説明

電磁ポンプ装置

【課題】作動流体のスムーズな吸入を可能としつつコンパクトな構成とする。
【解決手段】吸入用逆止弁のプラグ78は、フランジ部78bから円筒部78aに向かって、貫通孔78cの内径が内径D2から内径D1まで大から小に変化する縮径の度合いをもって縮径された縮径部79c(テーパ面79c1,79c2)が形成されるから、縮径の度合いが一定のものに比してフランジ部78bの厚みの増加を抑えつつフランジ部78bと円筒部78aとの境界部分の厚みTを確保することができ、また、縮径部79cの縮径により作動油をスムーズに吸入することができる。この結果、作動油のスムーズな吸入を可能としつつ吸入用逆止弁が大きくなるのを防止することができ、電磁ポンプ装置をコンパクトな構成とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入口にストレーナが取り付けられる電磁ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電磁ポンプ装置としては、電磁部と、電磁部のオンオフによりポンプ室内を軸方向に往復動可能な可動鉄心と、ポンプ室に内蔵されて吸入口からポンプ室内への一方向の作動油の流れを可能にする入口逆止弁機構と、ポンプ室に内蔵されてポンプ室から吐出口への一方向の作動油の流れを可能にする出口逆止弁機構とを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この電磁ポンプ装置では、吸入口が入口逆止弁機構より軸方向に延びてから軸方向と直交する方向に開口して油路に接続されており、その接続部分にはゴミなどの異物を排除するためのストレーナが取り付けられている。また、ストレーナを流入する作動油の流入抵抗を少なくするため、油路との接続部分が吸入口よりも一段大きな径となるように段差部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−291914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような電磁ポンプ装置においては、軸方向に開口する吸入口を入口逆止弁機構に形成して、入口逆止弁機構の直前にストレーナを配置するものもある。そのような装置においても、上述した段差部を入口逆止弁機構内の吸入口に設けることが考えられる。しかし、段差部を設けるためには入口逆止弁機構の吸入口の内径を一段大きくした後に軸方向に延ばす必要があるため、入口逆止弁機構が大きくなり、電磁ポンプ装置の大型化に繋がることがある。
【0005】
本発明の電磁ポンプ装置は、作動流体のスムーズな吸入を可能としつつコンパクトな構成とすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電磁ポンプ装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の電磁ポンプ装置は、
吸入口にストレーナが取り付けられる電磁ポンプ装置であって、
筒部と、該筒部の端縁から径方向に延伸されるフランジ部とを有し、前記筒部と前記フランジ部とを貫通して該フランジ部の端面で前記吸入口をなす貫通孔が形成された吸入用逆止弁を備え、
該吸入用逆止弁は、前記フランジ部から前記筒部に向かって前記貫通孔の内径が大から小に変化する縮径の度合いをもって縮径されるよう縮径部が形成されてなる
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明の電磁ポンプ装置では、筒部と筒部の端縁から径方向に延伸されるフランジ部とを有し、筒部とフランジ部とを貫通してフランジ部の端面で吸入口をなす貫通孔が形成された吸入用逆止弁を備え、その吸入用逆止弁は、フランジ部から筒部に向かって貫通孔の内径が大から小に変化する縮径の度合いをもって縮径されるよう縮径部が形成されてなる。これにより、縮径の度合いが一定のものに比してフランジ部の厚みの増加を抑えつつフランジ部と円筒部との境界部分の厚みを確保することができ、また、縮径部の縮径により作動流体をスムーズに吸入することができる。この結果、作動流体のスムーズな吸入を可能としつつコンパクトな構成とすることができる。
【0009】
こうした本発明の電磁ポンプ装置において、前記縮径部は、傾斜角の異なる二段のテーパ面により形成されてなるものとすることもできる。こうすれば、比較的簡単な加工で縮径部を形成することができる。この態様の本発明の電磁ポンプ装置において、前記縮径部は、前記二段のテーパ面の傾斜角が変化する変曲点が、前記筒部と前記フランジ部との境界部分の厚みが所定の厚み以上となる位置に定められてなるものとすることもできる。こうすれば、フランジ部と円筒部との境界部分の厚みをより確実に確保することができる。
【0010】
また、本発明の電磁ポンプ装置において、前記吸入用逆止弁は、前記フランジ部の端面と前記縮径部との間に、前記吸入口の内径をもって均一の径に形成されたストレート部を有するものとすることもできる。こうすれば、作動流体をよりスムーズに吸入することができる。また、ストレーナに覆われるフランジ部の端面の面積を比較的大きくすることができるから、ストレーナに作用する作動流体の圧力をより適切に受けることができる。
【0011】
さらに、本発明の電磁ポンプ装置において、前記吸入用逆止弁は、前記吸入口の内径が前記筒部の外径よりも大きな径に形成されてなるものとすることもできる。このような開口部材において、第2の内径から第1の内径に向けて一定の度合いで縮径すると、部分的に厚みが大きく減少する部分が生じやすいため、本発明を適用する意義が大きい。
【0012】
そして、シリンダ内をピストンが往復動することにより作動流体を圧送する本発明の電磁ポンプ装置において、前記吸入用逆止弁は、前記シリンダに内蔵されてなるものとすることもできる。こうすれば、電磁ポンプ装置をよりコンパクトな構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例としての電磁ポンプ20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】吸入用逆止弁70の組み付けの様子を示す説明図である。
【図3】吸入用逆止弁70の組み付け後の外観を示す外観図である。
【図4】プラグ78の斜視図である。
【図5】図4のプラグ78の斜視図におけるA−A断面を示すA−A断面図である。
【図6】実施例とは異なる縮径部を形成した場合の比較例を示す説明図である。
【図7】ピストン60に吐出用逆止弁80を組み付ける様子を示す説明図である。
【図8】ピストン60に吐出用逆止弁80を組み付けた後の外観を示す外観図である。
【図9】シリンダ50にピストン60,吐出用逆止弁80,スプリング46,吸入用逆弁70,ストレーナ90を組み付ける様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の一実施例としての電磁ポンプ20の構成の概略を示す構成図である。実施例の電磁ポンプ20は、電磁力を発生させるソレノイド部30と、ソレノイド部30の電磁力により作動するポンプ部40と、を備える。なお、電磁ポンプ20は、例えば、エンジンと自動変速機とを搭載する車両における、自動変速機が備える摩擦係合要素(クラッチやブレーキ)を油圧駆動するための油圧制御装置の一部として構成することができる。
【0016】
ソレノイド部30は、底付き円筒部材としてのソレノイドケース31に、電磁コイル32,可動子としてのプランジャ34,固定子としてのコア36が配置されている。ソレノイド部30は、電磁コイル32に電流を印加することにより、ソレノイドケース31,プランジャ34,コア36を磁束が周回する磁気回路を形成し、プランジャ34が吸引されてプランジャ34の先端に当接するシャフト38を押し出す。
【0017】
ポンプ部40は、ソレノイド部30からの電磁力とスプリング46の付勢力とによりピストン60を往復動させることにより作動油を圧送するピストンポンプとして構成されており、一端がソレノイド部30のソレノイドケース31に接合された中空円筒状のシリンダ50と、シリンダ50内を摺動可能に配置され基端面がソレノイド部30のシャフト38の先端に同軸上に当接するピストン60と、ピストン60の先端面に当接しソレノイド部30からの電磁力が作用する方向とは逆向きにピストン60を付勢するスプリング46と、スプリング46をピストン60の先端面とは反対側から支持しポンプ室56へ吸入する方向の作動油の流れを許可し逆方向の流れを禁止する吸入用逆止弁70と、吸入用逆止弁70の吸入口に配設され吸入される作動油に含まれるゴミなどの異物を捕捉するストレーナ90と、ピストン60に内蔵されポンプ室56から吐出する方向の作動油の流れを許可し逆方向の流れを禁止する吐出用逆止弁80と、シリンダ50内にピストン60と吐出用逆止弁80とスプリング46と吸入用逆止弁70とが配置された状態でシリンダ50の他端を覆うシリンダカバー48と、を備える。ポンプ部40は、吸入ポート42がシリンダカバー48の軸中心に形成され、吐出ポート44がシリンダ50の側面に周方向の一部を切り欠くようにして形成されている。
【0018】
ピストン60は、円筒形状のピストン本体62と、ピストン本体62よりも外径が小さく端面がソレノイド部30のシャフト38の先端に当接された円筒形状のシャフト部64と、からなる段付き形状に形成されており、ソレノイド部30のシャフト38に連動してシリンダ50内を往復動する。ピストン60には、軸中心に円筒形状の底付き中空部62aが形成されており、この中空部62aに吐出用逆止弁80が配置されている。また、中空部62aは、ピストン60の先端面からピストン本体62内部を貫通しシャフト部64内部の途中まで延伸されている。シャフト部64には、径方向に互いに90度の角度で交差する2本の貫通孔64a,64bが形成されている。シャフト部64の周囲には吐出ポート44が形成されており、中空部62aは2本の貫通孔64a,64bを介して吐出ポート44と連通する。
【0019】
吸入用逆止弁70は、シリンダ50内に嵌挿され内部に底付きの中空部72aが形成されると共にこの中空部72aの底に軸中心で中空部72aとポンプ室56とを連通させる中心孔72bが形成された弁本体72と、ボール74と、ボール74に付勢力を付与するスプリング76と、ボール74の座部をなすプラグ78と、を備える。図2に吸入用逆止弁70の組み付けの様子を示し、図3に吸入用逆止弁70の組み付け後の外観を示す。吸入用逆止弁70は、図示するように、弁本体72の中空部72aに、スプリング76,ボール74の順に挿入した後、プラグ78を中空部72aに圧入することにより行なわれる。プラグ78は、弁本体72の中空部72aに圧入が可能な外径を有する円筒部78aと、円筒部78aの端縁から径方向に延伸されたフランジ部78bとを有するフランジ付きの円筒部材として形成されており、このフランジ部78bの端面を覆うようにストレーナ90が取り付けられる。ストレーナ90は、図2に示すように、中心領域に多数の細孔が形成されて(細孔形成領域92a)ストレーナ面をなす円盤部92と、円盤部92の外周縁から直交方向に延びて先端の爪が内方に屈曲した3本の脚部94とにより構成されている。このため、ストレーナ90は、図3に示すように、脚部94からプラグ78のフランジ部78bに被せられると、脚部94の先端の爪がフランジ部78bと円筒部78aとの段差部分に引っ掛かり、脱落しないようになっている。実施例では、このようにして吸入用逆止弁70とストレーナ90を組み付けることにより、これらをサブアッシーとしている(図3参照)。
【0020】
ここで、吸入用逆止弁70のプラグ78の形状の詳細について説明する。図4にプラグ78の斜視図を示し、図5に図4のプラグ78の斜視図におけるA−A断面を示す。図示するように、プラグ78には、円筒部78aとフランジ部78bとを貫通する貫通孔78cが形成されており、円筒部78a側にはボール74の外径よりも小さな内径D1で長さLの中心部79が形成されている。なお、この内径D1は、例えば、電磁ポンプ20に必要とされる吐出量(吸入量)から中心部79を通過する作動油の流量を求め、求めた流量と中心部79を通過する作動油の流速や流入抵抗などとに基づいて定められる。また、プラグ78には、中心部79と連通して図5中の左から右に向かって内径が徐々に大きくなるテーパ部79aが形成されており、このテーパ部79aに当接することでボール74が位置決めされる。さらに、プラグ78には、フランジ部78bの端面78b1側に、ストレーナ90の細孔形成領域92aの径と同等の内径D2を所定長さに亘って有するストレート部79bが形成されている。なお、ストレーナ90の細孔の大きさや数は、例えば、捕捉したい異物の大きさや細孔を通過する作動油の流速や流入抵抗などを考慮して細孔の大きさを求め、求めた細孔の大きさと上述した中心部79の流量とに基づいて必要な流量の作動油を吸入できるよう細孔の数を算出することにより求められる。このようにして求めた細孔の大きさや数から細孔形成領域92aの径即ち内径D2が定められる。なお、実施例では、内径D2が円筒部78aの外径よりも大きな径に定められている。また、プラグ78には、フランジ部78b側から円筒部78a側に向かって(図5中左から右に向かって)、内径が徐々に小さくなる縮径部79cが形成されている。この縮径部79cは、中心部79の軸中心に対する面の傾斜角が異なる二段のテーパ面79c1,79c2を有しており、テーパ面79c2の傾斜角(図5中の角度β)がテーパ面79c1の傾斜角(図5中の角度α)よりも小さくなるよう形成されている。このため、テーパ面79c1,79c2における縮径の度合いも異なり、テーパ面79c2における縮径の度合いはテーパ面79c1における縮径の度合いよりも小さなものとなる。即ち、縮径部79cは、貫通孔78cの内径が内径D2から内径D1まで大から小に変化する縮径の度合いをもって縮径されるよう形成されている。縮径部79cをこのように形成する理由について以下に説明する。図6に実施例とは異なる縮径部を形成した場合の比較例を示す。
【0021】
まず、図6(a)に、中心部79の内径D1からストレート部79bの内径D2まで傾斜角が角度α(テーパ面79c1の傾斜角)のテーパ面を形成した比較例1を示す。図示するように、実施例に比して円筒部78aとフランジ部78bとの境界部分の厚みTが著しく薄くなるため、プラグ78の剛性が不足することがある。特に、実施例では、内径D2が円筒部78aの外径よりも大きいことから、厚みTが薄くなりやすいものとなる。次に、図6(b)に、厚みTを実施例と同じ厚みに維持するようストレート部79bの内径D2から中心部79の内径D1まで傾斜角が角度αのテーパ面を形成した比較例2を示す。図示するように、中心部79の長さLが実施例よりも長くなるから、作動油のスムーズな流れが阻害されることがある。続いて、図6(c)に、中心部79の内径D1からストレート部79bの内径D2まで傾斜角が角度β(テーパ面79c2の傾斜角)のテーパ面を形成した比較例3を示す。図示するように、実施例よりもフランジ部78bの厚みが増してプラグ78が大きくなる。このため、吸入用逆止弁70も大きくなり、電磁ポンプ20の大型化に繋がることになる。このように、内径D1と内径D2とを傾斜角が一定の一段のテーパ面で繋ぐと、プラグ78の厚みTが不足して剛性不足が生じたり、中心部79の長さLが長くなって作動油のスムーズな流れが阻害されたり、フランジ部78bの厚みが増して吸入用逆止弁70(電磁ポンプ20)の大型化に繋がったりすることがある。これに対して、実施例では、縮径の度合いの小さなテーパ面79c2で厚みTを十分なものとすると共に縮径の度合いの大きなテーパ面79c1でフランジ部78bの厚みの増加を抑えながらその内径を内径D2まで拡げるのである。また、縮径部79cは、フランジ部78b側から円筒部78a側に向けて徐々に縮径されるから、作動油をスムーズに吸入することができる。これにより、プラグ78の剛性を確保しつつプラグ78が大きくなるのを防止して作動油をスムーズに吸入することができる。プラグ78の貫通孔78cの内径が内径D2から内径D1まで大から小に変化する縮径の度合いをもって縮径された縮径部79cを形成するのはこうした理由による。
【0022】
また、実施例では、このような縮径部79cを、二段のテーパ面79c1,79c2を設けることで実現するから、複雑な加工を必要とすることなく比較的容易に形成することができる。さらに、実施例では、二段のテーパ面79c1,79c2の傾斜角が変化する変曲点P(図5参照)を、円筒部78aとフランジ部78bとの境界部分の厚みTが所定の厚み以上となる範囲内で、且つ、フランジ部78bの厚みを可能な限り薄くできる位置に定めるものとした。このため、プラグ78の厚みTをより確実に確保しつつフランジ部78bの厚みを抑えることができる。なお、所定の厚みは、例えば、ストレーナ90を介して吸入する作動油の圧力や流量などを考慮して、プラグ78に必要とされる剛性や耐久性などを確保できる厚みに定めることができる。また、フランジ部78bの端面78b1と縮径部79cとの間に、ストレート部79bが形成されるから、テーパ面を端面78b1まで繋げるものに比して、作動油をスムーズに流入させることができ、且つ、端面78b1の環状の面積を大きくしてシリンダカバー48やストレーナ90に作用する作動油の圧力をより適切に受けることができる。即ち、ストレーナ90に覆われる端面78b1は、シリンダカバー48やストレーナ90に作用する作動油の圧力を受ける受圧面として機能するから、その面積が大きくなることで、ストレーナ90やフランジ部78b(プラグ78)に過大な応力が作用するのを防止することができるのである。
【0023】
吸入用逆止弁70は、入力側の圧力P1と出力側の圧力P2との差圧(P1−P2)がスプリング76の付勢力に打ち勝つ所定圧力以上のときには、スプリング76の収縮を伴ってボール74がプラグ78から離されることにより開弁し、上述した差圧(P1−P2)が所定圧力未満のときには、スプリング76の伸張を伴ってボール74がプラグ78のテーパ部79aに押し付けられて貫通孔78cを塞ぐことにより閉弁する。
【0024】
吐出用逆止弁80は、ボール84と、ボール84に付勢力を付与するスプリング86と、ボール84の外径よりも小さな内径の中心孔89を有する環状部材としてのプラグ88と、を備える。図7に吐出用逆止弁80の組み付けの様子を示し、図8にピストン60に吐出用逆止弁80を組み付けた後の外観を示す。吐出用逆止弁80は、図示するように、ピストン60の中空部62aに、スプリング86,ボール84の順に挿入した後、プラグ88を中空部62aに圧入することにより行なわれる。なお、プラグ88は、スナップリングなどの固定部材によりピストン60に固定することができる。実施例では、このようにしてピストン60に吐出用逆止弁80を組み付けることにより、これらをサブアッシーとしている(図8参照)。
【0025】
吐出用逆止弁80は、入力側の圧力(吸入用逆止弁70の出力側の圧力)P2と出力側の圧力P3との差圧(P2−P3)がスプリング86の付勢力に打ち勝つ所定圧力以上のときには、スプリング86の収縮を伴ってボール84がプラグ88の中心孔89から離されることにより開弁し、上述した差圧(P2−P3)が所定圧力未満のときには、スプリング86の伸張を伴ってボール84がプラグ88の中心孔89に押し付けられて中心孔89を塞ぐことにより閉弁する。
【0026】
シリンダ50は、内壁51とピストン60の先端面と吸入用逆止弁70のスプリング46側の面とにより囲まれる空間によりポンプ室56を形成する。ポンプ室56は、スプリング46の付勢力によりピストン60が移動すると、ポンプ室56内の容積の拡大に伴って吸入用逆止弁70が開弁すると共に吐出用逆止弁80が閉弁して吸入ポート42を介して作動油を吸入し、ソレノイド部30の電磁力によりピストン60が移動すると、ポンプ室56内の容積の縮小に伴って吸入用逆止弁70が閉弁すると共に吐出用逆止弁80が開弁して吸入した作動油を吐出ポート44を介して吐出する。
【0027】
また、シリンダ50は、ピストン本体62が摺動する内壁52と、シャフト部64が摺動する内壁54とが段差をもって形成されており、段差部分に吐出ポート44が形成されている。この段差部分は、ピストン本体62とシャフト部64との段差部分の環状の面とシャフト部64の外周面とにより囲まれる空間を形成する。この空間は、ピストン本体62を隔ててポンプ室56とは反対側に形成されるから、ポンプ室56の容積が拡大する際に容積が縮小し、ポンプ室56の容積が縮小する際に容積が拡大する。このとき、この空間の容積変化は、ピストン60のポンプ室56側からの圧力を受ける面積(受圧面積)が吐出ポート44側から圧力を受ける面積(受圧面積)よりも大きいため、ポンプ室56の容積変化よりも小さくなる。このため、この空間は第2のポンプ室58として機能する。即ち、スプリング46の付勢力によりピストン60が移動すると、ポンプ室56の容積の拡大分に相当する量の作動油が吸入ポート42から吸入用逆止弁70を介してポンプ室56に吸入される一方で第2のポンプ室58の容積の縮小分に相当する量の作動油が第2のポンプ室58から吐出ポート44を介して吐出され、ソレノイド部30の電磁力によりピストン60が移動すると、ポンプ室56の容積の縮小分に相当する量の作動油がポンプ室56から吐出用逆止弁80を介して第2のポンプ室58に送り出されると共にポンプ室56の容積の縮小分と第2のポンプ室58の容積の拡大分との差分に相当する量の作動油が吐出ポート44を介して吐出されることになる。したがって、ピストン60の一回の往復動で作動油が吐出ポート44から2回吐出されるから、吐出ムラを少なくすることができ、吐出性能を向上させることができる。
【0028】
図9は、実施例の電磁ポンプ20の組み付けの様子を示す説明図である。実施例の電磁ポンプ20の組み付けは、シリンダ50に、サブアッシー化されたピストン60および吐出用逆止弁80と、スプリング46と、サブアッシー化された吸入用逆止弁70およびストレーナ90とをこの順に挿入し、その後、シリンダカバー48を取り付けることにより行なわれる。なお、シリンダ50の外周面とシリンダカバー48の内周面は、それぞれ図示しない螺旋状の溝が彫りこまれており、シリンダカバー48の取り付けは、シリンダカバー48をシリンダ50に被せてねじ込むことにより行なわれる。シリンダカバー48が取り付けられると、シリンダカバー48の環状の押圧面48aでストレーナ90の外周縁が押圧され、ストレーナ90が固定される。
【0029】
以上説明した実施例の電磁ポンプ20によれば、吸入用逆止弁70は、プラグ78のフランジ部78bから円筒部78aに向かって貫通孔78cの内径が大から小に変化する縮径の度合いをもって縮径された縮径部79cが形成されるから、縮径の度合いが一定のものに比してフランジ部78bの厚みの増加を抑えつつフランジ部78bと円筒部78aとの境界部分の厚みTを確保することができ、また、縮径部79cの縮径により作動油をスムーズに吸入することができる。この結果、作動油のスムーズな吸入を可能としつつ吸入用逆止弁70が大きくなるのを防止することができ、電磁ポンプ20をコンパクトな構成とすることができる。
【0030】
また、縮径部79cが二段のテーパ面79c1,79c2で形成されるため、比較的容易な加工で形成することができる。さらに、二段のテーパ面79c1,79c2の傾斜角の変曲点Pを、円筒部78aとフランジ部78bとの境界部分の厚みTが所定の厚み以上となる範囲内に定めるから、厚みTをより確実に確保することができる。そして、フランジ部78bの端面78b1と縮径部79cとの間に、ストレート部79bを形成するから、作動油をよりスムーズに吸入することができ、また、端面78b1でストレーナ90に作用する作動油の圧力をより適切に受けることができる。また、吸入用逆止弁70をシリンダ50に内蔵するから、電磁ポンプ20をよりコンパクトな構成とすることができる。
【0031】
実施例の電磁ポンプ20では、吸入用逆止弁70のプラグ78の縮径部79cが二段のテーパ面79c1,79c2からなるものとしたが、二段以上の複数段のテーパ面からなるものとしてもよいし、テーパ面に限られず、複数段の階段状の段差面や断面がR形状の曲面などとしてもよい。
【0032】
実施例の電磁ポンプ20では、内径D2をストレーナ90の細孔形成領域92aの径と同等として円筒部78aの外径よりも大きなものとしたが、円筒部78aの外径と同等の内径あるいはそれよりも小さな内径としてもよい。
【0033】
実施例の電磁ポンプ20では、吸入用逆止弁70のプラグ78にストレート部79bを形成するものとしたが、これを形成しないものとしてもよい。
【0034】
実施例の電磁ポンプ20では、吸入用逆止弁70をシリンダ50に内蔵するものとしたが、吸入用逆止弁をシリンダ50外のバルブボディなどに組み込んでシリンダ50に内蔵しないものとしてもよい。この場合、シリンダ50の吸入用逆止弁70が配置されていた部分の開口を閉じてポンプ室に繋がる吸入用ポートを形成し、吸入用逆止弁70のプラグ78の端面78b1を覆うようにストレーナ90をフランジ部78bに固定して取り付け、シリンダ50のポンプ室の吸入用ポートと吸入用逆止弁70の出力口(実施例の中心孔72bに相当)とを油路で接続することにより構成するものなどとすればよい。
【0035】
実施例の電磁ポンプ20では、ピストン60の一回の往復動で作動油を吐出ポート44から2回吐出するタイプの電磁ポンプとして構成するものとしたが、これに限定されるものではなく、ソレノイド部からの電磁力によりピストンを往動させる際に吸入ポートから作動油をポンプ室に吸入しスプリングの付勢力によりピストンを復動させる際にポンプ室内の作動油を吐出ポートから吐出するものとしたり、スプリングの付勢力によりピストンを復動させる際に吸入ポートから作動油をポンプ室に吸入しソレノイド部からの電磁力によりピストンを往動させる際にポンプ室内の作動油を吐出ポートから吐出するものとするなど、如何なるタイプの電磁ポンプとしても構わない。
【0036】
実施例の電磁ポンプ20では、自動車に搭載される自動変速機のクラッチやブレーキを油圧駆動するための油圧制御装置に用いるものとしたが、これに限られず、例えば、燃料を移送したり、潤滑用の液体を移送するなど、如何なるシステムに適用するものとしても構わない。
【0037】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、ストレーナ90が「ストレーナ」に相当し、プラグ78の円筒部78aが「筒部」に相当し、フランジ部78bが「フランジ部」に相当し、貫通孔78cが「貫通孔」に相当し、吸入用逆止弁70が「吸入用逆止弁」に相当し、縮径部79cが「縮径部」に相当する。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、電磁ポンプ装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
20 電磁ポンプ、30 ソレノイド部、31 ソレノイドケース、32 電磁コイル、34 プランジャ、36 コア、38 シャフト、40 ポンプ部、42 吸入ポート、44 吐出ポート、46 スプリング、48 シリンダカバー、48a 押圧面、50 シリンダ、51,52,54 内壁、56 ポンプ室、58 第2のポンプ室、60 ピストン、62 ピストン本体、62a 中空部、64 シャフト部、64a,64b 貫通孔、70 吸入用逆止弁、72 弁本体、72a 中空部、72b 中心孔、74 ボール、76 スプリング、78 プラグ、78’ プラグ(変形例)、78a 円筒部、78b フランジ部、78c 貫通孔、79 中心部、79a テーパ部、79b ストレート部、79c 縮径部、79c1,79c2 テーパ面、80 吐出用逆止弁、84 ボール、86 スプリング、88 プラグ、89 中心孔、90 ストレーナ、92 円盤部、92a 細孔形成領域、94 脚部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入口にストレーナが取り付けられる電磁ポンプ装置であって、
筒部と、該筒部の端縁から径方向に延伸されるフランジ部とを有し、前記筒部と前記フランジ部とを貫通して該フランジ部の端面で前記吸入口をなす貫通孔が形成された吸入用逆止弁を備え、
該吸入用逆止弁は、前記フランジ部から前記筒部に向かって前記貫通孔の内径が大から小に変化する縮径の度合いをもって縮径されるよう縮径部が形成されてなる
ことを特徴とする電磁ポンプ装置。
【請求項2】
前記縮径部は、傾斜角の異なる二段のテーパ面により形成されてなる請求項1記載の電磁ポンプ装置。
【請求項3】
前記縮径部は、前記二段のテーパ面の傾斜角が変化する変曲点が、前記筒部と前記フランジ部との境界部分の厚みが所定の厚み以上となる位置に定められてなる請求項2記載の電磁ポンプ装置。
【請求項4】
前記吸入用逆止弁は、前記フランジ部の端面と前記縮径部との間に、前記吸入口の内径をもって均一の径に形成されたストレート部を有する請求項1ないし3いずれか1項に記載の電磁ポンプ装置。
【請求項5】
前記吸入用逆止弁は、前記吸入口の内径が前記筒部の外径よりも大きな径に形成されてなる請求項1ないし4いずれか1項に記載の電磁ポンプ装置。
【請求項6】
シリンダ内をピストンが往復動することにより作動流体を圧送する請求項1ないし5いずれか1項に記載の電磁ポンプ装置であって、
前記吸入用逆止弁は、前記シリンダに内蔵されてなる電磁ポンプ装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図5】
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【図6】
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