説明

静電容量センサ

【課題】電極のずれにより生じる誤差を修正可能な静電容量センサを提供すること。
【解決手段】可動電極12と第1の固定電極11A及び第2の固定電極11Bとの間に蓄積された静電容量を検出する静電容量センサ100において、固定電極14と第1の固定電極及び固定電極と第2の固定電極の間のそれぞれの静電容量の絶対値を検出する検出手段と、前記静電容量の絶対値の逆数に比例した値を感度にかけることにより、電極のずれにより変動した感度を補正する補正手段30と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度や角速度等の物理量を検出する静電容量センサに関し、特に、電極が位置ずれしても物理量に生じる誤差を低減できる静電容量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
機械部品や電子回路を集積して例えばセンサを形成するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)が知られている。例えば車両には、車体に作用する加速度やヨーレートを検出するため、MEMSにより形成された加速度センサやヨーレートセンサ、ジャイロセンサが搭載されている。これらのセンサは、加速度やヨーレートの大きさに応じて、可動電極が固定電極に対して変位する際の静電容量の変化から加速度やヨーレートの大きさを検出することが多い(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
特許文献1には、櫛歯電極の間の静電容量の変化から外力を検出する静電容量センサにおいて、櫛歯電極の長手方向に対向配置された1対の可動電極と固定電極の間隔の変化を同様に静電容量の変化で検出する静電容量センサが開示されている。特許文献1記載の静電容量センサは、この1対の可動電極と固定電極が検出した間隔の変化により、櫛歯電極の長手方向のずれに伴う誤差を補正するとしている。
【0004】
また、特許文献2には、可動電極と対向した第1の固定電極の面積と、基準電極と対向した第2の固定電極の面積、を同一にすると共に、可動電極の面積と基準電極の面積を同一にした、容量式加速度センサが開示されている。第1の固定電極の面積と、基準電極と対向した第2の固定電極の面積、を同一にしたことで、可動静電容量と基準静電容量がそれぞれ捕らえる浮遊静電容量が等しくなり、浮遊静電容量を相殺することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−263741号公報
【特許文献2】特開平5−322920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の静電容量センサは、平面方向のずれしか補正できないという問題がある。また、特許文献2記載の容量式加速度センサは、第1の固定電極と第2の固定電極の間の基板と、可動電極又は基準電極の間に捕らえられる浮遊静電容量を考慮していないため、依然として浮遊静電容量による誤差を含むという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、電極のずれにより生じる誤差を修正可能な静電容量センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み、本発明は、可動電極と第1の固定電極及び第2の固定電極との間に蓄積された静電容量を検出する静電容量センサにおいて、固定電極と第1の固定電極及び固定電極と第2の固定電極の間のそれぞれの静電容量の絶対値を検出する検出手段と、静電容量の絶対値の逆数に比例した値を感度にかけることにより、電極のずれにより変動した感度を補正する補正手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
電極のずれにより生じる誤差を修正可能な静電容量センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】静電容量センサの構造を模式的に示す図である。
【図2】可動電極が変位した場合の静電容量センサの構造を模式的に示す図の一例である。
【図3】可動電極がy方向に変位した場合の静電容量センサの構造を模式的に示す図の一例である。
【図4】静電容量センサの信号Sを検出する検出回路図の一例である。
【図5】変調信号Ia、Ib及びSW1,2制御信号の一例を示す図である。
【図6】可動電極と基板、固定電極の基板の間に生じる寄生容量を示す図の一例である。
【図7】ダミー電極を配置した静電容量センサの上面図の一例である。
【図8】ダミー電極と固定電極の等価回路の一例を示す図である。
【図9】ダミー電極に供給される変調信号Ieの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0012】
本実施例では、静電容量Cの変化量ΔCだけでなく、静電容量Cを検出することで、静電容量Cにより静電容量Cの変化量ΔCを補正して、可動電極のずれにより生じる誤差を低減する静電容量センサ100について説明する。静電容量センサ100の計測対象は、例えば、加速度やヨーレート、ヨー角などであるが、以下では単に「外力」と称する
図1に、静電容量センサ100の構造を模式的に示す。図1(a)は静電容量センサ100の上面図の一例を、図1(b)は静電容量センサ100の正面図の一例をそれぞれ示す。静電容量センサ100は、基板13の上面視において、互いに平行な可動電極12と固定電極11とが、間隔dを隔てた位置に対向するように配置されている。可動電極12は、基板13に固定されたアンカーから延設された梁部から、更に延設されるように形成され、可動電極12と基板13の間には空間が設けられている。こうすることで、静電容量センサ100に外力が作用すると可動電極12が、正面視(紙面)に対し垂直方向に変位する。一方、固定電極11は、基板13に固定された梁部から延設され、基板13との間に空間が設けられているが、外力が作用しても基板13に対し相対的に変位しない。
【0013】
なお、静電容量センサ100の製造方法には一般的な半導体製造方法を適用することができる。例えば、単結晶シリコン層からなる上層を設けたSOI(Silicon−On-Insulator)基板13に、リン、ボロン等の不純物をドーピングし、可動電極12と固定電極11の形状にマスクしてこれをエッチングすることを複数回繰り返すことで、所望の構造が得られる。
【0014】
固定電極11と可動電極12の間にはクーロン力が働いて、両者の間に静電容量Cが蓄えられる。外力が作用すると、可動電極12が左右方向に変位し対向長がw→w+xと変化し、静電容量Cも変化するので、静電容量センサ100は後述する検出回路40により静電容量C及び静電容量の変化量ΔCを検出することで、xを求め外力を測定する。
【0015】
このように静電容量センサ100は対向長wの変化に起因した静電容量Cの変化量ΔCに基づき外力を検出するが、本実施例では、y方向における可動電極12の位置及び間隔dの精度について説明する。
【0016】
自励振動の中心に可動電極12がある状態(以下、静止時という)の静電容量Cは次のように算出される。εは誘電率、hは固定電極11又は可動電極12の高さ、wは平面視において固定電極11と可動電極12が重畳した長さである。
C=ε×(w×h/d) …(1)
図2は、可動電極12が変位した場合の静電容量センサ100の構造を模式的に示す図の一例である。可動電極12がx方向にXだけ変位した場合の静電容量Cの変化量ΔCは、平面視において固定電極11と可動電極12が重畳した面積の増加分に比例する。したがって、変化量ΔCは次式から算出される。
ΔC = ε×(X×h/d) …(2)
式(2)を変形することで次式が得られる。
X = {d/(ε×h)}×ΔC …(3)
この式を、式(1)を用いて変形すると、式(4)が得られる。ただし、A=d/(ε×h)=w/C とおいた。
X = (w/C)×ΔC = A×ΔC …(4)
Aを算出するための、d、ε及びhは既知であるのでAは定数となる。したがって、式(4)によれば固定電極11の変位量Xは、静電容量Cの変化量ΔCから算出されることになる。
【0017】
しかしながら、経年劣化や、静電容量センサ100を搭載した装置(例えば車両)に衝撃が加わることにより、可動電極12(又は固定電極11でもよい)がx方向でなくy方向に変位することがある。
【0018】
図3は、可動電極12がy方向に変位した場合の静電容量センサ100の構造を模式的に示す図の一例である。図3に示すように、可動電極12がy方向に変位すると、静電容量Cの変化量ΔCがx方向の変位量Xを正確に反映できなくなる。
【0019】
具体的には、平面視の可動電極12と固定電極11が重畳した領域の高さをh‘とすると、可動電極12がy方向に変位した場合の静電容量の変化量ΔC‘は、次式(5)で表される。
ΔC‘=ε×(X×h’/d) …(5)
式(4)の右辺と左辺に共にAを掛けて整理すると、
A×ΔC‘ = (h’/h)×X …(6)
が得られる。式(6)の左辺が式(4)のXを求める式に相当することを考慮すると、式(6)の右辺は、可動電極12がy方向に変位すると可動電極12のx方向への変位量Xが、hが小さくなった分だけ小さく検出されてしまうことを意味する。
【0020】
本実施例の静電容量センサ100は、可動電極12がy方向に変位したことで変位量Xが小さく検出されることを解決する。図3に示したように、可動電極12がy方向に変位すると、静電容量Cの変化量ΔCだけでなく、静電容量Cも小さくなるはずである。その減少分は、可動電極12がy方向に変位した長さ(h−h‘)に比例すると考えられる。このため、静電容量Cにより、静電容量Cの変化量ΔCを補正することで、可動電極12がy方向に変位しても、可動電極12のx方向への変位量Xを正確に検出することが可能となる。
【0021】
本実施例の静電容量センサ100は、このような考え方に基づき、静電容量Cを検出して静電容量の変化量ΔCを補正する。具体的には、静電容量Cが小さくなるほど定数Aが大きくなるように変化量ΔCを補正すればよい。このため、改めてAを次のように定義する。なお、可動電極12がy方向に変位した際の静電容量をCとした。
A={d/(ε×h)}×(1/C) …(7)
式(7)で定義した定数(厳密には定数でない)Aを用いることで、可動電極12がy方向に変位していなくても、y方向に変位していても、静電容量センサ100は、静電容量センサ100が検出する検出値を同様に扱うことができるようになる。すなわち、式(4)のAに式(6)のAを代入する。区別するため、可動電極12がy方向に変位していない場合のx方向の変位量をXaとし、可動電極12がy方向に変位した場合のx方向の変位量をXbとする。
Xa = {d/(ε×h)}×(1/C)×ΔC
= {d/(ε×h)}×{d/(ε×h×w)}×ΔC
第1項と第3項は、可動電極12のy方向への変位量を考慮しない変位量Xに等しく、第2項は可動電極12のy方向への変位量を考慮しない静電容量Cの逆数に等しい。したがって、
Xa = (1/C)×X …(8)
同様に、
Xb = {d/(ε×h)}×(1/C)×ΔC‘
= {d/(ε×h)}×{d/(ε×h‘×w)}×ΔC’
第1項と第3項は、可動電極12がy方向へ変位した場合の変位量Xに等しく、第2項は可動電極12がy方向へ変位した場合の静電容量Cの逆数に等しい。したがって、
Xa = (1/C)×X …(9)
式(8)(9)から、静電容量Cを用いて定数Aを定義することで、可動電極12のy方向への変位の有無に関係なく、静電容量Cを同様に扱えばよいことが分かる。すなわち、x方向への変位量Xを静電容量Cで割ることで、変位量Xが得られる。実際には、変位量Xは式(3)に示したように静電容量Cの変化量ΔCに基づき算出されるので、変化量ΔCを静電容量Cで割ればよいことが分かる。以上から、可動電極12がy方向へ変位したか否かに関わらず、次式でx方向への変位量を求めることができる。
Xa=Xb=X/C={d/(ε×h)}×ΔC/C …(10)
図4は、静電容量センサ100の信号Sを検出する検出回路40の一例を示す。可動電極12と固定電極11は櫛歯状に形成されており、図4は複数の可動電極12と複数の固定電極11を模式的に示す。固定電極11Aと11Bには不図示の電極パッドが接続されており、そこから変調信号Ia、Ibが入力される。接続点14は、図1〜図3に示した可動電極12と接続された、電極パッドと検出回路40を接続する接点である。すなわち、接続点14は静電容量Cと変化量ΔCを検出するための接点を提供する。
【0022】
接続点14はチャージアンプ21に接続されている。チャージアンプ21の出力は2つに分岐され一方はスイッチSW1を介してS/H回路15に、他方はスイッチSW2を介してS/H回路16に、それぞれ接続されている。S/H回路15及びS/H回路16の出力は共に除算回路30に接続されている。
【0023】
なお、チャージアンプ21は、オペアンプ22、オペアンプ22の反転入力端子と出力端子間を接続するコンデンサ23、を有している。チャージアンプ21は、2つの入力端子の間が仮想的に短絡されているため、一方の入力端子に電荷を与えると、その電荷を全てコンデンサ23に充電することにより、仮想的な短絡状態を維持する。このため、「入力した電荷(静電容量C)/コンデンサ23の容量」に等しい出力電圧が得られる。すなわち、チャージアンプ21は電荷の移動量を電圧に変換して出力するので、可動電極12から入力した電荷に比例する電圧を出力する。チャージアンプ21はこのような微少な信号を電圧に変換することができる。
【0024】
容量検出のため、固定電極11Aと11Bにはそれぞれパルス状の変調信号Ia、Ibが入力される。変調信号の振幅をvとすると、変調信号IaがL→H、IbがH→Lのタイミングではチャージアンプ21に入力される電荷Qは、Q=(C+ΔC)(v)+(C−ΔC)(−v)=2ΔCv となり、SW1がオンのタイミングでS/Hすると、S/H15の出力は、ΔCに比例したものとなる。
【0025】
図5は、変調信号Ia、Ib、SW1及びSW2の制御信号の一例を示す図である。
【0026】
ΔCに比例した電圧と、静電容量Cに比例した電圧とを個別に取り出すため、静電容量センサ100は、SW1制御信号=「H」のタイミングでスイッチSW1をオンにスイッチSW2をオフにする。このため、S/H15の出力信号は、「ΔC」に比例した大きさを有し、S/H16の出力信号は「C」に比例した大きさを有する。なお、スイッチS1、オペアンプ26及び抵抗28はサンプルホールド回路15を、スイッチS2、オペアンプ27及び抵抗29はサンプルホールド回路16を、それぞれ構成する。
【0027】
除算回路30は、信号Oaを信号Obで割った信号Sを出力する。除算回路30は、例えば、信号OaとObをそれぞれA/D変換して、割り算を実行する。割り算により式(10)の演算が実現されたことになる。
【0028】
以上説明したように、本実施例の静電容量センサ100は、静電容量Cの変化量ΔCだけでなく、静電容量Cを検出して静電容量Cの変化量ΔCを補正することで、可動電極12がy方向に変位しても、外力を正確に検出することができる。
【0029】
なお、本実施例では、静電容量Cと変化量ΔCから外力を検出したが、外力の検出方法には、固定電極11と可動電極12の間隔dの変化に起因する静電容量Cの変化量を検出する方法と、静電容量を一定に保つために必要な電圧から検出方法(サーボ制御という)がある。
【0030】
本実施例の静電容量センサ100はこのいずれにも好適に適用できる。サーボ制御に適用する場合、サーボ制御用に検出される静電容量の変化は、外力の検出感度に影響せず、サーボ制御するための電極容量が検出感度に影響する(サーボ電極の電極容量∝検出感度)。したがって、サーボ制御用の制御回路がサーボ電極の電極容量(上記の静電容量Cに相当)を監視し、サーボ電極容量を検出感度に掛けることで、可動電極12のy方向へのずれに起因する外力の検出感度を補正できる。このかけ算は、図5のようにデジタル演算してもよいし、サーボ電極の電極容量に比例した信号をA/Dコンバータのリファレンス電圧に用いることで実現してもよい。
【実施例2】
【0031】
本実施例では、基板13と固定電極11、及び、基板13と可動電極12間の寄生容量を除外して、可動電極12と固定電極11間の静電容量Cを検出できる静電容量センサ100について説明する。
【0032】
図6は、可動電極12と基板13、固定電極11の基板13の間に生じる寄生容量を示す図の一例である。図6において図1と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。図示するように、基板13と固定電極11の間には寄生容量Cp1、Cp2が、基板13と可動電極12の間には寄生容量Cp3が存在する。これらは、一般には無視できる程度であるが、MEMSの微細化が進み、基板13と可動電極12又は固定電極11の距離が小さくなると、静電容量CへのCp1〜Cp3の影響が大きくなる。
【0033】
また、図示する寄生容量Cp1〜Cp3が存在する場合、これらを含む可動電極12と固定電極11間の静電容量Ctは、次式で現される。
Ct=C+{(Cp1+Cp2)×Cp3}/(Cp1+Cp2+Cp3) …(11)
そこで、式(11)の第2項を、可動電極12を用いずに検出することを考える。
【0034】
図7は、ダミー電極31を配置した静電容量センサ100の上面図を示す。ダミー電極31の上面視の面積は、固定電極11の上面視の面積と等しい。すなわち、基板13と固定電極11の間に発生する寄生容量Cp1とCp2の合計は、基板13とダミー電極31の間に発生する寄生容量Cp1‘とCp2’の合計に等しいとみなすことができる。また、基板13と可動電極12の間に発生する寄生容量Cp3は、ダミー電極31を配置する前後で変わらない。これは、図示するように、ダミー電極31と可動電極12の間の距離が充分であるため、基板13とダミー電極31の間に発生した寄生容量Cp1‘とCp2’が基板13と可動電極12の間に発生する寄生容量Cp3に影響を及ぼさないためである。また、ダミー電極31と可動電極12の間の距離を充分長くすることで、ダミー電極31と可動電極12に生じる静電容量を無視することができる。
【0035】
したがって、ダミー電極31と可動電極12の間に生じる静電容量Cは次式で現される。
={(Cp1+Cp2)×Cp3}/(Cp1+Cp2+Cp3) …(12)
式(11)の静電容量Ctから(12)の静電容量Cを引くことで、寄生容量Cp1〜Cp3を含まない、可動電極12と固定電極11の間に生じる静電容量Cのみを取得できることがわかる。
【0036】
図8は、ダミー電極31と固定電極11の等価回路の一例を示す図である。図8において、図4と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。固定電極11Aと固定電極11Bには、可動電極12との間でそれぞれ寄生容量Cp1、Cp2が生じ、ダミー電極31と可動電極12との間には寄生容量Cp1、Cp2が生じる。説明を容易にするため、寄生容量Cp1とCp2をまとめて寄生容量Cp0とする。なお、図8では、1つのダミー電極31が、基板13と2つの固定電極11A、Bとの寄生容量Cp0を補正するものとした。このためダミー電極31と可動電極12の間に生じる寄生容量は2Cp0である。
【0037】
図9は、ダミー電極31に供給される変調信号Ieの一例を示す。実施例1で説明したように、S/H16は「C」に比例した信号Obを出力する。しかしながら、信号Obには2つの寄生容量Cp0が含まれることになる。このため、静電容量センサ100は、変調信号IaとIbが同相となるタイミングで変調信号IaとIbと逆相の変調信号Ieをダミー電極31に印加する。こうすることで、信号Obに含まれる2つの寄生容量Cp0をキャンセルすることができる。なお、実施例1にて説明したように、変調信号IaとIbが同相のタイミングで、静電容量センサ100はスイッチSW2をオンにスイッチSW1をオフにする。
【0038】
以上のように、本実施例の静電容量センサ100は、基板13と固定電極11、及び、基板13と可動電極12間の寄生容量を除外して、可動電極12と固定電極11間の静電容量Cを検出することができる。
【0039】
なお、基板13と対向するダミー電極31の面積は、基板13と対向する固定電極11の面積と同じにしなくてもよい。これは、ダミー電極31に印加する変調信号Ieの振幅(High時の値)を調整することで、基板13と対向するダミー電極31の面積を変えるのと同じ効果が得られるためである。例えば、変調信号Ieの振幅を変調信号IaとIbの2倍にすれば、基板13と対向するダミー電極31の面積は、基板13と対向する固定電極11の面積の半分にすることができる。
【符号の説明】
【0040】
11 固定電極
12 可動電極
13 基板
31 ダミー電極
40 検出回路
100 静電容量センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動電極と第1の固定電極及び第2の固定電極との間に蓄積された静電容量を検出する静電容量センサにおいて、
固定電極と第1の固定電極及び固定電極と第2の固定電極の間のそれぞれの静電容量の絶対値を検出する検出手段と、
前記静電容量の絶対値の逆数に比例した値を感度にかけることにより、電極のずれにより変動した感度を補正する補正手段と、
を有することを特徴とする静電容量センサ。
【請求項2】
可動電極と第1の固定電極及び第2の固定電極との間に蓄積された静電容量を検出する静電容量センサにおいて、
第1の固定電極と第2の固定電極に、パルス列状の変調信号がそれぞれ同相に供給された際に、可動電極から検出された信号をホールドする第1の回路と、
第1の固定電極と第2の固定電極に、パルス列状の変調信号がそれぞれ逆相に供給された際に、可動電極から検出された信号をホールドする第2の回路と、
第1の回路が出力する信号を、第2の回路が出力する信号で割る除算回路と、
を有することを特徴とする静電容量センサ。
【請求項3】
可動電極と充分離れた位置に形成されたダミー電極を有し、
第1の固定電極と第2の固定電極にパルス列状に同相の変調信号がそれぞれ供給された際に、ダミー電極に、第1の固定電極と第2の固定電極に供給される変調信号と逆相の変調信号を供給する、
ことを特徴とする請求項2記載の静電容量センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−185798(P2010−185798A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30470(P2009−30470)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】