説明

電池保護回路及び電池保護装置、並びに電池パック

【課題】過放電状態と過充電状態での二次電池の充電を禁止でき、且つデバイスサイズを小さくできる、電池保護回路を提供すること。
【解決手段】複数のセル200H,200Lを有する二次電池を保護する電池保護回路であって、各セルのセル電圧からセル電圧毎に生成した基準電圧VREFH,VREFLを出力する基準電源41H,41Lと、セル電圧のいずれかが第1の所定値を超えるとき充電を禁止する信号を出力する論理和回路44と、基準電圧VREFH,VREFLのいずれかが第2の所定値未満であるとき充電を禁止する信号を出力する否定論理積回路45と、論理和回路44の出力と否定論理積回路45の出力との論理和に基づいて、二次電池の充電の許否を制御する制御回路46とを備える、電池保護回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセルを有する二次電池を保護する電池保護回路及び電池保護装置に関する。また、該電池保護装置を内蔵する電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、二次電池の充電を禁止する機能を備える電源装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。図9は、特許文献1の図10に示される電源装置の回路ブロック図である。この電源装置は、直列接続された二次電池101,115のそれぞれの電池電圧をMOSトランジスタのしきい値電圧を利用して監視するものである。論理和発生回路120は、二次電池101の電池電圧がPチャネルMOSトランジスタ116のしきい値電圧以下の場合又は二次電池115の電池電圧がNチャネルMOSトランジスタ118のしきい値電圧以下の場合、二次電池101又は115が「過放電状態」であるとして、PチャネルMOSトランジスタ504をオフする。これにより、FET−B111がオフするため、充電器108から二次電池101,115への充電電流が遮断される。
【0003】
一方、充放電制御回路102は、二次電池101と115との直列回路の両端電圧を監視し、その両端電圧が「過充電状態」時には、NチャネルMOSトランジスタ505をオンする。これにより、上記同様に、FET−B111がオフするため、充電器108から二次電池101,115への充電電流が遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−225007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図9の回路では、トランジスタ116,118のゲートが二次電池101,115との接続端子に直接接続されているので、静電気耐量が脆弱である。したがって、静電気耐量を向上させるために、ゲート面積の拡大など、デバイスサイズを大きくしなければならない。また、二次電池101,115の充電を禁止するための出力段回路が、過放電状態のときに使用するトランジスタ504と過充電状態のときに使用するトランジスタ505の2つ存在するため、デバイスサイズが大きくなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、過放電状態と過充電状態での二次電池の充電を禁止でき、且つデバイスサイズを小さくできる、電池保護回路及び電池保護装置の提供を目的とする。また、該電池保護装置を内蔵する電池パックの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る電池保護回路は、
複数のセルを有する二次電池を保護する電池保護回路であって、
前記複数のセルのセル電圧からセル電圧毎に生成した基準電圧を出力する基準電源と、
前記セル電圧のいずれかが第1の所定値を超えるとき充電を禁止する信号を出力し、前記セル電圧のいずれもが前記第1の所定値を超えないとき充電を許可する信号を出力する、第1の判定回路と、
前記基準電圧のいずれかが第2の所定値未満であるとき充電を禁止する信号を出力し、前記基準電圧のいずれもが前記第2の所定値未満でないとき充電を許可する信号を出力する第2の判定回路と、
前記第1の判定回路の出力と前記第2の判定回路の出力との論理和に基づいて、前記二次電池の充電の許否を制御する制御回路とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る電池保護装置は、
複数のセルを有する二次電池を保護する電池保護装置であって、
前記複数のセルのセル電圧からセル電圧毎に生成した基準電圧を出力する基準電源と、
前記セル電圧のいずれかが第1の所定値を超えるとき充電を禁止する信号を出力し、前記セル電圧のいずれもが前記第1の所定値を超えないとき充電を許可する信号を出力する、第1の判定回路と、
前記基準電圧のいずれかが第2の所定値未満であるとき充電を禁止する信号を出力し、前記基準電圧のいずれもが前記第2の所定値未満でないとき充電を許可する信号を出力する第2の判定回路と、
前記二次電池の充電の許否を制御する充電制御トランジスタと、
前記第1の判定回路の出力と前記第2の判定回路の出力との論理和に基づいて、前記充電制御トランジスタを制御する制御回路とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る電池パックは、該電池保護装置と前記二次電池とを内蔵するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、過放電状態と過充電状態での二次電池の充電を禁止でき、且つデバイスサイズを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態である保護IC90,保護モジュール回路80及び電池パック100の構成図である。
【図2】保護IC90の詳細なブロック図である。
【図3】Hセル側基準電源41HとLセル側基準電源41Lの回路図である。
【図4】Hセル側過充電検出回路42HとLセル側過充電検出回路42Lの回路図である。
【図5】Hセル側基準電源立ち上がり検出回路43Hの回路図である。
【図6】Lセル側基準電源立ち上がり検出回路43Lの回路図である。
【図7】バイアス源回路52の回路図である。
【図8】レベルシフト回路48の回路図である。
【図9】特許文献1の図10に示される電源装置の回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態の説明を行う。図1は、本発明の一実施形態である保護IC90,保護モジュール回路80及び電池パック100の構成図である。電池パック100は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池200を保護する電池保護装置である保護モジュール回路80を、二次電池200と共に内蔵する。保護モジュール回路80は、外部負荷300及び/又は充電器400が接続され得る入出力端子5,6と二次電池200の両極が接続され得る端子3,4との間の電源経路9(9a,9b)の導通/遮断を切り替えるFET1,2と、FET1,2の切り替え動作を制御する保護IC90とを備える。入出力端子5,6は、二次電池200から外部負荷300に給電するための給電端子である。二次電池200は、2つのセル200Hとセル200Lとが直列に接続された構成を有する。
【0013】
電池パック100は、外部負荷300に、内蔵されたり、外付けされたりする。外部負荷300は、例えば、人が携帯可能な電子機器や電気機器である。その具体例として、音楽やビデオ等のプレーヤー、ヘッドセット、携帯電話などの無線通信機能を備えた通信端末装置、PDAやモバイルパソコン等の情報端末装置、カメラ、ゲーム機などが挙げられる。
【0014】
FET1,2は、二次電池200の負極側端子4と負側入出力端子6との間の負側電源経路9bの導通/遮断の切り替えが可能なように直列に接続されたスイッチング素子である。FET1は、電源経路9を遮断する第1の遮断手段であり、FET2は、電源経路9を遮断する第2の遮断手段である。より詳細には、FET1は、電源経路9を充電方向に流れる二次電池200の充電電流の遮断/導通を切り替え可能な第1の切替手段であり、FET2は、充放電経路9を放電方向に流れる二次電池200の放電電流の遮断/導通を切り替え可能な第2の切替手段である。充電制御用FET1がオン状態で二次電池200の充電が許可され、オフ状態で二次電池200の充電が禁止される。また、放電制御用FET2がオン状態で二次電池200の放電が許可され、オフ状態で二次電池200の放電が禁止される。
【0015】
FET1,2は、例えば、寄生ダイオードを有するMOSFETである。FET1は、その寄生ダイオード1aの順方向が二次電池200の放電方向になる向きで負極側端子4と負側入出力端子6との間に配置され、FET2は、その寄生ダイオード2aの順方向が二次電池200の充電方向になる向きで負極側端子4と負側入出力端子6との間に配置される。なお、FET1,2は、コレクタエミッタ間に図示の向きにダイオードが構成されたバイポーラトランジスタに置き換えてもよいし、IGBTなどの半導体素子に置き換えてもよい。
【0016】
保護IC90は、二次電池200から給電されて二次電池200を保護する集積回路である。保護IC90は、例えば、二次電池200を過充電から保護する動作(過充電保護動作)、二次電池200を過放電から保護する保護動作(過放電保護動作)、二次電池200を充電する方向に過電流が流れることを防止する充電過電流保護動作、二次電池200を放電する方向に過電流が流れることを防止する放電過電流保護動作を行う。これらの保護動作は、各保護動作の所定の作動条件が成立した場合に、行われる。
【0017】
保護IC90は、例えば、二次電池200の過充電保護動作の作動条件が成立した場合、FET1をオフする。これにより、FET2のオンオフ状態にかかわらず、二次電池200が過充電されることを防止できる。
【0018】
例えば、保護IC90の検出器21は、保護IC90のVDD端子とVBL端子との間の電圧を検出することによって、二次電池200を構成する上側のセル200Hの電池電圧(セル電圧)を監視し、保護IC90のVBL端子とVSS端子との間の電圧を検出することによって、二次電池200を構成する下側のセル200Lの電池電圧(セル電圧)を監視している。VDD端子は、正側入出力端子5と二次電池200のセル200Hの正極側端子3との間の正側電源経路9aに、正側電源経路9aに接続された抵抗R1と負側電源経路9bに接続されたキャパシタC1との接続点を介して接続される。VBL端子は、セル200Hの負極とセル200Lの正極との間の接続点に接続される。VSS端子は、負側電源経路9bに接続される。
【0019】
セル200Hのセル電圧は、VBL端子基準で検出される正極側端子3の端子電圧(言い換えれば、VBL端子基準で検出されるVDD端子の端子電圧)に相当する。また、セル200Lのセル電圧は、負極側端子4基準で検出されるVBL端子の端子電圧(言い換えれば、VSS端子基準で検出されるVBL端子の端子電圧)に相当する。
【0020】
検出器21は、所定の過充電検出電圧(しきい値電圧)を超えるセル電圧をセル200Hと200Lの少なくとも一方について検知することにより、二次電池200のセル200Hと200Lの少なくとも一方の過充電が検出されたとして、過充電検出信号を出力する。過充電検出信号を検知した充電制御用論理回路25は、所定の遅延時間の経過を待って、保護IC90のCOUT端子から“L”レベルの信号を出力することによって、充電制御用FET1をオフする。これにより、二次電池200のセル200H,200Lが過充電されることを防止できる。なお、所定の遅延時間は、所定の過充電検出電圧を超えるセル電圧が検出器21によって検出されてからの時間である。
【0021】
また、保護IC90は、例えば、二次電池200の過放電保護動作の作動条件が成立した場合、FET2をオフする。これにより、FET1のオンオフ状態にかかわらず、二次電池200が過放電されることを防止できる。
【0022】
例えば、検出器21は、所定の過放電検出電圧(しきい値電圧)未満のセル電圧をセル200Hと200Lの少なくとも一方について検知することにより、二次電池200のセル200Hと200Lの少なくとも一方の過放電が検出されたとして、過放電検出信号を出力する。過放電検出信号を検知した放電制御用論理回路24は、所定の遅延時間の経過を待って、保護IC90のDOUT端子から“L”レベルの信号を出力することによって、放電制御用FET2をオフする。これにより、二次電池200のセル200H,200Lが過放電されることを防止できる。なお、所定の遅延時間は、所定の過放電検出電圧未満のセル電圧が検出器21によって検出されてからの時間である。
【0023】
また、保護IC90は、例えば、二次電池200の充電過電流保護動作の作動条件が成立した場合、FET1をオフする。これにより、FET2のオンオフ状態にかかわらず、二次電池200を充電する方向の過電流(充電過電流)が流れることを防止できる。
【0024】
例えば、検出器21は、保護IC90のV−端子とVSS端子との間の電圧を検出することによって、負側入出力端子6と負極側端子4との間の電圧である負側端子間電圧P−を監視している。V−端子は、充電制御用FET1と負側入出力端子6との間の負側電源経路9bにおいて、負側入出力端子6に接続される。また、負側端子間電圧P−は、負極側端子4に対する負側入出力端子6の端子電圧に相当する。
【0025】
検出器21は、所定の充電過電流検出電圧(しきい値電圧)以下の負側端子間電圧P−を検知することにより、負側入出力端子6に流れる異常電流として充電過電流が検出されたとして、充電過電流検出信号を出力する。充電過電流検出信号を検知した充電制御用論理回路25は、所定の遅延時間の経過を待って、保護IC90のCOUT端子から“L”レベルの信号を出力することによって、充電制御用FET1をオフする。これにより、保護IC90の動作モードは、電源経路9に異常電流が流れることを防止する異常電流防止モードとして、充電制御用FET1がオフされた状態の充電過電流防止モードに移行し、二次電池200に充電過電流が流れることを防止できる。なお、所定の遅延時間は、所定の充電過電流検出電圧以下の負側端子間電圧P−が検出器21によって検出されてからの時間である。
【0026】
ここで、充電制御用FET1が少なくともオンしている状態で、二次電池200を充電する充電電流が流れることにより負側端子間電圧P−が低下するのは、充電制御用FET1のオン抵抗による電圧降下が生ずるからである。また、放電制御用FET2がオンしていれば、放電制御用FET2のオン抵抗による電圧降下分を含んで負側端子間電圧P−が低下し、放電制御用FET2がオフしていれば、放電制御用FET2の寄生ダイオード2aによる電圧降下分を含んで負側端子間電圧P−が低下する。
【0027】
また、保護IC90は、例えば、二次電池200の放電過電流保護動作の作動条件が成立した場合、FET2をオフする。これにより、FET1のオンオフ状態にかかわらず、二次電池200を放電する方向の過電流(放電過電流)が流れることを防止できる。
【0028】
例えば、検出器21は、所定の放電過電流検出電圧(しきい値電圧)以上の負側端子間電圧P−を検知することにより、負側入出力端子6に流れる異常電流として放電過電流が検出されたとして、放電過電流検出信号を出力する。放電過電流検出信号を検知した放電制御用論理回路24は、所定の遅延時間の経過を待って、保護IC90のDOUT端子から“L”レベルの信号を出力することによって、放電制御用FET2をオフする。これにより、保護IC90の動作モードは、電源経路9に異常電流が流れることを防止する異常電流防止モードとして、放電制御用FET2がオフされた状態の放電過電流防止モードに移行し、二次電池200に放電過電流が流れることを防止できる。なお、所定の遅延時間は、所定の放電過電流検出電圧以上の負側端子間電圧P−が検出器21によって検出されてからの時間である。
【0029】
ここで、放電制御用FET2が少なくともオンしている状態で、二次電池200を放電する放電電流が流れることにより負側端子間電圧P−が上昇するのは、放電制御用FET2のオン抵抗による電圧上昇が生ずるからである。また、充電制御用FET1がオンしていれば、充電制御用FET1のオン抵抗による電圧上昇分を含んで負側端子間電圧P−が上昇し、充電制御用FET1がオフしていれば、充電制御用FET1の寄生ダイオード1aによる電圧上昇分を含んで負側端子間電圧P−が上昇する。
【0030】
次に、保護IC90内の、検出器21,放電制御用論理回路24及び充電制御用論理回路25について詳細に説明する。図2は、保護IC90の詳細なブロック図である。
【0031】
保護IC90は、複数のセルのセル電圧からセル電圧毎に生成した基準電圧を出力する基準電源回路を備えている。図2には、この基準電源回路の構成要素として、Hセル側基準電源41H及びLセル側基準電源41Lが例示されている。
【0032】
Hセル側基準電源41Hは、セル200Hのセル電圧から一定の基準電圧VREFHを生成して出力する。Lセル側基準電源41Lは、セル200Lのセル電圧から一定の基準電圧VREFLを生成して出力する。Hセル側基準電源41HとLセル側基準電源41Lは、セル電圧を降圧して、一定の基準電圧を生成する。例えば、トランジスタをダイオード接続した回路によって、セル電圧を降圧した一定の基準電圧が生成できる。
【0033】
また、保護IC90は、複数のセルのセル電圧のいずれかが第1の所定値を超えているとき充電を禁止する信号を出力し、複数のセルのセル電圧のいずれもが第1の所定値を超えていないとき充電を許可する信号を出力する、第1の判定回路を備えている。図2には、この第1の判定回路の構成要素として、抵抗R3〜R6と、Hセル側過充電検出回路42Hと、Lセル側過充電検出回路42Lと、論理和回路44とが例示されている。第1の判定回路は、二次電池200の電池電圧(VDD−VSS)を電源電圧として動作する。
【0034】
Hセル側過充電検出回路42Hは、セル200Hのセル電圧の抵抗R3,R4による分圧電圧VBHが基準電圧VREFHを超えているとき、充電を禁止する信号を出力し(検出信号OVCHがハイレベル)、分圧電圧VBHが基準電圧VREFHを超えていないとき、充電を許可する信号を出力する(検出信号OVCHがローレベル)。Lセル側過充電検出回路42Lは、セル200Lのセル電圧の抵抗R5,R6による分圧電圧VBLが基準電圧VREFLを超えているとき、充電を禁止する信号を出力し(検出信号OVCLがハイレベル)、分圧電圧VBLが基準電圧VREFLを超えていないとき、充電を許可する信号を出力する(検出信号OVCLがローレベル)。論理和回路44は、Hセル側過充電検出回路42Hの出力信号とLセル側過充電検出回路42Lの出力信号との論理和を出力する。
【0035】
このような回路構成によって、論理和回路44は、セル200H,200Lのセル電圧のいずれかが第1の所定値を超えているとき充電を禁止する信号を出力でき、セル200H,200Lのいずれもが第1の所定値を超えていないとき充電を許可する信号を出力できる。
【0036】
また、保護IC90は、上述の基準電源回路によってセル電圧毎に生成されて出力された複数の基準電圧のいずれかが第2の所定値未満であるとき充電を禁止する信号を出力し、それらの複数の基準電圧のいずれもが第2の所定値未満でないとき充電を許可する信号を出力する、第2の判定回路を備えている。図2には、この第2の判定回路の構成要素として、Hセル側基準電源立ち上がり検出回路43Hと、Lセル側基準電源立ち上がり検出回路43Lと、否定論理積回路45とが例示されている。第2の判定回路は、二次電池200の電池電圧(VDD−VSS)を電源電圧として動作する。
【0037】
Hセル側基準電源立ち上がり検出回路43Hは、基準電圧VREFHが第2の所定値未満であるとき、充電を禁止する信号を出力し(論理信号SHがローレベル)、基準電圧VREFHが第2の所定値未満でないとき、充電を許可する信号を出力する(論理信号SHがハイレベル)。Lセル側基準電源立ち上がり検出回路43Lは、基準電圧VREFLが第2の所定値未満であるとき、充電を禁止する信号を出力し(論理信号SLがローレベル)、基準電圧VREFLが第2の所定値未満でないとき、充電を許可する信号を出力する(論理信号SLがハイレベル)。否定論理積回路45は、Hセル側基準電源立ち上がり検出回路43Hの出力信号とLセル側基準電源立ち上がり検出回路43Lの出力信号との否定論理積を出力する。
【0038】
このような回路構成によって、否定論理積回路45は、基準電圧VREFH,VREFLのいずれかが第2の所定値未満であるとき充電を禁止する信号を出力でき、基準電圧VREFH,VREFLのいずれもが第2の所定値未満でないとき充電を許可する信号を出力できる。
【0039】
また、保護IC90は、上述の第1の判定回路の出力と第2の判定回路の出力との論理和に基づいて、二次電池の充電の許否を制御する制御回路を備えている。図2には、この制御回路として、制御回路46が例示されている。制御回路46は、論理和回路44の出力信号と否定論理積回路45の出力信号との論理和として、論理和信号COUTLを出力する論理和回路47を備えている。
【0040】
したがって、上述の、基準電源回路と、第1の判定回路と、第2の判定回路と、制御回路とを備える保護IC90によれば、過放電状態と過充電状態で二次電池の充電を禁止でき、且つ保護ICのデバイスサイズを小さくできる。例えば、セル200H,200Lの電極が接続されるVDD,VBL,VSSの各端子にトランジスタのゲートが直接接続される構造ではないので、静電気に強く、静電気耐量を向上させるためにゲートサイズ等のサイズを大きくする必要がない。また、上述の第1の判定回路の出力と第2の判定回路の出力との「論理和」に基づいて、二次電池の充電の許否を制御するので、過放電状態のときと過充電状態のときの充電禁止回路をまとめることができるため、デバイスサイズを小さくできる。例えば、図9に示されたPチャネルMOSトランジスタ504は、少なくとも不要となる。また、基準電源回路は、保護ICにもともと存在するリソースを再利用できるので、新たな回路を設ける必要がなく、面積縮小効果が高い。
【0041】
ところで、制御回路46は、論理和回路47から出力された論理和信号COUTLに基づいて、COUT端子に外部接続される充電制御用FET1(図1参照)を駆動する駆動回路を備えている。図2には、この駆動回路の構成要素として、レベルシフト回路48と、CMOSインバータ51とが例示されている。
【0042】
レベルシフト回路48は、VSS端子電圧をローレベルとしVDD端子電圧をハイレベルとする論理和信号COUTLを、V−端子電圧をローレベルとしVDD端子電圧をハイレベルとする論理信号COUTLLに、論理を反転させずに電圧変換する。論理信号COUTLLがローレベルのとき、PチャネルMOSFET49がオンするので、充電制御用FET1がオンする(充電許可)。論理信号COUTLLがハイレベルのとき、NチャネルMOSFET50がオンするので、充電制御用FET1はオフする(充電禁止)。
【0043】
図3〜8は、図2に例示した回路構成の具体例である。トランジスタ等の各回路要素間の接続関係の説明については、図から明らかなため、省略又は簡略する。また、各図のトランジスタ記号において、ゲートの線が1本のトランジスタは、エンハンスメント型を表し、ゲートの線が2本のトランジスタは、デプレッション型を表す。
【0044】
図3は、Hセル側基準電源41HとLセル側基準電源41Lの回路図である。Hセル側基準電源41Hは、デプレッション型NチャネルMOSトランジスタM1とエンハンスメント型NチャネルMOSトランジスタM2とを備え、トランジスタM1のゲート及びソースとトランジスタM2のゲート及びドレインとが共通に接続されている。トランジスタM1のドレインは、VDD端子に接続され、トランジスタM2のソースは、VBL端子に接続される。図3の構成により、トランジスタM1のソースとトランジスタM2のドレインとの接続点から、セル200Hのセル電圧から生成された一定の基準電圧VREFHが出力される。
【0045】
Lセル側基準電源41Lについても、Hセル側基準電源41Hと同様の構成である。したがって、図3の構成により、デプレッション型NチャネルMOSトランジスタM3のソースとエンハンスメント型NチャネルMOSトランジスタM4のドレインとの接続点から、セル200Lのセル電圧から生成された一定の基準電圧VREFLが出力される。
【0046】
図4は、Hセル側過充電検出回路42HとLセル側過充電検出回路42Lの回路図である。過充電検出回路42H,42Lは、VSS端子とVDD端子との間の電位差である電源電圧VDDで動作するコンパレータである。非反転入力端子に分圧電圧VBH,VBLが入力され、反転入力端子に基準電圧VREFH,VREFLが入力される。したがって、図4の構成により、過充電検出回路42Hは、分圧電圧VBHが基準電圧VREFHを超えているとき、充電を禁止する信号を出力し(信号OVCHがハイレベル)、分圧電圧VBHが基準電圧VREFHを超えていないとき、充電を許可する信号が出力する(信号OVCHがローレベル)。過充電検出回路42Lについても同様である。
【0047】
図5は、Hセル側基準電源立ち上がり検出回路43Hの回路図である。立ち上がり検出回路43Hは、ゲートに基準電圧VREFHが入力されるPチャネルMOSトランジスタM5と、バイアス源回路52によって生成されたバイアス電圧信号NBI(図7参照)が入力されるNチャネルMOSトランジスタM6とを備える。
【0048】
図7は、バイアス源回路52の回路図である。二次電池200のセル200Hの正極とセル200Lの負極との間の両端電圧(電源電圧VDD)がPチャネルMOSトランジスタM12のしきい値電圧を超えると、トランジスタM12はオンする。トランジスタM12のオンにより、カレントミラー(M16,M17)が動作するため、ダイオード接続されたトランジスタM18に一定の順方向電圧がバイアス電圧NBIとして発生する。電源電圧VDDが更に大きくなると、抵抗R7の両端電圧がトランジスタM14のしきい値電圧を超えることにより電流制限回路(R7,M14)が動作するため、トランジスタM15がオフする。これにより、カレントミラー(M16,M17)の動作が停止する。これにより、バイアス電圧NBIは0Vになる。
【0049】
したがって、図5において、セル200Hのセル電圧が過放電状態の低電圧であるとき、バイアス電圧NBIによりトランジスタM6がオンするため、論理信号SHがローレベルになる(充電を禁止する信号が出力される)。一方、セル200Hのセル電圧が過放電状態のときよりも高い正常電圧のとき、基準電圧VREFHは所期の一定の目標値まで立ち上がっている一方で、バイアス電圧NBIは0Vのため、論理信号SHがハイレベルになる(充電を許可する信号が出力される)。なお、基準電圧VREFHの目標値は、電源電圧VDDからトランジスタM5のしきい値電圧を引いた電圧よりも低い値である。
【0050】
図6は、Lセル側基準電源立ち上がり検出回路43Lの回路図である。セル200Lのセル電圧が過放電状態の低電圧であるとき、バイアス電圧NBIによりトランジスタM11がオンし、且つバイアス電圧PBIによりトランジスタM7,M10がオンしているので、論理信号SLがローレベルになる(充電を禁止する信号が出力される)。一方、セル200Lのセル電圧が過放電状態のときよりも高い正常電圧のとき、基準電圧VREFLは所期の一定の目標値まで立ち上がっている一方で、バイアス電圧NBIがトランジスタM11のしきい値電圧未満となり、電位差(VDD−PBL)がトランジスタM7のしきい値電圧未満となる。これにより、トランジスタM8,M9はオンし、トランジスタM7,M10,M11はオフするため、論理信号SLがハイレベルになる(充電を許可する信号が出力される)。
【0051】
図8は、レベルシフト回路48の回路図である。レベルシフト回路48は、エンハンスメント型PチャネルMOSトランジスタM19と、デプレッション型NチャネルMOSトランジスタM20と、抵抗R8と、反転回路53とを備える。論理和信号COUTLがローレベルのとき、論理信号COUTLLがローレベルとなり(充電許可)、論理和信号COUTLがハイレベルのとき、論理信号COUTLLがハイレベルとなる(充電禁止)。二次電池電圧(VDD−VSS)がMOSトランジスタのしきい値電圧で決定される動作下限電圧未満になると、二次電池200で駆動している回路(論理和回路44,47、否定論理積回路45等)は動作不能となるため、COUTLの出力論理は(VDD−VSS)に対して不定値となる。しかしながら、充電器400(図1参照)の電圧(VDD−V−)で動作するレベルシフト回路48ではCOUTLの不定値はハイレベルと認識されるため、レベルシフト回路48は、ハイレベルの論理信号COUTLLを出力する。これにより、充電制御用FET1をオフできる。このように、二次電池電圧(VDD−VSS)が動作下限電圧未満になっても、充電禁止状態は継続される。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形、改良及び置換を加えることができる。
【0053】
例えば、二次電池200を構成するセルの直列数が2つの場合を例示したが、3つ以上ある場合も同様に考えることができる。また、例えば、充電制御用FET1と放電制御用FET2は、図示の配置位置を互いに置換してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 充電制御用FET
1a 寄生ダイオード
2 放電制御用FET
2a 寄生ダイオード
3 正極側端子
4 負極側端子
5 正側入出力端子
6 負側入出力端子
9a 正側電源経路
9b 負側電源経路
46 制御回路
48 レベルシフト回路
51 CMOSインバータ
52 バイアス源回路
53 CMOSインバータ
80 保護モジュール回路
90 保護IC
100 電池パック
200 二次電池
200H,200L セル
300 外部負荷
400 充電器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルを有する二次電池を保護する電池保護回路であって、
前記複数のセルのセル電圧からセル電圧毎に生成した基準電圧を出力する基準電源と、
前記セル電圧のいずれかが第1の所定値を超えるとき充電を禁止する信号を出力し、前記セル電圧のいずれもが前記第1の所定値を超えないとき充電を許可する信号を出力する、第1の判定回路と、
前記基準電圧のいずれかが第2の所定値未満であるとき充電を禁止する信号を出力し、前記基準電圧のいずれもが前記第2の所定値未満でないとき充電を許可する信号を出力する、第2の判定回路と、
前記第1の判定回路の出力と前記第2の判定回路の出力との論理和に基づいて、前記二次電池の充電の許否を制御する制御回路とを備えることを特徴とする、電池保護回路。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記論理和を出力する論理和回路と、
前記論理和に基づいて、前記二次電池の充電の許否を制御する充電制御トランジスタを駆動する駆動回路とを含む、請求項1に記載の電池保護回路。
【請求項3】
前記駆動回路は、
前記論理和をレベルシフトするレベルシフト回路を含み、
前記レベルシフト回路は、前記第1の判定回路と前記第2の判定回路と前記論理和回路の電源電圧が所定の下限電圧未満のとき、前記充電制御トランジスタをオフにする論理を出力する、請求項2に記載の電池保護回路。
【請求項4】
前記基準電源は、デプレッション型NチャネルMOSFETとエンハンスメント型NチャネルMOSFETを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の電池保護回路。
【請求項5】
前記第1の判定回路は、前記基準電圧に基づいて、前記セル電圧が前記第1の所定値を超えるか否かについて判定する、請求項1から4のいずれか一項に記載の電池保護回路。
【請求項6】
複数のセルを有する二次電池を保護する電池保護装置であって、
前記複数のセルのセル電圧からセル電圧毎に生成した基準電圧を出力する基準電源と、
前記セル電圧のいずれかが第1の所定値を超えるとき充電を禁止する信号を出力し、前記セル電圧のいずれもが前記第1の所定値を超えないとき充電を許可する信号を出力する、第1の判定回路と、
前記基準電圧のいずれかが第2の所定値未満であるとき充電を禁止する信号を出力し、前記基準電圧のいずれもが前記第2の所定値未満でないとき充電を許可する信号を出力する第2の判定回路と、
前記二次電池の充電の許否を制御する充電制御トランジスタと、
前記第1の判定回路の出力と前記第2の判定回路の出力との論理和に基づいて、前記充電制御トランジスタを制御する制御回路とを備えることを特徴とする、電池保護装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電池保護装置と前記二次電池とを内蔵する電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−222865(P2012−222865A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83164(P2011−83164)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】