説明

電気化学デバイス

【課題】生産性を維持しながら捲回蓄電ユニットの負極の全体にリチウムイオンを効率良くドープすることができる電気化学デバイス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】負極20の捲回中心端20aから見て負極全長の5%の位置から28%の位置の間、即ち、おおよそ負極20の捲回中心端20aから負極全長の1/3迄の範囲において、負極20に接触するように単一の第1リチウム金属シート61が配置され、負極20の捲回中心端20aから見て負極全長の45%の位置から88%の位置の間、即ち、おおよそ負極全長の略1/3から負極20の捲回外周端迄の範囲において、負極20に接触するように単一の第2リチウム金属シート62が配置されている。このように2つのリチウム金属シート61,62を配置すると、捲回蓄電ユニット1の負極20の全体にリチウムイオンを効率良くドープすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の正極と負極とセパレータとを重ね合わせるとともに捲回して成る捲回蓄電ユニットを備えており、負極にリチウムイオンをプレドープする電気化学デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気化学デバイスの一例として、帯状の正極集電体の厚さ方向一方の面に分極性電極層が設けられた正極と、帯状の負極集電体の厚さ方向一方の面にリチウムイオンを吸蔵及び脱離可能な活物質層が設けられた負極と、帯状の2枚のセパレータとを有し、一方のセパレータと負極と他方のセパレータと正極とをこの順番で重ね合わせてその長さ方向の一端から捲回して成る捲回蓄電ユニットと、非水電解液と、捲回蓄電ユニットと非水電解液とを収容する電池容器とを備え、電池容器内に捲回蓄電ユニットと非水電解液とを収容する際に、捲回蓄電ユニットの捲回中心にリチウム金属棒を配置するとともに捲回蓄電ユニットの外周面にリチウム金属箔を配置することにより、該リチウム金属棒及び箔から非水電解液内に溶解したリチウムイオンが負極の活物質層に吸蔵(以下、ドープとも言う。)されるリチウムイオンキャパシタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、このようなリチウムイオンキャパシタは、捲回蓄電ユニットの外周面がリチウム金属箔によって覆われているので、捲回蓄電ユニットに非水電解液が浸透するのに長時間を要する。さらに、リチウム金属が捲回蓄電ユニットの中心と外周面のみに配置されているので、捲回蓄電ユニットの捲回の中間部分の負極にリチウムイオンがドープされ難い。このため、捲回蓄電ユニットの負極の全体に亘って万遍なくリチウムイオンをドープすることが難しく、また、リチウムイオンの負極へのドープに長時間を要する。
【0004】
この種の電気化学デバイスの他の一例として、帯状の正極集電体の厚さ方向一方の面に分極性電極層が設けられた正極と、帯状の負極集電体の厚さ方向一方の面にリチウムイオンを吸蔵及び脱離可能な活物質層が設けられた負極と、帯状のセパレータとを有し、一方のセパレータと負極と他方のセパレータと正極とをこの順番で重ね合わせてその長さ方向の一端から捲回して成る捲回蓄電ユニットと、非水電解液と、捲回蓄電ユニットと非水電解液とを収容する電池容器とを備え、捲回蓄電ユニットにおける一方のセパレータの捲回中心近傍に2枚のリチウム金属箔を互いに間隔をおいて貼り付けるとともに、捲回蓄電ユニットにおける外周面における他方のセパレータの内側に2枚のリチウム金属箔を互いに間隔をおいて貼り付け、該リチウム金属箔から非水電解液内に溶解したリチウムイオンが負極の活物質層にドープされるリチウムイオンキャパシタが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
このリチウムイオンキャパシタは、捲回中心及び外周面に貼り付けるリチウム金属箔をそれぞれ2枚に分割し、各リチウム金属箔によって覆われるセパレータの面積を小さくすることにより、捲回蓄電ユニットへの非水電解液の浸透が早くなるようにし、これにより、リチウムイオンの負極へのドープの時間の短縮を狙っている。しかしながら、リチウム金属箔は反応性が極めて高く且つ破れ易いので、取り扱いやハンドリングが容易ではない。このため、捲回蓄電ユニットの捲回中心位置に2枚のリチウム金属箔を互いに間隔をおいて貼り付け、捲回蓄電ユニットの外周面における他方のセパレータの内側に2枚のリチウム金属箔を互いに間隔をおいて貼り付ける作業を行うことは、製造コストの上昇を招来する。
【0006】
また、このリチウムイオンキャパシタは、リチウム金属箔が捲回蓄電ユニットの中心と最外周面のみに配置されているので、捲回蓄電ユニットの捲回の中間部分の負極にリチウムイオンがドープされ難い。このため、捲回蓄電ユニットの負極の全体に亘って万遍なくリチウムイオンをドープすることが難しく、また、リチウムイオンの負極へのドープに長時間を要する。これを改善するために、捲回蓄電ユニットの捲回の中間部分のセパレータにもリチウム金属箔を貼り付けることが考えられるが、貼り付けるリチウム金属箔の数量がさらに多くなり、さらなる製造コストの上昇を招来する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−067105号公報
【特許文献2】特開2010−157541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、生産性を維持しながら捲回蓄電ユニットの負極の全体にリチウムイオンを効率良くドープすることができる電気化学デバイス及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電気化学デバイスは前記目的を達成するために、帯状の正極集電体の少なくとも厚さ方向一方の面に分極性電極層、又は、リチウムイオンを吸蔵及び脱離可能な活物質層が設けられている正極と、帯状の負極集電体の少なくとも厚さ方向一方の面にリチウムイオンを吸蔵及び脱離可能な活物質層が設けられている負極と、帯状のセパレータとを有し、負極とセパレータと正極とを重ね合わせた帯状物をその長さ方向の一端から捲回して成る捲回蓄電ユニットと、非水電解液と、捲回蓄電ユニット及び非水電解液を収容している容器と、捲回蓄電ユニット中に設けられ、負極の捲回中心端から見て負極全長の5%の位置から28%の位置の間において負極に対向するように又は接触するように配置された単一の第1リチウム金属シートと、負極の捲回中心端から見て負極全長の45%の位置から88%の位置の間において負極に対向するように又は接触するように配置された単一の第2リチウム金属シートとを備えている。
【0010】
また、プレドープ後又は充放電を繰返した後は、帯状の正極集電体の少なくとも厚さ方向一方の面に分極性電極層、又は、リチウムイオンを吸蔵及び脱離可能な活物質層が設けられている正極と、帯状の負極集電体の少なくとも厚さ方向一方の面にリチウムイオンを吸蔵及び脱離可能な活物質層が設けられている負極と、帯状のセパレータとを重ね合わせた帯状物を、その長さ方向の一端から捲回することにより捲回蓄電ユニットを形成し、その際に単一の第1リチウム金属シートと単一の第2のリチウム金属シートを負極に対向するように又は接触するように配置し、該捲回蓄電ユニットを非水電解液とともに容器に収容して成る電気化学デバイスであって、捲回蓄電ユニット中における負極の捲回中心端から見て負極全長の5%の位置から28%の位置の間において負極に対向するように又は接触するように第1リチウム金属シートが存在していた痕跡と、負極の捲回中心端からみて負極全長の45%の位置から88%の位置の間において負極に対向するように又は接触するように第2リチウム金属シートが存在していた痕跡とを有するものとなる。
【0011】
また、本発明の製造方法は、帯状の正極集電体の少なくとも厚さ方向一方の面に分極性電極層、又は、リチウムイオンを吸蔵及び脱離可能な活物質層が設けられた正極を作製する工程と、帯状の負極集電体の少なくとも厚さ方向一方の面にリチウムイオンを吸蔵及び脱離可能な活物質層が設けられた負極を作製する工程と、単一の第1のリチウム金属シート及び単一の第2のリチウム金属シートが負極に対向するように又は接触するように、負極とセパレータと正極と第1及び第2のリチウム金属シートとを重ね合わせた帯状物をその長さ方向の一端から捲回して捲回蓄電ユニットを作製する工程と、捲回蓄電ユニット及び非水電解液を容器に収容する工程とを含み、前記蓄電ユニットを作製する工程において、第1リチウム金属シートを、負極の捲回中心端から見て負極全長の5%の位置から28%の位置の間において負極に対向するように又は接触するように配置し、第2リチウム金属シートを、負極の捲回中心端から見て負極全長の45%の位置から88%の位置の間において負極に対向するように又は接触するように配置するようにしている。
【0012】
これにより、負極の捲回中心端から見て負極全長の5%の位置から28%の位置の間、即ち、おおよそ負極の捲回中心端から負極全長の1/3迄の範囲において、負極に対向するように又は接触するように単一の第1リチウム金属シートが配置され、負極の捲回中心端から見て負極全長の45%の位置から88%の位置の間、即ち、おおよそ負極全長の略1/3から負極の捲回外周端迄の範囲において、負極に対向するように又は接触するように単一の第2リチウム金属シートが配置されている。このように2つのリチウム金属シートを配置すると、捲回蓄電ユニットの負極の全体にリチウムイオンを効率良くドープすることが可能となる。また、主にこの2つのリチウム金属シートによって負極にリチウムイオンがドープされるので、他に無用にリチウム金属シートを設ける必要がなくなり、生産性の低下がなく、又は生産性の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明によれば、生産性を維持しながら捲回蓄電ユニットの負極の全体にリチウムイオンを効率良くドープすることができる電気化学デバイスを提供することができる。
【0014】
本発明の前記目的と、それ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の電気化学デバイスの断面図
【図2】電気化学デバイスの平面図
【図3】正極、負極並びに第1及び第2セパレータの平面図
【図4】正極の裏面図
【図5】負極の裏面図
【図6】第2セパレータに負極を重ね合わせた図
【図7】正極、負極並びに第1及び第2セパレータを重ね合わせた図
【図8】捲回蓄電ユニットの断面図
【図9】捲回蓄電ユニットをラミネートフィルム内に収容した図
【図10】電気化学デバイスの断面図
【図11】実験例2の負極の平面図
【図12】実験例3の負極の平面図
【図13】実験例4の負極の平面図
【図14】実験例5の負極の平面図
【図15】実験例6の負極の平面図
【図16】実験例7の負極の平面図
【図17】実験例8の負極の平面図
【図18】比較例1の負極の平面図
【図19】比較例2の負極の平面図
【図20】比較例3の負極の平面図
【図21】比較例4の負極の平面図
【図22】実験結果をあらわす表
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を引用して発明を実施するための形態を説明する。
【0017】
図1〜22は本発明の一実施形態を示す。この電気化学デバイスは、帯状の正極集電体11の厚さ方向一方の面に分極性電極層12が設けられた正極10と、帯状の負極集電体21の厚さ方向一方の面にリチウムイオンを吸蔵及び脱離可能な活物質層22が設けられている負極20と、帯状の第1セパレータ30及び第2セパレータ40とを有し、正極10と負極20と各セパレータ30,40とを重ね合わせて捲回することにより形成された捲回蓄電ユニット1と、蓄電ユニット1及び非水電解液を収容している容器としてのフィルムパッケージ50とを備えている。
【0018】
正極10の正極集電体11は、複数の貫通孔(図示せず)を有するアルミニウムのシート材から成る。正極集電体11の材質としては、アルミニウムの他にステンレス等の他の金属材料を用いることも可能であり、リチウムイオンキャパシタの正極に用いられる他の公知の材質を用いることも可能である。
【0019】
正極10の分極性電極層12は、例えばポリアセン(PAS)、ポリアクリロニトリル(PAN)を原料とする炭化物、活性炭等の活物質を含有し、カーボンブラックやグラファイトや金属粉末等の導電助剤や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはフッ化ビニリデン(VdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体等のバインダーも必要に応じて含有している。活性炭としては、やしがら等の天然材料を原料とする炭化物、コークス、タール、ピッチ、黒鉛等の化石燃料を原料とするもの、合成樹脂を炭化したもの等を使用可能である。例えば本実施形態の正極10は以下のように作製される。先ず、比表面積約2000m2/gの活性炭と、活性炭100重量部に対して導電助剤としてのカーボンブラック5重量部と、バインダーとしてのPTFE10重量部とを混合した後、それを圧延によってシート状に成形する。続いて、成形された前記シートを複数の貫通孔を有するアルミニウムのシート材の厚さ方向一方の面に導電性接着剤等によって貼り合わせる。続いて、該シート材から幅W1が36mmで長さL1が505mmの帯を切り出すことにより、厚さ約250μmの正極10が作製される。尚、正極10の分極性電極層12はリチウムイオンキャパシタの正極に適用可能な公知の材質を用いた公知の構造を有していればよく、正極10を公知の他の方法によって製作することも可能である。
【0020】
正極10には、捲回中心端10a(捲回される際に内側になる端、図3における左端)から見て正極10の長さL1の略1/4の位置に針カシメにより正極端子13の一端が取付けられている。正極端子13は金属材料から成り、正極10の正極集電体11における厚さ方向他方の面に取付けられている。正極端子13は針カシメの他に溶接等の端子を取付ける公知の方法によっても取付可能である。正極端子13の他端は正極10の幅方向の一端から突出している。
【0021】
負極20の負極集電体21は、複数の貫通孔(図示せず)を有する銅のシート材から成る。負極集電体21の材質としては、銅の他にステンレス、ニッケル等を用いることも可能であり、リチウムイオンキャパシタの負極に用いられる公知の他の材質を用いることも可能である。
【0022】
負極20の活物質層22は、例えばポリアセン(PAS)、種々の炭素材料、錫酸化物、珪素酸化物等の活物質を含有し、カーボンブラックや金属粉末等の導電助剤や、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)やスチレンブタジエンゴム(SBR)等のバインダーも必要に応じて含有している。種々の炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素等を使用可能である。例えば本実施形態の負極20は以下のように作製される。先ず、フェノール樹脂原料から成る難黒鉛化炭素と、難黒鉛化炭素100重量部に対して導電助剤としてのカーボンブラック5重量部、及びバインダーとしてのPVDF8重量部を混合してペースト状とする。続いて、該ペーストを銅のシート材の厚さ方向一方の面に塗布して乾燥し、該シート材から幅W2が40mmで長さL2が490mmの帯を切り出すことにより、難黒鉛化炭素の塗布量が略75g/cm2である正極10が作製される。
【0023】
負極20には、捲回中心端20a(捲回される際に内側になる端、図3における左端)から見て負極20の長さL2の1/3の位置に針カシメにより負極端子23の一端が取付けられている。負極端子23は金属材料から成り、負極20の負極集電体21における厚さ方向他方の面に取付けられている。負極端子23は針カシメの他に溶接等の端子を取付けるための公知の方法によっても取付け可能である。負極端子23の他端は負極20の幅方向の一端から突出している。また、負極端子23の一端側の表面における負極集電体21と接触していない部分は、ポリイミド製粘着テープ等から成る保護膜24によって覆われている。尚、保護膜24としては、リチウムイオンを透過しない、又は透過し難いものが好ましい。
【0024】
本実施形態では、各セパレータ30,40は幅W3が45mmで長さL3が600mmで厚さが50μm程度の帯状に形成されている。各セパレータ30,40は正極10と負極20とを絶縁でき、非水電解液が浸透し、イオンが透過できるものであればよく、多孔性フィルム、不織布、織物の構造を使用可能であり、材料としては天然セルロース、セルロースの誘導体、ポリオレフィン等を使用可能である。例えば本実施形態では、各セパレータ30,40は天然セルロースから成る多孔性フィルムである。尚、各セパレータ30,40はリチウムイオンキャパシタに適用可能な公知の材質を用いた公知の構造を有していればよい。
【0025】
次に、捲回蓄電ユニット1を作製する場合の手順を以下に説明する。図3は上から、正極集電体11が紙面上側に配置されている正極10、第1セパレータ30、活物質層22が紙面上側に配置されている負極20、及び第2セパレータ40を示すものである。また、図4は、分極性電極層12が紙面上側に配置されている正極20、図5は負極集電体20が紙面上側に配置されている負極20を示すものである。尚、図3及び図5は、後述のように第1リチウム金属シート61及び第2リチウム金属シート62が貼付けられた状態を示す。
【0026】
先ず、正極10と負極20と各セパレータ30,40とが、図3に示されている配置で互いに重ね合わせられる。具体的には、図6に示すように第2セパレータ40の上に負極20が重ね合わせられる。また、この時、負極20の負極集電体20側の面に第1リチウム金属シート61及び第2リチウム金属シート62が貼付けられる。第1リチウム金属シート61は厚さが0.1mmで幅W4が20mmで長さL4が50.5mmであり、第2リチウム金属シート62は厚さが0.1mmで幅W5が20mmで長さL5が101mmである。即ち、第1リチウム金属シート61は負極20の長さL2の10%の長さを有し、第2リチウム金属シート62は負極20の長さL2の20%の長さを有する。第1及び第2リチウム金属シート61,62を加えた重量は、一般的に、負極20の活物質層22中の活物質の重量の1/10程度であることが好ましい。また、本実施形態では、第1リチウム金属シート61は第2リチウム金属シート62の1/2の重量である。
【0027】
第1リチウム金属シート61は、図3に示すように、その長さ方向の中心位置が負極20の捲回中心端20aから見て負極20の長さの略1/6の位置に配置されるように、負極20の負極集電体22側の面に貼付けられる。これにより、第1リチウム金属シート61の左端は、負極20の捲回中心端20aから見て11.7%の位置に配置され、第1リチウム金属シート61の右端は、負極20の捲回中心20aから見て21.7%の位置に配置される。これを図3において示すと、P1が0.117となり、P2が0.217となる。一方、第2リチウム金属シート62は、その長さ方向の中心位置が負極20の捲回中心端20aから見て負極20の長さの略2/3の位置に配置されるように、負極20の負極集電体20側の面に貼付けられる。これにより、第2リチウム金属シート62の左端は、負極20の捲回中心端20aから見て56.7%の位置に配置され、第2リチウム金属シート62の右端は、負極20の捲回中心20aから見て76.7%の位置に配置される。これを図3において示すと、P3が0.567となり、P4が0.767となる。
【0028】
続いて、図7に示すように負極20の上に第1セパレータ30が重ね合わせられ、その上に正極10が重ね合わせられることにより、帯状物が形成される。
【0029】
続いて、前記帯状物を長さ方向の一端から第2セパレータ40が内側となるように図7における左側から捲回していく。これにより、図8に示すように、帯状物が渦巻状に捲回される。尚、正極10に取付けられた正極端子13と負極20に取付けられた負極端子23とが捲回蓄電ユニット1の中心を介して略対向する位置に配置されるように、正極10上の正極端子13の位置及び負極20上の負極端子23の位置が設定されている。
【0030】
続いて、上記のように作製された捲回蓄電ユニット1及び非水電解液をフィルムパッケージ50内に収容する手順について説明する。フィルムパッケージ50は略矩形の上面視輪郭を有するラミネートフィルムを用いて形成される。該ラミネートフィルムは、ナイロンから成る外側耐熱層、アルミニウムから成るバリア層及びポリプロピレンから成るヒートシール層が順に積層されている。外側耐熱層は10〜50μmの厚さを有し、バリア層は10〜50μmの厚さを有し、ヒートシール層は30〜50μmの厚さを有する。
【0031】
先ず、所定サイズの矩形状ラミネートフィルムを用意し、該ラミネートフィルムをヒートシール層が上を向くように配置し、正極端子13及び負極端子23の他端側がフィルムの一端から突出するように捲回蓄電素子1を該ラミネートフィルム上に載置する。
【0032】
続いて、下側のフィルム端に上側のフィルム端が揃うようにラミネートフィルムを2つ折りにし、図9に示すように幅方向の2つの縁の所定幅範囲を適当な加熱器具を用いて加熱することにより、該2つの縁のヒートシール層が相互に熱融着し、ラミネートフィルムが袋状となる。次に、袋状となったラミネートフィルムの開口部から非水電解液を注入し、ラミネートフィルムの開口縁の所定幅範囲を適当な加熱器具を用いて加熱することにより、開口縁のヒートシール層が相互に熱融着し、ラミネートフィルムから成るフィルムパッケージ50内に捲回蓄電ユニット1及び非水電解液が封入される。
【0033】
前記非水電解液は、非プロトン性の非水溶媒に電解質が溶解して成る。非水溶媒は、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状エステル、鎖状エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、ニトリル類、及び含イオウ化合物の何れかに含まれる溶媒の1種又は複数種の混合溶媒を含有している。
【0034】
環状炭酸エステルの例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等が挙げられる。一部にフッ素が置換された環状炭酸エステル、例えばフルオロエチレンカーボネート等も使用できる。鎖状炭酸エステルの例としては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等が挙げられ、環状エステルの例としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、3−メチル−γ−ブチロラクトン、2−メチル−γ−ブチロラクトン等が挙げられ、鎖状エステルの例としては、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、吉草酸メチル等が挙げられ、環状エーテルの例としては、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチル-1,3-ジオキソラン、2-メチル-1,3-ジオキソラン等が挙げられ、鎖状エーテルの例としては、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジメチル 2,5−ジオキサヘキサンジオエート、ジプロピルエーテル等が挙げられ、ニトリル類の例としては、アセトニトリル、プロパンニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等が挙げられ、含イオウ化合物の例としてはスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルメチルスルホン)、エチルプロピルスルホン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。上記の例に限られず、その他リチウムイオンキャパシタの非水溶媒として用いられる公知の溶媒を用いることも可能である。
【0035】
電解質としては、非水電解液に電解質カチオン成分としてLi+を提供可能であり、PF6+やBF4-等の電解質アニオン成分を提供可能な電解質を使用可能であり、例えばLiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCLO4、LiI等を使用可能である。また、電解質カチオン成分としてリチウムイオンを提供可能な公知のイオン性液体を使用することも可能である。
【0036】
前述のように捲回蓄電ユニット1及び非水電解液をフィルムパッケージ50内に収容すると、捲回蓄電ユニット1の負極20の活物質層22と各リチウム金属シート61,62とが電気化学的に接触し、各リチウム金属シート61,62から非水電解液中に溶解したリチウムイオンが負極20の活物質層22に吸蔵(ドープ)される。このリチウムイオンの負極20の活物質層22へのドープをプレドープという。尚、捲回蓄電ユニット1や各リチウム金属シート61,62の大きさにもよるが、一般にプレドープは数時間から数十日かかるものであり、量産工程では、前述のように捲回蓄電ユニット1及び非水電解液をフィルムパッケージ50内に収容した後、所定の保管場所で数十時間から数十日間保管が行われる。
【0037】
尚、プレドープや充放電により各リチウム金属シート61,62が完全に非水電解液に溶解する場合もあり、全て溶解せずに残留する場合もある。また、各リチウム金属シート61,62が完全に非水電解液に溶解した場合でも、負極20の負極集電体21側の表面に各リチウム金属シート61,62の成分が残留している場合があり、又は、各リチウム金属シート61,62が接触していたことによる負極集電体21の変質又は変色が認められる場合がある。これらの成分の残留、変質及び変色は、各リチウム金属シート61,62が貼付けられていた範囲で生ずる。一方、各リチウム金属シート61,62が残留する場合は、各リチウム金属シート61,62が貼付けられていた範囲にリチウム金属シート61,62の残骸が残留する。即ち、前記成分の残留、変質、変色及び残骸は、各リチウム金属シート61,62が存在していた痕跡である。
【0038】
このように構成されたリチウムイオンキャパシタは、負極20では、活物質層22へのリチウムイオンの吸蔵及び脱離により充放電が行われ、正極10では、分極性電極層11と非水電解液との界面の電気二重層によって充放電が行われる。
【0039】
前記リチウムイオンキャパシタにおいて、各リチウム金属シート61,62の位置、大きさ等を変更した実験例を数種類作製するとともに、サイクル試験を行い、サイクル試験による容量維持率の変化を以下のように調べた。
【0040】
[サイクル試験の条件]
60℃雰囲気において、1A、3.8Vの定電流定電圧充電を20分間おこない、その後に1Aで2.2Vまで定電流放電を行うことを1サイクルとし、これを10000サイクル行った。また、1サイクル目において、充電電圧の差と放電時間より容量を算出し、1000サイクル目及び10000サイクル目においても同様に容量を算出した。そして、1000サイクル目の容量を1サイクル目の容量で除算して百分率で表したものを1000サイクル目の容量維持率とし、10000サイクル目の容量を1サイクル目の容量で除算して百分率で表したものを10000サイクル目の容量維持率とした。
【0041】
[実験例1]
前記実施形態のように正極10、負極20及び各セパレータ30,40の作製を行い、また、前記実施形態のように捲回蓄電ユニット1の作製を行い、プロピレンカーボネートのみから成る非水溶媒にLiPF6が非水電解液1リットルに対して1mol含有されるように非水電解液を調整し、その非水電解液と捲回蓄電ユニット1を前述のようにフィルムパッケージ50内に収容して作製した。
【0042】
[実験例2]
図11のように、P1が0.05となりP2が0.15となるように、即ち第1リチウム金属シート61の左端が負極20の捲回中心端20aから負極20の長さL2の5%の位置に配置されるように、第1リチウム金属シート61を貼付け、P3が0.68となりP4が0.88となるように、即ち2リチウム金属シート62の左端が負極20の捲回中心端20aから負極20の長さL2の68%の位置に配置されるように、第1リチウム金属シート61を貼付けて、その他は実験例1と同様に作製した。
【0043】
[実験例3]
図12のように、P1が0.18となりP2が0.28となるように、即ち第1リチウム金属シート61の左端が負極20の捲回中心端20aから負極20の長さL2の18%の位置に配置されるように、第1リチウム金属シート61を貼付け、P3が0.45となりP4が0.65となるように、即ち第2リチウム金属シート62の左端が負極20の捲回中心端20aから負極20の長さL2の45%の位置に配置されるように、第1リチウム金属シート61を貼付けて、その他は実験例1と同様に作製した。
【0044】
[実験例4]
図13のように、第1リチウム金属シート61を負極20の長さL2の5%の長さとし、第2リチウム金属シート62を負極20の長さL2の10%の長さとし、また、P1が0.142となりP2が0.192となるように、即ち第1リチウム金属シート61の左端が負極20の捲回中心端20aから負極20の長さL2の14.2%の位置に配置されるように、第1リチウム金属シート61を貼付け、P3が0.617となりP4が0.717となるように、即ち第2リチウム金属シート62の左端が負極20の捲回中心端20aから負極20の長さL2の61.7%の位置に配置されるように、第1リチウム金属シート61を貼付けて、その他は実験例1と同様に作製した。尚、第1リチウム金属シート61と第2リチウム金属シート62の1/2の重量は前記実施形態と同じである。
【0045】
[実験例5]
図14のように、第1リチウム金属シート61を負極20の長さL2の3%の長さとし、第2リチウム金属シート62を負極20の長さL2の6%の長さとし、また、P1が0.152となりP2が0.182となるように、即ち1リチウム金属シート61の左端が負極20の捲回中心端20aから負極20の長さL2の14.2%の位置に配置されるように、第1リチウム金属シート61を貼付け、P3が0.637となりP4が0.697となるように、即ち2リチウム金属シート62の左端が負極20の捲回中心端20aから負極20の長さL2の63.7%の位置に配置されるように、第1リチウム金属シート61を貼付けて、その他は実験例1と同様に作製した。尚、第1リチウム金属シート61と第2リチウム金属シート62の重量は前記実施形態と同じである。
【0046】
[実験例6]
図15のように、第1リチウム金属シート61の幅W4を10mmとし、第2リチウム金属シート62の幅W5を10mmとし、さらに各リチウム金属シート61,62を負極20の幅方向一端側に貼付け、その他は実験例1と同様に作製した。尚、第1リチウム金属シート61と第2リチウム金属シート62の重量は前記実施形態と同じである。
【0047】
[実験例7]
図16のように、負極20の捲回中心端20aから見て負極20の長さの25%の位置に負極端子23を取付け、その他は実験例1と同様に作製した。
【0048】
[実験例8]
図17のように、負極20の捲回中心端20aから見て負極20の長さの45%の位置に負極端子23を取付け、その他は実験例1と同様に作製した。
【0049】
[比較例1]
図18のように、負極20に第2リチウム金属シート62のみを貼付け、第2リチウム金属シート62の長さを負極20の長さL2の30%とし、P3が0.517となりP4が0.817となるように、即ち第2リチウム金属シート62の左端が負極20の捲回中心端20aから負極20の長さL2の51.7%の位置に配置されるように第2リチウム金属シート62を貼付けて、その他は実験例1と同様に作製した。尚、本比較例における第2リチウム金属シート62の重量は、前記実施形態における第1リチウム金属シート61と第2リチウム金属シート62を加えた重量と等しい。
【0050】
[比較例2]
図19のように、負極20に第1リチウム金属シート61のみを貼付け、第1リチウム金属シート61の長さを負極20の長さL2の23%とし、P1が0.052となりP2が0.28.2となるように、即ち第1リチウム金属シート61の左端が負極20の捲回中心端20aから負極20の長さL2の5.2%の位置に配置されるように第1リチウム金属シート61を貼付けて、その他は実験例1と同様に作製した。尚、本比較例における第1リチウム金属シート61の重量は、前記各実験例における第1リチウム金属シート61と第2リチウム金属シート62を加えた重量と等しい。
【0051】
[比較例3]
図20のように、P1が0となりP2が0.1となるように、即ち第1リチウム金属シート61の左端が負極20の捲回中心端20aと揃うように、第1リチウム金属シート61を貼付け、P3が0.8となりP4が1となるように、即ち第2リチウム金属シート62の左端が負極20の捲回中心端20aから負極20の長さL2の80%の位置に配置されるように、第1リチウム金属シート61を貼付けて、その他は実験例1と同様に作製した。
【0052】
[比較例4]
図21のように、P1が0.22となりP2が0.32となるように、即ち第1リチウム金属シート61の左端が負極20の捲回中心端20aから負極20の長さL2の22%の位置に配置されるように、第1リチウム金属シート61を貼付け、P3が0.34となりP4が0.54となるように、即ち第2リチウム金属シート62の左端が負極20の捲回中心端20aから負極20の長さL2の34%の位置に配置されるように、第1リチウム金属シート61を貼付けて、その他は実験例1と同様に作製した。
【0053】
[評価結果]
図22のように、実験例1〜8は比較例1〜4に比べ、サイクル試験1000回及び10000回目における容量維持率が高い。
【0054】
また、実験例1〜3からわかるように、第1リチウム金属シート61が負極20の捲回中心端20aから見て負極20の全長の5%の位置から28%の位置の間に配置され、第2リチウム金属シート62が負極20の捲回中心端20aから見て負極20の全長の45%の位置から88%の位置の間に配置されている場合は、何れも比較例1及び2に比べてサイクル試験1000回及び10000回目における容量維持率が格段に高く、また、比較例3及び4に比べてもサイクル試験1000回及び10000回目における容量維持率が高い。
【0055】
また、実験例1、4及び5からわかるように、貼付ける第1リチウム金属シート61の長さ寸法L4と第2リチウム金属シート62の長さ寸法L5を小さくすることにより、サイクル試験1000回及び10000回目における容量維持率が徐々に低下することがわかる。
【0056】
また、実験例1及び6からわかるように、貼り付ける第1リチウム金属シート61の幅寸法W4と第2リチウム金属シート62の幅寸法W5が小さくなり、その貼付け位置が負極20の幅方向の片側に寄っている場合でも、サイクル試験1000回及び10000回目における容量維持率にそれほど影響はない。
【0057】
また、実験例1、7及び8からわかるように、負極端子23の位置を負極20の捲回中心端20aから見て負極20の長さの25%の位置から45%の位置の間で変更しているが、サイクル試験1000回及び10000回目における容量維持率にそれほど影響はない。
【0058】
以上のように実験例1〜8が比較例1〜4に比べてサイクル試験1000回及び10000回目における容量維持率が高くなる理由は、明らかではないが、1つ目のリチウム供給源である第1リチウム金属シート61が負極20の捲回中心端20aから見て負極20の全長の5%の位置から28%の位置の間に配置され、2つ目のリチウム供給源である第2リチウム金属シート62が負極20の捲回中心端20aから見て負極20の全長の45%の位置から88%の位置の間に配置されている場合は、図10に矢印で示すように、各リチウム金属シート61,62から溶解したリチウムイオンが第1セパレータ30に沿って捲回蓄電ユニット1の周方向に効率良く分散し、これにより負極20の活物質層22の全体に亘って万遍なくリチウムイオンがドープされるので、サイクル試験による活物質層22の局部的な劣化や、局部的にリチウムイオンが集中することによるデンドライトの発生を抑制できることにあると推測される。
【0059】
また、各リチウム金属シート61,62から溶解したリチウムイオンが第1セパレータ30に沿って捲回蓄電ユニット1の周方向に効率良く分散することにより、プレドープに要する時間を短縮することが可能となり、生産効率を向上する上で極めて有利である。
【0060】
また、本実施形態では、負極端子23の一端側の表面における負極集電体21と接触していない部分が、ポリイミド製粘着テープ等の保護膜24によって覆われているので、負極端子23にデンドライトが発生し難く、サイクル試験1000回及び10000回目における容量維持率を高くしている要因の一つになっている。
【0061】
また、本実施形態では、負極端子23が負極20の捲回中心端20aから見て負極20の長さの25%の位置から45%の位置の間に取付けられている。このため、捲回蓄電ユニット1の捲回中心と捲回外周との中間に負極端子23を配置することができる。捲回蓄電ユニット1の捲回中心と捲回外周との中間の位置において負極端子23が接続相手部品と接続される事が多いので、負極端子23が負極20の捲回中心端20aから見て負極20の長さの25%の位置から45%の位置の間に取付けられる構成は有利である。ちなみに、負極端子23を負極20の捲回中心端20aの近傍や捲回外周端の近傍に取付ける場合は、負極端子23が捲回蓄電ユニット1の捲回中心か捲回外周に配置されることになるが、この場合は、捲回蓄電ユニット1の捲回中心と捲回外周との中間の位置において負極端子23を接続相手部品と接続するために、負極端子23を捲回外周側又は中心側に向かって屈曲させるか、負極端子23と別体で接続相手部品に接触する部材を設ける必要があり、効率的ではない。
【0062】
また、本実施形態のように負極端子23を負極20の長さ方向の端ではなく中央側に設けると、リチウムイオン供給源からのリチウムイオンの移動が負極端子23によって妨げられることが懸念されるが、本実施形態では、負極端子23に対して負極20の長さ方向の両側にそれぞれリチウム金属シート61,62が配置されているので、負極端子23が大きな障害になることはない。
【0063】
また、本実施形態では、第1リチウム金属シート61が第2リチウム金属シート62の1/2の重量であり、また、負極20における負極端子23よりも捲回中央端20a側の長さは、負極20における負極端子23よりも捲回外周端側の長さよりも短い。このような配置は、負極端子23によってリチウムイオンの移動が少し妨げられる可能性を考慮すると、負極20の全体に亘って万遍なくリチウムイオンをドープする上で有利である。
【0064】
また、負極20における負極端子23よりも捲回中心端20a側の長さが、負極20における負極端子23よりも捲回外周端側の長さよりも短いことから、第2リチウム金属シート62が第1リチウム金属シート61よりも重量が大きいことは、負極20の全体に亘って万遍なくリチウムイオンをドープする上で有利である。尚、第2リチウム金属シート62の重量が第1リチウム金属シート61の重量の1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましい。
【0065】
また、本実施形態において、2つのリチウム金属シート61,62とは別に各リチウム金属シート61,62よりも重量の小さい別のリチウム金属シートを設けることも可能であるが、前述のように、2つのリチウム金属シート61,62によって負極20にリチウムイオンが効率的にドープされることに変わりはない。
【0066】
尚、本実施形態では、負極20の負極集電体22側の面に各リチウム金属シート61,62を貼付けたものを示したが、負極20の活物質層21側の面に各リチウム金属シート61,62を貼付けることも可能である。この場合でも、前述と同様の作用効果を奏し得る。また、第2セパレータ40における負極20に接触しない面に各リチウム金属シート61,62を貼付けることも可能であり、第1セパレータ30を2枚のセパレータから構成し、その間に各リチウム金属シート61,62を配置することも可能である。これらの場合、各リチウム金属シート61,62が負極20に対向するように配置されるが、負極20の負極20の捲回中心端20aから見て負極20の全長の5%の位置から28%の位置の間に配置され、2つ目のリチウム供給源である第2リチウム金属シート62が負極20の捲回中心端20aから見て負極20の全長の45%の位置から88%の位置の間に配置される場合は、前述と同様の作用効果を奏し得る。
【0067】
尚、本実施形態では、負極20は負極集電体21の厚さ方向一方の面に活物質層22が設けられ、正極10は正極集電体11の厚さ方向一方の面に分極性電極層12が設けられているが、負極20の負極集電体21の厚さ方向両方の面い活物質層22を設けることも可能であり、正極10の正極集電体11の厚さ方向両方の面に分極性電極層22を設けることも可能である。
【0068】
また、本実施形態では、巻回蓄電ユニット1及び非水電解液をフィルムパッケージ50に収容するものを示したが、巻回蓄電ユニット1及び非水電解液を金属製又はセラミック製の容器に収容することも可能であり、他の材質の容器に収容することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、蓄帯状の正極と負極とセパレータとを重ね合わせるとともに捲回して成る捲回蓄電ユニットを備えており負極にリチウムイオンをプレドープする電気化学デバイスに広く適用でき、本発明の適用によって前記同様の作用、効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0070】
1…捲回蓄電ユニット、10…正極、10a…捲回中心端、11…正極集電体、12…分極性電極層、13…正極端子、20…負極、20a…捲回中心端、21…負極集電体、22…活物質層、23…負極端子、24…保護膜、30…セパレータ、40…セパレータ、50…フィルムパッケージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の正極集電体の少なくとも厚さ方向一方の面に分極性電極層、又は、リチウムイオンを吸蔵及び脱離可能な活物質層が設けられている正極と、帯状の負極集電体の少なくとも厚さ方向一方の面にリチウムイオンを吸蔵及び脱離可能な活物質層が設けられている負極と、帯状のセパレータとを有し、負極とセパレータと正極とを重ね合わせた帯状物をその長さ方向の一端から捲回して成る捲回蓄電ユニットと、
非水電解液と、
捲回蓄電ユニット及び非水電解液を収容している容器と、
捲回蓄電ユニット中に設けられ、負極の捲回中心端から見て負極全長の5%の位置から28%の位置の間において負極に対向するように又は接触するように配置された単一の第1リチウム金属シートと、負極の捲回中心端から見て負極全長の45%の位置から88%の位置の間において負極に対向するように又は接触するように配置された単一の第2リチウム金属シートとを備えている
電気化学デバイス。
【請求項2】
帯状の正極集電体の少なくとも厚さ方向一方の面に分極性電極層、又は、リチウムイオンを吸蔵及び脱離可能な活物質層が設けられている正極と、帯状の負極集電体の少なくとも厚さ方向一方の面にリチウムイオンを吸蔵及び脱離可能な活物質層が設けられている負極と、帯状のセパレータとを重ね合わせた帯状物を、その長さ方向の一端から捲回することにより捲回蓄電ユニットを形成し、その際に単一の第1リチウム金属シートと単一の第2のリチウム金属シートを負極に対向するように又は接触するように配置し、該捲回蓄電ユニットを非水電解液とともに容器に収容して成る電気化学デバイスであって、
捲回蓄電ユニット中における負極の捲回中心端から見て負極全長の5%の位置から28%の位置の間において負極に対向するように又は接触するように第1リチウム金属シートが存在していた痕跡と、負極の捲回中心端からみて負極全長の45%の位置から88%の位置の間において負極に対向するように又は接触するように第2リチウム金属シートが存在していた痕跡とを有する
電気化学デバイス。
【請求項3】
一端側が負極に取付けられた負極端子と、
負極端子の一端側における負極集電体と接触していない部分を覆う保護膜とを備えた
ことを特徴とする請求項1または2の何れかに記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
第2リチウム金属シートの方が第1リチウム金属シートよりも重量が大きい
ことを特徴とする請求項1、2または3の何れかに記載の電気化学デバイス。
【請求項5】
帯状の正極集電体の少なくとも厚さ方向一方の面に分極性電極層、又は、リチウムイオンを吸蔵及び脱離可能な活物質層が設けられた正極を作製する工程と、
帯状の負極集電体の少なくとも厚さ方向一方の面にリチウムイオンを吸蔵及び脱離可能な活物質層が設けられた負極を作製する工程と、
単一の第1のリチウム金属シート及び単一の第2のリチウム金属シートが負極に対向するように又は接触するように、負極とセパレータと正極と第1及び第2のリチウム金属シートとを重ね合わせた帯状物をその長さ方向の一端から捲回して捲回蓄電ユニットを作製する工程と、
捲回蓄電ユニット及び非水電解液を容器に収容する工程とを含み、
前記蓄電ユニットを作製する工程において、第1リチウム金属シートを、負極の捲回中心端から見て負極全長の5%の位置から28%の位置の間において負極に対向するように又は接触するように配置し、第2リチウム金属シートを、負極の捲回中心端から見て負極全長の45%の位置から88%の位置の間において負極に対向するように又は接触するように配置する
電気化学デバイスの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2012−114161(P2012−114161A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260430(P2010−260430)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】