説明

静電容量式センサ

【課題】導通不良を起こしてしまうのを抑制することのできる静電容量式センサを得る。
【解決手段】静電容量式センサは、固定板2と半導体基板とを接合した際に、固定電極に形成された固定電極側金属接触部25と、半導体基板に形成された半導体基板側金属接触部13とが接触するようになっている。そして、固定電極側金属接触部25および半導体基板側金属接触部13の少なくとも互いに接触する部位をバリアメタル14で被覆するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電容量式センサとして、固定電極が形成されたガラス基板と、可動電極が形成された半導体基板とを陽極接合により接合させたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1では、ガラス基板と半導体基板とを陽極接合する際に、固定電極に形成された引き出し線を半導体基板の島状分離部に形成された金属接触部に当接させることで、固定電極と島状分離部とを電気的に接続している。そして、ガラス基板の島状分離部と対応する部位に設けられた貫通孔から固定電極の電位を外部に取り出せるようにしている。
【0004】
通常、この引き出し線および金属接触部の材料としてアルミニウムを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−295006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術では、引き出し線および金属接触部の表面に絶縁性の酸化膜が形成されて導通不良を起こしてしまうおそれがあった。特に、ガラス基板と半導体基板とを陽極接合する場合には、引き出し線および金属接触部が高温高圧に曝されるため、かかる問題が顕著に現れる。
【0007】
そこで、本発明は、導通不良を起こしてしまうのを抑制することのできる静電容量式センサを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にあっては、固定電極が形成される固定板と、前記固定電極との間に間隔を設けて対向配置される可動電極が形成され、前記固定板に接合される半導体基板と、を備え、前記固定板と半導体基板とを接合した際に、前記固定電極に形成された固定電極側金属接触部と、前記半導体基板に形成された半導体基板側金属接触部とが接触する静電容量式センサであって、前記固定電極側金属接触部および前記半導体基板側金属接触部は、少なくとも互いに接触する部位がバリアメタルで被覆されていることを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、固定電極側金属接触部および半導体基板側金属接触部の少なくとも互いに接触する部位をバリアメタルで被覆している。したがって、固定電極側金属接触部および半導体基板側金属接触部の互いに接触する部位の表面に酸化膜が形成されてしまうのを抑制することができる。その結果、接触部分において抵抗が高くなってしまうのを抑制することができ、固定電極と半導体基板とが導通不良を起こしてしまうのを抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる加速度センサを示す分解斜視図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態にかかるシリコン基板を示す平面図である。
【図3】図3は、図2のA−A断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態にかかるシリコン基板を示す裏面図である。
【図5】図5は、図3の静電容量式センサの要部を模式的に示す拡大断面図である。
【図6】図6は、図5中I部の構造を拡大して模式的に示す断面図である。
【図7−1】図7−1は、図5の静電容量式センサの半導体基板の製造工程の途中を(a)から(e)に順を追って模式的に示す断面図のうち(a)から(c)の断面図を示したものである。
【図7−2】図7−2は、図5の静電容量式センサの半導体基板の製造工程の途中を(a)から(e)に順を追って模式的に示す断面図のうち(d)および(e)の断面図を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。以下では、静電容量式センサとして、加速度センサを例示する。また、錘部の可動電極が形成される側をシリコン基板の表面側と定義する。そして、シリコン基板の短手方向をX方向、シリコン基板の長手方向をY方向、シリコン基板の厚さ方向をZ方向として説明する。
【0012】
本実施形態にかかる加速度センサ(静電容量式センサ)1は、図1に示すように、半導体素子ディバイスを形成したシリコン基板(半導体基板)4と、このシリコン基板4の表面4aおよび裏面4bにそれぞれ接合されたガラス製の第1の絶縁性基板(固定板)2および第2の絶縁性基板3と、を備えている。本実施形態では、このシリコン基板4と第1の絶縁性基板2および第2の絶縁性基板3とを陽極接合によって接合している。
【0013】
そして、第1の絶縁性基板2の下面には、錘部5,6の設置領域に対応した固定電極21a,21bおよび22a,22bがそれぞれ設けられている。
【0014】
また、第2の絶縁性基板3の表面には、錘部5,6の設置領域に対応した領域に付着防止膜31,32がそれぞれ形成されている。付着防止膜31,32は、例えば、固定電極21a,21bおよび22a,22bと同じ材料で形成することができる。
【0015】
シリコン基板4は、2つの枠部40a,40bがY方向(シリコン基板4の長手方向)に並設されたフレーム部40と、枠部40a,40bの内周面に対して隙間43を空けた状態で枠部40a,40b内に配置された錘部5,6と、フレーム部40に対して錘部5,6をそれぞれ回動自在に支持する1対のビーム部7a,7bおよび8a,8bと、錘部5,6の表面に形成される可動電極5a,6aと、を備えている。
【0016】
本実施形態では、このシリコン基板4として、Siからなるシリコン活性層111とSiからなる支持基板113との間にSiOからなる埋込絶縁層112が介在する矩形状のSOI基板を用いている。なお、シリコン基板4の長手方向辺は約2〜4mmで、厚さは約0.4〜0.6mmであり、シリコン活性層111の厚さは約10〜20μm、埋込絶縁層112の厚さは、約0.5μmである。
【0017】
フレーム部40は、本実施形態では、Z方向(シリコン基板4の厚さ方向)から見て略矩形状の外側フレーム部41と、X方向(シリコン基板4の短手方向)に延在し、外側フレーム部41のY方向(シリコン基板4の長手方向)略中央部を連結する中央フレーム部42と、を備えている。
【0018】
錘部5,6は、図3および図4に示すように、一面(裏面)に開口する凹部55,65と、凹部55,65を除く充実部53,63とが一体に形成されている。すなわち、錘部5,6に一面(裏面)に開口する凹部55,65を形成することで、錘部5,6に、肉厚の充実部53,63と肉薄の薄肉部54,64とを形成している。
【0019】
充実部53,63は、図4に示すように、裏面側からみた状態で、矩形状に形成されており、それぞれの充実部53,63には、対角線状の溝部56,66が可動電極5a,6aに対して垂直に形成されている。
【0020】
また、凹部55,65は4辺に側壁を持つ矩形に形成されており、内部には、補強壁57,67が可動電極5a,6aに対して垂直に設けられている。
【0021】
本実施形態では、凹部55は、後述する回動軸A1よりもX方向一方側(図1の奥側)に形成されるとともに、凹部65は、後述する回動軸A2よりもX方向他方側(図1の手前側)に形成されている。
【0022】
ビーム部7a,7bおよび8a,8bは、SOI基板(シリコン基板4)のシリコン活性層111に形成されており、SOI基板の埋込絶縁層112をエッチングストップとして深堀エッチングし、更に埋込絶縁層112を選択的にエッチング除去することで形成される。
【0023】
ビーム部7a,7bは、錘部5の表面(可動電極5a)の対向する2辺上にそれぞれ位置し、ビーム部7a,7bがねじれることにより、可動電極5aは、ビーム部7a,7bを互いに結ぶ直線を回転軸A1として揺動する。同様に、ビーム部8a,8bは、錘部6の表面(可動電極6a)の対向する2辺上にそれぞれ位置し、可動電極6aは、ビーム部8a,8bを互いに結ぶ直線を回転軸A2として揺動する。
【0024】
また、ビーム部7a,7bおよび8a,8bは、錘部5,6の表面の2辺の、それぞれ中点に位置している。
【0025】
さらに、本実施形態では、ビーム部7aをビーム部7bよりも細く短くなるように形成するとともに、ビーム部8aをビーム部8bよりも細く短くなるように形成しており、X方向からの衝撃による耐久性を向上させている。このとき、それぞれのビーム部における回転トルクが略同一となるように、それぞれのビーム部の太さおよび長さを設定している。
【0026】
なお、ビーム部7aとビーム部7b、ビーム部8aとビーム部8bを、同一形状となるように形成してもよい。
【0027】
また、本実施形態では、錘部5と錘部6、ビーム部7aとビーム部8a、およびビーム部7bとビーム部8bがそれぞれシリコン基板4の一点(ビーム部7bとビーム部8bとを結ぶ線分の中点)に対して点対称となるように配置されている。
【0028】
さらに、シリコン基板4と第1の絶縁性基板2および第2の絶縁性基板3との接合面には比較的浅いギャップG1,G2がそれぞれ形成されており、シリコン基板4各部の絶縁性や錘部(可動電極5a,6a)5,6の動作性の確保が図られている。
【0029】
なお、シリコン基板4の裏面側のギャップG2は、アルカリ性湿式異方性エッチング液(例えば、KOH(水酸化カリウム水溶液)、TMAH(テトラメチル水酸化アンモニウム水溶液)等)を用いたシリコン異方性エッチングによりシリコン基板4の一部を除去することで形成することができる。このとき、上述した凹部55,65も同時に形成するのが好適である。
【0030】
また、隙間43および隙間44は、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)などにより垂直エッチング加工をすることで形成している。反応性イオンエッチングとしては、例えば、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)を備えたエッチング装置によるICP加工を利用することができる。
【0031】
また、錘部5,6の表面の4隅には、錘部5,6が第1の絶縁性基板2の固定電極21a,21b,22a,22bに直接衝突するのを防止するための突起部51,61が突設されている。
【0032】
同様に、錘部5,6の裏面の4隅には、錘部5,6が第2の絶縁性基板3の付着防止膜31,32に直接衝突するのを防止するための突起部52,62が突設されている。
【0033】
また、本実施形態では、外側フレーム部41は、X方向一端側(図2の下側)が幅広に形成されており、この外側フレーム部41のX方向一端側には、錘部5,6が配置される隙間43,43とそれぞれ連続するように隙間44,44が形成されている。そして、隙間44を空けた状態で電極台9がそれぞれ2つずつ配置されている。
【0034】
この電極台9の表面には、金属膜からなる検出電極10a,10b,11a,11bがそれぞれ設けられている。
【0035】
電極台9は、それぞれフレーム部40および錘部5,6から離間して配置されており、第1の絶縁性基板2および第2の絶縁性基板3により上下面を固定されている。また、外側フレーム部41の表面のY方向中央部には、加速度センサ1の外部に配線される共通電極12が設けられており、フレーム部40は共通電極12により共通電位をとっている。
【0036】
第1の絶縁性基板2の下面には、上述したように、錘部5,6の設置領域に対応した固定電極21a,21bおよび22a,22bがそれぞれ設けられている。これら各固定電極21a,21bおよび22a,22bは、略同一形状で面積が略同一となるように形成されている。
【0037】
固定電極21a,21bは、ビーム部7a,7bを互いに結ぶ直線(回動軸A1)を境界線として、互いに離間して配置されている。同様に、固定電極22a,22bは、ビーム部8a,8bを互いに結ぶ直線(回動軸A2)を境界線として、互いに離間して配置されている。本実施形態では、各固定電極21a,21bおよび22a,22bは、アルミニウム(Al)をスパッタ法やCVD法等により第1の絶縁性基板2に蒸着することで形成している。
【0038】
固定電極21a,21bは、検出電極10a,10bにそれぞれ電気的に接続されており、固定電極22a,22bは、検出電極11a,11bにそれぞれ電気的に接続されている。
【0039】
具体的には、固定電極21a,21bおよび22a,22bには、それぞれが接続される検出電極10a,10bおよび11a,11bが形成された固定電極台9に向けて引出線(固定電極側金属接触部)25がそれぞれ設けられている。
【0040】
また、各固定電極台9には、引出線(固定電極側金属接触部)25が接触するアルミニウム製の導電層(半導体基板側金属接触部)13が形成されている。本実施液体では、各固定電極台9のX方向他端側(図2の上側:錘部側)に段差9aが設けられており、当該段差9aの下面、すなわち、検出電極10a,10bおよび11a,11bが形成される面よりも低い位置に導電層(半導体基板側金属接触部)13を形成している(図3参照)。
【0041】
そして、この引出線(固定電極側金属接触部)25および導電層(半導体基板側金属接触部)13は、シリコン基板4と第1の絶縁性基板2とを陽極接合する際に、互いに踏みつぶされて接触する。
【0042】
こうして、固定電極21a,21bおよび22a,22bが、検出電極10a,10bおよび11a,11bに電気的に接続される。
【0043】
なお、検出電極10a,10bおよび11a,11bは、互いに離間し、それぞれフレーム部40、錘部5,6から離間しているので、各検出電極が互いに絶縁され、各検出電極の寄生容量や、各検出電極間のクロストークを低減し、高精度な容量検出を行うことができる。
【0044】
また、第1の絶縁性基板2の電極台9と対応する部位には、サンドブラスト加工等によってスルーホール23がそれぞれ形成されており、第1の絶縁性基板2の共通電極12に対応する部位には、サンドブラスト加工等によってスルーホール24がそれぞれ形成されている。そして、検出電極10a,10b,11a,11bは、それぞれスルーホール23を介して外部に露出、配線され、共通電極12は、それぞれスルーホール24を介して、外部に露出、配線される。こうして、固定電極21a,21b,22a,22bや可動電極5a、6aの電位を外部に取り出せるようにしている。
【0045】
ここで、本実施形態では、金属接触部をなす引出線(固定電極側金属接触部)25および導電層(半導体基板側金属接触部)13とを硬質のバリアメタル14で被覆するようにしている。なお、検出電極10a,10b,11a,11bや導電層13(図6では導電層13のみ図示)と電極台9のシリコン活性層111との接触部分にバリアメタル14を介在させることは、従来より公知であるが、本実施形態では、導電層(半導体基板側金属接触部)13および引出線(固定電極側金属接触部)25の金属どうしの接触部(図6のC部)をバリアメタル14で被覆した点に特徴がある。
【0046】
具体的には、導電層(半導体基板側金属接触部)13の表面(露出している面)を、MoSi(珪化モリブデン)、WSi(珪化タングステン)、Ti(チタン)およびTiN(窒化チタン)のうち少なくともいずれか1つを用いて反応性スパッタリングまたはCVD法により形成した成膜で覆っている。
【0047】
さらに、引出線(固定電極側金属接触部)25を含むそれぞれの固定電極21a,21b,22a,22bの表面(露出している面)を、MoSi(珪化モリブデン)、WSi(珪化タングステン)、Ti(チタン)およびTiN(窒化チタン)のうち少なくともいずれか1つを用いて反応性スパッタリングまたはCVD法により形成した成膜で覆っている。
【0048】
このように、本実施形態では、少なくとも引出線(固定電極側金属接触部)25および導電層(半導体基板側金属接触部)13の互いに接触する部位をバリアメタル14で被覆しておいる。
【0049】
さらに、本実施形態では、後工程でワイヤボンディングされる検出電極10a,10bおよび11a,11bもバリアメタル14で覆われるようにしている。この検出電極10a,10bおよび11a,11bの表面(露出している面)も、MoSi(珪化モリブデン)、WSi(珪化タングステン)、Ti(チタン)およびTiN(窒化チタン)のうち少なくともいずれか1つを用いて反応性スパッタリングまたはCVD法により形成した成膜で覆っている。
【0050】
次に、図7(a)〜(e)に基づき、バリアメタル14の成膜を形成する工程を説明する。
【0051】
まず、図7(a)に示すように、エッチングによりシリコン基板4のシリコン活性層111にギャップG1を形成する。
【0052】
次に、図7(b)に示すように、支持基板113にギャップG2(図7には図示せず)および隙間43をエッチングにより形成する。
【0053】
そして、図7(c)に示すように、隙間43を貫通させて錘部5を形成する。このとき、ビーム部7a,7bおよび8a,8bがシリコン活性層111に形成されるように、隙間43を形成する。
【0054】
次に、図7(d)に示すように、検出電極10a,10b,11a,11b(図7(d)では検出電極10aのみ図示)および導電層13を設けた後、それらをバリアメタル14の成膜で被覆する。
【0055】
なお、シリコン活性層111とのオーミックコンタクトのため、およびアルミニウムのシリコン基板4内への拡散防止や配線パターニングへの影響を抑制するためにも、検出電極10a,10b,11a,11bおよび導電層13を設ける前に、シリコン活性層111の表面に反射防止膜としてのバリアメタル層を形成しておくのが好ましい(図7(d)参照)。こうすれば、安定してアルミニウムコンタクトを形成することができる。また、バリアメタル14は、アルミニウムのパターニングに対しても反射防止膜の役割を同時に果たすことができるため、配線部が細くなってしまったり電極形状の異常を抑制することもできる。
【0056】
そして、図5に示すように、各貫通穴23が検出電極10a,10b,11a,11bの位置となるようにした状態で、固定電極21a,21bおよび22a,22bを形成した第1の絶縁性基板2を、シリコン基板4に陽極接合する。このとき、固定電極21a,21bおよび22a,22bは引出線(固定電極側金属接触部)25とともにバリアメタル14で被覆されている。
【0057】
そして、検出電極10a,10b,11a,11bのバリアメタル14の除去部分をワイヤボンディングすることで、固定電極21a,21b,22a,22bや可動電極5a、6aの電位を外部に取り出せるようになる。
【0058】
次に、本実施形態の検出動作について説明する。
【0059】
まず、一方の錘部5にX方向の加速度が印加された場合を考える。X方向に加速度が印加されると、錘部5が回動軸A1の回りに回動して可動電極5aと固定電極21a並びに固定電極21bとの間の距離が変化する。その結果、可動電極5aと各固定電極21a,21bとの間の静電容量C1,C2も変化する。ここで、X方向の加速度が印加されていないときの可動電極5aと各固定電極21a,21bとの間の静電容量をC0とし、加速度の印加によって生じる静電容量の変化分をΔCとすれば、X方向の加速度が印加されたときの静電容量C1,C2は、
C1=C0−ΔC …(1)
C2=C0+ΔC …(2)
と表すことができる。
【0060】
同様に、他方の錘部6にX方向の加速度が印加された場合、可動電極6aと各固定電極22a,22bとの間の静電容量C3,C4は、
C3=C0−ΔC …(3)
C4=C0+ΔC …(4)
と表すことができる。
【0061】
そして、一方の錘部5および固定電極21a,21bから得られる静電容量C1,C2の差分値CA(=C1−C2)と、他方の錘部6および固定電極22a,22bから得られる静電容量C3,C4の差分値CB(=C3−C4)との和(±4ΔC)を算出すれば、この差分値CA,CBの和に基づいてX方向に印加された加速度の向きと大きさを演算することができる。
【0062】
次に、一方の錘部5にZ方向の加速度が印加された場合を考える。Z方向に加速度が印加されると、錘部5が回動軸A1の回りに回動して可動電極5aと固定電極21a並びに固定電極21bとの間の距離が変化する。その結果、可動電極5aと各固定電極21a,21bとの間の静電容量C1,C2も変化する。ここで、Z方向の加速度が印加されていないときの可動電極5aと各固定電極21a,21bとの間の静電容量をC0とし、加速度の印加によって生じる静電容量の変化分をΔCとすれば、Z方向の加速度が印加されたときの静電容量C1,C2は、
C1=C0+ΔC …(5)
C2=C0−ΔC …(6)
と表すことができる。
【0063】
同様に、他方の錘部6にZ方向の加速度が印加された場合、可動電極6aと各固定電極22a,22bとの間の静電容量C3,C4は、
C3=C0−ΔC …(7)
C4=C0+ΔC …(8)
と表すことができる。
【0064】
そして、一方の錘部5および固定電極21a,21bから得られる静電容量C1,C2の差分値CA(=C1−C2)と、他方の錘部6および固定電極22a,22bから得られる静電容量C3,C4の差分値CB(=C3−C4)との差(±4ΔC)を算出すれば、この差分値CA,CBの差に基づいてZ方向に印加された加速度の向きと大きさを演算することができる。
【0065】
このとき、錘部5,6の重心位置から回動軸A1,A2に下ろした垂線と錘部5,6の表面とが成す角度を略45度に設定すれば、これら2方向の検出感度を等価にすることができる。
【0066】
なお、差分値CA,CBの和と差とに基づいてX方向およびZ方向の加速度の向きと大きさを求める演算処理については従来周知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態では、引出線(固定電極側金属接触部)25および導電層(半導体基板側金属接触部)13とを硬質のバリアメタル14で被覆している。したがって、引出線(固定電極側金属接触部)25および導電層(半導体基板側金属接触部)13の互いに接触する部位の表面に酸化膜が形成されてしまうのを抑制することができる。その結果、接触部分において抵抗が高くなってしまうのを抑制することができ、固定電極21a,21b,22a,22bと電極台9(半導体基板4)とが導通不良を起こしてしまうのを抑制することができるようになる。
【0068】
また、本実施形態では、引出線(固定電極側金属接触部)25を含むそれぞれの固定電極21a,21b,22a,22bの表面(露出している面)を、MoSi(珪化モリブデン)、WSi(珪化タングステン)、Ti(チタン)およびTiN(窒化チタン)のうち少なくともいずれか1つを用いて反応性スパッタリングまたはCVD法により形成した成膜で覆っている。すなわち、バリアメタル14の材料として、MoSi(珪化モリブデン)、WSi(珪化タングステン)、Ti(チタン)およびTiN(窒化チタン)などの高硬度の材料を用い、固定電極21a,21b,22a,22bの表面をコーティングしている。そのため、過大な加速度が入力されて可動電極5a,6aが固定電極21a,21b,22a,22bに衝突した際に、固定電極21a,21b,22a,22b表面が変形しにくくなる。その結果、固定電極21a,21b,22a,22bと可動電極5a,6a(本実施形態では、突起部51,61)との接触面積が大きくなってしまうのを抑制することができ、固着抑制効果をより一層向上させることができる。
【0069】
ところで、本実施形態では、金属接触部がアルミニウムどうしの接触である場合を例示したが、以下に示す金属を接触させるようにすることも可能である。
【0070】
まず、金属接触部を銅(Cu)どうしの接触とすることができる。つまり、引出線(固定電極側金属接触部)25および導電層(半導体基板側金属接触部)13をそれぞれ銅で形成することができる。この場合には、Ta(タンタル)、TaN(窒化タンタル)、Ti(チタン)およびTiN(窒化チタン)のうち少なくともいずれか1つを用いて反応性スパッタリングまたはCVD法により形成した成膜(バリアメタル14)でそれぞれ被覆するのが好ましい。こうすれば、上述の実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0071】
また、金属接触部を、タングステン(W)どうしの接触とすることができる。つまり、引出線(固定電極側金属接触部)25および導電層(半導体基板側金属接触部)13をそれぞれタングステンで形成することができる。この場合には、Ta(タンタル)、TaN(窒化タンタル)、Ti(チタン)およびTiN(窒化チタン)のうち少なくともいずれか1つを用いて反応性スパッタリングまたはCVD法により形成した成膜(バリアメタル14)でそれぞれ被覆するのが好ましい。こうしても、上述の実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0072】
また、金属接触部を、アルミニウムとタングステンプラグとの接触とすることができる。つまり、引出線(固定電極側金属接触部)25および導電層(半導体基板側金属接触部)13のうちいずれか一方をアルミニウム、他方をタングステンプラグで形成することができる。この場合には、Ti(チタン)またはTiN(窒化チタン)のうち少なくともいずれか1つを用いて反応性スパッタリングまたはCVD法により形成した成膜(バリアメタル14)でそれぞれ被覆するのが好ましい。こうしても、上述の実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0073】
また、金属接触部を、銅とタングステンプラグとの接触とすることもできる。つまり、引出線(固定電極側金属接触部)25および導電層(半導体基板側金属接触部)13のうちいずれか一方を銅、他方をタングステンプラグで形成することができる。この場合には、Ta(タンタル)、TaN(窒化タンタル)、Ti(チタン)およびTiN(窒化チタン)のうち少なくともいずれか1つを用いて反応性スパッタリングまたはCVD法により形成した成膜(バリアメタル14)でそれぞれ被覆するのが好ましい。こうしても、上述の実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0074】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0075】
たとえば、上記実施形態では、X方向とZ方向の2方向の加速度を検出する加速度センサを例示したが、錘部の1つをXY平面内で90度回転させて配置し、Y方向を加えた3方向の加速度を検出する加速度センサとしてもよい。
【0076】
また、可動電極がXY平面に沿って移動する加速度センサであっても、本発明を適用することができる。
【0077】
また、上記実施形態では、静電容量式センサとして加速度センサを例示したが、これに限ることなく、その他の静電容量式センサ、たとえばレゾネータやジャイロであっても本発明を適用することができる。
【0078】
また、錘部や固定電極その他細部のスペック(形状、大きさ、レイアウト等)も適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 加速度センサ(静電容量式センサ)
2 第1の絶縁性基板(固定板)
4 シリコン基板(半導体基板)
5a、6a 可動電極
13 導電層(半導体基板側金属接触部)
14 バリアメタル
21a、21b、22a、22b 固定電極
25 引出線(固定電極側金属接触部)
G1 ギャップ(間隔)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定電極が形成される固定板と、前記固定電極との間に間隔を設けて対向配置される可動電極が形成され、前記固定板に接合される半導体基板と、を備え、前記固定板と半導体基板とを接合した際に、前記固定電極に形成された固定電極側金属接触部と、前記半導体基板に形成された半導体基板側金属接触部とが接触する静電容量式センサであって、
前記固定電極側金属接触部および前記半導体基板側金属接触部は、少なくとも互いに接触する部位がバリアメタルで被覆されていることを特徴とする静電容量式センサ。
【請求項2】
前記固定電極側金属接触部および前記半導体基板側金属接触部がアルミニウムで形成されており、前記バリアメタルが、MoSi、WSi、TiおよびTiNのうち少なくともいずれか1つを用いて反応性スパッタリングまたはCVD法により形成した成膜であることを特徴とする請求項1に記載の静電容量式センサ。
【請求項3】
前記固定電極側金属接触部および前記半導体基板側金属接触部が銅で形成されており、前記バリアメタルが、Ta、TaN、TiおよびTiNのうち少なくともいずれか1つを用いて反応性スパッタリングまたはCVD法により形成した成膜であることを特徴とする請求項1に記載の静電容量式センサ。
【請求項4】
前記固定電極側金属接触部および前記半導体基板側金属接触部がタングステンで形成されており、前記バリアメタルが、Ta、TaN、TiおよびTiNのうち少なくともいずれか1つを用いて反応性スパッタリングまたはCVD法により形成した成膜であることを特徴とする請求項1に記載の静電容量式センサ。
【請求項5】
前記固定電極側金属接触部および前記半導体基板側金属接触部のうちいずれか一方がアルミニウムで形成されるとともに他方がタングステンプラグで形成されており、前記バリアメタルが、TiまたはTiNのうち少なくともいずれか1つを用いて反応性スパッタリングまたはCVD法により形成した成膜であることを特徴とする請求項1に記載の静電容量式センサ。
【請求項6】
前記固定電極側金属接触部および前記半導体基板側金属接触部のうちいずれか一方が銅で形成されるとともに他方がタングステンプラグで形成されており、前記バリアメタルが、Ta、TaN、TiおよびTiNのうち少なくともいずれか1つを用いて反応性スパッタリングまたはCVD法により形成した成膜であることを特徴とする請求項1に記載の静電容量式センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【公開番号】特開2012−47528(P2012−47528A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188320(P2010−188320)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】