説明

電磁ポンプ

【課題】供給流体に脈動を付加すると共に、ポンプ内部に残留する流体の排水を良好にする。
【解決手段】パルス電流が印加される電磁コイル3の軸方向に電磁プランジャ作動室10が形成され、この電磁プランジャ作動室10に電磁プランジャ23が右ばね24と左ばね25に支えられて配されている。この電磁プランジャ23の軸方向に通孔29が形成されると共に、下記するアンブレラ弁31の弁座32が取付られている。しかもアンブレラ弁31も電磁プランジャ23に固定されている。アンブレラ弁31の傘状部31aが電磁プランジャ23の往又は復動につれて開閉を繰り返し、供給流体に脈動を付加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人体洗浄用のノズルから噴出する流体に脈動作用を与える電磁ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
人体を洗浄するため、弁座に用いられる温水洗浄弁座は、広く用いられている。そして、洗浄効果の向上、洗浄水量の減少を目的として、ノズルから噴出する流体に脈動を与えることが行われている。
【0003】
人体洗浄弁座製造会社では、図示しないがノズルと温水加熱ヒータとの間に電磁ポンプを配して、供給される流体(70Kpa程)に断続する脈動を与えることが採用されている。この人体洗浄弁座にあって、ポンプ停止時(洗浄停止時)にノズルまでの間に流体が排水されず残留すると、再び洗浄開始時に、冷水のままノズルから噴出され、不快感を与えるのみならず、酷寒期に凍結して機器を破損するおそれがあるので、逆止弁に代えて本出願人では、往復動される電磁プランジャの通孔にオリフィスを設けていた。
【0004】
このオリフィスにより、内部の残留する流体を自重により排出させていたが、オリフィスの径を小さくすると流体の排水性の悪化となり、又大きくする(径が1.2mmを超える)と逆に脈動付加作用のための加圧用圧力が低下してしまう不都合があった。
【0005】
また、脈動発生装置として、特許文献1に示すように、ダックビル弁を電磁プランジャの通孔に組込む例が開発されている。
この例のように、ダックビル弁を用いたとしても、ダックビル弁の開口部51を介して残留流体を外部に流出させなければならない。
【特許文献1】特許第3647356号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前述のダックビル弁の開口部は、電磁プランジャ内に収納されるため、おのずとその径も制限され、開口面積は小さくなっていた。即ち、残留の流体の排水性が良くなく、基準の排水時間(30秒程)がかかっていた。
【0007】
そこで、この発明は人体の洗浄弁座に採用され、脈動付加作用を有することは勿論のこと、停止時に残留する流体をすみやかに排水できるようにする電磁ポンプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る電磁ポンプは、パルス電流が印加される電磁コイルと、この電磁コイルによりプランジャ作動室内を往復動される電磁プランジャと、この電磁プランジャに流体を吸入口から吐出口方向へ流す軸方向に形成の通孔と、 この通孔の開閉を制御し、前記電磁プランジャに取付られるアンブレラ弁とを備えて、前記アンブレラ弁は電磁ポンプ停止時にあって、前記通孔を常開とすることにある(請求項1)。
【0009】
これにより、電磁コイルにパルス電流が印加されると、電磁プランジャは往復動され、アンブレラ弁が通孔を開閉して流体に脈動を付加(重畳)する。即ち、電磁プランジャの吸入方向への移動時に流体を吸入し、吐出口方向への移動時に流体を加圧している。
また、ポンプ停止時にアンブレラ弁は電磁プランジャから完全に離れ、通孔の全周にわたり開口とし、電磁ポンプ内に残留の流体が通孔、電磁プランジャとアンブレラ弁との隙間からスムーズに流出される。
【0010】
また、前記アンブレラ弁は、軟性の傘状部と、その中心に設けられた棒状の軸柱とより成り、前記傘状部は、その正面が前記電磁プランジャの通孔に対峙して配することが好ましい(請求項2)。これにより、傘状部が弾性変形して通孔に対する確実な閉止性と共に、開口面積を当出願人会社使用のオリフィスに比較して4倍程に大きくすることができる。そのために、基準の排水時間の半分程(15秒)と早めることができる。また、脈動圧を前記オリフィスの使用時に比して10%程向上させることができる。
【0011】
このアンブレラ弁の対峙側の電磁プランジャに、該アンブレラ弁の弁座を配することが好ましい(請求項3)。そして、通孔の開閉を制御するアンブレラ弁は、その傘状部が前記弁座に着座して行われる(請求項4)。さらに、電磁ポンプの吸入側にアキュームレータが配されることが好ましく(請求項5)、流入脈動による流入側の配管およびその他の付設部材の振動と騒音を抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、この発明によれば、電磁プランジャが往復動され、アンブレラ弁が通孔を開閉して流体に脈動を付加(重畳)することができる。またポンプ停止時にアンブレラ弁は、電磁プランジャから完全に離れ、該アンブレラ弁と電磁プランジャの隙間から電磁ポンプ内の残留の流体を排水することができる(請求項1)。
【0013】
アンブレラ弁は軟性の傘状部が圧力差により弾性変形して通孔を確実に閉止することから、圧力の昇圧を可能とすると共に、停止時にアンブレラ弁の傘状部が元の状態に復帰して、電磁プランジャ端(弁座)との間に隙間ができて、全周にわたり開口となり、その開口面積を大きく取ることができる(請求項2,3,4)。
【0014】
さらに、電磁ポンプの吸入側である吸入通路上に設けたアキュームレータからは、流入時に発生する流入脈動を平滑することができる(請求項5)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図面にもとづいて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1,図2において、例えば人体洗浄弁座に用いられる脈動付加用の電磁ポンプ1が示され、該電磁ポンプ1は、鉄などの磁性材で製造されたケース2内にパルス電流が印加される電磁コイル3を備え、その電磁コイル3は樹脂製のボビン4に電線が巻装されて構成され、ボビン4の中心を貫通して形成された貫通孔には、非磁性材より成るガイドパイプ6が嵌挿されている。
【0017】
このガイドパイプ6には、図1上の右方に磁性材より成る右磁極筒8、左方に磁性材より成る左磁極筒9がそれぞれ挿嵌され、また内部に下記する電磁プランジャ23の電磁プランジャ作動室10が構成されている。それから、このガイドパイプ6の右方に吸入口13を有する吸入通路14の吸入継手部材15が接続され、また左方に吐出口18を有する吐出通路19の吐出継手部材20が接続されている。
【0018】
電磁プランジャ23は、磁性材により作られ、前記電磁プランジャ作動室10内に、右ばね24と左ばね25とに支持され、該室10は右ばね室27と左ばね室28とに分けられている。この電磁プランジャ23には軸方向に通孔29が穿設され、前記右ばね室27と左ばね室28との間を連通している。
【0019】
また、この電磁プランジャ23の一端である左端には、アンブレラ弁31とこのアンブレラ弁31が着座する弁座32が取付られている。アンブレラ弁31の構成を説明する前に、弁座32を説明すると、中心に前記通孔29と連通する通孔33を持ち、別部材で構成されているが、電磁プランジャ23と一体に構成することも可能である。
【0020】
アンブレラ弁31は、ゴム、樹脂等から作られ、薄い軟性の傘状部31aと、その中心の比較的固い軸柱31bで支えられる構成で、前記電磁プランジャ23の一端に固着の弁ケース34内に固定されている。このアンブレラ弁31の傘状部31aの正面31c側が前記弁座32の通孔33に対峙している。
【0021】
電磁ポンプの不作動時は、図示の実線の状態のように、0.1〜0.3mmぐらいの隙間δを有し、この隙間は全周にわたり開口して、大きな開口面積が得られている。即ち、通孔29,33は全開となっている。なお、35はアンブレラ弁31を支える弁ホルダで、弁ケース34に固着され、36は弁ケース34に形成の弁孔である。
【0022】
アキュームレータ38は、前記吸入通路14に開口するダイヤフラム39を有し、吸入継手部材15に固着されている。40はアキュームレータ本体、41はダイヤフラム押え、42は押えプレート、43はねじである。このアキュームレータ38は、吸入時の流体脈動を平滑して、吸入通路14に接続の機器に伝えないようにして騒音の防止を図っている。
【0023】
上述の構成において、電磁ポンプ1が人体洗浄用の弁座に組込まれて使用されると、吸入口13には図示しない温水加熱ヒータに接続され、また吐出口18は図示しないノズルに接続されている。
【0024】
電磁コイル3に電源が投入されておらず、停止時には、図示の状態で、アンブレラ弁31はその傘状部31aを実線のように戻っており、通孔29,33は開かれ、内部の残留する流体は矢印に示すように流れ、ノズルより外部に排水されている。
【0025】
パルス電流(70HZ前後、周期14msec程)が印加されると、ただちに、流体(温水)が供給されると共に、電磁コイル3が励磁されて、電磁プランジャ23は左ばね25に抗して吐出口側へ移動する。これにより、右ばね室27の容積は拡大し、左ばね室28の容積は縮小し、流体の吸引と加圧作用が行われる。即ち、アンブレラ弁31は、その傘状部31aが前記両室の圧力差から電磁プランジャ23に固定の弁座32に弾性変形して点線のように着座する。このため、通孔29が閉じ、右ばね室27の圧力の低下、左ばね室28の圧力の上昇となる。所定の圧力(70Kpa程)で供給される流体は、最高で138Kpaのように昇圧される。
【0026】
電磁コイル3が消励されると、電磁プランジャ23は、圧縮されていた左ばね25の反発エネルギーにより戻され、前記状態と逆に右ばね室27は容積を縮小し、左ばね室28は容積を拡大し、両室の圧力差からアンブレラ弁31は弁座32から離れ、右ばね室27内の流体が通孔29から左ばね室28内に流れ込む。この際に吐出口よりの圧力は最低で数Kpaまで落ち込む。
【0027】
このように、電磁プランジャ23は、供給されるパルスにより、往復動を繰り返され、流体に脈動作用を重畳せしめている。この特性が図3に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施例を示す断面図である。
【図2】同上の要部の拡大断面図である。
【図3】同上の特性線図である。
【符号の説明】
【0029】
1 電磁ポンプ
2 電磁コイル
6 ガイドパイプ
10 電磁プランジャ作動室
13 吸入口
18 吐出口
23 電磁プランジャ
27 右ばね室
28 左ばね室
29 通孔
31 アンブレラ弁
31a 傘状部
31b 軸柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス電流が印加される電磁コイルと、
この電磁コイルによりプランジャ作動室内を往復動される電磁プランジャと、
この電磁プランジャに流体を吸入口から吐出口方向へ流す軸方向に形成の通孔と、
この通孔の開閉を制御し、前記電磁プランジャに取付られるアンブレラ弁とを備えて、
前記アンブレラ弁は電磁ポンプ停止時にあって、前記通孔を常開とすることを特徴とする電磁ポンプ。
【請求項2】
前記アンブレラ弁は、軟性の傘状部と、その中心に設けられた棒状の軸柱とより成り、前記傘状部は、その正面が前記電磁プランジャの通孔に対峙して配したことを特徴とする請求項1記載の電磁ポンプ。
【請求項3】
前記アンブレラ弁の対峙側の電磁プランジャに、該アンブレラ弁の弁座を配したことを特徴とする請求項1又は2記載の電磁ポンプ。
【請求項4】
前記通孔の開閉を制御するアンブレラ弁は、その傘状部が前記弁座に着座して行われることを特徴する請求項1,2又は3記載の電磁ポンプ。
【請求項5】
前記電磁ポンプの吸入側にアキュームレータを配したことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の電磁ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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