンス比は、伝送線路を整合状態に保つように補正することができる。
【0064】
容量減結合装置15は、このようにして整合され、歪みなくパルスを送信して電圧を電極1に印加することを可能にする。
【0065】
図7は、本発明による送信システムにおいて図4に示す減結合装置15と置換することができる本発明による容量減結合装置29の変形実施形態を示している。
【0066】
容量減結合装置29も、上述の減結合装置15のケーシングのものと同様の2つのコネクタ23及び24を収容するケーシング22を含む。更に、ケーシング22は、コネクタ23及び24の各々に接続したコンデンサ21を含み、コンデンサ21は、コンデンサ21の端部の一方を覆うカップの形状の上述の減結合装置15のものと同一の第1の金属構造体25によって取り囲まれる。
【0067】
容量減結合装置29は、第2の金属構造体31も含む。
【0068】
第2の金属構造体31も、カップ形状を有し、金属中空円筒は、同じく金属中空円錐体によって一方の端部で閉鎖されている。
【0069】
第2の金属構造体31は、コンデンサ21の他端を覆い、第1の金属構造体25に対して反対向きに配置されている。
【0070】
第2の金属構造体31は、コンデンサ21及び構造体25の両方を取り囲むように第1の金属構造体25のものよりも大きい寸法を有する。
【0071】
更に、電気絶縁層(この場合は空気の)が、第1金属構造体25及び第2金属構造体31の間に配置されている。
【0072】
このように生成されて、この第2の容量減結合装置29は、コンデンサを形成し、その寄生キャパシタンスは、図5及び図6で表す装置のものよりも更に高い。
【0073】
本発明は、2つの金属構造体の存在に限定されず、本発明による容量装置は、それらの2つよりも多くを含むことができると考えられることを理解すべきである。
【0074】
図8は、本発明による容量減結合装置の更に別の実施形態を示している。
【0075】
容量減結合装置32も、上述の減結合装置15又は22のケーシングのものと同様の2つのコネクタ23及び24を有するケーシング22を含む。更に、ケーシング22は、コネクタ23及び24の各々に接続したコンデンサ21を含む、
【0076】
コンデンサ21は、コンデンサ21の端部の一方を取り囲むカップの形状の第1の金属構造体33aによって取り囲まれている。
【0077】
金属構造体33aは、すなわち、中空金属円錐体35によって端部の一方を閉鎖された中空金属円筒34を含む。円筒34の直径は、構造体25の円筒26のものと同一である。しかし、円筒34の方が短く、実質的にコンデンサ21の半分の長さに等しい。
【0078】
コンデンサは、コンデンサの他端を覆うと共に第1の金属構造体33aに対して反対向きに配置されて第1の金属構造体33aのものと同一の第2の金属構造体33bによって取り囲まれている。
【0079】
空気の層が、2つ円筒34の内壁をコンデンサ21の表面から分離する。別の空気の層は、互いに対向する2つの中空円筒34の2つのそれぞれの自由端63を分離する。
【0080】
このような実施形態も、容量減結合装置32の達成を準備するものであり、その寄生キャパシタンスは、伝送線路を整合状態に保つようにコンデンサの正しい寄生自己インダクタンス/寄生キャパシタンス比の取得に準えるものである。
【0081】
固有インピーダンスZcは、以下の通りである。
Zc = √(Lp/Cp)
ここで、Lpは、寄生自己インダクタンスであり、Cpは、寄生キャパシタンスである。
【0082】
以上の説明は、既存の市販のコンデンサから、本発明による送信システムに対して整合状されたコンデンサを達成するための手段の例を与えるものである。
【0083】
しかし、本発明は、既存のコンデンサの整合をもたらす技術的な手段に限定されず、かつ本発明は、上述のように送信システム、すなわち、パルスが電極1により送信された時にパルスのあらゆる歪みを防止し、電極が実験要件に対して高電圧を受けるシステムにおいて送信電極1の容量減結合をもたらすあらゆる他の手段を網羅することを理解すべきである。
【0084】
図9は、例えば、容量減結合装置の別の実施形態を示している。
すなわち、図9に示す容量減結合装置36は、図4に示す送信システムの容量減結合装置15と置換することができる。
【0085】
減結合装置36は、側面斜視図に示されている。装置36を収容するケーシング22は、図中では表されていない。接地面30に接続したコネクタ23及び24のみが表されている。
【0086】
しかし、減結合装置36は、上述の減結合装置15、29、又は32のものと類似のケーシング22を含むことを理解すべきである。
【0087】
減結合装置36は、例えば、銅から作られたマイクロストリップ線路37を含む。
【0088】
マイクロストリップ線路37は、それが切断部38によって分離される2つの部分39及び40に分割されるような横断切断部38を有する。
【0089】
マイクロストリップ線路37の部分39及び40は、それぞれ、ケーシング22のコネクタ23に一方が、コネクタ24に他方が接続されている。
【0090】
切断部38は、ここで以下に説明する理由から、それが可能な限り長い長さを有するようにマイクロストリップ線路37の対角線に沿って作られる。
【0091】
2つの部分39及び40は、上述の装置15、29、32の実施形態の一部として使用されるコンデンサ21のものよりも低い個々のキャパシタンスを有するコンデンサ41により相互接続される。
【0092】
スリットの長さが大きいほど、マイクロストリップ線路の2つの部分39及び40の間に設けることができるコンデンサが多い。非常に長いスリットを取得するために、それは、例えば、マイクロストリップ線路37の対角線に沿って配置することができる。
【0093】
しかし、装置は、本発明の範囲から逸脱することなく、マイクロストリップ線路の長さ又はその幅に沿って、又はあらゆる他の直線又は波状形状に沿って作られた2つの部分への切断部を有するマイクロストリップ線路を使用して達成することができることを理解すべきである。
【0094】
このような実施形態により、接続された送信電極1に印加される非常に高い電圧値、例えば、10、000ボルトに耐えることができ、かつ切断部38を有するマイクロストリップ線路37とコンデンサ41とによって形成された容量減結合装置36を達成することができる。コンデンサ41のサイズは、図5から図8の実施例の種類の個々のインピーダンス整合を必要としないほど小さいものである。
【0095】
このような電圧に耐えることができる装置は、寸法が以下の規則を遵守するマイクロストリップ線路を含むことができる。
【0096】
Wをマイクロストリップ線路のストリップ(又は、導電トラック)の幅、及びhをストリップ(又はトラック)が置かれる誘電体の厚みとする。固定インピーダンスZ0に対応する比W/hの計算は、以下の公式によって与えられる。
W/h>2に対して、
【0097】
【数1】

【0098】
ここで、
【0099】
【数2】

【0100】
であり、更に、Z0は、線路の固有インピーダンス、Wは、トラックの幅、tは、トラック厚み、hは、誘電体の厚み、εrは、絶縁材料の誘電率(相対誘電率)である。
【0101】
マイクロストリップ線路の寸法は、10kV/mmを超えないように計算することになる。
【0102】
切断部38の幅は、この例示的な実施形態の関連では、少なくとも1mmであることになる。
【0103】
図10は、図9に示す容量減結合装置36の実施の原理を送信電極42に適用する本発明による更に別の送信システムを示している。
【0104】
図4に示すシステムに類似した方法で、送信電極は、解析されるサンプル要素2の上方に配置され、電圧が、高電圧発生器16によってそれに印加される。
【0105】
DC電圧の印加時に電源を電極から分離するために、非常に高値の抵抗器17が高電圧発生器16と電極42の間に配置される。
【0106】
信号の歪みを防止するために、電極42と同じインピーダンスのリンク手段18及び19が、それぞれ、パルス発生器3及び負荷20に接続され、同じインピーダンスを有することが、信号又はパルスの吸収をもたらす。
【0107】
システムの作動を保証するために、ケーブル18及び19のインピーダンス及び送信電極のインピーダンスと整合した2つの減結合装置15又は29又は32又は36を追加する代わりに、マイクロストリップ線路によって形成された電極1は、その部分の1つの全減結合をもたらすように修正された電極42によって置換される。
【0108】
この目的のために、2つの横断切断部43及び44は、互いに実質的に平行になるようにマイクロストリップ線路の幅全体に沿って作られ、各切断部は、マイクロストリップ線路42の端部の各々の近くに作られる。切断部は、本発明の範囲から逸脱することなく異なる向きを有することができると考えられることを理解すべきである。
【0109】
マイクロストリップ線路は、すなわち、3つの部分を有し、その2つの端部部分45及び46は、それぞれ、リンク手段18及び19のコネクタに接続され、その1つの中央部分47は、高電圧発生器16に接続される。
【0110】
中央部分47は、電荷分布を解析すべきである要素サンプル2に面している。要素サンプル2における電荷分布を判断するためにパルスを送信することになるのは、マイクロストリップ線路のこの部分47である。
【0111】
端部部分45及び46は、装置36の実施形態に使用されるコンデンサ41と同じか又は異なるものとすることができる個々のコンデンサ48によって中央部分47に接続される。
【0112】
すなわち、各端部部分45及び46は、中央部分47及びそれを中央部分47に接続するコンデンサ48と共に容量減結合装置を形成する。
【0113】
本発明による送信システムは、発生器3によって送信される信号又はパルスを歪みなしで送信電極1又は42まで伝播させることに備えるものであり、それによって解析される要素サンプル2における電荷の分布に関して従来技術の従来システムに優る改善された結果が得られることを保証することが以上の説明からもたらされる。同時に、本発明が電圧を電極に印加することを可能にするために電極の隔離(又は電気的減結合)を可能にする方法も理解される。
【0114】
しかし、本発明は、説明して図面に示し、かつ純粋に例示的な実施形態として呈示した実施形態に特に限定されないことを理解すべきである。
【0115】
特に、送信電極の減結合をもたらす手段の寸法及び形状は、本発明の範囲からのいかなる逸脱もなく異なることが考えられる。
【符号の説明】
【0116】
1 送信電極、伝送線路
2 誘電体で作られた解析される要素
3 パルス発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体で作られた要素(2)の厚みに含まれた電荷の分布を判断するための装置に対して少なくとも1つの電気パルスを送信するために少なくとも1つのパルスを送信するための送信電極(1、42)と該パルスの発生器(3)とを含むシステムであって、
電極が、伝送線路(1)によって形成され、該伝送線路は、解析される要素(2)に対して実質的に水平であり、かつパルスの通過帯域において該伝送線路に沿ってインピーダンスを実質的に一定に保つインピーダンス整合手段を含む、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記インピーダンス整合手段(12、13、14、18、19、20)は、一方で前記パルス発生器(3)と前記送信電極(1、42)の1つの端部との間に、他方で該送信電極の第2の端部と負荷(20)の間に電気的リンク手段(18、19)を含み、そのインピーダンスが、該電極の固有インピーダンスに等しいことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記リンク手段(18、19)は、同軸ケーブルであることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記インピーダンスは、実質的に50オームであることを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記負荷は、前記電極(1、42)の下流に位置する前記信号を吸収するための回路(12、13、14)によって形成されることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記電極(1、42)に分極電圧を印加するための手段(16、17)と、該電極(1、42)の一端に配置された該電極のための少なくとも1つの容量減結合装置(15、29、32、36)とを更に含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記減結合装置(15、29、32、36)は、前記電圧に適合する少なくとも1つのコンデンサ(21)と、該コンデンサのインピーダンスを整合させるための構成要素(25、31、33a、及び33b)とを含むことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記コンデンサは、細長形状を有し、前記整合構成要素(25、31、33a、33b)は、該コンデンサ(21)の1つの接続端部の近くに配置されて該コンデンサ(21)を実質的にその長さ全体にわたって取り囲む少なくとも1つの金属構造体(25、31、33a、33b)を含むことを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
空気、真空、及び誘電体を含む群に属する絶縁要素によって分離され、かつ各々が前記コンデンサ(21)の1つの接続端部の近くに配置された少なくとも2つの金属構造体(25、31、33a、33b)を含むことを特徴とする請求項7又は請求項8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記構造体(25、31、33a、33b)は、反対向きに配置されることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記構造体(25、31、33a、33b)の自由縁が、前記コンデンサ(21)の回りに重なっていることを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記減結合装置(15、29、32)は、前記コンデンサ(21)と前記整合構成要素(25、31、33a、33b)とを含むケーシング(22)を含み、該ケーシング(22)は、少なくとも2つのコネクタ(23、24)を含み、かつ接地面に接続されていることを特徴とする請求項7から請求項11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記容量減結合装置は、横断切断部(38)を有する少なくとも1つのマイクロストリップ線路(37)を含み、該横断切断部(38)は、該マイクロストリップ線路(37)を減結合コンデンサ(41)によって相互接続された2つの部分(39、40)に分割することを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項14】
前記送信電極(42)は、マイクロストリップ線路(42)を含み、該マイクロストリップ線路は、その端部の各々において、該マイクロストリップ線路(42)を2つの側面部分(45、46)と1つの中央部分(47)とに分割する横断切断部(43、44)を有し、該中央部分(47)は、コンデンサ(48)によって該側面部分(45、46)の各々に接続され、該マイクロストリップ線路(42)の各端部に位置する各横断切断部(43、44)/コンデンサ(48)/側面部分(45、46)アセンブリが、容量減結合装置を形成することを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項15】
請求項6に記載の少なくとも1つの電気パルスを送信するためのシステムのための容量減結合装置であって、
電圧に適合する少なくとも1つのコンデンサ(21)と、
前記コンデンサのインピーダンスを整合させるための構成要素(25、31、33a、及び33b)と、
を含むことを特徴とする装置。
【請求項16】
前記コンデンサは、細長形状を有し、前記整合構成要素(25、31、33a、33b)は、該コンデンサ(21)の1つの接続端部の近くに配置されて該コンデンサ(21)を実質的にその長さ全体にわたって取り囲む少なくとも1つの金属構造体(25、31、33a、33b)を含むことを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
空気、真空、及び誘電体を含む群に属する絶縁要素によって分離され、かつ各々が前記コンデンサ(21)の1つの接続端部の近くに配置された少なくとも2つの金属構造体(25、31、33a、33b)を含むことを特徴とする請求項15又は請求項16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
構造体(25、31、33a、33b)が、カップ形状を示すことを特徴とする請求項16又は請求項17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記構造体(25、31、33a、33b)は、反対向きに配置されることを特徴とする請求項17又は請求項18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記構造体(25、31、33a、33b)の自由縁が、前記コンデンサ(21)の回りに重なっていることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記コンデンサ(21)と前記整合構成要素(25、31、33a、33b)とを含むケーシング(22)を含み、
前記ケーシング(22)は、少なくとも2つのコネクタ(23、24)を含む、
ことを特徴とする請求項15から請求項20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
横断切断部(38)を有する少なくとも1つのマイクロストリップ線路(37)を含み、
前記横断切断部(38)は、前記マイクロストリップ線路(37)を減結合コンデンサ(41)によって相互接続された2つの部分(39、40)に分割する、
ことを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項23】
請求項6に記載のシステムのための送信電極であって、
マイクロストリップ線路(42)を含み、
前記マイクロストリップ線路は、その端部の各々において、該マイクロストリップ線路(42)を2つの側面部分(45、46)と1つの中央部分(47)とに分割する横断切断部(43、44)を有し、該中央部分(47)は、コンデンサ(48)によって該側面部分(45、46)の各々に接続され、該マイクロストリップ線路(42)の各端部に位置する各横断切断部(43、44)/コンデンサ(48)/側面部分(45、46)アセンブリが、容量減結合装置を形成する、
ことを特徴とする送信電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−530530(P2010−530530A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512753(P2010−512753)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051110
【国際公開番号】WO2009/004260
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(501261436)サントル・ナシオナル・デチューデ・スパシアル (3)
【Fターム(参考)】