説明

電気刺激併用型運動装置

【課題】
使用者が搭乗する搭乗板を移動させ、その搭乗板の移動中に使用者に電気刺激を付与することにより、速筋に対する運動効果を向上させ、安全且つ効率良く運動効果が得られる電気刺激併用型運動装置を提供する。
【解決手段】
モータ13と、モータ13の回転軸13aに取着される移動用アーム19から構成される駆動機構部3により、使用者Mが搭乗する搭乗板2を水平方向に往復移動させ、使用者Mの腰部から下肢におよぶ筋群を強化する。回転軸13aに該軸13aの回転位置、即ち、搭乗板2の移動位置を検出するセンサ部29を設ける。センサ部29によって搭乗板2が所定位置に移動したことが検出された場合に電流パルスによる電気刺激を使用者Mに付与する電気刺激発生装置5を設ける。搭乗板2の往復移動と電気刺激の両方を用いて腰部及び下肢の遅筋と速筋の両筋を刺激する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が搭乗する搭乗板を水平方向に往復移動させ腰部から下肢におよぶ筋群を強化する運動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以前に、本件出願人は、下記特許文献1に開示される基台上でスライド板を強制的にスライドさせることでスライド板上に搭乗した使用者の腰部から下肢におよぶ筋群の強化を図る転倒防止訓練器を創出している。
【特許文献1】特開2005−27712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、通常、姿勢制御についてはエネルギーの消費を最小限に留めるために遅筋が主として使用されるが、例えば不意にバランスを崩した場合に転倒しないようにする等、瞬間的な姿勢制御を行う場合には速筋が主に使用されることが知られている。
【0004】
上記特許文献1の技術では、スライド板の移動による強制運動を施しても、安定した姿勢が保持された状態であるため、使用者の腰部と下肢の遅筋が中心に収縮し使用され、速筋に対する運動効果が十分得られていないという不都合があった。
更に、一般に転倒防止訓練の目的で強制的且つ不随意的にバランスを崩す転倒刺激を患者に付与する場合、患者が転倒して怪我をする事故が発生しないようにする必要がある為、大掛かりな装置や人的な対応による安全確保が必要となる、又、安全確保ができない場合は、実際の転倒状況を想定した訓練が十分に行えない為、速筋に対する運動効果が十分得られないという問題があった。
【0005】
本発明はこれらの諸問題を解決すべくなされたものであって、その目的は、使用者が搭乗する搭乗板を移動させ、その搭乗板の移動中に使用者に電気刺激を付与ことにより、速筋に対する運動効果を向上させ、安全且つ効率良く運動効果が得られる電気刺激併用型運動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現する為、請求項1記載の発明は、使用者が搭乗する搭乗板を移動させることにより使用者の腰部から下肢におよぶ筋群を強化する運動装置であって、前記搭乗板の移動に対応して使用者の腰部と下肢の少なくとも一部位に電気刺激を付与する電気刺激手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、搭乗板を移動させる駆動機構部が設けられ、前記搭乗板の移動位置が前記駆動機構部に設けられるセンサ部により検出され、前記センサ部により前記搭乗板が所定位置に移動したことが検出されると、電気刺激手段が作動し電気刺激が使用者の腰部と下肢の少なくとも一部位に付与されることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、使用者が搭乗する搭乗板を移動させることにより使用者の腰部から下肢におよぶ筋群を強化する運動装置であって、前記搭乗板の移動により誘発される腰部又は下肢の重心移動と筋電位とのいずれか一方を検出し、当該検出結果に基づいて腰部と下肢の少なくとも一部位に電気刺激を付与する電気刺激手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、電気刺激手段により、主動筋と拮抗筋のいずれか一方の筋、又は、主動筋と拮抗筋の両筋に電気刺激を付与することを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発明において、使用者の膝関節の屈曲角度を計測する膝屈曲角度計測手段を付設し、搭乗板の移動中に膝関節の屈曲角度に係る変化量が予め設定する変化量以上に至ったことを運動装置の制御部が検出すると、該制御部は下肢へ付与する電気刺激の強度を変更出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
従来の搭乗板の往復移動のみによる強制運動では腰部及び下肢の遅筋が中心的に刺激され、一方、腰部及び下肢への電気刺激のみの付与では該当各部位の速筋が刺激されるが、請求項1記載の発明によれば、搭乗板の移動に対応して使用者の腰部と下肢に電気刺激を付与できるので、搭乗板の往復移動と電気刺激の両方を用いて腰部及び下肢の遅筋と速筋の両筋を刺激でき、運動効果を一層向上することができる。又、腰部及び下肢の遅筋と速筋の両筋の刺激によって、糖代謝及び脂肪代謝の改善効果を一層向上することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、搭乗板が所定位置へ移動したことをセンサ部が検出すると、電気刺激手段が自動的に作動し電気刺激が付与される構成であるから、例えば、搭乗板の往復運動中に使用者自身が電気刺激手段からの電流出力を手動にて都度オンオフ操作する必要がなく、煩わしさを軽減できる。又、センサ部を、例えば、モータの回転軸に固着されるエンコーダとすることで搭乗板の移動位置を容易に検出できる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、例えば、腰部に加速度センサを取着することにより腰部の重心移動量を検出でき、この検出結果に基づいて使用者の腰部又は下肢に好適に電気刺激を付与できる。又、使用者の下肢の筋電位を筋電計により検出することで、下肢の筋肉の状態を把握しながら、好適に電気刺激を付与できる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、主動筋と拮抗筋のいずれか一方の筋、又は、主動筋と拮抗筋の両筋への電気刺激の付与を使用者に応じて使い分けることで、目的とする各筋を電気刺激により効果的に収縮させ強化することが可能となる。又、電気刺激を使用者の姿勢制御を撹乱させる撹乱因子(抵抗因子)として作用させることによって使用者のバランス能力の訓練も可能となる。
【0015】
例えば、高齢虚弱者や麻痺疾患患者等の使用者が本発明を使用した場合、搭乗板の移動速度によっては膝折れが発生し、搭乗板上で起立姿勢を維持できないことが想定されるが、請求項5記載の発明は、使用者の膝関節の屈曲角度を計測する膝屈曲角度計測手段が付設され、搭乗板の移動中に膝関節の屈曲角度に係る変化量が予め設定する変化量以上に至ったことを運動装置の制御部が検出すると、制御部が下肢へ付与する電気刺激の強度を変更出力する構成であるから、膝折れに起因して膝関節の屈曲角度の変化量が瞬間的に予め設定する変化量以上に至ったときに、高強度の出力に変更した電気刺激を使用者の下肢の各筋肉(例えば、大腿四頭筋)へ付与することで、各筋肉を効果的に収縮させ膝折れを抑制し、搭乗板上で使用者が転倒するという危険な事態を回避でき、安全に運動が行えるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。図1乃至3は本発明の第一の実施形態を示している。図1は電気刺激併用型運動装置1の斜視図、図2は同装置1の主要部の電気的構成を示すブロック図、図3は搭乗板2を駆動させる機構を示す概略構成図である。
【0017】
電気刺激併用型運動装置1は、使用者Mが搭乗する搭乗板2を駆動機構部3により水平方向に強制的に往復移動させるとともに、搭乗板2の移動に対応して使用者Mの腰部又は下肢に電流パルスによる電気刺激を付与する電気刺激手段4としての電気刺激発生装置5を前記装置1に設け、搭乗板2の往復移動と電気刺激発生装置5から発生される電流パルスによる電気刺激を併用しながら使用者Mの腰部と下肢の筋群を強化する装置である。
【0018】
図3に示すように、使用者Mが搭乗する略正方形状の搭乗板2は、長方形状の底板7と、該底板7の各長辺に沿って底板7上面から突出状に取着される細長板状の支持枠6・6とから形成される基台部8に対して水平方向(図3中、左右方向)に往復移動可能に設けられている。搭乗板2の裏面であって各支持枠6に近接する両辺端側にはそれぞれ内部に複数個の球状の転動子を有する二個のリニアガイド10・10が所定間隔を有して固着されており、リニアガイド10・10は各支持枠6内側の取付部材9に螺着されるレール11に嵌合している。
【0019】
搭乗板2が配置される位置と反対側(図3中、右方向)の基台部8には、搭乗板2を往復移動させる駆動機構部3が設けられる。駆動機構部3は、支持枠6・6間に架設される載置板12上に固定され載置板12面に直交する方向に延伸する回転軸13aを有するモータ13と、回転軸13aに取着されたブラケット14に一端がピン15枢着される第一アーム16と第一アーム16他端に一端がピン17枢着される第二アーム18からなる移動用アーム19とを主たる構成要素としている。
【0020】
回転軸13aの中途位置には該軸13aの回転位置を検出するセンサ部29が介装され、センサ部29は具体的にはエンコーダ30である。
【0021】
支持枠6・6間には支持板20が架設され、該支持板20に支軸21にて第二アーム18他端部が軸着されている。駆動機構部3の反対側における第二アーム18長辺には、長辺方向に延在し第二アーム18の長辺寸法と略同寸法のレール22が取着され、第二アーム18とレール22とはモータ13の作動により支軸21を支点として一体的に回転する。
【0022】
レール22にはリニアガイド23が嵌合され、リニアガイド23と、該ガイド23と対向位置にある搭乗板2の一辺2aとが、搭乗板2の左右方向の移動幅(以下、振幅と称呼する)を調整する振幅調整手段24を介して連結されている。
【0023】
振幅調整手段24は、搭乗板2の一辺2aに沿って固着される目盛板25と、目盛板25に対して移動可能に設けられる調節部材26と、調節部材26と前記リニアガイド23とを連結する連結片27とで構成される。目盛板25に対する調節部材26の固定は二個の固定具28・28による締め付けにて行う。二個の固定具28・28による締め付けを解除し、調節部材26を目盛板25に対して移動させることにより、搭乗板2の左右方向の振幅が調整できる。例えば、図3中、調節部材26を下方向へ移動させることで、搭乗板2の振幅を縮小することができる。振幅調整手段24を用い振幅調整することで使用者Mの運動能力に応じた運動を行える。
【0024】
モータ13を作動させ、回転軸13aの正反転を繰り返すと、移動用アーム19が支軸21を支点として所定方向に回転し、この回転に伴って搭乗板2が左右方向に往復移動する。この往復移動時に、センサ部29は回転軸13aの回転位置、即ち、搭乗板2の移動位置を検出する。
【0025】
使用者Mに電流パルス(電圧パルスとしてもよい)による電気刺激を付与する電気刺激発生装置5は、載置板12上に固定される本体部5aと、一端が本体部5aに不図示のコネクタを介して接続される接続コード32と、該コード32先端部に設けられ使用者Mの皮膚表面に貼り付けられる電極31とから構成される。電極31は一対を一組としている。接続コード32は駆動機構部3を上方から覆い隠すカバー33(図1参照)の適宜位置に穿設される透孔34を通過し、駆動機構部3外へ導出している。尚、図1乃至3においては、電極31の組数を二組とした例を示しているが、電極31の組数は二組に限定されるものではない。又、図示は省略するが、電気刺激の強度は電極31の各組ごとに独立して変更調節可能とされている。
【0026】
又、図示及び詳細な説明は省略するが、前記カバー33は、上述した振幅調整手段24による搭乗板2の振幅調整を行う際などに開蓋できるよう基台部8に対して開閉可能に設けられている。
【0027】
図1に示すように、基台部8上には、駆動機構部3と反対側の各支持枠6端部に支柱部35a・35aが立設されるとともに、両支柱部35a上端部から支柱部35aと略直交方向に門形状に曲折する把持部35bが一体的に形成される把持部材35が設けられている。把持部材35は、運動時又は搭乗板2への搭乗時等に使用者Mが把持することによって、体勢を安定に保持するものである。
【0028】
又、駆動機構部3上方には、標準的な身長の使用者Mが手動操作し易い高さ位置となるように支持柱45によって支持される操作部38が設けられる。操作部38は、電気刺激発生装置5から出力される電流パルスの出力強度を設定する出力強度設定部46や搭乗板2を往復移動させる時間(運動時間)を設定する運動時間設定部49等からなる設定部36と、設定部36にて設定した項目を数値や図柄で画面表示する表示部37とを有している(図2参照)。
【0029】
出力強度設定部46は、後述する使用者Mの膝関節の屈曲角度に係る変化量が予め設定する変化量未満の場合(通常時)に、使用者Mに対して付与する電気刺激の強度を設定する第一の出力強度設定部47と、使用者Mの膝関節の屈曲角度に係る変化量が予め設定する変化量以上に至った場合(膝折れ発生時)に、使用者Mに対して付与する電気刺激の強度を設定する第二の出力強度設定部48とからなる。
【0030】
次に、図3を用いて、電気刺激併用型運動装置1の主要な電気的構成について説明する。装置1の制御部39は、設定部36にて設定された運動時間等の項目に基づいてモータ13の作動を制御し、又、センサ部29からの信号を受け電気刺激発生装置5の作動を制御する。
【0031】
センサ部29によって、モータ13の回転軸13aが予め設定された回転位置にまで回転したこと、即ち、搭乗板2が所定の移動位置に移動したことが検出されると、センサ部29の検知信号が制御部39に送信される。該信号を受けた制御部39は電気刺激発生装置5を瞬時に作動させ、電流パルスによる電気刺激を電極31を介して使用者Mに付与する。
【0032】
本実施形態では、電気刺激発生装置5を作動させるタイミングは、搭乗板2の移動範囲における両末端位置、即ち、搭乗板2が駆動機構部3に接近する側の末端位置(以下、一方所定位置)及び駆動機構部3から離間する側の末端位置(以下、他方所定位置)に移動した際に設定している。尚、搭乗板2が前記一方・他方所定位置のいずれかの位置に移動した際に電気刺激発生装置5を作動させるように構成しても勿論よい。
【0033】
次に、電気刺激併用型運動装置1の作用について説明する。運動開始前に、カバー33を開蓋し、振幅調整手段24を用いて使用者Mに適した振幅を設定しておく。使用者Mは把持部材35を掴みながら搭乗板2上に搭乗する。電気刺激を付与したい箇所(腰部又は下肢)に適宜選択した個数の電極31を装着する。例えば、下肢に電気刺激を付与する場合は、主動筋と拮抗筋のいずれか一方の筋、又は、主動筋と拮抗筋の両筋へ適宜個数の電極31を装着し、前記各筋に電気刺激を付与できるようにすればよい。本実施形態では、搭乗板2が一方所定位置に移動した際に主動筋である大腿四等筋に一方の電極31・31を介して電気刺激を付与し、他方所定位置に移動した際に拮抗筋であるハムストリングスに他方の電極31・31を介して電気刺激を付与するように構成している。
【0034】
第一の出力強度設定部46で電流パルスの強度を、運動時間設定部49で運動時間の設定を行う。操作部38に装備される不図示の運動開始スイッチを押下し駆動機構部3を作動させ、搭乗板2を往復移動させる。
【0035】
搭乗板2が一方所定位置と他方所定位置に移動したことをセンサ部29が検出すると同時に、電気刺激発生装置5が作動し、電極31を介して電気刺激が使用者Mの下肢に付与される。搭乗板2が一方所定位置に移動すると主動筋である大腿四等筋に電気刺激が付与され、他方所定位置に搭乗板2が移動すると拮抗筋であるハムストリングスに電気刺激が付与される。本実施形態によれば、搭乗板2の移動に対応して使用者Mの腰部又は下肢に電気刺激を付与できるので、搭乗板2の往復移動と電流による電気刺激の両方を用いて腰部又は下肢の遅筋と速筋の両筋を刺激でき、運動効果を一層向上することができる。
【0036】
装置1に内蔵される不図示のタイマが設定された運動時間に至ったことを検出すると、制御部39によってモータ13の作動が停止され、搭乗板2の移動が停止する。使用者Mは把持部35bを適宜把持しながら、搭乗板2から降下し運動をおえる。
【0037】
尚、上述した第一の実施形態ではセンサ部29をエンコーダ30とした例を説明したが、本発明はエンコーダに限定されるものではなく、その他の手段、例えば、光センサ等を利用してもよく、要は、搭乗板2の移動位置を検出することができれば如何なる手段を利用してもよい。又、搭乗板2の往復移動中に使用者Mの意思によって電気刺激発生装置5からの電気刺激を一時停止できる停止ボタンを操作部38に設けてもよい。又、振幅以外の搭乗板2の移動に関わる調整項目として、例えば、モータへ供給する電源の周波数を可変するインバータを装置に設け、該インバータによりモータの回転速度を増減制御することで搭乗板の移動周期(移動時間)を可変調整できるように構成してもよい。
【0038】
又、高齢虚弱者や麻痺疾患患者等の使用者Mが装置1を使用する場合であって、搭乗板2の移動によって膝折れが発生し搭乗板2上で起立姿勢を維持できない場合には、以下のように使用者Mの大腿四頭筋側へ付与する電気刺激の強度を高くするように出力を変更する制御を行えばよい。
【0039】
即ち、膝屈曲角度計測手段51により使用者Mの瞬間的な膝関節の屈曲角度に係る変化を計測し、該計測結果に基づいて制御部39が膝関節の屈曲角度に係る変化量を算出するとともに、制御部39が算出された変化量(以下、算出変化量と称呼する)と変化量設定部50で設定する変化量(以下、設定変化量と称呼する)とを比較し、前記算出変化量が前記設定変化量以上に至った旨を検出した場合に、高強度に出力変更した電気刺激を電気刺激発生装置5から使用者Mの大腿四頭筋に付与する。高強度の電気刺激を付与し大腿四頭筋をより一層効果的に収縮させることで、膝折れによって使用者Mが搭乗板2上で転倒する危険な事態を回避でき、安全に運動が行えることになる。以下、図2を用いて膝関節の屈曲角度に係る算出変化量が設定変化量以上に至った場合に大腿四頭筋に付与する電気刺激の強度を変更する構成・作用を説明する。
【0040】
膝屈曲角度計測手段51は、使用者Mの膝に装着可能で使用者Mの膝関節の屈曲角度を計測する公知のアナログ式の膝関節角度計52と、膝関節角度計52により計測された膝関節の屈曲角度に係るアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器53とから構成され、AD変換器53にて変換されたデジタル信号は制御部39に入力される。
【0041】
膝関節の屈曲角度に係る設定変化量は変化量設定部50を介して制御部39内に入力され、制御部39が算出する前記算出変化量が膝折れ発生によって前記設定変化量以上に至った場合に、使用者Mに対して付与される電気刺激の強度が第二の出力強度設定部48で設定される。第二の出力強度設定部48で設定される電気刺激の強度は、第一の出力強度設定部47で設定される強度より高強度に設定される。
【0042】
制御部39はAD変換器53によってデジタル化された膝関節角度計52の計測信号を逐次読み取り、運動開始時(例えば、搭乗板2の移動開始直後)を零基準とする膝関節の屈曲角度と運動中(移動する搭乗板2上に搭乗している使用者M)の膝関節の屈曲角度とから、屈曲角度に係る変化量を算出するとともに、該算出変化量と変化量設定部50にて設定されている設定変化量とを逐次比較する。制御部39は、前記算出変化量が前記設定変化量以上に至った旨を検出すると、第二の強度設定部48で設定された強度に対応した電気刺激を使用者Mの大腿四頭筋に付与する制御を行う。
【0043】
運動開始に際して、使用者Mの少なくとも一方の膝に膝関節角度計52を装着する。運動中、膝関節角度計52は使用者Mの膝関節の屈曲角度を逐次計測する。搭乗板2が一方所定位置に移動した時点において、制御部39によって膝関節の屈曲角度に係る前記算出変化量が前記設定変化量未満である旨が検出された場合は、第一の出力強度設定部47で設定された強度に対応した強度の電気刺激が出力される。
【0044】
制御部39によって膝関節の屈曲角度に係る前記算出変化量が設定変化量以上に至ったことが検出されると、制御部39は、一方所定位置に搭乗板2が移動した時点で、第二の出力強度設定部48で設定された高強度の電気刺激を変更出力する。この高強度に変更出力された電気刺激によって大腿四頭筋が効果的に収縮し使用者Mの膝折れを抑制でき、運動中の使用者Mの転倒を防止することが可能となる。
【0045】
使用者Mの大腿四頭筋に付与された電気刺激によって膝関節の屈曲角度に係る算出変化量が前記設定変化量未満に低下した場合は、使用者Mに付与される電気刺激の出力の強度は制御部39によって第一の出力強度設定部47で設定した強度(弱強度)に自動的に変更される。
【0046】
尚、制御部39が算出する膝関節の屈曲角度に係る変化量(算出変化量)を単位時間当たりの変化量とし、使用者Mが移動する搭乗板2上でゆっくり膝を屈伸しながら運動を行えるようにしてもよく、又、算出変化量が設定変化量以上に至ったことが制御部39で検出された場合に高強度の電気刺激を使用者Mに付与すると同時に、使用者Mの安全を考慮しモータ13の作動を停止し搭乗板2の移動を停止するように構成してもよい。
【0047】
次に、図4を用いて、本発明の第二の実施形態について説明する。図4は、第二の実施形態に係る電気刺激併用型運動装置1の主要部の電気的構成を示すブロック図である。尚、図4において図2と同一又は同等の構成要素については、同一符号を付記して、特に説明を要する場合を除いて構成要素の説明は省略する。
【0048】
第二の実施形態は、搭乗板2の往復移動によって誘発される腰部の重心移動を重心移動検出部40にて検知し、この検出結果に基づいて制御部39が電気刺激発生装置5の作動を制御し電気刺激を使用者Mに付与するものである。
【0049】
重心移動検出部40は、具体的には、使用者Mの腰部に装着可能とされる加速度センサ41である。設定部36の重心移動量設定部54において電気刺激発生装置5を作動させるか否かの閾値としての重心移動量を予め制御部39に設定しておく。
【0050】
制御部39は、加速度センサ41からの出力を積分して得た重心移動量が重心移動量設定部54で設定した重心移動量を超過した場合に、電気刺激発生装置5を作動させ電気刺激を使用者Mに付与する。尚、加速度センサ41は腰部でなく、下肢の適宜箇所に装着可能となるように構成しても勿論よい。
【0051】
次に、図5を用いて、本発明の第三の実施形態について説明する。図5は、第三の実施形態に係る電気刺激併用型運動装置1の主要部の電気的構成を示すブロック図である。尚、図5において図2と同一又は同等の構成要素については、同一符号を付記して、特に説明を要する場合を除いて構成要素の説明は省略する。
【0052】
第三の実施形態は、搭乗板2の往復移動によって誘発される下肢の筋肉の表面筋電位の変化を検知し、この検出結果に基づいて電気刺激発生装置5を作動させ電気刺激を付与するものである。
【0053】
下肢の筋肉における表面筋電位の変化は筋電位検出部42にて検出される。筋電位検出部42は具体的には、筋電計43である。一対の筋電位測定用電極44を使用者Mの下肢の適宜箇所に装着し、電極44間の表面筋電位を計測しながら、搭乗板2を往復移動させる。筋電計43による表面筋電位の計測結果は逐次、制御部43に入力される。
【0054】
設定部36の筋電変化範囲設定部55において電気刺激発生装置5を作動させるか否かの判断基準となる表面筋電位の変化に係る範囲を制御部39に設定しておく。搭乗板2の往復移動によって、下肢の筋肉の表面筋電位が筋電変化範囲設定部55で設定した表面筋電位の変化範囲を超過して変化した旨を制御部39が判断した場合に、電気刺激発生装置5を作動させ電気刺激を使用者Mに付与する。尚、下肢の筋肉の表面筋電位ではなく、腰部の筋肉の表面筋電位の変化を計測し、電気刺激を付与するように構成しても勿論よい。
【0055】
本発明は、上述した第一乃至三の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、使用者が搭乗する搭乗板を水平方向に往復移動させ腰部から下肢におよぶ筋群を強化する運動装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の電気刺激併用型運動装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る電気刺激併用型運動装置の主要部の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の搭乗板を駆動させる機構を示す概略構成図である。
【図4】本発明の第二の実施形態に係る電気刺激併用型運動装置の主要部の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第三の実施形態に係る電気刺激併用型運動装置の主要部の電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0058】
1 電気刺激併用型運動装置
2 搭乗板
3 駆動機構部
4 電気刺激手段
5 電気刺激発生装置
19 移動用アーム
29 センサ部
39 制御部
40 重心移動検出部
42 筋電位検出部
51 膝屈曲角度計測手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が搭乗する搭乗板を移動させることにより使用者の腰部から下肢におよぶ筋群を強化する運動装置であって、前記搭乗板の移動に対応して使用者の腰部と下肢の少なくとも一部位に電気刺激を付与する電気刺激手段を備えたことを特徴とする電気刺激併用型運動装置。
【請求項2】
搭乗板を移動させる駆動機構部が設けられ、前記搭乗板の移動位置が前記駆動機構部に設けられるセンサ部により検出され、前記センサ部により前記搭乗板が所定位置に移動したことが検出されると、電気刺激手段が作動し電気刺激が使用者の腰部と下肢の少なくとも一部位に付与されることを特徴とする請求項1記載の電気刺激併用型運動装置。
【請求項3】
使用者が搭乗する搭乗板を移動させることにより使用者の腰部から下肢におよぶ筋群を強化する運動装置であって、前記搭乗板の移動により誘発される腰部又は下肢の重心移動と筋電位とのいずれか一方を検出し、当該検出結果に基づいて腰部と下肢の少なくとも一部位に電気刺激を付与する電気刺激手段を備えたことを特徴とする電気刺激併用型運動装置。
【請求項4】
電気刺激手段により、主動筋と拮抗筋のいずれか一方の筋、又は、主動筋と拮抗筋の両筋に電気刺激を付与することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気刺激併用型運動装置。
【請求項5】
使用者の膝関節の屈曲角度を計測する膝屈曲角度計測手段を付設し、搭乗板の移動中に膝関節の屈曲角度に係る変化量が予め設定する変化量以上に至ったことを運動装置の制御部が検出すると、該制御部は下肢へ付与する電気刺激の強度を変更出力することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気刺激併用型運動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−111222(P2007−111222A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305367(P2005−305367)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000103471)オージー技研株式会社 (109)
【Fターム(参考)】