電波修正時計、およびその制御方法
【課題】受信回路の再起動時間を短くでき、受信回路を間欠的に動作させても不具合がなく時刻修正に要する受信消費電力を低減できる電波修正時計を提供すること。
【解決手段】電波修正時計1は、標準電波を受信する受信部3Aと、受信部3Aを制御する制御部47とを備える。受信部3Aは、標準電波の受信信号を増幅する増幅回路32と、増幅回路32のゲインを制御するAGC回路36と、増幅した受信信号を閾値で二値化して時刻情報を得る二値化回路37とを備える。制御部47は、取得する必要がないデータが送信されている間は受信部3Aの動作を一時停止させる間欠受信動作で受信部3Aを制御する。受信部3Aは、一時停止されている間、AGC回路36を制御するAGC電圧を動作停止時点の電圧に保持し、一時停止が解除されて動作を再開した際には、保持したAGC電圧に基づいてAGC回路36の動作を再開する。
【解決手段】電波修正時計1は、標準電波を受信する受信部3Aと、受信部3Aを制御する制御部47とを備える。受信部3Aは、標準電波の受信信号を増幅する増幅回路32と、増幅回路32のゲインを制御するAGC回路36と、増幅した受信信号を閾値で二値化して時刻情報を得る二値化回路37とを備える。制御部47は、取得する必要がないデータが送信されている間は受信部3Aの動作を一時停止させる間欠受信動作で受信部3Aを制御する。受信部3Aは、一時停止されている間、AGC回路36を制御するAGC電圧を動作停止時点の電圧に保持し、一時停止が解除されて動作を再開した際には、保持したAGC電圧に基づいてAGC回路36の動作を再開する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時刻情報を有する標準電波を受信し、受信した標準電波に基づいて時刻を修正する電波修正時計、およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、標準電波を受信可能な電波修正時計が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、1日に1回の受信時(午前3時)は、十分な時間、例えば3分間の受信処理を行ってタイムコードの全情報を得るが、午前3時以外の正時には、タイムコードの一部のみを受信して受信時間を短時間とすることで電力消費の無駄を除く時計が開示されている。
【0003】
ところで、標準電波は振幅変調であり、電波時計の受信回路は、まず、オートゲインコントロール回路(AGC回路、Automatic Gain Control)で増幅回路のゲインを調整して受信した信号レベルを所望のレベルに調整する必要がある。従って、電波時計では、レベル調整された受信信号の包絡線信号をフィルタなどで抜き出した後、比較器(コンパレータ)で包絡線信号と基準電圧とを比較して二値化し、タイムコード信号TCO(Time Code Out)を得て、時刻情報を入手し、時刻表示を行っている。
【0004】
このような受信回路において、AGC回路が安定動作するまでの時間を短縮する回路構成も提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平7-198878号公報
【特許文献2】特開2005-210266号公報
【特許文献3】特開2004-151055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、午前3時での受信処理では、十分な時間の受信処理を行っていたため、電力消費の低減効果は必ずしも高くないという問題があった。すなわち、近年の電波修正時計では、時刻精度の点では1日に1回受信すれば十分である。このような1日に1回の受信しか行わない時計においても、電力消費低減が求められているが、前記特許文献1では、この1日1回の受信時には十分な時間の受信処理を行っていたため、電力消費の低減効果は必ずしも高くなかった。
【0007】
また、1日1回の受信時に、必要な情報のみを受信して受信時間を短縮することも考えらえるが、次の理由により、実際の電波修正時計ではこのような制御を行うことができなかった。すなわち、標準電波は伝送速度が極めて遅い信号であり、AGC回路が安定動作するまでの時間はどうしても数秒を要し、その分、受信回路の停止後にAGC電圧が再度、収束して安定動作するまでの起動時間は十数秒程度と長くなってしまう。このことは、特許文献2,3の回路構成を採用した場合でも同様であった。
【0008】
このため、例えば、特許文献1の午前3時の受信処理のように、3つの時刻データを受信する場合、その受信途中で一時的に受信回路を停止させると、再起動までに時間がかかり、次の時刻データを受信できないおそれがあった。このため、実際の電波修正時計においては、受信中に受信回路を停止することはできず、連続して数分間の受信処理を行っており、その分、受信消費電力も低減することができなかった。
【0009】
本発明の目的は、上記問題点を解決するものであり、受信回路の動作を停止してからの再起動時間を短くでき、受信回路を間欠的に動作させても不具合が無く、時刻修正に要する受信消費電力を低減できる電波修正時計および電波修正時計の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電波修正時計は、標準電波を受信して時刻情報を取得して時刻修正を行う電波修正時計であって、前記標準電波を受信する受信部と、前記受信部を制御する制御部とを備え、前記受信部は、前記標準電波の受信信号を増幅し、ゲインを調整可能な増幅回路と、増幅した受信信号を所定の閾値に基づいて二値化して時刻情報を得る二値化回路とを備え、前記制御部は、時刻情報の取得中に、取得する必要がないデータが送信されている間は前記受信部の動作を一時停止させる間欠受信動作で前記受信部を制御し、前記受信部は、一時停止が解除されて動作を再開したときには、前記増幅回路のゲインを一時停止の前の状態から再開することを特徴とする。
【0011】
本発明では、受信部の動作が一時停止された後に動作を再開する場合、増幅回路のゲインを一時停止の前の状態から再開しているので、受信部の動作が再開された際に、正常な動作に迅速に復帰することができる。このため、受信部の動作が一時停止された際に、ゲインを初期値にリセットしてしまう場合に比べて、受信回路の動作を停止してからの再起動時間を短くでき、受信回路を間欠的に動作させても不具合を無くすことができ、時刻修正に要する受信消費電力を低減させることができる。
【0012】
本発明において、前記受信部は、前記増幅回路のゲインを制御するオートゲインコントロール回路(AGC回路)を備え、前記制御部は、間欠受信動作で一時停止している間、前記AGC回路を制御するオートゲインコントロール電圧(AGC電圧)を、前記動作停止時点の電圧に保持するとともに、前記一時停止が解除されて動作を再開した際には、前記保持しておいたAGC電圧に基づいてAGC回路の動作を再開させることが好ましい。
【0013】
本発明では、受信部の動作が一時停止されている間も、AGC回路のAGC電圧を動作停止時点の電圧に保持しているので、受信部の動作が再開された際に、正常な動作に迅速に復帰することができる。このため、受信部の動作が一時停止された際に、AGC電圧を保持しない場合に比べて、受信回路の動作を停止してからの再起動時間を短くでき、受信回路を間欠的に動作させても不具合を無くすことができ、時刻修正に要する受信消費電力を低減させることができる。
【0014】
本発明において、前記制御部は、受信部を動作させて、一定サイクルで送信される時刻情報を、複数サイクル分取得する受信制御を行うとともに、前記受信部を間欠受信動作で制御するのは、少なくとも1サイクル分の時刻情報を取得した場合であることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、少なくとも1サイクル分の時刻情報は、通常の受信動作によって受信しているので、毎正分のマーカーを確実に取得できて分同期が取れていることを確実に判断でき、その後の間欠受信動作において分同期を誤判定することを防止でき、間欠受信動作の確実性を増すことができる。
【0016】
本発明において、前記制御部は、前記標準電波において、分および時の情報が送信されている間は、受信部を動作させ、分および時の情報が送信されていない間は、受信部を一時停止させることが好ましい。
ここで、分および時の情報が送信されていない間とは、例えば、日、月、年、曜等のカレンダー情報が送信されている間である。
【0017】
標準電波において、分および時の情報が送信されている間のみ受信部を作動すれば、受信部の動作時間を1/3以下に低減でき、受信時の消費電力も大幅に低減することができる。
【0018】
本発明において、前記制御部は、受信部の動作を再開させたときに、前記増幅回路のゲインを一時停止の前の状態から再開するゲイン保持モードと、前記増幅回路のゲインを予め設定された所定のゲインにリセットするゲインリセットモードとを選択することが好ましい。
例えば、AGC回路を用いて増幅回路のゲインを制御している場合には、前記制御部は、受信部の動作を再開させたときに、前記保持しておいたAGC電圧に基づいてAGC回路の動作を再開させる電圧保持モード(ゲイン保持モード)と、前記保持しておいたAGC電圧とは異なる所定のAGC電圧に基づいてAGC回路の動作を再開させる電圧リセットモード(ゲインリセットモード)とを選択することが好ましい。
【0019】
ここで、前記受信部は、受信周波数を変更可能に構成され、前記制御部は、受信周波数が変更された場合には前記ゲインリセットモードを選択し、受信周波数が変更されてない場合には前記ゲイン保持モードを選択することが好ましい。
【0020】
本発明によれば、例えば受信周波数を変更する場合のように受信条件が変更された場合には、受信信号レベルも大きく変動している可能性が高く、受信部の動作を再開する場合に、増幅回路のゲインを一時停止の前の状態から再開しても、例えば、保持していたAGC電圧でAGC回路の動作を再開しても、適切なレベルで受信できるようになるまで、却って時間がかかる場合がある。
これに対し、本発明では、増幅回路のゲインを一時停止の前の状態から再開するゲイン保持モードの他に、前記ゲインを所定値にリセットするゲインリセットモードを選択できるので、受信条件に応じて適切な制御モードを選択でき、その分、適切なレベルで受信できるようになるまでの時間を短くできる。例えば、AGC電圧を制御する場合、保持していたAGC電圧でAGC回路を動作させる電圧保持モードの他に、AGC電圧を所定電圧にリセットしてAGC回路を動作させる電圧リセットモードを選択できるので、受信条件に応じて適切な制御モードを選択でき、その分、適切なレベルで受信できるようになるまでの時間を短くできる。
特に、受信周波数が変更された場合には、受信信号レベルも変動している可能性が高いため、電圧リセットモードで制御することで、適切な受信処理を迅速に行うことができる。
【0021】
本発明において、前記AGC回路は容量素子を備え、前記受信部の動作が一時停止されている間は、前記容量素子の電位でAGC電圧を保持することが好ましい。
【0022】
本発明によれば、AGC電圧を保持する場合には、前記容量素子をAGC回路から切り離す制御を行うだけでよいので、回路構成が簡易になり、AGC電圧の保持制御も容易に行うことができる。
【0023】
本発明は、標準電波を受信して時刻情報を取得して時刻修正を行う電波修正時計の制御方法であって、前記標準電波を受信する受信部と、前記受信部を制御する制御部とを備え、前記受信部は、前記標準電波の受信信号を増幅し、ゲインを調整可能な増幅回路と、増幅した受信信号を所定の閾値に基づいて二値化して時刻情報を得る二値化回路とを備え、前記時刻情報の取得中に、取得する必要がないデータが送信されている間は、前記受信部の動作を一時停止させる間欠受信動作で前記受信部を制御し、前記間欠受信動作で一時停止されている間は、前記増幅回路のゲインを、前記動作停止時点のゲインに保持し、前記一時停止が解除されて受信部の動作が再開された際には、前記保持しておいたゲインに基づいて増幅回路の動作を再開することを特徴とする。
本発明においても、前記電波修正時計と同じ作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明の第1の実施の形態に係る電波修正時計1を図面に基づいて説明する。
【0025】
[電波修正時計1の構成]
電波修正時計1は、図1に示すように、受信手段としてのアンテナ2と、受信回路部3と、制御回路部4と、表示部5と、外部操作部材6と、水晶振動子48とを備えている。
アンテナ2は、長波標準電波(以下、「標準電波」と称す)を受信し、受信した標準電波を受信回路部3に出力する。
受信回路部3は、アンテナ2にて受信した標準電波の受信信号を復調して、TCO(Time Code Out:タイムコード出力)として制御回路部4に出力する。なお、受信回路部3の詳細な説明は、後述する。
【0026】
制御回路部4は、入力されたTCOをデコードしてTC(タイムコード)を生成し、生成したTCに基づいて時刻カウンタ43の時刻を設定する。また、制御回路部4は、時刻カウンタ43の時刻を表示部5に表示させる制御をする。さらに、制御回路部4は、受信回路部3に制御信号を出力する。なお、制御回路部4の詳細な説明は、後述する。
【0027】
表示部5は、制御回路部4の駆動回路部46により駆動制御され、時刻カウンタ43でカウントされる時刻を表示させる。この表示部5としては、例えば液晶パネルを備え、液晶パネルに時刻を表示させる構成であってもよく、文字板および指針を備え、制御回路部4により指針を運針させて時刻を表示させる構成であってもよい。
【0028】
外部操作部材6は、例えばリューズや設定ボタンなどにより構成され、利用者により操作されることで制御回路部4に所定の操作信号を出力する。この操作信号としては、例えば、アンテナ2で受信される標準電波の種類(例えば、日本におけるJJY、アメリカ合衆国におけるWWVB、ドイツにおけるDCF77など)を設定する信号や、標準電波を受信して時刻を修正させる手動受信処理を要求する信号などが挙げられる。
【0029】
基準クロック用の水晶振動子48は、所定の基準信号(基準クロック、例えば1Hzの信号)を出力するものであり、この水晶振動子48から出力された基準信号が制御回路部4に入力されている。
【0030】
[受信回路部の構成]
受信回路部3は、図1に示すように、同調回路31と、第1増幅回路32と、バンドパスフィルタ(Band-pass filter,以下、「BPF」と略す場合がある)33と、第2増幅回路34と、包絡線検波回路35と、AGC(Auto Gain Control)回路36と、二値化回路37と、デコード回路39とを備えて構成されている。この受信回路部3のうち、デコード回路39を除く、同調回路31から二値化回路37により、本発明の受信部3Aが構成されている。
【0031】
同調回路31は、コンデンサを備えて構成され、当該同調回路31とアンテナ2とにより並列共振回路が構成される。この同調回路31は、特定の周波数の電波をアンテナ2で受信させる。この同調回路31により、アンテナ2で受信された標準電波が電圧信号に変換され、第1増幅回路32に出力される。なお、本実施形態の受信回路部3では、日本の標準電波「JJY」の他、アメリカ合衆国の標準電波「WWVB」、ドイツの標準電波「DCF77」、イギリスの標準電波「MSF」、中華人民共和国の標準電波「BPC」などの各地域における標準電波を受信可能に構成されている。
【0032】
ここで、時刻情報(タイムコード)は、各国毎に所定の時刻情報フォーマット(タイムコードフォーマット)に合わせて構成されている。
すなわち、図2に示す日本の標準電波(JJY)のタイムコードフォーマットでは、1秒ごとに一つの信号が送信され、60秒で1レコードとして構成されている。つまり、1フレームが60ビットのデータである。また、データ項目として現時刻の分、時、現在年の1月1日からの通算日、年(西暦下2桁)、曜日および「うるう秒」が含まれている。各項目の値は、各秒毎に割り当てられた数値の組み合わせによって構成され、この組み合わせのON、OFFが信号の種類から判断される。なお、図2中「M」で示されるのは正分(毎分0秒)に対応するマーカーであり、「P1〜P5」で示されるのはポジションマーカーであり、予めその位置が定められている信号である。なお、マーカーを示す信号は、約0.2msのパルス幅の信号であり、各項目においてON(2進の1)を表す信号は約0.5msのパルス幅の信号、OFF(2進の0)を表す信号は約0.8msのパルス幅の信号である。
なお、長波標準電波(JJY)は、日本では、40kHz(東日本)と60kHz(西日本)で送信が行われているが、各電波のタイムコードフォーマットは同じである。
【0033】
一方、図3に示すドイツの標準電波(DCF77)のタイムコードフォーマットでは、分、時、日、曜、月、年の各データ項目が設定されている。また、15秒目まではデータが存在せず、このため、各ポジションマーカP1,P2,P3やマーカーMの位置も図2のJJYとは異なっている。さらに、各時刻項目の前に、「R:予備アンテナ使用」、「A1:通常時間と夏時間の変更予告」、「Z1,Z2:通常時間と夏時間の表示」、「A2:うるう秒の表示」、「S:時間コードの開始ビット」等の項目が設定されている。
【0034】
また、図4に示すアメリカの標準電波(WWVB)のタイムコードフォーマットでは、分、時、日、年の各データ項目が設定されている。WWVBは、周波数は60kHzで西日本のJJYと同じであるが、年情報の位置等がJJYと異なっており、データを解析することでJJYおよびWWVBを区別することができる。
なお、図示しないがイギリスの標準電波(MSF)のタイムコードフォーマットや中華人民共和国の標準電波「BPC」も、他の国のものと異なっており、受信した時刻情報(タイムコード)のフォーマット(データ)によりその標準電波がどの出力局のものかを判別することができる。
【0035】
第1増幅回路32は、後述するAGC回路36から入力する信号に応じてゲインを調整可能に構成されている。そして、ゲインを調整された第1増幅回路32は、同調回路31から入力する受信信号を一定の振幅としてBPF33に入力するように増幅する。すなわち、第1増幅回路32は、AGC回路36から入力する信号に応じて、振幅が大きい場合にはゲインを低くし、振幅が小さい場合にはゲインを高くして、受信信号を一定の振幅となるように増幅する。
【0036】
BPF33は、所望の周波数帯の信号を抽出するフィルタである。すなわち、BPF33を介することにより、第1増幅回路32から入力した受信信号から搬送波成分以外が除去される。
【0037】
第2増幅回路34は、BPF33から入力する受信信号を、固定のゲインでさらに増幅する。
【0038】
包絡線検波回路35は、図示しない整流器と、図示しないローパスフィルタ(Low-Pass Filter,LPF)とを備えて構成され、第2増幅回路34から入力した受信信号を整流およびろ波し、ろ波して得られた包絡線信号を、AGC回路36および二値化回路37に出力する。
【0039】
[AGC回路]
AGC回路36は、包絡線検波回路35から入力した受信信号に基づいて、第1増幅回路32にて受信信号を増幅する際のゲインを決定する信号を出力する。
図5にはAGC回路36の具体例が示されている。
AGC回路36は、定電流源361と定電流源362の排他的なスイッチングによってAGCコンデンサ363を充放電させることでAGC電圧を制御する。このAGC電圧が前記第1増幅回路32のゲインとなる。
ここで、AGCコンデンサ363は、AGC制御に大きな時定数をもたせるために、通常は数μFの容量が必要となる。このため、AGCコンデンサ363は、IC内には集積できず、通常、セラミックコンデンサやタンタルコンデンサが使われる。
【0040】
コンパレータ364は、包絡線検波回路35からの信号を所定の基準電圧と比較し、前記信号が基準電圧より高い場合にはHigh信号、低い場合にはLow信号を出力する。コンパレータ364の出力は、NOR回路365に入力されるとともに、NOT回路366を介してNOR回路367に入力される。また、各NOR回路365,367には、デコード回路39からAGCHLD信号も入力されている。
このため、AGCHLD信号がLowであれば、コンパレータ364で検出された受信信号レベルに応じて、いずれか一方のNOR回路365,367の出力がHigh、他方がLowとなって、定電流源361,362が排他的にスイッチングされ、AGC電圧が最適な電圧に収束するようになる。
一方、AGCHLD信号がHigh信号になると、NOR回路365,367の出力は共にLowとなり、定電流源361,362の両方がAGCコンデンサ363から切り離され、AGCコンデンサ363のAGC電圧が保持される。
【0041】
また、AGCHLD信号と、受信部3Aのオン・オフ制御を行うPWRON信号とは、NOR回路368に入力され、このNOR回路368の出力は、スイッチ素子である電界効果トランジスタ369に入力される。この電界効果トランジスタ369には、プルダウン抵抗370が接続されている。
このため、受信部3Aの停止時つまりPWRON信号がLowであり、かつ、AGCHLD信号がLowの場合は、電界効果トランジスタ369がオンされ、プルダウン抵抗370を介して、AGC電圧はGND電位に固定され、回路の安定化が図られる。
この状態で受信部3Aが起動された場合、起動時のAGC電圧はGND電位となり、前記定電流源361,362の排他的にスイッチングによって、AGC電圧はGND電位から最適な電圧に収束制御される。
なお、上記条件以外、つまりPWRON信号=Low、かつ、AGCHLD信号=Lowの場合以外は、電界効果トランジスタ369がオフされてプルダウン抵抗370もAGCコンデンサ363から切り離される。
【0042】
さらに、AGC回路36には、リセット回路371も設けられている。このリセット回路371は、制御信号およびPWRON信号が入力されるAND回路372の出力によって作動される。制御信号は、通常はLowとされているが、受信周波数が切り替えられた際にHighにされる。この制御信号=Highの状態で、PWRON信号がLowからHighに立ち上がると、AND回路372の出力がLowからHighに変化し、リセット回路371が作動される。リセット回路371は、AGC電圧を電位VSSにリセットするものである。なお、本実施形態では、電位VSSはGND電位と同じに設定されているが、GND電位と異なる電位、例えば、負の電位に設定してもよい。
そして、前記制御信号は、リセット回路371が作動されるとLowに戻るため、リセット回路371は受信周波数が切り替えられた直後に1回のみ作動される。
受信周波数の切り替えの際はその前後で入力レベルが大きく変動する場合があり、このような場合に、前記リセット回路371でAGC電圧をリセットすれば、起動時間のばらつきを抑えるのに効果的である。
【0043】
二値化回路37は、二値化コンパレータで構成され、包絡線検波回路35から入力する包絡線信号を、所定の閾値(基準電圧)と比較して二値化し、この二値化信号すなわちTCO信号を出力する。
【0044】
具体的に、二値化回路37は、包絡線信号の電圧が基準電圧を上回っている場合にはHighレベル(ハイレベル)の電圧を有する信号を、また、包絡線信号の電圧が基準電圧を下回っている場合には、Highレベルの信号より電圧値の低いLowレベル(ローレベル)の信号を、TCO信号として、制御回路部4のTCOデコード部41に出力する。なお、包絡線信号の電圧が基準電圧を上回っている場合にはLowレベルを、包絡線信号の電圧が基準電圧を下回っている場合にはHighレベルの信号を、TCO信号として、制御回路部4のTCOデコード部41に出力するように構成することも可能である。
【0045】
デコード回路39は、後述する制御回路部4と、シリアル通信線SLを介して接続されている。そして、このデコード回路39は、制御回路部4から入力する制御信号およびクロック信号をデコードし、受信部3Aのパワーオン・オフ制御と、AGC回路36のAGC電圧を保持するAGCホールド制御とを行う。
【0046】
[制御回路部の構成]
制御回路部4は、前述のように、受信回路部3の動作を制御するものであり、具体的に、受信回路部3のデコード回路39に対して、受信回路部3のパワーオン・オフ制御と、AGC回路36のAGC電圧のホールド制御とを行う制御信号を出力する。また制御回路部4は、二値化回路37から入力するTCO信号をデコードして、デコードされて生成したタイムコードに基づいて、時刻カウンタ43の時刻を設定する。さらには、制御回路部4は、時刻カウンタ43の時刻を表示部5に表示させる制御をする。
この制御回路部4は、図1に示すように、タイムコードデコード手段としてのTCOデコード部41と、記憶部42と、時刻カウンタ43と、駆動回路部46と、制御部47とを備えて構成されている。なお、制御部47には、前記水晶振動子48から出力された基準信号が入力されている。
【0047】
TCOデコード部41は、受信回路部3の二値化回路37から入力するTCO信号をデコードして、当該TCO信号に含まれる日付情報および時刻情報等を有するタイムコード(TC)を抽出する。そして、TCOデコード部41は、抽出したTCを制御部47に出力する。
具体的には、TCOデコード部41は、TCO信号の波形を認識し、所定のパルス幅(例えば1Hz)に対する受信パルスデューティを計測する。そして、この受信パルスデューティの違いによりTCO信号からTCを認識する。例えば、日本国内において用いられる標準電波(JJY)では、1秒のパルス幅に対して、ハイレベル信号のパルス幅が0.5秒である場合(つまり、デューティが50%である場合)、「1」の信号(1信号)を認識する。また、1秒のパルス幅に対して、ハイレベル信号のパルス幅が0.8秒である場合(つまり、デューティが80%である場合)、「0」の信号(0信号)を認識する。1秒のパルス幅に対して、ハイレベル信号のパルス幅が0.2秒である場合(つまり、デューティが20%である場合)、「P」信号(P信号)を認識する。そして、TCOデコード部41は、これら認識した1信号、0信号、およびP信号の並びにより所定のTCを認識する。
【0048】
なお、上記において、JJYにおけるTCの認識を例示したが、受信された標準電波が他の種類である場合、それぞれの電波に対応するデューティにより、TCを認識する。例えば、アメリカ合衆国における標準電波(WWVB)では、デューティが50%である場合1信号、デューティが20%である場合0信号、デューティが80%である場合P信号を認識する。また、ドイツにおける標準電波(DCF77)では、デューティが80%である場合1信号、デューティが90%である場合0信号を認識し、イギリスにおける標準電波(MSF)では、デューティが80%である場合1信号、デューティが90%である場合0信号、デューティが50%である場合P信号を認識する。
【0049】
記憶部42は、制御回路部4による受信回路部3の制御等に必要な各種データやプログラム等を記憶するメモリである。このような記憶部42は、電波修正時計1の製造時に設定され、受信回路部3で受信する標準電波に関する電波データが記録される電波データテーブルを記憶している。
この電波データテーブルは、電波種類データと、電波種類毎のタイムコードフォーマットとが関連付けられて構成される電波データを1つのレコードとし、これらの電波データを複数記録するテーブル構造に構築されている。
ここで、電波種類データは、受信回路部3にて受信される標準電波の種類に関する情報であり、例えば、JJY、WWVB、DCF77、MSFなどが記録されている。
タイムコードフォーマットは、電波種類データにて特定される標準電波に含まれるTC(タイムコード)のフォーマット、つまり、年月日時分の各データがどのような順番やサイズで記憶されているかが記録されている。
【0050】
また、記憶部42には、図6に示すように、受信した時刻データ421が記憶されている。本実施形態では、最大7回の受信時刻データを記憶可能に構成されている。例えば、標準電波は1分毎で時刻データを送信しているため、最大7分の受信を行えば、7回分の時刻データを取得できる。この際、各時刻データは、1分ずつ異なる時刻データとなる。
【0051】
時刻カウンタ43は、水晶振動子48から出力される基準信号に基づいて、時間をカウントするものであり、図7に示すように、内部時刻データ用の時刻カウンタ431と、時計表示時刻データ用の時刻カウンタ432とを備えている。
具体的には、各カウンタ431,432は、それぞれ、秒をカウントする秒カウンタ、分をカウントする分カウンタ、時をカウントする時カウンタを備えている。
秒カウンタは、例えば水晶振動子48から1Hzの基準信号が出力されている場合、その信号を60カウントつまり60秒でループするカウンタである。分カウンタは、1Hzの基準信号を60回計数したところで1カウントし、60カウント、すなわち60分でループするカウントである。時カウンタは、1Hzの基準信号を3600回計数したところで1カウントし、24カウント、すなわち24時間でループするカウントである。
なお、分カウンタは、秒カウンタが60カウントするごとに秒カウンタから分カウンタに信号を出力して分カウンタをカウントアップさせる構成としてもよい。同様に、時カウンタは、分カウンタが60カウントするごとに分カウンタから時カウンタに信号を出力され、時カウンタをカウントアップさせる構成としてもよい。
【0052】
そして、内部時刻データ用の時刻カウンタ431は、時刻情報の受信に成功した場合には、受信した時刻データで更新され、それ以外は基準信号でカウントアップされる。
また、時計表示時刻データ用の時刻カウンタ432は、通常は内部時刻データ用の時刻カウンタ431と同じカウンタ値とされているが、利用者によって時差表示設定がされた場合には、利用者が設定した時差が加算される。例えば、日本から海外に移動する際に、日本において電波受信で電波修正時計1を修正した後、時差を設定して現地時刻を表示する場合には、前記カウンタ431,432は、時差分だけカウンタ値が相違することになる。
【0053】
ここで、JJYのタイムコードフォーマットでは、図2に示すように、1秒ごとに一つの信号が送信され、60秒で1レコードとして構成されている。つまり、1フレームが60ビットのデータである。また、データ項目として分、時の現時刻情報と、現在年の1月1日からの通算日、年(西暦下2桁)、曜日等のカレンダー情報とが含まれている。各項目の値は、各秒毎に割り当てられた数値の組み合わせによって構成され、この組み合わせのON、OFFが信号の種類から判断される。
なお、時分のデータをチェックするためのパリティビットは、日と年との間に設けられている。従って、上記パリティビットを受信してチェックする場合には、図8の例1に示すように、正分の立ち上がり(毎0秒)を示すマーカーから37秒まで受信すればよい。
一方、前回の受信からそれほど時間が経過していない場合や、複数の受信データから時分データをチェックできる場合など、分時のパリティビットを受信する必要がなければ、図8の例2に示すように、分時のデータの約20ビット(約20秒)だけ受信すればよい。
従って、従来のように、60ビット(60秒)分のデータを受信した場合に比べて、例1であれば受信時間を約2/3にでき、受信に要する消費電力も約2/3にできる。
また、例2であれば、受信時間を約1/3にでき、受信に要する消費電力も約1/3にできる。
【0054】
駆動回路部46は、制御部47から出力される時刻表示制御信号に基づいて、表示部5の表示状態を制御し、表示部5に時刻を表示させる制御をする。例えば、表示部5が液晶パネルを有し、液晶パネルに時刻を表示させる構成である場合、駆動回路部46は、時刻表示制御信号に基づいて、液晶パネルを制御し、液晶パネルに時刻を表示させる制御をする。また、表示部5が文字板および指針を有する構成である場合、駆動回路部46は、指針を駆動させるステッピングモータに、パルス信号を出力し、ステッピングモータの駆動力により指針を運針させる制御をする。
【0055】
制御部47は、水晶振動子48から入力されるクロック信号に基づいて駆動し各種制御処理を実施する。すなわち、制御部47は、TCOデコード部41から入力されるTCを、時刻カウンタ43に出力し、時刻カウンタ43のカウントを修正する制御をする。また、制御部47は、時刻カウンタ43にてカウントされる時刻を表示部5に表示させる旨の時刻表示制御信号を駆動回路部46に出力する。
【0056】
さらに、制御部47は、受信回路部3のデコード回路39に、受信部3Aのパワーオン・オフを制御する制御信号PWRONと、AGC回路36のAGC電圧を保持する制御信号AGCHLDを出力する。
具体的には、制御部47は、予め設定された定時受信時刻になった場合や、外部操作部材6で手動受信が指示された場合には、受信部3Aをパワーオンする制御信号を送信して受信部3Aを作動し、受信処理を開始する。そして、この受信処理時に、後述するように、所定のタイミングでパワーオフする制御信号を送信し、受信部3Aを一時停止させる。
また、このパワーオン、パワーオフに前後して、AGC回路36のAGC電圧を保持する制御信号AGCHLDを出力し、受信部3Aが一時停止中はAGC電圧を保持し続けるようにしている。
【0057】
なお、制御部47と、デコード回路39とは、前述のように、シリアル通信線SLにより接続され、制御信号は、シリアル通信線SLを介してデコード回路39に入力される。
ここで、制御部47と受信回路部3とのシリアル通信においては、制御部47と受信回路部3との間で双方向通信が可能な2線の同期式インターフェースを用いて、それぞれによる双方向のシリアル通信を行うようにしてもよい。このような場合、制御部47から受信回路部3に制御信号を出力した後、当該受信回路部3が、受信および認識した制御信号を制御部47に再度転送し、制御部47にて出力した制御信号と入力した制御信号とのデータの差異を確認することで、より信頼性の高いシリアル通信を行うことができる。
【0058】
[電波修正時計の時刻修正動作]
次に、上記のような電波修正時計1における、標準電波による時刻修正動作について説明する。
図9は、電波修正時計1の時刻修正動作を示すフローチャートである。
図9において、電波修正時計1の制御部47は、外部操作部材6から手動受信処理を実施する旨の操作信号が入力されたり、予め設定された自動受信時刻となったことを認識すると、受信処理を開始する(S1)。
【0059】
このS1では、アンテナ2にて受信された標準電波を、同調回路31にて電圧信号(受信信号)に変換する。そして、第1増幅回路32、バンドパスフィルタ33、第2増幅回路34、包絡線検波回路35により、受信信号を所定レベルに増幅し、所望の周波数帯域の信号を抽出し、整流およびろ波して包絡線信号とする。さらに、この包絡線信号を二値化回路37により二値化してTCO信号とし、このTCO信号を制御回路部4に出力させる。
【0060】
次に、制御部47は、入力されたTCO信号の立ち上がり(あるいは立ち下がり)エッジの検出を行い、各パルスの幅を判別できるか、つまり秒同期がOKであるか否かを判断する(S2)。
S2で秒同期ができるようになっていれば、制御部47は、毎正分のマーカーを取得(認識)して、分同期を確立できたかを判断する(S3)。
【0061】
S3で分同期を確立できていれば、制御部47は、予め設定された回数分の受信ができたか否かを判定する(S4)。すなわち、標準電波では、1分毎に1つの時刻データが受信され、この受信時刻データ数(回数)を制限しておかないと、受信処理が長時間継続して消費電力も増大する。このため、本実施形態では、1度の受信処理において、N回分(例えば7回)の時刻データを受信したら、受信処理を終了するようにしている。このようにすることで、受信時間は最大でもN分(例えば7分)となり、受信時間がそれ以上長くなることを防止できる。
【0062】
S4でN回の受信が終了していない場合、制御部47は、分時情報のみを受信するように間欠受信動作を行う(S5)。
間欠受信動作では、制御部47は、PWRON信号を制御して、図8の例2のように、分時の情報が送信されている0〜20秒の間のみ受信部3Aを動作し、その他の情報が送信されている間は受信部3Aを停止する制御を行う。
同時に、制御部47は、AGCHLD信号を制御して、受信部3Aを停止する直前のAGC電圧を保持し、受信部3Aの動作を再開した直後にAGC電圧の保持を終了する制御を行う。
さらに、制御部47は、AND回路372に入力される制御信号を制御し、ゲインリセットモード(前記制御信号がHigh)またはゲイン保持モード(前記制御信号がLow)を選択する。
【0063】
このように、受信部3Aの停止中、AGC電圧を保持しておくと、受信部3Aを再動作させた際の起動性は1〜2秒以内に改善される。この理由を図10に基づいて説明する。
図10において、元の波形は、アンテナ2で受信した標準電波の波形である。包絡線検波回路35は、この波形の包絡線を抜き出すものである。PWRON信号がHighになると、受信部3Aが動作する。AGC回路36は、波形の振幅を一定範囲に保つため、AGC電圧を調整して第1増幅回路32のゲイン(増幅率)を調整する。標準電波は振幅変調されるため、二値化回路37で正確に二値化するにはAGC回路36は重要である。AGC回路36では、AGC電圧が高いとゲインを大きくするように制御される。PWRON信号がHighになり、AGCHLD信号がLowであれば、AGCコンデンサ363が充電され、AGC電圧は上昇して増幅回路32のゲインを上げていく。すると、包絡線検波回路35の出力も大きくなり、二値化回路37の閾値を超えるとTCOが出力され始める。
このPWRON信号が立ち上がってHighになってから、TOCが出力され始めるまでの時間が起動時間であり、通常、数秒から数十秒かかる。これは、標準電波のデータ転送速度が1bpsと低速のため、AGC回路36の応答速度を速くすることができず、AGC電圧の収束に時間がかかるためである。
【0064】
図10においても、AND回路372に入力される制御信号がHighとされたゲインリセットモードにおいて、AGCHLD信号がLowの状態で、PWRON信号がLowからHighに立ち上がると、リセット回路371によってAGC電圧がVSSにリセットされる。この状態からAGC回路36が動作すると、AGC電圧が徐々に上昇し、増幅回路32のゲインも連動して増加して包絡線検波回路35の出力も徐々に上昇する。そして、元の波形の振幅が大きな部分の包絡線信号が、二値化回路37の閾値を超えるレベルになるまで、つまりAGC電圧が適切なレベルにほぼ収束して、TOCが出力され始めるまでの起動時間は、数秒から数十秒かかる。
一方、AND回路372に入力される制御信号がLowとされたゲイン保持モードにおいて、AGCHLD信号がHighになれば、AGC電圧をその際の電圧に維持することができる。この状態でPWRON信号がLowからHighに変化すると、AGC電圧がほぼ収束レベルに維持されており、包絡線検波回路35の出力も、直ちに閾値と適切に比較可能なレベルになり、起動時間も1,2秒以内と大幅に改善される。
【0065】
制御部47は、S5の間欠受信動作で取得した1回目の受信時刻データ(分時)を記憶部42に記憶し、取得した時刻データの整合性がとれているかを判断する(S6)。この整合性の判断方法としては、例えば、内部時刻データ用時刻カウンタ431のカウンタ値と比較したり、複数回受信した時刻データ同士を比較して判断すればよい。本実施形態では、3つの時刻データを取得し、各時刻データが所定の時刻差、つまり1分間隔で時刻データを取得した場合には、各時刻データが1分毎ずれていれば正しい時刻データであると判断する。
従って、1回目の受信時刻データのみが取得できている場合、S6は「No」と判断され、S4に戻る。S4では、まだN回の受信が終了していないため、S5の間欠受信動作を継続する。
【0066】
制御部47は、このような制御を繰り返し、3回分の受信データが取得でき、S6で整合性がとれていることを確認できると、受信回路部3のデコード回路39に制御信号を送り、PWRON信号をLowにして、受信部3Aを停止して受信を終了する(S7)。
その後、制御部47は、受信した時刻データに基づいて時刻カウンタ43を修正し、駆動回路部46を介して表示部5の時刻表示を修正する(S8)。
その後、制御部47は、水晶振動子48からの基準信号に基づいて時刻カウンタ43を更新し、駆動回路部46を駆動して通常運針を行う(S9)。
【0067】
一方、制御部47は、S2,S3で「No」と判断された場合と、S4で「Yes」と判断された場合には、例えば、電波の受信状態が悪く、正しい時刻データを取得できない状態である可能性が高いため、受信部3Aを停止して受信を終了する(S10)。そして、正しい時刻データが取得できていないため、時刻修正を行わずに通常運針に戻る(S9)。
【0068】
[第1実施形態の作用効果]
本実施形態の電波修正時計1では、受信部3Aの停止中にAGC電圧を保持するAGCホールド機能を備えているため、受信部3Aを停止状態から作動状態に復帰させた際に、AGC電圧を一旦リセットする場合に比べて迅速に起動することができる。
このため、時刻データの受信処理時に、受信部3Aを間欠的に動作させても起動が遅れてタイムコードの取得抜けが発生するなどの不具合を防止できる。
ここで、例えば、標準電波を1日に1回受信する場合のような通常の受信処理は、水晶振動子48の精度などから分時のみのデータを取得できれば正しい時刻に修正できる。本実施形態では、受信部3Aの再起動を迅速にできるため、1分間のタイムコードフォーマットにおいて、分時のデータのみを受信し、その他のデータ送信時は受信部3Aを停止している。このため、時刻修正に要する受信消費電力を低減することができる。例えば、日本の標準電波JJYを受信する場合、分時のデータのみ受信する場合、受信部3Aを20秒間作動させればよい。従って、1分間の受信を行っていた従来例に比べ、受信時間を約1/3にでき、消費電力も約1/3に低減できる。
【0069】
受信回路部3は、デコード回路39を備え、デコード回路39にて制御回路部4から入力された制御信号をデコードし、デコードされた制御信号を受信部3Aに出力している。
このため、デコード回路39が制御信号をデコードするので、制御回路部4から出力される制御信号を簡易な信号に設定することができ、通信される信号の信頼性を向上させることができる。
【0070】
受信回路部3と制御回路部4とは、シリアル通信線により接続されている。このため、受信回路部3および制御回路部4をパラレル通信回路で接続する場合に比べて、通信線の数を減らすことができ、電波修正時計1における回路構成をより簡略化することができる。また、制御回路部4から受信回路部3にシリアル通信線を介して制御信号をシリアル出力することで、通信速度をより高速化することができる。さらには、制御回路部4と受信回路部3とを一対のシリアル通信線で接続し、双方向通信が可能な構成とすることで、制御部47から受信回路部3に制御信号を出力した後、当該受信回路部3が、受信および認識した制御信号を制御部47に再度転送し、制御部47にて出力した制御信号と入力した制御信号とのデータの差異を確認することができる。このような構成にすることで、より信頼性の高いシリアル通信を行うことができる。
【0071】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について、図11のフローチャートを参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、前述した他の実施形態と同一または同様の構成については、同一符号を付し、説明を省略または簡略する。
第1実施形態では、時刻データの受信をすべて間欠受信動作S5で行っていた。これに対し、第2実施形態は、最初から間欠受信動作S5を行うのではなく、確実性を期すために、1回目の受信データを取得する1サイクル目(1回目)の受信は、カレンダー情報(通算日、年、曜)も含めて1分のすべてのデータを受信する点が相違する。その他の処理は、前記第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0072】
第2実施形態において、制御部47は、図11に示すように、受信処理をスタート(S1)すると、秒同期がOKであるかを判断する(S2)。制御部47は、秒同期がOKであれば、マーカー取得ができて分同期がOKであるか判断する(S3)。
制御部47は、分同期がOKであれば、通常の受信動作を1データ分、つまり1分間だけ行う(S21)。そして、この通常受信動作S21で取得した時刻データを、内部時刻データ用時刻カウンタ431のデータと比較し、その整合性がOKであるかを判断する(S22)。
【0073】
S22で整合性がOKであれば、前記第1実施形態と同じS4〜S9の処理を行う。すなわち、第2実施形態では、2回目以降の受信は間欠受信動作S5で行い、分時データのみを受信する。そして、制御部47は、S4で予め設定したN回(例えば7回)の受信が終了しているかをチェックし、7回受信するまでに、取得した3回の受信データで整合性がOKとなれば(S6)、受信に成功したとみなして受信を終了し(S7)、時刻修正を行い(S8)、通常運針に移行する(S9)。従って、制御部47は、最初の3回の受信データで整合性が確認できれば、3個の時刻データを受信した時点で受信処理も終了する。
【0074】
一方、制御部47は、S2,S3,S22で「No」の場合や、S4で「Yes」の場合には、時刻修正を行わずに受信を終了する(S10)。
【0075】
このような第2実施形態によれば、前記第1実施形態と同じ作用効果を奏することができる。
さらに、最初の1回目のデータは、通常の受信動作(S21)によって、1サイクル分(1分間)のデータを受信しているので、毎正分のマーカーを確実に取得できて確実に分同期が取れていることを判断でき、間欠受信の確実性を増すことができる。
すなわち、JJYにおいて、分同期は、マーカーが2つ連続して入力されたか否かで判断できる。但し、信号状態によっては、他の信号をマーカーと誤判断する可能性があり、フレームマーカーの取得のみでは分同期も誤判定する可能性がある。
これに対し、本実施形態では、1回目は1サイクル分のデータを取得しているので、分同期も確実に判定でき、間欠受信の確実性も向上できる。
【0076】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
第3実施形態の電波修正時計1は、受信する電波を自動的に変更できるように構成されたものである。具体的には、第3実施形態の電波修正時計1は、日本の標準電波JJYにおいて、40kHzの電波と、60kHzの電波とを自動的に切り替えて受信するように制御される。
【0077】
このような電波修正時計1では、図12に示すように、受信処理がスタートすると(S1)、S2〜S9まで前記第1実施形態と同じ処理が行われる。この際、受信周波数は前回の受信時の周波数に設定される。
ここで、S2,S3で「No」、S4で「Yes」と判定された場合は、受信場所を移動したなどにより、受信可能な電波の種類が変更されている可能性がある。このため、制御部47は、図13に示すように、周波数の切り替え、同調周波数変更、リセット回路371によるAGC電圧のリセットの各処理を実行する(S31)。
すなわち、例えば、図12の受信処理では、40kHzの周波数に同調するように設定されていた場合、S31では60kHzの周波数に同調するように設定が変更される。
【0078】
また、受信する電波の種類が変更されることで、受信信号レベルも大きく異なっている可能性が高く、AGC電圧を保持する必要が無いため、制御部47は、S31においてAGC電圧をVSSに初期化し、最初のステップ(秒同期の確認処理S2)から受信処理を開始する。すなわち、制御部47は、受信電波が変更されると、AND回路372に入力される制御信号をHighとしてゲインリセットモードに移行し、この状態でPWRON信号がLowからHighに変化して、一時停止されていた受信部3Aの動作が再開されると、リセット回路371が作動してAGC電圧をVSSに初期化する。その後は、前記第1実施形態と同じ各処理S2〜S10を実行する。
【0079】
このような第3実施形態によれば、前記第1実施形態と同じ作用効果を奏することができる。
さらに、異なる標準電波を受信する場合には、S31において自動的に同調周波数などを切り替え、かつ、リセット回路371によってAGC電圧をリセットしているので、複数の標準電波を受信可能な電波修正時計1において、自動的に適切な電波を受信でき、かつ、受信周波数の変更によって受信レベルが大きく変動しても、AGC電圧を比較的迅速に適切なレベルに収束させることができる。
【0080】
[変形例]
なお、本発明は、前記各実施形態に限らない。
例えば、AGC回路36は、図5に示す構成のものに限らない。例えば、AGC回路36の機能は、ロジック回路を用いて実現するものに限らず、ソフトウエア制御で構成してもよい。
またAGC電圧の保持は、より確実性を増すため、A/Dコンバータと記憶回路を使った構成でも良く、これ以外の回路構成でもよい。A/Dコンバータを用いた場合には、デジタル的に処理するのでAGC電圧の保持時間の制約がなく、長期間の保持が可能となり、またAGC電圧の精度も向上できる。
【0081】
また、AGC電圧の起動時の所定の電圧はVSS電位でなくともよく、定電圧であるVREGでも構わない。この場合、AGCコンデンサ363をGNDに接続するときと反対に、入力信号が大きい強電界環境での起動時間が短くなる。その場合、プルダウン抵抗370は、GNDではなくVREGに接続されプルアップ抵抗とする構成でもよいし、PWRON信号がLowからHighに切り替えられた瞬間に、AGCコンデンサ363をVREGに接続してAGCコンデンサ363を急速充電するようなスイッチを設ける構成でも良い。
【0082】
さらに、本発明は、増幅回路32のゲインをAGC回路36のAGC電圧で制御するものに限らない。要するに、制御部47において、増幅回路32のゲインを制御し、受信部3Aを一時停止状態から再度作動させる場合に、一時停止前のゲインで動作を再開できればよい。
【0083】
さらに、電波修正時計1の受信対象となる標準電波は、日本のJJYに限らず、図3,4に示すように、各国の標準電波を受信するように構成してもよい。この場合、分時のデータを受信するための受信動作を行う期間は、各国の標準電波のタイムコードフォーマットに応じて設定すればよい。
【0084】
また、前記各実施形態の間欠受信動作S5は、図8の例2に示すように、分時のデータのみを受信するようにしていたが、分時データのパリティも受信するようにしてもよい。この場合、図8の例1に示すように、マーカーからパリティビットまで約40秒間連続して受信動作を行ってもよいし、分時のデータを受信後、一旦、受信部3Aを停止し、パリティビットを受信する際に受信部3Aを再動作させ、その後、受信部3Aを停止するようにしてもよい。
【0085】
さらに、モータによって指針を駆動するアナログウォッチの場合、時針および分針のステップ運針は、間欠受信動作において受信部3Aが停止している間に行うようにしてもよい。ウォッチの場合、モータコイルとアンテナ2との距離を十分に離すことができないため、運針のためにモータパルスが出力されるとモータコイルから磁界が発生し、その磁界がアンテナ2に飛び込んでノイズとなる可能性がある。従って、モータの駆動時に受信部3Aを停止していれば、モータコイルによるノイズの影響を受けることがなく、正しい時刻データを受信できる。
【0086】
また、モータによって指針を駆動するアナログウォッチの場合、時針および分針のステップ運針は、受信動作中であっても、AGC電圧を保持している間に行うようにしてもよい。すなわち、AGC電圧を保持していないと、モータコイルからのノイズによって受信信号のレベルが変動するため、AGC電圧も大きく変動する可能性がある。例えば、ノイズによって受信信号のレベルが見かけ上大きくなると、制御部47は、増幅回路32のゲインを下げようとしてAGC電圧を下げすぎてしまい、正常のレベルに復帰するまでに時間がかかり、その間のパルスを正しく二値化できず、データ抜けが生じる場合がある。
これに対し、受信動作中でも、AGC電圧を保持している間に運針すれば、ノイズの影響でAGC電圧が変動することを防止でき、正しいTCOを出力することができる。
【0087】
本発明の受信処理は、予め設定された時刻に受信する自動受信の場合に限らず、外部操作部材6の操作による手動受信時に行ってもよい。また、自動受信を行う条件としては、予め決められた時刻に受信を行う定時受信に限らず、例えば、太陽電池や紫外線センサ等を利用した屋外検出によって1日に1回の受信処理を行うように設定してもよい。
【0088】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範
囲で他の構造などに適宜変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】第1実施形態に係る電波修正時計の構成を示すブロック図である。
【図2】日本における標準電波「JJY」のタイムコードフォーマットを説明する図である。
【図3】ドイツにおける標準電波「DCF77」のタイムコードフォーマットを説明する図である。
【図4】アメリカにおける標準電波「WWVB」のタイムコードフォーマットを説明する図である。
【図5】AGC回路の構成を示す回路図である。
【図6】記憶部の構成を示すブロック図である。
【図7】時刻カウンタの構成を示すブロック図である。
【図8】受信期間の例を例示する説明図である。
【図9】電波修正時計の時刻修正動作を示すフローチャートである。
【図10】標準電波に含まれるTCに係る元の波形、PWRONおよびAGCHLD信号の波形、AGC電圧およびタイムコードの波形を示す図である。
【図11】第2実施形態の電波修正時計の時刻修正動作を示すフローチャートである。
【図12】第3実施形態の電波修正時計の時刻修正動作を示すフローチャートである。
【図13】図12の続きの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0090】
1…電波修正時計、3…受信回路部、3A…受信部、4…制御回路部、6…外部操作部材、32…第1増幅回路、35…包絡線検波回路、37…二値化回路、39…デコード回路、41…TCOデコード部、42…記憶部、43…時刻カウンタ、46…駆動回路部、47…制御部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、時刻情報を有する標準電波を受信し、受信した標準電波に基づいて時刻を修正する電波修正時計、およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、標準電波を受信可能な電波修正時計が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、1日に1回の受信時(午前3時)は、十分な時間、例えば3分間の受信処理を行ってタイムコードの全情報を得るが、午前3時以外の正時には、タイムコードの一部のみを受信して受信時間を短時間とすることで電力消費の無駄を除く時計が開示されている。
【0003】
ところで、標準電波は振幅変調であり、電波時計の受信回路は、まず、オートゲインコントロール回路(AGC回路、Automatic Gain Control)で増幅回路のゲインを調整して受信した信号レベルを所望のレベルに調整する必要がある。従って、電波時計では、レベル調整された受信信号の包絡線信号をフィルタなどで抜き出した後、比較器(コンパレータ)で包絡線信号と基準電圧とを比較して二値化し、タイムコード信号TCO(Time Code Out)を得て、時刻情報を入手し、時刻表示を行っている。
【0004】
このような受信回路において、AGC回路が安定動作するまでの時間を短縮する回路構成も提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平7-198878号公報
【特許文献2】特開2005-210266号公報
【特許文献3】特開2004-151055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、午前3時での受信処理では、十分な時間の受信処理を行っていたため、電力消費の低減効果は必ずしも高くないという問題があった。すなわち、近年の電波修正時計では、時刻精度の点では1日に1回受信すれば十分である。このような1日に1回の受信しか行わない時計においても、電力消費低減が求められているが、前記特許文献1では、この1日1回の受信時には十分な時間の受信処理を行っていたため、電力消費の低減効果は必ずしも高くなかった。
【0007】
また、1日1回の受信時に、必要な情報のみを受信して受信時間を短縮することも考えらえるが、次の理由により、実際の電波修正時計ではこのような制御を行うことができなかった。すなわち、標準電波は伝送速度が極めて遅い信号であり、AGC回路が安定動作するまでの時間はどうしても数秒を要し、その分、受信回路の停止後にAGC電圧が再度、収束して安定動作するまでの起動時間は十数秒程度と長くなってしまう。このことは、特許文献2,3の回路構成を採用した場合でも同様であった。
【0008】
このため、例えば、特許文献1の午前3時の受信処理のように、3つの時刻データを受信する場合、その受信途中で一時的に受信回路を停止させると、再起動までに時間がかかり、次の時刻データを受信できないおそれがあった。このため、実際の電波修正時計においては、受信中に受信回路を停止することはできず、連続して数分間の受信処理を行っており、その分、受信消費電力も低減することができなかった。
【0009】
本発明の目的は、上記問題点を解決するものであり、受信回路の動作を停止してからの再起動時間を短くでき、受信回路を間欠的に動作させても不具合が無く、時刻修正に要する受信消費電力を低減できる電波修正時計および電波修正時計の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電波修正時計は、標準電波を受信して時刻情報を取得して時刻修正を行う電波修正時計であって、前記標準電波を受信する受信部と、前記受信部を制御する制御部とを備え、前記受信部は、前記標準電波の受信信号を増幅し、ゲインを調整可能な増幅回路と、増幅した受信信号を所定の閾値に基づいて二値化して時刻情報を得る二値化回路とを備え、前記制御部は、時刻情報の取得中に、取得する必要がないデータが送信されている間は前記受信部の動作を一時停止させる間欠受信動作で前記受信部を制御し、前記受信部は、一時停止が解除されて動作を再開したときには、前記増幅回路のゲインを一時停止の前の状態から再開することを特徴とする。
【0011】
本発明では、受信部の動作が一時停止された後に動作を再開する場合、増幅回路のゲインを一時停止の前の状態から再開しているので、受信部の動作が再開された際に、正常な動作に迅速に復帰することができる。このため、受信部の動作が一時停止された際に、ゲインを初期値にリセットしてしまう場合に比べて、受信回路の動作を停止してからの再起動時間を短くでき、受信回路を間欠的に動作させても不具合を無くすことができ、時刻修正に要する受信消費電力を低減させることができる。
【0012】
本発明において、前記受信部は、前記増幅回路のゲインを制御するオートゲインコントロール回路(AGC回路)を備え、前記制御部は、間欠受信動作で一時停止している間、前記AGC回路を制御するオートゲインコントロール電圧(AGC電圧)を、前記動作停止時点の電圧に保持するとともに、前記一時停止が解除されて動作を再開した際には、前記保持しておいたAGC電圧に基づいてAGC回路の動作を再開させることが好ましい。
【0013】
本発明では、受信部の動作が一時停止されている間も、AGC回路のAGC電圧を動作停止時点の電圧に保持しているので、受信部の動作が再開された際に、正常な動作に迅速に復帰することができる。このため、受信部の動作が一時停止された際に、AGC電圧を保持しない場合に比べて、受信回路の動作を停止してからの再起動時間を短くでき、受信回路を間欠的に動作させても不具合を無くすことができ、時刻修正に要する受信消費電力を低減させることができる。
【0014】
本発明において、前記制御部は、受信部を動作させて、一定サイクルで送信される時刻情報を、複数サイクル分取得する受信制御を行うとともに、前記受信部を間欠受信動作で制御するのは、少なくとも1サイクル分の時刻情報を取得した場合であることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、少なくとも1サイクル分の時刻情報は、通常の受信動作によって受信しているので、毎正分のマーカーを確実に取得できて分同期が取れていることを確実に判断でき、その後の間欠受信動作において分同期を誤判定することを防止でき、間欠受信動作の確実性を増すことができる。
【0016】
本発明において、前記制御部は、前記標準電波において、分および時の情報が送信されている間は、受信部を動作させ、分および時の情報が送信されていない間は、受信部を一時停止させることが好ましい。
ここで、分および時の情報が送信されていない間とは、例えば、日、月、年、曜等のカレンダー情報が送信されている間である。
【0017】
標準電波において、分および時の情報が送信されている間のみ受信部を作動すれば、受信部の動作時間を1/3以下に低減でき、受信時の消費電力も大幅に低減することができる。
【0018】
本発明において、前記制御部は、受信部の動作を再開させたときに、前記増幅回路のゲインを一時停止の前の状態から再開するゲイン保持モードと、前記増幅回路のゲインを予め設定された所定のゲインにリセットするゲインリセットモードとを選択することが好ましい。
例えば、AGC回路を用いて増幅回路のゲインを制御している場合には、前記制御部は、受信部の動作を再開させたときに、前記保持しておいたAGC電圧に基づいてAGC回路の動作を再開させる電圧保持モード(ゲイン保持モード)と、前記保持しておいたAGC電圧とは異なる所定のAGC電圧に基づいてAGC回路の動作を再開させる電圧リセットモード(ゲインリセットモード)とを選択することが好ましい。
【0019】
ここで、前記受信部は、受信周波数を変更可能に構成され、前記制御部は、受信周波数が変更された場合には前記ゲインリセットモードを選択し、受信周波数が変更されてない場合には前記ゲイン保持モードを選択することが好ましい。
【0020】
本発明によれば、例えば受信周波数を変更する場合のように受信条件が変更された場合には、受信信号レベルも大きく変動している可能性が高く、受信部の動作を再開する場合に、増幅回路のゲインを一時停止の前の状態から再開しても、例えば、保持していたAGC電圧でAGC回路の動作を再開しても、適切なレベルで受信できるようになるまで、却って時間がかかる場合がある。
これに対し、本発明では、増幅回路のゲインを一時停止の前の状態から再開するゲイン保持モードの他に、前記ゲインを所定値にリセットするゲインリセットモードを選択できるので、受信条件に応じて適切な制御モードを選択でき、その分、適切なレベルで受信できるようになるまでの時間を短くできる。例えば、AGC電圧を制御する場合、保持していたAGC電圧でAGC回路を動作させる電圧保持モードの他に、AGC電圧を所定電圧にリセットしてAGC回路を動作させる電圧リセットモードを選択できるので、受信条件に応じて適切な制御モードを選択でき、その分、適切なレベルで受信できるようになるまでの時間を短くできる。
特に、受信周波数が変更された場合には、受信信号レベルも変動している可能性が高いため、電圧リセットモードで制御することで、適切な受信処理を迅速に行うことができる。
【0021】
本発明において、前記AGC回路は容量素子を備え、前記受信部の動作が一時停止されている間は、前記容量素子の電位でAGC電圧を保持することが好ましい。
【0022】
本発明によれば、AGC電圧を保持する場合には、前記容量素子をAGC回路から切り離す制御を行うだけでよいので、回路構成が簡易になり、AGC電圧の保持制御も容易に行うことができる。
【0023】
本発明は、標準電波を受信して時刻情報を取得して時刻修正を行う電波修正時計の制御方法であって、前記標準電波を受信する受信部と、前記受信部を制御する制御部とを備え、前記受信部は、前記標準電波の受信信号を増幅し、ゲインを調整可能な増幅回路と、増幅した受信信号を所定の閾値に基づいて二値化して時刻情報を得る二値化回路とを備え、前記時刻情報の取得中に、取得する必要がないデータが送信されている間は、前記受信部の動作を一時停止させる間欠受信動作で前記受信部を制御し、前記間欠受信動作で一時停止されている間は、前記増幅回路のゲインを、前記動作停止時点のゲインに保持し、前記一時停止が解除されて受信部の動作が再開された際には、前記保持しておいたゲインに基づいて増幅回路の動作を再開することを特徴とする。
本発明においても、前記電波修正時計と同じ作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明の第1の実施の形態に係る電波修正時計1を図面に基づいて説明する。
【0025】
[電波修正時計1の構成]
電波修正時計1は、図1に示すように、受信手段としてのアンテナ2と、受信回路部3と、制御回路部4と、表示部5と、外部操作部材6と、水晶振動子48とを備えている。
アンテナ2は、長波標準電波(以下、「標準電波」と称す)を受信し、受信した標準電波を受信回路部3に出力する。
受信回路部3は、アンテナ2にて受信した標準電波の受信信号を復調して、TCO(Time Code Out:タイムコード出力)として制御回路部4に出力する。なお、受信回路部3の詳細な説明は、後述する。
【0026】
制御回路部4は、入力されたTCOをデコードしてTC(タイムコード)を生成し、生成したTCに基づいて時刻カウンタ43の時刻を設定する。また、制御回路部4は、時刻カウンタ43の時刻を表示部5に表示させる制御をする。さらに、制御回路部4は、受信回路部3に制御信号を出力する。なお、制御回路部4の詳細な説明は、後述する。
【0027】
表示部5は、制御回路部4の駆動回路部46により駆動制御され、時刻カウンタ43でカウントされる時刻を表示させる。この表示部5としては、例えば液晶パネルを備え、液晶パネルに時刻を表示させる構成であってもよく、文字板および指針を備え、制御回路部4により指針を運針させて時刻を表示させる構成であってもよい。
【0028】
外部操作部材6は、例えばリューズや設定ボタンなどにより構成され、利用者により操作されることで制御回路部4に所定の操作信号を出力する。この操作信号としては、例えば、アンテナ2で受信される標準電波の種類(例えば、日本におけるJJY、アメリカ合衆国におけるWWVB、ドイツにおけるDCF77など)を設定する信号や、標準電波を受信して時刻を修正させる手動受信処理を要求する信号などが挙げられる。
【0029】
基準クロック用の水晶振動子48は、所定の基準信号(基準クロック、例えば1Hzの信号)を出力するものであり、この水晶振動子48から出力された基準信号が制御回路部4に入力されている。
【0030】
[受信回路部の構成]
受信回路部3は、図1に示すように、同調回路31と、第1増幅回路32と、バンドパスフィルタ(Band-pass filter,以下、「BPF」と略す場合がある)33と、第2増幅回路34と、包絡線検波回路35と、AGC(Auto Gain Control)回路36と、二値化回路37と、デコード回路39とを備えて構成されている。この受信回路部3のうち、デコード回路39を除く、同調回路31から二値化回路37により、本発明の受信部3Aが構成されている。
【0031】
同調回路31は、コンデンサを備えて構成され、当該同調回路31とアンテナ2とにより並列共振回路が構成される。この同調回路31は、特定の周波数の電波をアンテナ2で受信させる。この同調回路31により、アンテナ2で受信された標準電波が電圧信号に変換され、第1増幅回路32に出力される。なお、本実施形態の受信回路部3では、日本の標準電波「JJY」の他、アメリカ合衆国の標準電波「WWVB」、ドイツの標準電波「DCF77」、イギリスの標準電波「MSF」、中華人民共和国の標準電波「BPC」などの各地域における標準電波を受信可能に構成されている。
【0032】
ここで、時刻情報(タイムコード)は、各国毎に所定の時刻情報フォーマット(タイムコードフォーマット)に合わせて構成されている。
すなわち、図2に示す日本の標準電波(JJY)のタイムコードフォーマットでは、1秒ごとに一つの信号が送信され、60秒で1レコードとして構成されている。つまり、1フレームが60ビットのデータである。また、データ項目として現時刻の分、時、現在年の1月1日からの通算日、年(西暦下2桁)、曜日および「うるう秒」が含まれている。各項目の値は、各秒毎に割り当てられた数値の組み合わせによって構成され、この組み合わせのON、OFFが信号の種類から判断される。なお、図2中「M」で示されるのは正分(毎分0秒)に対応するマーカーであり、「P1〜P5」で示されるのはポジションマーカーであり、予めその位置が定められている信号である。なお、マーカーを示す信号は、約0.2msのパルス幅の信号であり、各項目においてON(2進の1)を表す信号は約0.5msのパルス幅の信号、OFF(2進の0)を表す信号は約0.8msのパルス幅の信号である。
なお、長波標準電波(JJY)は、日本では、40kHz(東日本)と60kHz(西日本)で送信が行われているが、各電波のタイムコードフォーマットは同じである。
【0033】
一方、図3に示すドイツの標準電波(DCF77)のタイムコードフォーマットでは、分、時、日、曜、月、年の各データ項目が設定されている。また、15秒目まではデータが存在せず、このため、各ポジションマーカP1,P2,P3やマーカーMの位置も図2のJJYとは異なっている。さらに、各時刻項目の前に、「R:予備アンテナ使用」、「A1:通常時間と夏時間の変更予告」、「Z1,Z2:通常時間と夏時間の表示」、「A2:うるう秒の表示」、「S:時間コードの開始ビット」等の項目が設定されている。
【0034】
また、図4に示すアメリカの標準電波(WWVB)のタイムコードフォーマットでは、分、時、日、年の各データ項目が設定されている。WWVBは、周波数は60kHzで西日本のJJYと同じであるが、年情報の位置等がJJYと異なっており、データを解析することでJJYおよびWWVBを区別することができる。
なお、図示しないがイギリスの標準電波(MSF)のタイムコードフォーマットや中華人民共和国の標準電波「BPC」も、他の国のものと異なっており、受信した時刻情報(タイムコード)のフォーマット(データ)によりその標準電波がどの出力局のものかを判別することができる。
【0035】
第1増幅回路32は、後述するAGC回路36から入力する信号に応じてゲインを調整可能に構成されている。そして、ゲインを調整された第1増幅回路32は、同調回路31から入力する受信信号を一定の振幅としてBPF33に入力するように増幅する。すなわち、第1増幅回路32は、AGC回路36から入力する信号に応じて、振幅が大きい場合にはゲインを低くし、振幅が小さい場合にはゲインを高くして、受信信号を一定の振幅となるように増幅する。
【0036】
BPF33は、所望の周波数帯の信号を抽出するフィルタである。すなわち、BPF33を介することにより、第1増幅回路32から入力した受信信号から搬送波成分以外が除去される。
【0037】
第2増幅回路34は、BPF33から入力する受信信号を、固定のゲインでさらに増幅する。
【0038】
包絡線検波回路35は、図示しない整流器と、図示しないローパスフィルタ(Low-Pass Filter,LPF)とを備えて構成され、第2増幅回路34から入力した受信信号を整流およびろ波し、ろ波して得られた包絡線信号を、AGC回路36および二値化回路37に出力する。
【0039】
[AGC回路]
AGC回路36は、包絡線検波回路35から入力した受信信号に基づいて、第1増幅回路32にて受信信号を増幅する際のゲインを決定する信号を出力する。
図5にはAGC回路36の具体例が示されている。
AGC回路36は、定電流源361と定電流源362の排他的なスイッチングによってAGCコンデンサ363を充放電させることでAGC電圧を制御する。このAGC電圧が前記第1増幅回路32のゲインとなる。
ここで、AGCコンデンサ363は、AGC制御に大きな時定数をもたせるために、通常は数μFの容量が必要となる。このため、AGCコンデンサ363は、IC内には集積できず、通常、セラミックコンデンサやタンタルコンデンサが使われる。
【0040】
コンパレータ364は、包絡線検波回路35からの信号を所定の基準電圧と比較し、前記信号が基準電圧より高い場合にはHigh信号、低い場合にはLow信号を出力する。コンパレータ364の出力は、NOR回路365に入力されるとともに、NOT回路366を介してNOR回路367に入力される。また、各NOR回路365,367には、デコード回路39からAGCHLD信号も入力されている。
このため、AGCHLD信号がLowであれば、コンパレータ364で検出された受信信号レベルに応じて、いずれか一方のNOR回路365,367の出力がHigh、他方がLowとなって、定電流源361,362が排他的にスイッチングされ、AGC電圧が最適な電圧に収束するようになる。
一方、AGCHLD信号がHigh信号になると、NOR回路365,367の出力は共にLowとなり、定電流源361,362の両方がAGCコンデンサ363から切り離され、AGCコンデンサ363のAGC電圧が保持される。
【0041】
また、AGCHLD信号と、受信部3Aのオン・オフ制御を行うPWRON信号とは、NOR回路368に入力され、このNOR回路368の出力は、スイッチ素子である電界効果トランジスタ369に入力される。この電界効果トランジスタ369には、プルダウン抵抗370が接続されている。
このため、受信部3Aの停止時つまりPWRON信号がLowであり、かつ、AGCHLD信号がLowの場合は、電界効果トランジスタ369がオンされ、プルダウン抵抗370を介して、AGC電圧はGND電位に固定され、回路の安定化が図られる。
この状態で受信部3Aが起動された場合、起動時のAGC電圧はGND電位となり、前記定電流源361,362の排他的にスイッチングによって、AGC電圧はGND電位から最適な電圧に収束制御される。
なお、上記条件以外、つまりPWRON信号=Low、かつ、AGCHLD信号=Lowの場合以外は、電界効果トランジスタ369がオフされてプルダウン抵抗370もAGCコンデンサ363から切り離される。
【0042】
さらに、AGC回路36には、リセット回路371も設けられている。このリセット回路371は、制御信号およびPWRON信号が入力されるAND回路372の出力によって作動される。制御信号は、通常はLowとされているが、受信周波数が切り替えられた際にHighにされる。この制御信号=Highの状態で、PWRON信号がLowからHighに立ち上がると、AND回路372の出力がLowからHighに変化し、リセット回路371が作動される。リセット回路371は、AGC電圧を電位VSSにリセットするものである。なお、本実施形態では、電位VSSはGND電位と同じに設定されているが、GND電位と異なる電位、例えば、負の電位に設定してもよい。
そして、前記制御信号は、リセット回路371が作動されるとLowに戻るため、リセット回路371は受信周波数が切り替えられた直後に1回のみ作動される。
受信周波数の切り替えの際はその前後で入力レベルが大きく変動する場合があり、このような場合に、前記リセット回路371でAGC電圧をリセットすれば、起動時間のばらつきを抑えるのに効果的である。
【0043】
二値化回路37は、二値化コンパレータで構成され、包絡線検波回路35から入力する包絡線信号を、所定の閾値(基準電圧)と比較して二値化し、この二値化信号すなわちTCO信号を出力する。
【0044】
具体的に、二値化回路37は、包絡線信号の電圧が基準電圧を上回っている場合にはHighレベル(ハイレベル)の電圧を有する信号を、また、包絡線信号の電圧が基準電圧を下回っている場合には、Highレベルの信号より電圧値の低いLowレベル(ローレベル)の信号を、TCO信号として、制御回路部4のTCOデコード部41に出力する。なお、包絡線信号の電圧が基準電圧を上回っている場合にはLowレベルを、包絡線信号の電圧が基準電圧を下回っている場合にはHighレベルの信号を、TCO信号として、制御回路部4のTCOデコード部41に出力するように構成することも可能である。
【0045】
デコード回路39は、後述する制御回路部4と、シリアル通信線SLを介して接続されている。そして、このデコード回路39は、制御回路部4から入力する制御信号およびクロック信号をデコードし、受信部3Aのパワーオン・オフ制御と、AGC回路36のAGC電圧を保持するAGCホールド制御とを行う。
【0046】
[制御回路部の構成]
制御回路部4は、前述のように、受信回路部3の動作を制御するものであり、具体的に、受信回路部3のデコード回路39に対して、受信回路部3のパワーオン・オフ制御と、AGC回路36のAGC電圧のホールド制御とを行う制御信号を出力する。また制御回路部4は、二値化回路37から入力するTCO信号をデコードして、デコードされて生成したタイムコードに基づいて、時刻カウンタ43の時刻を設定する。さらには、制御回路部4は、時刻カウンタ43の時刻を表示部5に表示させる制御をする。
この制御回路部4は、図1に示すように、タイムコードデコード手段としてのTCOデコード部41と、記憶部42と、時刻カウンタ43と、駆動回路部46と、制御部47とを備えて構成されている。なお、制御部47には、前記水晶振動子48から出力された基準信号が入力されている。
【0047】
TCOデコード部41は、受信回路部3の二値化回路37から入力するTCO信号をデコードして、当該TCO信号に含まれる日付情報および時刻情報等を有するタイムコード(TC)を抽出する。そして、TCOデコード部41は、抽出したTCを制御部47に出力する。
具体的には、TCOデコード部41は、TCO信号の波形を認識し、所定のパルス幅(例えば1Hz)に対する受信パルスデューティを計測する。そして、この受信パルスデューティの違いによりTCO信号からTCを認識する。例えば、日本国内において用いられる標準電波(JJY)では、1秒のパルス幅に対して、ハイレベル信号のパルス幅が0.5秒である場合(つまり、デューティが50%である場合)、「1」の信号(1信号)を認識する。また、1秒のパルス幅に対して、ハイレベル信号のパルス幅が0.8秒である場合(つまり、デューティが80%である場合)、「0」の信号(0信号)を認識する。1秒のパルス幅に対して、ハイレベル信号のパルス幅が0.2秒である場合(つまり、デューティが20%である場合)、「P」信号(P信号)を認識する。そして、TCOデコード部41は、これら認識した1信号、0信号、およびP信号の並びにより所定のTCを認識する。
【0048】
なお、上記において、JJYにおけるTCの認識を例示したが、受信された標準電波が他の種類である場合、それぞれの電波に対応するデューティにより、TCを認識する。例えば、アメリカ合衆国における標準電波(WWVB)では、デューティが50%である場合1信号、デューティが20%である場合0信号、デューティが80%である場合P信号を認識する。また、ドイツにおける標準電波(DCF77)では、デューティが80%である場合1信号、デューティが90%である場合0信号を認識し、イギリスにおける標準電波(MSF)では、デューティが80%である場合1信号、デューティが90%である場合0信号、デューティが50%である場合P信号を認識する。
【0049】
記憶部42は、制御回路部4による受信回路部3の制御等に必要な各種データやプログラム等を記憶するメモリである。このような記憶部42は、電波修正時計1の製造時に設定され、受信回路部3で受信する標準電波に関する電波データが記録される電波データテーブルを記憶している。
この電波データテーブルは、電波種類データと、電波種類毎のタイムコードフォーマットとが関連付けられて構成される電波データを1つのレコードとし、これらの電波データを複数記録するテーブル構造に構築されている。
ここで、電波種類データは、受信回路部3にて受信される標準電波の種類に関する情報であり、例えば、JJY、WWVB、DCF77、MSFなどが記録されている。
タイムコードフォーマットは、電波種類データにて特定される標準電波に含まれるTC(タイムコード)のフォーマット、つまり、年月日時分の各データがどのような順番やサイズで記憶されているかが記録されている。
【0050】
また、記憶部42には、図6に示すように、受信した時刻データ421が記憶されている。本実施形態では、最大7回の受信時刻データを記憶可能に構成されている。例えば、標準電波は1分毎で時刻データを送信しているため、最大7分の受信を行えば、7回分の時刻データを取得できる。この際、各時刻データは、1分ずつ異なる時刻データとなる。
【0051】
時刻カウンタ43は、水晶振動子48から出力される基準信号に基づいて、時間をカウントするものであり、図7に示すように、内部時刻データ用の時刻カウンタ431と、時計表示時刻データ用の時刻カウンタ432とを備えている。
具体的には、各カウンタ431,432は、それぞれ、秒をカウントする秒カウンタ、分をカウントする分カウンタ、時をカウントする時カウンタを備えている。
秒カウンタは、例えば水晶振動子48から1Hzの基準信号が出力されている場合、その信号を60カウントつまり60秒でループするカウンタである。分カウンタは、1Hzの基準信号を60回計数したところで1カウントし、60カウント、すなわち60分でループするカウントである。時カウンタは、1Hzの基準信号を3600回計数したところで1カウントし、24カウント、すなわち24時間でループするカウントである。
なお、分カウンタは、秒カウンタが60カウントするごとに秒カウンタから分カウンタに信号を出力して分カウンタをカウントアップさせる構成としてもよい。同様に、時カウンタは、分カウンタが60カウントするごとに分カウンタから時カウンタに信号を出力され、時カウンタをカウントアップさせる構成としてもよい。
【0052】
そして、内部時刻データ用の時刻カウンタ431は、時刻情報の受信に成功した場合には、受信した時刻データで更新され、それ以外は基準信号でカウントアップされる。
また、時計表示時刻データ用の時刻カウンタ432は、通常は内部時刻データ用の時刻カウンタ431と同じカウンタ値とされているが、利用者によって時差表示設定がされた場合には、利用者が設定した時差が加算される。例えば、日本から海外に移動する際に、日本において電波受信で電波修正時計1を修正した後、時差を設定して現地時刻を表示する場合には、前記カウンタ431,432は、時差分だけカウンタ値が相違することになる。
【0053】
ここで、JJYのタイムコードフォーマットでは、図2に示すように、1秒ごとに一つの信号が送信され、60秒で1レコードとして構成されている。つまり、1フレームが60ビットのデータである。また、データ項目として分、時の現時刻情報と、現在年の1月1日からの通算日、年(西暦下2桁)、曜日等のカレンダー情報とが含まれている。各項目の値は、各秒毎に割り当てられた数値の組み合わせによって構成され、この組み合わせのON、OFFが信号の種類から判断される。
なお、時分のデータをチェックするためのパリティビットは、日と年との間に設けられている。従って、上記パリティビットを受信してチェックする場合には、図8の例1に示すように、正分の立ち上がり(毎0秒)を示すマーカーから37秒まで受信すればよい。
一方、前回の受信からそれほど時間が経過していない場合や、複数の受信データから時分データをチェックできる場合など、分時のパリティビットを受信する必要がなければ、図8の例2に示すように、分時のデータの約20ビット(約20秒)だけ受信すればよい。
従って、従来のように、60ビット(60秒)分のデータを受信した場合に比べて、例1であれば受信時間を約2/3にでき、受信に要する消費電力も約2/3にできる。
また、例2であれば、受信時間を約1/3にでき、受信に要する消費電力も約1/3にできる。
【0054】
駆動回路部46は、制御部47から出力される時刻表示制御信号に基づいて、表示部5の表示状態を制御し、表示部5に時刻を表示させる制御をする。例えば、表示部5が液晶パネルを有し、液晶パネルに時刻を表示させる構成である場合、駆動回路部46は、時刻表示制御信号に基づいて、液晶パネルを制御し、液晶パネルに時刻を表示させる制御をする。また、表示部5が文字板および指針を有する構成である場合、駆動回路部46は、指針を駆動させるステッピングモータに、パルス信号を出力し、ステッピングモータの駆動力により指針を運針させる制御をする。
【0055】
制御部47は、水晶振動子48から入力されるクロック信号に基づいて駆動し各種制御処理を実施する。すなわち、制御部47は、TCOデコード部41から入力されるTCを、時刻カウンタ43に出力し、時刻カウンタ43のカウントを修正する制御をする。また、制御部47は、時刻カウンタ43にてカウントされる時刻を表示部5に表示させる旨の時刻表示制御信号を駆動回路部46に出力する。
【0056】
さらに、制御部47は、受信回路部3のデコード回路39に、受信部3Aのパワーオン・オフを制御する制御信号PWRONと、AGC回路36のAGC電圧を保持する制御信号AGCHLDを出力する。
具体的には、制御部47は、予め設定された定時受信時刻になった場合や、外部操作部材6で手動受信が指示された場合には、受信部3Aをパワーオンする制御信号を送信して受信部3Aを作動し、受信処理を開始する。そして、この受信処理時に、後述するように、所定のタイミングでパワーオフする制御信号を送信し、受信部3Aを一時停止させる。
また、このパワーオン、パワーオフに前後して、AGC回路36のAGC電圧を保持する制御信号AGCHLDを出力し、受信部3Aが一時停止中はAGC電圧を保持し続けるようにしている。
【0057】
なお、制御部47と、デコード回路39とは、前述のように、シリアル通信線SLにより接続され、制御信号は、シリアル通信線SLを介してデコード回路39に入力される。
ここで、制御部47と受信回路部3とのシリアル通信においては、制御部47と受信回路部3との間で双方向通信が可能な2線の同期式インターフェースを用いて、それぞれによる双方向のシリアル通信を行うようにしてもよい。このような場合、制御部47から受信回路部3に制御信号を出力した後、当該受信回路部3が、受信および認識した制御信号を制御部47に再度転送し、制御部47にて出力した制御信号と入力した制御信号とのデータの差異を確認することで、より信頼性の高いシリアル通信を行うことができる。
【0058】
[電波修正時計の時刻修正動作]
次に、上記のような電波修正時計1における、標準電波による時刻修正動作について説明する。
図9は、電波修正時計1の時刻修正動作を示すフローチャートである。
図9において、電波修正時計1の制御部47は、外部操作部材6から手動受信処理を実施する旨の操作信号が入力されたり、予め設定された自動受信時刻となったことを認識すると、受信処理を開始する(S1)。
【0059】
このS1では、アンテナ2にて受信された標準電波を、同調回路31にて電圧信号(受信信号)に変換する。そして、第1増幅回路32、バンドパスフィルタ33、第2増幅回路34、包絡線検波回路35により、受信信号を所定レベルに増幅し、所望の周波数帯域の信号を抽出し、整流およびろ波して包絡線信号とする。さらに、この包絡線信号を二値化回路37により二値化してTCO信号とし、このTCO信号を制御回路部4に出力させる。
【0060】
次に、制御部47は、入力されたTCO信号の立ち上がり(あるいは立ち下がり)エッジの検出を行い、各パルスの幅を判別できるか、つまり秒同期がOKであるか否かを判断する(S2)。
S2で秒同期ができるようになっていれば、制御部47は、毎正分のマーカーを取得(認識)して、分同期を確立できたかを判断する(S3)。
【0061】
S3で分同期を確立できていれば、制御部47は、予め設定された回数分の受信ができたか否かを判定する(S4)。すなわち、標準電波では、1分毎に1つの時刻データが受信され、この受信時刻データ数(回数)を制限しておかないと、受信処理が長時間継続して消費電力も増大する。このため、本実施形態では、1度の受信処理において、N回分(例えば7回)の時刻データを受信したら、受信処理を終了するようにしている。このようにすることで、受信時間は最大でもN分(例えば7分)となり、受信時間がそれ以上長くなることを防止できる。
【0062】
S4でN回の受信が終了していない場合、制御部47は、分時情報のみを受信するように間欠受信動作を行う(S5)。
間欠受信動作では、制御部47は、PWRON信号を制御して、図8の例2のように、分時の情報が送信されている0〜20秒の間のみ受信部3Aを動作し、その他の情報が送信されている間は受信部3Aを停止する制御を行う。
同時に、制御部47は、AGCHLD信号を制御して、受信部3Aを停止する直前のAGC電圧を保持し、受信部3Aの動作を再開した直後にAGC電圧の保持を終了する制御を行う。
さらに、制御部47は、AND回路372に入力される制御信号を制御し、ゲインリセットモード(前記制御信号がHigh)またはゲイン保持モード(前記制御信号がLow)を選択する。
【0063】
このように、受信部3Aの停止中、AGC電圧を保持しておくと、受信部3Aを再動作させた際の起動性は1〜2秒以内に改善される。この理由を図10に基づいて説明する。
図10において、元の波形は、アンテナ2で受信した標準電波の波形である。包絡線検波回路35は、この波形の包絡線を抜き出すものである。PWRON信号がHighになると、受信部3Aが動作する。AGC回路36は、波形の振幅を一定範囲に保つため、AGC電圧を調整して第1増幅回路32のゲイン(増幅率)を調整する。標準電波は振幅変調されるため、二値化回路37で正確に二値化するにはAGC回路36は重要である。AGC回路36では、AGC電圧が高いとゲインを大きくするように制御される。PWRON信号がHighになり、AGCHLD信号がLowであれば、AGCコンデンサ363が充電され、AGC電圧は上昇して増幅回路32のゲインを上げていく。すると、包絡線検波回路35の出力も大きくなり、二値化回路37の閾値を超えるとTCOが出力され始める。
このPWRON信号が立ち上がってHighになってから、TOCが出力され始めるまでの時間が起動時間であり、通常、数秒から数十秒かかる。これは、標準電波のデータ転送速度が1bpsと低速のため、AGC回路36の応答速度を速くすることができず、AGC電圧の収束に時間がかかるためである。
【0064】
図10においても、AND回路372に入力される制御信号がHighとされたゲインリセットモードにおいて、AGCHLD信号がLowの状態で、PWRON信号がLowからHighに立ち上がると、リセット回路371によってAGC電圧がVSSにリセットされる。この状態からAGC回路36が動作すると、AGC電圧が徐々に上昇し、増幅回路32のゲインも連動して増加して包絡線検波回路35の出力も徐々に上昇する。そして、元の波形の振幅が大きな部分の包絡線信号が、二値化回路37の閾値を超えるレベルになるまで、つまりAGC電圧が適切なレベルにほぼ収束して、TOCが出力され始めるまでの起動時間は、数秒から数十秒かかる。
一方、AND回路372に入力される制御信号がLowとされたゲイン保持モードにおいて、AGCHLD信号がHighになれば、AGC電圧をその際の電圧に維持することができる。この状態でPWRON信号がLowからHighに変化すると、AGC電圧がほぼ収束レベルに維持されており、包絡線検波回路35の出力も、直ちに閾値と適切に比較可能なレベルになり、起動時間も1,2秒以内と大幅に改善される。
【0065】
制御部47は、S5の間欠受信動作で取得した1回目の受信時刻データ(分時)を記憶部42に記憶し、取得した時刻データの整合性がとれているかを判断する(S6)。この整合性の判断方法としては、例えば、内部時刻データ用時刻カウンタ431のカウンタ値と比較したり、複数回受信した時刻データ同士を比較して判断すればよい。本実施形態では、3つの時刻データを取得し、各時刻データが所定の時刻差、つまり1分間隔で時刻データを取得した場合には、各時刻データが1分毎ずれていれば正しい時刻データであると判断する。
従って、1回目の受信時刻データのみが取得できている場合、S6は「No」と判断され、S4に戻る。S4では、まだN回の受信が終了していないため、S5の間欠受信動作を継続する。
【0066】
制御部47は、このような制御を繰り返し、3回分の受信データが取得でき、S6で整合性がとれていることを確認できると、受信回路部3のデコード回路39に制御信号を送り、PWRON信号をLowにして、受信部3Aを停止して受信を終了する(S7)。
その後、制御部47は、受信した時刻データに基づいて時刻カウンタ43を修正し、駆動回路部46を介して表示部5の時刻表示を修正する(S8)。
その後、制御部47は、水晶振動子48からの基準信号に基づいて時刻カウンタ43を更新し、駆動回路部46を駆動して通常運針を行う(S9)。
【0067】
一方、制御部47は、S2,S3で「No」と判断された場合と、S4で「Yes」と判断された場合には、例えば、電波の受信状態が悪く、正しい時刻データを取得できない状態である可能性が高いため、受信部3Aを停止して受信を終了する(S10)。そして、正しい時刻データが取得できていないため、時刻修正を行わずに通常運針に戻る(S9)。
【0068】
[第1実施形態の作用効果]
本実施形態の電波修正時計1では、受信部3Aの停止中にAGC電圧を保持するAGCホールド機能を備えているため、受信部3Aを停止状態から作動状態に復帰させた際に、AGC電圧を一旦リセットする場合に比べて迅速に起動することができる。
このため、時刻データの受信処理時に、受信部3Aを間欠的に動作させても起動が遅れてタイムコードの取得抜けが発生するなどの不具合を防止できる。
ここで、例えば、標準電波を1日に1回受信する場合のような通常の受信処理は、水晶振動子48の精度などから分時のみのデータを取得できれば正しい時刻に修正できる。本実施形態では、受信部3Aの再起動を迅速にできるため、1分間のタイムコードフォーマットにおいて、分時のデータのみを受信し、その他のデータ送信時は受信部3Aを停止している。このため、時刻修正に要する受信消費電力を低減することができる。例えば、日本の標準電波JJYを受信する場合、分時のデータのみ受信する場合、受信部3Aを20秒間作動させればよい。従って、1分間の受信を行っていた従来例に比べ、受信時間を約1/3にでき、消費電力も約1/3に低減できる。
【0069】
受信回路部3は、デコード回路39を備え、デコード回路39にて制御回路部4から入力された制御信号をデコードし、デコードされた制御信号を受信部3Aに出力している。
このため、デコード回路39が制御信号をデコードするので、制御回路部4から出力される制御信号を簡易な信号に設定することができ、通信される信号の信頼性を向上させることができる。
【0070】
受信回路部3と制御回路部4とは、シリアル通信線により接続されている。このため、受信回路部3および制御回路部4をパラレル通信回路で接続する場合に比べて、通信線の数を減らすことができ、電波修正時計1における回路構成をより簡略化することができる。また、制御回路部4から受信回路部3にシリアル通信線を介して制御信号をシリアル出力することで、通信速度をより高速化することができる。さらには、制御回路部4と受信回路部3とを一対のシリアル通信線で接続し、双方向通信が可能な構成とすることで、制御部47から受信回路部3に制御信号を出力した後、当該受信回路部3が、受信および認識した制御信号を制御部47に再度転送し、制御部47にて出力した制御信号と入力した制御信号とのデータの差異を確認することができる。このような構成にすることで、より信頼性の高いシリアル通信を行うことができる。
【0071】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について、図11のフローチャートを参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、前述した他の実施形態と同一または同様の構成については、同一符号を付し、説明を省略または簡略する。
第1実施形態では、時刻データの受信をすべて間欠受信動作S5で行っていた。これに対し、第2実施形態は、最初から間欠受信動作S5を行うのではなく、確実性を期すために、1回目の受信データを取得する1サイクル目(1回目)の受信は、カレンダー情報(通算日、年、曜)も含めて1分のすべてのデータを受信する点が相違する。その他の処理は、前記第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0072】
第2実施形態において、制御部47は、図11に示すように、受信処理をスタート(S1)すると、秒同期がOKであるかを判断する(S2)。制御部47は、秒同期がOKであれば、マーカー取得ができて分同期がOKであるか判断する(S3)。
制御部47は、分同期がOKであれば、通常の受信動作を1データ分、つまり1分間だけ行う(S21)。そして、この通常受信動作S21で取得した時刻データを、内部時刻データ用時刻カウンタ431のデータと比較し、その整合性がOKであるかを判断する(S22)。
【0073】
S22で整合性がOKであれば、前記第1実施形態と同じS4〜S9の処理を行う。すなわち、第2実施形態では、2回目以降の受信は間欠受信動作S5で行い、分時データのみを受信する。そして、制御部47は、S4で予め設定したN回(例えば7回)の受信が終了しているかをチェックし、7回受信するまでに、取得した3回の受信データで整合性がOKとなれば(S6)、受信に成功したとみなして受信を終了し(S7)、時刻修正を行い(S8)、通常運針に移行する(S9)。従って、制御部47は、最初の3回の受信データで整合性が確認できれば、3個の時刻データを受信した時点で受信処理も終了する。
【0074】
一方、制御部47は、S2,S3,S22で「No」の場合や、S4で「Yes」の場合には、時刻修正を行わずに受信を終了する(S10)。
【0075】
このような第2実施形態によれば、前記第1実施形態と同じ作用効果を奏することができる。
さらに、最初の1回目のデータは、通常の受信動作(S21)によって、1サイクル分(1分間)のデータを受信しているので、毎正分のマーカーを確実に取得できて確実に分同期が取れていることを判断でき、間欠受信の確実性を増すことができる。
すなわち、JJYにおいて、分同期は、マーカーが2つ連続して入力されたか否かで判断できる。但し、信号状態によっては、他の信号をマーカーと誤判断する可能性があり、フレームマーカーの取得のみでは分同期も誤判定する可能性がある。
これに対し、本実施形態では、1回目は1サイクル分のデータを取得しているので、分同期も確実に判定でき、間欠受信の確実性も向上できる。
【0076】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
第3実施形態の電波修正時計1は、受信する電波を自動的に変更できるように構成されたものである。具体的には、第3実施形態の電波修正時計1は、日本の標準電波JJYにおいて、40kHzの電波と、60kHzの電波とを自動的に切り替えて受信するように制御される。
【0077】
このような電波修正時計1では、図12に示すように、受信処理がスタートすると(S1)、S2〜S9まで前記第1実施形態と同じ処理が行われる。この際、受信周波数は前回の受信時の周波数に設定される。
ここで、S2,S3で「No」、S4で「Yes」と判定された場合は、受信場所を移動したなどにより、受信可能な電波の種類が変更されている可能性がある。このため、制御部47は、図13に示すように、周波数の切り替え、同調周波数変更、リセット回路371によるAGC電圧のリセットの各処理を実行する(S31)。
すなわち、例えば、図12の受信処理では、40kHzの周波数に同調するように設定されていた場合、S31では60kHzの周波数に同調するように設定が変更される。
【0078】
また、受信する電波の種類が変更されることで、受信信号レベルも大きく異なっている可能性が高く、AGC電圧を保持する必要が無いため、制御部47は、S31においてAGC電圧をVSSに初期化し、最初のステップ(秒同期の確認処理S2)から受信処理を開始する。すなわち、制御部47は、受信電波が変更されると、AND回路372に入力される制御信号をHighとしてゲインリセットモードに移行し、この状態でPWRON信号がLowからHighに変化して、一時停止されていた受信部3Aの動作が再開されると、リセット回路371が作動してAGC電圧をVSSに初期化する。その後は、前記第1実施形態と同じ各処理S2〜S10を実行する。
【0079】
このような第3実施形態によれば、前記第1実施形態と同じ作用効果を奏することができる。
さらに、異なる標準電波を受信する場合には、S31において自動的に同調周波数などを切り替え、かつ、リセット回路371によってAGC電圧をリセットしているので、複数の標準電波を受信可能な電波修正時計1において、自動的に適切な電波を受信でき、かつ、受信周波数の変更によって受信レベルが大きく変動しても、AGC電圧を比較的迅速に適切なレベルに収束させることができる。
【0080】
[変形例]
なお、本発明は、前記各実施形態に限らない。
例えば、AGC回路36は、図5に示す構成のものに限らない。例えば、AGC回路36の機能は、ロジック回路を用いて実現するものに限らず、ソフトウエア制御で構成してもよい。
またAGC電圧の保持は、より確実性を増すため、A/Dコンバータと記憶回路を使った構成でも良く、これ以外の回路構成でもよい。A/Dコンバータを用いた場合には、デジタル的に処理するのでAGC電圧の保持時間の制約がなく、長期間の保持が可能となり、またAGC電圧の精度も向上できる。
【0081】
また、AGC電圧の起動時の所定の電圧はVSS電位でなくともよく、定電圧であるVREGでも構わない。この場合、AGCコンデンサ363をGNDに接続するときと反対に、入力信号が大きい強電界環境での起動時間が短くなる。その場合、プルダウン抵抗370は、GNDではなくVREGに接続されプルアップ抵抗とする構成でもよいし、PWRON信号がLowからHighに切り替えられた瞬間に、AGCコンデンサ363をVREGに接続してAGCコンデンサ363を急速充電するようなスイッチを設ける構成でも良い。
【0082】
さらに、本発明は、増幅回路32のゲインをAGC回路36のAGC電圧で制御するものに限らない。要するに、制御部47において、増幅回路32のゲインを制御し、受信部3Aを一時停止状態から再度作動させる場合に、一時停止前のゲインで動作を再開できればよい。
【0083】
さらに、電波修正時計1の受信対象となる標準電波は、日本のJJYに限らず、図3,4に示すように、各国の標準電波を受信するように構成してもよい。この場合、分時のデータを受信するための受信動作を行う期間は、各国の標準電波のタイムコードフォーマットに応じて設定すればよい。
【0084】
また、前記各実施形態の間欠受信動作S5は、図8の例2に示すように、分時のデータのみを受信するようにしていたが、分時データのパリティも受信するようにしてもよい。この場合、図8の例1に示すように、マーカーからパリティビットまで約40秒間連続して受信動作を行ってもよいし、分時のデータを受信後、一旦、受信部3Aを停止し、パリティビットを受信する際に受信部3Aを再動作させ、その後、受信部3Aを停止するようにしてもよい。
【0085】
さらに、モータによって指針を駆動するアナログウォッチの場合、時針および分針のステップ運針は、間欠受信動作において受信部3Aが停止している間に行うようにしてもよい。ウォッチの場合、モータコイルとアンテナ2との距離を十分に離すことができないため、運針のためにモータパルスが出力されるとモータコイルから磁界が発生し、その磁界がアンテナ2に飛び込んでノイズとなる可能性がある。従って、モータの駆動時に受信部3Aを停止していれば、モータコイルによるノイズの影響を受けることがなく、正しい時刻データを受信できる。
【0086】
また、モータによって指針を駆動するアナログウォッチの場合、時針および分針のステップ運針は、受信動作中であっても、AGC電圧を保持している間に行うようにしてもよい。すなわち、AGC電圧を保持していないと、モータコイルからのノイズによって受信信号のレベルが変動するため、AGC電圧も大きく変動する可能性がある。例えば、ノイズによって受信信号のレベルが見かけ上大きくなると、制御部47は、増幅回路32のゲインを下げようとしてAGC電圧を下げすぎてしまい、正常のレベルに復帰するまでに時間がかかり、その間のパルスを正しく二値化できず、データ抜けが生じる場合がある。
これに対し、受信動作中でも、AGC電圧を保持している間に運針すれば、ノイズの影響でAGC電圧が変動することを防止でき、正しいTCOを出力することができる。
【0087】
本発明の受信処理は、予め設定された時刻に受信する自動受信の場合に限らず、外部操作部材6の操作による手動受信時に行ってもよい。また、自動受信を行う条件としては、予め決められた時刻に受信を行う定時受信に限らず、例えば、太陽電池や紫外線センサ等を利用した屋外検出によって1日に1回の受信処理を行うように設定してもよい。
【0088】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範
囲で他の構造などに適宜変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】第1実施形態に係る電波修正時計の構成を示すブロック図である。
【図2】日本における標準電波「JJY」のタイムコードフォーマットを説明する図である。
【図3】ドイツにおける標準電波「DCF77」のタイムコードフォーマットを説明する図である。
【図4】アメリカにおける標準電波「WWVB」のタイムコードフォーマットを説明する図である。
【図5】AGC回路の構成を示す回路図である。
【図6】記憶部の構成を示すブロック図である。
【図7】時刻カウンタの構成を示すブロック図である。
【図8】受信期間の例を例示する説明図である。
【図9】電波修正時計の時刻修正動作を示すフローチャートである。
【図10】標準電波に含まれるTCに係る元の波形、PWRONおよびAGCHLD信号の波形、AGC電圧およびタイムコードの波形を示す図である。
【図11】第2実施形態の電波修正時計の時刻修正動作を示すフローチャートである。
【図12】第3実施形態の電波修正時計の時刻修正動作を示すフローチャートである。
【図13】図12の続きの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0090】
1…電波修正時計、3…受信回路部、3A…受信部、4…制御回路部、6…外部操作部材、32…第1増幅回路、35…包絡線検波回路、37…二値化回路、39…デコード回路、41…TCOデコード部、42…記憶部、43…時刻カウンタ、46…駆動回路部、47…制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準電波を受信して時刻情報を取得して時刻修正を行う電波修正時計であって、
前記標準電波を受信する受信部と、
前記受信部を制御する制御部とを備え、
前記受信部は、
前記標準電波の受信信号を増幅し、ゲインを調整可能な増幅回路と、
増幅した受信信号を所定の閾値に基づいて二値化して時刻情報を得る二値化回路とを備え、
前記制御部は、時刻情報の取得中に、取得する必要がないデータが送信されている間は前記受信部の動作を一時停止させる間欠受信動作で前記受信部を制御し、
前記受信部は、一時停止が解除されて動作を再開したときには、前記増幅回路のゲインを一時停止の前の状態から再開することを特徴とする電波修正時計。
【請求項2】
請求項1に記載の電波修正時計において、
前記受信部は、前記増幅回路のゲインを制御するオートゲインコントロール回路を備え、
前記制御部は、間欠受信動作で一時停止している間、前記オートゲインコントロール回路を制御するオートゲインコントロール電圧を、前記動作停止時点の電圧に保持するとともに、前記一時停止が解除されて動作を再開した際には、前記保持しておいたオートゲインコントロール電圧に基づいてオートゲインコントロール回路の動作を再開させることを特徴とする電波修正時計。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電波修正時計において、
前記制御部は、受信部を動作させて、一定サイクルで送信される時刻情報を、複数サイクル分取得する受信制御を行うとともに、前記受信部を間欠受信動作で制御するのは、少なくとも1サイクル分の時刻情報を取得した場合であることを特徴とする電波修正時計。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の電波修正時計において、
前記制御部は、前記標準電波において、分および時の情報が送信されている間は、受信部を動作させ、分および時の情報が送信されていない間は、受信部を一時停止させることを特徴とする電波修正時計。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の電波修正時計において、
前記制御部は、受信部の動作を再開させたときに、前記増幅回路のゲインを一時停止の前の状態から再開するゲイン保持モードと、前記増幅回路のゲインを予め設定された所定のゲインにリセットするゲインリセットモードとを選択することを特徴とする電波修正時計。
【請求項6】
請求項5に記載の電波修正時計において、
前記受信部は、受信周波数を変更可能に構成され、
前記制御部は、受信周波数が変更された場合には前記ゲインリセットモードを選択し、受信周波数が変更されてない場合には前記ゲイン保持モードを選択することを特徴とする電波修正時計。
【請求項7】
請求項2に記載の電波修正時計において、
前記オートゲインコントロール回路は容量素子を備え、前記受信部の動作が一時停止されている間は、前記容量素子の電位でオートゲインコントロール電圧を保持することを特徴とする電波修正時計。
【請求項8】
標準電波を受信して時刻情報を取得して時刻修正を行う電波修正時計の制御方法であって、
前記標準電波を受信する受信部と、
前記受信部を制御する制御部とを備え、
前記受信部は、
前記標準電波の受信信号を増幅し、ゲインを調整可能な増幅回路と、
増幅した受信信号を所定の閾値に基づいて二値化して時刻情報を得る二値化回路とを備え、
前記時刻情報の取得中に、取得する必要がないデータが送信されている間は、前記受信部の動作を一時停止させる間欠受信動作で前記受信部を制御し、
前記間欠受信動作で一時停止されている間は、前記増幅回路のゲインを、前記動作停止時点のゲインに保持し、
前記一時停止が解除されて受信部の動作が再開された際には、前記保持しておいたゲインに基づいて増幅回路の動作を再開することを特徴とする電波修正時計の制御方法。
【請求項1】
標準電波を受信して時刻情報を取得して時刻修正を行う電波修正時計であって、
前記標準電波を受信する受信部と、
前記受信部を制御する制御部とを備え、
前記受信部は、
前記標準電波の受信信号を増幅し、ゲインを調整可能な増幅回路と、
増幅した受信信号を所定の閾値に基づいて二値化して時刻情報を得る二値化回路とを備え、
前記制御部は、時刻情報の取得中に、取得する必要がないデータが送信されている間は前記受信部の動作を一時停止させる間欠受信動作で前記受信部を制御し、
前記受信部は、一時停止が解除されて動作を再開したときには、前記増幅回路のゲインを一時停止の前の状態から再開することを特徴とする電波修正時計。
【請求項2】
請求項1に記載の電波修正時計において、
前記受信部は、前記増幅回路のゲインを制御するオートゲインコントロール回路を備え、
前記制御部は、間欠受信動作で一時停止している間、前記オートゲインコントロール回路を制御するオートゲインコントロール電圧を、前記動作停止時点の電圧に保持するとともに、前記一時停止が解除されて動作を再開した際には、前記保持しておいたオートゲインコントロール電圧に基づいてオートゲインコントロール回路の動作を再開させることを特徴とする電波修正時計。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電波修正時計において、
前記制御部は、受信部を動作させて、一定サイクルで送信される時刻情報を、複数サイクル分取得する受信制御を行うとともに、前記受信部を間欠受信動作で制御するのは、少なくとも1サイクル分の時刻情報を取得した場合であることを特徴とする電波修正時計。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の電波修正時計において、
前記制御部は、前記標準電波において、分および時の情報が送信されている間は、受信部を動作させ、分および時の情報が送信されていない間は、受信部を一時停止させることを特徴とする電波修正時計。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の電波修正時計において、
前記制御部は、受信部の動作を再開させたときに、前記増幅回路のゲインを一時停止の前の状態から再開するゲイン保持モードと、前記増幅回路のゲインを予め設定された所定のゲインにリセットするゲインリセットモードとを選択することを特徴とする電波修正時計。
【請求項6】
請求項5に記載の電波修正時計において、
前記受信部は、受信周波数を変更可能に構成され、
前記制御部は、受信周波数が変更された場合には前記ゲインリセットモードを選択し、受信周波数が変更されてない場合には前記ゲイン保持モードを選択することを特徴とする電波修正時計。
【請求項7】
請求項2に記載の電波修正時計において、
前記オートゲインコントロール回路は容量素子を備え、前記受信部の動作が一時停止されている間は、前記容量素子の電位でオートゲインコントロール電圧を保持することを特徴とする電波修正時計。
【請求項8】
標準電波を受信して時刻情報を取得して時刻修正を行う電波修正時計の制御方法であって、
前記標準電波を受信する受信部と、
前記受信部を制御する制御部とを備え、
前記受信部は、
前記標準電波の受信信号を増幅し、ゲインを調整可能な増幅回路と、
増幅した受信信号を所定の閾値に基づいて二値化して時刻情報を得る二値化回路とを備え、
前記時刻情報の取得中に、取得する必要がないデータが送信されている間は、前記受信部の動作を一時停止させる間欠受信動作で前記受信部を制御し、
前記間欠受信動作で一時停止されている間は、前記増幅回路のゲインを、前記動作停止時点のゲインに保持し、
前記一時停止が解除されて受信部の動作が再開された際には、前記保持しておいたゲインに基づいて増幅回路の動作を再開することを特徴とする電波修正時計の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−168621(P2009−168621A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7133(P2008−7133)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]