説明

電気機器収納用箱体パネル

【課題】溶接加工を施さずとも十分な強度や防水性を発揮でき、低コストで製作可能な電気機器収納用箱体パネルを提供する。
【解決手段】折り曲げ状態において隣接する一組の折り曲げ部の一方側に係止片2を、他方側に係止孔3を夫々設け、係止片2の係止孔3への係止により一組の折り曲げ部を連結状態にて維持可能とした。したがって、コーナー部を溶接する必要がなく、低コストで電気機器収納用箱体パネル1を製作することができる。また、係止孔3が係止状態にある係止片2をガタつかせることなく保持するため、コーナー部が容易に開いたりせず、強度が低下してしまうこともないし、水が浸入しやすくなるといった事態も生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器収納用箱体を構成する側板、底板、又は天板等といったパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機器収納用箱体を成形するにあたっては、図5(a)に示すように、周縁に折り曲げ加工を施すとともに隣接する折り曲げ部同士(コーナー部R、R・・)を溶接してなるパネル51を側板や天板、底板等として用いていた。また、たとえば特許文献1にも、折り曲げ加工を施してなるパネルを用いて成形された電気機器収納用箱体が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−318560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のパネル51では、該パネル51のコーナー部R、R・・毎に一々溶接加工を施さなければならないため、手間がかかり、コスト高にもなる。また、コーナー部R、R・・を溶接しないと、図5(b)に示す如くコーナー部Rが開きやすいため、パネル51が歪みやすい、電気機器収納用箱体を成形後、コーナー部Rから水等が箱体内部へ浸入しやすいといった問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、溶接加工を施さずとも十分な強度や防水性を発揮でき、低コストで製作可能な電気機器収納用箱体パネルを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、周縁部に折り曲げ加工が施された複数の矩形状の板部材を組み付けてなる電気機器収納用箱体の前記板部材を構成する電気機器収納用箱体パネルであって、折り曲げ状態において隣接する一組の折り曲げ部の一方側に係止部を、他方側に被係止部を夫々設け、前記係止部の前記被係止部への係止により前記一組の折り曲げ部を連結状態にて維持可能としたことを特徴とする。
また、上記目的を達成するために、本発明のうち請求項2に記載の発明は、周縁部に折り曲げ加工が施された複数の矩形状の板部材を組み付けてなる電気機器収納用箱体の前記板部材を構成する電気機器収納用箱体パネルであって、折り曲げ状態において隣接する一組の折り曲げ部の一方側に、他方側を挟持する挟持部を設け、該挟持部により前記一組の折り曲げ部を連結状態にて維持可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、板状部材の周縁部に折り曲げ加工を施しているため、強度の向上を図ることができるとともに、係止部と被係止部との係止又は挟持部により一組の折り曲げ部を連結状態にて維持可能としているため、溶接の必要がなく、低コストで製作することができる。また、コーナー部が容易に開いたりせず、強度が低下してしまうこともないし、水が浸入しやすくなるといった事態も生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態となる電気機器収納用箱体パネル(以下、単にパネルと称す)について、図面をもとに説明する。
【0009】
図1は、パネル1のコーナー部及び該コーナー部を折り曲げ加工する様子を拡大して示した説明図である。
パネル1は、電気機器収納用箱体の側板、天板、及び底板等として用いられる板状部材であって、矩形状部の四辺に外方へ突出する折り代部が設けられており、下記の如く該折り代部をコ字状に折り曲げて形成される。そして、折り曲げ状態において隣接する折り代部の一方側(折り代部A)の縁部には、板体と略直交する方向へ突出する係止片(係止部)2が一体的に設けられている。一方、折り代部の他方側(折り代部B)の縁部には、係止片2を係止可能な係止孔(被係止部)3が穿設されている。尚、係止孔3の幅は、係止片2と略同様に設けられており、係止状態にある係止片2をガタつかせることなく保持可能(すなわち、連結状態を維持可能)となっている。
【0010】
上述の如き構成を有するパネル1を形成するにあたっては、まず折り代部Bをコ字状に折り曲げて、図1(a)に示す状態とする。このとき、係止孔3は、折り代部Bの折り曲げ加工に伴って所定の係止位置に位置決めされることになる。次に、折り代部Aを、折り代部B側へコ字状に折り曲げる。このとき、折り代部同士の側縁が密接するように、且つ、係止片2が係止孔3へ係止するように折り曲げる。
【0011】
以上のようにして形成されたパネル1によれば、板状部材の周縁部に折り曲げ加工を施しているため、強度の向上を図ることができるとともに、隣接する折り曲げ部のコーナー部同士を係止片2の係止孔3への係止により連結し、該連結状態を維持可能としているため、溶接の必要がなく低コストで製作することができる。また、係止孔3が係止状態にある係止片2をガタつかせることなく保持するため、コーナー部が容易に開いたりせず、強度が低下してしまうこともないし、水が浸入しやすくなるといった事態も生じない。
【0012】
次に、該パネル1を用いて成形される電気機器収納用箱体11について以下説明する。図2は、電気機器収納用箱体11の前扉を取り外した状態を示した説明図であり、図3は、天板13を組み付ける様子を示した説明図である。
電気機器収納用箱体11は、天板(板部材)13、一対の側板(板部材)14、14、底板(板部材)15、及び背板(板部材)16を組み付けて前面を除くその他の5面を閉塞した箱状の本体に、該本体の前面開口を開閉する前扉(図示せず)を蝶着してなるものである。側板14、14、底板15、及び背板16は、金属製板状部材の周縁部にそれぞれ種々の折り曲げ加工が施された折り曲げ部L、L・・を有するものである。各折り曲げ部Lには、爪片20又は該爪片20を挿通可能なスリット(図示せず)が設けられている。そして、組み付け状態において隣接する折り曲げ部L、Lの一方側に設けられた爪片20を、他方側に設けられたスリットへ挿通させ、さらに折り曲げ部Lに沿って折り曲げて組み付け可能となっている。尚、30は、前面開口周縁に形成された折り曲げ部であるフランジ部内面に取り付けられた補強金具であり、17は、前扉を軸支するためのヒンジ部である。
【0013】
一方、天板13は、左右両側縁及び後縁に上記パネル1同様の折り曲げ加工が施された折り曲げ部S、S・・を有する状部材であり、その前縁には、ヘミング加工等によりフランジ部が設けられている。各折り曲げ部Sには、側板14、14、及び背板16の上縁側の折り曲げ部(図示せず)に設けられたスリットへ挿通可能な爪片20、20・・が突設されているとともに、側板14、14、及び背板16の上縁側の折り曲げ部に当着して天板13と側板14、14、及び背板16とを接着するシール部材25が貼着されている。そして、該天板13は、組み付け状態にある側板14、14、及び背板16の上方から爪片20、20・・を対応するスリットへ挿通させ、シール部材25により接着した状態で爪片20、20・・を背板16等の折り曲げ部に沿って折り曲げて組み付けられる。尚、22は、補強金具30を位置決めするための突起部であり、23は、補強金具30をネジ止めするためのボルト孔である。
【0014】
以上のような構成を有する電気機器収納用箱体11によれば、爪片20をスリットへ挿通させ、さらに折り曲げ部に沿って折り曲げることにより板部材同士を組み付けている。したがって、組み付け作業を組み付け現場にて非常に容易に行うことができる。
【0015】
また、特に天板13に関しては、シール部材25による接着をも行うため、強度を向上することができ、天板13の薄型化をも図ることができる。さらに、天板13は、折り曲げ部Sにシール部材25を貼着しており、該折り曲げ部Sを側板14、14、及び背板16の折り曲げ部に当着する構成としている。すなわち、折り曲げ部同士を連結する構成としているため、簡易な構成で極めて高い強度をもたせることができる。
加えて、折り曲げ部Sに爪片20、20・・を備え、側板14、14や背板16側のスリットへ挿通させるようにしているため、該挿通作業が天板13の位置決めにもなり、組み付け作業の更なる簡易化を図ることができる。
【0016】
なお、本発明のパネルに係る構成は、上記実施形態に記載の態様に何ら限定されるものではなく、折り曲げ部の構成、及びその加工方法等について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0017】
たとえば、上記実施形態に記載の如き係止片を係止孔へ係止させる構成ではなく、図4に示すような構成としてもよい。以下、図4に示すパネルの変更例について詳述する。
パネル1’は、パネル1同様、板状部材の矩形状部の四辺に外方へ突出する折り代部が設けられたものであって、該折り代部をコ字状に折り曲げて形成される。そして、折り曲げ状態において隣接する折り代部の一方側(折り代部C)の隣接辺側端部には、折り曲げ状態において折り代部D(折り曲げ状態にある)の外面に当接する第1挟持部5が折り曲げ加工により突設されている。また、折り代部Cの上記隣接辺と直交する辺部には、折り曲げ状態においてパネル1’内側へ突出する第2挟持部6が折り曲げ加工により設けられており、上記第1挟持部5と第2挟持部6とで、折り代部Dを内外両側から挟持し、該挟持状態を維持可能(すなわち、コーナー部の連結状態を維持可能)となっている。尚、折り代部Dに連結維持に係る構成は何ら設けられておらず、折り曲げ状態にある折り代部Dの隣接側端部が被挟持部として機能するのみである。
【0018】
このようなパネル1’によっても、板状部材の周縁部に折り曲げ加工を施しているため、強度の向上を図ることができるとともに、隣接する折り曲げ部のコーナー部同士を第1挟持部5と第二挟持部6とによる挟持により連結し、該連結状態を維持可能としているため、溶接の必要がなく低コストで製作することができる上、強度が低下したり水が浸入しやすくなるといった事態も生じない。また、係止孔を穿設するものと比較して、係止孔の穿設工程が必要でないし、係止片と係止孔との位置決め精度等が求められるようなことがなく、より容易に製作可能で一層の低コスト化を図ることができる。
【0019】
また、パネル1、1’を用いて電気機器収納用箱体を成形するにあたっては、該パネル1、1’を当然背板や側板、底板としても利用することが可能であるし、背板や側板、底板等の組み付けにシール部材を用いるようにしても何ら問題はない。
さらに、爪片やスリットの設置数、設置位置等についても適宜変更可能であって、隣接するどちら側に爪片又はスリットの何れを設けるかについても何ら限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】パネルのコーナー部及び該コーナー部を折り曲げ加工する様子を拡大して示した説明図である。
【図2】電気機器収納用箱体の前扉を取り外した状態を示した説明図である。
【図3】天板を組み付ける様子を示した説明図である。
【図4】パネルの変更例を示しており、該パネルのコーナー部及び該コーナー部を折り曲げ加工する様子を拡大して示した説明図である。
【図5】従来のパネルを示した説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1・・パネル、2・・係止片、3・・係止孔、5・・第1挟持部、6・・第2挟持部、11・・電気機器収納用箱体、20・・爪片、25・・シール部材、30・・補強金具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁部に折り曲げ加工が施された複数の矩形状の板部材を組み付けてなる電気機器収納用箱体の前記板部材を構成する電気機器収納用箱体パネルであって、
折り曲げ状態において隣接する一組の折り曲げ部の一方側に係止部を、他方側に被係止部を夫々設け、前記係止部の前記被係止部への係止により前記一組の折り曲げ部を連結状態にて維持可能としたことを特徴とする電気機器収納用箱体パネル。
【請求項2】
周縁部に折り曲げ加工が施された複数の矩形状の板部材を組み付けてなる電気機器収納用箱体の前記板部材を構成する電気機器収納用箱体パネルであって、
折り曲げ状態において隣接する一組の折り曲げ部の一方側に、他方側を挟持する挟持部を設け、該挟持部により前記一組の折り曲げ部を連結状態にて維持可能としたことを特徴とする電気機器収納用箱体パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−192698(P2008−192698A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23362(P2007−23362)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【Fターム(参考)】