説明

電気二重層キャパシタ

【課題】電気二重層キャパシタの長所を維持しつつ、かつ、単位体積あたりの静電容量、即ちエネルギ密度を従来よりも向上させることが可能な、新規かつ改良された電気二重層キャパシタを提供する。
【解決手段】表面が導電性物質で覆われ、比表面積が300m/g以上である多孔質体を含む複数の電極と、前記複数の電極の間に配置される電解質と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギを貯蔵する技術として、特許文献1に記載の電気二重層キャパシタや二次電池が知られている。電気二重層キャパシタは、寿命、安全性、出力密度が二次電池よりも格段に優れている。しかし、電気二重層キャパシタは、二次電池に比べてエネルギ密度が低いという問題がある。ところで、電気二重層キャパシタのエネルギ密度は、以下の式(1)で示される。
【0003】
【数1】

ここで、Cは静電容量であり、Vは電気二重層キャパシタの印加電圧である。
【0004】
そこで、電気二重層キャパシタのエネルギ密度を改善するために、電気二重層キャパシタの静電容量や印加電圧を向上させる技術が提案されている。
【0005】
電気二重層キャパシタの静電容量を向上させる技術としては、電気二重層キャパシタの電極を構成する活性炭の比表面積を増大させる技術が知られている。現在知られている活性炭は、比表面積が1000〜2000m/gとなっている。
【0006】
一方、電気二重層キャパシタの印加電圧を向上させる技術としては、電気二重層キャパシタの原理を利用したリチウムイオンキャパシタが知られている。リチウムイオンキャパシタは、ハイブリッドキャパシタとも称される。リチウムイオンキャパシタは、電気二重層キャパシタを構成する電極のうち、一方の電極がリチウムイオン電池の負極材料である黒鉛で構成され、黒鉛内にリチウムイオンが挿入されたものである。リチウムイオンキャパシタは、一般的な電気二重層キャパシタ、即ち両極が活性炭で構成されるものよりも印加電圧が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−046584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、活性炭の比表面積を向上させる技術では、活性炭の比表面積が増大するに従って、活性炭のかさ密度が小さくなるという問題があった。活性炭の比重は2程度と小さいので、かさ密度の低下が顕著であった。このため、この技術では、活性炭の比表面積を大きくしても、単位体積あたりの表面積、即ち単位体積あたりの静電容量が満足な値にならないという問題があった。一方、リチウムイオンキャパシタには、エネルギ密度がなお満足できる値にならず、電気二重層キャパシタの長所である寿命や出力密度が犠牲になるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、電気二重層キャパシタの長所を維持しつつ、かつ、単位体積あたりの静電容量、即ちエネルギ密度を従来よりも向上させることが可能な、新規かつ改良された電気二重層キャパシタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、表面が導電性物質で覆われ、比表面積が300m/g以上である多孔質体を含む複数の電極と、複数の電極の間に配置される電解質と、を備えることを特徴とする、電気二重層キャパシタが提供される。
【0011】
この観点による電気二重層キャパシタは、表面が導電性物質で覆われ、比表面積が300m/g以上である多孔質体を含む複数の電極を有するので、寿命、安全性、出力密度が二次電池よりも格段に優れているという長所を維持しつつ、単位体積あたりの静電容量、即ちエネルギ密度を従来よりも大きくすることができる。
【0012】
ここで、多孔質体は、真比重が2以上であってもよい。この場合、単位体積あたりの静電容量、即ちエネルギ密度を従来よりも大きく向上させることができる。
【0013】
また、多孔質体は、ケイ素、アルミニウム、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の物質を含んでもよい。この場合、2以上の真比重が容易に実現される。
【0014】
また、導電性物質は、銅、ニッケル、鉄、コバルト、亜鉛、チタン、マンガン、スズ、及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の物質を含んでもよい。この場合、多孔質体に導電性を付与しつつ、多孔質体に強固に吸着することができる。
【0015】
本発明の別の観点によれば、表面が導電性物質で覆われ、比表面積が300m/gである多孔質体を含むことを特徴とする、電気二重層キャパシタ用の電極が提供される。この観点による電極を用いることで、寿命、安全性、出力密度が二次電池よりも格段に優れているという長所を維持しつつ、単位体積あたりの静電容量、即ちエネルギ密度が従来よりも大きい電気二重層キャパシタを製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、寿命、安全性、出力密度が二次電池よりも格段に優れているという長所を維持しつつ、単位体積あたりの静電容量、即ちエネルギ密度を従来よりも大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタと従来の電気二重層キャパシタとを対比して説明する側面図である。
【図2】同実施形態にかかる多孔質基材の構成を示す断面図である。
【図3】メソポーラスシリカの細孔径と静電容量との対応関係を示すグラフである。
【図4】硝酸銅水溶液濃度と静電容量との対応関係を示すグラフである。
【図5】比表面積と、比較例1対する静電容量との対応関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
[従来の電気二重層キャパシタが有する問題]
上記のとおり、活性炭の比表面積を向上させる技術では、単位体積あたりの静電容量について、満足な値が得られないという問題があった。本発明者は、この問題点を精査することで、本発明を完成させた。そこで、この問題について詳細に説明する。
【0020】
活性炭は、上述したように、比表面積の増大に伴ってかさ密度が低下する。一方、活性炭は、比表面積がある一定の大きさ以上になると、静電容量が頭打ちになる。これらの理由により、活性炭の比表面積を向上させる技術では、比表面積を大きくしても、単位体積あたりの静電容量が満足な値にならなかった。
【0021】
静電容量が頭打ちになる理由としては、以下のものが考えられる。即ち、活性炭への細孔の形成は、アルカリ賦活処理によってなされるが、この処理は、比表面積の制御というマクロ的な制御しか行なうことができず、細孔の大きさを制御することができなかった。特にアルカリ賦活処理による比表面積の増大は、ミクロ孔を増やすことでなされている。
【0022】
より詳細に述べると、活性炭には、直径が2nm未満のミクロ孔、直径が2nm以上50nm未満のメソ孔、及び直径が50nm以上のマクロ孔が混在している。これらの細孔のうち、ミクロ孔は、直径が小さいので、電解質イオンによってはミクロ孔の内部に侵入できない場合がある。また、マクロ孔に吸着可能な電解質イオンの数は、マクロ孔の体積に比べて小さい。細孔のうち、電解質イオンが吸着可能な部位はその表面だけであり、中空部分には電解質イオンは吸着されないからである。したがって、静電容量が頭打ちになる理由としては、ミクロ孔及びマクロ孔が静電容量の発現に有効に機能しないということが考えられる。また、溶媒和した電解質イオンの大きさは1〜2nmで、ミクロ孔とほぼ同等以下の大きさのため、ミクロ孔には効率的に電解質イオンが吸着できていないことが予想される。したがって、以上の考察によれば、電解質イオンを吸着させる細孔としては、電解質イオンの大きさにもよるが、メソ孔が最も好ましいと思われる。
【0023】
また、活性炭の比表面積を向上させる技術では、アルカリ賦活処理の後にアルカリ分を活性炭から除去する必要があった。しかし、この工程は複雑で高コストとなっていたので、アルカリ賦活処理による活性炭は工業的には使いづらい材料であった。このような問題点から、従来では、水蒸気賦活処理によって活性炭に細孔を形成することも行われていた。この方法はアルカリ賦活処理よりも低コストであるが、この方法により生成された活性炭は、アルカリ賦活処理による活性炭よりも静電容量が低いという問題があった。
【0024】
これに対し、本実施形態に係る電気二重層キャパシタは、電気二重層キャパシタの長所を維持しつつ、かつ、単位体積あたりのエネルギ密度を従来よりも向上させることができる。また、本実施形態に係る電気二重層キャパシタは、従来よりも簡単な工程で製造される。
【0025】
[本実施形態に係る電気二重層キャパシタの構成]
次に、本実施形態に係る電気二重層キャパシタの構成について説明する。図1(a)に示すように、従来の電気二重層キャパシタ100は、活性炭で構成されるカソード電極(正極)101と、同じく活性炭で構成されるアノード電極(負極)102と、これらの電極の間に配置される電解質103とを備える。これに対し、本実施形態に係る電気二重層キャパシタ10は、図1(b)に示すように、多孔質体20で構成されるカソード電極11と、同じく多孔質体20で構成されるアノード電極12と、これらの電極の間に配置される電解質13とを備える。このように、電気二重層キャパシタ10は、アノード電極11及びカソード電極12が共に多孔質体20で構成されることが特徴の一つである。なお、これらの電極のうち、いずれか一方が活性炭で構成されてもよい。
【0026】
多孔質体20は、図2に示すように、多数の細孔22が形成される。多孔質体20は、無機酸化物で構成される。多孔質体20の真比重は2以上が好ましく、2.5以上がより好ましい。これにより、単位体積あたりの静電容量が増加する。例えば、炭素の比重が2程度なので、真比重が4の多孔質体20と、炭素とを同一質量の電極とした場合、多孔質体電極は炭素電極の1/2程度の体積となるので、同一体積(即ち単位体積)あたりの静電容量は、多孔質体電極の方が大きくなるといえる。真比重は、例えばセイシン企業製オートトゥルーデンサーMAT−7000(自動湿式真比重測定装置)によって測定される。
【0027】
多孔質体20は、好ましくは、ケイ素、アルミニウム、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の物質を酸化させることで得られる無機酸化物である。
【0028】
多孔質体20は、より好ましくはメソポーラスシリカ及びゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種の物質で構成される。メソポーラスシリカは、1.5〜50nmの間で細孔22の大きさ(例えば直径)を制御することが可能なので、多孔質体20を構成する材料として特に好ましい。すなわち、多孔質体20としてメソポーラスシリカを用いることで、電解質イオンと最も効果的に吸着できる細孔22の大きさを決定することができる。
【0029】
細孔22の大きさ(例えば直径)は、多孔質体20に吸着する電解質イオンの大きさ(例えば直径)によって最適値が異なるが、少なくとも1〜100nmであることが好ましく、より好ましくは1〜50nm、さらに好ましくは1〜20nmである。なお、ここでの直径は、例えば、各細孔22を球体とみなしたときの直径であり、公知の手法、例えばガス吸着法により測定される。また、各範囲の下限値は、2nmであることがより好ましい。細孔22の大きさが2nm以上である場合には、細孔22の大きさが2nm未満である場合よりも、電解質イオンが細孔22内に侵入しやすくなるからである。なお、細孔22の範囲には、マクロ孔の直径の範囲も含まれるが、この場合であっても、多孔質体20真比重が活性炭よりも大きいので、単位体積あたりの静電容量は従来よりも大きくなる。なお、細孔22の大きさは、例えば直径の平均値、即ち各細孔22の直径を算術平均した値で表される。
【0030】
導電膜23は、多孔質体20に導電性を付与するものであり、多孔質体20の表面を連続的に(即ち、細孔22の表面を含む多孔質体20の全面を)覆っている。導電膜23は、好ましくは金属で構成される。導電膜23を構成する金属は、導電性が高く、及び、多孔質体20との密着性が高い金属であることが好ましい。このような金属としては、銅、ニッケル、鉄、コバルト、亜鉛、チタン、マンガン、スズ、及びアルミニウムが考えられる。したがって、導電膜23は、これらの金属からなる群から選択される少なくとも1種の物質を含むことが好ましい。導電膜23を構成する物質は、単体でも良く、化合物でも良く、混合物でもよい。
【0031】
導電膜23は、導電性、多孔質体20への密着性、及び電気二重層キャパシタ10が充放電を繰り返した場合の信頼性が担保される範囲で、可能なかぎり薄いほうが好ましい。具体的な厚さは、導電膜23の材料にもよるが、例えば20nm以下が好ましい。
【0032】
多孔質体20の比表面積は出来る限り大きいほうが好ましいが、比表面積の増大に伴って多孔質体20のかさ密度が低下するので、電気二重層キャパシタ10の単位体積あたりの静電容量が従来のものよりも低下しないように調整されることが好ましい。具体的には、多孔質体20の比表面積は300m/g以上が好ましく、500m/g以上がより好ましい。比表面積の上限値は、特に制限されないが、例えば1000m/g程度であってもよい。上限値が1000m/gであることにより、大きな静電容量出現という効果が得られる。
【0033】
[多孔質体の製造方法]
次に、多孔質体20の製造方法について説明する。まず、所望の大きさの細孔22を有する多孔質体20を準備する。例えば、多孔質体20をメソポーラスシリカで構成する場合、細孔22の大きさを、1.5〜50nmのうちから任意に選択する(購入する)ことができる。次いで、多孔質体20を金属化合物の溶液に含浸させ、次いで、溶液が含浸した多孔質体20を還元させることで、多孔質体20の全面に導電膜23を形成する。多孔質体20の全面に導電膜23を形成する方法としては、他に、メッキや蒸着といった方法が考えられる。これらの製造方法によれば、従来のアルカリ賦活処理に必要だった複雑な後処理が不要になるので、電気二重層キャパシタ10は、従来よりも簡単な工程で製造される。
【実施例】
【0034】
次に、本実施形態の実施例を説明する。
[実施例1]
10μmの細孔を有するメソポーラスシリカ(真比重:2.65)を20質量%(水溶液の総質量に対する硝酸銅の質量%)硝酸銅水溶液に真空含浸させ、その後、メソポーラスシリカを水素気流中200℃で5時間焼成する(還元する)ことで、多孔質体20を生成した。この多孔質体20をリガク製X線回折装置Rint2000で分析した結果、多孔質体20からシリカと金属銅とが検出された。これにより、銅が完全に還元されていることが確認された。また、多孔質体20の比表面積を島津製作所製比表面積測定装置ASAP2020で測定したところ、550m/gを示した。
【0035】
また、得られた多孔質体20にPTFEを多孔質体20の質量に対して5質量%加えて乳鉢で混合したのち、錠剤プレス機で成形してペレットを得た。これをアルミニウムメッシュで挟んだものを作用極と対極として用い、参照極にはAg極、電解液には1M−TEA−BF4/PC(テトラエチルアンモニウム-テトラフルオロボレート/プロピレンカーボネート)を用いてセルを構成した。このセルをAdvanced Electrochemical System社製PARSTAT2273を用い、掃印速度 20mv/sで−1.25から1.25Vの範囲で掃印して体積当たりの電極の静電容量を算出した。
【0036】
[実施例2]
細孔22の大きさが1.5〜50の範囲でそれぞれ異なるメソポーラスシリカを複数用意し、各メソポーラスシリカについて、実施例1と同様の処理を行った。
【0037】
[実施例3]
メソポーラスシリカの代わりにゼオライト(真比重:2.0)を用いたこと以外は、実施例1と同様の処理を行った。比表面積は320m/gとなった。
【0038】
[実施例4]
硝酸銅の濃度が1〜50質量%の範囲でそれぞれ異なる硝酸銅水溶液を複数用意し、各硝酸銅水溶液を用いて、実施例1と同様の処理を行った。
【0039】
[実施例5]
10nmの細孔を有するメソポーラスシリカを無電解銅めっき浴に入れることで、メソポーラスシリカに銅を被覆した。これにより、多孔質体20を生成した。その後の処理は実施例1と同様に行われた。比表面積は430m/gとなった。
【0040】
[実施例6]
10nmの細孔を有するメソポーラスシリカにCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を用いて銅を被覆した。これにより、多孔質体20が生成された。その後の処理は実施例1と同様に行われた。比表面積は490m/gとなった。
【0041】
[比較例1]
炭化物をアルカリ賦活処理することで、比表面積1700m/gの活性炭を製造した。評価は実施例1と同様にして行われた。
【0042】
[評価]
いずれの実施例でも静電容量が観測された。そこで、実施例1、3、5、6の単位体積あたりの静電容量を、比較例1の単位体積あたりの静電容量で正規化した値を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1に示されるように、実施例1、3、5、6は、いずれも単位体積あたりの静電容量が従来の電気二重層キャパシタよりも大きくなっている。
【0045】
また、実施例2の結果を図3に示す。図3は、メソポーラスシリカの細孔径(即ち細孔の直径)と、単位体積あたりの静電容量との対応関係を示す。なお、図3では、単位体積あたりの静電容量は、メソポーラスシリカ細孔径が10nmであるときの単位体積あたりの静電容量で正規化されている。図3によれば、メソポーラスシリカの細孔径が4〜25nmとなるときに単位体積あたりの静電容量が最適値となることがわかる。なお、最適値の範囲は、電解質イオンによって異なるものと思われる。
【0046】
また、実施例4の結果を図4及び図5に示す。図4は、硝酸銅水溶液の濃度と、単位体積あたりの静電容量との対応関係を示す。なお、図4では、単位体積あたりの静電容量は、硝酸銅水溶液の濃度が20質量%となるときの単位体積あたりの静電容量で正規化された値を示す。図4によれば、硝酸銅水溶液が20〜25質量%となるときに、単位体積あたりの静電容量が最適値を示す。硝酸銅水溶液の濃度が20質量%未満となる場合に、静電容量が低下する理由としては、例えば、メソポーラスシリカへの銅の被覆が不十分であること、被覆された銅の連続性が損なわれていること、メソポーラスシリカの最表面(メソポーラスシリカの最も外側の面)への銅の被覆が不十分であること等が考えられる。一方、硝酸銅水溶液の濃度が25質量%を超える場合に、静電容量が低下する理由としては、例えば、細孔22が銅で閉塞されることにより、静電容量発現のための細孔22が減少してしまうことが考えられる。なお、最適値の範囲は、電解質イオンによって異なるものと思われる。
【0047】
図5は、多孔質体20の比表面積と、比較例1に対する単位体積あたりの静電容量との対応関係を示す。図5によれば、多孔質体20の比表面積が300m/gとなる場合に、単位体積あたりの静電容量が比較例1よりも大きくなることがわかる。
【0048】
以上により、本実施形態によれば、電気二重層キャパシタ10は、表面が導電性物質で覆われ、比表面積が300m/g以上である多孔質体20を含む複数の電極を有するので、寿命、安全性、出力密度が二次電池よりも格段に優れているという長所を維持しつつ、単位体積あたりの静電容量、即ちエネルギ密度を従来よりも大きくすることができる。
【0049】
さらに、多孔質体20は、真比重が2以上であるので、単位体積あたりの静電容量、即ちエネルギ密度を従来よりも大きくすることができる。
【0050】
さらに、多孔質体20は、ケイ素、アルミニウム、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の物質を含むので、2以上の真比重が容易に実現される。
【0051】
さらに、導電性物質は、銅、ニッケル、鉄、コバルト、亜鉛、チタン、マンガン、スズ、及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の物質を含むので、多孔質体20に導電性を付与しつつ、多孔質体20に強固に吸着することができる。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0053】
10 電気二重層キャパシタ
11 カソード電極
12 アノード電極
20 多孔質体
22 細孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が導電性物質で覆われ、比表面積が300m/g以上である多孔質体を含む複数の電極と、前記複数の電極の間に配置される電解質と、を備えることを特徴とする、電気二重層キャパシタ。
【請求項2】
前記多孔質体は、真比重が2以上であることを特徴とする、請求項1記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項3】
前記多孔質体を構成する材料は、ケイ素、アルミニウム、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の物質を含む、請求項1または2記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項4】
前記導電性物質は、銅、ニッケル、鉄、コバルト、亜鉛、チタン、マンガン、スズ、及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の物質を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項5】
表面が導電性物質で覆われ、比表面積が300m/gである多孔質体を含むことを特徴とする、電気二重層キャパシタ用の電極。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−221982(P2012−221982A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82694(P2011−82694)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】