説明

電池監視装置

【課題】監視手段と制御手段との間を絶縁した状態で信号伝達を可能とする手段、および暗電流モード時に高速信号伝達部に電力供給する手段を別途設けることなく、絶縁信号伝達手段の高速信号伝達部を起動可能な電池監視装置を提供する。
【解決手段】監視回路3およびマイコン4を電気的に絶縁した状態で、マイコン4側から監視回路3側へ信号を伝達する絶縁素子5を備え、絶縁素子5は、マイコン4側に設けられた一次側要素51から監視回路3側に設けられた二次側要素52への信号伝達を高速化するための高速信号伝達部52bを有し、高速信号伝達部52bは、組電池1からの電力供給により駆動されるように構成され、監視回路3および絶縁素子5には、暗電流モード時に、マイコン4から二次側要素52に伝達された信号に基づいて高速信号伝達部52bを起動するための電力を生成する電力生成部6が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セルが複数直列に接続された組電池を監視する電池監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池監視装置は、主たる構成要素として、組電池の電池状態(例えば、電池セルの電圧変動)を監視する監視回路(監視手段)、および監視回路を制御する制御手段としてのマイクロコンピュータ(以下、マイコンと略称する。)を備えている。
【0003】
電池監視装置における監視回路は、監視対象である組電池から電力供給されることで駆動するように構成されており、制御手段は、組電池と異なる補機電池等から電力供給されることで駆動するように構成されている。つまり、監視回路は、高電圧で駆動する高電圧系を構成するのに対して、制御手段は低電圧で駆動する低電圧系を構成する。
【0004】
このような電池監視装置では、低電圧系である制御手段を保護するために、監視回路と制御手段との間を電気的に絶縁した状態で制御手段から監視回路へ信号を伝達可能とする絶縁信号伝達手段(絶縁素子)を介して接続する構成が採用されている(例えば、特許文献1参照)。なお、一般的に、絶縁信号伝達手段としては、監視回路側に構成要素に電力供給不要なフォトトランジスタ等で構成されたフォトカプラが採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−232417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電池監視装置では、組電池の各電池セルの過放電状態における急速な劣化の進行や、過充電状態による故障から保護するため、過充電や過放電を正確かつ高速に検出することが望まれている。
【0007】
そこで、本発明者らは、絶縁信号伝達手段として、組電池を電源とし、制御手段側から監視手段側への信号伝達を高速化するための高速信号伝達部を有するもの(例えば、高速ロジックIC等を有するフォトICカプラ)の適用を検討している。
【0008】
しかし、一般に、組電池を用いるシステムでは、組電池における電力消費を抑えるために、組電池から電池監視装置を含む各種電気機器への電力供給を遮断する暗電流モードが設けられており、当該暗電流モード時には、高速信号伝達部への電力供給が遮断されて、監視手段と制御手段との間で信号伝達ができなくなってしまう。なお、従来の如く、絶縁信号伝達手段として、フォトカプラを用いる場合には、信号の伝達速度が低速となるものの、組電池からの電力供給がなくとも監視手段と制御手段との間で信号伝達を行うことが可能である。
【0009】
これに対して、暗電流モード時において絶縁信号伝達手段の高速信号伝達部を起動するために、監視手段と制御手段との間を絶縁した状態で信号伝達を可能とする手段(例えば、フォトカプラ)を別途設けることが考えられるが、電池監視装置の高コスト化を招くといった問題がある。
【0010】
また、低電圧系である制御手段側に、暗電流モード時に高速信号伝達部に電力供給する手段を別途設けることも考えられるが、この場合にも電池監視装置の高コスト化を招くといった問題がある。
【0011】
本発明は上記点に鑑みて、監視手段と制御手段との間を絶縁した状態で信号伝達を可能とする手段、および暗電流モード時に高速信号伝達部に電力供給する手段を別途設けることなく、絶縁信号伝達手段の高速信号伝達部を起動可能な電池監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、電池セル(10)を複数直列に接続して構成される組電池(1)を監視する電池監視装置であって、組電池(1)からの電力供給により駆動され、組電池(1)の電池状態を監視する監視手段(3)と、監視手段(3)、および監視手段(3)の作動を制御する制御手段(4)を電気的に絶縁した状態で、制御手段(4)側から監視手段(3)側へ信号を伝達する絶縁信号伝達手段(5)と、を備え、絶縁信号伝達手段(5)は、制御手段(4)側に設けられた一次側要素(51)から監視手段(3)側に設けられた二次側要素(52)への信号伝達を高速化するための高速信号伝達部(52b)を有し、高速信号伝達部(52b)は、組電池(1)からの電力供給により駆動されるように構成され、監視手段(3)および絶縁信号伝達手段(5)には、組電池(1)から監視手段(3)および高速信号伝達部(52b)それぞれへの電力供給を遮断する暗電流モード時に、一次側要素(51)から二次側要素(52)に伝達された信号に基づいて高速信号伝達部(52b)を起動するための電力を生成する電力生成手段(6)が設けられていることを特徴とする。
【0013】
これによれば、暗電流モード時に、絶縁信号伝達手段(5)の二次側要素(52)に伝達された信号に基づいて高速信号伝達部(52b)を起動するための電力を生成することができるので、監視手段(3)と制御手段(4)との間を絶縁した状態で信号伝達する手段、および暗電流モード時に高速信号伝達部(52b)に電力供給する手段を別途設けることなく、高速信号伝達部(52b)を起動することが可能となる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の電池監視装置において、監視手段(3)には、暗電流モード時に組電池(1)から高速信号伝達部(52b)への電力供給を遮断する電力遮断手段(33)が設けられており、電力生成手段(6)は、絶縁信号伝達手段(5)の一次側要素(51)から二次側要素(52)に伝達された信号を電荷として蓄積する蓄電手段(34)を有し、蓄電手段(34)は、蓄積された電荷量が所定値を超えたときに、電力遮断手段(33)へ電力供給して組電池(1)から高速信号伝達部(52b)への電力供給の遮断を解除するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
このように、絶縁信号伝達手段(5)の一次側要素(51)から二次側要素(52)に伝達された信号を電荷として蓄積すると共に、蓄積された電荷を利用して、組電池(1)から高速信号伝達部(52b)への電力供給の遮断を解除することで、高速信号伝達部(52b)を起動することができる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の電池監視装置において、電力生成手段(6)は、絶縁信号伝達手段(5)の一次側要素(51)から二次側要素(52)に伝達される信号を電荷として蓄積する蓄電手段(34)を有し、蓄電手段(34)は、蓄積された電荷量が所定値を超えたときに、高速信号伝達部(52b)へ電力供給するように構成されていることを特徴とする。
【0017】
このように、制御手段(4)から二次側要素(52)に伝達された信号を電荷として蓄積すると共に、蓄積された電荷を利用して、高速信号伝達部(52b)へ電力供給することで、高速信号伝達部(52b)を起動することができる。
【0018】
ところで、高速信号伝達部(52b)の起動が完了した後も、蓄電手段(34)による電荷の蓄積が継続されると、制御手段(4)から監視手段(3)への信号伝達が妨げられる虞がある。
【0019】
そこで、請求項4に記載の発明では、請求項2または3に記載の電池監視装置において、電力生成手段(6)は、高速信号伝達部(52b)の起動が完了した後、蓄電手段(34)における電荷の蓄積を停止する電荷蓄積停止手段(54)を有することを特徴とする。
【0020】
これによれば、高速信号伝達部(52b)の起動が完了した後、蓄電手段(34)による電荷の蓄積を停止するので、蓄電手段(34)による電荷の蓄積が制御手段(4)から監視手段(3)への信号伝達の妨げとなることを抑制することができる。
【0021】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係る電池監視装置を含む組電池制御システムの全体構成図である。
【図2】第1実施形態に係る電池監視装置の詳細を示す構成図である。
【図3】第2実施形態に係る電池監視装置の詳細を示す構成図である。
【図4】第1実施形態に係る電池監視装置の変形例を示す構成図である。
【図5】第2実施形態に係る電池監視装置の変形例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0024】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1、図2に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る電池監視装置を含む組電池制御システムの全体構成を示している。
【0025】
本実施形態では、車載高圧バッテリである組電池1の制御システムに本発明の電池監視装置2を適用している。図1に示すように、本実施形態の組電池制御システムは、主たる構成として組電池1および電池監視装置2を備える。
【0026】
本実施形態の組電池1は、車両走行用の電動機(図示略)等の各種電気機器に電力を供給するものである。具体的には、組電池1は、リチウムイオン電池等からなる電池セル10を複数直列に接続したもので、互いに隣接する所定数の電池セル10毎にグループ化した複数の単位電池Biの直列接続体として構成されている。なお、図1では、1つの単位電池Biを示しているが、実際には当該単位電池Biが複数設けられており、複数の単位電池Biが直列接続されることで組電池1が構成されている。
【0027】
このように構成される組電池1には、検出ラインを介して電池監視装置2が接続されている。この電池監視装置2は、組電池1を構成する各電池セル10の電池状態(過放電状態、過充電状態等)を監視する過充放電検出機能を有する装置である。なお、過放電状態は、各電池セル10の両端の電圧が信頼性の低下を招く過度な低電圧となる異常状態を意味し、過充電状態は、各電池セル10の両端の電圧が信頼性の低下を招く過度な高電圧となる異常状態を意味する。
【0028】
具体的には、電池監視装置2は、主たる構成要素として、各電池セル10の状態を監視する監視手段としての監視回路3、監視回路3等の作動を制御する制御手段としてのマイコン4、および監視回路3とマイコン4との間を電気的に絶縁した状態で信号伝達を可能とする絶縁素子5を備えている。
【0029】
この監視回路3は、高電圧の組電池1を電源とし、マイコン4は、図示しない低電圧の補助バッテリ(例えば12Vバッテリ)を電源としている。つまり、本実施形態の監視回路3は、高電圧で駆動する高電圧系を構成するのに対して、制御手段であるマイコン4は低電圧で駆動する低電圧系を構成する。
【0030】
監視回路3は、複数の電池セル10の両極端子に検出ラインを介して接続され、接続された各電池セル10の両端電圧を検出し、その結果をマイコン4側へ出力するように構成されている。なお、本実施形態の監視回路3は、単位電池Bi毎に設けられている。
【0031】
監視回路3には、複数の電池セル10の両端電圧を検出する電圧検出部31、組電池1からの電圧を監視回路3の駆動電圧に変換する電源部32、および組電池1から各種制御機器への電力供給を遮断可能なスイッチ回路33が設けられている。
【0032】
本実施形態の電圧検出部31は、監視する電池セル10に接続された複数の選択スイッチを有し、任意の選択スイッチをオンオフ可能に構成されたマルチプレクサ(図示略)、マルチプレクサを介して取得したアナログ信号(電圧値)をデジタル信号に変換してマイコン4側へ伝達するAD変換器(図示略)等で構成されている。
【0033】
本実施形態の電源部32は、単位電池Biにおける最も高電圧となる電池セル10の正極端子と、最も低電圧となる電池セル10の負極端子とに接続されて、単位電池Biの電圧を所望の電圧(監視回路3の駆動電圧)に変換するものである。
【0034】
本実施形態のスイッチ回路33は、単位電池Biと電源部32との間を接続する接続状態(オン)と、組電池1と電源部32との間を遮断する遮断状態(オフ)とを切り替えるものである。
【0035】
具体的には、スイッチ回路33は、単位電池Biにおける最も高電圧となる電池セル10の正極端子と電源部32との間に接続されており、最も高電圧となる電池セル10の正極端子と電源部32との間の接続をオンオフするものである。なお、スイッチ回路33は、単位電池Biから監視回路3への電力供給を遮断する手段を構成すると共に、後述する絶縁素子5の高速信号伝達部52bへの電力供給を遮断する電力遮断手段を構成する。
【0036】
また、本実施形態のスイッチ回路33は、所定の電圧が印加されることで組電池1(単位電池Bi)と電源部32との間を接続状態とし、非通電時に組電池1(単位電池Bi)と電源部32との間を遮断状態とするノーマルオープン型スイッチで構成されている。このスイッチ回路33は、マイコン4側からの指示信号等に応じて印加される電圧よって駆動するように構成されている。
【0037】
マイコン4は、図示しないMPU、ROM、EEPROM、RAM、入出力部等からなるマイクロコンピュータであって、ROM等に記憶手段に記憶されたプログラムに従って各種処理等を実行するものである。
【0038】
本実施形態のマイコン4は、例えば、車両停止時等に、組電池1から車両走行用の電動機等の各種電気機器への電力供給が遮断される暗電流モード時に、組電池1の電力消費を抑制するために、組電池1から監視回路3および絶縁素子5の高速信号伝達部52bへの電力供給を遮断するように構成されている。例えば、暗電流モード時には、マイコン4側から監視回路3側へスイッチ回路33をオフする指示信号が伝達される。
【0039】
絶縁素子5は、高電圧で駆動する監視回路3と低電圧で駆動するマイコン4とを電気的に絶縁した状態で、マイコン4と監視回路3との間で信号伝達を可能とする絶縁信号伝達手段を構成する。本実施形態の絶縁素子5は、マイコン4側(制御手段側)から監視回路3側(監視手段側)への信号を伝達するように構成されている。なお、図示しないが、電池監視装置2には、監視回路3側からマイコン4側への信号を伝達するための絶縁素子も設けられている。
【0040】
ここで、本実施形態の絶縁素子5の詳細について図2に基づいて説明する。図2は、本実施形態に係る電池監視装置2の詳細を示す構成図である。なお、図2では、マイコン4の図示を省略している。
【0041】
本実施形態の絶縁素子5は、マイコン4側に設けられた一次側要素51を構成する発光素子51a、監視回路3側に設けられた二次側要素52を構成する受光素子52a、受光素子52aと監視回路3との接続点に接続され、一次側要素51から二次側要素52への信号伝達を高速化するための高速信号伝達部52b等を有して構成されている。
【0042】
この絶縁素子5としては、例えば、発光素子51aを発光ダイオード、受光素子52aをフォトトランジスタ、高速信号伝達部52bを高速ロジックICで構成するフォトICカプラを採用することができる。
【0043】
本実施形態の絶縁素子5の高速信号伝達部52bは、組電池1からの電力供給により駆動されるように構成されており、正極側の電源端子が正極側電源ラインL1を介して監視回路3のスイッチ回路33に接続されると共に、負極側の電源端子が負極側電源ラインL2を介して監視回路3の電源部32に接続されている。なお、高速信号伝達部52bは、監視回路3と同様に、暗電流モード時に、スイッチ回路33がオフされることで組電池1からの電力供給が遮断されるように構成されている。
【0044】
また、本実施形態の電池監視装置2の監視回路3および絶縁素子5には、組電池1からの電力供給を遮断する暗電流モード時に、絶縁素子5における一次側要素51から二次側要素52へ伝達された信号に基づいて、高速信号伝達部52bを起動するための電力を生成する電力生成部(電力生成手段)6が設けられている。
【0045】
本実施形態の電力生成部6は、絶縁素子5の発光素子51aの発光によって受光素子52aに生ずる起電力(光電効果)を利用して、高速信号伝達部52bを起動するための電力を生成するように構成されている。
【0046】
具体的には、本実施形態の電力生成部6は、比較的高い抵抗値(例えば、1MΩ以上)となる高抵抗53、および絶縁素子5における一次側要素51から二次側要素52へ伝達された信号を電荷として蓄積する蓄電部34を有して構成されている。
【0047】
高抵抗53は、絶縁素子5の受光素子52aと高速信号伝達部52bとの接続点と、監視回路3のスイッチ回路33との間を接続するように配置されている。なお、この高抵抗53によって、高速信号伝達部52bを介することなく、絶縁素子5の受光素子52aとスイッチ回路33とが接続されている。
【0048】
蓄電部34は、絶縁素子5の発光素子51aが発光した際に、光電効果によって、受光素子52aから高抵抗53を介してスイッチ回路34側に流れる電流(電荷)を蓄積する蓄電手段である。換言すれば、蓄電部34では、一次側要素51から二次側要素52へ伝達された信号に起因して生ずる電荷を蓄積する。
【0049】
この蓄電部34は、高抵抗53とスイッチ回路34との接続点と、負極側電源ラインL2における高速信号伝達部52bと電源部32との接続点との間を接続するように配置されている。なお、本実施形態の蓄電部34は、コンデンサで構成されている。
【0050】
以上が本実施形態に係る電池監視装置2の全体構成であり、以下、本実施形態に係る電池監視装置2の作動の概略について説明する。
【0051】
まず、電池監視装置2による組電池1の監視について説明する。この電池監視装置2による組電池1の監視は、組電池1から監視回路3および絶縁素子5の高速信号伝達部52bへ電力が供給されている状況において、例えば、外部から指令や、周期的に実行される。
【0052】
マイコン4は、絶縁素子5を介して、各電池セル10の電池状態(電圧状態)の監視を指示する監視指示信号を、監視回路3に伝達(出力)する。マイコン4からの監視指示信号を受信した監視回路3では、電圧検出部31にて監視対象である単位電池Biの各電池セル10の電圧を検出する。その後、監視回路3は、電圧検出部31で検出した各電池セル10の電圧をマイコン4へ伝達し、マイコン4にて、各電池セル10の電池状態(例えば、過放電状態や過充電状態)が診断される。
【0053】
次に、組電池1から電池監視装置2等の各種電気機器への電力供給を遮断する暗電流モード時において、電池監視装置2を起動させる際の作動について説明する。
【0054】
マイコン4では、絶縁素子5を介して監視回路3に対して起動を指示する起動指示信号を伝達する。なお、マイコン4では、例えば、監視指示信号等の通常の信号よりも高いデューティー比(例えば、100%)を設定した起動指示信号を所定時間(例えば、1秒程度)伝達する。
【0055】
マイコン4からの起動指示信号に応じて、絶縁素子5の一次側要素51である発光素子51aが発光し、発光素子51aの光電効果によって、絶縁素子5の二次側要素52である受光素子52aから高抵抗53を介してスイッチ回路34側に電流(電荷)が流れ、蓄電部34に電荷が蓄積される。
【0056】
その後、蓄電部34に蓄積された電荷量が所定の電荷量を超えると、スイッチ回路34に所定の電圧が印加され、スイッチ回路34がオンする。つまり、スイッチ回路34による単位電池Biから監視回路3および絶縁素子5の高速信号伝達部52bへ電力供給の遮断が解除される。これにより、単位電池Biから監視回路3および絶縁素子5の高速信号伝達部52bへ電力が供給され、監視回路3および絶縁素子5の高速信号伝達部52bが起動する。
【0057】
以上説明した本実施形態の電池監視装置2では、暗電流モード時に、絶縁素子5の二次側要素52に伝達された信号に基づいて高速信号伝達部52bを起動するための電力を生成することができるので、監視回路3とマイコン4との間を絶縁した状態で信号伝達する手段、および暗電流モード時に高速信号伝達部52bに電力供給する手段を別途設けることなく、監視回路3および絶縁素子5の高速信号伝達部52bを起動することが可能となる。
【0058】
特に、本実施形態の電池監視装置2では、暗電流モード時において、絶縁素子5の一次側要素51から二次側要素52に伝達された信号を電荷として蓄積すると共に、蓄積された電荷を利用して、単位電池Biから監視回路3および絶縁素子5の高速信号伝達部52bへの電力供給の遮断を解除することで、監視回路3および高速信号伝達部52bを起動することができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図3に基づいて説明する。図3は、本実施形態に係る電池監視装置2の詳細を示す構成図である。なお、図3では、マイコン4の図示を省略している。
【0060】
上述の第1実施形態では、電力生成部6の蓄電部34に蓄電した電荷によって、スイッチ回路33をオンすることで、間接的に高速信号伝達部52bを起動する構成としている。これに対して、本実施形態では、電力生成部6の蓄電部34に蓄電した電荷を利用して、直接的に高速信号伝達部52bを起動する構成としている点が第1実施形態と相違している。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0061】
具体的には、図3に示すように、本実施形態の電力生成部6における高抵抗53は、絶縁素子5の受光素子52aと高速信号伝達部52bとの接続点と、正極側電源ラインL1における高速信号伝達部52bとスイッチ回路33との接続点との間を接続するように配置されている。
【0062】
なお、正極側電源ラインL1には、高速信号伝達部52b側からスイッチ回路33側への電流の流れを禁止し、スイッチ回路33側から高速信号伝達部52b側への電流の流れだけを許容するダイオード35が設けられている。また、正極側電源ラインL1と高抵抗53とを接続する接続ラインには、正極側電源ラインL1側から高抵抗53側への電流の流れを禁止し、高抵抗53側から正極側電源ラインL1側への電流の流れだけを許容するダイオード36が設けられている。
【0063】
また、本実施形態の蓄電部34は、高抵抗53とダイオード36との接続点と、負極側電源ラインL2における電源部32と高速信号伝達部52bとの接続点との間を接続するように配置されている。
【0064】
次に、組電池1から電池監視装置2等の各種電気機器への電力供給を遮断する暗電流モード時において、電池監視装置2を起動させる際の作動について説明する。まず、マイコン4では、絶縁素子5を介して監視回路3に対して監視回路3の起動を指示する起動指示信号を所定時間伝達する。
【0065】
マイコン4からの起動指示信号に応じて、絶縁素子5の一次側要素51である発光素子51aが発光し、発光素子51aの光電効果によって、絶縁素子5の二次側要素52である受光素子52aから高抵抗53を介して、高速信号伝達部52b側に電流が流れ、蓄電部34に電荷が蓄積される。
【0066】
その後、蓄電部34に蓄積された電荷量が所定の電荷量を超えると、高速信号伝達部52bに所定の電圧が印加され、高速信号伝達部52bが起動する。これにより、監視回路3とマイコン4との間の信号伝達が可能となり、マイコン4側からスイッチ回路33のオンを指示する指示信号が伝達されることで、スイッチ回路34がオンされる。このスイッチ回路34のオンによって、スイッチ回路34による単位電池Biから監視回路3および絶縁素子5の高速信号伝達部52bへ電力供給の遮断が解除されて、単位電池Biから監視回路3および絶縁素子5の高速信号伝達部52bへ電力が供給されることで、監視回路3が起動する。
【0067】
以上説明した本実施形態の電池監視装置2では、暗電流モード時に、絶縁素子5の二次側要素52に伝達された信号に基づいて高速信号伝達部52bを起動するための電力を生成することができるので、監視回路3とマイコン4との間を絶縁した状態で信号伝達する手段、および暗電流モード時に高速信号伝達部52bに電力供給する手段を別途設けることなく、監視回路3および絶縁素子5の高速信号伝達部52bを起動することが可能となる。
【0068】
特に、本実施形態では、暗電流モード時において、絶縁素子5の一次側要素51から二次側要素52に伝達された信号を電荷として蓄積すると共に、蓄積された電荷を利用して、絶縁素子5の高速信号伝達部52bへ電力供給することで、高速信号伝達部52bを起動することができる。そして、高速信号伝達部52bの起動によって、監視回路3とマイコン4との間で信号伝達を行うことが可能となるので、マイコン4からの指示信号によって監視回路3のスイッチ回路33をオンすることで、監視回路3を起動することができる。
【0069】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0070】
(1)上述の各実施形態では、高速信号伝達部52bの起動が完了した後においても、絶縁素子5の受光素子52aにて受信した信号が、電荷として電力生成部6の高抵抗53を介して蓄電部34に蓄積され得る構成としている。しかし、この場合、電力生成部6によってマイコン4から監視回路3への信号伝達が妨げられる虞がある。
【0071】
このため、図4や図5に示すように、高速信号伝達部52bの起動が完了した後に、蓄電部34における電荷の蓄積を停止するために、受光素子52aと高速信号伝達部52bとの接続点と高抵抗53との間に、受光素子52aと高抵抗53との接続を遮断する電荷蓄積停止部(電荷蓄積停止手段)54を設ける構成とすることが好ましい。
【0072】
これによれば、高速信号伝達部52bの起動が完了した後、蓄電部34による電荷の蓄積が停止されるので、蓄電部34による電荷の蓄積がマイコン4から監視回路3への信号伝達の妨げとなることを抑制することができる。なお、電荷蓄積停止部54としては、例えば、高速信号伝達部52bの起動の完了と連動して、受光素子52aと高抵抗53との接続を遮断するスイッチで構成することができる。
【0073】
なお、図4は、第1実施形態に係る電池監視装置2の絶縁素子5の変形例を示す構成図であり、図5は、第2実施形態に係る電池監視装置2の絶縁素子5の変形例を示す構成図である。
【0074】
(2)上述の各実施形態では、電力生成部6の蓄電部34をコンデンサで構成する例について説明したが、コンデンサに限らず、電荷を蓄積可能なものであれば蓄電部34として採用することができる。
【0075】
(3)上述の各実施形態では、絶縁素子5をフォトICカプラで構成する例について説明したが、これに限定されず、例えば、コンデンサカップリングやトランスカップリングで構成される絶縁素子を採用してもよい。
【0076】
(4)上述の各実施形態では、上述の各実施形態では、電池監視装置2を車載高圧バッテリに適用する例を説明したが、車載高圧バッテリに限らず、他のバッテリに用いてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 組電池
10 電池セル
3 監視回路(監視手段)
4 マイコン(制御手段)
5 絶縁素子(絶縁信号伝達手段)
51 一次側要素
52 二次側要素
52b 高速信号伝達部
54 電荷蓄積停止部(電荷蓄積停止手段)
6 電力生成部(電力生成手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セル(10)を複数直列に接続して構成される組電池(1)を監視する電池監視装置であって、
前記組電池(1)からの電力供給により駆動され、前記組電池(1)の電池状態を監視する監視手段(3)と、
前記監視手段(3)、および前記監視手段(3)の作動を制御する制御手段(4)を電気的に絶縁した状態で、前記制御手段(4)側から前記監視手段(3)側へ信号を伝達する絶縁信号伝達手段(5)と、を備え、
前記絶縁信号伝達手段(5)は、前記制御手段(4)側に設けられた一次側要素(51)から前記監視手段(3)側に設けられた二次側要素(52)への信号伝達を高速化するための高速信号伝達部(52b)を有し、
前記高速信号伝達部(52b)は、前記組電池(1)からの電力供給により駆動されるように構成され、
前記監視手段(3)および前記絶縁信号伝達手段(5)には、前記組電池(1)から前記監視手段(3)および前記高速信号伝達部(52b)それぞれへの電力供給を遮断する暗電流モード時に、前記一次側要素(51)から前記二次側要素(52)に伝達された信号に基づいて前記高速信号伝達部(52b)を起動するための電力を生成する電力生成手段(6)が設けられていることを特徴とする電池監視装置。
【請求項2】
前記監視手段(3)には、前記暗電流モード時に前記組電池(1)から前記高速信号伝達部(52b)への電力供給を遮断する電力遮断手段(33)が設けられており、
前記電力生成手段(6)は、前記絶縁信号伝達手段(5)の前記一次側要素(51)から前記二次側要素(52)に伝達された信号を電荷として蓄積する蓄電手段(34)を有し、
前記蓄電手段(34)は、蓄積された電荷量が所定の電荷量を超えたときに、前記電力遮断手段(33)へ電力供給して、前記組電池(1)から前記高速信号伝達部(52b)への電力供給の遮断を解除するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電池監視装置。
【請求項3】
前記電力生成手段(6)は、前記絶縁信号伝達手段(5)の前記一次側要素(51)から前記二次側要素(52)に伝達される信号を電荷として蓄積する蓄電手段(34)を有し、
前記蓄電手段(34)は、蓄積された電荷量が所定の電荷量を超えたときに、前記高速信号伝達部(52b)へ電力供給するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電池監視装置。
【請求項4】
前記電力生成手段(6)は、前記高速信号伝達部(52b)の起動が完了した後、前記蓄電手段(34)における電荷の蓄積を停止する電荷蓄積停止手段(54)を有することを特徴とする請求項2または3に記載の電池監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−24675(P2013−24675A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158701(P2011−158701)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】