説明

電池パックが着脱可能な刈払機

【課題】 電池パックの着脱が容易な刈払機を提供する。
【解決手段】 刈払機は、操作棹と、操作棹の前端に設けられている刈刃ユニットと、操作棹の後端に設けられている本体ユニットを備えている。刈刃ユニットには、モータによって駆動される刈刃が回転可能に支持されている。本体ユニットには、モータに電力を供給する電池パックをスライド可能に受入れる電池パック装着部が形成されている。電池パック装着部における電池パックのスライド方向は、操作棹の中心軸に対して角度を成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雑草等の刈り払い作業に用いられる刈払機に関する。特に、電池パックが着脱可能な刈払機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、刈払機が開示されている。この刈払機は、操作棹と、操作棹の前端に設けられている刈刃ユニットと、操作棹の後端に設けられている本体ユニットと、操作棹の内部に設けられている伝達シャフトを備えている。刈刃ユニットは、刈刃を回転可能に支持することができる。本体ユニットは、刈刃を駆動するモータを内蔵している。伝達シャフトは、本体ユニットから刈刃ユニットまで伸びており、本体ユニットから刈刃ユニットへモータの出力トルクを伝達する。
【0003】
本体ユニットには、電池パックをスライド可能に受入れる電池パック装着部が形成されており、電池パック装着部に装着された電池パックから、モータに電力が供給されるようになっている。電池パック装着部は、本体ユニットの下面に設けられており、電池パック装着部における電池パックのスライド方向が、操作棹の中心軸に対して平行となるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−311828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
刈払機の利用者は、本体ユニットに対して電池パックを着脱する際に、操作棹を把持することも多い。しかしながら、従来の刈払機では、電池パック装着部における電池パックのスライド方向が、操作棹の中心軸に対して平行となっており、利用者が操作棹及び電池パックに力を加える方向が、操作棹の軸方向に一致してしまう。そのことから、利用者が電池パックを着脱しようと力を加えた時に、操作棹を把持している手を操作棹に沿って滑らせてしまうことがある。特に、刈払機は主に屋外で使用されることから、操作棹には土埃や水分が付着していることも多い。この場合、操作棹を把持している手はさらに滑りやすくなり、電池パックの着脱に非常に手間取ってしまうこともある。
本発明は、上記の事象を鑑み、電池パックの着脱を容易に行うことができる刈払機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって具現化される刈払機は、操作棹と、刈刃ユニットと、本体ユニットと、モータを備えている。刈刃ユニットは、操作棹の前端に設けられており、刈刃を回転可能に支持する。本体ユニットは、操作棹の後端に設けられている。モータは、刈刃を駆動する。刈払機はさらに、利用者によって把持されるハンドルと、モータを回転させるためのスイッチを備えている。ハンドルは、操作棹の中間位置に設けられている。スイッチは、ハンドルに設けられている。
【0007】
本体ユニットには、電池パック装着部が形成されている。電池パック装着部は、モータに電力を供給する電池パックをスライド可能に受入れる。この刈払機では、電池パック装着部における電池パックのスライド方向が、操作棹の中心軸に対して角度を成している。即ち、電池パック装着部における電池パックのスライド方向が、操作棹の軸方向に対して平行でない。
この構成によると、利用者が操作棹を把持しながら電池パックを着脱する際に、利用者が操作棹及び電池パックに力を加える方向が、操作棹の軸方向に一致しない。そのことから、操作棹を把持している手が、操作棹に沿って滑りにくい。利用者は、電池パックの着脱を容易に行うことができる。
【0008】
電池パック装着部における電池パックのスライド方向は、操作棹の中心軸に対して大きな角度を成すほど好ましい。特に、電池パック装着部における電池パックのスライド方向が、操作棹の中心軸に対して45度以上の角度を成していると、操作棹を把持している手が滑ることを有意に防止することができる。さらに、電池パック装着部における電池パックのスライド方向が、操作棹の中心軸に対して略直交していると、操作棹を把持している手が滑ることをより確実に防止することができる。
【0009】
上記の刈払機では、操作棹が本体ユニットの前部に設けられている場合、電池パック装着部は、本体ユニットの後部に設けられていることが好ましい。即ち、本体ユニットには、操作棹と電池パック装着部が、互いに反対側に位置するように設けられていることが好ましい。
この構成によると、利用者が操作棹を把持しながら電池パックを着脱する際に、刈払機が操作棹を中心軸として回転することが有意に防止される。利用者は、操作棹及び電池パックに力を加えやすく、電池パックの着脱をより容易に行うことが可能となる。
【0010】
上記の刈払機では、刈刃の回転軸及び操作棹の中心軸を鉛直面内に位置させたときに、電池パック装着部における電池パックのスライド方向が、その鉛直面と平行になることが好ましい。
この構成によると、利用者が操作棹を把持しながら電池パックを着脱する際に、刈払機の姿勢が崩れにくくなり、電池パックの着脱をより容易に行うことが可能となる。
【0011】
上記の刈払機では、刈刃の回転軸及び操作棹の中心軸を鉛直面内に位置させるとともに、操作棹の中心軸を水平面内に位置させたときに、電池パック装着部における電池パックの取り付け時のスライド方向が下方を向き、電池パック装着部における電池パックの取り外し時のスライド方向が上方を向くことが好ましい。
本体ユニットに対して電池パックを着脱する際に、本体ユニットを地面に載置した状態で行うと、刈払機の姿勢を安定させることができる。このとき、電池パック装着部における電池パックの取り付け時のスライド方向が下方を向いており、電池パック装着部における電池パックの取り外し時のスライド方向が上方を向いていると、電池パックやそれを把持する手が地面と干渉することがない。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、電池パックの着脱を容易に行うことができる刈払機が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例の刈払機の外観を示す図。
【図2】本体ユニットの構成を示す断面図。
【図3】図2中のIII−III線断面図。
【図4】図2中のIV−IV線断面図。
【図5】電池パックのスライド方向を示す図。
【図6】本体ユニットにおける操作棹の固定構造を示す図。
【図7】刈刃ユニットの構成を示す断面図。
【図8】本体ユニットの変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
最初に、本発明を実施するための好適な形態を列記する。
(形態1)操作棹は、中空形状(パイプ形状)を有しており、直線状に伸びていることが好ましい。
(形態2)操作棹には、利用者が把持するためのハンドルが設けられていることが好ましい。この場合、ハンドルは、一対の左ハンドル及び右ハンドルを有することが好ましい。
(形態3)操作棹が本体ユニットの前部に設けられており、電池パック装着部が本体ユニットの後部に形成されている場合、電池パック装着部は、操作棹の中心軸の延長線上に位置していることが好ましい。この構成によると、利用者が操作棹を把持しながら電池パックを着脱する際に、刈払機が操作棹を中心軸として回転することをより効果的に防止することができる。
(形態4)モータから刈刃へのトルク伝達経路には、モータ側に接続されている駆動側連結シャフトと、駆動側連結シャフトに対して軸方向に隣接するとともに刈刃側に接続されている従動側連結シャフトと、駆動側連結シャフトと従動側連結シャフトの両者に跨って巻き回されているコイルバネが設けられていることが好ましい。この場合、コイルバネの駆動側連結シャフトから従動側連結シャフトに向かう巻き方向は、駆動側連結シャフトの回転方向と同一方向であることが好ましい。この構成によると、モータの起動時や、刈刃に過大な外力が負荷されたときに、モータから刈刃へ伝達されるトルクを制限することができる。
(形態5) 本体ユニットは、刈払機が地面に載置されたときに地面に当接する接地面を有することが好ましい。この場合、当該接地面は、電池パック装着部に取付けられた電池パックよりも下方に位置することが好ましい。このような構成によると、刈払機を地面に載置した状態で電池パックを着脱する際に、電池パックやそれを把持する利用者の手が地面に干渉するようなことがない。
【実施例】
【0015】
本発明を実施した実施例について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施例の刈払機10の外観を示している。刈払機10は、雑草等の刈り払い作業に用いられる電動工具である。
図1に示すように、刈払機10は、操作棹30と、操作棹30の前端30aに設けられている刈刃ユニット20と、操作棹30の後端30bに設けられている本体ユニット40を備えている。操作棹30は、中空のパイプ形状を有しており、直線状に伸びている。刈刃ユニット20には、刈刃12を回転可能に取り付けられている。本体ユニット40には、刈刃12を駆動するためのモータ46(図2参照)が収容されている。また、本体ユニット40には、モータ46に電力を供給する電池パック70が着脱可能に取り付けられている。操作棹30の内部には、伝達シャフト32が回転可能に収容されている。伝達シャフト32は、本体ユニット40から刈刃ユニット20まで伸びており、本体ユニット40から刈刃ユニット20へモータ46の出力トルクを伝達する。
【0016】
操作棹30には、利用者が把持するためのハンドル34が設けられている。ハンドル34は、右ハンドル34aと左ハンドル34bによって構成されている。右ハンドル34aには、トリガ式の起動スイッチ33が設けられている。起動スイッチ33は、電気コード36によって本体ユニット40と電気的に接続されている。電気コード36は、本体ユニット40から操作棹30に沿って右ハンドル34aまで配索されている。起動スイッチ33がオン操作されると、本体ユニット40のモータ46が回転し、起動スイッチ33がオフ操作されると、本体ユニット40のモータ46は停止する。
本体ユニット40には、スタンド66が設けられている。スタンド66は、本体ユニット40から突出するように設けられている。スタンド66は、刈払機10が地面に載置された際に、地面に当接して刈払機10を支持する。
【0017】
図2、図3、図4を参照しながら、本体ユニット40の構成について説明する。図2は、本体ユニット40の構成を示す断面図である。図2に示す断面図は、刈刃12の回転軸Y(図7参照)及び操作棹30の中心軸Xを含む切断面における断面を示している。図3は、図2中のIII−III線による断面図を示している。図4は、図2中のIV−IV線による断面図を示している。ここで、操作棹30の中心軸Xは、伝達シャフト32の回転軸Xでもある。
【0018】
図2に示すように、本体ユニット40は、本体ハウジング42を備えている。本体ユニット40の前部40aには、操作棹30の後端30bが固定されている。本体ユニット40の後部40bには、電池パック70が着脱される電池パック装着部64が設けられている。本体ハウジング42の下部には、前述したスタンド66が着脱可能にボルト留めされている。スタンド66の先端部分には、地面等に当接するための接地面66aが形成されている。また、前述した電気コード36は、本体ハウジング42の内部から外部へと伸びており、スタンド66を越えて操作棹30へと配索されている。
【0019】
図3、図4に示すように、スタンド66には、電気コード36を通過させるためのコード通過部68が形成されている。コード通過部68は、スタンド66の周縁から伸びる切欠形状を有している。切欠形状のコード通過部68は、スタンド66の接地面66aの略中央から、本体ユニット40に向かって伸びている。この切欠形状のコード通過部68は、スタンド66の接地面66aから本体ユニット40に向かって、その幅が縮小している。
スタンド66にコード通過部68が形成されていると、刈払機10を地面に載置した際に、スタンド66の接地面66aと地面によって電気コード36が挟まれることを防止することができる。コード通過部68の形状は、本実施例のように切欠形状としてもよいし、スタンド66を貫通する孔形状としてもよい。ただし、コード通過部68を切欠形状とすると、刈払機10の製造時や修理後の再組立時に、電気コード36をコード通過部68に配置しやすい。特に、コード通過部68の幅がその開口側に向かって拡大していると、電気コード36をコード通過部68に配置する作業がより簡単になる。また、切欠形状のコード通過部68がスタンド66の接地面66aから本体ユニット40に向かって伸びていると、コード通過部68を形成したことに伴うスタンド66の強度低下を抑制することができる。
【0020】
図2、図4に示すように、本体ハウジング42には、刈刃12を駆動するためのモータ46と、モータ46の出力シャフト48に相対回転不能に固定されている第1ギヤ50と、第1ギヤ50に係合している第2ギヤ52が設けられている。第2ギヤ52には、連結部材54を介して伝達シャフト32の後端32bが相対回転不能に固定されている。モータ46の出力トルクは、第1ギヤ50及び第2ギヤ52を介して、伝達シャフト32に伝達される。ここで、第2ギヤ52は第1ギヤ50よりも大型であり、第2ギヤ52の歯数は第1ギヤ50の歯数よりも多い。それにより、第1ギヤ50と第2ギヤ52の間で、モータ46の出力トルクが増幅されるようになっている。即ち、第1ギヤ50と第2ギヤ52は、モータ46と伝達シャフト32の間で、モータ46の出力トルクを増幅する第1の減速機構を構成している。モータ46の出力シャフト48には、冷却ファン49が設けられている。
【0021】
図4に示すように、モータ46の回転軸Mは、伝達シャフト32の回転軸Xに対して、下方に位置している。正確に言えば、刈刃12の回転軸Y及び伝達シャフト32の回転軸Xを鉛直面内に位置させるとともに、伝達シャフト32の回転軸Xを水平面内に位置させたときに、モータ46の回転軸Mは、伝達シャフト32の回転軸Xに対して鉛直下方に位置する。この構成によると、利用者がハンドル34を把持して刈り払い作業を行う際に、刈払機10のバランスが安定しやすい。なお、モータ46の回転軸Mは、伝達シャフト32の回転軸Xに対して上方に位置してもよい。この構成でも、刈払機10のバランスが比較的に安定する。
【0022】
次に、図2、図5を参照して、本体ユニット40における電池パック70の取付構造について説明する。図2に示すように、本体ユニット40の後部40bには、電池パック装着部64が形成されている。電池パック装着部64は、電池パック70を着脱可能な構造を有している。図5に示すよう、電池パック装着部64は、電池パック70をスライド可能に受け入れる。図5中の矢印Z1、Z2は、電池パック装着部64における電池パック70のスライド方向を示している。電池パック装着部64における電池パック70のスライド方向は、操作棹30の中心軸Xと略直交している。なお、下向きの矢印Z1は、電池パック70の取り付け時のスライド方向を示しており、上向きの矢印Z2は、電池パック70の取り外し時のスライド方向を示している。このように、電池パック装着部64における電池パック70の取り付け時のスライド方向は下方を向いており、電池パック装着部64における電池パック70の取り外し時のスライド方向は上方を向いている。正確に言えば、刈刃12の回転軸Y及び操作棹30の中心軸Xを鉛直面内に位置させるとともに、操作棹30の中心軸Xを水平面内に位置させたときに、電池パック装着部64における電池パック70の取り付け時のスライド方向が鉛直下方を向き、電池パック装着部64における電池パック70の取り外し時のスライド方向が鉛直上方を向くように構成されている。
【0023】
上記したように、本実施例の刈払機10では、電池パック装着部64における電池パック70のスライド方向(Z1,Z2)が、操作棹30の中心軸Xに対して平行でなく、操作棹30の中心軸Xに対して角度を成すように構成されている。この構成によると、利用者が操作棹30を把持しながら電池パック70を着脱する際に、操作棹30を把持している手が滑りにくく、操作棹30及び電池パック70に力を加えやすい。それにより、電池パック70の着脱を容易に行うことができる。ここで、電池パック70のスライド方向(Z1,Z2)が、操作棹30の中心軸Xに対して必ずしも直交する必要はない。ただし、電池パック70のスライド方向(Z1,Z2)と操作棹30の中心軸Xとが成す角度は、大きいほど好ましく、特に45°以上とすると顕著な効果が得られることが確認されている。
また、本実施例の刈払機10では、電池パック装着部64における電池パック70の取り付け時のスライド方向が下方を向き、電池パック装着部64における電池パック70の取り外し時のスライド方向が上方を向くように構成されている。それにより、スタンド66を利用し、刈払機10を地面に載置した状態で電池パック70を着脱する際に、電池パック70やそれを把持する利用者の手が地面に干渉するようなことがない。
【0024】
ここで、本体ユニット40に装着された電池パック70と、モータ46の回転軸X及び伝達シャフト32の回転軸Yとの位置関係について説明を加える。電池パック70は、本体ユニット40の後部40bに取り付けられており、モータ46の回転軸X及び伝達シャフト32の回転軸Yの延長線上に位置している。また、電池パック70は略直方体の形状を有しており、本体ユニット40に装着された状態で、電池パック70の長手方向は図2中の上下方向を向いている。即ち、本体ユニット40に装着された電池パック70の長手方向は、モータ46の回転軸X及び伝達シャフト32の回転軸Yが並ぶ方向と一致している。このように、モータ46の回転軸X及び伝達シャフト32の回転軸Yの並ぶ方向(即ち、モータ46の出力シャフト48及び伝達シャフト32が並ぶ方向)が、本体ユニット40に装着された電池パック70の長手方向に一致する構造であると、本体ユニット40を比較的に小型化することができる。
【0025】
次に、図2、図3を参照して、本体ユニット40と操作棹30との接続構造について説明する。本体ユニット40の前部40aには、筒状に突出する棹固定部56が設けられている。棹固定部56は、本体ハウジング42にボルト留めされている。棹固定部56には、棹挿入穴58が形成されている。棹挿入穴58には、操作棹30の後端部分(後端30bを含む一部の長さ範囲)が挿入されている。操作棹30の後端部分には、エラストマで形成された筒状のスリーブ38が設けられている。操作棹30の後端部分は、スリーブ38と共に、棹固定部56の棹挿入穴58に挿入されている。棹固定部56には、スリット56aが形成されており、操作棹30の挿入時に棹挿入穴58が拡大するようになっている。棹挿入穴58に挿入された操作棹30は、2本のボルト60、62によって固定されている。
【0026】
図6は、棹固定部56から操作棹30を取り外した状態を示している。図6に示すように、スリーブ38は、操作棹30の外周面に嵌合している。スリーブ38は、テーパ形状を有しており、その一端38aから他端38bに向かって、その径が縮小している。即ち、スリーブ38は、操作棹30の後端30bに向かって、その径が縮小している。スリーブ38がテーパ形状を有していると、操作棹30をスリーブ38と共に棹挿入穴58に挿入しやすい。スリーブ38aの内面には、凸部38pが形成されている。凸部38pは、操作棹30に形成された凹部(貫通孔)30cに係合している。それにより、操作棹30をスリーブ38と共に棹挿入穴58に挿入する際に、操作棹30に対してスリーブ38が移動することが防止される。
棹固定部56の棹挿入穴58は、スリーブ38が固定された操作棹30に対応する形状を有している。図6に示すように、棹挿入穴58には、操作棹30が直接的に挿入される第1部分58aと、操作棹30がスリーブ38と共に挿入される第2部分58cと、第1部分58aと第2部分58cの間に形成された段部58bが設けられている。第1部分58aは、操作棹30の形状に対応するように、軸方向に沿ってその径が一定となっている。第2部分58cは、スリーブ38の形状に対応するように、軸方向に沿ってその径が変化するテーパ形状を有している。
【0027】
操作棹30は、汎用のパイプ材から形成されており、単純な円筒形状を有している。そのことから、操作棹30は、本実施例の刈払機10のみでなく、他の機種にも採用することができる。本実施例の刈払機10では、エンジンを動力源とする刈払機の操作棹を流用している。ただし、操作棹30を複数の機種で共通に採用した場合、刈払機10の製造現場では、操作棹30の誤組付が発生することがある。即ち、本実施例の刈払機10を製造するために用意した操作棹30が、他の機種の製造に用いられてしまうという問題が生じ得る。
上記の問題に対し、本実施例の刈払機10では、操作棹30にスリーブ38を設けておくことによって、操作棹30が他の機種へ組み付けられることを防止している。このように、単純な形状を有する操作棹30に、特有の形状を有するスリーブ38を設けておくことによって、操作棹30が他の機種に組み付けられることを防止することができる。このとき、スリーブ38は、操作棹30を棹挿入穴58に適合させるアダプタ部材として機能する。なお、操作棹30を2つの機種で共通に採用する場合は、一方の機種ではスリーブ38を必要とする構造とし、他方の機種ではスリーブ38を不要とする構造とするとよい。本実施例に関して言えば、操作棹30を共通に用いるエンジンタイプの刈払機では、スリーブ38を不要とする構造となっている。従って、スリーブ38を取り付けた状態では、そのエンジンタイプの刈払機に操作棹30を組み付けることができなくなっている。
【0028】
次に、図7を参照して、刈刃ユニット20の構成について説明する。図7に示すように、刈刃ユニット20には、棹固定部22が形成されている。棹固定部22には、棹挿入穴24が形成されている。棹挿入穴24には、操作棹30の前端部分(前端30aを含む一部の長さ範囲)が挿入されている。刈刃ユニット20には、刈刃シャフト14が回転可能に設けられている。刈刃シャフト14には、円板状の刈刃12が取り付けられている。なお、刈刃シャフト14には、円板状の刈刃12に代えて、ナイロンコード等の紐状の刈刃を取り付けることもできる。刈刃ユニット20には、安全カバー26が設けられている。
【0029】
刈刃ユニット20には、第3ギヤ18と第4ギヤ16が設けられている。第3ギヤ18は、伝達シャフト32の前端32aに相対回転不能に固定されている。第4ギヤ16は、刈刃シャフト14に相対回転不能に固定されているとともに、第3ギヤ18に係合している。第3ギヤ18と第4ギヤ16は、ベベルギヤである。伝達シャフト32からのトルクは、第3ギヤ18及び第4ギヤ16を介して、刈刃シャフト14に伝達される。ここで、第4ギヤ16は第3ギヤ18よりも大型であり、第4ギヤ16の歯数は第3ギヤ18の歯数よりも多い。それにより、第3ギヤ18と第4ギヤ16の間で、伝達シャフト32からのトルクが増幅されるようになっている。即ち、第3ギヤ18と第4ギヤ16は、伝達シャフト32と刈刃シャフト14の間で、伝達シャフト32からのトルクを増幅する第2の減速機構を構成している。刈払機10では、モータ46の出力トルクが、本体ユニット40に設けられた第1ギヤ50及び第2ギヤ52(第1の減速機構)と、刈刃ユニット20に設けられた第3ギヤ18及び第4ギヤ16(第2の減速機構)によって、2段階に増幅されるようになっている。
【0030】
以上のように、刈払機10では、電池パック装着部64における電池パック70のスライド方向が、操作棹30の中心軸Xに対して角度を成すように構成されている。それにより、利用者が操作棹30を把持しながら電池パック70を着脱する際に、操作棹30を把持している手が滑りにくく、電池パック70を着脱する作業がやりやすい。
【0031】
刈払機10では、本体ユニット40のスタンド66に、電気コード36を通過させるためのコード通過部68が形成されている。それにより、刈払機10を地面に載置した際に、スタンド66と地面によって電気コード36が挟まれることがなく、電気コード36の損傷が防止される。
【0032】
刈払機10では、操作棹30の後端部分の外周面に、スリーブ38(アダプタ部材)が固定されており、本体ユニット40には、スリーブ38が固定された操作棹30の後端部分を受け入れる棹挿入穴58が形成されている。この構造によると、操作棹30が他の機種の製造に誤って用いられることを防止することができる。
【0033】
刈払機10では、モータ46の出力トルクを増幅する減速機構が、本体ユニット40と刈刃ユニット20のそれぞれに設けられている。即ち、本体ユニット40では、第1ギヤ50及び第2ギヤ52によって第1の減速機構が構成されており、刈刃ユニット20では、第3ギヤ18及び第4ギヤ16によって第2の減速機構が構成されている。この構造によると、本体ユニット40又は刈刃ユニット20を大型化させることなく、モータ46の出力トルクを大きく増幅することが可能となる。それにより、モータ46に、高回転型(低トルク型)の小型なモータを採用することが可能となる。
【0034】
図8は、本体ユニット40の変形例を示している。図8に示す変形例では、先に説明した本体ユニット40において、第2ギヤ52と伝達シャフト32の連結構造が変更されている。即ち、第2ギヤ52には、駆動側連結シャフト54aが相対回転不能に固定されており、伝達シャフト32には、従動側連結シャフト54bが相対回転不能に固定されている。駆動側連結シャフト54aと従動側連結シャフト54bは、軸方向において互いに隣接しているが、両者の間には隙間が設けられている。
【0035】
駆動側連結シャフト54aと従動側連結シャフト54bには、両者に跨るようにコイルバネ55が巻き回されている。即ち、コイルバネ55の内孔には、その一方の端部から駆動側連結シャフト54aが挿入されており、その他方の端部から従動側連結シャフト54bが挿入されている。コイルバネ55は、素線の断面形状が四角形である角バネである。コイルバネ55の自然形状での内径は、駆動側連結シャフト54a及び従動側連結シャフト54bの外径よりも小さく、コイルバネ55は駆動側連結シャフト54aと従動側連結シャフト54bを締め付けるように弾性変形している。それにより、駆動側連結シャフト54aからのトルクが、コイルバネ55を介して、従動側連結シャフト54bに伝達されるようになっている。
【0036】
コイルバネ55の駆動側連結シャフト54aから従動側連結シャフト54bに向かう巻き方向は、駆動側連結シャフト54aの回転方向と同一方向であり、駆動側連結シャフト54aよりも従動側連結シャフト54bの回転速度が遅いと、コイルバネ55はその内径が拡大するように弾性変形する。従って、例えばモータ46の起動時には、コイルバネ55の内径が拡大することによって、駆動側連結シャフト54aから従動側連結シャフト54bへのトルク伝達が制限される。その結果、刈払機10の運転開始時には、刈刃12が緩やかに駆動される。また、刈刃12が石などに接触し、刈刃12に強い制動力が作用した場合にも、コイルバネ55の内径が拡大することによって、駆動側連結シャフト54aから従動側連結シャフト54bへのトルク伝達が遮断される。それにより、刈刃12の破損や刈払機10のキックバック(接触物からの反作用によって刈払機10が弾かれる事象)が防止される。
一方、駆動側連結シャフト54aよりも従動側連結シャフト54bの回転速度が速いと、コイルバネ55の内径は縮小し、両者は強く連結されるようになる。従って、モータ46が停止した後に、刈刃12が惰性で回転し続けるといったことが防止される。
【0037】
上記したコイルバネ55を用いたトルク伝達構造は、本体ユニット40側に代えて、刈刃ユニット20側に設けることもできる。即ち、駆動側連結シャフト54aを伝達シャフト32の前端32aに設け、従動側連結シャフト54bを第3ギヤ18に設け、駆動側連結シャフト54aと従動側連結シャフト54bをコイルバネ55で連結する構造としてもよい。あるいは、このトルク伝達構造を、モータ46の出力シャフト48と第1ギヤ50との間に設けることも可能である。
【0038】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0039】
10:刈払機
12:刈刃
20:刈刃ユニット
24:棹挿入穴
30:操作棹
32:伝達シャフト
36:電気コード
38:スリーブ
40:本体ユニット
46:モータ
48:出力シャフト
64:電池パック装着部
66:スタンド
68:コード通過部
70:電池パック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作棹と、
前記操作棹の前端に設けられており、刈刃を回転可能に支持する刈込ユニットと、
前記操作棹の後端に設けられている本体ユニットと、
前記刈刃を駆動するモータと、
前記操作棹の中間位置に設けられており、利用者によって把持されるハンドルと、
前記ハンドルに設けられており、前記モータを回転させるためのスイッチを備え、
前記本体ユニットには、前記モータに電力を供給する電池パックをスライド可能に受入れる電池パック装着部が形成されており、
前記電池パック装着部における電池パックのスライド方向は、前記操作棹の中心軸に対して45度以上の角度を成していることを特徴とする刈払機。
【請求項2】
前記電池パック装着部における電池パックのスライド方向は、前記操作棹の中心軸に対して、略直交していることを特徴とする請求項1に記載の刈払機。
【請求項3】
前記本体ユニットは、前記刈払機が地面に載置されたときに地面に当接する接地面を有し、
前記接地面は、前記電池パック装着部に取付けられた電池パックよりも下方に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の刈払機。
【請求項4】
前記操作棹は、前記本体ユニットの前部に設けられており、
前記電池パック装着部は、前記本体ユニットの後部に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の刈払機。
【請求項5】
前記電池パック装着部は、前記操作棹の中心軸の延長線上に位置することを特徴とする請求項4に記載の刈払機。
【請求項6】
前記刈刃の回転軸及び前記操作棹の中心軸を鉛直面内に位置させたときに、前記電池パック装着部における電池パックのスライド方向が、その鉛直面と平行になることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の刈払機。
【請求項7】
前記刈刃の回転軸及び前記操作棹の中心軸を鉛直面内に位置させるとともに、前記操作棹の中心軸を水平面内に位置させたときに、前記電池パック装着部における電池パックの取り付け時のスライド方向が下方を向き、前記電池パック装着部における電池パックの取り外し時のスライド方向が上方を向くことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の刈払機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−55962(P2013−55962A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−282568(P2012−282568)
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2012−233049(P2012−233049)の分割
【原出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】